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国立大学独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports  No.30  2000.11.20 Ver 1.0

独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports No.30 2000.11.20 Ver. 1.0 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-30-00b20.html (ミラーサイト http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-30-00b20.html) 総目次:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html ==========================目次======================================== [30-1]21世紀の大学を考える懇談会(第1回2000.9.25)議事要旨 より [30-2]「法曹養成制度の在り方」に関する審議の取りまとめ [30-3]国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(第3回)資料 [30-4]調査検討会議議事要旨 [30-4-1]調査検討会議(第4回組織業務委員会2000.10.3)議事要旨 [30-4-2]調査検討会議(第2回人事制度委員会2000.10.10)議事要旨 [30-5](国大協)第1常置委員会拡大小委員会(2000.10.25議事メモ) [30-6]喜多村和之氏「大学評価・学位授与機構の評価実施方針を問う」 [30-7]国立大学協会総会への要請行動 [30-7-1]要請行動概要 [30-7-2]要請行動「不作為による独法化推進にブレーキを!」の趣旨より [30-7-3]65大学681名の共同要望書 [30-7-4]26大学73名共同要望書(11月7日提出) [30-8] Academia e-Network 設立準備会の発足 [30-8-1]発足の主旨 [30-8-2]渡辺勇一氏:message [30-8-3]長谷川浩司氏「Academia e-Network (ac-net) は何をめざすべきか」 [30-8-4]辻下 徹「新しい知の共同体に向けて」 [30-9]リッカルド・ペトレラ(北浦春香訳)「教育に忍びよる五つの危険」 =================内容紹介=============================================== [30-1]21世紀の大学を考える懇談会(第1回2000.9.25)議事要旨 より 文部大臣の新しい私的懇談会。来年3月までの6ヶ月間に「我が国の大学の 在り方を長期的な視点から展望し、学問分野のバランスなどを含め、今後の大 学を中心とする高等教育及び学術研究の振興の在り方について、学識経験者に よる懇談を行う」という。昨年9月の独立行政法人化容認への文部省方針転換 に「お墨付き」を与えたのが文相私的懇談会「国立大学等の在り方に関する懇 談会」であった。新しい懇談会がお墨付きを与えるものは何だろうか。来年4 月が山場ではないか。 [30-2]「法曹養成制度の在り方」に関する審議の取りまとめ(目次) 法科大学院問題の論議がいよいよ本格化する。法学部だけの問題では済まない。 大学全体で議論すべきことではないか。 [30-3]国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(第3回)資料 教育大学協会のホームページが開設された。教員養成問題も、教育学部だけの 問題ではない。 [30-4]調査検討会議議事要旨 発言通し番号付きの記録を試作した。議事録について議論するときに、今の 形式では発言を引用しにくい。文部省もせめて、その位の工夫はしてほしい。 [30-5](国大協)第1常置委員会拡大小委員会(2000.10.25議事メモ) 第一常置委員会は大学制度を議論する国立大学協会の専門委員会。問題のある 発言が少なくない。 [30-6]喜多村和之氏「大学評価・学位授与機構の評価実施方針を問う」 大学評価機構活動の性急性を強く批判。私学の立場からの3つの質問。 [30-7]国立大学協会総会への要請行動 調査検討会議参加の取り消し等を求める草の根的要請行動。要望書の取扱・ 総会公開拒否は会長独自の判断で行われ、総会は事後承諾した。 [30-8] Academia e-Network 設立準備会の発足 知の共同体を大学を超えて形成することを目指す試みが始まった。 [30-9]リッカルド・ペトレラ(北浦春香訳)「教育に忍びよる五つの危険」 時代の流れに受け身に従うときには避けがたい、教育や学問の危機を鋭く指摘。 ====================================================================== [30-1]21世紀の大学を考える懇談会(第1回2000.9.25)議事要旨 より http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000484/ 参照番号付き: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/21univ-kon/00925-giji.html [1-4]この懇談会は,通常の審議会とは違ったものにしたい。審議会は座長制 であり,座長は取りまとめ役になってしまうが,この懇談会は,座長のパーソ ナリティーを出したものにしてもらいたい。座席は決められた場所に座るので はなく,自分の好きな席に座るようにしたらどうか。... [1-21]「...知的なるものの状況が変化する中で,大学の位置付けという 基本的な定義ができてないのではないか。知の責任が問われる中,その責任に 関心を持たない非知的な状況があるのではないか。大学には協会があるが,そ れは一種の代表制であり,学会も同様である。したがって,個人や大学がどう 責任をもつのか意識しないで生きていける状況ができあがっている。誰が何に 責任を持つのかをはっきりさせなければ何もできない。教養のない者,客観的 自己規定ができない者に教育はできないのではないか。日本の学者は細分化の 中に閉じこもっていて,その中でしか責任をとらない。自己規定をする学者は 細分化に異議を申し立てるべきだが,反対に荷担している状況にある。 そこで,何をすべきか,何ができるか,何をしなかったかを知っているのは この場にいる人達ではないか。厳しい目をもって,これからの大学の在り方に ついて,理想像でもなく,具体的すぎる政策提案でもない別のものを見つけな ければ,新しい大学の位置付けは見えてこないのではないかと考えている。」 ====================================================================== [30-2]「法曹養成制度の在り方」に関する審議の取りまとめ http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/law-school/report.html #法科大学院の教員増員の要求は不可避ではないだろうか。「科学技術創造立国」 #とならんで独立行政法人化への強い圧力に成長しなけない動きである。 ====================================================================== [30-3]日本教育大学協会ホームページ http://www.u-gakugei.ac.jp/‾jaue/index.htm 国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会(第3回)資料 http://www.u-gakugei.ac.jp/‾jaue/kondankai.pdf ====================================================================== [30-4]調査検討会議議事要旨 [30-4-1]調査検討会議(第4回組織業務委員会2000.10.3)議事要旨 http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000489 参照番号付 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/tkk/soshiki-4-giji.html ====================================================================== [30-4-2]調査検討会議(第2回人事制度委員会2000.10.10)議事要旨 http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000479/ 参照番号付 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/tkk/00a10-giji.html ====================================================================== [30-5](国大協)第1常置委員会拡大小委員会(2000.10.25議事メモ) http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/kdk/00a25-giji.html (括弧内の数字は発言通し番号。) (9)合議制の機関である大学が独立行政法人の仕組みとどう噛み合うかが問題 である。国が設置者という原則が貫かれるならば,現行の国立大学設置法がもっ ている大学にとっての強みをそのまま継承できると思っている。もし国が設置 者でなく法人が設置者だとすると,新たにに国立大学法人法なり特例法を作ら なければならない。そのときに,独立行政法人のスキームと大学の合議制とが マッチできるものか。独立行政法人の場合には,明らかに機関の長がトップダ ウンで運営していくという発想でできているから,合議制の原則をその法律の 中に入れていくのは大変なことであろう。 (17)独法化によって,中の組織を自由に変えられることを文部省はメリットと 言っていて,それに期待をかける向きも少なくないが,仮に,定員管理の縛り がなくなったとしても,予算面からの絞めつけができたときに,どういう状況 になるかということを十分想定しておかなければならない。何か定員制とか講 座制ということが桎梏のようにとられているようだが,それは大学を縛ってい るというよりも国に対する義務づけになっているということを考えたい。それ がなくなるということは,予算の配分が減り,人も減るということがあり得る というのが論理的な帰結である。だから,独立行政法人化の問題は,そういう 問題とリンクさせながら考えないといけない。 #以上のような根本から考える意見は多くはない。特に(24)のような、時 代の流れを読んだ積りの自己規制的発想が、これまで<大学改革>を推進し大 学を疲弊させてきていることを忘れてはならない。 (24)国大協を取り巻く状況は,かつて国鉄の民営化が問題になった時と似てい ると思う。今のままでいようとすれば,外の強い力が働いてくることは必定だ。 そういう中で,各大学が自主的な努力で改善できる余地,改善されるならそこ に予算がつくという余地,それに対して国が支援するという方式,そういうシ ステムによってダイナミズムを大学が持つ方向に向かわないといけない。国立 大学が法人格を有していないがゆえに,意思決定に大きな制約があって,たと えば,裁判において当事者になり得ないということとか,大学自治についても, 教官人事,学問・研究等学部自治の根幹を支える予算,会計,組織などの面で 自由度がなく,大学として責任をもった管理運営をしていく仕組みになってい ないということがある。そこを,自分たちの努力・工夫で大学をよくしていけ るような制度として,法人格をもつことを考えたい。 ====================================================================== [30-6]喜多村和之氏「大学評価・学位授与機構の評価実施方針を問う」 http://www3.ocn.ne.jp/‾riihe/arcadia/arcadia13.html ... 「発足からわずか半年の間に、同機構は評価を実施するために委員会、専門委 員会を通じて評価事業の実施案まで、矢継ぎ早に提示してきた。しかも1ヵ月 そこそこの期間内に私大団体全体の意見を「とりまとめて」回答せよという。 ...そもそも評価の対象となる95校の国立大学や国立大学協会でも、そんな に手際よく意見がまとめられるのであろうか。ましてや400校を超える多様な 私立大学の総意を短期間でまとめるなどということが簡単に出来る筈がないこ とは、十分承知の上であろう。大学を評価するという、国家百年の計に影響を 及ぼす重要な問題に、なぜそんなに性急に事を運ぼうとするのであろうか。 ...筆者の知るかぎりでは、国立大学関係者は独法化の方に気をとられてい て、そのペアとなる評価の方までは、まだ気がまわっていないように見受けら れる。いまのままでは、大学評価の方針は、ごく一握りの関係者によって決定 されていく公算が大である。...政府のやることはいつでもこんなふうに裏 木戸から何気なく入ってきて、気がつくと思うつぼにはまっているということ が少なくない。 そこでここでは、実施案の具体例や細部に対する疑問や見解はひとまずおいて、 同機構の第三者評価の基本的性格にかかわる点のみについて、同機構の回答を 求めたい。  (1)同機構の大学評価は公私立大学は対象としないのか、あるいは「当分の 間」だけ対象としないのか、そうだとすればその期間とはどのくらいの時間な のか、是非とも曖昧にしないでお教えいただきたい、というのが第一の問いで ある。...  (2)...つまり公的機関が収集した評価情報が、大学の教育研究水準の向 上や改善に資するという本来の目的から逸脱して、大学の序列化に利用される おそれがある。...大学の組織全体や教育研究の質を序列化することが、教 育研究の質的評価としては適当な尺度といえないことは、過去に偏差値ランキ ングがもたらした幾多の弊害が証明している。機構の評価情報がこうした方向 に利用される可能性に対して、機構としてはどのように考え、またこれに対し ていかなる対応策を講じているのか。  (3)...機構はただ評価情報を提供するだけで、政府がこれをどう使うの かには関知しないのだろうか。あるいは、評価情報が政府の予算配分や優先順 位の決定につかわれる可能性はないと考えているのだろうか。もしそうだとし たら、第三者評価はなんのために行われるのだろうか。機構の行う評価が、私 学助成等になんらの影響を及ぼすことはないのだろうか。その点機構としてど う考えているのかを明らかにして欲しいのである。  少なくとも以上の3点が曖昧にされたままでは、私学としての機構への回答 のしようがなく、また私学としての評価システムの在り方も考えようがないの である。」  ====================================================================== [30-7]国立大学協会総会への要請行動 11月15日・16日に東京都千代田区の如水会館で開催された国立大学協 会第107回総会に対して種々の要請行動が行われた。 ---------------------------------------------------------------------- [30-7-1]要請行動記録 15日 午前9時−9時50分 晴天。会場の如水会館入り口で横断幕を張り 681名の共同要望書を来場の学長に配付。独立行政法人化反対首都圏ネット ワークの他に、東工大・東外大・東大の複数の団体の学生約10名が横断幕を 持って参加、それぞれの要望書を学長に配付。(東工大サークル連合会は数カ 月前に3週間で1053筆の「独法化、学費値上げ・学部別授 業料に反対する」署 名を集め国会に請願している。)。  午前10時に681名共同要望書を国立大学協会事務局に提出。総会傍聴及 び要望書の処理過程開示を国立大学教員5名が会場入り口で国立大学協会事務 局員に改めて申し入れた。押し問答の後局員は、蓮實会長の判断を仰ぎに会場 に入った。要望を退ける会長の判断を伝えに来た国立大学事務局長と11時ま で交渉。強い要望があったことを伝えると事務局長は約束。  翌16日に事務局長に会って事後経過を問うと「会長は、傍聴拒否・要望書 の委員会への非回付の判断についの事後承諾を総会に求めた。異論はなく、今 回に限ったこととして承認された。正確な内容は議事録を参照してほしい」と 回答があった。 ---------------------------------------------------------------------- [30-7-2]要請行動「不作為による独法化推進にブレーキを!」の趣旨より http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00b/15-kdk.html#shushi 「この3ヶ月間、文部省の独立行政法人化調査検討会議、および、国立大学協 会設置形態検討特別委員会で自由討論が続いています。それを通して明らかに なったことは、国立大学を通則法に基づいて(マイナーな修正を加えるものの) 独立行政法人化すること以外に文部省は関心がないことと、大学にとって少し でも有利になればよい、という意見が国立大学関係者に少なくないことです。 国立大学協会がイニシアティブを取るという意気込みは、一部の委員の発言に しか現われていません。 ... 独立行政法人化を回避するために残された現実的方法は、今度の総会で調査 検討会議への参加を取り消すことです。そして、国立大学全体が背水の陣を敷 き、一部の特殊なタックスペイヤーではなく、日本社会全体と共に本当に日本 社会のためになる大学改革を模索することが、残された数少ない活路であると 同時に国立大学の使命でもあると思います。 この総会が、日本社会の無関心と政治的圧力の強さを口実に、「不作為」で あれ独立行政法人化推進を是認することは、大半が独立行政法人化に反対して いる大学社会に対する背信行為であるだけでなく、日本社会・国際社会に対す る立大学の責任を放棄するものです。...」 ------------------------------------------------------------ [30-7-3]65大学681名の共同要望書 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/008/25-shomei.html#youbousho ------------------------------------------------------------- [30-7-4]26大学73名共同要望書(11月7日提出) http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00b/02-kdd-yobikake.html 国立大学協会会長 蓮實 重彦 樣  国立大学協会は6月14日の総会で、 文部省が国立大学独立行政法人化の 具体的作業遂行を目的とした調査検討会議へ積極的に参加することを全会一致 で決めました。昨年来、大学関係者の間で独立行政法人化への強い疑義の声が 途切れることなく広汎に上がっている中で、文部省が独立行政法人化の方針を 明言した直後に、このような合意に至った経緯は、大学関係者だけでなく国民 全体にとっても未だに不可解なままです。さらに、6月総会合意事項は、人を 煙に巻くものであり、日本社会から大きな負託を受けている国立大学の指導者 集団が備えるべき誠実性の不足を証明しています。  7月28日に私たち国立大学教職員有志360名(現在64大学646名) は、会議への参加を撤回し、日本社会に向けて国立大学協会自身が語りかける ことを求める要望書(添付書類)を国立大学協会に提出しました。しかし、未 だ回答はなく、また、設置形態特別委員会等の関連する場で議論されたという 情報も得ていません。  6月総会から5ヶ月が経過し、独立行政法人化調査検討会議が開始され3ヶ 月が経過しましたが、国立大学協会の戦略は会議に「意見を反映させる」こと にしかなく、実際、議事概要を見る限り、参加者である大学関係者が個人とし て思い思いに発言しているだけあり、国立大学協会と文部省との対等な交渉の 場にはなっていません。しかも、会議を主宰する文部省は、独立行政法人通則 法に基づく具体案をまず作成してから是非を検討する方針を明確にしています。 その方針通り、膨大な作業の末に大学の意見も枝葉末節では取り入れた具体案 ができたとき、それを非として退けることは、判断基準となる明確なもの−− 真の対案・大学憲章等−−がない限り不可能なことは明らかです。  具体案作成作業を開始する会議に、真の対案・大学憲章等の備えなしに、留 まることは戦略的配慮を著しく欠くものです。  そこで、会則28条に従い、以下の要望書を提出します。 (26大学73名の署名..省略) ----------要望書------------------------------------------- (1)次を11月15日総会の議題とすること。 (1−1)6月総会合意事項「調査検討会議への参加」の撤回。 (1−2)対案として、国立学校設置法改正による法人格取得の検討開始。 (1−3)日本社会と国際社会に向けたアピール(和文・英文)を採択。 (2)11月15日総会における独立行政法人化に関する審議に、国立大学 教員の傍聴を認めること。 (3)7月28日に会則28条に従い提出した国立大学教職員360名の要 望書の回付を受けた委員会名と審議内容を公開すること。 ====================================================================== [30-8] Academia e-Network 設立準備会の発足 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/ac-net/index.html ---------------------------------------------------------------------- [30-8-1]発足の主旨 「日本社会は一つの静かな危機に今直面しています。潜伏期間の長い致命的病 に罹患しつつあるのです。 国立大学独立行政法人化に象徴される一連の大学企業化政策は、知的活動を経済 活動の下に制度的に位置づけるもので、<知の共同体>は学問の自由・大学の自 治と共に一把ひとからげに<非効率で無用な既得権の温床>というレッテルを貼 られて大学から駆逐されつつあり、駆逐を危ぶむ者の声も蒸発しつつあります。 この事態が日本社会の未来に与える影響の深刻さに日本社会の大部分は気付いて いません。真剣に取り組むマスコミ関係者も例外的です。大学を主要な基盤とす る日本の知の共同体は風前の灯火です。 しかし、日本社会にとって僥倖とも言える活路が開かれつつあります。文字の発 明・印刷術の発明にも匹敵する革命が人類の知的環境に生起しようとしていま す。十年後にはテレビと同じ感覚で大多数の国民がインターネットに接して生活 することになります。ここに、学術・教育関係者を中心とする知の共同体と日本 社会との生きた直接的インターフェースが成長すれば、知の共同体が社会の生き た器官として本来の使命を思う存分に果たすようになるでしょう。 Academia e-Network はインターネットを活用し次のような活動を展開します。 (1)自由な機動的連携を、学術教育関係者・市民の間で広汎に生成 (2)学術教育社会から日本社会全体に直接発信 (3)日本社会の知的活性化の促進(コンテンツ・方法の開発と提供) 参加者の知恵を集め永続的活力のあるAcademia e-Network を設計し始動させ、 21世紀が、新しい知の共同体の胎動と共に始まるようにしたいと思います。 ご協力をお願いします。 ----------------------------------------------------------------------   呼びかけ人(2000.11.16) 池内 了(名古屋大学) 鈴木賢治(新潟大学)  長谷川浩司(東北大学) 上野健爾(京都大学)  鈴木恒雄(金沢大学)  羽部朝男(北海道大学) 奥 忍(和歌山大学)  田口雄一郎(北海道大学)浜本伸治(富山大学) 神沼公三郎(北海道大学)向井 茂(北海道大学) 松田 正久(愛知教育大) 黒木 玄(東北大学)  辻下 徹(北海道大学) 湯浅精二(大阪大学) 小林亮一(名古屋大学) 豊島耕一(佐賀大学)  渡辺信久(北海道大学) 近藤義臣(群馬大学)  浪川幸彦(名古屋大学) 渡辺勇一(新潟大学)               志賀徳造(東工大)   中尾 繁(北海道大学) 白井浩子(岡山大学)  野田隆三郎(岡山大学) 賛同者(2000.11.16) 石栗義雄(東北大学)  亀山統一(琉球大学)  栃内 新(北海道大学) 岩佐 茂(一橋大学)  佐々木一男(山形大学) 松田良一(東京大学) 小沢弘明(千葉大学)  高橋英樹(北海道大学) 馬場 理 他(名簿を整理中) 趣旨に賛同される方は世話人の辻下徹( tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp) まで御連絡ください。 ---------------------------------------------------------------------- [30-8-2]渡辺勇一氏:message より http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/ac-net/00b/15-watanabe.html 「 1997年12月3日 行革会議の提言をもって、行政組織の縮減が始まった。 こじつければ、出先機関として定義されるかも知れないが国立大学などの重要 な高等教育機関が何故「小さな政府論」に合わせて規模を縮小(定員削減)さ れるのか極めて不可解な事であった。 1998.10月から、行革の推進は中央省庁等改革推進本部によって行われるよ うになった。翌年立法化された「独立行政法人通則法」が示すところは、単な る高等教育・研究機関の規模縮小ではなく、それらを限りなく行政のもとに従 属させる姿であった。学問・教育活動に絶対必要な、自由な精神の全てを奪う ような通則法には、学長をはじめ、多くの大学教員、研究公務員が反対の声を 上げた。まさに日本の学術研究体制の崩壊の危機を感じた「憂国の士達の声」 だったと言えよう。 この様な反対の声にもかかわらず、今年6月の国大協総会の一ヶ月後、国立 大等独法化調査検討会議があいまいな形で発足した。相当数の学長は、この会 議の中で反対の態度をを貫けると判断したと思われる。 橋本行革が打ち上げられてから、既に3年近くを経過するが、調査検討会議 を含めた法人化への推移は極めて不透明である。 しかしながら、我が国の学術・研究活動を崩壊させる危機は、依然として去 るどころか、次第にその圧迫度を強めている。 3年間、独立行政法人を進めてきたのは、学問研究に全く関与しない政治家 と官僚だった。大学・研究所がこれまで曲がりなりにも推進してきた、学問研 究・教育の未来を大きく歪める、独立行政法人化に反対する姿勢を今ここであ らためて確認し、自らの手で研究教育組織にふさわしい活動の場を作り上げる 方向の強化を決意しつつ、ac-netの発足を支持したい。」 ---------------------------------------------------------------------- [30-8-3]長谷川浩司氏「Academia e-Network (ac-net) は何をめざすべきか」 http://www.math.tohoku.ac.jp/‾kojihas/yobikake1116.html 「呼びかけ人のひとりである辻下氏は、「発足の趣旨」において以下の2点を 掲げている。 A.近年の大学(および教育一般)の企業化政策の問題(そしてその根幹にある知 的退嬰)、 B.合理精神を育むための知的環境整備としての活動。 日本における長期にわたる高等教育無策は、最近の時限立法である科学技術 基本法によって一部反省されはしたが、国立研究所および国立大学等の独立行 政法人化案が与党の公務員削減合意に由来する経緯にみられるように、現在も 根本は恣意的な決定にゆだねられているというべきである。2001年からの省庁 再編に際して発足する国の総合科学技術会議も、新産業への期待を基調とする。 学問的活動を打出の小槌に矮小化するものであり、高等教育のあるべき姿を歪 ませることが懸念される。 初等中等教育についても、十分な資料に基づく調査検討もないままに、時の 政権が臨時に設置した諮問機関により主要な意思形成がなされ、これを官僚組 織が実行に移すという図式が続いてきた。政財官界の思い付きに発する教育研 究現場の混乱の歴史は長いが、とりわけ現在の文教政策の議論は与野党を問わ ず付け焼刃的なものが多く、憂慮している関係者は多い。 わが国の未来を考えるとき、総合科学技術会議や中央教育審議会をはじめと する政府組織の位置はあまりに大きい。その一方で、この国において中心的意 思決定にあずかる人々の科学的素養を問題にせざるをえない事態が、東海村の 事故原因をはじめとして数多あることは周知である。 現状に対する責任の一端を大学関係者も担っていることは、もちろん否定で きない。学者の国会とよばれる学術会議が十分に機能してこなかったこともそ の一例としてよいであろう。しかし現在の学術の広汎な発展を思うとき、人数 も限られた一会議によって学術教育の全般にわたる健康を保つことには限界も あると考えられる。 こうしたことを鑑みるとき、ac-netの活動は合理的精神に基づく民主的発信 という小さくない意義をもつ。正しい情報を提供する努力、および分野をこえ た啓発に日常の活動を見出すことができるはずであり、すでにはじめられてい るコンピュータネットワーク上の種々の個人的試みを相互にリンクすることが 小さくとも活動の第一歩になるだろう。 このような活動はきたるべき時代を好ましいものとするために必要であると 共に、学術教育に携わる者の日常の教育研究の意義と両立するものと信ずる。 我々は先頃亡くなった高木仁三郎氏の遺志を忘れないような活動としてあるこ とを願うべきであり、冷戦下にはじめられたパグウォッシュ会議の思想と努力 も記憶に蘇えらせるべきでもあろう。 短期の政治経済的価値観に対するカウンターウエイトとして、学問的良心に 基く社会的意思形成の努力が必要である。学術教育について、その自律的長期 的価値を考えるとき、その基本は時の政治経済から一定の距離を置いてしかる べきであり、その将来を議論するにあたり日本では国家行政組織法に基づく3 条委員会のような独立機関を設置することも考えられる。このような構想に対 しても、ac-netの活動は電子アカデミーとして基礎の一つを与えうるであろう。」 ---------------------------------------------------------------------- [30-8-4]辻下 徹「新しい知の共同体に向けて」 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/ac-net/00b/07-tjst.html 日本の大学を襲っている激震の正体は何か。高等教育研究者の天野郁夫氏は、 それを知の企業体への変革プロセスと捉え「アメリカに学ぶべきは、知の企業 体化だけではなく、それに抗して大学人たちがいかに知の共同体性を守り、育 ててきたかであろう。」(「書斎の窓」九月号「二十世紀の大学」)と指摘し た。 大学の企業体化は、知的活動を経済活動の下に制度として位置づける。知的 活動は経済活動に支えられているが、経済活動に組み込まれ手枷足枷を付けら れれば長期的には衰退し経済活動自身も衰える。アメリカに真の知的活力があ るとすれば、企業体化したにも関わらず知的活動を衰退させなかった知の共同 体の強さと、それを支えている個の確立した社会風土・大学財政基盤を強める 税制・潤沢な給付奨学金等の環境に注目すべきであろう。 大学審議会の提言に従って文部省が推進している大学企業体化政策は成功す るだろうか。以下、知の共同体が存亡の危機にあることを指摘し、新たな知の 共同体構築の方向性を提案したい。 大学の企業体化をストレートに実現する試みが、国立大学の独立行政法人化 である。学長は企業の経営技術を活用し国からの運営交付金を元手に「アウト プット」を増やす努力に専念できるが、五年毎の評価に応じて予算削減・学長 更迭・廃校等の処分を受ける。そこまで露骨な企業体化は避けられたとしても、 今年度から始まった大学運営の中央集権化・基盤研究費(実験系では七割)の 競争的研究費への移行・大学評価機構の発足によって、大学の企業体化は既に 粛々と進行しつつある。 この流れに抗して日本の知の共同体はアメリカのように存続できるのだろう か。 昨年、独立行政法人化の話しが現実味を帯びた途端に大学全体がパニックに 陥ったかのように生き残りに向けて走り出した有り様は、知の共同体が風前の 灯火であることを感じさせる。一方、大学の置かれている環境を見れば、アメ リカで知の共同体を支えている社会的・制度的環境は日本では皆無に近い。明 治政府が欧州から輸入した知の諸制度は一世紀を超え現在に到るまで政府管理 下にあり、日本社会には自立した知の共同体が成長する機会はなかった。そし て今、直前の世代が夥しい犠牲の後に遺した、知の共同体建築の足場となるは ずの学問の自由と大学の自治も有害無益なものとして打ち捨てられようとして いる。日本社会は存亡の危機に直面していると言うのは大げさなことだろうか。 しかし、ここに一つの活路が開けている。 十年後には日本の大半の人々がインターネットの世界と接して生きることが 予想されている。経済的・地位的・権力的障壁なしに、誰でも即座に全世界に 発信でき内容に応じた影響力を持つ社会の実現が近づいている。人類が初めて 経験する新しいマスコミュニケーション手段がもらたらす社会の変貌は予想を 超えているが、印刷術発明に匹敵する人類の知的環境の進化が起こりつつある ことは間違いない。自由不羈な知の活動の場が無限に広がることにより、日本 社会は、知の共同体を構築する予期せざる好機に遭遇していると言えるだろう。 自由な知的活動を支え、学術・教育社会と日本社会との直接的インターフェー スを発生・成長させることを目指す「Academia e-Network」設立準備会が 11月15日に発足した。 学問総合ポータルサイトを構築し、学問の進展や現代の諸問題に関する正確 な知識と広い視野を与えるための解説や質疑応答の場等を日常的に提供すると 共に、大学内外の人々が構築している充実したサイトを紹介する。各分野で質 の高い新しいカリキュラムをオープンな場で構築し提供、自由な教育活動の展 開等、知的活動を大学を超えて広く深く活性化させる。 それと同時に、企業化の進む大学において、知の共同体性を守るために大学 を超えた日常的連携を強める。 こういった活動が進化し栄えるとき、社会全体を基盤とする知の共同体が日 本社会に成長し光を放つようになるだろう。(2000.11.18) ====================================================================== [30-9]リッカルド・ペトレラ(北浦春香訳)「教育に忍びよる五つの危険} (欧州委員会顧問、ルーヴァン・カトリック大学教授(ベルギー)) 『ル・モンド・ディプロマティーク』2000年10月号 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1387.html  第一の危険は、教育がだんだんと「人的資源」育成のための手段となり、こ の役割が、人間のための、人間による教育より優先されるようになることだ。  第二の危険は、教育が非商業的な世界から商業の世界へと移行することだ。  第三の危険は、各国が世界的な競争にさらされるなか、教育が個々人の生き 残りを左右する手段のように言われることだ。教育現場は、生きるための素養 (公共の利益を尊重しながら他人とともに生きること)を身につけるというよ りも、戦うための素養(自己中心的に、他人の鼻を明かして成功すること)を 習得する「場」に変質しようとしている。  第四は、技術への教育の従属である。  第五は、教育システムが、新たな形の社会的分断を正当化する手段として使 われることである。 ====================================================================== ◆国立大学独立行政法人化問題サイトの入り口 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/ ====================================================================== 発行者: 辻下 徹 homepage:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/ e-mail: tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp 総目次:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html 登録 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/mg2.html 発行部数 1060 (2000.11.19現在) 内訳:Mag2:597 / CocodeMail:333 / Pubzine:59 /Macky!:37 / emaga:21 / melma:13 その他直送 約 200 /ダイジェスト版直送 約 2000 ===================================================================== End of Weekly Reports No.30 2000-11-20 **この週報は発行者の個人的な意思で行っています** ===================================================================