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国立大学独立行政法人化問題週報

Weekly Reports  No.93 2002.7.2 Ver 1

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━            目       次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-0] 内容紹介  [93-0-1] 知識社会の社会資本  [93-0-2] 拡大しつつある独立行政法人阻止の輪  [93-0-3] 独立行政法人化の本質を見抜く私学 [93-1] オックスフォード大学ルーカス総長の祝辞 [93-2] 神野直彦「人間回復の経済学」(岩波新書 ISBN 4-00-430782-1 ) [93-3] 豊島耕一氏の発言  [93-3-1] 朝日(佐賀)2002.6.19:独法化阻止ネットワーク事務局長インタビュー  [93-3-2] 豊島耕一「独法化容認と「闘い」放棄の思想的背景  [93-3-3] 全国ネットワーク呼びかけ人・賛同者・賛同団体 分野別名簿 [93-4] 毎日:新教育の森 第四部 競争再考 大学大変  [93-4-1] 2002.6.17:突然の国立「非公務員化」/文部省の背信に無力感  [93-4-2] 2002.6.18:「改革派」学長に教員反発/将来像には関心低く   [93-4-2-1] 豊島耕一氏による批判  [93-4-3] 2002.6.19:地方大“冷遇”に危機感/生き残りかけ、地域貢献  [93-4-4] 2002.6.20:難航する教育学部再編/「実情無視」地方は猛反発  [93-4-5] 2002.6.21:県境またぐ合併」迷走/中身より「器」優先迫られ  [93-4-6] 2002.6.24:都立大、知事主導で統合/「非効率」の公立大も危機感  [93-4-7] 2002.6.25:将来像求め地域共闘/単位互換や「出張授業」も  [93-4-8] 2002.6.26:「公平」難しい、第三者評価 [93-5] 野田正彰「国立大法人化という詐術」 [93-6] <大学院重点化は一種の“詐欺”商法>  [93-5-1] 毎日2002.6.19 <国立大学>支出格差 1人当たり最大7.4倍 [93-7] 民主党第2回大学改革WT― 孫福慶大教授よりのヒアリング― [93-8] 中央教育審議会2002/06/25 第11回基本問題部会議事録 [93-9] 北海道新聞社説(2002.7.1) 住基ネット*国会まで無視する独善 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-0] 内容紹介 [93-0-1] 知識社会の社会資本 神野氏は「人間回復の経済学」[93-2]で、到来する知識社会における社会資 本は、人間であるが、それは、少数のエリートの能力ではなく、多くの人々の 創造力と意欲であり、そして、知識社会を支える社会基盤は、人々が創造的活 動への意欲を持つことを可能にする安定した生活と人間の間の共同体的絆であ るという趣旨の指摘し、昨今の行政改革・構造改革が知識社会の到来を困難に することを危惧している。ハンドルを切り直すことは次第に困難になりつつあ る。

[93-0-2] 国立大学独立行政法人阻止 全国ネットワークの輪の広がり 大学内部では諦めが広がっているようだが、京大基礎物理研究所の益川敏英 氏が全国ネットワークの賛同者に加わった[93-3-3]。学外でもようやく独立行 政法人化の深刻な問題点が知られるようになり、全国ネットワークの賛同者に 加わる方が続く。国会議員の間でも独立行政法人化の問題点を理解する方が党 派を越えて増え、中村敦夫議員も加わった。

[93-0-3] 独立行政法人化の本質を見抜く私学  民主党の大学改革ワーキングチーム(座長 内藤正光議員)が、大学関係者 からヒアリングを行っている。慶應大学の孫福教授のヒアリング記録には、国 立大学が私学を越えて営利企業に近づくことを見通した発言がある[93-7]。ま た、東大の卒業式祝辞で、オックスフォード大学のルーカス総長は、日本が、 大学を経済成長の原動力としようとしていることを深く心配している[93-1]。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-1] オックスフォード大学ルーカス総長の祝辞 東京大学卒業式(2002年3月) http://www.u-tokyo.ac.jp/jpn/news/1237/1.html#3 「・・・・ しかしながら、私たちは二つの問題を考える必要があります。第 一に、大学は本当に、経済成長の原動力となることができるのでしょうか。私 は、この期待は過大なものであると考えます。こうした期待は、カリフォルニ アやマサチューセッツにおけるニューエコノミー産業の成長についての、ある 理解に基づくものです。しかし、こうした産業の発展は、さまざまな要因が絡 み合った複合的な現象であり、その中で大学が決定的な要素であったかどうか は、およそ明らかではありません。実際、大学は、産業との間の協力関係がな ければ、重要な経済的エネルギーとはなり得ないでしょう。他方でそこには、 大学をゆがんだものとする深刻な危険が存在します。もし、経済的な理由によ り、大学が応用的研究のみに専心するなら、経済活動に役立つことが明らかで ない純粋な研究は、軽視される危険があります。しかし、すべての応用科学は、 ある意味で純粋科学の革新から出発するものなのです。このことを看過すれば、 大学のもつ創造の力は、損なわれるでしょう。また、科学研究のみが大学の価 値であると考えるなら、健全な大学のもつ学問的なバランスは、深刻に傷付け られることになるでしょう。・・・」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-2] 神野直彦「人間回復の経済学」(岩波新書 ISBN 4-00-430782-1 ) http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4004307821/ 紹介と引用(独行法反対首都圏ネットワーク) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010628jinnonao.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-3] 豊島耕一氏の発言 ------------------------------------------------------------------------ [93-3-1] 朝日(佐賀)2002.6.19:独法化阻止ネットワーク事務局長インタビュー http://mytown.asahi.com/saga/news01.asp?c=5&kiji=279 [93-3-1-1] 豊島氏による記事批評 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/cmnttoAsahiNP.html ------------------------------------------------------------------------ [93-3-2] 豊島耕一「独法化容認と「闘い」放棄の思想的背景 -- 独法化問題をめぐるイデオロギー その2」 2002.6.25 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/ideology2.html ------------------------------------------------------------------------ [93-3-3] 全国ネットワーク呼びかけ人・賛同者・賛同団体 分野別名簿 2002.6.29 http://www03.u-page.so-net.ne.jp/ta2/toyosima/daigaku/znet/meibo1.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-4] 毎日:新教育の森 第四部 競争再考 大学大変 ------------------------------------------------------------------------ [93-4-1] 2002.6.17:突然の国立「非公務員化」/文部省の背信に無力感 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4120.htm ------------------------------------------------------------------------ [93-4-2] 2002.6.18:「改革派」学長に教員反発/将来像には関心低く http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4125.htm ------------------------------------------------------------------------ [93-4-2-1] 豊島耕一氏による[93-4-1]批判 http://www03.u-page.so-net.ne.jp/ta2/toyosima/daigaku/UniversityIssues/ onMainichi020618.html  この文章は,「改革」を進める大学首脳部と文部科学省,これに「教授会自 治」を盾に既得権を守ることしか考えない「抵抗勢力」,そしてその抵抗の手 段になっている「民主主義」,このような図式にもとづいた文章になっている. この図式はまさしく文部科学省系の審議会の諸答申が描く図式である.しかし 実態は本当にそうだろうか.その「改革」というものは本物なのか,そして 「抵抗勢力」と言えるほどの抵抗が教授会に見られるのだろうか.記者らはど の程度大学の,そして教職員の実態を調査したのだろうか.  教室や講座など身近な集団の利益を守ろうとする態度,あるいはそれを至上 のものであるかのように振る舞う習性はそれほど衰えていないかも知れない. しかしそのような傾向や勢力と「改革」との衝突が今日の大学をめぐる主要な 問題なのかどうかということである.小さな集団のそれではなく,大学社会の 共通の利益,あるいは価値観の擁護という点では,むしろ「抵抗勢力」はほと んどその見る影もないというのが現状ではないか.  すなわち,「独法化」に実際はほとんどの教職員は反対しているのだが,反 対決議をあげた教授会はわずかでしかないことから分かるように,全体的な問 題に関しては実際は脅しとあきらめが支配しているのである.あるいは,独法 化を正当化することで,これに抵抗できないことによる心理的ダメージを回避 しようとする傾向もある.新潟大学の学長選に表れた,教授会の人事権剥奪に 対する抵抗は,むしろ健全な「ホメオスタシス」の作動として評価すべきもの であろう.しかし「毎日」はこれを「守旧派」として文部科学省の尻馬に乗っ て,というよりそれに成り代わって責め立てているのである.  この記事はまた,岩手大での学長選挙について「法人化への準備作業を担う 学長選ぶ重要な選挙」という表現で,「法人化」すなわち独法化を当然のこと, 「準備」に着手すべき規定方針であるかのように扱っている.しかし独法化の ための法案は国会で議論もされていない.それどころかまだ法案もない段階で ある.このような国会無視の,言い換えると法律無視の行動に公務員が勤務時 間を使うこと*,そしておそらくこれに公金を支出するであろうこと**を疑問 にも思わない著者の態度は,この国の法制度の基本を理解しているとも思えな い.  独法化とは一体何なのか,本当に大学の「独立」を助けるものなのか,それ とも教育基本法10条に触れるものなのか,もっときちんと分析して記事を書い てもらいたいものだ.ただ時の権力者の意向に沿い,時流に乗った記事を書く というのではジャーナリストとも,プロフェッショナルとも言えない.他の職 業,たとえば大学教員のことをとやかく言う資格もおそらくないだろう.ただ, この筆者らが政府の広報担当を自認するというのならこの限りではないが.」 * 職務専念義務違反 ** 公金の不正流用 ------------------------------------------------------------------------ [93-4-3] 2002.6.19:地方大“冷遇”に危機感/生き残りかけ、地域貢献 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4137.htm ------------------------------------------------------------------------ [93-4-4] 2002.6.20:難航する教育学部再編/「実情無視」地方は猛反発 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4145.htm ------------------------------------------------------------------------ [93-4-5] 2002.6.21:県境またぐ合併」迷走/中身より「器」優先迫られ http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4157.htm ------------------------------------------------------------------------ [93-4-6] 2002.6.24:都立大、知事主導で統合/「非効率」の公立大も危機感 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4175.htm ------------------------------------------------------------------------ [93-4-7] 2002.6.25:将来像求め地域共闘/単位互換や「出張授業」も http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4181.htm ------------------------------------------------------------------------ [93-4-8] 2002.6.26:「公平」難しい、第三者評価 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4192.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-5] 野田正彰「国立大法人化という詐術」 毎日(信濃)2002.6.14 今日の視角  http://www.shinmai.co.jp/news/2002/06/14/013.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-6] <大学院重点化は一種の“詐欺”商法> 『団藤保晴の「インターネットで読み解く!」』(第120回2002/06/25)  http://dandoweb.com/backno/20020625.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-5-1] 毎日2002.6.19 <国立大学>支出格差 1人当たり最大7.4倍 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe4129.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-7] 民主党第2回大学改革WT― 孫福慶大教授よりのヒアリング― (2002/5/22) http://www.mnaito.com/diet_no154/univ_09.htm 「・・・このように大学運営の在り方を一つひとつ見ていくと、有力私立大学 はみなアカウンタビリティーの視点を大切にする「公益組織型」の大学運営を、 他方 国立大学法人は意思決定の効率化を優先させる「企業型」の大学運営を 行うという、ねじれ現象を起こしていることに気付きます。・・」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-8] 中央教育審議会2002/06/25 第11回基本問題部会議事録 教育振興基本計画に関する委員の意見の概要  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/002/020603b.htm #(216個の意見の羅列、大学改革についても多数の意見) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [93-9] 北海道新聞社説(2002.7.1) 住基ネット*国会まで無視する独善 http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/backnumber.php3?&d=20020701&j=0032&k=200207013545 「・・・・三年前、改正住民基本台帳法案の審議で、当時の小渕恵三首相は 「住基ネットの稼働は個人情報保護法の成立が前提」と答弁している。  これを受け、国会は、施行までに政府が情報保護の面で「万全の措置を講じ る」との付則を明記した。  前提となる法案に根本的な欠陥があり、成立が見送られるのだから、ネット の先行稼働など認められるはずがない。不可分なのだ。  にもかかわらず、政府は「個人情報保護法なしで住基ネットが動きだしても、 問題が起きるとは思わない」(片山虎之助・総務相)と、稼働させる構えを崩 さない。  国会さえ無視しようとする。日本の行政はどこまで独り善がりなのか。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 93   編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org 関連ページ:http://ac-net.org