Alternative Mathematics Labo
Alternative Mathematics 談話会 趣旨
現代の数学が基盤とする集合論は、数学的活動の様式の一つである。一世紀ものあいだ数学の世界を支えてきたことは集合論の多産性を証明するものだが、一様式でしかないものが一世紀ものあいだ数学の世界を覆ってきたことのネガティブな影響が次第に無視できないようになってきている。
生成的側面を捨象し幾何学化する集合論の長所が、数学と生命科学との関係を皮相的にしていることはその一例である。有限世界に妥当する古典論理が無限にも妥当するとするヒルベルトの戦略は、無限の重要な面を捨象する副作用がある。しかし、有限とは違う論理が無限の理解には不可欠だとするブラウアーの立場が現代数学の唯一のオルタナティブというわけではない。
1970 年代頃より、自然数概念の唯一性への疑義が多方面から発せられ、現代の学問的状況に呼応したオールタナティブが種々提唱されてきている。それらに共通していることは、有限の質的多様性(すなわち、自然数概念の多様性)を認める点にある。
有限の質的多様性を利用する様式としては超準数学がある。現代数学の内部で展開されたものではあるが、超準数学は二種類の有限概念を認めることにより現代数学の諸理論が著しく初等化されることを明らかにした。これは、有限概念の唯一性を基盤とする現代数学が、数学的内容と不調和な複雑さをもつ様式を私達に強いている、ということを暗示している。
Alternative Mathematics 談話会の趣旨は、今後の数学の健全な発展には、現代数学のオルタナティブを模索することが不可欠である時が来た、との認識に基き、現代数学と互格の潜在力を持つオールタナティブな諸様式について、情報および知見を交換し、現代数学の様式には載らない諸事象への数学的アプローチを模索する場の一つとなることにある。数学者、数学に関心のある他分野の方々、そして学生・院生諸君の参加を歓迎する。(2005.3.22 辻下 徹)