国立大学独立行政法人化の諸問題
総合科学技術会議 科学技術システム改革専門調査会配布資料2002.9.25
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/system/haihu15/haihu-si15.html

総合科学技術会議科学技術システム改革専門調査会
第14回2002.6.7 議事録(案)

http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/system/haihu15/siryo4.pdf

総合科学技術会議科学技術システム改革専門調査会委員名簿

2002.9.25

抜粋:(==> 本文)
産学官連携プロジェクトまとめ案について
  • 市川専門委員[東京工業大学名誉教授]

    ・・・それぞれの大学は自らの使命を規定して、それを踏まえた上で産学官連携に取り組むように,という方がよろしいのではないか。・・・

    ・・・それに関連して25ページ、下の方の(2)の「法人化を早急に図るべき措置」の①に「産学官連携の積極的評価」とあるが、決して一律的に、こういう評価項目を立てて各大学、あなたのところは100点とか50点とかやっていただきたくない。・・・

    ・・・日本の博士課程の学生が使いものにならない理由は、研究室の中で研究労働力化していて、単なる研究の量産というか、改善研究を手伝っているだけで、結果として博士というべきものが「狭士(セマシ)」になっていることに問題がある。・・・とくに心配なことは、日本において教授等が産学官連携に熱心になると、この条文がもとになって、博士課程の学生が動員されることが起こる。そうすると従来にもまして、改善研究に巻き込まれていくことになって、少なくともブレークスルーを生むような研究テーマが提案できる能力をまったく涵養されなくなるのではないかという気がする。・・・

  • 三輪専門委員[独立行政法人農業技術研究機構理事長]

    ・・・寄附講座自体、全面的に否定するわけではないが、例えば私の独法の敷地の中にある農薬会社の研究室ができるというようなイメージでとらえると、要するに産学官連携と癒着というのは絶えず紙一重のところがある。・・・

  • 岩男専門委員[武蔵工業大学教授]

    ・・・同じ2ページで、大学の社会的使命が書かれている。ここは「大学は人材の教育と研究を本来の使命としているが、さらに、その社会的使命として産学官連携を進めることが重要であり、この責任を果たすことが大学の新たな発展につながる」となっているが、論旨に飛躍があるような、もう少し丁寧に書く必要があるのではないか。・・・

  • 青木専門委員[スタンフォード大学教授]

    経済学でも過去10 年間ぐらい、インセンティブの理論が発展して、いろいろな契約や評価のときに、マルチタスクというか、いろいろな任務があるときに特定の任務だけに比較的高い点数をつけると、当然のことながらそこに努力が集中して、とても変な結果が出てくる。数値では評価できないような、本来重要な任務がおろそかになってしまう。社会主義企業が非効率的になって崩壊したのはまさにそういうところにあるわけだから、今、産学官連携が重要な社会的な課題になっていて、集中して議論されていることは結構なことだが、これが行き過ぎるとそういう問題が出てくるので、すごく注意する必要がある。

  • 岸専門委員[独立行政法人物質・材料研究機構理事長]

    それともう一つ、やはり怖いのが、8ページの「産・学・官の役割分担」。これは全体が産学官で、産学官をやる場合の役割分担だが、一番怖いのは「大学は産業界の需要を意識しつつ」で、これがひとり歩きすると見ている。大学は、別に産業界の需要を意識しないでやっても十分いいし、そういう研究の方がはるかにブレークスルーが多いのがわかっているが、ここにもう1行ぐらい、「産学官をやる人にとっては」というようなことを入れないと、ここからこういう文章が出たというのは必ずひとり歩きする。そういうものがそこらじゅうにあるので、この中の分だということをうまく表現できるように注意していただかないと、いつも反発を食うのではないかと思う。


競争的資金制度改革プロジェクト中間まとめ案について (cf:6月19日案)
  • 市川専門委員

    ・・・次は12ページ、13ページのプログラムマネージャーの役割に関してである。プログラム・マネージャーがその上にいるプログラム・ディレクターの下でこういうことをしていくということ自体は賛成だが、評価者の選任とプログラム・マネージャーが独自に評価することも可能とすることに疑問がある。私は自然科学系の場合には余り問題なくこれでやっていけると思うが、心配なのは人文社会学系である。あの世界は洋の東西を問わず、スクールというか学派があるようで、学派に対する目配りがきちんとできるように、言い換えると、プログラム・マネージャーの学派的偏見が表に出ないような仕組みを考えておく必要がある。・・・

  • 石井総合科学技術会議議員
    • 間接的経費と競争的経費の関係

      ・・・間接的経費が、基盤的経費と競争的資金との間の関係をどう構築するかという問題の中で、非常に大きな論点になってくるのだろうと思う。これもこれから増やしていくということを考えると、全体の国の予算の中で競争的資金が伸びていく勢いというか、そのスピード、増加率のようなもののこれまでの状況を考えてみると、そう多くのことは見込まれない。そうすると、間接的経費を余りに増やすことは実質的に研究費の目減りを来すことになりかねない。その辺のバランスを十分に考えておかないと大きな問題になるのではないか。・・・

    • 競争的資金による研究者人件費支弁についての問題

      ・・・日本全体が基本的にパートタイマーを余り正規に位置づけていない社会の中で、大学の先生全体をパートタイマー化できるのかという非常に大きな問題がある。これは先ほど第一の問題として申し上げたこととの関係で、研究と教育をいわは制度的に分けてやっているアメリカの割り切り方が日本に持ち込めるのかという非常に根本的な問題がある。技術的にも例えば年金とか社会保険との関係でそういう扱いをすることが、日本の社会システム全体がフルタイム雇用が原則である中で、社会的正義に反するようなことを生みはしないかという危険は十分に考えておかなければならない。・・・



総合科学技術会議科学技術システム改革専門調査会第14回議事録(案)
1.日時:平成14年6月7日(金)10:00〜12:00
2.場所:中央合同庁舎第4号館共用第4特別会議室
3.出席者:嘉数知賢大臣政務官
【委員】井村裕夫会長、石井紫郎議員、青木昌彦委員、市川惇信委員、岩男寿
美子委員、小野田武委員、岸輝雄委員、岸本忠三委員、佐々木元委員、三輪睿
太郎委員、矢崎義雄委員、山下義通委員


【事務局】西村参事官、三浦参事官
4.議題:

● 産学官連携プロジェクトまとめ案について


● 競争的資金制度改革プロジェクト中間まとめ案について(cf:6月19日案)


5.議事要旨

●産学官連携プロジェクトまとめ案について

○井村会長 ただいまから第14 回科学技術システム改革専門調査会を開催しま す。資料の確認を事務局から。 ○三浦参事官 (資料説明) ○井村会長 本日は産学官連携と競争的資金の両方のレポートについて御審議いただきたい。 両レポートとも内容はまだ検討途上で、修正を要するところもあろうかと思う ので、本日の会議は非公開にさせていただきたい。 では最初に、産学官連携レポートから。産学官連携の推進については、昨年 8月3日に産学官連携プロジェクトを立ち上げ、NECの佐々木会長に座長を お願いして検討を進めてきた。その結果、産学官連携の基本的考え方と推進方 策としてほぼまとまりつつあるので、これについて最初に佐々木座長から一言 御説明いただき、その後事務局から内容について説明をする。 ○佐々木専門委員L[日本電気株式会社会長] 去る6月5日、第15 回プロジェクト会合を開催して、現在レポートがほぼま とまりつつある段階。本レポートの内容においては、産学官連携プロジェクト において座長一任を頂戴して、現在、修正作業をしている段階。本席において、 産学官連携の基本的考え方と産学官連携を進めるための具体的方策につき、で きるだけ具体的にまとめていきたいので御議論、御審議をお願いします。 ○井村会長 それでは、事務局から説明を。 ○三浦参事官 (資料1−1、1−2に沿って説明) ○井村会長 5日のプロジェクト会合でいろいろ御議論いただいたが、それはまだ修正でき ていない。したがって資料1−2にその主要な論点、5日に問題になった点を 書き出している。本日は特に論点のところが中心になるかもしれないが、全体 にわたって御意見があればお伺いしたい。 ○市川専門委員[東京工業大学名誉教授] 産学官連携における大学の役割が、大学の使命という形で2ページに書き込ま れたのは、前に比べて改善につながると思うが、私はまだ気になるところがあ る。 以前,ここでMITの経験がリタ・ネルソン氏から紹介されたが、あのとき非 常に重要なことが2点指摘されたと受けとめている。1つは産学官連携は本質 的には個々具体的でデリケートなものであって、そこに国とか州が一律に介入 すると必ずしもうまくいかなくなること。2つ目は、MITとしては産学官連 携をするに当たっての大学自らの使命としてロングレンジ・ディスカバリー・ リサーチを大切にする、それは崩さないこと、をおっしゃっていた。 私はこの2点、前者の国及び州で一律なシステムを押しつけないことは大事だ と思っているが、この案を拝見すると親切なことが書かれていて、いつも同じ 言葉を使って恐縮だが、ある種のパターナリズムが見える。こういうものはで きるだけ減らしてた方が、それぞれの大学がそれぞれの判断でデリケートな問 題が処理できるのではないかと思う。これは案全般にわたることである。 大学の使命に関して、2ページの大学の社会的使命のところで「大学は人材の 教育と研究を本来の使命としているが」と、当たり前のことがさらっと書かれ ている。それに続いて、産学官連携の責任を果たすことが新たな発展につなが るということになっている。ここではもう少し踏み込んで、それぞれの大学は 自らの使命を規定して、それを踏まえた上で産学官連携に取り組むように,と いう方がよろしいのではないか。すなわち、教育・研究と言ってもいろいろあ る。非常に力があってブレークスルーを生む能力のある大学は,MITのよう にブレークスルーを生む研究をやるのだという言い方ができると思うし、教育 にしても、ブレークスルーを生むテーマ設定能力のある博士課程学生を出して いくのだという規定もあり得ると思う。そうでない大学もあるだろう。それぞ れによって基本的スタンスが変わってくると思うので、それができるようにこ こに記入していただきたい。 それに関連して25ページ、下の方の(2)の「法人化を早急に図るべき措置」の ①に「産学官連携の積極的評価」とあるが、決して一律的に、こういう評価項 目を立てて各大学、あなたのところは100点とか50点とかやっていただきたく ない。いうまでもないと思うが、いわゆる科学とか技術の面で大変なブレーク スルーを出して、ノーベル賞学者もたくさん出している大学で、必ずしもここ で言っているような産学官連携に熱心でないところはアメリカにも幾つかある。 それはそれで評価すべきである。すなわち、1項目ブレークスルーを生んでい ることが100点満点の大学が、産学官連携とかいろいろな項目でそれぞれ50 点しか採っていない大学に負ける様な評価をしてもらいたくない。先ほどの話 と関係するが、大学として自らの使命をはっきり打ち出した上で、その達成を 見ていただきたい。「やみくもに」と言うと失礼かもしれないが、産学官連携 を一律に評価項目に入れるのはいかがなものかという気がする。 3つ目は、26ページの「大学院生の参画」である。日本の博士課程の学生が使 いものにならない理由は、研究室の中で研究労働力化していて、単なる研究の 量産というか、改善研究を手伝っているだけで、結果として博士というべきも のが「狭士(セマシ)」になっていることに問題がある。博士課程の学生の大き な責務は、ブレークスルーを生むような研究テーマの提案ができるような教育 を受けることにある。このことは必ずしも産学官連携とはリンクしていない。 とくに心配なことは、日本において教授等が産学官連携に熱心になると、この 条文がもとになって、博士課程の学生が動員されることが起こる。そうすると 従来にもまして、改善研究に巻き込まれていくことになって、少なくともブレー クスルーを生むような研究テーマが提案できる能力をまったく涵養されなくな るのではないかという気がする。 4つ目は,議論があった28ページのインブリーディングの問題である。これを 拝見すると、インブリーディングをなくす、人を混ぜることが目的化している ように見える。確かに、アメリカで大変業績を上げている研究組織・大学等を 見たときに、インブリーディングを防ぐようないろいろな取り決めをしている 大学がある。しかしそれには理由がある。インブリーディングをすると改善研 究的になる。改善研究は労働力の量がパワーになる。ところがブレークスルー を生むことになると、同じ背景を持っている人は何人いても、その中の最も優 秀な人1人と等価である。したがって、ブレークスルーが評価される社会であ れば自然にいろいろな背景を持った人が混ざってくることになる。したがって ここでは、手段を目的化することなく、背景の異なる人を集めてブレークスルー を生み出さないと大学の評価が下がっていくような大学評価システムを設定す ることが先決ではないか。 なお、ここで数値目標70%と掲げられているが、これでは、幾つかの大学がファ ミリーあるいはクラスターになって、相互了解のもとでローテーションをする ことが起きる。私は現在もそれはあると思っているが、それがますます進むわ けで、先ほど言ったような本来の目的達成に対してかえってマイナスが出てく るのではないか。 ○井村会長 ありがとうございました。いずれも大変重要な指摘だと思う。特に、どうして も産学協力を推進していきたいという視点に立ってまとめているので、本来の 大学の使命という点でやや筆が足りないところがあったのではないかと私も少 し感じていた。この辺ももう少し検討はしたい。 ○岸本専門委員[大阪大学長] 大学が法人化されて教職員が非公務員になる、そういう点で産学官連携、産業 界あるいは大学両方を活性化させる1つの橋渡しとしても非常に重要な部分は 寄附講座だと思う。資料2に、これは前へ持ってきて全体として書くというこ とだが、非常に重要なものだと思う。アメリカの大学ではチェアプロフェッ サー、寄附講座の教授が一番値打ちが高い。名前のついている教授が値打ちが 高い。ところが日本の今までの寄附講座は、教授は肩身の狭い非常勤職員になっ ている。今度、教職員が非公務員型になればこれは身分は同じことになるし、 大学としては、そういう形で定員を増やすことも出来る。今までは公務員であっ て定員が決まっていて、それにお金が来たわけだが、これからはそうではない としたら、どれだけたくさんの寄附講座を持ってくるかが、大学を発展させて いくために非常に重要なことになるだろうと思う。だからここの制度をアメリ カ的に、それをもらうことが名誉なことなのだという方にもっていくようなこ と。例えばハーバード大学はそのお金が今、日本円にすると2兆何千億円たまっ て、それをもらうような人は、そのお金を月給に使わないで、グラントの方か ら月給をとるので幾らでもたまっていく。そういう部分をある程度強調して書 いていただいたらいいのではないか。 ○井村会長 確かに寄附講座というので、あるイメージができ上がってしまっていて、その イメージのネガティブな面に対して意見が出た。本来は先生が言われるように、 大いに利用してやっていくべきものだが、何となく割とネガティブな肩身の狭 いイメージができ上がっているところが問題だろう。 ○三輪専門委員[独立行政法人農業技術研究機構理事長] 寄附講座自体、全面的に否定するわけではないが、例えば私の独法の敷地の中 にある農薬会社の研究室ができるというようなイメージでとらえると、要する に産学官連携と癒着というのは絶えず紙一重のところがある。それでいろいろ な気を遣って、お互いの役割分担の尊重等と書いてあるが、ちょっと気になる のは8ページの(3)に「産・学・官の役割分担と連携」が新しく加わったこと。 そこで大学は探索、国研は実用化、その上で企業の研究開発が行われるという ような書き方がされているが、こういう書き方は非常に硬直的だと思う。研究 開発自体、こういう序列が余りなくて、どこでだれが先にやってもいい。ただ、 責任が違うと思う。国立大学は国民あるいは学生に責任を持つ、国研は国民に 責任を持つ、企業は株主に責任を持つのだから、その責務の違いはしっかり堅 持するという書き方をしていただいた方が、むしろ癒着なしに連携が進むと思 うので、御一考いただければ。 ○井村会長 何ページだったか。 ○三輪専門委員 8ページの(3)に「産・学・官の役割分担と連携」が加わったが、この文章、 やや誤解を招くような感じがする。 ○井村会長 再検討したい。 ○矢崎専門委員[国立国際医療センター総長] マッチングファンドに関して、これは産学官の将来に一番重要なテーマの1つ ではないかと思う。現在、普通行われているのは受託研究という形で大学側が 民間企業からの研究を委託して受けているが、これからのマッチングファンド はそういうレベルではなく、もう少し大きなプロジェクトでマッチングファン ドを行うということではないかと理解している。 その場合に、幾つかのページにマッチングファンドについての記載がある。例 えば6ページにある経済産業省のモデルケースだが、そのマッチングファンド 型の研究費、それから文部科学省のマッチングファンド方式の研究費がある。 実際にこの中身を見ると、大学の研究者が申請して、そのとき同時に企業サイ ドがこのぐらいで共同研究をするという契約書のようなものがあるが、その実 体がはっきりしていないところが、現実的にはある。実効あるマッチングファ ンドになっているのかどうかという疑問がうかがえた。 4年ほど前に、例えば旧通産省と旧科学技術庁がお互いに企業と大学の申請書 を出してそこでマッチングする、そうすると本当にいいマッチングができるの ではないか。その場合には100%企業からの資金で云々というよりは、国から 民間にも国の研究費がある程度いくような形にすると、企業サイドからマッチ ングファンドに積極的に参加しようというインセンティブがあった。 今の段階では、大学の申請書に受託研究よりももう少しマイナスかなというの は、10 ページの下にあるが、「企業資金の提供を前提として国の資金を」と いった場合に、企業が企業の中で行う研究と国が支援したり大学の中での研究 が同時並行で行われるのがマッチングファンドのような実情になっているので はないかと思うので、その辺を企業側が研究資金を一部得られるようなインセ ンティブを与え、そして両方でプロジェクトを持ち合ってというのが理想的な 姿ではないかと思う。そのときには、御議論にあるように、特に生命工学、情 報学等は省庁の縦割りを十分排除して、全体でマッチングファンドを育てるよ うな仕組みをぜひ考えていただきたい。それに関する記載が少し足りないので はないか。このままでいくと、受託研究かそれぞれの研究が帳面上合わさった ような形になる可能性があるので、少し考えていただきたい。 ○井村会長 わかりました。文部科学省のマッチングファンドは今年が初めてで、どういう 応募があるか、我々も内容はまだ全然見ていない。だから、先生がおっしゃっ たような危険は確かにある。本当に両方が融合して一緒に仕事をすることによっ て成果を上げるものでないと、形式的に1つになっているだけではだめで、本 当のマッチングではない。その辺はどういうプロジェクトが出てくるのかを気 にしているが、現在審査中だと思う。先生も関係していますか。 ○矢崎専門委員 レビューをして痛切に感じた。 ○井村会長 わかりました。 ○小野田専門委員[日本大学総合科学研究所教授,元三菱化学顧問] これまで議論していなかった部分で、改めて読み直して行くとちょっと不揃い なので気になる点がある。28 ページから29 ページにかけての「産業界におけ る人材交流の活性化等への取組み」の部分。①に書いてございますように、日 本の場合には博士取得者の産業界への移動というか、就職が大変少ないのも大 学の最新の知的レベルの産業界へのトランスファーのウィークポイントになっ ている。この御指摘は当たっていると思う。その後に、i)からiv)の小項目が あるが、この中で突然、一般的な就職問題まで混乱した形での記載になってい るので、むしろこの辺はドクターコース修了者だけに限っての問題点を記入さ れた方がいいのではないか。一般的な就職問題までここで議論するともっと大 きな別の問題が出てくると感じた。 また、せっかくだからこの項目に、先ほど市川先生から御指摘があった日本の 博士課程の教育というか研究というか、この問題についても一言触れておくこ とが企業側に受け入れを大いに促すためには必要なことではないかと感じた。 ○井村会長 ありがとうございます。ほかに。 ○岩男専門委員[武蔵工業大学教授] 私は自然科学の分野の人間でないので、人文科学の立場から見て見当外れなこ とを申し上げるかもしれないが、まず冒頭で産学官連携の必要性が書かれてい る。そこを読んでも、例えば新しい技術を開拓してそれを実用化していく、あ るいは新しい製品・サービスを作り出していくと書かれているが、もう一つ大 きな目的というか、例えば社会の持続的発展に資する、あるいはより多くの人々 の幸せに資する、日本の役割とか、もう少し大きなレベルでの目的がなくてい いのかという感想を持った。 同じ2ページで、大学の社会的使命が書かれている。ここは「大学は人材の教 育と研究を本来の使命としているが、さらに、その社会的使命として産学官連 携を進めることが重要であり、この責任を果たすことが大学の新たな発展につ ながる」となっているが、論旨に飛躍があるような、もう少し丁寧に書く必要 があるのではないか。というのは、これはもちろん産学官だけが焦点になって いるが、ここで出てくる技術とか製品、サービスは、ユーザーであったり患者 であったりという一般の人々の幸せにつながるようなものであるはずで、その 辺の視点がここにもう少し入っていないと、大学の社会的使命は随分狭いよう に受けとめられるような感じがする。 先ほどから御指摘のあった29 ページの「産業界における人材交流の活性化等 への取組み」だが、社会科学の領域でも最近、社会人が大学あるいは大学院に 入ることが非常に多い。恐らく修士だけで企業に就職した人たちがたくさんい ると思うが、そういう人たちが新たに大学院に入ってきて勉強し直す、そして さらに視野を広げるという、先ほどの「狭士」ではなくて広い知識を身につけ た人になるというような、もう少し基本的なところもここに入れる必要がある のではないか。 ○井村会長 わかりました。最初におっしゃった点は、科学技術基本計画にはかなり書き込 んであるが、ここではその辺の書き方が足りないというのは確かにそのとおり。 大学の使命については、先ほど市川先生も指摘された点で、書き方を少し検討 する必要があると思う。 ○青木専門委員[スタンフォード大学教授] 先ほど市川先生のおっしゃった論点をほとんど全面的にサポートしたい。その 中で特に市川先生がおっしゃった多様性の尊重ということから産学連携の取組 みを積極的に評価するというところの表現、25 ページだが、そこは注意する 必要があるという御意見だった。これは大変重要。 経済学でも過去10 年間ぐらい、インセンティブの理論が発展して、いろいろ な契約や評価のときに、マルチタスクというか、いろいろな任務があるときに 特定の任務だけに比較的高い点数をつけると、当然のことながらそこに努力が 集中して、とても変な結果が出てくる。数値では評価できないような、本来重 要な任務がおろそかになってしまう。社会主義企業が非効率的になって崩壊し たのはまさにそういうところにあるわけだから、今、産学官連携が重要な社会 的な課題になっていて、集中して議論されていることは結構なことだが、これ が行き過ぎるとそういう問題が出てくるので、すごく注意する必要がある。 私が今属している独立行政法人経済産業研究所が1年目なので、第1回評価委 員会が5月にあった。そのときに中期目標をどれだけ達成しているかに関して いろいろな任務があるわけだが、事務局から各任務に関して点数をつけて、そ れをまたウエートづけして点数をつけるというプレッシャーがあった。ところ が評価委員会は行政側ではなくて完全に民間の側でつくられた委員会で、それ にたいして大きな批判があった。特に研究所というような任務を数値目標で評 価することはできないのではないかということで、そういう評価はやめること にしていただいたが、そういう危険性があると思う。 1週間前だったか、日本経済新聞の経済教室に総務省の方だと思うが、今の独 立行政法人の評価において数値目標が少ないという論文を書いておられた。数 値的に評価できる部分はするにこしたことはないが、それがひとり歩きすると、 そういうところだけに努力が集中することになって、先ほど市川先生がおっしゃ られたように、例えばブレークスルーを目指すような学部、あるいは教育だけ に専念する学校があってもいいと思うので、評価の多様性はぜひ留意していた だきたい。 それと関連して、これはもう既に出ているので言うまでもないことで、もう一 度念を押しておきたいが、教授・助教授に関する数値目標も同じで、そこがひ とり歩きすると、せっかくの日本における教育・研究の水準を向上させること と逆行することにもなりかねない。 もう1点だけ、先ほど岸本先生からも寄附講座の問題が出て、これは大変重要 な問題。岸本先生がおっしゃられたように、アメリカでもエンダウドチェアが 普通のプロフェッサーシップより位置が高い。ただし少し気になるのは、今ま では産側が関与できないようになっているとコメントに書いてあるが、そうす ると、産が寄附講座に関与するべきととれるが、これも注意する必要があると 思う。アメリカでも寄附講座を寄附するときには、例えばイスラム法学の寄附 講座あるいは半導体分野の寄附講座という形で分野は指定できるが、その教授 をどのように選択するかは完全に大学の自主性に属することなので、そこは、 産側が関与することになると、産学の変な癒着が出てくる可能性もあるので、 ここの取扱いも注意していただければと思う。 ○小野田専門委員 25 ページの「産学官連携の積極的評価」について、市川先生と青木所長から の御意見があったが、私は逆のとらえ方をしている。 今、大学等のいろいろな評価がいいという前提に立っての御議論のような感じ がする。むしろ私は、今の大学の評価が多様性を欠いている、だからこそ多様 性を増やすためにこういう評価も大事であるというのが基本ではないか。多少 言葉が足りないが、むしろそういう姿勢で理解していただくことが、ここの部 分については大事なのではないかと感じているので、そういう意見もあると受 けとめていただければ。 ○井村会長 ここは少し書き方の問題でもある。確かに、大学評価機構ができて大学評価が 施行されているが、非常に多くの項目について採点する。そうすると平均的優 等生をつくる方向に動いてしまう。これは非常に大きな心配。極めて特徴のあ る大学は、そういう形でやると非常に悪い評価を受けてしまうことになるので、 この点はよく考えなければならない大きな問題。 ○岸専門委員[独立行政法人物質・材料研究機構理事長] 今のことにも関係するが、多様性のとらえ方は非常に難しくて、数値目標を余 り挙げてはいけないというのは非常によくわかる。ただ、その組織の現状の力 によって変わる。例えば論文を幾つか書けというのは実にくだらない、質だと いうことは一方でわかる。しかし、それがとても少ないところもある。そうい うところでは、目標として年に1本書きましょうというのが必ず出てくる。だ から、一概に数値目標が悪いというのがすぐ出てくることに、私は非常に疑問 があるので、それを含めて諸先生方は多様性と言われていると理解はしている が、必ずしも数値目標をやめてしまうことがいいとは思っていない。 それに関連してもう一つ、インブリーディングは私もこの前から少し考えてい たので、70%というのがおかしいという話はたくさん出ている。少し気になっ て反論したわけではないが、70%を消すということには賛成。先日行ったケン ブリッジでも、最終的にケンブリッジ出身の教授が70%いる。全部外に行った 後戻ってきたら、ほとんどケンブリッジ出という。だから、いい大学でそうな るのは当たり前の話。しかしそれを消すことに努力してしまって、純血主義の インブリーディングの問題が弱まってしまうことを非常に心配している。うま く書いていただかないと、超一流のところの多様性ということだけで、全体を 上げることも必要であるということを忘れてしまわないようにうまい表現が必 要であると実感している。 それともう一つ、やはり怖いのが、8ページの「産・学・官の役割分担」。こ れは全体が産学官で、産学官をやる場合の役割分担だが、一番怖いのは「大学 は産業界の需要を意識しつつ」で、これがひとり歩きすると見ている。大学は、 別に産業界の需要を意識しないでやっても十分いいし、そういう研究の方がは るかにブレークスルーが多いのがわかっているが、ここにもう1行ぐらい、 「産学官をやる人にとっては」というようなことを入れないと、ここからこう いう文章が出たというのは必ずひとり歩きする。そういうものがそこらじゅう にあるので、この中の分だということをうまく表現できるように注意していた だかないと、いつも反発を食うのではないかと思う。 ○井村会長 わかりました。 ○山下専門委員[イノベーション戦略研究所所長] 私も産学官プロジェクトのチームに入れていただいているので、細目について は議論にかかわったからそういう責任もあるが、今日は先生方の御出席が多く て産業界の方は余りいないので、私は産業というか経済の現場に関与している 立場から御意見を申し上げたい。 ここに書いてある産学官連携の基本的考え方のまたその背景の話だが、今の日 本の経済の現状は、いろいろな見方があると思うが、私としては大変な状況に あると思う。国債の評価がまた下がったことはいろいろ御異論もあるが、そう いう見方も一面の真理を持っている。私は政府内部の行政の方あるいは政治家 とのおつき合いもあるのでいろいろ伺っていると、実態は大変な状況にある。 国債の評価が上がる要素はほとんどないのではないか。財政は全く悪い状況に あるし、産業界の方も全く元気がない。経済の回復はどこをきっかけにするの かというきっかけがなかなかつかめない。はっきり申し上げれば、円安頼み・ 輸出頼みの漂流をしているような経済で、産学官連携という基本的な考え方も そういう状況から見て、今まで科学技術、特に自然科学の開発について産業界、 学界あるいは行政が本当に知恵を合わせて、国の経済のために、これは国民の ために十分な協力をしてきたかどうかということを反省してみると、アメリカ に比べて大変ばらばら。そういう背景にあって、産学官連携は言葉よりももっ と深い意味において、知恵を合わせるという意味で、何とか知恵を合わせて実 行して完成する。せめてそういう形で科学技術をドライバーにして経済の回復 を行うことは緊急の問題で、これが4年か5年、日本の経済がもつかどうかは わからない。もう2〜3年で沈没してしまうかもしれない。こういう状況にあ るので、今日の御議論の中でいろいろ細目はあるが、とにかく早くこういうも のをまとめて実行していくことが大変だという、現場の意見として申し上げて おきたい。 ○井村会長 いろいろ御意見をいただいた。確かにナレッジ・ドリブン・エコノミーとブレ ア首相が言っているが、これからの経済は多分に科学に基づいて発展していく だろう、あるいは科学がそれを引っ張るだろうという時代になっていて、産学 連携は世界中のどの国でも非常に力を入れている。その点、日本はかなり遅れ たのは間違いがない事実。したがって、これを推進することは非常に重要だと 思うが、同時にまた、その先進国であるアメリカの産学連携でもいろいろな問 題を生じているところは間違いがないことで、そういう点はできるだけ、前者 があるので、その轍は踏まないようにしながら、うまい連携を進めていくこと が必要だろうと考えている。今日いろいろ御指摘いただいた点も主としてそう いう点ではないかと思う。 これから後の修文だが、佐々木座長にお願いして、今日のいろいろな議論も踏 まえ、あるいはこの間のプロジェクトの議論も踏まえて最終的な修文をしてい きたい。そうした修文をした上で、総合科学技術会議の本会議がこの月の中・ 下旬あたりに持たれることになると思うので、それに出す文案については私に 御一任いただければありがたい。よろしいですか。ありがとうございました。 それでは佐々木委員、よろしくお願いします。 ○佐々木専門委員 井村会長とよく御相談して進めさせていただきたい。

●競争的資金制度改革プロジェクト中間まとめ案について

(cf:6月19日案) ○井村会長それでは次の議題。競争的資金制度改革プロジェクト中間まとめ。 これについても6月5日に議論した。これもいろいろな意見が出て、まだまと まるところまでいっていないが、今日はまず事務局から現状を説明していただ いて、できるだけいろいろな御意見を伺いたい。では事務局から、お願いしま す。 ○西村参事官 (資料2に沿って説明) ○井村会長 日本の競争的資金の在り方については、一昨年、自民党の科学技術創造立国調 査会の中に科学技術評価小委員会ができて、アメリカに調査に行ったりして報 告書が出ている。そこで日本の競争資金の在り方についての問題点が指摘され ている。そういうものも参考にしながら改革案をまとめた。 御承知のように、日本の競争的資金はまだアメリカの10 分の1ぐらい。しか し、アメリカは人口が日本の2倍ある、競争的資金の中に給料が入っている。 そういうことを勘案すると、事実上は日本の3.5 倍から4倍ぐらいという気が している。給与の割合が、NSFは40%というのはわかっているが、NIHに なるともう少し低いようで、正確にわからないので大体そのぐらいまで増えて きているという気がする。従来はこれが非常に少なかった。その少なかった時 代につくられた仕組みがそのまま現在までほぼ続いている。そういうところで こういう改革案をまとめた。しかし、細部にわたってはまだいろいろな問題点 が残されていると思うので、今日はぜひ率直な御意見を伺って、またこれを修 正したい。 ○岸専門委員 ちょっと理解できなかったが、8ページから9ページで、研究従事者というの はポストドクター、大学院生、技術者と定義されているがが、9ページの研究 者本人というのは、例えば教授のような人を指すと考えてよろしいのか。 ○井村会長 これはそういうこと。 ○岸専門委員 そうすると、これは非常に大きな問題が9ページの部分に含まれている。アメ リカのように教育で9カ月お金を出して、大まかに言うと残り3カ月を研究費 から出すという場合も多い。そのときにはすっきりと理解できるが、それを含 めた給与体系ができ上がってから考えようという文章と考えてよろしいのか。 ○井村会長 そうですね。現在は大学の先生方は公務員だから、研究費からもらうというの はまた非常に問題がある。しかし、これから非公務員型になって独立行政法人 化すると、ここはかなり弾力的に運用できる。それを視野に入れながら検討し ましょうということを書いている。 ○岸専門委員 ただ、今のところこれがひとり歩きすると非常に混乱してしまうことが非常に 心配。まさに井村先生が言われたように、1.5 兆円ぐらいの競争的資金ができ た段階で考えるならわかるが、現在これをもしすぐ導入等をしてしまうと、現 在の給料をそちらで出してしまってプロジェクトが終わったときに一体どうす るのかとか、非常に心配な問題がたくさん出てくる。それを含めて検討すると 理解していればいいのかどうか。 ○井村会長 その方向を示していると御理解いただければいいと思う。 ○岸専門委員 その場合も非常に重要なのは、今の競争的資金の額ではとてもこういうことは やれなくて、現状は不可能であることもどこかにないと、非常に大きな問題が ひとり歩きしてしまう。この前も申し上げたが、全くアメリカをモデルにでき ない一番のところだと思っているので、よろしく御配慮いただきたい。 ○市川専門委員 幾つか指摘させていただきたい。最初に、細かいことのようで大事ではないか と私が思うのは、「ポストドクター」という呼び名である。どうしてこういう 呼び名になったのか。例の10ケ年計画以来かもしれないが、もともとの言葉は、 アメリカでもヨーロッパでもポストドクトラル・フェローである。このフェロー という意味がかなり社会的な認知の上で大きな意味を持っている。あくまでも 研究者の仲間を意味する。ところがポストドクターとしてしまうと、何となく 大学院学生の延長のような、育成期間中という認識になるので、ぜひフェロー という意味、すなわち研究者であって、しかしまだ武者修行中であることがわ かるような名称に変えないと認知が悪いと思う。 小泉首相からは横文字をやめるようにという御指示があったそうだから、これ を機会にポスドクをポストドクトラル・フェローと直すのは御都合が悪いとす れば、しっかりした日本語を考えていただいた方がいいのではないか。 次が4ページ。いわゆるエフォートの話が出てきているが、これは大変結構な ことで、日本の研究者の数を勘定するときにフルタイム・イクイバレントが計 算できないという惨めな状況にあることの改善にも役に立つわけで結構だと思 う。しかし、これを実行するときに、一律の就業規則を決めておいて、それに 従ってエフォート区分をするのではなく、教員一人ひとりが大学と契約する形 で、その契約書の中にエフォートが書かれる。すなわち教育には週何時間、産 学官連携には何時間、あるいは競争的資金を得た研究に何時間という契約条項 としてやっていく方が明快かつ明示的になると思う。 したがってこのことも、先ほどの岸委員のご発言にもあった人件費を支出する ことと同様に、大学の人事管理のシステムが見えてきた時点でよく考えていた だいたい。人件費については岸委員の御発言に全面的に賛成である。 10ページ、若手の自立の問題。私は趣旨としては非常に賛成で、結構なことだ と思うが、「助手」という呼び名をやめた方がいいのではないか。もし自立し て研究がやっていけるような人であるならば、それは助教授にすればよろしい。 たしか野依先生は20代で助教授になられたと伺っているが、数は少ないがそう いう方も過去にはいる。これからは定員管理がないわけだから、どんどん自立 していることがわかる姿にすることが適切で、助手を自立させるという表現で ない方がよい。したがって、これも先ほどの大学における人事管理、大学にお ける職員の職位の問題を検討した上で、それとの関連で考えてもらった方がよ ろしいのではないか。 次は12ページ、13ページのプログラムマネージャーの役割に関してである。プ ログラム・マネージャーがその上にいるプログラム・ディレクターの下でこう いうことをしていくということ自体は賛成だが、評価者の選任とプログラム・ マネージャーが独自に評価することも可能とすることに疑問がある。私は自然 科学系の場合には余り問題なくこれでやっていけると思うが、心配なのは人文 社会学系である。あの世界は洋の東西を問わず、スクールというか学派がある ようで、学派に対する目配りがきちんとできるように、言い換えると、プログ ラム・マネージャーの学派的偏見が表に出ないような仕組みを考えておく必要 がある。 次は14ページ、競争的資金の年度間繰越である。これは非常に大切なことだと 思う。これはあるいは質問になるのかもしれないが、これが課題ごとに繰越明 許をするという形で決着すると大変なことになる。繰越明許という制度はある ことはあるが、あれを適用してもらおうと思うと、繰越がまことにやむを得ざ る事情があって云々と大変な手続が要る。それを仮に制度ごと、科研費なら科 研費という制度、あるいは機関ごと、大学なら大学という形で一般的な理由で 適用されるのならいいが、そうでないとすると、これは非常な負担を研究者に かけることになる。そして、その負担に見合うような円滑な運用ができるかど うか疑問なので、その辺も含めて御検討いただきたい。 ○井村会長 ポストドクターは正式にはどういう名前になっていたか。正式な名前がポスト ドクターになっているのか。 ○西村参事官 その点は正確にお答えできない。 ○井村会長 ちょっと調べてみる。確かにポストドクターはオーバードクターのような感じ がするといって反対も出ていた。正式にどういう名前でつくったか、私も忘れ たので調べてみたい。 プログラムマネージャーの件については、そういう危惧も一部の人から出てい るので、アメリカでもNIHはプログラムマネージャーはそういう権限を持っ ていない、ピアレビュアーが決定する。NSFは若干権限があるようだ。それ とDARPAでは、非常に強い権限を持っている。いろいろある。どの辺が一 番適切かは書き方を工夫したい。 繰越ができると非常にいいが、現在の会計法の制約があって、これがどこまで できるのか。プロジェクトごとの繰越明許は複雑な手続だけになってしまうの で、私も全くだめだと思う。もう少し大枠で繰越明許ができるかどうかという あたりが、これからの交渉の課題であろうと思っている。これができると、例 えば研究費の募集を年に1回にする必要はなくて、年2回ぐらいに分けてやれ ば1回1回の審査の数も少なくなるし、落ちた人も半年したらまた応募できる というメリットもあるので非常にいい。しかしそのためには、どうしても研究 費全体が繰越できなければいけないので、これはあちこちから改善を求められ ている大きな課題。 ○佐々木専門委員 前回の議論に参加していなかったので、既にここで取り上げられた内容かもし れないが、3点ほどコメントさせていただきたい。 まず、7ページのⅢのすぐ下の資金配分の段落。そこに「科学的・技術的に価 値の高い」と書かれているが、確かに事前評価の段階での価値の定義がどうい う見方でなされるのかというのもなかなか難しいのではないかと思う。例えば 新規性、将来性、あるいはその学問分野における影響力という幅広い評価が必 要なのかなという気がしているので、この辺でどういう議論があったかという のが第1点。 第2点は13 ページの、中間評価及び事後評価。例えば民間の研究助成金等も 含めて研究を遂行した場合にどういう評価をするのか。この部分は国のお金で、 この部分は民間のお金ですという色分けをあえてしてまでこういう評価が適切 なのかどうかという、これからは特にマッチングファンドが増えてくるとそう いう形態も出てくると思うので、その辺がどういう議論になっているかという のが2点目。 最後、14 ページの(3)の最初の段落。これをさらに弾力化することは非常に結 構だと思うが、そこでどれだけ効率的な活用を図るか、そういう費用のことも 重要だと思う。特にネットワークの利用料などについては多様なサービス形態 が導入されているし、いろいろなサポート機能をアウトソーシングすることに よる効率化もあると思う。そういう意味でこれまでの慣例にとらわれない新し い活用の仕方を含めて効率化を図っていことも重要ではないかと思う。 ○井村会長 科学的、技術的なところは、議論は余りしていない。だから簡単に書き過ぎて いる嫌いもあるかもしれないので、少し検討しなければいけないと思う。他の 研究費との関係が評価のときにどのように考えるかは非常に難しいところ。エ フォート制を導入しようという1つの理由として、1つは人事管理の面で教育 研究で非常にいい。もう一つは、あちこちからお金を集めてきてやった仕事の ときに、それをどのように評価するかは非常に難しい。その科学的価値あるい は技術的価値は評価できても、効率はそれだけでは評価できないので、そのと きには研究費の総額を考えてみないといけないことになる。エフォート制を入 れようとしたもう一つの理由はそこにもあった。しかし、その辺は評価の技術 的なときにどういうふうにやるかを少し考えなければいけない問題だろう。効 率的利用についてはおっしゃるとおりで、アウトソーシングも1つの非常に有 力な方法だろうと考えている。どういうふうに書くかは少し検討させてほしい。 ○石井議員 幾つか意見を申させていただく。 1つは基盤的な経費と競争的資金の関係に関する幾つかの問題、次は競争的資 金そのものについての記述の問題、大きく分けて2つある。まず前者について は、間接的経費が、基盤的経費と競争的資金との間の関係をどう構築するかと いう問題の中で、非常に大きな論点になってくるのだろうと思う。これもこれ から増やしていくということを考えると、全体の国の予算の中で競争的資金が 伸びていく勢いというか、そのスピード、増加率のようなもののこれまでの状 況を考えてみると、そう多くのことは見込まれない。そうすると、間接的経費 を余りに増やすことは実質的に研究費の目減りを来すことになりかねない。そ の辺のバランスを十分に考えておかないと大きな問題になるのではないか。 それとの関係で細かいことではあるが、10 ページの上から3行目の「研究と 教育の区分を明確にする」という下り、いささか全体として気になる。そもそ も区分が可能なのだろうかという問題が論点としては1つあるのではないか。 アメリカの場合は、その区分をいわば一律に1つの制度として、あるいはフィ クションとしてと言ってもいいと思うが、給料を支払う9カ月なら9カ月の学 期の期間と夏休み全体をオフにするという形で整理している。その制度的な大 前提がある。日本の場合はそういうことがなくて、では研究と教育をどうやっ て区別するのか。殊に大学院の教育ということになると、これはほとんど教育 と区別がつきにくいことになる。教育のためのカネを十分に確保しつつ、仮に 研究費の方は基本的には競争的資金へというフィロソフィーがこの表現の中に、 あるいは裏側にあるとすれば、その辺は相当慎重に考えなければならないのか という印象持っている。 2番目に、競争的資金の中で人件費、殊に研究者の人件費をここで支弁すると いう非常に大きな問題の中で慎重に考えていかなければならないという趣旨は、 文章からも無論読み取れないわけではないが、例えば非公務員化した場合に弾 力化することで、果たしてこういうことがうまくいくのかということも十分考 えておく必要があるだろう。日本全体が基本的にパートタイマーを余り正規に 位置づけていない社会の中で、大学の先生全体をパートタイマー化できるのか という非常に大きな問題がある。これは先ほど第一の問題として申し上げたこ ととの関係で、研究と教育をいわは制度的に分けてやっているアメリカの割り 切り方が日本に持ち込めるのかという非常に根本的な問題がある。技術的にも 例えば年金とか社会保険との関係でそういう扱いをすることが、日本の社会シ ステム全体がフルタイム雇用が原則である中で、社会的正義に反するようなこ とを生みはしないかという危険は十分に考えておかなければならない。 もう一つ、これも細かいことだが、14 ページに、競争的資金の配分は個人研 究を中心にするべきだ一番上に書いてあるが、殊にグループ研究とか共同研究 が余り好ましくないと読み取れるふしがあるところが幾つか散見される。片方 で分野融合をこれからの研究の在り方として、重点分野の推進戦略等々で言っ ているときに、個人研究が中心であるべきだと競争的資金の中でこのように言 い切ってしまうのは一体どういうことなのか。現に私が今までの学問的な人生 の中でどれだけほかの分野の人たちとの共同研究で科学研究費をいただいて勉 強を進めてきたか、その恩恵ははかり知れない。恐らくグループ研究というこ こに書かれている定義を当てはめるとすれば、私が今までいただいていたもの は劣後的な地位を与えられることになりかねない。これは分野によっても違い があるかもしれないが、この辺はもう少し幅広く表現をお考えいただく必要が あるのではないだろうか。確かに、ある種のダミーのような形でテクニックを 弄してグループ研究を構成して、実際には小額の20〜30 万円を分けているよ うなあやしげなものも、事実としてはあるのかもしれないが、我々法律家はよ く「浴湯とともに赤子を流すな」、要するにお湯と一緒に赤ん坊までどぶの中 へ流してしまうのはいけないという格言を、私はここで改めて思い出している。 そのほか細かいことはいろいろある。例えば審査委員、評価者について「学会 等の推薦に基づくのではなく」とまで言い切ってしまっていいのだろうか。 「推薦だけで」というか、あるいはそれを丸飲みしてしまうことはいけないだ ろうが、いろいろなところからの情報を得てしかるべき評価者をしっかり選ぶ 可能性を排除してしまうような表現の点でほかにも幾つかあるが、とりあえず 大きな問題だけ申し上げた。 ○井村会長 私が答えるのがいいのかどうかちょっと問題だが、私の考えを少し申し上げた い。 教育と研究を分けなさいというのは、基盤的経費をそういうふうに考えなさい ということ。9カ月分が教育、3カ月分は研究費からとりなさいと言っている わけではない。イギリスはハイヤー・エデュケーション・ファンディング・カ ウンシルが一応教育と研究を分けて、別々に評価してそれに資金を出している。 今までの日本は、教育と研究は事実分けがたいが、分けがたいということから 一本化してきた。そのために十数年間、全くといっていいほど増えてこなかっ た。のみならず競争的資金を増やそうとすると、では基盤経費を減らしなさい というプレッシャーが一方ではかかってくる。だから私は、教育は非常に重要 な大学の責務だから、教育にこれだけは必要という基準を考えて、それを要求 していかないといけないのではないか。そういう意味で書いている。 個人研究のところ、書き方はかなり気をつけないといけないと思っている。た だ、これはプロジェクトの会合で2〜3人の委員、特にアメリカの経験の長かっ た方から強く指摘されたところで、アメリカでは共同研究のお金などはない、 だから個人で研究費をとってきて必要な場合にはそれぞれお金を出し合って協 力すると、かなり強く言われた。今までの日本は、80%がグループ研究。それ で非常に大きなグループをつくっている場合もある。最近は大分小さくなって きた。それでもなおかつ非常に大きなグループをつくっていて、どのようにお 金が流れているのかはなかなか把握できない。そういうことだから、ディスカ バリーを目的とした研究は基本的に個人研究がいいのではないか。ただ、応用・ 開発・調査等はグループでやらないとできないものがかなりある。そういうふ うにある程度必要性のあるものはグループを否定しているわけではないが、ディ スカバリーを目的とした研究は人文社会系と自然科学系は少し違うかもしれな いが、自然科学系では基本的には個人の発想によるものが中心ではないかと思っ ている。その辺、御意見があれば伺いたい。 ○岸本専門委員 今のお2人の見解で、競争的資金から給料を出すかという問題だが、大学の大 きな2つの車輪は教育と研究。非常に突出した研究をしている人が自分の研究 をわかりやすくその分野を話せば一番いい教育になる。しかし、教養教育全体 は例えば語学教育などいろいろな分野をカバーしなければならない。ところが 全員が公務員で同じだと言うならば、みんなデューティを分け合えということ で、非常に突出した研究をしている人にまで幅広い教育、同じ時間の教育の負 担をかける。それが突出した人をつくることにマイナスになっているというこ とがいろいろな面である。そういう点から給料のこの部分は研究費からカバー されている、だからこの部分は自分の好きなように使っていいという仕組みを 入れていかないと、日本の研究は進んでいかない。そういう意味で、今のとこ ろは先ほど岸先生も言われたが、1兆円ではなく数千億円の中でそれをするの はなかなか難しいが、あるいは年金の問題等いろいろあるが、どこかでブレー クスルーの例をつくっていくことが大事だと思う。だからここへ書き込んで、 そういうふうにしていくという方向性を示しておくことはこれからの行き方に 大事なことではないかと思う。 それから、研究は個人のもので、個人の思想、個人の考え、個人の色合いが、 だれが描いた絵か、だれがつくった音楽かがわかるように、だれが書いた論文 かがわかる個人のものであって、決して共同でするものではない。だから個人 個人が評価されて研究費をもらい、その人たちが集まって会をするとか共同し てやっていくべきものであって、共同研究でお金をもらってきてみんなで何か を分け合うという仕組みはよくないのではないかと私は思う。 ○石井議員 私が舌足らずだったと思うが、共同研究と個人研究の場合は、私の経験に則し て言うと、共同研究はまさに自分の個人研究をブレークスルーさせるための、 いわば触媒的な機能を果たすものとして位置づけていて、共同研究だけで私の 学問的営みが終わっているわけではない。個人的研究が自分の本領であり、そ れがメインなのだが、それを肥やすために人々と共同研究をあるプロジェクト でやる。そこで得たもの、触発されたものが自分の個人研究の糧になっている という意味で申し上げている。そういう機能を果たす共同研究が競争的資金に よって支援される必要があるのではないかということを申し上げたかった。こ れは分野によっても違うのかもしれないが、私の経験から言うとそういうこと。 もう一つ、これも自分の表現が悪かったのかなと思う。研究と教育の区分の問 題を指摘したのは、基盤経費についてそういうことがはっきり分けられるのか ということを申し上げたつもり。アメリカの場合にはそういう難しさに手をつっ こまないで、逆に9カ月は教育に専念するものとして雇いますという、一種の 制度的な約束事でその区別をしている。その制度的な区別が適切かどうか、日 本に適用されるべきかどうかということは一切別にして、アメリカはそういう やり方をしている。日本はそうではない。つまり、一年中研究と教育に従事す る人間として給料も払い、かつ基盤経費も払っている。こういうシステムになっ ている。ここでは制度の優劣を問題にしないで、システムの在り方が違うとい うことを申し上げた。その中で、基盤経費でこれは教育の問題だ、これは研究 の経費だと、本当にどこまで分けられるのか。それは大学院の教育という点で は甚だ区別がつけにくいということを申し上げた。 もう一つ、ついでにつけ加えると、イギリスと日本については基盤経費が別に ついている、競争的資金のほかにあるという記述があるが、アメリカには競争 的資金のことだけしか書いていないが、いわゆるエンダウメント等々によって 大学が自力で賄っている基盤的な、日本では公費に相当するような部分がない わけではないので、そこのところも記述した方が多分バランスがいいのではな いか。 ○井村会長 誤解がないようにしていただきたいが、教育と研究は積算をするときに分けな さいということを言っているのであって、個々のお金にこれは教育だ、これは 研究だといって分けるのではない。イギリスがそうしている。イギリスは大学 に行ってしまえばブロックマネーで何に使ってもいい。ただ、積算するときに 教育のために、学生がこれだけいるのだからこれだけの費用を出しましょう、 研究のためには4年か5年に1度評価をして出している。今の日本は分けがた いということで分けずにきたが、それだけにこれは教育費ではないかと言われ て攻撃されるというところもあるので、教育を守るためにも教育のための必要 なお金はある程度積算しなければいけないのではないかというのが私の考え方。 ○石井議員 それには全く賛成で、そういうふうにわかるように書いていただければ結構。 ○小野田専門委員 私も井村先生の御説明にある意味で全面的に賛意を表したい。たしかこの辺の 議論で最初、かなりアメリカのお話が強かったのをあえてヨーロッパ型、特に 私はイギリスの流儀が、日本が改善していくのに一番スムーズに当てはまるも のではないかという多少の思い込みがあったということもある。結果としても それしかないのではないか。 ただ、ここでこの議論をさらに進めていくと何が起こるかというと、国立大学 が特に量的な意味で、教育も含めて本当に社会のニーズなり、あるいは社会を 上手に先導しているかという責任が問われるということがシステム改革の一方 では必ず出てくるだろう。この辺の議論は一切触れていない。皆さん、国立大 学の先生方は競争的資金が増えるのは結構、ただし、そのはね返りがほかにあ るのは一切困るとおっしゃるが、国立大学はトータルなエフシェンシーが問わ れているので、その辺の議論も並行的に必要になってくるだろうと感じる。 ○井村会長 そこまでは踏み込んで、システム改革でもまだやっていない。ただ、システム 改革では科学技術という側面からだけでも教育問題は取り上げざるを得ないだ ろうと私は思っている。これはいろいろな問題点が初等・中等教育から大学教 育と全部ある。大学院も先ほどから議論が出ていたがやはりあるわけで、すべ ての教育問題は非常に大きいと思う。そういう中では、おっしゃるように国立 大学の果たすべきものは何なのか、なぜ私立大学よりたくさんのお金をもらっ ているのかということは非常に大きな問題になると思う。ほかに何か。 ○岸専門委員 石井先生が言った間接・直接経費は非常に重要な問題だが、先ほど市川先生が 言われた改革型の研究とブレークスルー型といったときに、我々ではどちらか というとプロジェクトをきちんとやる、やはり改革型になることが多い。だか ら、どうしても直接経費で萌芽的な研究をやりたいというのが非常に強いし、 一番出来のいい研究者は案外プロジェクトは嫌う。その辺の事情も時には察知 していただきたいし、それがまた先ほどの個人研究かプロジェクト研究かとい うことと結構結びついてくるところがあるという気がする。 もう一つ、12 ページの「学会等」を先生が言われたように書きかえていただ くのは私も大賛成で、これを排除してはいけないと思う。ただ、学術会議でも 議論があると思うが、学会が科研費をとるための1つの団体になることには大 反対。また、学術会議の会員を出すことにも非常に疑問を持っていて、要する に権利団体になるのは決していいことではなくて、そこは推薦団体になること と分けないといけない。ただしこれをやっていってしまうと、日の当たらない 分野から、日の当たるところばかりにお金がいくではないかという批判は必ず あると思うが、それでも学会等に重きを置かないこの書き方が私は大事だと理 解している。 ○井村会長 ここは岸先生が言われたような意味で書いた。これからもしプログラムディレ クター的な人を設けることができたら、そういう人たちがいろいろな分野の専 門家を調査してデータベースをつくる。そこからレビュアーを選ぶのが一番い いのではないかと思う。もちろんその時点で学会の意見を聞くことは必要だろ うと思う。しかし今のように、学会が推薦してくるのはやはり問題点を残すと 思っていて、そういう意味で書いたが、文章についてはもう少し検討させてい ただく。 では、これについてはこのプロジェクト会合を6月11 日にもう一度行い、今 日のいろいろな御意見を入れて、大事な問題なのでもう一度議論した上で最終 的に本会議に提出したいと思う。したがって修文等は、私がプロジェクト会合 の座長をやっているし、こちらの会長もやっているので、システム改革専門調 査会としては私に一任いただければありがたいが、よろしいか。ありがとうご ざいました。 (前回議事録の確認) (会議資料について、資料1−1、資料1−2、資料2は非公表、資料3は公 表の確認。)
#(資料2「競争的研究資金制度改革について中間まとめ(意見)」は、6月19日 にまとめられ、9月25日に公開された。)