==> 国立大学独立行政法人化に抗して
平成11年9月27日 北海道大学学長 丹保 憲 仁 殿 北海道大学の独立行政法人化につきまして一教官として要望があります。 一言で申しますと、文部省が国立大学に対して9月20日に示した独立行政法人化の 提案について、それを北海道大学が受け入れるか否かの議論を全学的に行って欲しい ということです。 これまでは、文部省自身が独立行政法人化に強く反対していたために、学内での議論 は「仮に独立行政法人化が不可避の場合にどうするか」という議論しかできませんで したが、文部省が独立行政法人化容認を公表したことによって、ようやく独立行政法 人化の是非自身について明確に学内で議論できる段階になったと思われます。 独立行政法人化は現行の大学制度の廃止と新法人設立という2ステップからなります 。国立大学は法人ではないという理由で大学制度の廃止に反対することが法的に無意 味である可能性があるとしても、新法人設立にはその構成員となる予定者の合意が( 法的に必要かどうかは調べていませんが)常識的には必要であることは明らかです。 従いまして、廃止・設立が切り離せない以上、北海道大学の独立行政法人化には全構 成員の合意が必要です。そこで、以下を要望します。 ****************** 要望 ********************************* 北海道大学が平成9年の評議会決議を破棄し、文部省の提案を受け入れ、独立行政法 人化の具体的検討作業を始める場合には、その前に次の作業を行うことを要望します。 (1)まず、最高意思決定機関である評議会において(2/3以上の)承認を得る。 (2)次に、全学投票によりその承認を得る。 なお、これに先立って、 (3)実質的な全学的説明会を必要な限り何回でも開き、文部省提案を受け入れる 理由を全構成員に対して明確に説明すること(<不可避>というのは<是>の理由 にはならない。)。 が不可欠と思われます。その際、これまでに「現体制維持+大幅定員削減」につい てどのような対策を検討されたのかも具体的に説明していただきたいと思います。 ****************** 要望終 ******************************** なお、末尾に添付しましたメールを全学の教官向けに送り、独立行政法人化の是非を 議論するよう、呼びかけております。ぜひ、執行部の独断で事を運ばれることのない よう、御願いいたします。 最後に一言だけ私見を述べさせていただきたいと思います。 是非を問うプロセスを省略して独立行政法人化を国立大学が甘受する場合には、独立 行政法人化の弊害をこえる遥かに深刻な問題が発生すると私は考えております。この 点を簡単に説明します。 社会における大学の存在理由は、もちろん実学を通して社会を豊かにする点にもあり ますが、それと同じくらい重要なものとして、大学の中では社会とは独立の価値観の 中で思考・行動が営まれるという点にもあると思います。そのことにより、たとえば 社会通念に潜む重大な誤りを発見し指摘するというような貢献が可能になります。今 回のように政治的な動きが主因子となっている流れを大学が<不可避>として受け入 れることは、大学の上記の存在理由が名ばかりになりつつあることを行動を以て証明 すると同時に、その消滅を完成させることにもなる思われます。これが上記の「発生 する深刻な問題」です。そのような深刻な問題の発生を黙過することは、国民に対す る(特にこれからの世代に対する)取り返しのつかない過ちであると私には思われま す。 なお、このメールをアドレスのある部局長・評議員の方にも御送りしています。 辻下 徹 北海道大学大学院理学研究科数学専攻 (代数構造学講座 教授)