==> 国立大学独立行政法人 化に抗して
有馬朗人・前文相インタビュー「「反対」だった私が独立行政法人化推進に回った理由」

有馬朗人・前文相インタビュー
「「反対」だった私が独立行政法人化推進に回った理由」


週間『エコノミスト』'99.11.30 (p.72-73)
有馬朗人・前文相インタビュー
  「反対」だった私が独立行政法人化粧進に回った理由
  「今のままでも潰れるところは潰れる」

国立大学の独立行政法人化に向けた舵取り役だった有馬氏は、1年前までは反
対論だった。それが一転して賛成に回った。有馬氏は、国からお金がきちんと
出て、決して民営化ではないからだという。
 
 二つの事情変更

 ― 反対から賛成に転向した理由は何か。

 有馬 一九九八年六月、橋本龍太郎前首相時代の行政改革会議で、国立大学
を独立行政法人化させようという話が出た。私はヨーロッパから帰ってきたと
ころでびっくりしてそれに反対した。しかし、九月に中間報告が出て、一二月
に最終報告が出るなかで、事情が変わってきた。
 私が常々言っているのは、まず第一は、日本では、国や地方公共団体が高等
教育に出すお金の少ないこと。 GDPやGNPで比較すると、ヨーロッパや米国の
半分にすぎない。どうやって国の援助を増やすかが大事だ([3])。そこが充実す
れば、私学助成全体をよくすることができるだろう。また、今の大学はすべて
を教授会で決めるため、教授会やその下郡組織の負担が大きい。もう少し研究・
教育に十分携われる時間を増やせるような運営体制をと、その二点だ。
 九八年六月と一二月では微妙な差があった。六月は独立行政法人は民営化へ
の第一歩と言えるものだったが、一二月には変わってくる。すベて民営化路繚
なら郵政は反対だろうということで、職員の身分を国家公務員にする「公務員
型」という考え方が入ってきた。初めは「非公務員型」だったのが、公務員型
が主流になる。それまでは民営化、私学化への一歩だったものが、公務員とい
う身分を残したままで、独立行政法人化が可能になった。それは国の予算で面
倒を見ようということだから、私が強烈に反対した理由の一部が薄れてくる。
 独立行政法人の公務員型が許された場合、良いことがある。例えば研究費な
ども、その年度のうちに無理やり使ってしまわないで、翌年に持ち越すことが
楽になる。優秀な人に対しては給料をたくさんあげることができる。国の援助、
公務員型を残すことを前提に置きながら、国立大学に自由度を増やすことがで
きる利点がある。私が反対派だということはよく知られていたが、そういう事
情の変化があった。

 ― 法人化で、評価を得やすいものだけに研究費が出て、基礎研究の基盤が
損なわれるという声もある。

 有馬 今でもそうだ。科研費(科学研究費補助金)の審査の際には評価され
ている。私も副会長をしていた大学審議会では、(大学が)無評価ではだめだ
ということで、第三者による評価機関を作ろうとしている。国立大学のままで
残っても同じことなのではないか。

 ― 独立行政法人化の目的が、本当は、少子化のなかで、地方の教育学部や
医学部を統合再編することなのではないかという声がある。

 有馬 全く違った解釈だろう。今だって、国立大学のままでも今の教育学部
のあり方でいいのかという疑問が仲間から出ている。いずれにせよ教育学部は
自己改革をしなければもたない。国立で残そうと残すまいと、今のままではダ
メでしょう。確かに学生の数が減ってきており、就職が非常に難しくなってい
るために、厳しい状況だ。今まで通りの教育学部がもつとは思っていない。独
立行政法人であろうとなかろうと、それは関係ない。
 医学部は教育学部と少し違う。お医者さんの数をどのくらいに保つかという
問題もあるが、特に(基礎ではなく)臨床の方は、地方でも都市でも、大学病
院で患者さんの目を通して厳しく評価されている。医学部はしっかりしている。

 「結局変わらない」との批判

 ― 独立行政法人の内容も変わってきたのだとは思うが、九九ある国立大学
のうち、独立行政法人化によって潰れるところは出てくるのではないか。

 有馬 独立行政法人になるならないにかかわらず、それは今のままでも潰れ
る。それなら(潰れたくないから独立行政法人が嫌だというなら)独立行政法
人反対だといって、徹底的に(国立として)残ったらいい。我々はすべて(の
国立大学に)独立行政法人でやってくれなんてことは言ってない。
 むしろ一番難しい問題は、私が文部省と一緒になって随分考えて、私として
最善の努力をしたものが認めてもらえるか、ということ。大学が認めるのでは
なくて、世間が認めてくれるだろうか。政治が認めてくれるだろうか。
 すでにあれ(独立行政法人化案)は、今までの大学とちっとも変わらないで
はないかという大変な批判がある。そのままで通るかどうか、これは分からな
い。私は通らない可能性もあると思っている。私は長い間、大学にいた人間だ
から、大学として一番いいものを考えたけれども、それが逆にむしろ世の中に
受け入れられないかもしれない。世間が大学を見る目は、残念ながら極めて厳
しい。

 ― 授業料は完全自由化の世界に入るのか。
 有馬 それはそうだ。私は授業料は安いことを望んでいるし、今までよりもっ
と安くするくらいの方がいいと思っている。その点の工夫はこれから必要にな
る。しかし安くする高くするというのは大学のメンバーの人たちの覚悟だろう
し、それは皆さんが考えていることを実行すればいい。タダにしたっていい、
やっていけるなら。

(聞き手 岩崎 誠 = 編集部)

コメント(辻下)