==> 国立大学独立行政法人 化に抗して
独立行政法人化後の大学評価法の一例か?

独立行政法人化後の大学評価法の一例か?

(2001.7.14.. 旧通産省産業政策局産業技術課大学等連携推進室(1995年)について )
Date: Mon, 6 Dec 1999 08:17:14 +0900
To: hu-members
From: Toru Tsujishita
Subject: 独立行政法人化後の大学評価法の一例か?

北大構成員の皆さまへ

独立行政法人化後の(総務省による)大学評価の仕方を彷彿とさせるものが通産省
のホームページにありましたので、ご存知のかたは多いと思いますが紹介します。
学問的な業績とは全く別の尺度で大学の社会への貢献度を点数化している点に注目
すべきです。(東大・東工大は最低点になっています。)
 このことは、文部科学省の評価委員会は、大学評価・学位授与機構の評価を参考
にするだけでなく、他の省庁内部の大学評価組織や他の民間評価組織の評価も参考
にして、総合的に大学の交付金増減・改廃等を判断する現実的可能性が少なくない
ことを示しています。従って、石井紫郎氏(国際日本文化研究センター)が提案し
ている「教育研究の内容に関する目標・計画・評価については、大学評価・学位授
与機構の定める方式によるものを以て、通則法に定めるものに代えるものとする」
を特例措置として文部省に要求することは検討に価すると思われます。これにより
独立行政法人の不安定性の主因である総務省・文部科学省による政策依存の予算増
減・改廃判定を不可能とすることが可能になるかも知れません。もちろん、これで
十分というものでは全然ありませんが、必要条件であることは確かです。

-----------------

1995年4月1日に通産省に産業政策局産業技術課大学等連携推進室
  http://with.mri.co.jp/Sangyougijutsuka/r-0.html
が設置されました。設置の主旨(当初)は「民間企業の新規事業分野の開拓と新規産
業の創出を通じた経済フロンティアの 拡大に向けて、大学等と産業との連携協力に
よる研究開発の促進・効率化、高 度の技術・知識を駆使しうる技術系人材の育成・
確保を推進するため、産学の 連携施策を企画立案し実施する。」というもので、そ
の業務は、「大学等を経済社会へ有為な人材を提供する極めて重要な機関として再認
識する とともに、高度な知的資産が集積された機関として、その活性化・活用を図
ることが、我が国経済社会の活性化・高度化のためには不可欠」を基本的スタンス
とし、アプローチとしては、大学等と産業界との連携を、人・金・情報・モノあらゆ
る面で促進し、
 (1) 大学等と経済社会とのインターフェースの抜本的拡充
 (2) 大学間の競争意識の醸成
等を図ることにより、
 (3) 実践的な知識・技術を中核とする人材育成(教育)の 推進による労働需給の質的
  ミス・マッチの解消
 (4) 大学の知的資産と企業の実践的ノウ・ハウと融合した研究開発の推進
等を目指す、となっています。大学等連携推進室の提言通り、日本の<大学改革>が進
行しているので、ここの動向に注目する必要があります。

 大学等連携推進室が行った調査の結果が
   http://with.mri.co.jp/Sangyougijutsuka/rs-0.html
に掲載されています。そこで実施された「産学連携から見た日米技術系大学の比較・評
価」は大学評価法は、総務省による評価委員会による大学評価法を予想させる面があ
り、
分析に値すると思われます。調査内容は、産学連携による研究開発推進のための大学の
組織・制度を日本の9大学(東北 大、筑波大、東大、東工大、京大、慶大、早大、東海
大、立命館大)と米国の6大学(マサチューセッツ工科大、カリフォルニア大バーク
レー
校、イリノイ 大、スタンフォード大、カリフォルニア工科大、カーネギー・メロン大)
について、点数化して評価。
 項目(2)調査方法において、以下のように記載されています。
----------------------------------------------------------------
(2-1)前提条件

本調査は、A(産学連携の成果)=B(科学技術的潜在能力)×C(それを引き出
し、社会経済的価値に転換する能力)と定義した上で、Cのみを対象としている。

*従って、組織的な対応は全くないが、個々の教員の「科学技術的能力」によっ
て、結果としてたまたま「産学連携」が実現されていたという状態は、評価されな
い。

また、個々の教員の「科学技術的潜在能力」を測定し、大学としてその総和を求め
るようなことは、できるはずもない。これに代わるものとして、論文の数に被引用
回数を乗じたものを用いる試みもあるが、論文偏重主義を助長する等のおそれがあ
る。

(2-2)評価の方法

評価にあたっては、産学連携を「戦略」、「プロセス」、「組織」、「資源」の4
つの構成要素に分解し、各大学がどのレベルにあるかを「大学に対するインタビュ
ー」、「企業に対するアンケート」、「一般公開情報の収集」を基に、9段階に評
価。

この9段階評価を基に、アーサー・D・リトルが独自に開発した概念「第n世代の
産学連携」を用い、各大学を評価。

*「第n世代の産学連携」とは、企業の競争力に大学の研究活動がいかに寄与して
いるかを「大学の研究活動が企業の競争力に役立つかどうかは、結果論」を「第1
世代の産学連携」とした上で、「企業戦略と大学の研究活動が完全に連携し、大学
の成果が企業戦略に100%生かされる状況」を「第3世代の産学連携」と定義し
たもの。

----------------------------------------------------------
最後に、産学連携に向けての方策として、以下を項目(4)で提言しています。
----------------------------------------------------------
(4-1)「産学連携」の社会的役割の確認

米国においては、大学において蓄積された知的資産を産学連携を通じて醸成し、企
業を通じて実用化していくことにより、社会に貢献していく姿勢が明確になってい
る。国から大学へのグラントに基づく研究成果は大学に帰属するとする1980年
のベイ・ドール法が制定され、これにより技術を産業界へ移転していくという機運
が一気に高まり、今日の米国の産学連携が生み出されている。

これに対して、日本においては、大学に蓄積された知的資産をどのように社会の中
で活用していくかが、十分議論がなされておらず、学会への論文発表にのみ依存し
たものとなっている。

日本はまず、国家レベルでの大学の役割の確認作業、コンセンサスづくりに取りか
かるべきである。

(4-2)テクニカルに実現可能な対応策

国の行うべきもの

   * 大学運営に関する規制撤廃
     教員の身分や大学の活動に関わる部分と、会計上の問題に大別されるが、規制
     の根底にある、「管理し・統制する」という基本姿勢や、「悪平等的」基本思
     想そのものを撤廃すべき。行政と大学でプロジェクト・チームを作り、研究経
     費に関わる費目のしばりや兼業の禁止等の問題について、規制緩和に取り組む
     べきである。
   * 国家予算の「産学連携」と「大学の環境改善」への傾斜配分
     「産学連携」プロジェクトに対する研究費補助、税制上の優遇措置や基本的住
     環境(スペースの拡大)に対する国家予算の投入を行うべきである。
   * 国レベルでの「産学連携」のための専門組織の設置
     国立大学が法律的なしばりによって、動きがとれないのであれば、私学を中心
     に「産学連携促進センター」を設立し、知的所有権・機密事項に関する基本ル
     ールの確立、大学間のコーディネーションによる大型プロジェクトの推進等を
     行うことを検討すべき。

大学の行うべきもの

   * 大学の硬直的組織運営の改善
     ・プロジェクトに応じた研究組織の形成
     硬直的運営の一因として、「講座制」が、産学連携」に不可欠なフレキシブル
     な組織運営を不可能にしている。「産学連携」において、最強のプロジェクト
     チームを編成することは、プロジェクトを獲得する上での必須条件であり、臨
     時に必要な人材を雇用できるリサーチ・アソシエートを取り入れるべきである。
   * 大学レベルでの「産学連携」のための専門組織の設置
     大学に「産学連携」のための専門組織を設置することは、大学自らのイニシア
     チブで、すぐにでも取り組むべきものである。トップダウンでポリシーを明確
     に示し、産学連携のための専門組織を設置し、産学連携に関わる評価・報酬シ
     ステムの開発、知的所有権・機密事項の取扱いに関するルールの確立、マーケ
     ティング機能、企業の課題に的確に応えるための最適なチームを編成する仕組
     みづくり等を行うことが必要である。
   * 教員に対する評価制度の確立
     現在、評価は「論文の量」のみによっており、論文の量を稼ぐために研究領域
     が選ばれている。これでは、産学連携は結果論に陥るのは当然であり、これを
     改善するため、論文の質の評価、特許及び産学連携に関わる活動の評価制度を
     確立し、競争原理を導入するとともに、報酬・処遇に反映させることが必要。
   * 教員の企業・社会的常識の確立
     企業と大学とどちらが歩みよるかという問題はあるが、大学はその研究成果を
     社会に提供することを目的とするものであるから、大学側から歩みよるべきも
     の。米国では、兼業として、企業にコンサルティングを行い、また、ベンチャ
     ー に関与することで、企業・社会的常識が身に付いていく。大学からは無給
     で、 企業の研究所で研究を行い、報酬を得る形のサバティカル制度を導入する
     のも 一案である。
--------------------------------------------------------------
以上の筋書きが次々と短期間に実現されていることは天晴れというべきです。

辻下 徹
理学研究科数学専攻 
3823