国立大学独立行政法人化の諸問題国会情報
第155回国会 文部科学委員会 第3号 (2002/11/08)より児玉健次議員質疑
○古屋委員長 児玉健次君。

○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。

 今回の、学校教育法の一部改正案と言っていますけれども、内容は非常に多
岐にわたって、しかも重要な内容を含んでいますね。ぜひ、十分かつ慎重な審
議を私は求めたい。

 この機会に、重点を絞って、三つについて私はお聞きします。

 まず一つ。専門職大学院の発足によっても、学校教育法六十五条で言う、さっ
き工藤さんがいろいろ言っていたけれども、学術の理論及び応用を教授研究し、
その深奥をきわめようとする現存の大学院の重要性はいささかも変わりがない、
私はそういうふうに考える。専門職大学院で先行しているのが法科大学院です
から、それとの対比で、法学研究科、法学政治学研究科をまず取り上げたいと
思います。

 今、国立大学でこれらの課程を持っている大学が、熊本大学から北は北海道
大学まで十四あります。それらの専攻、講座を私は取り寄せて拝見しました。
憲法、民事法、刑事法などの講座があるのは当然のことですけれども、専攻に
よっては、政治理論、現代政治行政分析、アジア太平洋国際関係、政治思想史、
現代行政分析などなどの講座があります。もし、これらが全部、法科大学院に
シフトしてしまったら、これらの講座は恐らく行方不明になってしまうでしょ
うね。

 大学院と専門職大学院の教育研究を、政府、文部科学省が、双方ともに手厚
く支えて充実発展させることが非常に重要だと私は思う。そのことについて、
遠山大臣のお考えを端的に聞きたいと思います。

○遠山国務大臣 大学院は、本来、学術研究の推進とともに研究者の養成、そ
れから高度の専門的能力を有する人材の養成という役割を担っております。

 大学院博士課程あるいは修士課程につきましては、特に、世界の第一線に伍
した水準の高い教育研究の積極的な展開によりまして、世界的な教育研究拠点
を形成することが重要でありまして、その役割は今後とも重要であると考えま
す。

 今回の専門職大学院は、高度専門職業人養成に特化した新たな大学院制度を
整備するものでありまして、これによって、国際的にも社会的にも活躍できる
多様な能力を持った高度の専門家を養成しようということでございます。

 したがいまして、専門職大学院をつくること自体が、既存の大学院が目指し
ていたものをなくするというようなことには全くつながらないというふうに考
えているところでございまして、それぞれの目的に応じて、それぞれの大学が
しっかりと考えて、既存の役割も十分に果たしながら、新たな仕組みについて
もお取り組みをいただけたらというふうに考えております。

○児玉委員 次に、認証評価機関による評価についてです。さっき言葉がいろ
いろと飛び交ったけれども、正確には私は認証評価機関による評価だと思いま
す。

 学問研究において、到達点を明らかにして取り組みの問題点を適切に指摘す
る、これは必要なことでしょう。しかし、評価のための評価は、これは有害無
益ですね。

 一九九九年に大学に対して、自己点検と評価の実施、そしてその公表を義務
化し、自己点検、評価の学外者、第三者による検証を努力義務化して、何年たっ
たでしょう。いまだ三年しか経過していません。三年しかたっていない。しか
も、その評価は未成熟であると皆さん自身がきょうも何回もおっしゃっている。

 今、国立大学九十九校に関して言えば、昨年の段階で自己点検、評価の実施
は九十九校中九十九校です。一〇〇%になっている。実施結果の公表も一〇〇
%です。外部評価、第三者による評価、一昨年は七十校であったけれども、一
年間で去年七十九校にふえて八〇%に達していますね。この間の経過を大臣は
どのように受けとめていますか。

○遠山国務大臣 大学改革の流れは、自己点検、評価が決まった二年前、三年
前ということでございませんで、一九八〇年代の終わりのころから非常な勢い
でそれぞれの大学で取り組みが始まっております。また、それを私どもとして
も、制度としてもいろいろ規制を緩和するという形でサポートしてまいってい
るわけでございます。そのプロセスにおいて、それぞれの大学がみずからの教
育研究のあり方をいろいろ改革していく中で、自己点検、評価の重要性という

ことは早い段階から私は認識されていたと思います。

 それを制度化したのが平成十一年でございますか、そういうことでございま
すけれども、やはり改革を進めていくために、それは大学という社会的存在が
より充実したものになっていくために必要なものであるということで、それぞ
れの大学がそれを納得され、今もそういう努力が続いているというふうに考え
ております。

○児玉委員 時間がないですから、その前の経過は知っているので、私はもう
限定して言ったんです。平成十一年にあなたたちが自己点検、評価の実施と結
果の公表をした、三年たったその経過をどう見ているかと。今あなたは、それ
ぞれの努力があったと。私もそう思う、不十分ではあるけれども。

 そこで、学問研究を短期的な効率の視点あるいは単一の指標によって評価す
ることの問題点、危険性が今重要です。国立大学理学部長会議、九九年の十一
月に行われたこの理学部長会議は、今の点について二つの実例を挙げて指摘し
ていますね。

 その一つ。火星探査機などに指令信号を雑音に邪魔されずに送ることができ
るのは、符号理論を応用して信号の誤りを自動的に修正しているからです、最
新の符号理論の基礎は有限体上の代数幾何学ですが、ここで使われる有限体は
一八三〇年ごろガロアがつくったものです、百五十年以上もたってから自分の
理論が日の目を見ることは、天才ガロアといえども予見し得なかったでしょう、
本当に僕はそうだと思う。

 もう一つの例。C型肝炎の治療薬であるインターフェロンや糖尿病のための
ヒトインシュリンが製造され、医療に供せられています、遺伝子工学の学問的
基礎は分子生物学ですが、分子生物学はワトソンとクリック二人によるDNA
分子の二重らせん構造の発見を契機として発展した分野です、この二人が一九
五三年に発表した論文、わずか二ページに満たない短いものです、しかし、こ
の論文が持つ意義の大きさは、幾ら強調しても強調し過ぎることはないでしょ
う、これも説得力ありますね。

 そこで、理学部長会議はこう言っている。以上の例からも明らかなように、
基礎科学は、息の長い研究の推進が可能な環境下で、自由な発想のもとに自律
的に探求されることによってのみ大きな成果が期待できる学問領域であり、そ
の成果は数十年後、五年とかなんとかではなくて、数十年後あるいはもっと後
の社会を支える中核技術を生み出す可能性を持つものです、そう言って、短期
的な効率の視点、単一の指標によって評価することはできない、こう述べてい
ますね。

 この指摘を真剣に生かすことが今求められていると思います。河村副大臣、
いかがでしょうか。

○河村副大臣 自由な発想でやっていく大学自治の考え方、これをさらに進め
ることが望ましいというお考え、私もそのとおりだと思いますし、またそうで
なければいけない、こういうふうに考えております。

 今回、そうした評価機関等をある程度、今回は義務づけるという方向を打ち
出してきた、これについて、そのことがいわゆる大学の自由な研究、そういう
ものを抑えてしまうとかいうことになりはしないかという御懸念、御心配かと
思いますけれども、この今の日本の大学が、もっと大学間の競争のもとで、そ
して社会のニーズにこたえる、あるいは国際社会の中で発信できるような大学
にしていきたいという大学改革の大きな流れの中で考えたときに、あるいは欧
米、特にアメリカの先駆的なやり方等を見ておりますと、これは評価について
は非常に定着したものを持っている。これは必ずしも義務づけではありません
でしょうが、そのことを受けているというそのことが社会的な高い評価を受け
て、あるいは学生が大学を選ぶ一つの大きな基準にしている。日本もやはりそ
こへ近づける努力をしなきゃいかぬ。

 そういうことを考えますと、確かに御指摘のように、まだ今回の大学評価に
ついて、国立大学からもいろいろ注文もついたり、御意見もいただいておる、
そういうものを踏まえながら、これはやはり私学も含めて大学がそれを受けと
めてもらいたい。しかし、その基本はまず第一に自己点検、自己評価にある、
こう思います。しかし、それではどうしても内々の評価になってしまうのでは
ないかという社会の評価もございますので、それを含めて、やはり義務化して
第三者の公正な機関でやっていただくことが大学の活性化につながる、このよ
うに確信をいたしております。

○児玉委員 今副大臣がおっしゃったように、アメリカでは義務づけておりま
せんね。

 そして、ニーズという言い方に対して、学問研究に対する評価のスパンは長
くなければならない。独創性、将来の発展性をどう見るかというときに、ニー
ズよりもシーズだ、その学問研究がどんな豊かな種を持っているか、そこに着
目する必要があるという議論が、日本でも、この国会審議と並行して進んでい
ますね。

 そこで私は言いたいんです。国立大学協会第八常置委員会の大学評価・学位
授与機構への申し入れ、ことしの三月です。先日、私どもの石井郁子議員がこ
の問題を取り上げました。

 その申し入れの中で、評価員の個人的信念という言葉が出てきたり、見解の
相違という言葉も出てきます。私の友人で大学にいる人物から、私は端的にこ
う言われました。信念というのは上品な表現であって、評価員の偏見と言った
方が正確だと。私もそう思う。偏見によって押しつけられて研究が伸びるはず
がない。

 私は文部科学省の皆さんにちょっと聞きたいんだけれども、今、日本の大学
の学長や学部長などの対話で評価疲れという言葉が飛び交っていますね、評価
疲れ。この言葉を御存じでしょうか。私は、一つの問題として、COEの申請
を準備するために何カ月間もみずからの研究を横に置かざるを得なかった研究
者が少なくない、そう聞いています。

 この機会にお尋ねしたいんですが、COEの審査委員会はどのような基準に
よってプログラムを選定したのか、説明責任が全く果たされていません。少な
くとも採択過程、評価基準を公開すべきではないか、こう考えますが、大臣、
どうですか。

○古屋委員長 工藤高等教育局長。(児玉委員「いや、答弁者に設定していな
い」と呼ぶ)まず工藤高等教育局長、お願いします。(児玉委員「では、端的
に答えてください」と呼ぶ)

○工藤政府参考人 COEプログラムの審査は、外部に委託して、江崎玲於奈
先生を委員長とする委員会で定めてございます。公募に当たりまして、こうい
うことで評価しますよという評価基準、項目は既に公表しているところでござ
います。

 ただ、実際にそれぞれの大学の採否に当たって、審査合格はいいんですけれ
ども、残念ながら不採択になりましたところについては、こういう点でお考え
直しいただいてはどうでしょうかということなども含めた審査の側からの観点
を今月中に整理して、関係の大学にお知らせすることにしてございます。

 ただ、確かに、全体を通じての情報公開の仕組み、ことしが初年度でござい
ますので、ことしの反省も踏まえ、かつ大学側の御希望なり意向も踏まえなが
ら、来年度以降、より改善してまいりたいと思っております。

○児玉委員 大臣、今の工藤さんのお話は重要だと思う。説明責任、不採択に、
プログラムにならなかった部分からの異議申し立てを含めて、そのことで双方
的でなきゃいけないと思うので、この点の検討を求めたいと思うんですが、遠
山大臣、どうですか。

○遠山国務大臣 COEプログラムは、私は、このことのプログラムに対する
申請を各大学がどうするかという議論の中で、それぞれの大学の分野を越えた、
その大学が一体どうあったらいいかという本格的な議論がなされたという点で
大変よかったという話を、国立の大学あるいは私立大学の方々からたくさん聞
いております。そういうふうに、COEプログラムそのものが及ぼした効果と
いうのは大変大きいものもあると思います。

 審査は、私は、これは官がやるべきでないということで、これこそまさに専
門家たちが知恵を絞ってやっていただくということで、外部にお願いしたわけ
でございます。そして、結果が公表されて、申請者たちに対しましては、採用
されなかったところについてはその理由をちゃんとお示しをするということに
おいて説明責任を果たしていく、これは非常に大事なことだと思っております。

○児玉委員 そこで、政府、文部科学省が今、国立大学の法人化に向けて突っ
走り始めている、この改正案で提起されている認証評価機関による評価、これ
に対して多くの研究者や国民の懸念、不信が、文部科学省の、法人化に向けて
ともかく一路走り出している、それが不信を強めていますね。

 これは皆さんの有名なパンフレットで、二百八ページのところに、去年の六
月、文部科学省、大学の構造改革の方針、遠山プランと現場では言われていま
すね、そこの中に何と書いてあるか。スクラップ・アンド・ビルドで活性化。
スクラップ・アンド・ビルドと。ビルド・アンド・スクラップじゃなくて、ス
クラップが先に来る。それから、大学に第三者評価による競争原理を導入する。
国公私トップサーティーを世界最高水準に育成。トップサーティーをセンター・
オブ・エクセレンスと言いかえても、現場では今でもこの言葉が生きている。
結局、今度の認証評価機関の提案はここに収れんするのではないか。

 認証評価機関の提起と遠山プランの関連について、遠山大臣からお示しいた
だきたいと思います。

○遠山国務大臣 昨年示されました大学の構造改革の方針といいますものは、
これは日本の大学をいかに国際的にもすぐれたものとしていくかというさまざ
まな努力の前提のもとに、一つの方針として取りまとめたものでございます。

 これは、名称自体、固有名詞を冠して呼ばれることについては、これは私と
しては、みずからの生き方と違うので、これは困ると思っておりますけれども、
それは別といたしまして、認証評価機関の重要性ということにつきましては、
これは昨年示しましたその方針に源を発するということでは全くございません。
これは大学そのものがこれからみずからの教育研究の高い理想を達成していく
ために、より充実し改善していくに際して必要な第三者の目による評価、これ
の必要性につきましては、私は多くの大学関係者それから行政担当者等で共有
されているものだと思っております。

 ということで、昨年の方針そのものもいろいろな議論をベースにした上での
方針でございますし、また、認証評価機関をつくろうとする動きも日本の大学
を本当によくしていく、これは私、日本の社会にとって、日本の大学がどのよ
うにすぐれた教育研究をしていってくれるかということは、まさにその質の向
上ということが日本の将来を左右するというぐらいに思っておりまして、私は
大学というのはそういう社会的な役割ないし意義を持っていると思っておりま
して、それぞれの大学の取り組みというものを前提としながらも、それがます
ます改善され、国際的な角度から見てもレベルの高い内実を持っていただくよ
うにしていくのが私どもの役割だというふうに思っております。

○児玉委員 今の御説明に私は納得しないけれども、この後の事態はしっかり
見ましょう。

 そこで、認証評価機関についての基準を適用するに際しての必要な細目、法
律では「文部科学大臣が、これを定める。」と書いてあるだけで、法案からは
姿が出てきません。学問研究に対する重層的な評価、あえて言えば、私は、今、
日本の大学に対する評価はある意味では縦、横、斜め、もう錯綜して行われて
いる、しかも、それが、資源配分機関が認証結果を参考にすることが十分にあ
り得るところ、先日、石井議員の質問に対してあなたは何のことかわからない
とおっしゃったけれども、わからないでは済まないんで、文部科学省が十月十
一日に出した学校教育法に関しての考え方の中にはっきり書いてあるじゃない
ですか、資源配分機関が評価結果を参考にすることは十分あり得ると。

 制度設計をされた方と私は会ってみたら、この資源配分機関の中に文部科学
省もワン・オブ・ゼムのワンとして入っているというふうに私は聞いた。

 そこで、そうなってきますと、学問研究の場から自由濶達な空気を奪って、
研究者を評価のための自己点検、その他いろいろありますけれども、そういっ
た種類の報告書作成にも追い込んでしまう、研究者を萎縮させることにつなが
らないか。中教審や大学審議会の文書の中にも、過重な負担にならないように
という言葉が散見されるんだけれども、なっているんですよ。

 この点、河村副大臣、どうですか。

○河村副大臣 先ほど御指摘ありましたように、評価員の個人的な思い込みと
いいますか、そういうものが随所にあるんだという指摘があった、こういうこ
とを私はしっかり改める必要があると思いますね。だから、評価員間の相互研
修といいますか、これはやはり評価員の能力というものが非常に問われている
面が一面あると思います。

 御指摘のように、我々文科省、これを設定したときには、大学の活性化につ
ながり、そしてやはり生き生きとした研究ができるように、そういうことに対
してやはり国は支援はいたしますよという思いで、トップサーティーもそうで
ありますけれども、そういうふうにとらえておるわけでございますので、児玉
委員御指摘のような懸念がなきように、やはり我々も十分配慮して、この制度
をしっかり運営していくということが必要だ、こういうふうに思います。

○児玉委員 そこで、ちょっと私は同僚議員にも申したいんですが、ある企業
があって、その企業が企業の営業活動を展開している。そのとき、社員、職員
の活動の評価、評価のための機関だけが肥大化して、経費もスタッフもそっち
の方に集中していったら、こんな企業は多分生き残ることができないでしょう
ね。今日本の大学はそうなりはしないか。

 何よりも重要なことは、日本の学問研究の場で、認証評価機関の評価の尺度
に適応した研究だけが残る。先ほどの友人がこう言いました。現在、大学では
あなた好みの研究という言葉が飛び交っている。あなたというのは評価機関と
評価員のことです。そんな研究だけが残って、さっきのガロアのような創意性
のある、そして小柴さんのノーベル賞受賞のような、ああいうものが育ちます
か。これはもう日本の学問研究にとって非常に重要な損失になりますね。私は
再検討を求めたい。大臣、どうですか。

○遠山国務大臣 私は、評価といいますか、そういう制度について、そのよう
な見方しかできないというのは、私は大学人自身の自信がなさ過ぎると思いま
すね。みずからの教育研究をしっかりやっていれば、どんな評価されたって、
堂々としていればいいと思いますね。しかも、この評価が学問研究の中身、あ
るいはその質の中身に入って評価するものではないわけですね。そこのところ
を十分、むしろ委員の方から御説明いただけたらと思います。

○児玉委員 あなたが言っていることは重要ですね。そんな無責任な評価を許
していいんですか。それがこの問題の本質です。そのことをはっきり言って、
終わります。