国立大学独立行政法人化の諸問題
|国会情報
第155回国会 文教科学委員会 第7号
平成十四年十二月三日(火曜日)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0107/155/15512030061007c.html
local: http://ac-net.org/dgh/kokkai/02/c03-san-bunkyoukagaku.html
日本芸術文化振興会の独立行政法人化について
○山本香苗君 次に、日本芸術文化振興会のことについてお伺いしたいと思うん
ですが、文化芸術振興基本法の成立は、とかく文化をおろそかにしてきた日本の
過去に対する清算であると同時に、二十一世紀を豊かに切り開いていくためのか
ぎとなるものと、これは、劇作家で東亜大学の学長の山崎正和さんが昨年、我が
党の機関紙であります公明新聞に寄せてくださったコメントであります。
正に文化芸術の振興は、これまでの日本の政治、社会の中で見落とされてき
た文化芸術という最も人間性にあふれたものを取り戻す闘いであり、人々の創
造性を開き、多様性を尊重する二十一世紀型社会を構築していく世紀の一大事
業でございます。
我が党は、こうした認識に立ちまして、昨年、文化芸術振興基本法を成立さ
せました。この基本法の制定は、文化芸術大国構築に向けての大いなる出発点
でありまして、これからも心豊かな二十一世紀の日本を作るための闘いに全力
で取り組んでいきたいと思っているわけでございますが、そこで大臣にお伺い
したいと思っております。
この日本芸術文化振興会の独立行政法人化は、単なる十把一からげの改革じゃ
ない、我が国の文化振興の流れを後退させるようなものでもない、あくまでも
我が国は文化立国で行くんだという姿勢は変わらないといったことをはっきり
と御答弁していただきたいと思います。
○国務大臣(遠山敦子君) 日本の国家の存立にとって教育なり科学技術なり
というものも大事でございますし、またスポーツの振興も大事でございますが、
やはり社会の基盤として文化の振興というものは極めて大事だと私は考えてお
ります。
そのような背景の下に、委員の先生方の御努力によりまして、昨年の十一月
に文化芸術振興基本法を成立させていただきました。これを踏まえて目下様々
な振興策に取り組んでいるところでございます。
もちろん、豊かな芸術が振興され、そして国民が様々な文化活動に携わると
いうことによって文化の国としてしっかり歩んでいきますためには、国民一人
一人の努力というものが大事だと思いますし、芸術家が優れた芸術活動を通じ
てそういう文化の質を高めていくというような御努力も大変大事だと思います。
しかしながら、芸術文化につきましては、これは必ずしもそう経済力に結び
付くわけでございませんし、また採算の取れるものではないという、そういう
性格を持っておりますところから、やはり国としては芸術文化振興ということ
は極めて大事な役割だと、役割を持っていると私は考えております。その意味
におきまして、日本芸術文化振興会はそうした国が支えるべき芸術文化につい
ての必要な施策を具体的に展開していくための組織であるというふうに考えて
おります。
先生御存じのように、これまでも幾つかの機能を果たしてまいっております
が、一つは伝統芸能の保存、振興ということでございまして、能楽、文楽、歌
舞伎など、そうした日本が古来蓄積をしてまいったそういう伝統芸能をしっか
り支えていくための機能を一つ果たしておりますし、またオペラ、バレエ、演
劇などの現代舞台芸術の振興、普及もやっているわけでございます。
さらに、そうした国立劇場を使ってやる事業だけではなくて、幅広い芸術文
化活動への助成事業をやっておりまして、これが日本の文化について非常に重
要な役割を持っているトップクラスの芸術家たちの活動を支えるのと同時に、
すそ野を広くしていくという角度からいろんな地域の芸術文化活動に対する助
成も行っているということで、これら三つの機能を今後ともしっかりとやって
いく必要があると思っております。
それは、現在特殊法人でありますものを独立行政法人にしていくことによっ
て、むしろ新たな法人化による業務の効率化ないし活性化というふうなことを
図ることによってメリットを生かしていくということでありまして、決して後
退ではなく、むしろ今後正に日本にとって重要な芸術文化振興の拠点としてしっ
かりと仕事をやっていくべき、そういう組織であるというふうに考えておりま
す。
○山本香苗君 ありがとうございます。
独立行政法人化しますと中期目標、中期計画を策定しなくてはいけないわけ
なんですが、この日本芸術文化振興会が独立行政法人化したときに、具体的に
どういった目標を置くことを想定されていらっしゃるんでしょうか。
○政府参考人(銭谷眞美君) 独立行政法人の中期目標については主務大臣が
定めるわけでございますけれども、独立行政法人通則法におきましては、中期
目標の事項として、中期目標の期間、業務運営の効率化に関する事項、国民に
対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項などを定めるこ
ととされております。
ちなみに、先生も尋ねていただきました先行独立行政法人でございます国立
美術館では、中期目標の期間は五年として、長期的な計画による業務運営の効
率化を図るとともに、特に国民に提供するサービスの向上を図る事項につきま
しては、作品の収集・保管、展示、調査研究、教育普及といった事業ごとに取
り組むべき目標を記載をしているところでございます。
日本芸術文化振興会の中期目標につきましても、日本芸術文化振興会の行う
事業、すなわち国立劇場、新国立劇場の管理運営、芸術文化振興基金の運営、
芸術家の研修、調査研究事業等のそれぞれの事項ごとに目指すべきところを記
述することになろうかと思っております。
その場合、芸術その他の文化の向上に寄与するという法人の目的にかんがみ
まして、例えば単純に入場者数などの数値に着目をした目標だけではなくて、
芸術文化活動の特性を考慮しながら、助成事業や劇場運営事業の内容に正確に
対応した目標というものを考えていきたいというふうに思っております。
○山本香苗君 新国立劇場の運営業務については厳格な外部評価が課され、そ
れによって国費助成が見直されるというふうになっておりますけれども、この
厳格な外部評価というのは具体的に何になりますでしょうか。
○政府参考人(銭谷眞美君) 独立行政法人は事前の規制を行うというよりは、
先ほど申し上げました中期目標、それから法人が作ります中期計画による目標
管理というものを基本といたしまして、事後的に業績評価を行う仕組みとなっ
ております。この事後評価は第三者機関である独立行政法人評価委員会が行う
わけでございますけれども、現在、文部科学省所管の独立行政法人については
文部科学省独立行政法人評価委員会、ここが評価を行っているところでござい
ます。
日本芸術文化振興会及びその管理下にございます新国立劇場につきましても、
今後、先行する独立行政法人と同様に文部科学省独立行政法人評価委員会にお
いて評価が行われるということになろうかと思っております。
この独立行政法人の評価につきましては、まず各事業年度ごとに、先ほど申
し上げました中期計画の実施状況の調査分析、その中にはお見えになりました
お客様に対するアンケート調査の結果なども踏まえまして、当該事業年度にお
ける業務の実績の全体についてこの評価委員会で総合的な評定をするというこ
とになろうかと思っております。
このような評価の実施に当たりましては、文化芸術活動を実施をし、支援を
図るという日本芸術文化振興会の事業の特性に配慮をした適切なものになるよ
うに考えてまいりたいと思っております。
○山本香苗君 今、歌舞伎俳優の二七%が国立劇場の養成所から出ているそう
です。つまりは、四人に一人が国立劇場の養成所で養成されていると。文楽だ
ともう四二%が国立劇場での出身者と。つまり、国立劇場がなければ文楽は半
分の人数でやらなくちゃいけなくなるから、文楽の人形は手は動くけど足が動
かなくなっちゃうということはないとは思うんですけれども、それぐらい国立
劇場というのは文化の伝承者の養成に頑張っているというふうにお伺いしてお
ります。
こうした伝統芸能の伝承者養成、舞台芸術の実演家への研修が独立行政法人
化によって影響を受けることはありますでしょうか。
○政府参考人(銭谷眞美君) 歌舞伎、文楽関係の伝統芸能の後継者の養成に
つきましては、国立劇場が中心となりまして実施をしているわけでございます。
今後とも、独立行政法人になりましても歌舞伎、文楽の関係者の養成事業とい
うことは実施をしてまいりたいと考えておりますけれども、その内容につきま
しては、例えば後継者の、何といいますか、育成状況といいましょうか、全体
の事業規模に対するそういう担い手の数の割合でございますとか、そういった
諸要素を勘案しながら、本当に必要な後継者の養成は十分行えるように配慮を
してまいりたいと、かように考えております。
○山本香苗君 国立劇場では高校生のための歌舞伎教室とか、新国立劇場では
高校生のためのオペラ教室が低料金で行われているというふうにお伺いしてお
ります。こうしたものは商業ベースに乗りにくいものでありますが、是非とも
続けていっていただきたいなと思っているんですが。
演出家であり、劇団四季の会長である浅利慶太さんが新国立劇場につきまし
ていろんな意見を述べていらっしゃるわけなんですけれども、新国立劇場はだ
れのものか、国費投入にあぐらをかく一部演劇人に猛省を促すとか、小泉総理
よ、文化界の抵抗勢力にも大なたをといったことを言っていらっしゃって、す
ごく大まかに要約すれば、国民の血税である税金を投入している限り、文化芸
術といった分野においても不透明な無駄遣いは見直さなくちゃいけないと。特
に新国立劇場は経費の支出が不明瞭だというようなことを言っていらっしゃる
わけなんですが、こうした点は今後独立行政法人化することによってきちっと
改めていくべきだと思います。
と同時に、新国立劇場が全国に展開する演劇運動の、各演劇の発信地、全国
への、地方にまで発信していくような拠点としての役割を担っていく上での活
動を支障ないようにするための国費助成というものはきちっと行っていただき
たいと思っております。
ところで、ちょっと話ががらっと変わるわけなんですが、今月から「明日の
風に向かって」というあるアニメ映画が流される、全国放映がされるそうなん
ですけれども、この映画の主人公は筋ジストロフィーの山田さんという方で、
同じ病気のお兄さん二人とともに真夏のキャンプをしたり、映画の自主制作な
ど活動をして、ついに民間初の障害のある人たちのための福祉ホームを実現す
るという、実話に基づいたアニメだそうです。
突然何でこんな話をしたかと申しますと、この映画の制作費がこの日本芸術
文化振興会の助成となっているわけでございまして、こうした映画というのは
大変大事だけれども、なかなかコマーシャルベースにはならない、助成に頼る
部分が大半だと思うんですが、独立行政法人化することによってこういった映
画に対する助成が影響を受けることはないのか、また映画制作の助成事業とい
うのは他にはどういった形でなされているのか、教えていただきたいと思いま
す。
○政府参考人(銭谷眞美君) お話のございました芸術文化振興基金は、政府
と民間双方の出資によりまして平成元年に創設をされました。現在、総額六百
四十二億円の基金を持っておりまして、これを元に日本芸術文化振興会が運営
し、多様な分野の芸術文化活動に対しまして助成を行っております。
この基金による助成は、今日まで映画につきましてでもかなり助成を行って
おりまして、関係者にとっては非常にいい制度として定着をして、基金による
助成を前提として意欲的な芸術創作活動が展開をされているものと考えており
ます。
昨年成立をいたしました文化芸術振興基本法におきましても、映画について
はメディア芸術の代表格として、その「製作、上映等への支援その他必要な施
策を講ずるもの」と定められておりまして、独立行政法人化後の芸術文化振興
基金による助成は引き続き実施をしていくことが重要であると考えております。
なお、芸術文化振興基金以外にも、映画制作の支援につきましては、基本法
の趣旨を踏まえながら、最近、文化庁におきましても幾つかの施策を実施をい
たしております。例えば、地域に着目した映画制作への支援でございますとか、
日本のトップレベルの映画制作団体に対する重点支援といったようなものを開
始をして、年々充実を図っているところでございます。
なお、平成十五年度の概算要求におきましても、映画制作支援等につきまし
ては、本年度に比べまして二・二倍増の要求を行っているという状況にござい
ます。
加えまして、今年五月から、日本映画の制作支援の充実策などを幅広い観点
から検討するための映画関係者及び有識者から成る映画振興に関する懇談会を
文化庁で立ち上げております。経済産業省など関係府省の協力も得て検討を進
めておりまして、文化庁といたしましては、この懇談会の御意見も聴きながら、
今後とも映画の振興に努めてまいりたいと考えております。