当審議会では「21世紀の司法を支え るにふさわしい資質と能力(倫理面を含、む)を備えた法曹をどのようにして 養成するか(論点整理)という視点から法曹」養成制度の在り方について、本 年3月2日、3月14日及び4月14日の3回にわたって審議を行った末4月 25日の第18回会議においてその結果を取りまとめ「司法制度の制度的基盤 の強化が実を結び、成果を挙げるためには、その制度を委ねるに足る質・量と もに豊かな人材(法曹)を得なければなら」ず、現行の法曹養成制度について 指摘される種々の問題点を克服し「司法・法曹が21世紀のわが、国社会にお いて期待される役割を十全に果たすための人的基盤を確立するには、法曹人口 の大幅な増加や弁護士改革など、法曹の在り方に関する基本的な問題との関連 に十分に留意しつつ、司法試験という『点』のみによる選抜ではなく法学教育・ 司法試験・司法修習を有機的に連携させた『プロセス』としての法曹養成制度 を新たに整備することが不可欠である」との認識で一致した。そして、その新 たな法。曹養成制度の中核を成すものとして、法曹養成に特化した教育を行う プロフェッショナル・スクールとしての「法科大学院(仮称。以下同じ)の構 想が「有力な方」。策であると考えられる」が、各方面で議論されている法科 大学院の構想には様々のものがあり、その内容や司法試験・司法修習との関係 等、具体的に詰めるべき点がなお少なくないので、それらの点につき専門的・ 技術的な面を含め十分に検討した上で、同構想の採否を含め、法曹養成制度の 在り方につき判断を下すこととした。 そのため、当審議会としての「法科大学院(仮称)に関する検討に当たっての 基本的考え方」を提示するとともに、文部省に対し、大学関係者及び法曹三者 の参画の下に適切な場を設けて、法科大学院における法曹養成教育の在り方や その制度設計に関する具体的事項について、専門的・技術的見地から検討を行 い、その結果を当審議会に資料として提出することを依頼した。これを受けた文部省では大学関係者及び法曹三者の協力の下に法科大学院仮、 「(称)に関する検討会議」を設けて、集中的な検討を行った上、本年8月7 日の当審議会の集中審議において、その段階までの議論の要点を整理して報告 し、当審議会委員との意見交換を行った。そして、それを踏まえて、さらに検 討を重ねた末、本年9月末、その結果をまとめた「法科大学院(仮称)構想に 関する検討のまとめ法科大学院(仮称)の制度設計に関する基本的事項」と題 する報告書を当ーー審議会に提出した。 当審議会では、その報告書を手がかりにして、同10月6日、16日及び24 日の3回にわたり、法曹養成制度の在り方につきさらに審議を行った結果、以 下のような判断に達した。
1. 法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の整備
21 世紀の司法を担う質・量ともに豊かな法曹を育成し、司法の人的基盤を 確立するため、司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法科大学院 (仮称)を中核とし法学教育・司法試験・司法修習を有機的に連携させた「プ ロセス」としての法曹養成制度を新たに整備すべきである。2. 法科大学院
2.1 目的・理念
目的(1)
法科大学院は、司法・法曹が世紀のわが国社会において期待される役割を十全21 に果たすための人的基盤を確立することを目的とし、司法試験・司法修習と連携し た基幹的な高度専門教育機関とする。教育理念(2)
法科大学院における法曹養成教育の在り方は、理論的教育と実務的教育を架橋 するものとして、以下の基本的理念が統合的に実現されるようなものでなけれ ばならない。 (i)法科大学院における教育は、法の支配の担い手であり「国民の社会生活上 の、医師」としての役割を期待される法曹に共通して必要とされる専門的資質・ 能力の習得と、かけがえのない人生を生きる人々の喜びや悲しみに対して深く 共感しうる豊かな人間性の涵養・向上を図るものでなければならない。 (ii)法科大学院における教育は、専門的な法知識を確実に習得させるとともに、 それを批判的に検討し、また発展させていく創造的な思考力、あるいは事実に 即して具体的な法的問題を解決していくために必要な法的分析能力や法的議論 の能力等を育成するものでなければならない。 (iii)法科大学院における教育は、先端的な法領域について基本的な理解を得 させ、また、社会に生起する様々な問題に対して広い関心を持たせ、人間や社 会の在り方に関する思索や実際的な見聞・体験を基礎として、法曹としての責 任感や倫理観が涵養されるよう努めるとともに、さらに実際に社会への貢献を 行うための機会を提供しうるものでなければならない。制度設計の基本的考え方(3)
法科大学院の制度設計に当たっては、公平性、開放性、多様性を旨とし、上記 のような教育理念の実現を図るとともに、以下の点を基本とすべきである。 (i)法科大学院の設置については、適正な教育水準の確保を条件として、関係者 の自発的創意を基本にしつつ、全国的に適正な配置となるよう配慮すること (ii)法科大学院における教育内容については、学部での法学教育との関係を明確 にすること (iii)新しい社会のニーズに応える幅広くかつ高度の専門的教育を行うとともに、 実務との融合をも図る教育内容とすること (iv)法科大学院における教育は、少なくとも実務修習を別に実施することを前提 としつつ、司法試験及び司法修習との有機的な連携を図るものとすること (v)以上のような教育を効果的に行い、かつ社会的責任を伴う高度専門職業人を 養成するという意味からも、教員につき実務法曹や実務経験者等の適切な参加 を得るなど、実務との密接な連携を図り、さらには実社会との交流が広く行わ れるよう配慮すること (vi)入学者選抜については、他学部・他大学の出身者や社会人等の受入れにも十 分配慮し、オープンで公平なものとすること (vii)資力のない人や社会人、法科大学院が設置される地域以外の地域の居住者等 にも法曹となる機会を実効的に保障できるよう配慮すること (viii)法科大学院における適正な運営の確保及びその教育水準の維持・向上を図る ため、公正かつ透明な評価システムを構築するなど、必要な制度的措置を講じ ること2.2 法科大学院制度の要点
(i). 設置形態
○法科大学院は、法曹養成に特化した実践的な教育を行う学校教育法上の大学 院とする。ただし、法科大学院の設置は既存大学を拠点としなければならない わけではなく例えば弁護士会や地方自治体など大学以外の主体が学校法人を作 り法科大学院の設置基準を満たせば、当然に法科大学院を設置し得る。 ○法学部に基礎を持たない独立大学院、複数の大学が連合して設置する連合大学 院等の多様な形態を認める。(ii)標準修業年限
○標準修業年限は3 年とし、併せて、法科大学院において必要とされる法律 学の基礎的な学識を有すると法科大学院が認める者(法学既修者)については、 法学部を卒業しているか否かにかかわらず、短縮型として2 年での修了を認 める。(iii)入学者選抜
○入学者選抜は、公平性、開放性、多様性の確保を旨とし、入学試験のほか、学 部における学業成績や学業以外の活動実績、社会人としての活動実績等を総合的 に考慮して合否を判定する。これらをどのような方法で評価し、また判定に当た ってどの程度の比重を与えるかは、各法科大学院の教育理念に応じた自主的判断 に委ねられるべきである。 ○このうち入学試験は、全ての出願者について適性試験を行い、法学既修者と して2 年での修了を希望する者には併せて法律科目試験を行うという方向で、 各試験の在り方を検討する。 ○法科大学院は、学部段階での専門分野を問わず学生を受け入れ、また、社会 人等にも広く門戸を解放しなければならない。そのため、法学部以外の学部の 出身者や社会人等を一定割合以上入学させるなどの措置を講じることとする。(iv)教育内容・方法
○必置科目や教員配置等については、その基準を、大学院としての設置認可や 第三者評価に関する基準として定めることにより、法曹養成のための教育内容 の最低限の統一性と教育水準を確保しつつ、具体的な教科内容等については、 各法科大学院の創意工夫による独自性・多様性を尊重することとする。 ○法科大学院では、実務上生起する問題の合理的解決を念頭に置いた法理論教 育を中心としつつ、実務教育の導入部分をも併せて実施することとし、体系的 な理論を基調として実務との架橋を強く意識した教育を行う。 ○法科大学院における教育は、少人数教育を基本とする。 ○法科大学院の修了者のうち相当程度が新司法試験に合格するような制度とす るためには、厳格な成績評価及び修了認定を行うことが不可欠である。(v)教員組織
○法科大学院では、少人数で密度の濃い教育を行うのに相応しい数の専任教員 を必要とする。 ○法曹養成に特化した高度な法学教育を行い、理論的教育と実務的教育との架 橋を図るため、実務経験を有する教員(実務家教員)の参加が不可欠である。 その数及び比率については、法科大学院のカリキュラムの内容や新司法試験実 施後の司法修習との役割分担等を考慮して適正な基準を定める必要がある。 ○実務家教員の任用を容易にするため、弁護士法や公務員法等に見られる兼職・ 兼業の制限等について所要の見直し・整備を行う必要がある。 ○法科大学院での教員資格に関する基準は、教育能力や教育実績、実務家とし ての能力と経験を大幅に加味したものとすべきである。(vi)学位
○法科大学院の修了者に付与される学位については、国際的通用性をも勘案し つつ、法科大学院独自の学位(専門職学位)を新設することを検討すべきであ る。2.3 公平性・開放性・多様性の確保
○地域を考慮した全国的な適正配置に配慮するとともに、夜間大学院や通信制 大学院等の多様な形態により、社会人等が学びやすい環境を積極的に整備する 必要がある。 ○資力が十分でない者が経済的理由から法科大学院に入学することが困難とな ることのないように、格別の配慮が必要であり、奨学金、教育ローン、授業料 免除制度等の各種の支援制度を整備する必要がある。 ○司法の人的基盤の整備の一翼を担うという法科大学院の役割にかんがみれば、 厳しい財政事情の中においても、国公私立を問わず、適切な評価の結果を踏ま えつつ、公的資金による財政支援が不可欠である。2.4 設立手続及び第三者評価(認定)
○法科大学院の設置認可は、関係者の自発的創意を基本としつつ、設置基準を 満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとする。ただし、 その基準は、法曹養成の中核的機関としての使命に相応しく厳格なものでなけ ればならない。 ○また、法科大学院における入学者選抜の公平性・開放性・多様性や法曹養成 機関としての教育水準、成績評価・修了認定の厳格性を確保するため、適切な 機構を設けて、第三者評価(認定)を継続的に実施する。 ○第三者評価(認定)の仕組みは、新たな法曹養成制度の中核的機関としての 水準の維持・向上を図るためのものであって、大学院としての設置認可や司法 試験の受験資格の付与とは、密接に連関しつつも、独立した意義と機能を有す るものであり、評価(認定)基準の策定や制度の運用等に当たっては、それぞ れの意義と機能を踏まえつつ、相互に有機的な連携を確保する必要がある。2.5 関係者の責任
○法科大学院は、21 世紀の司法を担う質の高い法曹を養成するという重大 な役目を担うものであって、その実りある実現のためには、教員、教育内容や 方法その他の人的・物的な面で相当の労力時間及び資金を投入しなければなら ない大学関係者と法曹関係者の責任は極めて重く、それを十分自覚しつつ法科 大学院の設置及び運営に当たることが切に求められる。3. 司法試験
3.1 受験資格
○法科大学院制度の導入に伴い、司法試験も、その修了を要件とする新たなも のに切り替える。新司法試験の受験資格の付与は、適切な第三者評価(認定) の制度が整備されることを踏まえ、それによる認定を受けた法科大学院を修了 したことを前提とすることが望ましい。 ○やむを得ない事由により法科大学院への入学が困難な者に対しては、法科大 学院を中核とする新たな法曹養成制度を整備することの趣旨を損ねることのな いよう配慮しつつ、別途、法曹資格取得を可能とする適切な例外措置を講じる べきである。 ○新司法試験の受験回数については3 回程度の受験回数制限を課すべきである3.2 試験方式及び内容
○法科大学院において充実した教育が行われ、かつ、厳格な成績評価や修了認定 が行われることを前提として、新司法試験は、法科大学院の教育内容を踏まえた ものとし、かつ、十分にその教育内容を修得した法科大学院の修了者又は修了予 定者に新司法修習を施せば、法曹としての活動を始めることが許される程度の知 識、思考力、分析力、表現力等を備えているかどうかを判定するものとすべきで ある。3.3 移行措置
○新制度への完全な切り替えに至る移行措置として、現行司法試験の受験生に不 当な不利益を与えないよう、新司法試験実施後も一定期間は、これと併行して現 行司法試験を引き続き実施する。 ○なお、現行司法試験におけるいわゆる合格枠制(丙案)の取扱いについても、 移行措置期間内における現行司法試験の実施の在り方を検討する中で考慮すべき である。4. 司法修習
4.1 修習の内容
○新司法試験実施後の司法修習は、修習生の増加に実効的に対応するとともに、 法科大学院での教育内容をも踏まえ、修習内容を適切に工夫して実施する。 ○新司法試験実施後の司法修習のうちの集合修習(前期)と法科大学院での教育 との役割分担の在り方については、今後、法科大学院の制度が整備され定着する のに応じ、随時見直していくことが望ましい。4.2 司法研修所
○司法研修所の管理・運営については、法曹三者の協働関係を一層強化すると ともに、法科大学院関係者や外部の有識者の声をも適切に反映させる仕組みを 考えるべきである。
以上のような内容を骨格とする新たな法曹養成制度を可能な限り早期にかつ円 滑に実施に移すことのできるよう、当審議会としては、法科大学院の設置認可 や第三者評価(認定)の基準の策定、新司法試験及び新司法試験実施後の司法 修習の具体的な設計等を含む所要の措置について、関係機関において適切な連 携を図りつつ、上記の文部省検討会議の報告書をも参考としながら、当審議会 の最終意見を待たず速やかに検討を進めることを期待する。特に、設置認可及 び評価(認定)のための基準については、法科大学院を設置しようとする大学 等が公平な条件の下に十分な準備ができるよう、当審議会が内閣に最終意見を 述べた後に遅滞無くその内容を公表し、周知を図ることとすべきである。 以上