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Subject: [kd 03-03-13] 国立大学協会への高知大学意見書
Date: Thu, 13 Mar 2003

国公立大学通信 2003.03.13(木)


--[kd 03-03-13 目次]--------------------------------------------
[1] 法案概要についての高知大学意見書
[2]「国立大学法人法案の概要」に対する各国立大学からの意見の概要
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各位

  前号で紹介しましたが、36国立大学から国立大学協会に提出された法案概
要についての意見書が公開されました。国立大学協会法人化特別委員会が整理
したもの[2]を見ると、学長そして大学幹部の中に、国立大学の将来を本当に
心配している方々が少なからずおられることを実感します。広汎に問題を指摘
している高知大学意見書を転載します。国立大学協会は、国立大学法案法案に
ついて検討し、このような意見書を臨時総会で決議して頂きたいと思います。
国立大学としての率直な意見を表明することは今何よりも社会から求められて
いることであり、ほとぼりがさめるまでただ黙っていれば済むような状況では
ないと思います。

  宇都宮大学意見書にある批判、「安全性の概念からいえば、物事は安全だと
いう人より、危険だと言える人に任した方がより安全である。国立大学法人法
案も文科省の考えは国大協の意向に添っているから大丈夫というより、危ない
という認識が重要。・・・そうした点から、1で述べたように、法制化対応グ
ループの国立大学法案に対する分析が甘い、もっと厳しく判断し、その中でど
う運営することが、個々の大学の自主的な発展につながるかが重要な課題であ
る。」という批判は、国立大学全体が検討を委ねた形になっている覆面「法制
化対応グループ」の致命的欠陥を突いています。この覆面グループは一体何者
で何を考えているのか、一体誰のエージェントなのか、と思わずにはおられま
せん。

  また、東京外国語大学の批判「1. 調査検討会議の最終報告では法人化後の
大学の設置者は国であるとされていたが、「概要」では国立大学法人であると
されている。この変更について「見解」は、立法技術上の問題として整理し、
2月10日の文部科学省の説明もほぼ同様であったと理解している。もし、そ
うであるならば、最終報告とりまとめ時にこれに参加された法律の専門家によっ
て、その点は当然予想されていたと考えられるが、それについての問題点の指
摘や議論は、一般の学長レベルで分かるかたちではなされなかった。法人化の
根幹にかかわる変更を立法技術上の問題として説明し大学構成員の理解を得る
ことはきわめて難しい。」には全く同感です。

  なお、法案概要の「学部・研究科・付置研究所・附属学校は省令で規定する」
という部分は、国会に提出された国立大学法人法案では削除され、附属学校を
除いてすべて大学自身の判断で設置改廃できることになりました。多くの大学
が、附属図書館の設置は省令で定めるようにすべきだ、という意見を述べてい
た以上、法案のこの部分だけでも国立大学のコンセンサスは得られていません。
このような過激な「規制緩和」で予想されることは、ニュージーランドで広汎
に起ったように、学術的には重要な部局や付置研が経営的判断により廃止され
てしまう「事件」の多発です。昨年の最終報告「新しい国立大学法人像につい
て」には明確に「大学の教育研究組織のうち、例えば、学部、研究科、附置研
究所等については、その性格上いわば各大学の業務の基本的な内容や範囲と大
きく関わるものであり、これらの内容や範囲は、あらかじめできるだけ明確に
しておく必要がある。・・・各大学の業務の基本的な内容や範囲を法令(具体
的には省令)等で明確化する方法を工夫する。」と記載されていますので、さ
すがの「法制化対応グループ」でも、法案と「最終報告」との間には大きな矛
盾はないとは言い難いのではないでしょうか。しかし、ひょっとすると、「大
学の自由度を高める点で最終報告よりも改善された」と言うのかも知れません。
教育・研究を実施する者が実質的な発言権がない国立大学法人の「自由度」と
は、経営者の自由度でしかなことは言うまでもありません。(編集人)



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[1] 国立大学協会への高知大学意見書
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030311kokudaikyou-4.htm
http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/agency/specialcommittees/specom12siryou1.pdf
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はじめに

概要及び法制化対応グループ見解について、高知大学は国立大学協会の一員と
して、国立大学の法人化に関して、独立行政法人通則法によらない新しいタイ
プの国立大学法人化を展望し、その実現を目指してきた。この立場から、概要
や法制化対応グループ見解にはいくつかの疑義を挟まざるを得ない。法案化の
最終段階で、国立大学協会が英知を結集して今後の大学の未来にとって禍根を
残さない対応をとられることを切望し、この間の経過に鑑み、国立大学のあり
方に関する法律上の改変は最小限の規定にとどめ、今後の各大学の取組みの中
で解決できる余地を残すために、性急な制度化を避けるという配慮が今、必要
であることを強調したい。

1.国立大学法人法の性格の明確化

国立大学法人化問題は、国の行財政改革を契機としながらも、それとは一線を
画して大学改革の一環として行なうということは、国立大学協会や文部科学省
を含め、国立大学関係者の一致した考えであった。

平成14年3月の最終報告は、国立大学の法人化を検討する場合に、まず前提
とされるべき基本的考え方の整理、検討の前提として、(1)大学改革の推進、
(2)国立大学の使命、(3)自主性・自律性の3点を掲げていた。(1)の
中では、「現在の国立大学に、単に法人格を付与するとか、既存の法人制度の
枠組みを単純に当てはめるといった消極的発想ではなく、予算・組織、人事な
ど様々な点で規制が大幅に緩和され大学の裁量が拡大するといった法人化のメ
リットを大学改革のために最大限に活用するという積極的な発想に立って、新
しい国立大学の姿を模索する必要がある。」としていた。

概要では、国立大学法人とは「独立行政法人通則法に規定する独立行政法人で
はなく、この法律の定めるところにより設立される法人をいう」としている。
現行の国立大学は国立学校設置法で規定される国の機関であり、学校教育法第
5条の設置者管理主義、設置者負担主義の原則に則り、国が維持・管理し、憲
法で保障する学問の自由に基づき、大学自治の法制と慣行が成立してきた。一
般の独立行政法人の制度になじまないというのは、こうした大学という社会制
度、機関の特性を踏まえた当然の帰結である。したがって、国立大学法人化の
立法作業においては、この原則をさらに発展させ、自治・自律の拡大に伴う管
理や社会的説明責任のあり方や国費支出の受け皿としての公的責任の所在を担
保するために、いかなる法制がふさわしいのかが中心課題となるべきである。

この見地からすれば、現行の国立学校設置法の一部改正の発想や独立行政法人
通則法の仕組みの外での新しい国立大学設置法等の発想があり得ると考えられ
る。概要ではそうした場合のメリット、デメリット等についてまったく明らか
にされていない。なぜこうした法案の形式に至ったのかを文部科学者及び国大
協特別委員会はすべて大学に説明する義務がある。


2.国立大学が法人を管理運営するのか、国立大学法人が国立大学を管理運営
するのか国立大学も大学の一種であるから、当然に学校教育法の定める大学の
規定に従う。日本における大学の法律上の規定は、憲法や教育基本法を受けて、
学校教育法第5章に存在し、大学の目的、組織、職員、教授会等が定められて
いる。これらを前提に大学の管理運営の仕組みや慣行が存在している。

概要では、学校教育法改正は第2条を除き、予定されていない。したがって、
概要が改革の対象にしているのは学校教育法が予定している大学の教育研究の
目的や組織一般ではなく、国立大学の設置形態や維持管理の仕組みであり、学
校教育法でいえば、その総則に当たる第1章に関わる部分のはずである。さら
に教育公務員特例法で規定されている大学の自治に関わる仕組みの継承が課題
となる。

概要は、国に包摂される各国立大学法人が各国立大学の設置者であるとする。
すなわち、各国立大学法人は、その設置する大学その他の教育研究機関の維持・
管理の責任主体となる。このことを理由に、国立大学法人の運営組織と国立大
学の運営組織の一体化が図られ、法人の運営組織に大学の運営組織が接着され
ることになった。その結果、評議会は教育研究評議会としてその機能と権限を
限定され、教授会はその名称も消えている。

大学を構成するアカデミック・コミュニティの権限が一段と弱められ、もっぱ
ら管理の対象とされている感がある。確かに、評議会や教授会のあり方につい
て、この間、諸々の議論があることは事実だが、学校教育法において大学の
「重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と必置事項と
なっている教授会がその名称すら出てこないのは不可解さを通り越して不審を
抱かせるものである。

要は、国立大学法人の運営組織を重視するあまり、大学自体の運営組織につい
てはこれを軽視ないしは敵視し、それが持つ教育研究・大学運営上の機能につ
いて正当に評価する視点が保持されていないことが問題である。いまや、大学
自治の担い手を教授会、その代表者である評議会のみに求める時代ではない。
しかし、だからといって弊履のごとく、これを投げ捨ててよいわけではない。
その活性化や再構成の方向もあるのであり、少なくとも大学における法定心置
機関である教授会については、その位置づけを国立大学法人法で行なうべきで
ある。


3.経営事項と教学事項の機械的分離の問題

大学の主たる任務は教育研究であり、大学の業務はすべて教学に属すると言う
こともできる。したがって、教学事項は広く概念化し、経営事項は狭く概念化
するのが適切である。中期目標や中期計画、組織の設置改廃及び予算計上など
もその目的や支出の方法、評価を考えれば、その実施に当たる当事者の介在な
しに効果をあげるものではない。国立大学は、国が設置する高等教育機関であ
り、国民の税金に支えられる大学である。法人に移行して、国の資産や交付金
を受け取る以上公的な管理責任を自主的に負わなければならない。だからこそ、
教育研究に当たる当事者による自己決定権の仕組みが必須であり、このシステ
ムの下ではじめて当事者に対する結果責任も問えるのではないだろうか。

謂うところの教育研究評議会の権限を教学事項に限定するという消極的発想で
は大学の活力は生まれない。少なくとも評議会・教授会サイドに学長をはじめ
とする役員会の人事権を付与すべきであろう。この点、諸外国の事例に学ぶべ
きである。


4.個別事項

〔1〕大学設置形態

(1) 最終報告においては、「学校教育法上は国を設置者とする」、「大学の運
営組織と別に法人としての固有の組織は設けないことを原則とする」とまとめ
られたが、概要においては、学校教育法第2条を修正して、学校教育法上は法
人化後も「国立大学」とするとし、「国立大学法人」が「国立大学」を設置す
ると本質的な違いをみせている。その結果、国の財政上の責任は不明確なもの
となり、法人は経費負担の直接的な責任を負うこととなる。「独立行政法人法
通則法」を準用する点など財源措置について不透明さは免れないので、国立大
学の公共性を高めるために、国が財政上の責任を負うことを義務づける規定を
盛り込むべきである。

(2) 経営と教学が明確に分割され、大学の自主的・自治的管理範囲は大きく制
限されている。この点は、国立大学協会法人化特別委員会法制グループの意見
にも反する。「経営協議会」は、「学外委員が2分の1以上でなければならな
い」としているので、学外者の意見が押し通され、一般の会社経営的発想で打
ち出す経営方針に、「教育研究評議会」や全教員が従わさせられ、教育研究の
軽視を生む要因となり、大学自治の本質を失わせる危険性が高い。最終報告の
性格とは異質な構造をもつものになっている点を修正すべきである。

(3) 大学においてはこれまでの運営が示すように教学と経営は明確に分離する
ことができない。「経営と教学の双方にまたがる案件」については、評議会と
経営協議会の両組織の「代表による合同の委員会等を開催する」などが考えら
れていたが、概要では「主に」が取り去られ、合同の委員会等については言及
されていない。したがって、教育研究評議会は形式上では国立大学法人の組織
とされているが、「国立大学の教育研究に関する重要事項を審議する機関」と
規定され、国立大学法人の運営(予算の編成・執行、決算、組織の設置・廃止
など)からは、法構造的に排除されている。大学の基本的で主要な業務は教育
研究であることに変わりなく、大学の経営といえどもその主要な内容は教育研
究に大きく関わっていることは言をまたなく、大学の根幹を揺るがすような教
学と経営を明確に分離すべきではない。

(4) 「独立行政法人通則法の規定は必要に応じ準用」と述べていることから通
則法の基本骨格が貫徹され、各国立大学法人が各々国立大学を設置するが、将
来的には、複数の大学を設置可能となっている。その場合、教育研究評議会は
各国立大学ごとに必要となるので経営協議会に対する教育研究評議会の発言力
は低下する。「国の関与と法人の自主性・自律性の担保」という法人制度のも
つ矛盾が法案化によりさらに顕在化し、学問の自由と大学自治を保障する制度
上の枠組みを著しく弱体化させ、取り返しのつかない深刻な悪影響を招く恐れ
がある。

(5) 国を直接の設置主体とする場合と、国に含まれる国立大学法人が設置主体
となる場合でどのような具体的な差異が生じるか慎重に検討する必要があるが、
問題は大学の管理運営が「大学」の組織によってではなく、「法人」の組織に
よってなされることである。独立行政法人化の検討の前提としてきた「大学が
法人格を持つ」という点が消え、私立学校と同じ形式になる。「国が国立大学
法人を設置する」という場合とは違い、国と国立大学法人との法的関係を明確
にすべきである。

〔2〕大学、法人の組織

(1) 概要は、法人の役員として学長、理事及び監事を置くとし、学長及び理事
で構成される役員会の議を経るが、「法人」の根幹をなす重要事項について学
長に大幅な決定権を与えることとしている。「大学の自主性、自律性の向上を
目的にして法人化を求める」いう文部科学省説明とは逆に、画一的に学外者が
過半数を占める経営協議会を規定しているのは矛盾している。

(2) 役員に関しては、最終報告の「学長および副学長」から、概要では「学長
および理事」と変更され、外部者の登用に道を開くとともに副学長の位置、役
割を不明確なものとしている。

(3) 学長選考会議に「学長又は理事を加えることができる」として学外委員が
過半数をしめる可能性を開き、大学構成員の意見を反映しない学長選考方法で
ある。

(4) 大学の経営組織としての「法人」の組織と権限を明確にし、学外者の参加
する役員会、経営協議会の権限を強化し、研究教育組織の権限を弱めることは
教育研究の観点からは本末転倒である。

(5) 「副学長」から「理事」への名称変更に端を発し、「役員会」の「監事」
は文部科学大臣の任命で、「理事」も学外者を含めなければならないが、仮に
「学長」が学外者となり、理事全員を学外者とした場合、役員会には学内者が
一人もいないことになる。「副学長」から「理事」への名称変更は、これらの
ポストを文部科学省からの天下り温床とする危険性を助長する。

(6) 学外者が2分の1を超え、学長を含めた経営協議会、学長選考会議の運営
に対する大学教職員の発言権を保証すべきである。

(7) 「経営協議会」に学外委員を2分の1以上とする点は、外部の意見反映と
いったレベルを超えており、大学の自治をないがしろにし、大学構成員で構成
する教育研究評議会を国立大学法人の運営から排除することになる。経営協議
会が、教学と教員人事以外の経営事項をすべて審議するが、経営協議会責任の
所在が薄弱であるため日常的経営は学長が中心にならざるをえない。経営協議
会を構成する学外委員の任命が、「教育研究評議会の意見を聴く」こととして
いる点は、教育研究の重要事項を審議する「教育研究評議会」が「経営協議会」
に対して教育研究の論理を尊重するよう求める制度とみることもできるが、教
育研究評議会さらには教授会の組織・構成がいかなるものか、その根拠が省令
か学内規則か、なお不明である。経営を優先し、教学を従属させないような運
営が行われる明確な歯止めをもつ方式を採用すべきである。

(8) 「教育研究評議会」は形式上では国立大学法人の組織とされているが、予
算配分や部局の改廃等、大学の根本的な企画立案についての審議権は持たない。
教員の教学と経営の重要な相関能力は訓練されず、中・長期的にはその能力は
低下すると予想されるので、この点を改善すべきである。

〔3〕学長について

(1) 学長は法人運営、大学運営に関する全ての権限を集中した形で位置付けら
れ、学長は役員会、経営協議会、教育研究評議会の議長となり、学長及び少数
の理事に権限を集中するシステムであり、学長を解任する権限は文部科学大臣
のみが保持し、大学構成員からのチェック機能は欠如し、チェックアンドバラ
ンスの観点から欠陥をもっている。

(2) 学長解任の理由に「業績悪化」が上げられているが、文部科学大臣が定め
る「中期目標」との関係で理解しなければならず、短期間の成果にのみ経営・
管理の執行が求められる危険性をもち、大学の教育研究にとって致命的な欠点
となる。

(3) 経営協議会、教育研究評議会から同数で選ばれる学長選考会議に現職学長
自身が参画し、それ以外の委員の指名・任命権も持ち、現職学長に直接従属し、
学外委員が最大2分の1いるという構造の下で学長が選考される学長選考会議
は大学の必須とする自治を根本から否定し、教育研究を直接担当する大学構成
員の意見を反映できない。この学長選考方法は、「教職員が一丸となって「新
生国立大学」の構築」(文部科学大臣談)することを妨げるものである。経営
危機などさまざまな状況を想定したとき、学長に一定の権限が集中することは
あり得るが、理事を誰がどのように選任するのかも不明であり、仮に学長が単
独で指名できるとすれば、学長に極度に権限が集中することになる。さらに、
学長選考会議が現職学長の解任提案権をもつている不可思議な構造である。こ
の学長権限ならびに学長選考方法は執行権限と議決権限の分離と相互チェック
原則から逸脱している。

(4) 法人移行の際の学長が現在の任期を維持することは現職学長は自己の後継
者を視野にいれることが可能となり、管理運営方針の大胆な転換・展開は不可
能で、「業績悪化」による学長解任という事態でもなければありえない。さら
に、業績悪化を審議する学長選考会議には学長が参加するという異常組織であ
る。その強い権限を有する学長や役員の解任に「業績悪化」が明記され、評価
システムおよび文部科学大臣が任命する監事を通じて、国が学長を強く規制す
る仕組が設定されている。

(5) 学内構成員の意思を反映する仕組みが保障されない経営協議会の学外委員
が1/3以上、教育研究評議員が1/3以上の他に、学長と学長が任命する役員
からなる少数者による役員会決定では、大学の教育研究の特性を無視した運営
をすることになる。また、大学が社会の声を主体的かつ謙虚に取り入れること
は不可欠であるが、「学長選考会議」の半数を教育・研究の実情に通じていな
い学外者がしめることができるよう規定しているのはその権限をはるかに超え
る。

〔4〕中期目標・計画

(1) 教育研究に直接関与しない学外委員が2分の1を超える経営協議会が審議
した中期目標は文部科学大臣によって国立大学法人の意見に配慮しつつ修正・
決定し、大学に提示され、大学はそれに基づいて中期計画を作成し文部科学大
臣の認可を受けなければならない。国立大学法人の基本的な性格は総則におい
て「独立行政法人通則法に規定する独立行政法人ではない」と記述されている
にもかかわらず「独立行政法人通則法の規定は必要に応じて準用」とあるよう
に通則法に最終的には依存したもので、文部科学省による関与が強化され、教
育研究のあり方を歪める評価と資源配分を危惧する。「大学の意見をあらかじ
め聴き、配慮しなければならない」と付け加えられたが、これまで蓄積されて
きた教育と研究の自主性・自立性を文部科学大臣が侵害する危険性がある。国
立大学の設置主体は「国立大学法人」であるとして、文部科学省は国立大学か
ら一定の距離を置いた立場に自らを位置付けながら、中期目標・計画をチェッ
クし、国立大学の教育研究の自主性・主体性を大きく制約するシステムは修正
すべきである。

〔5〕身分の継承

(1) 国立大学職員の権利義務が国立大学法人に継承されるとされているが、一
般的文章から身分の承継問題の具体的な事柄を予測することは困難である。

〔6〕附属図書館

(1) 現行の国立学校設置法第6条は「国立大学に附属図書館をおく」と規定し
ており、高等教育及び学術研究を本質的活動とする大学において大学図書館が
必須の施設であるという趣旨は国立大学法人化後も変わるものではない。「知
の生産」のために収集され、開発され、創造される知的資産は、大学の教育研
究活動に直接資するというのみならず、それ自体が社会的資産として継承・発
展されるべきものであり、そのための施設として附属図書館が明確な形で国立
大学法人の業務として規定されるべきである。

おわりに

(1) 国立大学協会法人化特別委員会においては、文部科学省より示された概要
への疑義を発し、大学構成者が大学運営に参加できるようなより良い制度設計
になるよう要望する。

(2) 学問の自由と大学の自治を守り、「非公務員型」問題をはじめ教職員の身
分・権利擁護の立場から修正、附帯決議等を含めた取り組みを要望する。

(3) 文部科学省には全国の国立大学に向けて各大学の疑義、要求などについて
「Q&A」を早急に提示することを要望する。
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[2]「国立大学法人法案の概要」に対する各国立大学からの意見の概要
と本特別委員会で検討の対象とする意見について(案)
国立大学協会法人化特別委員会2003.2.20資料
http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/agency/specialcommittees/specom12siryou1.pdf
(text) http://ac-net.org/dgh/03/220-kdk.html
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