通信ログ
国公立大学通信 2003.06.03(火)

Subject: [kd 03-06-03] 朝日社説「国立大学法人―文科省支配を断て」
Date: Tue, 03 Jun 2003

--[kd 03-06-03 目次]--------------------------------------------------
[1] 6/02 朝日 「国立大学法人―文科省支配を断て」
[2] 6/01 朝日 時流自論 長谷川眞理子「学問殺す国立大学法人化」
[3] 5/15 豊島耕一「憲法・教基法の効力が試される国立大独法化問題」
[4] 6/02 しんぶん赤旗「地方独立行政法人法案とは」
[5] 6/02 東京大学職員組合から佐々木毅総長への抗議文
[6] 5/30「松尾総長の参議院文教科学委員会参考人招致にかかる申し入れ」
[7] 5/22「今、名古屋大学の見識が問われている」
[8] 5/30 名大ウォッチング[見識問答 ] 共同声明有志の会通信 20030530
[9] 5/30 「国立大学法人法案の反社会性」(編集人)
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[10] 6/08 シンポジウム:「言ってはいけないせりふ」があるの!?
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本日は、参議院文教科学委員会で、参考人質疑があり、国立大学関係者6名が
発言します:http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030530kokaijouhou16.html
傍聴行動の集合場所は、参議院議員面会所、午前9時半です。(編集人)

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[1] 6/2 朝日社説 「国立大学法人―文科省支配を断て」
   http://www.asahi.com/paper/editorial.html#TKY200306010218
   http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030602asahi-2.html
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国立大学法人―文科省支配を断て

朝日新聞社説

政府提出の国立大学法人法案が衆院を通り、参院での審議が始まった。

衆院で焦点となったのは、法人化された後も、大学に対する文部科学省の強い
関与や支配が実質的に残るのではないかという問題だった。文科省の答弁はあ
いまいで、納得できるものではなかった。

いまの政府案のままで、個性豊かな大学を育てるという目的を実現できるのか。
大いに疑問と言わざるを得ない。議論を深め、必要な修正を加えてもらいたい。
法案によれば、各大学の教育研究や組織の運営の方向を示す「中期目標」につ
いて大学の意見は聴くものの、最終的には文科相が決定する。「目標」を実現
する「中期計画」にも文科相の認可が必要だ。

これでは、文科省官僚が事細かに介入して、大学の自主性を損なってしまった
従来の二の舞いになりかねない。

「税金投入の責任を負う国として、適正な内容かどうかを見るだけだ。何をや
りたいかは大学が決める」。遠山文科相はそう答弁した。しかし、法案をどう
読んでも、大学が十分な自主性をもって目標や計画を決められる内容とは思え
ない。

この点では、民主党の修正案が検討に値する。目標も計画も大学がつくり、文
科省には届け出るだけという内容だ。

国立大学全体の予算をいくらにするかという政府内調整は文科省の仕事だ。し
かし、それぞれの大学に対する文科省の関与は極力減らしてもらわねばならな
い。

そこで問題になるのが、評価委員会だ。委員会は文科省内に置かれ、各大学へ
の予算配分のもととなる評価を決める。

ところが、大学の活動の死命を制する機関であるにもかかわらず、文科省はこ
の委員会の具体的な運営や構成について明確な見解を示していない。

はっきりしているのは、委員を選ぶのが文科省当局だということだ。しかも、
委員会の事務局に官僚を送り込む考えのようだ。委員会が文科省の言いなりに
なるなら、予算を通じた大学支配は変わらない。

そうさせないためには、どういう人々が委員会を構成するかが重要だ。文科省
の利害から距離を置き、大学の運営や教育研究に通じた専門家が必要だ。民間
の知恵も要るだろう。委員会の評価は結果だけでなく、議事録の公表も求めた
い。

法案は、大学職員の人事権は学長が持つとしているが、文科省と大学間の人事
交流や天下りを規制する規定はない。

法人化後も文科省が職員を送り込み続ければ、その職員は文科省にお伺いをた
てたり、文科省の意向を先取りしたりするだろう。こうした交流は期限を切っ
てやめてはどうか。教員と同様、職員にも自立が求められるからだ。

法人化は、新しい大学像を大学がみずから描く好機だ。文科省支配を断ち切る
ことが、そのための大前提である。」
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[2] 6/1 朝日 時流自論 長谷川眞理子「学問殺す国立大学法人化」
       http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030602asahi.html
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『朝日新聞』2003年6月1日付

時流自論 

長谷川眞理子 学問殺す国立大学法人化

 私の専門は進化生物学であるが、今回は専門分野を離れて、科学者として発
言したい。

 現在、衆議院を通過し参議院で審議されている国立大学の法人法案は、たい
へん重大な問題を含んでいる。その内容を考えると、大学人としての良心から
義憤を感じざるを得ない。

 この法案では、各大学は、研究教育の中・長期計画を文部科学省の指示に沿っ
て提出し、それを文部科学大臣が認可することになる。また、大学の運営に広
く「社会」の意見を反映させるという名目のもと、大学の経営を決める評議会
が設けられ、その構成員の半数以上は学外者となる。

 −−−−−

 大学は、債券の発行も含めて自前でさまざまな財源を確保することが要請さ
れており、うまくいかなかった場合には、大学の改廃も文部科学省の権限内に
ある。つまり、学問の自由はなくなり、大学は、利潤追求を目的として経営さ
れる組織となる。このような組織で活躍するのは、目先の利益の追求が上手な
人材、役人の天下り先の確保や接待にたけた人材であろうが、そのことに対す
る自浄作用の仕組みは、どこにも組み込まれていない。

 全国立大学の教育研究方針を認可するような文部科学省、文部科学大臣とは、
いったいどんな実績のある立派な組織であり、人なのだろうか?「社会」を代
表するとされる学外者とは誰なのだろうか?法人化といっても、まだ多くの税
金が大学には投入されるだろう。そこで行われる研究を、「社会」が求めるも
のに誘導するということは、結局は、産業界が求めるものを税金によって肩代
わりさせることになるのではないか。

 科学を始めとする人間の知的活動の価値は、生活を便利にしたり、経済の活
性化をもたらしたりすることばかりではない。無知は迷信や非合理的判断を生
み、社会の発展を阻害する。現在の私たちが曲がりなりにも数百年前の人々よ
りも賢くなっているとすれば、それは、過去の人々のこういった知的営為の恩
恵をこうむっているからだ。

 経営上の利益にはつながらないが、人類の知的レベルを向上させることに貢
献する活動を支援するには、社会にゆとりが必要である。そのゆとりを持つた
めには、そのような知的活動に対する尊敬がなければならない。学問は金もう
けの手段だという雰囲気の社会で育った世代から、世界がその意見に耳を傾け
るような賢者は生まれてこないだろう。日本が、この意味で世界に活躍する人
材を生み出したいのであれば、その活動の中心である大学を、数年を目安にし
た企業的利益で判断するような制度を採用するべきではない。 

−−−−−

 自然界は、誰か全知全能の設計者によって誘導されてうまく運営されている
のではない。自然界の複雑な現象の多くが、司令塔からの指令なしの自己組織
化、自律分散、創発的性質の発生、ランダムな変異と競争などによってうまく
統合されていることは、最近の自然科学が明らかにしている。

 アメリカのコールドスプリングハーバー研究所や、スイスのバーゼル免疫研
究所のような、多くの重要な研究を生みだしてきた魅力ある研究所はみな、自
由で束縛されない雰囲気を大切にしている。それが、新しい発想の芽を育てる
からだ。その上で、研究者間の健全な競争が働けばよいのである。

 また、基礎研究は必ずしも先が明確に見えるものではない。ヘモグロビンの
構造解明で62年のノーベル賞を受賞したマックス・ペルーツは、実に16年もの
間、何一つ成果の出せない時代を経験した。それでも彼をおいてくれたのがケ
ンブリッジ大学なのである。

 日本のノーベル賞受賞者の数を増大させることが、大学改革の一つの目的で
あるようだが、本気でそうしたいのなら、これらの話に学ぶべきである。

 学問の自由は、なぜ大切なのだろうか?それは、真実の追究という行為は、
真実だけを審判に行われなければ、信用されないからである。大学という組織
は、中世ヨーロッパで、真実を求めて議論するために集まった若者たちによっ
て自然発生した。日本やドイツの大学など、19世紀以降、国力増強を目的に国
家によって設立された大学においてすら、大学の使命は真実の追究と知識の蓄
積と普及であり、それをまっとうするために大学という組織は自治を守り通し
てきた。それは、知的活動の発展は、予測のつかない部分をかかえた、すそ野
の広い活動に支えられているからであり、抑圧と介入がよいものを生み出した
ためしがないからである。

 日本の大学が多くの問題をかかえていることは確かだ。日本の大学の研究者
たちは、海外にはないぬるま湯的環境を享受してきた半面、信じられないほど
多くの無駄な雑用も強いられてきた。それにもかかわらず、日本の研究者たち
は、これまで、かなりの成果をあげてきた。日本のレベルをさらに上げるため
に必要なのは、そのような無駄な束縛を取り除き、健全な競争環境を作ること
である。

 今回の法案は、今後の日本を大幅に変える「画期的」な法案である。しかし、
それは悪い方向でしかないというのが私の感想だ。今、知のあり方について、
国民的良識が問われている。

(はせがわ・まりこ 東京都生まれ。東京大学理学部卒。現在は早稲田大学政
経学部教授。専門は動物行動学、行動生態学。)
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[3] 5/15 豊島耕一「憲法・教基法の効力が試される国立大独法化問題」
   大学の教育・研究を文科省の「許認可事項」にしてはならない
      東大駒場キャンパスでのスピーチ 2003.5.15      

テープ起こし記録:
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/UniversityIssues/atKomaba030515.html
レジュメ:
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/UniversityIssues/Komaba030515.pdf
目次:
  0 はじめに
  1 行法化,これまでの経過
  2 全国ネットの運動
  3 国会を無視した大学の暴走
  4 文部大臣のデマ
  5 文部科学省と大学の本来の関係
  6 行法化とは「戦前にもない大学統制」
  7 教育基本法10条違反のシステム
  8 裁判所を警察に変える
  9 学長独裁制の確立
  10 行法化されるとどうなるか
  11 最近の著名人による反対論
  12 なぜ大学は反対しないか--文部科学省防波堤論
  13 学者の陥りやすい傾向
  14 水戸黄門イデオロギー,忠臣蔵イデオロギー
  15 教育基本法の8条違反の影響
  16 どう「改革」すべきなのか--グローバルスタンダード
  17 文部科学省のイデオロギー,テクスト解析から
  18 何よりも「ガッツ」が大事
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[4] 6/2 しんぶん赤旗「地方独立行政法人法案とは」
      大学、病院、保育所、水道まで「企業会計原則」に
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-06-02/02_02.html
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[5] 6/2 東京大学職員組合から佐々木毅総長への抗議文
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030602tousyokukougi.html
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                          2003年6月2日
                 抗 議 文
東京大学 総長
佐々木 毅 殿
                           東京大学職員組合

 東京大学職員組合は、貴職が、職員組合との交渉、並びに学内構成員に対す
る説明を疎かにしたまま、国会において国立大学法人法案に係る参考人として
意見陳述することの不当性を指摘し、これに厳重に抗議いたします。

 貴職は、本年一月の交渉において「法案全文が明らかになった後の速やかな
時期に、総長交渉と学内構成員に対する説明会を開催すること」を約束されま
した。その後、東京大学職員組合からの再三の開催要請にも拘わらず、今日ま
で交渉も説明会も行われておりません。このように学内構成員に対する説明責
任を果たさず、なおかつ職員の正当な権利の遂行を無視する一方で、参議院文
教科学委員会において参考人として意見陳述をすることは、常識に外れた極め
て不当なことと言わざるを得ません。

 職員組合との交渉や学内構成員に対する説明責任を果たすことは総長として
の義務的行為であり、設置形態の変更等の極めて重要な事項に対する大学の意
志決定に際し、デュープロセスを踏むことの重要性は前回の交渉において貴職
も認めたことであります。このような義務的行為を怠っている者には、国立大
学法人法案に係る参考人としては如何なる意見をも陳述する資格がなく、また、
たとえ意見を述べたとしても、職の責務を果たしていない者の意見は、国民の
代表たる国会議員を説得し得るものではありますまい。

 東京大学職員組合は、貴職が、職員組合との交渉、並びに学内構成員に対す
る説明を疎かにしたまま、国立大学法人法案に係る参考人として意見陳述する
ことに対し厳重に抗議すると共に、今後、学内において為すべきことを速やか
に為されるよう強く求めるものです。
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[6] 5/30「松尾総長の参議院文教科学委員会参考人招致にかかる申し入れ」
      名古屋大学職員組合 http://nuufs.org/dokuhou/matsuo_sankounin.html
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[7] 5/22「今、名古屋大学の見識が問われている」
http://nuufs.org/dokuhou/yushinokai_appeal_200305.html
「今、名古屋大学の見識が問われている
      ― 総長選考暫定措置と法人化をめぐって ―」
国立大学の独立行政法人化を憂慮し、名古屋大学のあり方を考える有志の会
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[8] 5/30 名大ウォッチング[見識問答 ] 共同声明有志の会通信 20030530
      http://nuufs.org/dokuhou/kenshikimondo.html
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[9] 5/30 「国立大学法人法案の反社会性」(編集人)
      http://ac-net.org/dgh/03/530-tjst.html
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#(月刊「日本の進路」掲載予定。許可を得て転載)

企業の一部を子会社として独立させ支配力強化と経営効率化をはかることは民
間的経営の常套手段である。国立大学を「独立法人」にする政府の目的も同じ
である。しかし、マスメディアは「独立行政法人化すれば国立大学は政府から
独立するので自律性が高まる」と執拗に報道してきた。筆者は、このような情
報操作に憤りを感じ、4年前よりインターネットを通して事の真相を社会に伝
えようと試みてきたが、法案は5月22日に衆議院を通過し成立寸前の情勢で
ある。

I.国立大学法人制度とは何か

国立大学制度は、国立大学設置法・国立学校特別会計法・教育公務員特例法等
の法律群によって、組織・財政・人事の自律性を大学に保障し、国立大学にお
ける教育と研究が、政府や企業などの外的諸力に従属することを防止してきた。
しかし、1980年以降の大学予算据え置き政策と1990年代の「上からの
大学改革」と大学差別政策により国立大学の旧文部省への従属度は年々強くなっ
てきた。

法案が規定する国立大学法人制度では、文部科学大臣が6年毎に大学の中期目
標を定め、大学が作成した中期計画を認可し、運営費交付金を交付する。期末
に、文部科学省の国立大学法人評価委員会が専門的見地から国立大学法人の目
標達成度を評価し、総務省の独立行政法人評価委員会が、政策的見地から業績
評価し、存続・民営化・廃止等を文部科学大臣に勧告することになっている。
さらに、強力なトップダウン経営体制が義務付けられており、国立大学法人は
軍隊式の指揮命令系統を持つ研究教育受託企業である、と考えれば本質を見失
わないであろう。

国立大学法人化は、1998年末の自自連立の際の公務員25%削減政策がきっ
かけとなり、1999年9月に旧文部省は国立大学の独立行政法人化の方針を
発表した。国立大学協会[1] の幹部は、国立大学の学校法人化(私学化)を過
度に恐れ、「修正独立政法人化」を模索する条件闘争の姿勢を取り、譲歩に譲
歩を重ねた末に、大学自治の抹消を目的とするとさえ言える現法案の成立に協
力している。

II.国立大学法人法案の危険性

国立大学法人制度は、以下のように、学の独立性と知の公共性を否定し、日本
社会の知的進展を構造的に阻む。

【大学の生殺与奪権を政府に付与】政府は、大学の中期目標を策定し、評価に
基づく資源配分および改廃審査を行なうことで、大学を直接にコントロールで
きるようになる。野望を持つ政権が大学を動員することを防ぐ法的歯止めがな
い。憲法23条と教育基本法第10条を実現している法体系を廃止する点で、
その違憲性を最高裁は裁くべきであろう。

【国立大学の財政的基盤の弱体化】大学の設置者が国立大学法人となり、設置
者の経費負担を義務付ける学校教育法から政府は解放される。支出義務が政府
にある人件費枠は非公務員化によりなくなるが、国立大学法人法案に代替物は
ない。安定した財政的基盤を失う国立大学法人は、入学金・学費の値上げ、定
員拡大などを検討する一方、産学連携を余儀なくされ、企業が関心を持たない
基盤的研究分野は、資金面でも人事面でも次第に衰退していくであろう。

【不透明なサバイバル競争】「客観的評価に基づく資源配分」という美名によ
る恣意的資源配分があらゆるレベルで行なわれ、大学・部局・学科・専攻・個
人の間の生き残り競争が加速する。「主流派」による予算・人員の寡占が進み、
小数派は淘汰される可能性が高く、学問の多様性が急速に失なわれるであろう。
また、学問そのものとも言える基盤的研究は、短期的成果が確実ではないため
に敬遠され、さらに衰退を余儀なくされる。また、大学教員という不安定で地
味な職業に、若者の大半は興味を示さなくなるであろう。これは、日本社会の
将来にとって不幸なことではないだろうか。

【トップダウン体制】学長をトップとする強力な上意下達体制が法的に義務付
けられる。このような中央集権体制は、教育研究諸活動の原動力である自発性
と意欲を損なうと同時に、言論の自由を脅かす。大半の学長が中間管理者とし
て振舞うことが予想されるので、高校までの文部科学省による管理統制が大学
にまで及ぶことになろう。


lII 国会審議と廃案を求める運動

「お上が決めたこと」として独立行政法人化を甘受する空気のなかで、前節の
ような危険性を看過できない教員は少なからずいて、種々の反対運動が展開し
てきた。組合による従来型の運動に加えて、教員有志によるインターネットを
利用した運動も機動的に展開されてきた。5月23日には、以下紹介する運動
体の代表6名が文部科学省記者クラブで合同記者会見をしている。

4年前に結成された独立行政法人反対首都圏ネットワークは、情報発信と運動
の呼びかけを行い反対運動の核となってきた[2]。現在、国会議員への働きか
けを精力的に進めている。

国立大学独法化阻止全国ネットワーク[3]は2年前に結成され大学外や海外へ
の発信に力を入れ、4月3日の国会内集会では、民主党を含む諸野党議員・秘
書の参加を得た。また、全国ネットは膨大な関連資料をCD−ROMに収納し
議員・報道関係者に配布している。

今年1月に、名古屋大学の池内了氏は、作家の井上ひさし氏、山田洋二監督ら
と共に、国立大学法人化に反対するアピール[4]を発表し、5月28日までに
4773名の賛同を集めている。3月27日に「教育基本法と国立大学の法人
化を考える集い」を開き、6月6日に「国立大学の法人化を考える夕べ」[5] 
を東大教官有志とともに共催を予定している。翌日6月7日は、銀座で国立大
学法人化反対銀座パレード[6]がある。

4月には、東大教員有志が意見広告運動を開始し、4月23日に朝日新聞全国
版7段で1340名が、さらに5月21日の毎日新聞の全国版には新たに65
7名が法案の問題点を全国民に伝え廃案を訴えた[7]。

筆者もネットを利用した広報活動を種々試みてきた。サイト[8]のトップペー
ジには1999年から約50万のアクセスがある。メールマガジン[9]は17
00名余の講読者数があり、「国公立大学通信」[10]の配信数は2万7千であ
る 。国立大学電子レファレンダム(全体投票)[11]には3358の投票があ
り、賛成89票, 反対3269票となっている。また、国立大学協会幹部の辞
任と、臨時総会開催を求める共同意見書[12] をネットで募り、54大学の2
52名の連署者とともに国立大学協会に提出している。

おわりに

国立大学法人法案は、組織が優先される社会的風土の中で、組織への個人の隷
属を大学でも押し進める。組織は本質的に非倫理的存在で反社会性を持つ。大
学において組織が優先されれば、倫理に無関心な研究と教育が展開されるだろ
う。それは大学が反社会的存在となることを意味する。日本の低迷は倫理性の
喪失と表裏一体に進行している。国立大学法人法案はこの低迷を加速させ、今
以上に組織が優先される社会を意図的に目指している点で、根底に反社会性を
持つことを警告したい。

(註)
[1]国立大学協会は各国立大学長が大学を代表して参加する団体であり、国立
大学を代表する役割を実質的に果している
[2] 独立行政法人法人反対首都圏ネットワーク
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html
[3] 国立大学独法化阻止全国ネットワーク
http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet.html
[4] 大学改革を考えるアピールの会
http://homepage2.nifty.com/~yuasaf/appeal/
[5] 6月6日:国立大学の法人化を考える夕べ
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/0305276-6yuube.htm
[6] 6月7日:国立大学法人化反対銀座パレード
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web0305276-7pare-do.html
[7] 意見広告の会
http://www.geocities.jp/houjinka/index.html
[8] 国立大学独立行政法人化の諸問題
http://ac-net.org/dgh
[9] メールマガジン「国立大学独立行政法人化問題週報」
http://www.mag2.com/m/0000031268.htm
[10] メール通信「国公立大学通信」
http://ac-net.org/kd
[11] 国立大学法人法案の賛否を問う国立大学レファレンダム
http://ac-net.org/rfr
[12] 国立大学協会への、54国立大学の252名の共同意見書
http://ac-net/org/recall
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[10] 6/8 シンポジウム:「言ってはいけないせりふ」があるの!?
      http://www.jpwa.org
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		 「言ってはいけないせりふ」があるの!?

	    −個人情報保護法案と表現の自由について考える−

日本劇作家協会では、言論表現委員会が中心となって「個人情報保護法案」に反
対するアピール活動を行ってまいりました。この「個人情報保護法案」の問題と
その背景、そして「表現の自由」の問題などについて、井上ひさし氏、永井愛
氏、吉岡忍氏(司会:坂手洋二氏)に幅広く語っていただきます。(ご出演予定
者は変更になる場合があります)

日時:2003年6月8日(日)18:30〜21:00(開場18:00)
会場:紀伊國屋ホール   新宿区新宿3−17−7     TEL 03-3354-0141

■入場料:全席指定2000円 (5月25日より紀伊國屋書店新宿本店5階の
キノチケットカウンターで前売りチケットを販売します。当日券も販売予定で
す。料金はどちらも2000円です)

■主催・お問い合わせ先 日本劇作家協会
TEL03−5333−5587 FAX03−5333−5754
Email : office@jpwa.org
http://www.jpwa.org

■共催 社団法人 日本ペンクラブ
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd
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配信数 27710