通信ログ

国公私立大学通信 2003.07.16(水)

--[kd 03-07-16 目次]--------------------------------------------
[1] 7/14 共同通信 自主性尊重や透明性の確保 文科相、国立大法人化で4原則 

  [1-1] (再)5/23 白澤邦男「どうなる今後の流氷研究」2003.5.23
     「希望の虹」(北大生協発行 2003.6.25)
      http://ac-net.org/dgh/03/625-shirosawa.html

[2] 読売新聞大阪本社編「大学大競争」:小柴昌俊氏のインタビューより
  [2-1] 7/14 asahi.com 97国立大、土地価格で200倍の格差 裕福な旧帝大 

[3] 7/14 NHK 文科省 収益多い私大への補助金 減額へ

[4] 井上ひさし氏講演「都市の中の大学」(大意紹介)
      6/7 横浜市立大学と附属2病院の存続・発展を求める市民の夕べ
      http://www8.big.or.jp/~y-shimin/inouehonpen.html
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文部科学省が召集した昨日の全国国立大学長会議で、文
科大臣は、大学の自主性を重んじる、法人化後も基礎科
学を重視する等々を、いつものように強調されたそうで
すが[1]、すでに、法人化に備えての組織の強化のため
に、大学や部局が自分自身の判断で、地味な長期的基礎
研究を切り捨てることが広汎に起きているのではないで
しょうか[1-1]。民間的経営手法の基本である「小規模
不採算部門の整理」を行い、学問的な重要性如何にかか
わらず、基礎研究の縮小・切り捨てを「自主的に」行う
大学や部局の「見識」が問われますが、大学・部局等を
構造的サバイバルゲームに追い込むことを主目的とした
制度を導入した者は、そのような批判をすることで責任
を果したことにはならず、その原因を構造的に除去する
責務があるのではないでしょうか(編集人)。

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[1] 7/14 共同通信  自主性尊重や透明性の確保 文科相、国立大法人化で4原則 
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 国立大法人法の成立を受け文部科学省は14日、全国
の国立大学長を集めた会議を開いた。遠山敦子文科相が
(1)大学の自主性の尊重(2)透明性の確保(3)中
長期的視点への配慮(4)制度定着までの柔軟な運用−
の4原則を示し、来年4月の法人化移行に向け、大学側
の理解を求めた。

 文科相が各国立大法人ごとに決める期間6年の「中期
目標」に対し、国会審議で「官僚統制が強まる」と批判
が出たが、遠山氏は「実際の作成主体はあくまで大学」
と強調。「財政上の理由などやむを得ない場合を除き、
各大学の原案を最大限尊重する」と述べた。

 透明性の確保では、中期目標の大学側原案や、原案を
審議する国立大学法人評価委員会を公開するとした。大
学の原案を修正した場合、理由も明示する。

 さらに、短期では成果の出ない分野に配慮し、毎年の
業績評価は「進行状況の確認程度にとどめる」とした。

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[1-1] 5/23 白澤邦男「どうなる今後の流氷研究」2003.5.23
     「希望の虹」(北大生協発行 2003.6.25)
http://ac-net.org/dgh/03/625-shirosawa.html
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「北海道オホーツク海沿岸のほぼ中央に位置する紋別市
に、北道道大学低温科学研究所附属流氷研究施設がある。
オホーツク海沿岸域の海洋学、流氷に関する総合的研究
を目的とする臨海実験観測施設として一九六五年に設立
された。施設開設と同時に、世界で初めて流氷観測を主
眼とする流氷レーダーの建設が始まり、一九六九年の流
氷期から枝幸、紋別、網走の三基のレーダーによる観測
が開始され、沿岸域約六○kmの範囲の流氷分布、動きを
昼夜別なく観測できる体制が整った。レーダー開設後の
数年間は、山頂のレーダー室に泊まり込みでの観測が続
けられた。その後レーダー・データはコンピューターで
処理され、また画像認識技術も進歩して、現在ではかな
り自動処理出来るようになった。現在まで三五年の観測
資料が蓄積され、流氷の長期変動がやっと議論出来るよ
うになった。沿岸域の流氷量は一九八六年の最盛期を境
に減少傾向を示している(図参照)。今年二○○三年の
流氷量は増加傾向復活への兆しだろうか。地球規模の温
暖化の影響なのか、局地的なものなのか、まだまだ研究
は続いている。人工衛星からの情報は広域の流氷分布を
提供するが、短い時間間隔での流氷の動きはわからない。
特に沿岸の氷縁域での流氷の動きは早いし、複雑である。
まだまだレーダーに頼らざるを得ない状況である。毎日
観測される流氷分布は流氷情報センタ−に送られ、氷海
域での安全航行のための貴重な情報として位置付けられ
ている。流氷レーダーは学術研究のみならず、地域に密
着した存在であり、まさにオホーツク海沿岸域でのユニー
クさを物語っている。

沿岸域では、その場の海水が凍結、成長した定着氷とい
う比較的安定して動きの少ない海氷域もあれば、絶えず
動いて流されている流氷域もある。オホーツク海北部、
サハリン北東沖合の流氷野上に設置した漂流ブイは一○
○○km以上の道程をニケ月流氷野と共に漂流して千島列
島にたどり着き、サハリン東岸には岸に沿って南下する
海流さらにその海流に乗り流氷が漂流してくる姿が明ら
かになってきた。ノルウェーの科学者ナンセンはフラム
号に乗って北極海の海氷に閉じ込められて三年余り漂流
して、海洋学上の数々の重要な発見をした。現代版ひょっ
こりひょうたん島は人工衛星の力を借りて位置情報を即
座に知ることが出来る。ナンセン没後七十余年、進歩の
速さが感じられる。

さて、紋別市に北大流氷研究施設が設立されて三八年、
流氷レーダー観測は三五年になる。その間流氷研究の重
要さが次第に理解され、北海道立流氷科学センターの設
立、氷海を水中から展望出来るオホーツク・タワーの建
設、流氷観光砕氷船"ガリンコ号"の建造、また砕氷船は
沿岸氷海域での現場観測にも活用されている。更に、流
氷最盛期二月には毎年北方圏国際シンポジウム「オホー
ツク海と流氷」が開催され、前浜の流氷野を跳めながら
熱い討論が繰り広げられている。紋別市では今や「流氷
研究国際都市」宣言をして、流氷研究のメッカを目指し
ているところである。

しかし、時代の流れであろうか、国立大学法人化の流れ
か、北大は流氷研究施設閉鎖の決断をした。三八年築き
上げてきた地元との関係、大学の「地域貢献」に対する
あり方を考える上でお手本でもあった流氷研究施設の閉
鎖決定は地元紋別市を始め才ホーツク海沿岸域に強烈な
衝撃を与えた。サハリン沖海底油田開発に伴い予想され
る海洋汚染に対する問題、氷海域海洋環境の研究の重要
性が叫ばれている最中である。現場観測研究の拠点作り
を目指している時である。三五年の流氷レーダーによる
観測の終焉は研究の継続性の難しさを物語っているのだ
ろうか。蓄積された貴重な宝も継続に意味があることも
多い。氷で閉ざされる過酷な氷海の研究の進歩は、かつ
てナンセンが三年余もの漂流航海を支えたまさに"be
ambitious" の精神から生み出されよう。果たして、独
立行政法人北海道大学が今後も"be ambitious" である
のか。氷海研究のリーダーとして北大が果たす役割が間
われている。

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[2] 読売新聞大阪本社編「大学大競争」:小柴昌俊氏のインタビューより
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#(「独立採算ではない」と文部科学省が強調する国立
大学法人が、急速に独立採算に近づくことを小柴氏は当
然のこととして考えていると思われる。)

ーー国立大が法人化されると、教官は国家公務員でなく
なるため、優秀な人材をスカウトすることができると言
われていますが。

「どのくらいできまうかねぇ。国立大にそれだけの経済
的基盤があると言えば、東大は長い歴史があるし、土地
などの資産を持っているから可能かも知れません。しか
し、多くの大学は法人となっても資産がなかったら、や
りたくでもできません。ハーバードの持つ資産は大変な
ものです。だからこそ優秀な人材を集め、学生も優秀な
のが集まってきて世界トップの座を続けられるわけです。
経済的な基盤がないのに法人化して、一体、どれだけの
大学が生き残れるのか。いくつかの国立大が合併せざる
をえなくなると思います。」

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[2-1] 7/14 asahi.com 97国立大、土地価格で200倍の格差 裕福な旧帝大 
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「来春、法人化する国立大学の土地や建物について、桜
美林大の大学教育研究所(東京都町田市、高橋真義所長)
が調査し、14日発表した。1位の東京大の資産は最も
条件に恵まれない大学に比べて、土地価格で約200倍、
建物の延べ床面積で約85倍に上る。特に、旧帝大と地
方単科大との格差が浮き彫りになった。

 昨年度時点で、97の国立大の要覧からキャンパスの
土地面積や建物の延べ床面積を集めた。土地価格はキャ
ンパスに接する道路の路線価から計算した。

 結果によると、全大学の土地面積の合計は約5200
万平方メートルで東京ドーム約1100個分。土地価格
の総額は約5兆7000億円だった。建物の延べ床面積
は計約2000万平方メートル。建築可能な延べ床面積
に対する、建物の実際の延べ床面積の利用割合は平均で
17%だった。

 大学ごとにみると、土地価格の1位は東大で、約61
00億円。市街地から離れ、路線価の設定されていない
大学を除けば、30億円台で最も低いグループの政策研
究大学院大(東京)、北見工業大(北海道)の約200
倍だ。旧帝大が10位以内にすべて入った。

 土地面積の1位は広島大。最小の政策研究大学院大の
400倍を超える。

 建物の延べ床面積の1位も東大で、最も少ない政策研
究大学院大の85倍。利用割合が最も高いのは、その政
策研究大学院大で54%。最も低いのは鹿屋体育大(鹿
児島)、帯広畜産大(北海道)の3%だ。

 また昨年10月から12月にかけて同じ97校にアン
ケートし、61校から回答を得た結果によると、9割を
超える大学が「法人化で資産の新たな活用方法を考えて
おくべきだ」と答えた。「資産価値を把握していない」
大学も3割あった。特に地方大で約4割に上った。

 法人化で土地や建物は国から大学の手に移り、大学は
駐車場運営など資産運用の自由度が増す。「地方大は旧
帝大などに比べて不利に見えるが、利用割合が少なく可
能性を秘めている。国立大の資産活用は、自治体や住民、
企業が広く利用できるよう地域貢献の道を探ることが求
められている」と高橋所長は話している。」

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[3] 7/14 NHK 文科省 収益多い私大への補助金 減額へ
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#(収入の多い私立大学の補助金が減らされるそうです
が、その分、収入の少ない私立大学の回されるのでしょ
うか。)
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「文科省 収益多い私大への補助金 減額へ

NHKニュース速報

年間百億円以上の多額な収益がある私立大学について、
文部科学省は今年度から国からの補助金を大幅に減らす
ことを決めました。

私立大学や短期大学には国から教員数や学生数に応じて
補助金が交付され、昨年度は八百六十三校に三千百億円
あまりが支給されています。

しかし、五百億円を超える収益がある大学にも補助金が
支給されているため、文部科学省は総務省から補助金の
在り方について改善するよう勧告を受けていました。

このため文部科学省は今年度から、年間百億円以上の収
益がある私立大学や短期大学については補助金を大幅に
減額し、五百億円以上の収益のある大学には補助金を支
給しないことを決めました。

また、学生数が定員の半数に満たない学部については、
特例として認めてきた補助金の支給を三年間を限度に打
ち切ることを決めました。

文部科学省は今後補助金の配分をしている日本私立学校
振興・共済事業団と補助金をどの程度減額するのか具体
的な検討に入ることにしています。[2003-07-14-11:01]
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[4] 井上ひさし氏講演「都市の中の大学」(大意紹介)
   6/7 横浜市立大学と附属2病院の存続・発展を求める市民の夕べ
   http://www8.big.or.jp/~y-shimin/inouehonpen.html
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●講演大意紹介
#(抜粋)

「・・・ボローニャ大学は、町の人たちが日ごろ忙しく
て考えていられない問題を常に考えていました。これは、
いまなら、たとえば喫茶店のご主人が朝から晩まで人権
とは、ここで砂糖をいれるかどうか客に聞くのは客の人
権の侵害に当たるか(笑)などと考えていたら商売にな
らない。そのような市民の重要な問題、人権の問題、自
由の問題、平和の問題、戦争の問題、すべて市民に代わっ
て大学が考えているからこそ大学が市民の誇りになりま
す。・・・

 市民は税金を払うために一生懸命働いている。病気に
なったら大学病院に行けばいい。悩み事があったら、大
学が考えてくれていて答えをすぐ出してくれる。そのよ
うに市民に代わって研究しているのが大学で、しかも大
事な問題、人間とは、人権とは、自由とは何か、すぐ答
える。それもわかりやすい言葉で答えなければいけない。
普通の人が読んで、この問題の本質はこうかと、わかる
ように易しく書けないと学者じゃない。先生方もそうい
うことを考えなければいけません。

 しかし、一番考えなければいけないのは市民ですよ。
市民が立ち上がらないといけない。大学が本当に必要な
ら、こういう大学になってほしい。いままで、こうこう、
こういうことをしてきたから、この線でこれをしてもら
えば、税金を払おうじゃないか。おれたちが引き受ける。
スポンサーはおれたちだよって、なぜ言わないのか、残
念です。勝手なことを外部から来て言う学者がいて、そ
れを言わせてしまった横浜市の市民の問題と、市当局お
よび横浜市大の問題と二つあると思います。どっちも不
十分だったのではないでしょうか。大学というものが自
分たちの代わりにすごいことを考えてくれているという
ことを信じないといけません。

・・・

 1970年代の初め頃、ボローニャの市民は、金持ちになっ
たけれど、なにか物足りない。そこで大学に相談すると、
ボローニャ市民の意思を表現する方法として、ボローニャ
大学のウンベルト・エーコという『薔薇の名前』(世界
的ベストセラーになった小説)を書いた先生が、ローマ
から演出家・脚本家で、主演の役者もやるダリオ・フォー
という若手演劇人を連れてきて、ボローニャ市民の気持
ちを伝える芝居をやらせることにしました。ダリオ・
フォーは、毎晩中央政府の政治家を茶化すコントをやり、
それがイタリアの国営放送の中継で人気番組となり、ヨー
ロッパにも流れます。このようにボローニャ大学が考え
て、それで結局、ボローニャ市は、演劇の町になります。
当時、人口50万たらずの町に劇場が40ぐらいあります。
それを市民が楽しんで、ダリオ・フォーは1998年にノー
ベル文学賞をもらいました。これ、みんなボローニャ大
学が絡んでいます。そのように市の中心にシンクタンク
というか、市民が考えることを先行して考えたり、市民
の注文によって考えたりする巨大な存在として頭脳とし
て大学があるのです。

 つまり納税者、主権者は、自分たちのために徹底的に
ものを考えてくれる学者の集団を、どこかで持っていな
ければいけない。それが横浜市の場合、横浜市立大学で
あり、これを、もし手放すようなことがあったら、横浜
市民の大きな損失で、歴史に残る汚点でしょう。これは、
市民の実力が試される機会がきたとぼくは思います。市
大の先生と、市民が必至になって闘えば必ずついてくる
人がいるはずで、そんなこという市長がいたら、次の選
挙で落とせばいい(拍手)それだけのことだとぼくは思
います。人間のつくったものは人間の手で変えられる。
人間はその前で立ちすくむ必要は全然ないのです。」
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#(・・・)内は編集人コメント。「・・・・・・」は省略部分。
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
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