通信ログ
国公私立大学通信 2003.09.24(水)
http://ac-net.org/kd/03/924.html
前号:http://ac-net.org/kd/03/922.html
━[kd 03-09-24 目次]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【1】静岡大学就業規則についての前号コメントへの静岡大学職員組合の意見
【1-1】静岡大学就業規則案とコメントの抜粋
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前号の編集人コメントについて静岡大学職員組合から重要な
ご指摘がありましたので許可を得て転載します。静岡大学の
就業規則案とコメントの一部も添付します。懲戒理由のリス
トが18項目あります。(編集人)
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【1】静岡大学就業規則についての前号コメントへの静岡大学職員組合の意見
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「私共の認識と異なるコメントが付されておりましたので、改めて意見表明を
させていただきます。
「通信」(03-09-22)冒頭で、次のようなコメントが付されておりました。
「また国立大学では就業規則の検討も進んでいるようです。
静岡大学の案【4】を見ると問題点もあるようですが、
人事・降格・解雇等については「教育公務員特例法の精
神」にほぼ沿ったものとなっている印象があります。」
しかし、私共は、大学当局に提出した意見書で、次のように述べております。
「第二に、内容について。法人移行準備本部に対しとくに再考を求
めたいのは、教育公務員特例法の継承問題についてである。人
事労務部会は、従前より、「教員の人事制度については、教育公
務員特例法の基本理念を活かす」と明言してきた。しかし、今回
提出された第1次案を見る限り、教特法の趣旨はほとんど活かさ
れていないと言わざるを得ない(具体的な指摘は、逐条コメントに
譲る)。自らの言明を誠実に履行するという立場にたち、法人移行
準備本部が全面的な見直しをなされることを強く希望する。」
要するに、私共は、「教特法の趣旨に沿っていない」ことを最大の批判点とし
ております。第1次案によれば、たとえば大学側は、教員に対して異職種への
配転命令をなすことができます。それに対し教員側は、正当な理由がない限り、
これを拒めないことになっています。異職種への配転など、教特法の予定する
ものではありません。それは、実際には、中小私立大学でリストラ策の一つと
して活用されているものです。このような案を、「教特法の精神にほぼ沿って
いる」などとはとても評価できない−−それが私共の立場です。(それ以外の
論点については、「教職員就業規則(第1次案)」へのコメントをご覧くださ
い)。そういう意味では、まだ、下記のコメントの方が、まだ私共の認識に近
いものがあります。
「#(人事異動、降格、解雇等は「研究教育評議会と教授会等の議を
経て学長が行う」となっている。「議を経て」という表現は、教育
公務員特例法第6条「(教員は)評議会の審査の結果によるのでな
ければ、その意に反して免職されることはない」よりは曖昧ではな
かろうか。)」
さらに、私共は、「教特法の趣旨が守られていない」というだけでなく、より
深刻な問題として、「労働法(判例等も含めて)の水準すら守られていない」
という重大な欠陥についても指摘しています。
「第三に、再度、内容問題について。いうまでもなく、就業規則
を作成する上で、現行労働法、学説・判例等の水準を確保するこ
とが必要である。しかし、その水準に達していない条項がいく
つか散見される(こちらも、具体的な指摘は逐条コメントに譲
る)。こうした点についても、ぜひ真摯な見直しを行っていた
だきたい。」
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【1-1】静岡大学就業規則案とコメントの抜粋
http://www.jade.dti.ne.jp/~suu/2003/syugyo_comment.htm
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(配置転換)
第22条 教職員は、業務上の必要により、転勤、職
場異動又は従事する職種の変更(以下「配置転換」とい
う。)を命じられることがある。
2 大学の教員の配置転換に当たっては、本人の意向
を聴取した上で、教育研究評議会及び教授会等の議を
経て学長が行う。
3 第1項に規定する配置転換を命じられた教職員は、
正当な理由なくこれを拒否することができない。
4 教職員の配置転換に関し必要な事項は、別に定める
「国立大学法人静岡大学教職員配置転換規程」による。
| (1)たしかに、労働協約及び就業規則に転勤命令の根拠規定があり、
| 労働契約成立時に勤務地を限定する合意がないときには、個別的同
| 意なしに転勤を命ずることができると考えられている。〈最高2小
| 昭和61・7・14〉
|
| しかし、その一方で使用者側には、「本人事情の配慮」が求めら
| れる。したがって、第2項において、「本人の意向聴取」などとい
| う曖昧な表現ではなく、使用者側の「本人事情の配慮義務」を明確
| に規定すべきである。たとえば、「事前に本人の意見・事情を聞き、
| 公正かつ職員の家族的責任などを考慮して実施しなければならない」
| など。
|
| (2)教員に対する「職種変更命令権」を包括的に定めたのは、きわ
| めて理解に苦しむ内容である。判例では、就業規則に「業務の都合
| により転勤・職場変更」を命ずる旨の定めがあっても、職種を特定
| して採用した者については、本人の同意なくして異職種に転属させ
| ることはできない、とされている〈名古屋地裁昭和45・4・6〉。に
| もかかわらず、第22条は、使用者側に教員の異職種への変更命令権
| を包括的に与える(第1項)だけでなく、「正当な理由」がなけれ
| ばこれを拒めないとしている(第3項)。つまり、判例の要求する
| 「同意」要件をまったく無視されているのである。
|
| このような第22条の実際的な意味を理解するためには、現在、中小
| 私立大学におけるリストラ策の一つとして、教員に対する異職種へ
| の配転命令が横行している事実を想起すれば十分である。
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(出向)
第23条 教職員は、業務上の必要により、出向を命
じられることがある。
2 大学の教員の出向に当たっては、本人の意向を聴取
した上で、教育研究評議会及び教授会等の議を経て学長
が行う。
3 前項に規定する出向を命じられた教職員は、正当
な理由なくこれを拒否することができない。
4 教職員の出向に関し必要な事項は、別に定める「国
立大学法人静岡大学教職員出向規程」による。
|(1) ここにいう「出向」は、在籍出向と転籍出向のいずれも含むの
| か? 在籍出向(出向元の大学と出向先との間に二重の労働関係が
| 発生するもの)を行う場合には、出向期間終了後の復職について確
| 実な保障を与える必要がある。転籍出向(大学を退職して転籍先と
| の間に新たな雇用関係を発生させるもの)については、均等待遇を
| 保障する必要がある。
|
|(2) 学説判例は一致して、民法第625条1項を根拠に、出向命令には
| 労働者の同意が必要であると解している。にもかかわらず、第23条
| は、こうした同意要件(拒否権)を無視している(リーディング・
| ケースとして、〈東京地判昭和41・3・31〉参照)。
(解雇)
第33条 教職員が次の各号の一に該当する場合は、解
雇する。
一 勤務成績が著しく不良の場合
二 心身の故障のため職務遂行に堪えられない場合
三 事業の縮小、閉鎖その他やむを得ない経営上の必要がある場合
2 大学の教員の解雇に当たっては、教育研究評議会及
び教授会等の議を経て学長が行う。
| (1) 第33条第1項第3号は整理解雇の規定。整理解雇とは、使用者の
| 作成した整理基準に該当する者を一方的に解雇することをいう。現
| 状では、整理解雇を規制する法令は存在しない。しかし、判例によ
| り、「整理解雇の4条件」が確立している。
|
| ●人員整理の必要性(特定事業部門閉鎖の必要性)
|
| ●人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性(配置転
| 換、出向などで人員削減を回避できないかどうか検討したか)
|
| ●解雇対象者の選定の妥当性(選定基準は客観的、合理的か)
|
| ●解雇手続の妥当性(労使協議を行うなど十分な説明がなされてい
| るか)
|
| 大学が業績不振を理由に職員を解雇した場合、その解雇の有効性が
| 訴訟で争われるのは、当該解雇がこの4要件に該当しているかどう
| かという点について。いずれにせよ、本号のように「経営上の必要」
| のみによる包括的な整理解雇規定を置くことには問題が多い。より
| 具体的な要件を示すべきである。
|
| (2)教授会の審議を経ずしてなされた私大教員の解雇は、追認があっ
| ても瑕疵は治癒されず無効とされている。〈神戸地裁昭和51・9・
| 14〉本条第2項は、その趣旨を明文化したものとして肯定的に評価で
| きる。
(解雇の予告)
第34条 前条第1項の規定により教職員を解雇する場
合は、30日以上前に本人に予告するか、又は労基法第
12条に規定する平均賃金(以下「平均賃金」という。)
の30日分に相当する解雇予告手当を支給する。
2 前項の予告の日数は、平均賃金を支払った日数だけ
短縮することができる。
3 本条の定めにかかわらず、次の各号の一に該当する
場合は、予告することなく即時に解雇するものとする。
一 試用期間中の者を14日以内に解雇する場合
二 労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受け懲
戒解雇する場合
(解雇の制限)
第35条 前条の定めにかかわらず、次の各号の一に該
当する期間及びその後30日間は解雇しない。
一 業務上負傷し又は疾病に罹り、療養のため休業する期間
二 産前産後の女性教職員が「国立大学法人静岡大学教
職員休暇等規程」に基づいて休業する期間
2 前項の規定は、業務上の傷病の場合において、療養
開始後3年を経過した日に労働者災害補償保険の傷病補
償年金の給付がなされ、労基法第81条の規定によって
打切補償を支払ったものとみなされる場合は、適用しない。
| (1)非公務員型には不利益処分に対する人事院による事後救済の制
| 度は適用されない。それだけに、就業規則において、解雇手続、不
| 服申立てなどの手続を整備しておくことが必要である。
|
| そこで、たとえば解雇手続に関しては、「「懲戒解雇には行政官庁
| の認定を得る」旨の就業規則がある場合には、その認定があるまで
| 解雇の効力は発生しない」などの規定を盛り込んでほしい(たとえ
| ば、〈東京地裁昭和38・5・28〉参照)。
(懲戒の種類)
第39条 懲戒の種類は、次の各号に掲げるものとする.
一 戒告 始末書を提出させ、将来を戒める。
二 減給 始末書を提出させるほか、給与の一部を減額
する。ただし、減給額は、一事案について平均賃金1日
分の2分の1を、数事案に及ぶ場合にも総額において給
与算定期間の給与総額の10分の1を、超えないものと
する。
三 出勤停止 始末書を提出させるほか、14日間を限
度として出勤を停止し、その問の給与を支給しない。
四 停職 1カ月以上6カ月以下を限度として、職務に
従事させず、その間の給与を支給しない。
五 諭旨解雇 本学の諭旨を受け入れた場合、30日前
の予告若しくは30日以上の平均賃金の支払いをして解
雇する。ただし、これに応じない場合には、懲戒解雇と
する。
六 懲戒解雇 予告期間を設けないで即時に解雇する。
この場合、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受け
たときは、解雇予告手当を支給しない。
(懲戒の事由)
第40条 教職員が次の各号の一に該当する場合は、懲
戒処分とする。
一 正当な理由なく、しばしば遅刻、早退をした場合
二 正当な理由なく、長期にわたり無断欠勤した場合
三 正当な理由なく、みだりに職場を離脱し、業務に重
大な支障を来した場合
四 重大な職務怠慢により、本学で災害又は事故を引き
起こした場合
五 故意又は重大な過失により本学の施設、備品及び機
器等を破壊したり、帳票類又はデータ等の資料を紛
失若しくは破壊した場合
六 本学の「国立大学法人静岡大学セクシヤルハラスメ
ントの防止等に関する規程」又は「国立大学法人静
岡大学教職員倫理規程」に反する行為を行った場合
七 本学の物品を許可なく他に流用し、又は本学の金品
を着服した場合
八 正当な理由なく職務命令に反し、業務に重大な支障
を来した場合
九 本学の秘密を他に漏らし、本学に損害を与えた場合
十 重大な経歴詐称をした場合
十一 他人の発明、著作及び論文等を剽窃した場合
十二 許可なく兼業を行ない、職務に重大な支障を来し
た場合
十三 刑事事件に関与し有罪判決を受けた場合
十四 素行不良で本学の風紀秩序を乱した場合
十五 本学の名誉若しくは信用を著しく傷つけた場合
十六 重ねて訓告又は厳重注意を行ったにもかかわらず、
なお改俊の情が明らかでない場合
十七 その他この規則及び附属する諸規程によって遵守
すべき事項に違反し、又は前各号に準ずる行為が
あった場合
| (1)懲戒解雇に相当する行為については、紛争になる場合が多い。
| それだけに、紛争防止の観点から、懲戒解雇事由を明示的に規定し
| ておくのが望ましい。それゆえ、すべての懲戒事由を包括的に規定
| する第40条を修正し、懲戒解雇事由を定める規定とそれ以外の懲戒
| 事由を規定する2つの条文を新たに設けるべきである。
|
| 懲戒解雇事由を定める規定は、たとえば、以下の通りである。
|
| (懲戒解雇)
|
| 第■条 労働者が次の各号の一に該当する場合は、懲戒解雇とす
| る。ただし、情状により、通常の解雇、減給または出勤停止にとど
| めることがある。(以下、例示)
|
| 一 正当な理由なく、無断欠勤が1月に14日以上に及び、
| 再三にわたる出勤の督 促に応じないとき
|
| 二 他の労働者に対して暴行脅迫行為に及んだとき
|
| 三 故意または重大な過失により、大学に重大な損害を与えたとき
(懲戒手続)
第41条 大学の教員の懲戒に当たっては、教育研究評
議会及び教授会等の議を経て学長が行う。
2 懲戒手続に関し必要な事項は、別に定める「国立大
学法人静岡大学教職員懲戒規程」による。
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
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