(i)常勤講師が一定の重要な役割を担っているとしながらも、教授会の構成員ではなく、応募資格や待遇面等でも教授・助教授・専任講師とは明確な差異がある。(ii)講習会に参加した常勤講師は全員再任されているが、いったんは不採用で再応募の結果の再任もあり、希望すれば無条件で再任されたわけではない。(iii)学生の定員増加と、上級・嘱託講師などの採用が無条件での継続雇用に対する合理的期待を基礎づける積極的な事情にはならない。(iv)着任時の説明内容は当事者間の争いがあり、無条件で契約が更新されるとの説明ではなかった。
債権者が雇用継続について合理的期待を抱いたと主張する有意的な意味があるのは、センター所長の講習会での説明で、一定程度の期待を抱いたことは十分に推察できる。
しかし、講習会の目的は大学の教育システムなどの理解と教員間の親睦が目的で、契約内容を追加・変更する予定はなく、説明内容で債権者らに承諾を求めたこともなかった。
債務者が、学生定員の増員を図りつつ教育の質の向上を図るため、教員組織整備計画のもと、常勤講師の職位を廃止したことには必要性・合理性が認められる。
一度だけの軽率な発言のみで、その後の労働契約が当然に拘束されるわけではなく、任用期間満了時の雇止めは解雇権の濫用に当たらないと債権者の主張を退ける。
なお「センター所長の軽率な発言については、これに起因する損害について主張立証がなされた場合には、債務者が使用者として損害賠償責任を問われる余地が論理的にはあり得る」と言及している。