下の表は『週刊東洋経済』(二〇〇六年十月十四日号)と『エコノミスト』(二〇〇七年一月十六日号)の発表をまとめたものです。一般に大学においては、帰属収入に対する人件費比率は50%が標準とされています。大学は製造業などとは異なり、学生を育て、学生、教職員がともに知を創造する場であれば、人こそ財産だからです。
同僚私大が50%前後の人件費比率であるのに対し、唯一立命館のみ40%を切り、35 %台という異常な数字になっています。
『週刊東洋経済』の記事は「日本の大学トップ100」というもので、立命館は前回トップの座から一気に18位に落ちています。この百校の比較には教員ひとりあたりの学生数も示されおり、立命館の49・1は全百校のなかで最悪の数字です。
組合は近年の学生実態の大きな変容にいち早く目をとめ、これまで学力優秀とみられてきた学生層のなかにも、対人的な不安をかかえていたり、卒業後の進路に確信を持てず、モラトリアム的状態のまま卒業していく学生が現れていることを指摘してきました。そのなかで「総合的人間力」という新しい目標をかかげて議論してきました。
業協での議論では初年時教育などでたがいに理解を共有できる可能性のある部分もありました。しかし、人件費比率の数字について、数字を並べながら言い訳を始めた財務担当理事に対しては冷たい視線が投げかけられるだけでした。人件費比率が最も低い大学、教員ひとりあたりの学生数が最も多い大学という理由で高校生は立命館を選ぶのでしょうか。
昨年七月の業協で理事会が一時金カットの理由として新たに持ち出した、一方的な「私学危機論」について近藤委員から反論がなされました。しかし、理事会は答えませんでした。さらに、賃金について「九私大平均を基準にしない」、つまり、九私大平均を下回っていることをみずから認めるだけでなく、それでかまわないという、驚くべき発言が繰り返されました。
時間が迫るなか「認識が共有できなければ、再度、別に議論を継続しては」という議長の再三の促しに対しても、理事会は一方的に席を立ちました。
木田委員長からは、「理事会は信用されていない。一時金カットはその象徴だ」との追求がされました。これまで、「(信頼する)あの人に頼まれたからには、忙しくても断れない」このような意気に感じて、教職協同を進めてきたのが立命館であり、その発展の力でありました。しかし、今、信用・信頼というきずなが消えつつあります。
理事会が「それ行け」と声高に号令をかけるたびに、だれもが冷たい視線のまま、一歩、あとずさりし、きびすを返そうとしている――それが姿でありましょう。
組織体のトップが現場に依拠せず、独断で事を進め、破綻をきたした例は大企業に数多くあります。現在、学園で進みつつある、この腐食を理事会が認識していない、あるいは認識していても強行できると考えているとするなら、これこそ真実の「私学危機」といえましょう。
大学 | 帰属収入 | 人件費比率 | 教員1 人あたり学生数 |
立命館 | 687 億円 | 35.9% | 49.1 人 |
関西 | 428 | 44.4 | 45.9 |
早稲田 | 947 | 45.3 | 30.3 |
上智 | 246 | 45.5 | 24.6 |
東京理科 | 345 | 46.0 | 37.2 |
京都産業 | 167 | 47.0 | 38.5 |
同志社 | 348 | 47.9 | 41.9 |
法政 | 441 | 49.5 | 46.5 |
関西学院 | 270 | 53.3 | 43.5 |
立教 | 225 | 54.0 | 35.4 |
専修 | 268 | 54.1 | 45.5 |
青山学院 | 327 | 55.5 | 42.7 |
中央 | 421 | 56.2 | 40.7 |
明治 | 446 | 56.7 | 42.3 |
私大平均 | — | 51.3 |
■このニュースは職場委員としての報告であり、教職員組合の意見を代表す るものではありません。
文学部職場委員 朝尾幸次郎
約200 名の組合員の参加で開催された第3 回「業務協議会」は、当初出席予定の理事長が「体調不良のため欠席」という事態が発生しましたが、総長および専務理事が代理を勤める中で、交渉を進めました。なお、多くの組合員から「制限なき業務協議会の開催を!」との声をもとにギリギリまで折衝しましたが、残念ながら「制限」を解除するまでに至りませんでした。しかし、議論の中で総長から「交渉」の制限について「一律に制限するものではない」と確認を取ることができたのは、組合として一つの成果です。また総長からは、(1)2007 年度の全学論議のスタートにしたいという意味では、情勢論議、教育・研究課題のなど議論できスタートとしてよかった。(2)理事会をぜひ信頼して欲しいし、信頼できないのであればぜひ充分議論がしたい。信頼の回復を勤めたい。(3)労働条件について、理事会はきちんと議論していきたい。労働条件の議論を通じて信頼の回復に努めて行きたい。理事会と教職員の信頼関係をきちんと深め広げていくことについて何も異論はない。と発言があり、次につなげる議論ができたのも大きな成果です。
一時金カット問題については、理事会が7 月19 日の第2 回「業務協議会」で持ち出した「私学危機」について、私たち組合は真剣に議論し、教学危機としてとらえ、その教学危機を脱するためには学生実態から学園課題を議論することが必要であること主張し、私たちは課題の共通認識を勝ち取りました。その上で、その課題を前進させるために労働諸条件の議論が必要であるという事も一致させました。その課題を支える教職員の労働諸条件の一つとして一時金を戻すことを理事会に要求しましたが、理事会の回答は、これまでの主張を繰り返すばかりで、私たち教職員を納得させることが出来ませんでした。(教育研究課題を含む詳しい議論内容については、早急にまとめ別途「ゆにおん」でお知らせします)
学校法人立命館は27日、新しい役員人事を発表した。
副総長・立命館大副学長 肥塚浩教授(45)、児島孝之教授(64)=任期は来年1月1日から3年▽副総長 本郷真紹教授(48)=同▽常務理事 中村正教授(48)、上田寛教授(59)、林堅太郎・立命館アジア太平洋大副学長(60)=任期は来年3月1日−2008年7月20日▽立命館アジア太平洋大副学長 薬師寺公夫副総長(56)=任期は来年3月1日から10年3月31日▽立命館守山中学・高校長 小畠敏夫・立命館守山高副校長(55)=任期は中学校長が来年4月1日から2年、高校長が来年1月1日−09年3月31日。
■私は「平和と民主主義」をうたう立命館学園の一教員として、納得できる役割はなるべくはたしたいと考えている。だがしかし、学校法人立命館の常任理事会が2005年・2006年の一時金を一方的にカットしたことを決して承服することはできない。早急な回復を求める!それがどうしてもできないというなら、納得のゆく説明と誠意ある態度表明を求め続けるものである。信義の問題として、いつまでも。