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複雑系札幌研究会の記録

98.4.14
科学研究費補助金(基盤研究(B)(1))「形式的方法による複雑系数理の基礎研究」(研究代表者:辻下徹)による研究会が以下のように行われました。
  • 日時:1998年1月7日(水)−9日(金)
  • 場所:北海道大学学術交流会館第一会議室
  • プログラム(7日,8日,9日)
  • 梗概
  • 連絡先

  • プログラム


    1月7日(水)
    
    13:00−13:30 辻下 徹(北大)  
    	複雑系の「基本問題」
    (OHP [ pdf file],論説「生命と複雑系」(Ver 1.2)[ pdf file,98.4.14]) 13:35−14:05 五味 健作(東大) 思考機械・論理・言語・代数系--- 数理心理学序説(==>資料のURL) 14:10−14:50 柴田  勝征(福岡大) 自然言語翻訳の曖昧性と複雑性 14:55−15:25 白旗 優(慶大) Ideas and results in linear set theory 16:00−16:30 三好 博之(淑徳大) Higher dimensional categories and structural foundations of mathematics 16:35−17:05 木下 佳樹(電総研) ソフトウェアの複雑さ講演記録) 17:10−17:40 中戸川 孝治(北大) Relational Quantales, Filters, and Substructural Logics

    1月8日(木)
    
     9:30−10:30 塩沢 由典(大阪市大)
    	社会科学における複雑性研究
    
    10:35−11:05 松野  孝一郎(長岡技科大)
    	進行形の過去と現在
    
    11:10−12:00 郡司ペギオ幸夫(神戸大)
    	内と外のインターフェース:ベルグソン的展開
    
    13:00−13:45 金子、池上(東大)
            漫才による複雑系のサーベイ
    
    13:50ー14:30 金子 邦彦(東大)
          (複雑系の生命的|生命の複雑系的)シナリオ
     
    14:30ー15:10 池上 高志(東大)
           ゲームにおける複雑さと多様性について
    
    15:20−16:20 津田 一郎(北大)
    	カオス的力学系からみた思考/推論/記憶の様相
    
    16:30−18:00 パネルディスカッション
    	津田一郎(司会)・池上高志・金子邦彦・郡司ペギオ幸夫・松野孝一郎
    
    研究会終了後−20:00 懇親会(於百年記念館

    1月9日(金)
    
     9:30−10:10 四方 義啓(名大) 
    	構造の確率論(pdf file)
    
    10:20−11:00 松本 幸夫 (東大)
    	「超システムの進化」考 
    
    11:10−11:40 角田 秀一郎(奈良女子大)
    	 二つの系と「自分」(pdf file,ps file)
    
    13:00−13:30 下川 信祐(ATR)
    	通信ネットワ−クのデザインにおける形式的記述の束縛
    
    13:35−14:05 山崎 洋平(阪大)
    	A non-standard reconstruction of standard analysis
    
    14:10−14:40 高崎 金久(京大)
    	超準解析から見た実数上の計算可能性の概念
    
    15:00−15:30 藤尾 光彦(九工大)
    	力学系からみた計算
    
    15:35−15:55 山口 明宏(北大)
    	遅延結合力学系の形式言語としての特徴付けについて
    

    梗概

  • 木下佳樹
    ソフトウェアの複雑さ

    いわゆる大規模プログラミングで問題となるのは,膨大な量の記述を人 間が扱いかねる,ということだが,そこにあるのは確かに複雑さではあるが, いわゆる「計算の複雑さ(computational complexity)」の概念で把えられる ものとは異なるものだと思われる.どんな問題があるのか,それを解決するた めに用いられている圏論などの数理科学的手法についてお話しする.

  • 高崎金久
    超準解析から見た実数上の計算可能性の概念

    実数上の計算可能性の概念についてはさまざまな提案がなされている. ここでは超準解析からのアプローチについて考察する.機械モデルと しては超準解析的な Turing 機械(無限小 Turing 機械)を考える. ここでは数のテープ記号列へのコーディングという、普通の Turing 機械ではほとんど自明なことですら、深刻な問題を引き起こすことが わかる. (参考資料:「微分方程式と計算可能性」 tex file, ps file

  • 柴田勝征
    自然言語翻訳の曖昧性と複雑性

      博物学的学問であった「言語学」は、N. Chomsky「Syntactic Structures」(1956) によって面目を一新し、人間の頭脳内の特殊な計算モジュールである言語機能の研究を 目指すことになった。そして、これを基にして,コンピュータによる自然言語処理、機 械による翻訳などの研究が活発化した。しかし、「人工知能ブーム」のバブル崩壊に伴 い、「人間の言語のように曖昧で複雑なものを計算論的、数学的にモデル化しようとす る考え方そのものが誤りだった。」とする清算主義的ニヒリズムが蔓延するようになっ ている。10年前から,そのような事態が来ることを予測、予言して、新しい方向を目 指して来た2つの研究グループの取り組みを報告する。(予稿)

  • 山崎洋平
    A non-standard reconstruction of standard analysis

    基礎課程の解析学を教えているとその論理構成の無秩序に気付く。忌たんなく いえば、先人がたまたま思いついた道筋に安住した結果、出現した途中概念を無 批判に正当化してしまったと思われるものもある。そこで次のような問題意識の もとに論理構成を洗い直してみると、教育テクニックに留まらない意外な風景が 見えてくる:

     1. 極限が先か連続性が先か:
       i) 合成における極限の不整合
       ii) 「極限を求める」ことは可能か
    
     2. (偏・全)微分可能、C^1級はすべて必要か
    
     3. 数列と関数列:
       i) 調和級数はx^-1の積分より基本的か
          また、異様に早く収束する級数は具体的か
       ii) 不連続関数列の一様収束性は必要か
    
     4. 実数論は不可避か、また不可避とはどういうことか。
    
    (==>詳細)

  • 辻下 徹
    複雑系の「基本問題」

    複雑系の数学的研究の第一段階にある形式化の作業には, 回避できない困難がいくつかある.その例である
      ・形式化の不完全性
      ・形式とその使い方との関係
      ・形式における個概念の不在
    について考察したい.

  • 連絡先
    札幌市北区北10条西8丁目
    北海道大学理学部数学教室 辻下 徹
    Email: tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
    Tel & Fax: 011-706-3823