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国立大学独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports  No.12  2000.5.29 Ver 1.03


山場を迎えたので長くなるが、関係者はぜひ目を通して頂きたい。 【先週の動き】 中曽根文相は5月26日に国立大学長・大学共同利用機関長会議を召集し、文 部省の現時点での考え方と今後の方針について1万字を超える<説明>[12-1] をした。独立行政法人の利点を述べ「今後の国立大学等の在り方に関する懇談 会」の下に調査検討会議を開催して経済界・言論界からの有識者も加えて独立 行政法人化の検討を進める方針を述べた。公立大学についても法人化を検討す ることも同時に表明した。  会議後の記者会見で、蓮見国立大学協会会長は、「文相の提案は調整法の制 定など、私たちが主張してきた点にも初めて触れている。文部省と同じテーブ ルにつく可能性は出てきたが、国大協としての公式見解は近く開催する総会 (6/13・14)で決める」(北海道新聞5/27)と述べた。 【国立大学長会議と国立大学協会について】 国立大学長会議は、文部省の外局である国立大学の長を召集する、文部省主催 の会議。概ね上意下達の場。定例は3ヶ月ごとに開かれる。5月26日の会議 は臨時。  それに対して、国立大学協会は、文部省とは完全に独立した国立大学が自主 的に形成し運営されている組織である。会則の一部を添付する[12-9]。 【マスコミの報道】 マスコミ[12-3]の多くは、国立大学の法人化が決まったと報じており、大学で もそう考える者も少なくないようだ。大学幹部の中には5/26文相解説のス タイルが気に入っている者もいる。 しかし、法人化の中身を危惧する新聞報道も少なくない(例:[12-8])。選挙 前に国立大学協会が独立行政法人化を受け入れることに反対する声もあり、マ スコミ報道は昨年の9/20文部省方針[12-2]の後の報道と同様に、先走って いただけということになる可能性もかなり残っている。 なお、5/26朝日に掲載されたインタビュー記事の中で、有馬前文部大臣は 「私学助成を増やすには..『独法化』して国から直接お金を流す仕組みにす るのが有効だ」とアドバイスしている。国公私大に「公平に」税金を投入する という名目で、日本の大学をすべて独立行政法人大学化し、国策のための大学 総動員体制を樹立することも視野にあるようだ。 【学問の自由を奪う方針】 1万字の説明中で、学問の自由を剥奪することを前提とした説明がある。 「この点、国立大学は、私立大学と異なり、国の意思に基づいて設置され、主 として国費によって支えられてきたことから、これまでも、...国全体とし ての高等教育政策や学術政策を踏まえつつ、各大学において主体的な取り組み が進められてきました。...そして、このような国と国立大学との関係は、 独立行政法人制度の下においても、互いの責任の範囲をより明確にしつつ、基 本的には維持されるべきものと考えており、したがって、国立大学を独立行政 法人化する際には、大学の教育研究の特性を踏まえ、大学の主体性を尊重する ための一定の調整を図ることが、不可欠であると考えております。」 換言すると、「これまで、国策を尊重しながら大学が自由に研究をしてきて くれたので、独立行政法人化後は、大学の意向を尊重しながら国が大学に目標 を与えます」ということだ。研究・教育の主導権が大学から国に移行すること は不問にした上での些細な配慮に過ぎない。文部省は、行政の教育内容への介 入を禁じる教育基本法第10条と学問の自由を保障する憲法第23条を失念し ていると言えよう。 【5/11自民党案と5/26文相説明の関係】 文部省は1月以来自民党との表面下の折衝を続け3/22麻生委員会提言では 文部省案に近いものとなったが、最後に太田行革本部事務局長の強硬な意見に より自民党務調査会5/11提言となったという[12-4]。太田前総務庁長官は 昨年1月に有馬前文部大臣を言い負かして独立行政法人化を飲ませた論客であ る。自民党提言では、文部省が昨年9月に大学に提示した特例措置(学長の学 内選抜、公務員身分、第三者評価機構による評価等)は形骸化し独立行政法人 通則法を基盤とする内容になった[12-8]。しかし5/26文相説明では自民党 提言にある厳しい内容には触れず、「調査検討会議」に国立大学が参加するこ とにより大学の望む内容に法人化が実現可能であるかのような錯覚を起こさせ る。  文部省が総選挙直前に決着を付けたがるのはなぜだろうか。次の2つの読み が想像される: (1)現政権が継投する場合。このときは5月11日自民党提言が最終案とな ることは決まっている。文部省は単に交渉がうまくいかなかったと国立大学に 通知すればよいだけである、官庁には責任というものは一切ないからだ。 (2)新政権が誕生する場合。このときには自民党5/11提言は無意味にな るだけでなく、民主党が政権をとれば国立大学民営化・文部省解体路線が浮上 する可能性がある。それを防ぐためには国立大学独立行政法人化を既製事実に して置くことが必要だ。 国立大学が選挙前に独立行政法人化の既製事実を作ることに協力するような 非常識な振舞をすれば、国立大学協会理事会に属する国立大学の一部と文部省 との間に裏取引があることは疑いようもなくなる。 【評議会の使命】各大学で、6月13/14日国立大学協会総会に向けて種々 の動きが始まっている。独立行政法人化に一番乗りをして得をしようという大 学が幾つか知られているが、学内の同意をどこまで得ることができるか不明だ。 4月に施行された改正国立学校設置法によれば、評議会は反対表明をしても学 長は総合的に判断して独立行政法人化を受け入れてもよいことになっている。 経営的視点まで入れた判断は学長が個人の責任で下す。従って、評議会は経営 的観点を考えることなく正論に基づき反対表明をすればよい。すべての国立大 学が評議会で反対表明することにより、独立行政法人化を国立大学は決して望 んでいない、ということを明確に意思表明できるのである。 【学長の責任】ところで、同僚が問いかけたことだが、独立行政法人化を決断 した場合に、学長達は退職した後に、その責任をどうやって取るのだろうか。 在職中だけ責任を取ればよいというのであれば、10年後にしか顕現化しない 問題点など気にも留めないのは当然とも言える。これは官僚や政治家の責任に も共通する問題点である。指導者に権限が集中しつつある昨今、指導者の決断 の個人的責任が引退後も消えないシステムを構築することが急務だ。そうする ことで指導者が長期的な展望の下で慎重に判断するようになるかも知れない。 【意見の紹介】Reform のメッセージを添付した。 [12-5]「国立大学の責任」  発行者のもので、国立大学独立行政法人化が実現は国立大学の協力なしには ありえないので、国立大学は責任を免れない、という主張。 [12-6]「事態は変わったか」  文部省と国大協理事会の癒着を批判。行動を呼びかけ。 [12-7] 「大学を評価し変えようとする者の条件]  文部官僚集団、各政党の委員会集団、有識者集団、各大学の学長(個人)で作 る国立大学協会などの「小集団」だけで大学の未来を決めることへの疑義。 ====================================================================== 【引用した資料のURL】 [12-1]2000.5.26国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣説明 http://www.monbu.go.jp/news/00000456/ http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00526-monbu.html (目次付) [12-2]1999.9.20国立大学長・大学共同利用機関所長等会議における文部大臣あ いさつ http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/99920-monbu.html 文部省の検討の方向 http://www.monbu.go.jp/news/00000368/ [12-3]新聞報道5/27-29 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00527-houdou.html [12-4]共同通信ニュース速報05/26 16:24より http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00527-houdou.html#kyoudou 「...  自民党内で法人化問題が初めて取り上げられたのは今年一月。文 教部会の研究グループ(座長・麻生太郎元経企庁長官)の主要メン バーと、ふだん教育とは縁の薄い行革や財政関係の議員ら約十人が 、議員会館に近いホテルの一室に集まり、問題点を洗い出す非公式 の勉強会を始めた。  ...  三月末、文教部会は「独立行政法人通則法をそのまま国立大学に適用するこ とは不可能」「学長人事は大学の主体性を尊重」など、大学に配慮した提言案 をまとめた。しかし、思惑通りにはいかず、党の行革推進本部側からは「この ままでは認められない」と異論が相次いだ。                 結局、学長人事については「推薦委員会を設け、納税者を参加させるなど選 考方法の適正化を図る」との一文を追加。大学の存廃にも「国費で運営する国 立大の運営や組織の在り方に国が相当関与することは当然。特に大学の存廃な どには、国が大きな責任を負う」と踏み込んだ。               同党の太田誠一行革推進本部事務局長(前総務庁長官)は「国立大は税金を 使う以上、国民の共有財産であるべきだが、今の大学にはそういう認識が欠け ている」と指摘。「今後、文部省が勝手に法案をつくっていいというわけでは ない。こうした視点を取り入れるよう注文を付けていく」としている。    ---------------------------------------------------------- [12-5](発行者)「国立大学の責任」より http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00528-to-all.html 国立大学のみなさまへ マスコミの皮相的な見方とは裏腹に、5月26日の文部大臣の説明は、政官ダ イナミックスだけでは国立大学の独立行政法人化は実現しえないことを告白し、 国立大学に何とか協力してほしいと懇願したものになっています。教育と研究 という職務を果たすものは、教育と研究の場を独立行政法人化せよという無思 慮で傲慢で恣意的で無根拠な政策によって破壊されることを守ることを、憲法 および教育基本法によって命じられています。ここで譲歩することは、現在お よび将来の国民に対して許されることのない罪を犯すことです。 昨年10月に、国立大学の独立行政法人化の実現を回避することは国立大学に 勤務するものの歴史的義務ではないか、という私見を述べましたが、経緯を8ヶ 月間見守って来て、その思いは一層強まっています。国立大学自身が望み協力 しない限り国立大学の独立行政法人化は実現し得ないのです。文部省の圧力で 仕方無く独立行政法人化したのだというような言い逃れの余地は全くない、と 言うことができます。 この8ヶ月の間に、国立大学内外から多数の危惧の声が上がると共に、専門家 によって独立行政法人制度の多角的な分析が進みました。その結果は独立行政 法人制度が大学には適合し得ないことを詳細に示しています。独立行政法人化 が国立大学の構成員の総意などではないことが今や確認済みであるだけでなく、 独立行政法人化が学術研究・高等教育の場に穿つ大穴は、有能な実務家が運用 で埋めることができるような生易しいものではなく、国立大学を学術研究・高 等教育の場から国策研究国策教育の場へと変貌させてしまうことが論証されて いるのです。 国立大学内部で力を持つ実務家層は独立行政法人化の是非を理念的に論ずるこ とはもはや無意味だとして議論に参加せず、実務的立場から独立行政法人化の 準備を進めています。この8ヶ月の事態の推移が証明した「独立行政法人化は 不可避ではない」ということを正視しないで、独立行政法人化を前提として走 り始めている実務家層の盲目な活動にストップをかけること、それが、今緊急 にすべきことだと思います。それには、独立行政法人化を白紙に戻すよう各大 学で学長が意思表明するよう働きかけなければなりません。 大学で実際に教育研究に携っているものの多くは独立行政法人化に反対してい ます。評議会は、独立行政法人について構成員の総意を明確な方法で確認し学 長に提言することを怠ることは許されないと思います。もしも評議会提言に反 する決断を学長が下すならば、その責任は学長に留まります。従って、大学に 居る者は、独立行政法人化後に発生する諸問題について強い立場で対すること が出来ることになります。 国大の構成員は、評議員に学内の意思を適切な仕方で結集するよう強く働きか けなければなりません。 社会が動揺しているときこそ、大学は信念を以て不動を保ち社会の動揺を減衰 させるよう努める使命があります。守旧派・既得権益墨守・世間知らず・旧態 依然等々、マスコミや財界からの罵詈雑言などに怯んではいけないのです。戦 前、大学は総力戦体制の最先鋒として活躍し破滅への日本の歩みを早めました。 種々の恫喝に屈したという面もあるでしょうが、社会の威勢の良い掛け声に呼 応することを大学の使命と勘違いし自ら進んで参入したとも言えるのです。大 学が社会の動揺につられて動揺するとき、大学の存在意義は著しく矮小化され てしまうと思います。 6月13/14日の国立大学協会総会では、独立行政法人化反対を保つととも に、学の独立を目指して歩みだすことが必要です。国立大学協会・公立大学協 会・私立大学協会が連携して、文部省から独立した高等教育国民会議の設立の 検討を始めるなども、その一例となると思います。 以上のことは「緊急性」ゆえに、この1〜2週間、最優先されるべきことです。 しかし、長期的に真に重要なことは、国公私大学が文部省からまず精神的に独 立し、また種々の威勢の良いアドバイスや嵩にかかった批判などに惑わされる ことなく、政・財・官からの「学の独立」の実現に向けて地道な気の長い活動 を開始することだと思います。どれほど理想主義的・非現実的に聞こえようと、 それが大学にとって、己が使命をより良く果たすためには、一番現実的で確実 な道であると私は信じています。 ---------------------------------------------------------- [12-6][reform:02830 事態は変わったか」より http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00529-asai.html 「それが独立行政法人化の正式表明でありその説明であるという5月26日の 国立大学学長会議文部大臣説明を一読し、怪訝な思いにかられたのは私だけで はなさそうだ。昨秋9月20日の前文部大臣あいさつと比べるとき、繰り返し どころか仕切り直しの感がする。この間に主として大学側から幾度となく発せ られた数多の危惧と懸念に対しては勿論のこと「検討の方向」として自ら設定 した問題点についても、その解決の見通し等について何ら述べられていない。 新たに「調査検討会議」なる場が設けられ、あたかも白紙の状態で法人化問題 の検討を開始するかのごとくだ。しかしむろん事態はそうではない。今回の文 部省の方針表明が先の自民党提言を受けての結果であることは周知の事実だ。 この八ヶ月間に文部省は政府・自民党と熾烈といわれる調整努力をしてきたは ずだし、その「成果」が自民党提言ではなかったのか。今回はその当否を含め て文部省側から成果の説明あるいは見解が表明されるべきではなかったのか。 大学の自治を無に帰して大学の淘汰廃合を強調する、あのあからさまな提言は 隠蔽されたのであろうか。それともあの政党提言は文部省から二度三度と各国 立大学へ流されて周知徹底ご了解済みだ、とでもいうのであろうか。  もう一つ奇異なのは伝えられる国大協会長の転進?である。蓮実会長が「一 定の評価ができる。話し合いのテーブルにつく用意はある」と好意的にとらえ た云々、とは一体どの部分によってであろうか。調整法あるいは「特例法」に よる対応を含めた検討、といった実体不明の個所を指すのであろうか。態度の 変更は何ゆえであろうか。まさか自民党提言の背景をなす憲法・教育基本法の 精神を破壊せんとする「政策」を諒とされたわけでもありますまい。蓮実会長 は年明け後も一貫して先頭に立って独立行政法人化の非を主張してこられた。 その主張は自民党提言に十分に影響反映されたとご判断されるのであろうか。  各機関、各段階での意思決定に関わる情報は、果たして十分に公開されてい るのであろうか。国民に対する説明責任とは、このようなときこそ喚起される べき言葉であろう。文部省が「5月26日大臣説明はアレデ行コウ」と判断 し、伝えられる通りとすれば国大協会長もまた「前進した。コレデ行コウ」と する理由が、私の愚鈍のせいか、まるでわからない。とてもその体裁をとらぬ ものが「正式表明」と伝えられ、法案にもならぬものが「踏み切った」「競争 と淘汰の時代に入った」などど、既成事実化されていこうとしている。この 先、教授会、評議会、国大協、さまざまなレベルで厳しい議論が展開し、困難 な選択が迫られるであろう。その度に「事態は変わった」という恫喝が繰り返 されるかも知れない。しかし、議論を経た明解な意思決定というものは未だど こでもなされていない。5月26日説明を逆手にとれば、話はふりだしに戻っ た。実は、何も決まっていない。指摘される通則法の問題点は残ったままであ る。国立大学の独立行政法人化の危険性について、われわれはそれぞれのレベ ルで責任をもって、変わらぬ態度で、懸念と危惧を発しつづけねばならない。」 ---------------------------------------------------------- [12-7][reform:02829 大学を評価し変えようとする者の条件] http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00529-kondou.html 「群馬大工の近藤義臣です。 以下のメッセージを、世界の大学とはどのようなものか深く考えて頂く為に、 大学の関係者、「大学」に関心をお持ちの方々、各政党、NHK,各新聞社などへ 送ります。 ------------- 大学を評価する者は、大学とはどのようなものかを十分に深く理解し、大学 を超える能力を持つ大集団でなければなりません。」この事は、文部大臣、 「文部省と自称する」文部官僚集団、各政党の委員会集団、有識者集団、各大 学の学長(個人)で作る国立大学長会議、国立大学協会、などの小集団にも当 てはまります。もし、この評価する者が「大学なるものを超える能力を持つ大 集団」でなければ、丁度、剣道の師匠を、その弟子が、自分の腕の未熟さを気 付かずに、自分の師匠を批判して評価したつもりになり、「自分が偉くなった と錯覚している状態」と変わりません。「その未熟な弟子が自分の師匠の処遇 を決めようとする」事が、どのような事なのか容易に想像して頂けるでしょう。 学長経験者が大学とは何かを全て理解していると想像しがちですが、それは大 変な錯覚です。学長個人も「大学なる師匠に学んでいる一人の弟子」に過ぎま せん。未熟なものほど自分を省みずに、人を評価したがるものです。この様な 人々が行った評価結果は、「逆立ちをして、地球を持ち上げた」という表面的 で愚かな主張と等価な、初めから価値を持ち得ぬ作業結果であると、私達は気 付くべきです。 「文部大臣」や「文部省」が「大学なるもののあり方」を「決める権利がある」 と言う、その「権力集団の持つ思考構造」が「その国のあり方を戦前のように 危うくして来たのであり、これからも危うくしつづける」のです。「扱う対象 によって、対処する思考構造を再構築し続けなければなりません。」 「大学」 は正に「権力集団の持つ思考構造」をもって扱うべき対象ではないことに気づ いて頂きたいと考えます。私自身もまだ「大学という巨像」の尻尾を触ってい る程度に過ぎません。 人間の脳は、それ程賢明な物として作られてはいません。人類の歴史を振り返 れば、数え切れない戦争の歴史が見え、少数の権力者により苦しめられつづけ た大多数の人々のうめき声が聞こえてくるでしょう。是非、権力集団の中に居 られる方たちに、今現在と利己的な自分という視点や近未来を見た視野だけで なく、歴史を時間空間的に遠い過去から未来まで高い視点と広い視野から眺め、 対象を深く深く考えて、事にあたって頂けるように願ってやみません。 ------------- (再送信部) 昨今、産業界や国会議員や内閣や更に一般の多くの方々が、「大学改革」を叫 び、「大学」に対して「成果」を要求し、「大学を評価」しようとております。 この考え方に基づく「大学改革なるもの」が、長長期的に見て各地域や国家に とってどの様な結果をもたらすか、もう少し広く長い目で、深く考えてみませ んか? 例えば、「アメリカの大学に比べて、”生産品と生産量”が不満である」、 「アメリカの大学のように金を稼げ」と「損得勘定」に立脚した「企業の論理」 を持ち込んで「大学を変形」すると長長期的に何が起こるでしょうか? < 恐らく短期的目標に縛られて、大学が本来持つべき「何故、どうして、ど の様に」と「疑問を発し続けて深く広く探求する精神的基盤」は、やがて影を 潜めていくでしょう。その結果、「教育への投資が最も有益である」と考えて 「大学を設立した人々、地域、国家」は、その期待とは逆に、「大学を道具に した自分達の行為は、結果的に環境破壊をもたらした」と気付くことになるで しょう。 > < 短期的な利益追求の産物であるフロンやPCBなどの多くの化学製品や農 薬が、現在の環境破壊をもたらしたことは、周知の歴史的事実ではありません か? > 自らの考えを深めるよう努力し続けながら、確かなものを基礎にして、世の中 をより良くしようと努力し続ける人の姿を、美しいと考える人々の一人として 私はこのメッセージを送っています。 」 ---------------------------------------------------------------------- [12-8]『四国新聞』2000年5月29日付社説より http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00527-houdou.html#shikoku 「 だが、提言に至る水面下の折衝プロセスを見ると、文部省の言うように直 ちに「大学の自治が確保された」とは言い難い危うさを感じる。  まず学長人事について自民党当初案は「大学の主体性を尊重した手続きとす る」となっていた。それに行革チームから「自主性だけでは駄目だ」とクレー ムが付き、提言は「大学の意向を適切に反映しうる手続きとする」と大幅に弱 められた。  再編・統合についても「大学の自主性を尊重しつつ積極的に再編統合を推進 すべきだ」という当初案は「自主性は尊重しつつも、最終的には国の責任にお いて積極的に…」と変わり「国立大学については、国が、その運営や組織編成 の在り方に対して相当のかかわりを持つことは当然である」という一文も入っ た。  これからも国が運営や組織編成に口を出すという露骨な姿勢である。昨年九 月の学長会議で「できる限り自らの権限と責任において大学運営できるよう法 人格を持つことが適当」とした前文相の言葉と程遠いものだ。そこにあるのは、 目標・計画の認可や業績評価を通じて国が国立大学をコントロールし、効率を 上げるという行革の論理でしかない。  しかし学問研究というのはテーマを国家が決めるような行政の下請けではな い。考古学などすぐには結果の出ない分野も、貴重なものであることに変わり はない。行革の文脈に、学問研究の将来を閉じ込めるような流れをそのまま追 認したりすれば、将来に大きな禍根を残す。  いくら外側から枠をはめて追い立てても、大学人がその気にならなければ成 果は出ない。自主性こそが学問研究をリードするエネルギーである。法人化に は、大学の自主性・自律性確保は欠かせないことを再確認することが必要だ。」 ---------------------------------------------------------------------- [12-9]国立大学協会則より抜粋 第2条:国立大学協会(以下「協会」)は、国立大学を会員として組織する。 第4条:協会は、国立大学相互の緊密な連絡をはかることにより、その振興に寄与す ることを目的とする。 第5条:協会は、前条の目的を達成するために、次に掲げる事業を行なう。 (1)国立大学の振興につき必要な調査研究 (2)研究及び教育における大学相互の協力援助に関して必要な事業 (3)前2号に掲げるもののほか協会の目的を達成するために必要な事業 第6条:協会において、会員たる国立大学を代表する者は、当該大学の学長又は学長 の職務を行なう者とする。 第7条:総会は、会員の代表者をもって組織する。 第8条:協会がその意志を決定し又は表示する場合は、総会の議によらねばならない 。ただし、緊急の必要があり総会を招集するいとまがない場合においては、理事会の 議により、これを行なうことができる。 2 前項ただし書の規定によってなされた措置については、次の総会においてその承 認を得なければならない。 第11条:会長は、必要があると認めたときは、臨時総会を招集することができる。 2 会員総数の8分の1以上の大学から、議題を示して要求があったときは、会長は 、臨時総会を招集しなければならない。 第28条:国立大学の教員は、協会の事業に関して協会に意見を述べることができる。 2 前項の意見は、文書で提出するものとする。 3 意見が協会に提出されたときは、会長は、これを関係のある事項を担当する委員 会に回付するものとする。 4 前項の規定により、意見の回付を受けた委員会は、必要があると認めたときは、 口頭によってその教員の意見を聴取することができる。 ---------------------------------------------------------------------- 「規則集」添付文書: (1)「解説及び質疑応答」(1964.11.26第33回総会)、 (2)「国立大学協会のあり方について」 (1970.10.26地区理事懇談会 第47回総会承認) 1.国大協の性格と目的:国立大学全体の振興、さらには公・私立、海外の大 学との協力援助も ・『国立大学協会の性格は、自主性をもった各国立大学の連合体(federation) というべきものであり、国立大学協会の活動もその見地から考えるべきである。』 (2) ・『(会則第4条の)後段の「その振興に寄与すること」とは国立大学全体の 振興と解釈すべきであり、国立大学に関する共通の問題についての調査・研究 から、共通の要望の実現の努力まで及ぶものと考えてよい。そのための方法と して、対外的な意見の表明も含まれる。』(2) ・第5条:『第2号中の「大学」を「国立大学」に改めよとの意見があったが、 本号にいう「大学」とは国立大学だけではなく、公・私立大学、さらには海外 の大学も含める従来の趣旨から原案のままとした。』(1) ・『いくつかの大学グループに共通する問題、例えば、新設大学、単科大学、 入試二期校などの問題をどう取りあげるかが、問題となる、これはそのグルー プだけにとどまらず他の国立大学にも影響を及ぼすことになるので、国立大学 協会としては、それぞれのグループの立場を尊重しつつ意見の一致をみるよう に努力するほかはないであろう。』(2) ・『各大学の自治のほかに国立大学全体としての自治をどう考えるかが問題で ある。』(2) 2.一般教官と国立大学協会との関係 ・『国立大学協会は、各大学を会員としており、学長は会員校の代表として会 議に出席している。従って、一般教官も国立大学協会に内包されており、その 意見のとりまとめは、各大学の代表である学長の責任において行なわれるべき である。』(2) ・『各大学内で一般教官の関係を緊密にするために、次の方法をとることが望ましい。 (1)学長は、評議会、教授会等にできるだけ国立大学協会の活動の内容を伝える とともに、それについての意見をまとめて国立大学協会に伝えるよう努力する。 国立大学協会と各大学の間で意見を往復してとりまとめをしていくことが、学 内での意見の交換を活発にすることにも役立つことになる。 (2)国立大学協会としても、各方面への要望等について、その結果や経過を各大学に伝 えるように努力する。』(2) ・『一般教官に教員委員・専門委員を委嘱してその専門的な意見を活用する方 針は、従来もとられてきたが、これらの方法による一般教官の国立大学協会へ の協力は、今後さらに拡大すべきだと考えられる。ことに国立大学協会として、 今後の調査・研究にいっそう力を注ぐべきであるとすれば、専門家としての一 般教官の協力はますます必要となるであろう。その際に地区別・大学別にでき るだけ広く協力を求めるように努力すべきである。』(2) ====================================================================== ◆その他の資料 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/ ====================================================================== 発行者: 辻下 徹 homepage: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/ e-mail: tujisita@geocities.co.jp 独法問題会議室: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/room.bbs バックナンバー: http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/backnumber.html 発行部数(2000.5.29現在) CocodeMail:270 / Mag2:423 / Pubzine:25 /Macky!:21 / emaga 21 ===================================================================== End of Weekly Reports No.12 2000-5-29 **この週報は発行者の個人的な意思で行っています** ===================================================================