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http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-18-00803.html
国立大学独立行政法人化問題 週報
Weekly Reports No.18 2000.8.03 Ver 1.0
==目次================================================================
[18-1]文部省からの調査検討会議設立通知文書が明らかにしたこと
[18-2]国立大学協会設置形態検討特別委員会の議事概要
[18-3]国立大学教員から国立大学協会への要望書
[18-4]大学審議会パブリックコメント募集への意見提出
[18-5] 北海道新聞8月3日夕刊記事 「公共事業見直し省庁枠も対象に」
[18-L]独立行政法人化問題のサイトへのリンク
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7月31日に第一回独立行政法人化調査検討会議が開かれたが、まだ内容は伝
わっていない。教育改革国民会議の中間まとめが出て、大学についての提言も
ある。これについては次号で触れたい。
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[18-1]文部省からの調査検討会議設立通知文書が明らかにしたこと
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文部省は7月19日に調査検討会議に関する文書[18-1-1]を全国立大学に配付
した。これを読んで<嵌められた>と思ったのは国立大学教員だけでなく国立
大学長の中にも少なくなかったはずだ。
この文書には国立大学学長を含む60名の名簿[18-1-2]が添付されていたが、
それは「参加者名簿」ではなく「協力者名簿」と記されていた。これにより、
<協力を受ける側>である文部省が会議の主であることが、間接的にではある
が、明確に規定された、と言えるだろう。
予想外なことがもう一点あった。6月国立大学協会総会(以下6月総会と略)
前には「第1グループ:法人の基本問題」と文部省が説明[18-1-3]したものが
「組織業務委員会」という名称になり、「独法化後の国立大学の組織、業務等
に関する調査検討」を行なうと規定された。これには、7月19日の第2回国
立大学協会設置形態検討特別委員会でも疑義の声があったと聞く。
もう少し、7月19日の文部省文書[18-1-2]を見てみよう。
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3構成
ア)協力者は、当面、以下の委員会に所属して、調査検討を行う。
「組織業務委員会」
独法化後の国立大学の組織、業務等に関する調査検討
「目標評価委員会」
独法化後の国立大学の目標、計画、評価の仕組みに関する調査検討
「人事制度委員会」
独法化後の国立大学の人事制度に関する調査検討
「財務会計制度委員会」
独法化後の国立大学の財務会計制度に関する調査検討
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「独法化後の国立大学の」という修飾語を不自然に繰り返すことで、調査検討
会議を独立行政法人化自身の是非検討の場と勘違いしないように釘を差したと
言うことができよう。
調査検討会議は、徹頭徹尾、国大独法化の制度設計調査検討に特化した会議で
あり、調整法で独立行政法人化を正真正銘の<国立大学法人化>に「換骨奪胎」
するような意図の実現の余地などないことは誰が見ても明らかになった。
総会直前の6月9日の文部省による会議内容説明[18-1-3]から7月19日文書
[18-1-2]への変化は<背信行為>としか言いようがないものであり、国立大学
教員だけでなく国立大学長の間でも憤りが高まっていると想像される。実際、
7月19日のような説明が6月9日の段階であれば、6月14日の総会で参加
合意はなかった筈だ。想像するに、「法人化の基本問題」という曖昧な言葉に
国立大学長達の多くが、独立行政法人化を前提としない議論も調査検討会議で
展開できるという幻想を抱き判断を間違えたに違いない。
国大協は8月10日の次回特別委員会で、6月総会合意の撤回を真剣に検討し
なければならない。このような交渉戦略上の横着な仕掛けに最初から譲歩すれ
ば、国立大学長達が本気で日本の大学の将来を考えて会議に臨もうとしている
とは誰も信じないだろう。
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[18-1-1]文部省文書:「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」に
ついて(2000.7.19)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/00724.html
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[18-1-2]文部省文書:国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議協力者
名簿(2000.7.19)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/meibo.html
(分類は発行者の独断)
(国立大学長16名)(国立大学副学長3名)(国立大学部局長2名) (国立大学教員 9名)
(共同利用機関長等4名)(文部省所轄機関 2名)(国立大学事務局長 3名)
(公立大学長3名)(私立大学長 6名) (私立大学教員3名) (学校法人等理事長4名)
(財界人 4名)(マスコミ関係者4名)(その他 2名)
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[18-1-3]調査検討会議についての6月9日文部省説明より
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/006/20-chousakentoukaigi.html
「文部大臣のもとにある「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」(俗に
「賢人会」という)の下に「調査検討会議」がおかれる。
この調査検討会議は、4つのWG(各15人程度)、全体で60人ほどの構成
第1グループ:法人の基本問題
第2グループ:目標・計画・評価等に関する問題
第3グループ:人事システム
第4グループ:財務・会計システム」
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[18-2]国立大学協会の設置形態検討特別委員会の議事概要
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7月3日、7月19日に会合が開かれた。7月3日の議事概要[18-2-1]と19
日配付資料[18-2-2]が7月24日に北海道大学でも公開された。内容は調査検
討会議の準備会の様相を最初から示している。
特別委員会での検討課題としてリストされたものには(下の8項目を見てもわ
かるが)重複するものも多い。今はブレーンストーミングの段階と考えるべき
であろうか。なお、この68項目以外の検討すべきことについて北海道大学で
は(少なくとも理学研究科では)全教員から意見を募った。発行者もその機会
を尊重し7項目[18-2-3]を出した。
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[18-2-1]第1回 設置形態検討特別委員会2000.7.3(議事の概略)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/kdk/00705-giji1.html
「3.今後の検討の方向について
今後の検討の方向について、本特別委員会および専門委員会の役割、検討事
項、審議の進め方、また文部省の調査検討会議と本特別委員会との関連に関し
て、種々意見交換があった後、委員長より次のように述べられ、了承された。
本特別委員会および各専門委員会の検討事項について、来る7月14日金ま
でに国大協事務局宛、各委員より意見を提出いただき、次回の特別委員会で審
議し、役割分担等の整理をしたい。」
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[18-2-2]第2回 設置形態検討特別委員会2000.7.19(配付資料)
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/kdk/00719-giji2.html
68検討課題と委員名簿。
全体としての課題(8)
○ 国立大学の使命(accountability)と法人化の意味,大学改革の意味
○ 大学共同利用機関,公私立大学との関係
○ 大学の自主性・自律性と学問の自由,大学の国際化とは何か
○ 大学政策の審議機構について
○ 科学技術・教育研究の抜本的な整備,国費の投入,拡充について
○ 法人の役員・組織(学部長を含む)
○ 国公,国私大学の関係
○ 他省庁(日本の科学技術全体)との連携について:次の科学技術基本法
専門委員会「A 組織・業務」における検討項目(16)
専門委員会「B 目標・計画・評価」における検討項目(11)
専門委員会「C人事システム」における検討項目(13)
専門委員会「D財務会計」における検討項目(20)
設置形態検討特別委員会 専門委員会名簿
A法人の基本
座長 阿部博之(東北大学長)
委員 北原保雄(筑波大学長)
馬渡尚憲(東北大学教授)
小早川光郎(東京大学教授)
浦部法穂(神戸大学教授)
B目標・計画・評価
座長 松尾 稔(名古屋大学長)
委員 田中 弘允(鹿児島大学長)
奥野 信宏(名古屋大学教授)
丸山 正樹(京都大学教授)
内田 博文(九州大学教授)
C人事システム
座長 梶井 功(東京農工大学長)
委員 海妻矩彦(岩手大学長)
森田 朗(東京大学教授)
若杉隆平(横浜国立大学教授)
西川伸一(京都大学教授)
D財務会計
座長 鈴木章夫(東京医科歯科大学長)
委員 江口吾朗(熊本大学長)
宮脇 淳(北海道大学教授)
宮島 洋(東京大学教授)
本間正明(大阪大学教授)
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[18-2-3]国立大学協会特別委員会で検討すべき項目の追加希望
(北大学長が北大教員に意見提出を求めたのに応じて出したもの)
......................................................................
検討項目リストには、調査検討会議や特別委員会のルールやアカウンタビリティ
に関するものが欠けている。
(1)国民と一般教員への「設置形態検討特別委員会」および、調査検討会
議での議論の周知の方法(各大学に委ねず国立大学協会で当番校を決め責任を
持って公開すべきではないか)
(2)一般教員と国民からの意見の反映の仕方
(3)調査検討会議の動向がどのようになった場合に、国立大学協会として参
加を取りやめるのか(調査検討会議が「審議会のよう」になり官僚指導となっ
た場合には北海道大学としては参加取り消しを主張しなければならないはず)
(4)国民への広報活動(種々の国立大学への根拠内批判に対する明確な反論、
国立大学の理念などの議論..)
(5)国立大学の調査検討会議での位置づけの変化への対処法
7月24日部局長会議資料では、国立大学も調査検討会議への「協力者」と位
置づけられているが、これは、検討会議の主要参加者という位置づけを想定し
ていた国立大学協会総会第三合意事項と矛盾する。即刻抗議するか、検討会議
参加撤回を検討すべきである。
(6)調査検討会議の第一グループの役割変化への対処法
国立大学協会総会前には、調査検討会議の中で「法人化の基本問題」を検討す
るグループと呼ばれていたものが、7月24日部局長会議資料では「組織業務
委員会」という名称に変わり、調査検討会議が、理念的な議論をする余地はな
く、独立行政法人化の詳細な制度設計を検討するだけの会議であることが明確
になったと言える。通則法を調整法で「換骨奪胎」を期待するのは短慮であっ
たことが、この一ヶ月間の文部省の態度変化を通して証明されたと言える。こ
の意味でも、検討会議参加撤回を検討すべきである。
(7)独自法案準備専門委員会の創設
・文部省の法案作成と平行して国立大学協会自身の(独立行政法人化とは全く
別種の)法案作成作業を行なう専門委員会を設けるべきではないか。(通則法
の換骨奪胎という一本の道しか用意しないのは戦略的に弱い。別法案を準備し
することは、最悪の場合に国民に問うことはできる一方、そのことにより、交
渉上の発言力を強める効果がある。また、その専門委員会の活動自身が国民へ
の大きなアピールの効果がある。)
・(独自法案準備専門委員会創設とは直接関係しないが)国立大学教員有志が
<高等教育法>案を作成した場合、国立大学協会としてどのように取り扱うべ
きか。
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[18-3] 国立大学教員から国立大学協会への要望書
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調査検討会議への参加を取り消し、国民に向かって組織的に独立行政法人化問
題について理解を求め、新しい大学像を具体的に提示すことを求める要望書を
59大学の360名の国大教員が連名で国立大学協会会長および99国立大学
長宛に7月27日に提出[18-3-1]し、呼びかけ人が佐賀・岡山・札幌で記者会見
をし、佐賀・岡山では報道された[18-3-2].署名は8月23日まで続けているが、
調査検討会議の性格が7月19日文書で明確になってきた今、参加撤回の重要
性ははるかに大きくなった。この点を豊島氏が詳しく論じている[18-3-3]。
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[18-3-1]要望書
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/007/27-houkoku.html
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[18-3-2]新聞報道
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/007/27-houkoku.html#saga
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[18-3-3]豊島耕一氏「「調査検討会議」参加による行政法人化協力は許されない」
http://couscous.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/kentokaigi.html
Ver. 1.1
1. はじめに
文部省の「調査検討会議」への国大協の参加の問題については,組合サイド
の反応は少ないようだ.明確にこれに反対を述べているのは,東京大学職員組
合第97回臨時総会(6月29日)の「声明」で「国大協は調査検討会議への参加
を撤回すべきである」としているほか,国公労連書記長談話として,総会の決
定は文部省の方針に一定の譲歩を示したものと位置付け,「世論と運動を背景
にしないまま、『調査検討会議』へ参加するだけでは,国大協が願っている
『高等教育と学術研究の健全な発展に資する』ことは困難」と暗に批判してい
る.一方7月20日付けの「『首都圏ネット』全体会議報告」では,「独法化の
具体化が、文部省調査検討会に移り,数年がかりの取組みとなります」とあり,
国大協の参加自体を問題とする姿勢は今のところ見られない.
しかし,北大の辻下徹氏を代表とする国大協会長への「要望書」(7月27日
送付,注1)の署名者が指摘するように,この問題は見過ごせない重大な性質
のものであり,既成事実化すれば反対運動の8割方の敗北を意味するのである.
すなわち,国大協自身が国立大学教職員の抵抗姿勢を挫き,全大学一網打尽の
行政法人化のための媒介装置になることを意味するのだ.「参加してできるだ
け大学に有利なように努力する」と言うのは,「ユダヤ人評議会」がガス室の
壁の色について注文を付けるようなものだろう.
2. 「調査検討会議」の性格は明白
「調査検討会議」が行政法人化推進のための道具以外の何物でもないことは,
文部省の7月19日付けの文書「『国立大学等の独立行政法人化に関する調査検
討会議』について」に書かれたこの会議の目的を読めば明かである.
--------------引用--------------
1 目的
独立行政法人制度の下で、大学等の特性に配慮しつつ、国立大学等を独立行
政法人化する場合の法令面や運用面での対応など制度の具体的な内容について、
国立大学関係者のほか、公私立大学、経済界、言論界等の有識者の協力を得て、
必要な調査検討を行う。
--------------引用おわり--------
長ったらしく係り結びのわかりにくい文なので,修飾語を除いてその構造だ
けを取り出すと次のようになる.
「独立行政法人制度の下で、国立大学等を独立行政法人化する場合の制度の具
体的な内容について、必要な調査検討を行う。」
「独立行政法人」とあるのは,”政府から相対的に独立してはいるが,しか
し行政(府)とは関連を持つ法人格を有する団体”などという意味の普通名詞
ではもちろんない.「中央省庁等改革基本法」と「独立行政法人通則法」で定
義された特定の制度に付けられた固有名詞である.そしてそれは,国大協がこ
れまで国立大学に「なじまない」と言い続けてきたまさにその制度である.こ
の文章によれば,国立大学を独立行政法人化するための作業を専らとする会議
なのであり,参加者にはこれへの協力が求められているのである.文部省のリ
ストにある「協力者」の中にはこの制度への反対者(少なくともタテマエ上の
反対者)もいるかも知れないが,その人たちは「反対」から「協力」への転向
をどう弁解するつもりなのだろうか.これに沈黙したままの「協力」では「説
明責任」を果たしたことにはならないだろう.もちろん,これに組織として参
加を表明した国大協も然りである.
3. 「会議」への参加は正当化できない
参加を正当化する理論のいくつかは予想できるので,それについて考察してみよう.
[理論1] 独立行政法人化は避けられないので,それができるだけ「大学等の
特性に配慮し」たものとなるようにするには,これに参加して意見を言う方が
得策である.
[批判] 「避けられない」という判断をする前に,そのためのどれだけの努力
をしたのか,また今後する余地がないのか,ということが問われる.学長や国
大協会長らがみずからテレビに出演してこの制度の問題点をわかりやすく国民
に説明する努力をしたのだろうか.それどころか,国大協総会の4項目を「独
立行政法人化容認」として報道されるという絶大なアナウンス効果に対しても,
何の対策も打っていないではないか.
あるいは著名人であれば,その名声という「文化資本」を社会全体に役立て
ることを考えてほしいものだが,そのような努力をどれだけやったのだろうか.
「お上」から声がかかれば何でも出ていく,という態度は政治的に非常に偏っ
た態度と言うべきである.
また,国会に提出される法案の骨格さえ出来ていない段階での「避けられな
い」(注2)ものという決定論的な判断は,判断者の「自分(たち)は何の行
動も起こさない」という態度と組み合わせないかぎり極めて難解である.
ずっと独立行政法人反対と言っていたのが,文部省が態度を変えるや否や,
避けられないものと見方を変えるのでは,国大協は「親方日の丸」的性格をマ
ル出しにしたことになろう.文部省による長年の訓育の成果だろうが,このよ
うな態度こそまさに「改革」されなければならない.
[理論2] 会議に出て阻止する,あるいは「換骨奪胎」する.
[批判] このような主張をする人はまずいないとは思う.もしそれができれば
大したものだが,できなかった時は会議を盛り立ててしまったという「結果責
任」が問われる.
[理論3] 情報収集のため.
[批判] その情報をどこに持っていって,何のために使うのだろうか.国大協
が独立行政法人化を阻止すべき有力な「対案」を作る気概があり,そのような
センターが存在するのであれば,なにがしか役に立つこともあるのかも知れな
い.しかし国大協にはその気力もないように見える.国大協内部の「設置形態
検討特別委員会」も文部省の「会議」の下請けになる公算が大である.また大
学教員にスパイ活動は似合わないし,正攻法で行くのには公開された情報で十
分である.
4. 巻き返しの余地はある
「調査検討会議」が上のような性格のものであり,それへの組織参加が事実
上の行政法人化容認であり,「敵に塩」を送る行為であることは誰でも理解で
きるはずだ.(これへの参加を国大協は文部省から「懇願」されたという.)
私は所属する教授会でこのことを指摘し,「会議」からの離脱を主張したが,
隣の席からは「あなたの言うとおり」と囁かれ,出席者の多くに理解されやす
い話だと感じたものである.実際この決定の直後メディアはそれを見抜いてそ
のように報道したのである.もしこれが誰にも分かりやすい話だとすれば,今
回の「要望書」は多くの人に説得力を持ち,したがってこの「敗北」を巻き返
すチャンスは十分に残されているはずである.にも関わらずこれから目をそら
し,「転進」のような言い方がされるようになるとすれば残念だ.
いろいろな団体も,何かの「声明」を出しておけばアリバイは作れるという
ような態度ではなく(もしそれだけで絶大な影響力があるというのなら別だが),
どうすれば実際に効果が出るだろうかということに関心を向けて欲しいものだ.
さもなければ単に「事務的な遠吠え」に終わるだろう.もし「調査検討会議」
参加者の中に組合に縁のある人や科学者会議のメンバーがいるのであれば,そ
れらの団体は,彼らに文部省への協力を止めるよう説得してみたらどうだろう
か.「転向者」文部省の手伝いをする時間があるくらいなら,国大協でも科学
者会議でもいいから独自案作りに努力して見たらどうか,と.
「事ここに至っては」とか「大勢には逆らえない」と感じている人も多いと
思う.しかしほんのわずかの抵抗が実は多くの命を救い,些細な無関心が多く
の命を奪うのに手を貸すという歴史の教訓はどのような場面でも当てはまるの
ではないだろうか.「学問の自由」という大学にとっての「命」に関しても同
じだろう.当事者には勝ち負けを「予測」するより重要な役割があるのだ.
(2000.7.31)
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(注1)http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/007/27-houkoku.html
(注2)私の母校九州大学から「後援会」設立の呼びかけが数日前に届いたが,
その中で総長は「国立大学の法人化が避けられない状況になった」と述べてい
る.かつては米軍板付基地撤去のデモに学長が先頭に立つという意気と気概を
見せた大学だが,それに比べてのこの落ちぶれように落胆するのは私だけでは
ないと思う.もちろんその原因の少なくとも半分は批判勢力の腑甲斐無さにあ
る.
豊島耕一
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[18-4]大学審議会パブリックコメント募集への意見提出
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大学審議会の「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について
(審議概要)」へのパブリックコメント募集[18-4-1]が7月28日に締め切られ
た。大学を根底から改造する独立行政法人化について、大学審議会が何も検討
しようとしないことは、大学審議会が何の自律性もないことを国民の前に証明
するものである。大学審議会は文部大臣に勧告する権限を持っており、どの諮
問事項にも関係せざるを得ない独立行政法人化について沈黙を保つとすれば、
日本の高等教育を左右する地位に座しながら責任ある検討・判断を怠った責任
を20名の委員は一生背負わなければならない。この旨をパブリックコメント
[18-4-2]として大学審議会室に提出した。
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[18-4-1]パブリックコメントの募集
http://www.monbu.go.jp/pcomment/00000095/
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[18-4-2] 発行者の意見提出
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/007/28-tjst-pcomment.html
より。(...は省略部分を示す)
2000年7月28日
鳥 居 泰 彦 会長殿
井 村 裕 夫 副会長殿
青 山 佳 世 委員殿
阿 部 充 夫 委員殿
天 野 郁 夫 委員殿
猪 口 邦 子 委員殿
奥 島 孝 康 委員殿
川 口 順 子 委員殿
北 城 恪太郎 委員殿
黒 田 玲 子 委員殿
小 出 忠 孝 委員殿
小 林 陽太郎 委員殿
櫻 井 孝 頴 委員殿
島 田 あき子 委員殿
志 村 尚 子 委員殿
武 田 建 委員殿
蓮 實 重 彦 委員殿
平 澤 貞 昭 委員殿
山 崎 正 和 委員殿
吉 川 弘 之 委員殿
...
(1)【独立行政法人化問題に言及してほしい】
周知のように、国立大学制度を廃止し、独立行政法人制度に基づく大学法人制
度の設計が、文部省と国立大学が中心となって始まった。この件について貴審
議会が沈黙を保つことは、己が存在理由を否定するに等しいことである。独立
行政法人化について直接諮問されていないとは言え、このような大変革に言及
せずに、種々の諮問事項を具体的に論じることは困難なはずである。
独立行政法人化には運営上の観点から多くのメリットがあると言われながら、
大学という存在の独自性を破壊し日本の学術社会が弱体化するリスクが限りな
く大きいことが、多くの学術関係者によって指摘されている。貴審議会は、当
事者である文部省と国立大学とは違う視点に立てるはずで、ぜひ自主的に、国
立大学の独立行政法人化について議論し、メリットだけでなく、リスクへの対
策について検討し、報告の中で敢えて独立行政法人化問題についても見解を述
べることを強く望みたい。
国立大学の根底が揺らいでいる現状に何も言及せずに、今回の審議概要に示さ
れるような、視野を不自然に限った答申を出すとすれば、大学審議会は自律性
など全くない存在であることを広く国民に宣言するものであり、20名の委員
の皆さま方は国民に対する負託を放棄するものと見なされても申し開きは困難
ではないか。審議会委員の皆さま方が責任の大きさを自覚し、矜持を持ってこ
の問題について責任ある発言を敢えてすることを期待する。
(2)【大学審議会のこれまでの答申の問題性】
大学審議会が、大学改造の必要性やメリットを論じることに終始するだけで改
造に伴うリスクを分析し具体的対策を示さないとすれば、その存在理由は一体
どこにあるのだろうか。
しかし、大学審議会は13年間に19にも上る答申や報告を行ない種々の大学
改造案を提言してきたが、改造の必要性・メリット等を論じるだけでなくリス
ク分析も真剣に行ったことがあっただろうか。また、提言が実現した後の事後
評価をしたことがあるのか。予想していたメリットは本当に得られたのか、問
題は発生しなかったか、等を、調査・分析したことはあったのだろうか。
たとえば、国立大学を大きく変えた、大学院重点化・教養部解体以降、国立大
学における教員の「時間の劣化」は著しいだけでなく、地方国立大学への財政
的圧迫は正視に耐えぬものがある。こういった点について、事後評価を一切し
ようとしないことは、貴審議会の答申には「責任」が一切伴わないということ
にならないか。そうであれば、今回の答申もこれまでと同様、何の責任も伴わ
ない発言にならないか。
(3)【今回の審議概要にある提言に伴うリスクについて】
今回の提言にある改造には必要性やメリットがあるとは思うが、リスクも小さ
くない。気づいたリスクをいくつか指摘しておきたい。おそらく審議の中でも
当然議論されたはずだと思うが「審議概要」では言及されていない。
(a)【「大学のグローバル化」のリスク】
...
(b)【「国際競争力をつける」ことの意味が退化するリスク】
...
(c)【「重点的配分」のリスク】
「卓越した実績をあげることが期待できる大学院や、教育研究上の新たな取り
組みを行なっている大学院に対して、客観的で構成な評価を行なうことを通じ
て資源の重点的配分を行なうことが必要である。」...とあるが、重点的配
分がゼロサムゲームを意味するならば、失敗すれば再起は困難であり「新たな
取り組み」は委縮したものとなるのは当然で、これは、日本の大学を委縮させ
創意を奪うリスクがある。それだけでなく、人事の流動性をさらに硬直化する
リスクも伴っている。こういった点について、どのような対策を考えておられ
るのだろうか。...省庁の予算のシーリングを無くす画期的な動きがある中
で、大学同士のゼロサムゲームである「重点化政策」からの転進を提言する時
期が来たと言えるだろう。
(d)【大学の種別化のリスク】
...
(e)【「改革の常態化」による大学の疲弊というリスク】
今の国立大学が疲弊していることを認識しているだろうか。原因は、絶えず改
革が強制されているからだ。現在は、<独立行政法人化後の生き残り>に追い
立てられ、派手な改革を案出することに99国立大学はエネルギーを費やして
いる。教育・研究に携るものを、最も苦手とする宣伝的業務に縛りつけること
で国立大学の人的資源を浪費すれば、国際的競争に耐える底力を国立大学が失
うリスクが大きい。
(4)【国際競争力がない真の原因】
それは、日本人の多くが関心が狭くしかも自分自身の考えというものを持って
いないことである。知識や技能や問題解決力では世界でトップレベルにある日
本人が国際競争力に欠けるという指摘が正しいとすれば、自分自身で考え、自
分の責任で発言し行動する勇気がある人が少ないことが原因の一つであろう。
...今後の日本の高等教育は、学生に多くの教養や知識や技能や問題解決力
を持たせることだけではなく、自分自身の考えを持つことの喜びと重要性とを
知らしめることに大きな重点を置かなければならない。
【結語】
...審議会委員の皆さま20名が、21世紀の大学を左右する位置にいる責
任の大きさに畏怖の念を持たれ、これからの世代への責任感の上に立って、独
自の考えと判断を反映した答申を構築されますよう、切にお願い申し上げます。
辻下 徹
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[18-5] 北海道新聞8月3日夕刊記事 「公共事業見直し省庁枠も対象に」より
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「森喜朗首相は3日午前、自民党の亀井静香政調会長と国会内で会い、党側が
検討中の公共事業見直しに関する中間報告を受け、従来の省庁シェアにとらわ
れずに抜本的に事業を見直す方針を確認した。...会談後、首相は記者団に
「学校も公共事業だ。文部省は小さな予算しかないが、建設省でやればもっと
立派なものができる。引きだしはどこでもいい」と述べ、従来の省庁の管轄に
合せた事業体系を見直す必要性を指摘した」
「省庁管轄に合せた事業体系の見直し」こそ国民の大半が待って待って諦めか
けていたことだ。指摘にとどめず万難を排し断固実行に移して欲しい。「建設
省でやればもっと立派なものができる」という言い方は「建設省の権限の予算」
を前提とする対症療法の響きがあり、また、立派な校舎ができるという意味か
も知れないが、「建設省なら大学については門外漢だから金は出しても口まで
は出さないだろうから立派な高等教育体制ができる」との発言と解釈すること
にしたい。
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[18-L]独立行政法人化問題のサイトへのリンク
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◆謝辞
以下を主な情報源としています。
・国大独法化反対首都圏ネットワーク
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html
・全大教近畿速報
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・メーリングリスト高等教育フォーラム he-forum
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・メーリングリスト大学改革情報 reform
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End of Weekly Reports No.18 2000-8-3
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