==> 国立大学独立行政法人化の諸問題
2001.10.6 更新(主に全大教メーリングリスト 高等教育フォーラム(he-forum) より転載)| visits since 2001.9.28

国立大学等独立行政法人化調査検討会議 中間報告 関連報道


中間報告「新しい「国立大学法人」像について」の諸問題

南日本新聞 10/6:社説「【国立大法人化】国の関与が見え隠れ」
山陰中央新報10/5:社説「国立大法人化/中途半端な自主性の確保」
北海道新聞 10/5:社説「国立大法人化*地方切り捨ての不安」
東京新聞  10/3:社説「独立法人化 自主・自律の国立大に」
読売新聞  10/3:社説2 「国立大学法人」への視点
朝日新聞  10/1:大学の法人化―これが規制緩和なのか
読売新聞  9/30:社説[国立大法人化]「緩む規制の対価は改革への重責」
西日本新聞 9/30:<直言曲言>「地方国立大学の”志”」
毎日新聞  9/29:社説「国立大学法人化 ゴールではなく出発点だ」
京都新聞  9/28:国立大運営に外部有識者参画を 法人化検討会議 学内人事は能力主義で
朝日新聞  9/28:国立大法人化 裁量拡大、経営責任も/文科省会議中間報告 再編統合が加速か
東京新聞  9/28:国立大付属の私立校も/文科省会議中間報告 非公務員化、結論出ず
西日本新聞 9/28:キャンパス将来像を予測・・・有名学者招き学生集め 大学ごとに学費格差?
西日本新聞 9/28:国立大改革 法人化へ規制緩和 文科省に中間報告 交付金業績で配分
日経新聞  9/28:役員に外部識者/国立大法人化で中間報告 文科省検討会議
読売新聞  9/27:国立大に民間の発想を・・・文科省改革案中間報告

Yomiuri On-Line 2001年9月27日

国立大に民間の発想を・・・文科省改革案中間報告

 国立大の改革を検討していた文部科学省の調査検討会議は27日、大学運営
に民間の手法や競争原理を取り入れ、活性化することを目指した法人化案の中
間報告を公表した。学長の権限強化や学外者の運営参加、能力主義などが特徴。
独自の判断で学科を新設したり、特許の実用化などの事業で収益を得たりする
ことが可能になる一方、学長らの責任は重くなり、徹底した情報開示が求めら
れる。

 報告によると、各大学は法人化後、理念や長中期の目標、計画を策定し、学
長は経営、教学双方の最終責任者として運営協議会などの意見を参考に大学を
運営する。運営には、企業経営者など学外者を必ず参加させ、学長を選ぶ際も
学外の意見を反映させる。

 大学側は、現在、国が認可し、規制している内部組織も自主的に編成できる
ようになり、教職員の給与システムを能力、業績に応じたものにしたり、教授
陣に任期制、公募制を採用したりすることも可能となる。

 事業も独自判断で展開できる。独立採算制の付属校の設置や、研究で生まれ
た特許を実用化する企業への出資で「100%子会社」を持つことなどが考え
られ、収益は自己収入とし、研究強化などに使える。授業料など学生納付金も
独自に設定できるが、これについては、「国が示す一定の範囲内」との歯止め
をかけた。

 一方、教育や研究の実績は第三者機関にチェックされ、財務内容とともに公
表されて説明責任が義務づけられる。評価結果は国からの運営交付金に反映さ
れ、競争原理にさらされる。

 これらは新たに法律を制定して行う予定で、早ければ2004年度にも移行
となる。運営組織や教職員の身分を公務員とするか否かについては合意できず、
来春の最終報告まで持ち越された。

『西日本新聞』2001年9月28日付

国立大改革 法人化へ規制緩和 文科省に中間報告 交付金業績で配分 

 国立大学の法人化の枠組みを検討していた文部科学省の調査検討会議(主査・
長尾真京都大学長)は二十七日、国立大を大学ごとに法人化し、競争原理を導
入することで活性化を図る中間報告を同省に提出した。国立大をめぐる規制を
大幅に緩和し、民間的な経営手法を取り入れることを盛り込んでいる。これに
より国立大は、国の直轄運営を離れ、独立行政法人の一形態である「国立大学
法人」に移行することが固まった。 文科省は年度内にまとまる最終報告を受
け、法人化のための法案を作成する。実際に法人への移行が始まるのは二〇〇
四年度からの見通し。

 中間報告は「個性豊かで活力に富み、国際競争力のある大学づくり」が法人
化の基本としている。国立大学法人には国から運営費交付金を支給するが、大
学の提案に沿って文科相が中期目標(期間六年)を策定。これに基づいて第三
者機関が業績を評価し、評価結果によって次期の交付金の額を増減させる。

 具体的な規制緩和策として(1)学科は大学の判断で新設が可能(2)教育・
研究に関連する場合は収益事業を認める(3)教職員の兼職・兼業を条件付き
で認める(4)企業や自治体からの外部資金・寄付金を受け入れやすくする―
などを挙げた。また副学長や監事に学外者を登用するよう求めている。

 教職員の身分については決着がつかず、意思決定機関のあり方についても複
数の案を併記。最終報告に持ち越した。


大学が安泰とは限らぬ 工藤智規・文科省高等教育局長の話

 十八歳人口の減少を考えると、国公私立を問わず大学経営は大変厳しい。国
立大はこれまで教育研究などの役割を果たし信頼も得てきたが、大学の努力が
足りず、教育姿勢のアピールが受験生に届かなくては、存亡を考えなければな
らないことになるだろう。国立に限らず、大学は未来永劫(えいごう)安泰と
は限らない。大学の特色をどう出すか、これから腕の見せどころではないか。

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「自主性保障見えず」 国立大法人化中間報告 九州の大学に戸惑い 


 文部科学省の調査検討会議が二十七日まとめた国立大学の法人化に関する中
間報告に対し、九州の国立大では戸惑いや不満が渦巻いた。各大学は、改革の
重要性を認めつつも、改革の「理念」が示されていない点や、小さな地方大学
に不利に作用しかねない「競争原理」の導入を不安視する声が相次いだ。

 同省によると、法人化の動きに対応し、経営基盤を強化しようと、九州では
十五の国立大のうち四組・八大学が、再編・統合で合意、または協議中。

 中間報告を「改革ありきでビジョンが示されていない」と批判するのは、宮
崎大との統合に向け協議中の宮崎医科大・森満保学長。「明確な理念なしに、
改革の道筋が先に提示されるのは矛盾している」と指摘。各大学の中期計画を
文科相が認可し、目標達成度を国からの資金配分に反映する方針が打ち出され
たことについては「実際には大学の創造性をしぼませ、管理を強めようとして
いる。大学の取り組みは、研究結果によって評価すべきだ」と注文した。

 各分野で競争原理を導入する点について、鹿児島大の田中弘允学長は「既に
資産、人的資源が集まる都会の大学と、比較的小さい地方の大学が同じ土俵に
立って競争はできない」と批判。「地方大学の衰退は、地域の衰退、ひいては
国力の衰退につながる。大学改革は必要だが、改革の道筋は別にあるはずだ」
と強調した。

 熊本大の江口吾朗学長も「法人の自主性・自律性を保障する国の財政支援が
得られるのか、中間報告では見えない」と懸念した。

 一方、中間報告に理解を示したのは、九州芸工大と統合することで合意した
九州大。「(産学連携など)産業界から大学への厳しい要請を考えれば、改革
に抵抗はできない」と矢田俊文副学長。九大はキャンパス移転事業を推進中だ
が、巨額の資金が必要な移転や付属病院整備は国の責任で整備することが盛り
込まれ「移転をスムーズに進められる」と歓迎している。

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国立大法人化報告 大学間競争の時代へ 国の管理強化の側面も 

 【解説】文部科学省の調査検討会議の中間報告で示された国立大法人化と、
それに伴う大学の規制緩和は、これまで窮屈ではあるが居心地のいい“ぬるま
湯”にいたともいわれる全国九十九の国立大学を競争の荒海に押し出すことに
なる。

 文科省が描く国立大の未来像は、競争によって生じる各大学の個性化だ。大
学に学科改編や人事・財政面での裁量権を与えることで、画一的で変化に乏し
い教育から、各大学の特徴を生かした研究・教育に脱皮し、産業界が求める
「国際競争力の向上」につながることを期待している。文科省は、業績評価に
よって交付金に差を付ける“信賞必罰”で、大学のしりをたたく構えだ。

 しかし、最先端の科学研究なら評価しやすいだろうが、時間のかかる基礎研
究や、教員養成など地域の「人づくり」といった地味な役割が、正当に位置づ
けられ評価されるか、中間報告でははっきりしない。

 企業からの研究委託費や寄付金が都市部の有名大学に集中し、経営基盤に格
差が出ることも予想される。地方の大学関係者は「競争の結果、地方国立大が
淘汰(とうた)されるのでは」との危ぐを抱いている。

 また、規制緩和の陰で、文科省が大学への管理を強めようとしているのも気
がかりだ。交付金の格差付けは大学をコントロールする道具になりうる。国が
不適任と認める学長に対しては、文科相が大学に解任審査を求める権限まで盛
り込んでいる。大学の自治、学問の自由が侵されないか、不安が残る。

 ただ、これまで自分たちの研究・教育が税金を使っていることに無自覚で、
その目的や成果について国民への説明責任を果たしてこなかった国立大も多い
のではないか。法人化を契機に、すべての国立大が「自分たちはこの地域で何
をすべきか」という“存在意義”を問い直すこと。それが国立大学改革の出発
点だ。 (東京報道部・永田 健)

『西日本新聞』2001年9月28日付(2)

キャンパス将来像を予測・・・有名学者招き学生集め 大学ごとに学費格差? 

 二十七日にまとまった国立大法人化の中間報告は、これまで国立大を縛って
いたさまざまな規制を緩和し、大学の裁量権を広げようというのが特徴だ。中
間報告で示された制度が実現すれば、キャンパスはどう変わるのか。将来像を
予測してみた。

■教職員に給与格差
 ノーベル賞級の学者を外国から高額の年俸で招致して、大学の“目玉商品”
とし、全国から優秀な学生を集める―こんな手法が、国立大でも可能になる。

 現在、大学の教職員には国家公務員の給与表が適用されており、事実上、年
功序列で決まる。しかし今回の中間報告は「能力・業績に応じた給与システム
の導入」を推奨。任期制や年俸制の採用も可能としている。これを活用すれば、
世界的な実力教授やスター教授を招くことができる。ただ全体の予算には限り
があるので、その分だけ他の教授の給与が低く抑えられるかもしれない。


■兼業規則見直しも
 二年前のこと。民間企業からの誘いを受けた一橋大の教授が、兼業規制に阻
まれたため、大学を退官し取締役に就任する出来事があった。

 中間報告は「産学官連携や地域社会貢献の観点から、兼職・兼任に関する規
制を緩和すべきだ」と提言している。大学教職員の知識、経験を社会に還元す
る効果があればOK、というわけだ。


■各校が独自に設定
 学生から見ると、大学はどう変わるのか。

 現在、国立大の授業料は、全大学一律の四十九万六千八百円(年額)。私立
大平均の60%程度に抑えられている。

 中間報告では「一定の納付金(授業料)は、国が示す範囲内で、各大学が設
定する」としている。「国立大生ならみな同じ」の原則は崩れるのだろうか。

 ただ文科省は今のところ、学部生の授業料については「一律」を維持したい
意向。当面は聴講生や大学院生の授業料が、一部の大学で変化しそうだ。

『東京新聞』2001年9月28日付

  国立大付属の私立校も
  文科省会議中間報告 非公務員化、結論出ず

 国立大学法人化の枠組みを検討していた文部科学省の調査検討会議(主査・
長尾真京都大学長)は二十七日、国立大学を国の行政組織から切り離し、それ
ぞれに法人格を与えることなどを柱とした中間報告を工藤智規高等教育局長に
提出した。民間企業的な経営手法を打ち出したほか、関連する法人への出資を
初めて認めており、国立大が出資する会社や付属私立学校(学校法人)が生まれ
る可能性が出てきた。

 教職員の非公務員化については意見が割れ、最終報告に持ち越された。組織
案についても、会社のように重要事項を役員会で議決するか、役員会の合議を
経て学長が決めるかで調整がつかず、二案が併記された。

 中間報告の要点は、▽各大学を「国立大学法人」とし自律的に運営▽「民間
的発想」の経営手法を導入▽学外者の運営参画義務づけ▽非公務員化も視野に
入れた能力主義の徹底▽第三者評価による教育・研究実績の事後チェック―な
ど。「できるだけ早期に移行」するとしており、早ければ二〇〇三―〇四年度
にも第一陣の大学が法人化する見通しだ。

 独立行政法人の大原則で、定型的な業務を想定して作られた「独立行政法人
通則法」とは、大学独自の評価システムを導入したり、学長選考や目標設定に
際して大学の自主性に配慮した点などで一線を画した。

 「国による長期的な高等教育・学術研究政策やグランドデザインの策定」
「大胆な再編・統合の推進のための考え方の整理と具体的な計画策定」「国公
私トップ30大学を世界最高水準に育成するための具体策」など、同省が進める
構造改革案に沿った論点なども、関連する課題として末尾に付記された。

 同省では、中間報告をホームページで公開し、関係団体や一般からの意見を
募集。年内にも検討会議を再開して、教職員の非公務員化の是非や運営組織の
形態など残された論点を詰め、年度内に最終報告をまとめる。


『朝日新聞』2001年9月28日付

 国立大法人化 裁量拡大、経営責任も
 文科省会議中間報告 再編統合が加速か

 国立大学を文部科学省から独立した法人とする制度を検討していた同省の調
査検討会議(主査・長尾真京大学長)は27日、基本的枠組みを示した中間報告を
同省に提出した。予算、組織、人事など文科省の規制を大幅に緩和して国立大
の裁量を拡大、民間的な経営を求めた。ただ、大学外の有識者らが、どの程度
までかかわるのかなどの具体策は先送りされた。

 文科省は、同会議が年度内にまとめる最終報告をもとに、03年度までに法
案を国会に提出、早ければ04年度にも国立大学法人が誕生する。

 ●何が変わる

 中間報告は一般の独立行政法人とは違う制度を示した。

 国立大は予算面で現在、文科省から人件費、旅費など費目を指定されて年度
予算を配分されている。法人化後は、使途を特定しない運営費交付金として一
括支給され、この枠内なら自らの判断で事業に充当することができる。

 組織面では、学長が教育研究と法人経営の両面のトップを兼ねる。1大学1法
人とし、学長を補佐する役員らに学外の有識者を相当数加え、経営に直接参加
させる。

 職員数や配置も大学判断に任せる。組織の改編や、付属学校やビジネススクー
ルなどの独立、特許申請や管理、研究成果の民間利用、収益事業も認める。

 人事面では、実質的な公募制や任期制を拡大し、人材の流動化を促す。兼業
や兼職の規制を緩和し、企業人の教員起用や、教員が民間の研究活動に加わる
ことを容易にする。

 これらにより、大学の自由度が増し、運営や研究、事業に特色が生まれる半
面、経営の責任も負うことになる。

 ●今後の課題

 法人化後も国費運営が基本だが、中間報告は、第三者の評価により交付金の
配分を傾斜させることを盛り込んだ。文科省内に評価機関を置くとしたが、組
織形態や傾斜配分の率などは未定だ。最終報告で、どこまで踏み込むかが、競
争の度合いに影響する。

 意思決定に、どういう形で外部の有識者がかかわるかも最終報告の焦点だ。

 これまで経験のない法人経営で、個々の大学に課せられる負担は大きいが、
職員が少ない小規模な大学には厳しい側面がある。法人化への道筋がついたこ
とで、文科省が並行して進める再編統合を加速させる可能性もある。



 中間報告が示した主な制度変更

                    現在              法人化後
位置づけ       文科省の下部機関      独立した法人
組織改編       法令、予算などで規制  大学判断で学科、事務組織改編も
業務外部委託   基本的に認めない      付属施設の独立や業務委託可能に
学生定員       設置認可、予算で規制  大学が中期計画で規定
中期目標・計画 なし                  大学が原案作成
学外者参加     運営諮問会議に登用    役員など運営に参画
収益事業       認めない              教育研究と関連事業は可能
学長選考       学内の評議会で選考    学外者を選考過程に加える
幹部事務職員   文科省が任命          学長が任命
教職員給与     法律で一律規定        大学で定め、業績給や年俸制も
勤務形態       法律で兼業・兼職規制  兼業・兼職の規制緩和
財務           単年度予算、費目特定  使途特定せず、繰り越しも可
大学の収入     一括して国庫繰り入れ  寄付など自己収入に
学生納付金     全国一律              一定枠内で大学判断

『京都新聞』2001年9月28日付 国立大運営に外部有識者参画を 法人化検討会議 学内人事は能力主義で  国立大の法人化を検討している文部科学省の調査検討会議は二十七日、具体 的な法人の枠組みをまとめた中間報告を同省に提出した。民間の経営手法を導 入して学外有識者を運営に参画させる「学外役員制度」や、教育研究実績を評 価する第三者機関を新設するほか、研究成果の民間利用促進も盛り込んだ。本 年度内に最終報告をまとめ、立法作業に入る。  中間報告は、国立大の法人化を「大学改革の流れを促進し、国際競争力のあ る大学づくりの一環」と位置づけ、「大学の自主性・自律性を尊重し、各大学 の運営上の裁量を拡大していく必要がある」とした。  そのうえで、経営権限と責任の所在を学長ら役員に明確化し、経営プロセス に「学外役員」を導入することにした。産学連携などによって収入の拡大を図っ たり、教育研究にかかわる収益事業も可能になる。  学長の選考方法は、学外有識者の意見も反映した学内の選考機関で選出した 後に、文科相が任命するとしている。学内の人事には「能力主義」を徹底し、 業績に応じた給与システムを導入する。大学の教育研究活動の評価は、文科省 に新設する評価委員会(仮称)が行い、結果は公開することを決めた。  一方で、教職員の身分を公務員と非公務員のどちらにするかとか、意思決定 について教育研究面と経営面を分けるかどうかなどの点については、統一した 結論を示さずに最終報告まで継続協議することにした。
『日本経済新聞』2001年9月28日付  役員に外部識者  国立大法人化で中間報告 文科省検討会議  国立大学を法人化する際の基本制度を審議していた文部科学省の調査検討会 議は二十七日、副学長などに学外の有識者を登用し大学の経営能力を高めるこ となどを柱とした中間報告をまとめ同省に提出した。大学の自主性に配慮し、 他の独立行政法人に比べ学長人事などで国の関与を縮小する半面、業績評価に 応じ国費を配分するなど競争を促しているのが特徴。教職員の身分を公務員、 非公務員のいずれにするかなどについては結論を先送りした。  検討委は今年度内に最終報告をまとめる。同省はこれを受け、二〇〇三年度 の通常国会に「国立大学法人法」(仮称)を提出。二〇〇四年度からの法人化を 目指す。  組織面では、私立大のように責任者を経営(理事長)と教育研究(学長)に分け ず、学長を法人の長とした。学長は学内で選考し、文部科学相が任命する。従 来、教授会など学部ごとの自治にゆだねていた意思決定の権限を学長、副学長 など役員に与え、責任の所在を明確にした。副学長に外部の有識者を加えるな どし、開かれた大学経営を促している。  教員には任期制や公募制を導入し、給与基準は各大学が独自に定めることに した。学科以下の組織は大学の裁量で改廃できるよう規制を緩和する。一方で、 大学の教育・研究成果を外部の第三者評価機関が評価。業績評価の結果を交付 金の算定に反映させるなど競争原理を導入した。中間報告では、(1)株式会社 の統治機構を参考に、学長、副学長などで構成する「役員会」を制度上、明確 にするか(2)教職員の身分を公務員、非公務員のいずれにするか――の結論が 出ず、来春の最終報告に持ち越した。  ◇国立大法人化中間報告の骨子◇ ▽一大学一法人を原則 ▽副学長などの役員に外部の識者を登用 ▽自己収入を各大学に帰属させ経営努力にインセンティブを付与 ▽技術移転機関、付属学校など業務の一部の民営化を可能に ▽給与システムは各大学が決定 ▽兼職、兼業の規制を緩和し研究成果を社会に還元 ▽大学の業績を第三者機関が評価し予算配分に反映
2001年09月29日 毎日新聞 社説

国立大学法人化 ゴールではなく出発点だ

 文部科学省の「国立大学の独立行政法人化に関する調査検討会議」が出した 中間報告は、「国立大学に法人格を与え、自主性・自律性を尊重しつつ、説明 責任と競争原理の視点から教育研究の世界に第三者評価システムを確立、機動 的・戦略的大学運営の実現を図る」というものだ。  独立行政法人とは異質の「国立大学法人」に向け、一歩踏み出したと言って いいだろう。高等教育政策の重要な転換である。しかしいくつかの点でグレー ゾーンを残し、運用によっては右にも左にも行くあいまいさを包含している。 先送りした課題も少なくない。さらなる吟味、検討が必要だ。  検討会議の議論は、初めから困難を抱えていた。新しい国立大学像を目指す にあたり、政府が導入を決めた「独立行政法人」制度を前提とすることを余儀 なくされたからである。独立行政法人は行政改革の一環として持ち出された。 その通則法は、主務大臣による機関の長の任命、中期目標の指示、目標達成度 の評価を通じて、基本的に、独立行政法人が政府の指揮命令下にあることをう たう。  国立大学がそれになじまないことは、明らかだろう。国が大学に直接干渉し て、服従させることも可能な関係にしている先進国は、どこにもない。いかに 国の関与を限定して、自主性・自律性を基本とする大学にふさわしい法人を作 り上げるかが課題となった。  だが、一方で大学の特性にこだわりすぎると、従来の閉鎖的な居眠り大学を 温存することにもつながる。国費を投入する以上、大学側には国民に対する説 明責任があり、いかに効果的に使われたかのチェックも不可欠だ。その点での 新たな制度設計も必要になる。  中間報告は、国との関係では、まず法人の長である学長を、学内の選考機関 の選考を経たあとに文部科学相が任命する手続きを取ることにした。妥当であ る。  中期目標の設定を、通則法での文科相による一方的指示から、各大学の提案 をもとに策定するとしたのも一歩前進だ。が、大学の自主性・自律性を尊重す る観点を貫くならば、大学が作成し、文科相が認可する方式が望ましい。  大学に第三者評価システムを導入した意義は大きい。現実にどれだけ機能す るかは分からないが、通則法によらずとも、これからの時代には専門機関によ る事後チェックが必要だ。時間をかけて、周到に準備を進めてほしい。  大学のマネジメントシステムや、公務員か否かの教職員の身分などは先送り となった。評価結果を国費配分にどう具体的に反映させるかなど関心の高い問 題も不透明で、詰めなければならない。  独立行政法人のもとでの論議にはやはり限界がある。報告は過渡的なもので、 改革のゴールではなく出発点と考えるべきだろう。検討会議とは別に、21世 紀の高等教育(私立も含む)をどうするのかの視点から、グローバルプランを 作り上げるための議論を深めていく必要がある。大学人は今こそ、積極的に声 を上げてほしい。 (毎日新聞 09-28-23:25)
西日本新聞9月30日<直言曲言> 地方国立大学の”志”  国立大法人化のあり方について、文部科学省の調査検討会議による中間報告が まとまった。規制緩和によって大学の活性化を目指すのが骨子だが、その陰で大 学に対する文科省の管理も微妙に強まっている。  例えば、大学ごとの中期目標に基づいて、第三者機関が大学の業績を”査定” し、その結果に沿って文科省が交付金を増減させる。国が財布のひもを絞ったり 緩めたりするのだ。管理とは違うが、企業からの委託研究費など、外部資金の受 け入れも奨励している。  気になるのはこういう”改革”が、大学の本来の役割を果たすのに支障になら ないか、という点だ。地域において国立大が果たすべき役割とは何かを考えると き、九州には誇るべき先例がある。水俣病の病像解明を果たした熊本大医学部で ある。  水俣病の表面化以来、総力を挙げて原因究明に取り組み、紆余(うよ)曲折しな がらも有機水銀説にたどりついた。それは原因企業チッソをかばう当時の通産省 =国にとって、決して面白くない研究だったに違いない。しかし熊本大医学部は 種々の圧力に耐えつつ、有機水銀説の正しさを実証し、胎児性患者の存在をも明 らかにした。  この間、ある東京の有名大学の教授などは、自分からチッソに持ちかけて研究 費をもらい、有機水銀説を否定する研究結果を発表して事態を混乱させた。  原因究明の最大の原動力となったのは、熊本大が地域の人々に対して抱いてい た責任感だろう。また企業に対して距離を置ける国立大の特性が、プラスに働い た面もあったのではないか。  そう考えていくと、国の管理が強まり、企業との距離も縮まる大学改革の方向 性には、不安を感じざるを得ない。高い志を持つ大学人は今もたくさんいる。大 学改革は、その志を邪魔しないものであってほしい。(永)
『読売新聞』社説 2001年9月30日付  [国立大法人化]「緩む規制の対価は改革への重責」  独立法人になったら国立大学はどう変わるのか。文部科学省の調査検討会議 が中間報告をまとめ、ある程度の輪郭が明らかになってきた。  法人化は、元をただせば行政改革の流れから求められたものだった。しかし、 自律的な教育研究を目的とする大学が行財政面からだけ議論されるのは言うま でもなく不適切だ。  中間報告が、法人化を国立大学改革の契機ととらえているのは、その意味で は当然だろう。要は、この機会に国立大学をどう活性化するかに尽きる。  これに対する中間報告の答えは、大きく言えば、経営感覚を生かし、それを 外部から厳しくチェックする仕組みを導入する、ということになる。  経営的には文部科学省による規制が大幅に緩和され、寄付金や研究成果の外 部移転などで自由に独自収入を拡大し、処分することが認められる。給与など 人事制度でも能力主義が柱になる。  個別の大学法人の裁量権は、これまでとは比較にならないほど強くなると言っ ていい。その分、責任は重く、困難さも増すが、これを担う経営主体について は中間報告は結論を先送りした。  いくつかの案が示されているが、少なくとも経営と教学の分離を図るべきだ。 経営には相当数の学外者の参加を求め、処遇もその重責に見合った形にしなけ れば、狙いは達成できないだろう。  外部チェックについては、評価機関を新たに設けるという。国立大学の評価 機関としては既に大学評価・学位授与機構がある。両者がきちんと役割分担で きる仕組みを考えなければならない。  評価結果を、国から支出する運営費交付金額に反映させるのは当然だ。しか し評価基準をどの範囲でどう設定するか、あるいは反映分をどの程度にするか によって、この仕組みの成否が決まる。  努力の足りない大学には奮起を促し、頑張っている大学はさらに世界水準に まで伸ばす。今後の議論で、そんな精度の高いシステムを目指してほしい。  独立行政法人の一般的なあり方を定めた通則法が既に施行されている。ここ では、中期目標の期間が終了した時点で、主務大臣は、その業務を継続させる 必要性なども検討するとしている。  一方で文部科学省は、既に国立大学を大胆に再編・統合する方針を打ち出し ている。法人化がその重大な契機になることも否定できないだろう。  法人化には、そうした厳しい一面があることを、国立大学関係者は思い起こ さなければならない。覚悟と、改革への気構えが求められる。
朝日新聞社説10/1:大学の法人化―これが規制緩和なのか  国立大学を国の行政組織から切り離し、独立の法人にする。新制大学の発足 以来、50余年ぶりの大改革だ。  その制度設計にあたる文部科学省の調査検討会議が、中間報告をまとめた。  規制を緩めるかわりに、民間企業のように目標と計画を立て、成果を評価する。  行政改革から生まれた独立行政法人の制度をそのまま大学にあてはめること はしない。大学の自主性・自律性を尊重し、大学の改革と新生を目指すという。  その言葉通りなら賛成だ。学科の新設さえ文科省の許しが必要な現状を変え、 人事や予算、組織などの面で大学の裁量を広げる。それは今度の改革の大前提 である。  しかし、自主性・自律性は十分に尊重されているだろうか。報告を読むと首 をかしげたくなる。まず、大学を社会に開くための学外者の参画制度である。  閉鎖的な大学に外の意見を反映させることは必要だ。しかし、役員会や評議 会などの運営組織に入れる学外者を「相当程度」とするか「若干名」とするか、 といったことまで文科省があらかじめ決めようとするのはおかしい。各大学に 任せるべきだ。  大切なのは人選だ。学外者といっても、他大学の関係者、自治体の首長、企 業経営者、卒業生などさまざまである。その具体像について報告は書いていな い。「国民や社会の意見の反映」を目指すというなら、その検討こそ先ではな いか。  法人化により大学は、中期目標とその達成に向けた中期計画を立てることに なる。  ところが報告によると、目標は、大学が提案するものの、文科相が策定する。 計画を認可するのも文科相だ。これでは独立行政法人の枠組みを、なお超えて いない。政府と一線を画して真理を探究する大学にはふさわしくない。再考を 求めたい。  中期目標・計画の達成度を総合的に評価するのは、有識者からなる国立大学 評価委員会だ。委員会は大きな権限を持つ。評価は予算の配分に反映されるし、 委員会は実際の配分についても意見を述べられる。  委員会は文科省に置かれる。委員を選ぶのも文科省だという。しかも、どん な手続きで選ぶのか、委員会の評価をもとに配分する資金はどのくらいかも明 らかでない。  運営組織の型を決め、目標と予算配分を文科省が押さえる。運用次第では規 制緩和どころか規制強化になりかねない。  国立大学制度をどう考えるかは、専門的で難しい。大学の中でさえ関心を持 たない人が多いときく。研究室にこもり、社会の中の大学の役割を考えずにい ることが、現在の沈滞を生んだのではないか。  法人化は大学の体質を変える転機だ。それは好機にもなれば危機にもなる。  文科省は国立大の再編・統合を大胆に進める「遠山プラン」を掲げている。 大学の存在意義を訴えようとするなら、まず学内での検討と活発な議論が必要 だ。 [2001-10-01-00:25]
社説2 「国立大学法人」への視点 日本経済新聞社説 10月3日  国立大学の法人化へ向けて人事や機構、経営など基本制度を検討してきた文 部科学 省の調査検討会議がその具体像として「国立大学法人」の姿を描いた 中間報告をまと めた。  副学長など役員に外部の人材を登用し、大学の意思決定の権限を教授会など から学 長ら役員に集中するほか、予算は各大学の教育研究を第三者評価にゆ だねて配分し、 各大学の独自の裁量が生かせるよう弾力化するなど、国の一 元的な基準で運用されて いた国立大学を競争原理と国民へのアカウンタビリ ティー(説明責任)のもとで自主 性と自律性に基づいて再構築するよう求め ている。  当初、行政改革の一環として「独立行政法人」化の検討を迫られてきたのに 対し、 国立大学側は大学を一般行政機関と同じ定型的業務とみなした法人化 に強く反対し、 学長などの人事や中長期目標の策定などを大学の裁量に任せ るなど、大学の自律性を 重視した独自の法人モデルを求めていた。「国立大 学法人」はそうした意向を受けて まとめた国立大学の新しい枠組みといえる。  国費による運営という国立大学の基本形態は維持されているが、終身雇用で 流動性 の乏しい現状に代えて教員に任期制や公募制を導入することや、大学 の判断による学 科や組織の改変、教職員給与や学生納付金の設定などを大幅 に各大学の裁量に任せる など、大学運営を国の規制から大幅に自由化する一 方、その経営責任をそれぞれの大 学に求めているのが特色といえる。国立と いう形態の下で経営体として大学の自助努 力が問われるわけで、これが大学 の再編統合を進めることは疑えない。  ただ、中間答申では肝心の部分が両論併記などで留保されていて国立大学改 革の将 来像を見えにくくしている。教職員の身分を公務員型にするか、非公 務員型にする か、交付金の傾斜配分のもとになる第三者評価機関の性格や運 用などである。  さきに文部科学省は国公私立大学を対象にした第三者評価による「トップ30」 の育 成などを打ち出した。国公私立という設置形態による日本の大学の競争 条件の落差を どのように改めるのか。国立大学改革はその枠組みを超えた大 学全体の競争基盤の整 備を前提とする必要がある。
『東京新聞』社説2001年10月3日付 独立法人化 自主・自律の国立大に  地球化時代に適応する国立大学の在り方について、大学独特の独立法人とす る案が示された。研究や教育の水準を一層向上させるため、自主・自律を進め る方向で内容を練ってほしい。  世界的に高く評価される学問上の業績をあげる一方、優れた人材を育てる高 等教育機関の存在は、わが国が二十一世紀に発展を持続できるかどうかと深く かかわっている。  政府は関係機関の独立行政法人化を進めているが、文部科学省の「国立大学 等の独立行政法人化に関する調査検討会議」がまとめた中間報告は、独立行政 法人通則法そのままでなく、大学独自の法制度にするよう求めている。  中間報告は、新しい「国立大学法人」について、学外者の運営参加をはじめ、 評価システムの導入、教職員任用制度の弾力化などで、各大学の特性を生かす という。  国大の法人化が、文部科学省による規制から大学を解放し、人事や予算の自 主的な運用を可能にすることで大学それぞれの個性の発揮につながるなら、好 ましい話だ。  これまで国大に乏しかった「経営」という観点が導入されれば、各大学が新 たな収入の道を工夫する余地も生まれるだろう。大学が営利事業に携わったり、 知的所有権の管理会社を持つのも自由になる。  第三者による客観的な評価が導入されれば、授業や研究が活性化することも 期待できる。  中間報告は、文部科学省の「国立大学評価委員会(仮称)」が総合評価すると 想定しているが、予算配分を行う官庁が、評価に直接関与するのは好ましくな い。評価の客観性を確保するためには、複数の第三者機関で行うべきだろう。  中間報告は結論を出していないが、教員を国家公務員から外して兼業をでき るようにするとか、業績や評価と直結する契約制、年俸制の採用、学長を含む 役員に外国人の任用を可能にすることも検討したい。  国大の法人化は、大学改革全体からすれば、ごく一部にすぎない。  入試の改革、全国に九十九ある国大の統合・合併、東京大学、京都大学など の大学院大学化と基礎研究機能の充実は、以前からの懸案だ。  大学院大学のような"全国区"の高等研究・教育組織とは別に、それぞれの地 域に産業や文化創造の核になる大学があるかどうかは、わが国全体の均衡ある 発展に影響する。  そうした地域の「知」の核を、自治体や地元企業、住民ぐるみで育てるきっ かけになるような国立大学法人であることが望まれよう。
北海道新聞社説 10月05日「国立大法人化*地方切り捨ての不安」 国立大の法人化に向けて、組織や人事制度などを検討している文 部科学省の調査検討会議が、中間報告をまとめた。 大学の裁量を拡大する半面、評価などを通じて、逆に文部科学省 の管理が強まる余地を残している。 競争原理の導入で、地方の大学が不利になりそうな面も心配だ。 中間報告は、新しい「国立大学法人」像のポイントとして、▽民 間的発想の経営手法▽学外有識者の役員登用▽教員らの能力主義人 事▽第三者評価−などを挙げている。 大学がそれぞれ特色ある理念と目標を掲げ、国の規制に縛られず に、自主的な運営、研究、教育活動が確保できるとすれば、望まし いことだ。 例えば、単年度で費目も指定されている予算は、使途を特定せず に年度間の繰り越しを可能にする。 特許の取得・管理や研究成果の民間移転事業などを認め、外部資 金や寄付も受け入れやすくなる。 教員の公募制や年俸制が導入されれば、人材の交流から研究の活 性化につながる期待もある。 こうした規制緩和の一方で、気になるのは評価の仕組みだ。 各大学は、原則六年間の中期目標と中期計画を作成し、その達成 度が予算の配分に反映される。達成度を評価する役割は、文部科学 省の「国立大学評価委員会」が担うという。 予算配分の権限を持つ官庁が関与するのでは、客観的で公正な評 価が保障されるとは言い難い。 また、短期間で成果が上がりそうな応用研究が優遇され、基礎科 学や文化・芸術といった分野の研究がおろそかになる恐れも指摘さ れる。 中間報告で貫かれる狙いは、大学経営への競争原理の導入といえ る。そこには、地方の大学や小規模な大学への配慮が感じられない。 地方は、都市部に比べ人的資源に乏しく、産業基盤も弱い状況に 置かれている。企業や自治体の資金を得たり、収益事業を起こすの は困難だろう。 まして、地方の大学にはこれまでも、教育や研究環境の整備に十 分な投資が行われてこなかった。 文部科学省は先に、「大学の構造改革の方針」を唐突に公表し、 国立大の再編・統合や「トップ30」大学の育成を打ち出して地方の 大学や単科大にショックを与えた。 国が、高等教育の将来像を示さないまま、競争や効率化の視点の みで「改革」を図るのは容認できない。 人材育成や、地域の文化、産業活動の拠点として、地方の大学が 果たしてきた役割は小さくない。 大学側も、法人化による功罪を検証して中間報告についての意見 を述べるとともに、地元に対し自らの使命をアピールするときでは ないか。
『山陰中央新報』社説 2001年10月5日付   国立大法人化/中途半端な自主性の確保  文部科学省が検討していた国立大学法人化の中間報告が公表された。予算や 組織などに関する国の規制を大幅に緩和、大学の裁量を大幅に広げる一方、評 価に基づく資源配分を徹底するなど経営責任を明確化する−という骨格だ。  行政機関の一部として、カネや人、教育研究組織などさまざまな面で、国が 大学をがちがちに縛りつけていた事前規制を緩め、日常の運営は大学に任せよ うというものだ。大学の自主性、自律性が広がるなら、歓迎したい。  だが報告では、評価結果をどう資源配分につなげるかなど肝心の点が不明確 だ。各大学の中期計画を文部科学相が認可するとしている点なども含め、運用 次第では逆に国のコントロールが強まりかねないところもある。目指すべきは 「大学の自主性・自律性拡大」で、これをどう具体的に担保するか。最終報告 までに制度運用の中身まで踏み込んだ提示を求めたい。  国立大学は、国による「統制」と、その裏返しの「庇護(ひご)」の中でずっ とぬるま湯につかり、自己変革のエネルギーと社会に対する緊張感を失ってき た。改革は、徹底して大学に任せ、大学が責任を取る仕組みをつくることから 始めなければならない。  今回の論議は、行革論議で浮上した「独立行政法人」に国立大学をはめ込も うとしたところから始まった。独法化すれば、定員法の枠から外れることから、 公務員定数削減の数合わせに大学を使おうというものであった。  だが、行政の企画立案機能と実施機能を分離、企画立案を本省が、独立行政 法人が実施を担当し効率化を図るという枠組みは、自ら企画立案する大学にな じまない。  報告が「行革の視点を超えて検討」し、修正を加えたのは一定の前進だが、 まだまだ部分的で、中途半端だ。大臣が各大学の中期目標を策定するとしたり、 中期計画を認可するとするなど、依然、独立行政法人の大枠がはまっているこ とに変わりはない。  国立大学を政府の下請けにしてはならない。枠組みそのものの組み替えを求 めたい。  評価結果の資源配分への反映も気になる点だ。教育研究については、第三者 機関の大学評価・学位授与機構の評価を尊重するとしているが、それを各大学 の交付金にどう反映するかは、文科相が任命した委員で構成される国立大評価 委員会の判断だ。  資源配分と評価のリンクは、一歩間違うと、国によるコントロールに直結す る。国の統制から自由でなければ、独創的研究は育たない。国の関与について の歯止めを、目に見える形で示す必要がある。  大学への学外者の参加も今回の目玉のひとつだ。報告は、学外者の参加方法 についてもいくつかの案を示している。  閉ざされた大学を開くのは結構だが、国が開き方まで決めるようなやり方は 疑問だ。学外者を、どういう立場でどれくらい参加させるかは、大学自身の主 体性に任せるべきだ。  ともあれ、大学の裁量は大幅に広がり、大学の自己責任が厳しく問われるこ とになる。管理も経営も、大学が主役になる。既得権を守るだけの自治ではも う済まない。  学内のあつれきを調整できる「大学自治」を確立しなければ大学に未来はな い。与えられた自治でなく、自分たちでつくり上げる自治を目指さなければな らない。
『南日本新聞』社説 2001年10月6日付 【国立大法人化】国の関与が見え隠れ  国立大学を法人化した場合の機構・運営の骨格を検討していた文部科学省の 調査検討会議が中間報告をまとめた。遠山敦子文科相の「構造改革の方針」 (遠山プラン)と合わせ、これで大学改革に関する国の基本的な枠組みが固まっ た。  予算や組織などに関する国の規制を緩め、大学の裁量を大幅に拡大する。一 方で各大学に対する第三者機関の評価によって運営交付金など国からの資源配 分を増減し、大学間の競争を促す。このふたつを柱にしている。  国が大学をあらゆる面で縛り付けていた規制を緩和し、日常の運営は大学に 任せようという大学の自主性、自律性を広げるものなら歓迎したい。しかし、 中間報告では自主性、自律性を具体的に保証するかは、いまひとつ明確でない。  今回の改革論議は、行革論議で浮上した「独立行政法人」に大学もはめ込も うとしたところから始まった。独法化を、公務員定数削減の数あわせに使おう という考えが根底にあった。  だが、行政の企画立案機能と実施機能を分離し、企画立案を文科省が、実施 を独立行政法人が担当して効率化を図るという枠組みは、自ら企画立案する大 学になじむはずがない。  中間報告は「基本的考え」のなかで「行革の視点を超えて検討した」と言っ ている。修正を加えて一定の前進も見せている。しかし、部分的、中途半端の 印象はぬぐえない。  例えば、大臣が各大学の中期目標を策定するとしたり、中期計画を認可する など、独立行政法人の大枠がはまっていることに変わりはなかろう。  評価結果の資源配分への反映も気になる。大学の中期目標・計画の目標達成 度で国が予算を配分する方式だが、各大学の運営交付金に評価結果をどう反映 するかは、文科相が任命する委員で構成する国立大学評価委員会の判断による。  文科相による中期計画の承認制にせよ資源配分と評価制度のリンクにせよ、 運用しだいでは逆に文科省(国)の管理を強めることになりかねない。  中間報告はあらゆる分野で、競争原理を導入することが柱となっており、教 育研究環境が十分でない地方の大学や小規模な大学の関係者を中心に、なお強 い反発が残っている。  検討会議は来春に最終報告をまとめるが、制度運用の中身にまで踏み込んだ 結論を求めたい。