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Date: Sat, 10 Feb 2001 10:54:51 +0900
To: Yutaka Saito,Teruo Watanabe
From: Toru Tsujishita
Subject: ポプラ伐採問題の解決の仕方について
Cc: hu-members

齋藤 裕 様
渡辺暉夫 様

理学研究科の辻下です。

これまでに頂いた、ポプラ伐採問題の検討過程の説明には納得のいかない点がありま 
す。最初に背景認識に関連することを箇条書きで述べた後で質問をし意見を述べたい
と思います。

■背景認識等

(1)倒木時人身事故の責任は、北大施設を管理する文部科学省にある。単純明快な解 
決法として、ポプラ伐採は同省の指揮下にある北大施設部の強い意思と推察される。

(2)北大構成員の意見を代表する評議会の下にある検討委員会の使命は、北大にとっ 
てのポプラの意義を考慮し、伐採案に代る危険防止案を検討し、伐採を思いとどまる 
ように、施設部(すなわち文部科学省)を説得するところにあると思われる。

(3)診断を担当した樹木医の一人に直接問い合わせたところ以下の趣旨の説明があった。

(3-a)診断書は、街路樹の場合の基準を適用した。街路樹の場合は、樹齢20〜30 
年程度が主であるため、伐採・植樹が当然の解決法である。しかし、北大構内のポプ
ラ古木のように特別の意味がある場合には、別の解決のために皆で色々考えるのは当
然であろう。(今回は、診断だけ求められ、治療法の検討は頼まれなかった。)

(3-b)何もしない場合には倒木の可能性は高いが、定期的に手入れする場合は倒木の 
危険性は小さくできる。たとえば、外見は悪くなるが適切な剪定・断幹等を行えば風 
圧による倒木の危険性を減らすことはできる。

(3-c)伐採する場合は、一度に行わず様子をみながら少しずつ行うべきと思う。

(3-d)ポプラ保存のためにH綱を打ち込むのは、当該ポプラの大きさでは木を傷める 
だけで有害無益と思う。

(4)札幌で最初に樹木医になったという美唄市在住の樹木医中内氏にも問い合わせた 
ところ色々説明があった。かいつまんで紹介すると、「樹の生理は不思議なものだ、 
中が空洞になったからと言って伐採するのはどうか、手入れすれば数十年でももつ。 
枯れ枝を剪定すれば危険は減らせる。はっぱ40枚で人間一人分の酸素を産み出して 
いることを知っているか。1分でも良いから息を留めてみてほしい。木は基本的には 
切らない方がよい。」

■質問

(Q1)委員会は、診断書についての説明を樹木医から直接聞いたのか。

(Q2)樹木医に保存方法の検討を依頼したのか。

(Q3)対案として検討したH綱保存法の見積もり業者はどこか。

■補足意見

ポプラ伐採問題の経緯には、今後改善すべき、大学運営の欠点が象徴的に出ているよ 
うに感じます。

管理者側の論理「〜が起きたとき、責任がとれるのか?だから〜しなければならな 
い。」は説得力があります。倒木による人身事故が起きれば、単に法的な責任だけで 
なく道義的責任もありますから、検討委員会で管理責任の論点が議論の中心となるこ 
とは自然です。しかし、それだけなら施設部だけで議論すれば済むことです。重要な 
ことは、管理者の論理を、対象物の意義(今の問題ではポプラの北大にとっての意 
義)の視点に立って検討することではないかと思います。

管理者の論理では、危険を完全消滅させる伐採が最良の解決法です。(歴史上、当該 
論理で行われたおぞましいことには枚挙に暇はないはずです。)しかし私たち大学に 
棲む者にとっての視点からすれば、ポプラを伐採しないことは大前提として、危険を 
いかに減らすか、ということに知恵を絞るべきです。その視点からすると樹木医に保 
存方法の検討を正式に依頼しなかった検討委員会の姿勢は、最初に結論ありきと批判 
されても仕方がないのではないでしょうか。

なお、蛇足になりますが、老ポプラの運命は国立大学の運命と重なる所があります。 
共に「管理者の責任」という論理で、それぞれの生理を無視した一方的な処置を受け 
ようとしています。これを看過することは管理者の論理が唯一の論理となる傾向が、 
北大という自由の希望が残る場で、新たに地歩を固めることを意味します。

昨年10月の「平成ポプラ並木」の記念植樹で丹保総長は「北大が二十一世紀に伸び 
ていく展開の第一ステップにしたい。同時に、クラークやポプラばかり有名になるの 
ではなく、学問の上で世界のリーダーたる存在になるため、しっかりとしたキャンパ 
スを作りたい」と言われましたが、北大の象徴とされる天に聳える老ポプラ達を治療 
もせず容赦なく一挙に伐採してしまうような解決しかできない大学の未来に不安を感
じる人も多いのではないでしょうか。


辻下 徹
理学研究科数学専攻
理学部4号館403号室
011-706-3823(office)
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh
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Date: Tue, 13 Feb 2001 12:16:20 +0900
To: hu-members
From: 齋藤裕
Subject: 樹木伐採最新のご意見について

Sat, 10 Feb 2001 16:02:26 +0900
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辻下さま
 少し議論がエスカレ−トしてきているような気がします。たしかに、現在の国立大
学をめぐる諸問題、さらに政府、文部科学省の誤った学問に対する姿勢、そういった
ものについて、先生の流して下さる週報は、私たちに大学とは何かを常に考えさせて
くれています。なかなか大きな声として集約できないこと、それが先生の、私を含め
た多くの北大人に対するいらだちになっているのかもしれないと思っています。しか
し、今回の問題にそれをリンクするのは少し無理があるのではないでしょうか。構内
の老齢木を安全のために伐るか、保存するか、保存できるなら、それはどんな方法が
あるのか、そのために学内のコンセンサスはどうやってとるべきか、今回の問題は、
その「部分」に限定して、「大学内コンセンサスの形成方法」を論じる場とした方が
、実りがあるのではないでしょうか。今回のことは、文部科学省からの通達等によっ
て起こされた問題ではないのですから。
 ところで、辻下さんの方で直接お調べいただいた樹木医の意見について、それをも
とに、われわれがWGが樹木医の診断を鵜呑みにして、と書かれていますが、少なく
とも私は否定いたしません。その分野の専門の方(なぜかご発言いただけないのが残
念ですが)もたくさん委員になっておりますので、私のような動物の専門家には、少
なくとも配布された資料の範囲で、それをチェックすることしかできません。こと、
安全に関わることですから、こちらによほどの対案や、専門知識の裏付けなしに、「
いや伐るべきではない」という意見は言えないという点、ご理解いただけると思いま
す。ただ、樹木医さんのいう、保存のために云々については、委員会で保存には枝打
や、保存処理に膨大な予算が、毎年必要であるという事務方からの説明を受けたと記
憶しています。例えば今後10年保たせるために、それだけの費用をかけるべきか、ち
ょうど学内予算配分問題も大きな問題になっていました折りですので、私は長期的に
学内環境を良好に維持するためにはむしろ伐採やむなしと判断いたしました。
 小野さんはじめ様々なご意見をいただき、また論議をした結果、結局は「危険性」
をどう見積もるのか、という点での見解の相違である、というところに落ち着きまし
た。それなら、私個人(WGの委員としてではなく)的には、伐るべきか、残すべき
か、その経費や倒壊危険率を提示して北大全体(この場合、ノスタルジ−で保存を訴
える方よりも、その下を毎日のように通学のために往来する学生・院生の意見がもっ
とも大事だと考えます)あるいは周辺の市民代表も加えて、賛否を問うといった方法
もあるのではないかと思っています。なお、繰り返しになりますが、WGにおいて、
私は今回のような反対意見の高揚は十分予測しておりました。それで、委員会で、と
にかく学内にHomePage等を使って、このことを周知していただき、くれぐれも学内コ
ンセンサスを得る努力を事務方にお願いしました。それがやや不十分であったことが
事態を混乱させていることは残念に思っております。しかし、この混乱がまた、今後
の学内での論議や合意形成の「方法」の必要性を痛感させたという点で、良かったの
かもしれないとも思っています。
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齋藤裕
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Date: Tue, 13 Feb 2001 12:17:57 +0900
To: hu-members
From: "Watanabe Teruo"
Subject: Re:討論打ち切ります・ ポプラ伐採問題

Sun, 11 Feb 2001 12:14:04 +0900
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辻下先生  Cc hu-members

発信:渡辺暉夫
 これ以上のe-mail交換で前向きな結論に達するとは思いません。指名で質問があり
ましたので、回答しますが、これを最後とさせてください。この回答は先生の個別質
問には答えておりません。先生の設定された背景認識などの枠内での質問への回答は
できません。
 
 専門委員会で十分時間をかけて出された伐採案です。特別な問題がなければ、手順
を踏んで結論を出すのが大学運営のルール。施設部だけが事故に責任を負うべきでは
ないはずですよね。

中央道路のポプラ並木はきわめてかぎらた空間に押し込められています。そこでの保
存策を樹木の保存策一般論(先生の引用された樹木医の意見はそうですが)で議論し
ても無理。
伐採すると殺風景になり残念ですが、ポプラ並木はもっと良い条件(根元が踏みつけ
られない十分なスペースがあることなど)のところで残すべきなのだと思います。

万一、事故がおきれば責任は総長ないし評議会にあるものと思います。

キャンパスの環境保全・構内の交通安全などの話題はかなり以前から話題になってお
り、委員会が審議を重ねてきているところです。
先生の熱意をキャンパス・マスター・プランの実現や改善の方向に向けていただけれ
ばありがたいと思います。
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Date: Tue, 13 Feb 2001 15:47:46 +0900
To: hu-members
From: Toru Tsujishita
Subject: 大学・市民連携醸成のきっかけに/学内施設老朽化問題

発信者:辻下 徹

斉藤氏の御指摘は適切なものと思います。関係された方を批判する論調になったこと 
をおわびしたいと思います。時期的に差し迫っていますが、できれば全伐採はさけ 
て、それと同程度の費用でできる危険圧縮手段を急いで検討していただければ、と思 
います。

以下は、ポプラ伐採の議論に関連するコメントです。

1.大学の財政窮状を市民に訴える機会にならないか(辻下)
  1a 戦後の国立大学財政のサーベイの紹介

2.学内施設老朽化とエコキャンパス(藤田博美氏)


■1.大学の財政窮状を市民に訴える機会にならないか

10日の意見交換会に出席して、ポプラ伐採問題は一般市民に大学の財政的窮状を訴 
える好機ではないかと思いました。大学外の方は国立大学の財政的窮状についてはほ 
とんど知らないらしく、樹木整備は教育研究費を削って行わなければならないと、あ 
る教官が指摘したところ、意外なようでした。

しかし、実際に理解してもらうべきことは、それに留まらないと思います。

ある大学がキャンパス整備のために多額の予算を新たに獲得すれば他の大学で研究教 
育費が削られる、といったゼロサムゲームに国立大学全体が置かれていることも説明 
すべきであるように思います。それが市民の常識となっていくことにより、不合理な
財政構造の真の改革への流れが次第に勢いを増し、大学同志が競争するような不本意
な方向に突進させられている状況が根本から変化していくこともあり得ないわけでは
ないでしょう。

これは大学当局へのお願いなのですが、これを契機に大学財政の全体を市民に公開し 
てはどうでしょうか。1980年代から国立大学全体の予算が据え置かれ実質的に年 
々減少し、樹木養生の財政的余裕はなかったことを具体的額で提示し、今後も、市民
の支援がない現状ではさらに厳しくなることを説明し、大学キャンパスを一般市民と
共に大事にすることを提案することは、市民から大学への直接的財政支援の社会慣習
醸成の契機の一つとなるのではないでしょうか。

このような努力は、北大主催学術講演会(2月9日)での白川博士のメッセージ「大
学は<象牙の塔>でいいが、社会に開かれていなければいけない。社会とのつながり
は、大学−学会−マスコミ−市民のような迂回路を経るのではなく直接的でなければ
ならない」に答える小さな一歩となるのではないでしょうか。

■1a 戦後の国立大学財政の詳細をまとめた皆村氏の論説が以下にあります:
http://www.ac-net.org/doc/01/127-minamura.html
mirror:
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/ac-net/doc/01127-minamura.html


■2.学内施設老朽化とエコキャンパス(藤田博美氏)

医学研究科の藤田博美氏から頂いたコメントです。ご了承を得て転送します。

                     ----------引用始-------------

エコキャンパスもよろしいですが、医学部のように老朽化した校舎で(1960年代の校
舎はみなコールドジョイント問題を抱えています)、何時外壁のコンクリートが落ち
てくるか判らない、何時コンクリート製の階段が落下するか判らない、何時電気室の
天井裏の配水管が破れるか判らない・・・・でも、何度要求しても改装費用が下りて
こないなんて建物で暮らしている(つまり学生さんの安全の確保すらおぼつかない)
我々としては、正直なところ別世界ですね。

どう云う問題が一番緊急なのか、学部外からの利用も多い医学部図書館の外壁の改装
すら出来ない(先日、ようやく「頭上注意」のステッカーを貼って貰えました)方が
よっぽど問題ではないかと考えたりいたします。エコキャンパスを快適な環境と捉え
ますと、それ以前に最低限、安全性が確保されたキャンパスの実現を望みたい、資金
があるなら「快適」よりも「最低線の安全」にまず使っていただきたい、と考えるの
はおかしいのでしょうか?

Hiroyoshi Fujita
Laboratory of Environmental Biology,
Department of Preventive Medicine,
Hokkaido University School of Medicine
Home page: http://www.med.hokudai.ac.jp/~hyg-w/
Phone;+81-11-706-5066
Fax;+81-11-706-7819

                     ----------引用終-------------

辻下 徹
Tel&Fax:3823
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst