==> 北大関係文書目次
小野有五2/5|渡辺暉夫2/5| 高橋英樹2/6|齋藤 裕2/6| 辻下 徹 2/8|齋藤 裕2/9| 小野有五2/9|渡辺暉夫2/9|辻下 徹 2/10|斎藤 裕 2/11|渡辺暉夫 2/12|辻下 徹 2/13|藤田博美小野有五2/15
受取日時:Mon, 05 Feb 2001 13:07:21 +0900
発信者:小野 有五
電子住所:yugo@ees.hokudai.ac.jp
電話番号:
保存場所:http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/010205-ono.html
Subject: ポプラ並木を含む学内の大樹伐採への反対のお願い

北大教官各位

「北大時報」1月号にのりました中央食堂前のポプラ並木を含むキャンパス内 の大樹の伐採が、一方的に始められてしまっています。この件に関しては、以 下のような多くの疑問点があり、要望書を提出しようとしていた矢先のことで した。一刻をあらそうことですので、要望書に賛同いただける方は私あてに賛 同のメールをお送り下さい。すでに学内の研究者、名誉教授、札幌市民など8 0名を越える署名が集まっています。ポプラ並木や大樹を救うために、ぜひと もよろしくお願いいたします。


北大キャンパスの大樹の保全を求める要望書

北大当局は、2001年1月発行の「北大時報」において、キャンパス内の大樹16本が樹木医によって 危険木と認定されたため、これを2月中にも伐採すると公表しました。大学当局も伐採を積極的に認めた わけではなく、「断腸の思いで」この決定を下したと言われておりますが、それでもなお、伐採という手 段を現時点でとるべきかどうかについては大きな問題があると存じます。このことが公表されてまだ数日 しかたっておりませんが、伐採をやめてほしいという市民からの署名がすでに多く寄せられております。 このことは、北大キャンパスの森がすでに北大だけのものではなく、札幌市民全体にとって、またここを 訪れる全国の人々にとって重要なものとなっていることを示しております。私たちは北大に関わる者とし て、また北大キャンパスの森を札幌市の重要な自然環境と考える市民として、この決定には以下のような 疑問をもちます。私たち市民は、今後の北大キャンパスの将来に重大な影響を与える伐採計画を、大学当 局がこのような疑問を残したまま強行されることには反対いたします。大学当局におかれましては、北大 キャンパスの樹木にたいする市民このような熱い想いを尊重され、伐採について再考されるとともに、大 学キャンパスにおける自然との共存について研究者や学生、市民を交えた論議を尽くして下さるようお願 いいたします。

今回の伐採決定に関する疑問点

1:まず、「北大時報」1月号にのった記事のタイトルが「構内の樹木対策について」となっています が、「年老いてきた大樹を守るための対策」が少しも検討されず、「危険になってきたから伐採する」と いうだけの検討案になっていることに大きな疑問を感じます。
老齢化していくことが明らかな大樹を、大学当局は今後どのように保全しようとしているのか、その姿勢 や手段の提示なしに、一方的に樹木のみを悪者にして伐採してしまおうという大学当局の態度は、「21 世紀のエコキャンパスを目指す」としてきた北大当局の姿勢ともまったく相容れないものです。

2:「北大時報」では、危険木を「枯損木、回復困難な腐朽進行木、樹勢の衰退が著しい樹木」と定義し ていますが、北大当局もお認めになっているように、中央食堂前のポプラ並木の「枝張りがよく、全身に 葉をいっぱいまとって空に向かってまっすぐにのびている姿」は「樹勢の衰退が著しい樹木」とはとても 考えられません。「今回の調査で、樹幹内部が空洞化していることがわかったので、危険性を実感し、伐 採せざるを得ないという結論に至った」とありますが、ここにはいくつもの論理的な飛躍があると考えま す。
たとえば、空洞化すればすぐにも倒れる危険性があると結論されていますが、同じ「時報」に示されてい るように、構内でここ数年、多くの倒木があったにもかかわらず、それらの木々は倒れなかったわけで、 他の木が倒れたからこの木も倒れる、と結論するのは早急でしょう。もちろん木である以上、倒れる危険 は常にあるわけですが、その前に、講じうる保全策もあるはずです。

3:「エコキャンパス」とは、たんに木だけではなく、北大キャンパスに生きるすべての生きものが、生 き続けられるキャンパスということでなくてはなりません。すでにこれまで、北大の研究者自身による生 態学的研究が明らかにしたように、アカゲラのようなキツツキは、枯損木を重要なハビタット(すみか) としており、キャンパスから枯損木がなくなれば、アカゲラや、またそれがあけた穴に依存するその他の 野鳥もキャンパスからは姿を消すことは明らかです。これまでの研究によって、北大キャンパスが札幌市 内におけるアカゲラの数少ない重要な生息地であることがわかっており、ここが失われることは、札幌市 全体からみても大きな損失となります。キャンパス内の大樹、枯損木の保全が重要な理由はそこにもあり ます。「エコキャンパス」を目指すならば、そのような視点にたって、倒れる危険のある老木・大樹をど う保全していくかを検討しなければならないはずです。このたびの大学当局の決定にいたる過程で、どの ような検討がなされたのか、具体的にお示しいただきたいと存じます。

4:このたびの伐採計画の対象となっている中央食堂前のポプラ並木や理学部、古川講堂周辺のハルニレ などの大木を弱らせてきた要因の一つは、人間による踏みつけだけでなく、頻繁な車の通行、根元までし きつめられた敷石・アスファルトにあると考えます。それらのインパクトを軽減する対策なしに、「弱っ てきたものは危険だからすべて伐る」とするこのたびの決定は、人間の都合だけで環境にはなにをしても よいとする、まさに21世紀の大学が否定しなければならない考えをそのままに合法化しようとするもの ではないでしょうか。北大当局が今このようなことを押し通せば、21世紀に目指すべき北大の使命は無 に帰してしまいます。まず、大学当局が、この困難な課題を解決していく努力を最大限に示すべきではな いでしょうか。

このたびの伐採計画の決定に以上のような疑問をもつ私たちは、北大当局にたいし、以下のように要望い たします。

1:大学当局は2月中旬からすぐにでも伐採を始めると「北大時報」で通告されておられますが、伐採計 画を知った多くの北大関係者や札幌市民から、直ちに反対の声が上がっていることを重視され、反対者を まじえた十分な論議をつくすまで、伐採を延期していただきたい。

2:この伐採計画に反対する研究者や市民を交えた公開の検討委員会を設置し、札幌市内における貴重な 「森林パッチ」となっている北大キャンパスの長期的な保全策および老樹・大樹の保全策について十分な 論議をしていただきたい。

2001年2月5日
北大キャンパスの樹林を考える市民の会
代表 小野有五
賛同者:学内・学外(北大名誉教授を含む)多数の市民
2月3日に公表:2月5日現在83名。現在、署名活動中
連絡先:自然ウオチングセンター:TEL/FAX011−736−3165
北大地球環境研地球生態学講座:小野有五FAX:011-706-4866


署名

上記の意見書に賛同し、北大当局が強行しようとしているキャンパス内の大木の伐採中止を求めます。

小野有五2/5|渡辺暉夫2/5| 高橋英樹2/6|齋藤 裕2/6| 辻下 徹 2/8|齋藤 裕2/9| 小野有五2/9|渡辺暉夫2/9|辻下 徹 2/10|斎藤 裕 2/11|渡辺暉夫 2/12|辻下 徹 2/13|藤田博美小野有五2/15
受取日時:Mon, 5 Feb 2001 20:22:20 +0900
発信者:渡辺暉夫
電子住所:teruwata@ep.sci.hokudai.ac.jp
電話番号:
保存場所:http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/010205-watanabe.html
Subject: Re: ポプラ並木を含む学内の大樹伐採への反対のお願い

小野先生
発信:渡辺暉夫

反対のご意見伺いました.
問題は,倒木による事故があったらどうなるのでしょうか,ということだと思います.
何年か前に理学部の南側ローンの古木が半分に折れました.幸い被災者はなかった.
これは偶然です.

事故は危険性がある以上未然に防がねばなりません.

>たとえば、空洞化すればすぐにも倒れる危険性があると結論されていますが、同じ 「時報」に示されてい
>るように、構内でここ数年、多くの倒木があったにもかかわらず、それらの木々は 倒れなかったわけで、
>他の木が倒れたからこの木も倒れる、と結論するのは早急でしょう。

ーーこう結論される以前に「危険木との判断基準を明確にせよ」という要求が
良いの ではないでしょうか?

>3:「エコキャンパス」とは、たんに木だけではなく、北大キャンパスに生きるすべての生きものが、生
>き続けられるキャンパスということでなくてはなりません。すでにこれまで、北大の研究者自身による生
>態学的研究が明らかにしたように、アカゲラのようなキツツキは、枯損木を重要なハビタット(すみか)
>としており、キャンパスから枯損木がなくなれば、アカゲラや、またそれがあけた穴に依存するその他の
>野鳥もキャンパスからは姿を消すことは明らかです。これまでの研究によって、北大キャンパスが札幌市
>内におけるアカゲラの数少ない重要な生息地であることがわかっており、ここが失われることは、札幌市
>全体からみても大きな損失となります。キャンパス内の大樹、枯損木の保全が重要な理由はそこにもあり
>ます。「エコキャンパス」を目指すならば、そのような視点にたって、倒れる危険のある老木・大樹をど
>う保全していくかを検討しなければならないはずです。このたびの大学当局の決定にいたる過程で、どの
>ような検討がなされたのか、具体的にお示しいただきたいと存じます。

ーーー貴重なご意見かと思いますが,あの並木が人と車の通りの多いところに
あることを考えれば,「倒れる危険」を重く見るべきではありませんか?

小野先生の言われる「大木を弱らせてきた要因の一つは、人間による踏みつけ
だけでなく、頻繁な車の通行、根元までしきつめられた敷石・アスファルトに
あると考えます。」は理解できます. 
この点に関連して,既に公表されているキャンパス・マスター・プランに対し
て小野先生はどのようなご意見をお持ちか,この点をハッキリさせた方が前向
きな議論が出来るかと思います.

Teruo Watanabe
Division of Earth & Planetary Sciences
Graduate School of Science,
Hokkaido University
Sapporo, Japan
TEL  81-11-706-5302
FAX  81-11-736-3290

小野有五2/5|渡辺暉夫2/5| 高橋英樹2/6|齋藤 裕2/6| 辻下 徹 2/8|齋藤 裕2/9| 小野有五2/9|渡辺暉夫2/9|辻下 徹 2/10|斎藤 裕 2/11|渡辺暉夫 2/12|辻下 徹 2/13|藤田博美小野有五2/15

Date: Tue, 6 Feb 2001 12:52:52 +0900
To: hu-members,Teruo Watanabe
From: "Takahashi Hideki"
Subject: Re: ポプラ並木を含む学内の大樹伐採への反対のお願い

樹木伐採に関して(高橋英樹、総合博物館資料基礎系):

 私は長い間植物園にいたので樹木伐採については同じような問題がありました。管
理者としての立場にたつとやはり危険があると判断された(特に委員会など専門家か
ら)場合には、枝を払うとか伐採するとかの判断に傾くのは自然の成り行きです。
 ただキャンパス内の樹木伐採決定が安全管理側に傾きすぎている印象を受けていま
す。もう少し植物学、生態学の専門の教官も入れた検討も必要ではないでしょうか。
 特にこれまでの倒木状況というマップで紹介されている図には、倒れた樹木名が
「不明」とか、ただ「カエデ」とか書かれていて種名が分かりません。エコキャンパ
スを標榜するなら、どこになんという種類の樹木が生えているかを押えておくのは
「基本の木」でしょう(太い樹木は財産として樹木台帳に種類とともに載っているは
ずですが)。
 エコキャンパスをフレッシュマンの自然教育に生かせるのではないかと個人的には
考えているのですが、そのためにはどこになにが生えている、あるいは生息している
という基本的な情報を調査し記録し、長期的な変動をモニタリングすることが必要だ
と思っています。今回の問題で、キャンパスの管理を事務方だけにまかせるのでな
く、教官学生の積極的な参加の契機になれば幸いです。

----- Original Message -----
From: Teruo Watanabe (by way of Toru Tsujishita)

To: 
Sent: Monday, February 05, 2001 8:22 PM
Subject: Re: ポプラ並木を含む学内の大樹伐採への反対のお願い


> 小野先生
> 発信:渡辺暉夫
>
> 反対のご意見伺いました.
> 問題は,倒木による事故があったらどうなるのでしょうか,ということだと思います.
> 何年か前に理学部の南側ローンの古木が半分に折れました.幸い被災者はなかった.
> これは偶然です.
>
> 事故は危険性がある以上未然に防がねばなりません.

・・・
------------------

回送時のコメント(辻下)

以下の引用部分は回送時に省略。次を参照:
http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/010205-watanabe.html

小野有五の最初の呼びかけ:
http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/010205-ono.html

このhu-members についての説明:
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99a16.html
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/00107-hu-network.html


小野有五2/5|渡辺暉夫2/5| 高橋英樹2/6|齋藤 裕2/6| 辻下 徹 2/8|齋藤 裕2/9| 小野有五2/9|渡辺暉夫2/9|辻下 徹 2/10|斎藤 裕 2/11|渡辺暉夫 2/12|辻下 徹 2/13|藤田博美小野有五2/15

Date: Tue, 6 Feb 2001 18:30:14 +0900
To: hu-members
From: Yutaka Saito
Subject: ポプラ並木を含む学内の大樹伐採

 農学研究科生物生態学体系学講座動物生態の齋藤です。
 ポプラ伐採の件で、学内でのmail交換が始まっております。小野さんの問題提起に
対して、現在幾つかの反応mailが届いております。それを見ていますと、この件につ
いて誤解や情報不足があるようです。またこのようなmailは学生や職員に対しても配
信して全学的に意見をいただくのが必要かなと感じました。
 ところで、私は、エコキャンパス推進専門委員会(施設・環境委員会キャンパス環
境専門委員会、現委員長井上医学部長)の委員の1人として、この決定に関わってま
いりましたので、現在行われている議論に対して若干の訂正を行う義務があると考え
、このmailを書いています。なお、より正確な事情、決定に関わる経緯については、
今後当該委員会の委員長等からお願いたします。
 小野さんの意見全般について:
 学内の緑を守り、保全のための方向性を審議するのがエコキャンパス委員会ですが
、それはあくまでも大學は教育研究機関であるという前提のもとで行うのが、当委員
会の役割です。学内の主要動脈である中央道路に面した樹木に倒壊のおそれがあり、
人命に関わる危険が予想されるという緊急事態に対して、それを当面放置して、時間
をかけて論議をというのは、どうでしょうか。それこそ大學の危機管理能力を問われ
かねません。もちろん、このようになるまで(ここでは専門家の樹木診断が正しいと
して)放置した責任は、問われるべきかもしれませんが(それは、あまり過去のこと
であり、数年前に設置されたエコキャンバス委員会としては、どうしようもありませ
ん)。今の時点では、残念だが仕方がない、今後これらの樹木の後継樹を植林して、
また緑を復活させようというのが、委員会の苦渋の結論でした。したがって今回の決
定では、環境そこへ至る過程で、学内専門家(研究者)による論議はつくされたと考
えています。従来本部事務方におまかせしていたキャンパスの環境管理を、現総長の
下で「新たに設置された」専門家によるキャンパス環境専門委員会およびその親委員
会で充分検討した結果であるという点を、ご理解いただければと思います。この点、
高橋さんの「事務方だけの判断」ととれる意見には少し誤解があるようです。本委員
会での審議内容および経過については当該部局の委員あるいは本部事務部でお調べい
ただければすべてわかることですで、今後はその点お調べいただいてから、このよう
なdebateをいただければと存じます。
 なお、補足的に付け加えますが、今回の樹木医の学内樹木の診断は、主に老木のみ
25本で診断料が100万前後がかかったとのこと。また、今回の伐採には数百万(正確
には事務方にお尋ねください)、もし保存を考えるとその数十倍以上の経費がかかり
、それをしなければ樹木の数20-30メ−トルの範囲(当然道路と建物も多く含みます
)で立ち入り禁止という措置が必要だとの報告を受けたと記憶しております。正確な
数字を記録しなかったのは私の怠慢ですが、その件については事務方におたずねくだ
さい。
 さらに補足すれば、保存したいというのが大方の委員の意見でしたが、そのための
費用の捻出がほとんど絶望的であるということが、今回の決定のもとにあります。も
し保存を強く訴えるのであれば、そうお考えの方々、そのための対案(具体的な方法
、数千万にのぼると考えられる保存経費の募金や、学内での特別経費計上のコンセン
サス作りなど)を出していただき、緊急にそれを学内に発信していただければ幸いで
す。不正確な情報と対案なしのただの反対では、私はそれを支持することはできませ
ん。
 以上、この件につき、詳しい情報が事前に皆様にお届けできなかったことをお詫び
するとともに、ご報告いたします。

           −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                  〒060-8589
               札幌市北区北9条西9丁目
                 北海道大学大学院農学研究科
      環境資源学専攻生物生態学体系学講座
      動物生態学研究室
            (北海道大学農学部 応用動物学講座)
             齋藤 裕
  URL:http://www.agr.hokudai.ac.jp/ecosys/depes.html
           −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

小野有五2/5|渡辺暉夫2/5| 高橋英樹2/6|齋藤 裕2/6| 辻下 徹 2/8|齋藤 裕2/9| 小野有五2/9|渡辺暉夫2/9|辻下 徹 2/10|斎藤 裕 2/11|渡辺暉夫 2/12|辻下 徹 2/13|藤田博美小野有五2/15

Date: Thu, 8 Feb 2001 17:40:09 +0900
Subject: Re: ポプラ並木を含む学内の大樹伐採
Cc: hu-members

齋藤 裕 樣

理学研究科の辻下です。質問とコメントです。

伐採に関して、施設・環境委員会・キャンパス環境専門委員会に最終決定権があった 
のでしょうか。それとも、総長もしくは評議会などの上位機関によって最終的に伐採 
が決定されたのでしょうか。

伐採決定の主な理由は保存経費が高額な点だ、と齋藤樣は以下のように説明されてい
ますが、経費を考慮した上での伐採是非の総合的判断は、本来、総長または評議会に
よってされるべきことではないか、と思ったのでお聞きした次第です。

> さらに補足すれば、保存したいというのが大方の委員の意見でしたが、そのための
>費用の捻出がほとんど絶望的であるということが、今回の決定のもとにあります。も
>し保存を強く訴えるのであれば、そうお考えの方々、そのための対案(具体的な方法
>、数千万にのぼると考えられる保存経費の募金や、学内での特別経費計上のコンセン
>サス作りなど)を出していただき、緊急にそれを学内に発信していただければ幸いで
>す。

保存すべきだという意見をもつ委員が大半で、技術的にも保存可能だったとすれば、
専門委員会の使命は、それを上位機関に報告するところまでなのではないでしょう
か。保存実現のために必要な多額の経費が他の諸経費と比べてどちらが重要かという
判断は、総長もしくは評議会により、全学の意向や市民の意見等も汲み、北大の未来
戦略を鑑み、総合的見地か判断されるべきことではないでしょうか。

なお、北大のシンボルであり、一朝一石には取り戻せない、メインストリートに聳え
る元気な老ポプラ達を治療し支え保存することは、数億円の創立125年記念基金の
使い途として(既に使用計画が決まっていなかったとすれば)適切なものという感想
を持ちました。

辻下 徹
理学研究科数学専攻
内線 3823
tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst

これまでの伐採に関する全学メール4通のログは次にあります:
http://www.ac-net.org/home/hokudai/doc/010205-ono.html

小野有五2/5|渡辺暉夫2/5| 高橋英樹2/6|齋藤 裕2/6| 辻下 徹 2/8|齋藤 裕2/9| 小野有五2/9|渡辺暉夫2/9|辻下 徹 2/10|斎藤 裕 2/11|渡辺暉夫 2/12|辻下 徹 2/13|藤田博美小野有五2/15

Date: Fri, 9 Feb 2001 14:29:50 +0900
To: hu-members
From: 小野有五
Subject: ポプラ並木を含む学内の大樹伐採:経過報告と意見交換会のお知らせ

北大教官各位                 

 まず初めに、今回のキャンパス内の大樹伐採に関しまして、やむをえず全学メールで意見を述べさせて
いただきましたことをお詫び申し上げます。「北大時報」で公表されてから1週間以内にも伐採されてし
まうかもしれない、というせっぱつまった状況もありましたが、すでに委員会や評議会で正規の手続きに
従って決定されたにことがらに関して、このような方法で異議を申し立てるということが、構成員として
は正しくないことであるというご指摘ももっともであり、もっと早い時点で、委員会に直接、意見を申し
上げたり、働きかけを行うことを怠っていたことを深く反省しております。また、文学部前の大木の伐採
は今回の計画とは無関係で、増築工事のためにやむなく健康な大木を伐ったというものでした。誤った情
報をお流ししたことをあわせてお詫びいたします。しかし、「北大時報」の内容で判断するかぎり、今回
の伐採には、まだ多くの問題点が残っているように思われること、さらに市民に知らされないままこのま
ま伐採が強行されれば、北大にとって決してよい評価にはならないと思われること、そして環境科学を教
え研究している立場からして、そのような状況があるのにそれを見過ごしてまえば、自分自身の研究や教
育そのものが意味を失ってしまう、ということから、やむをえず全学メールに要望書を発信させていただ
きました。多くの方にはご迷惑をおかけしたかもしれず、あらためてお詫び申し上げます。しかし一方で
は、メール上で伐採に賛同するたくさんのお返事をいただいたほか、活発なご議論もいただき、心より感
謝いたしております。
  先日のメールでお送りした「要望書」は一部の文言を修正したうえで、昨日、総長室に文書としてお届
けいたしました。また施設部の方ともお目にかかり、説明をいただきました。明日(2月10日)、午後
1時半ー4時に学術交流会館第三会議室で、この件に関する市民もまじえた意見交換会を開きたいと思い
ます。メールでいただいたさまざまなご意見を整理し、一般市民の方がたからのご意見をうかがって、伐
採しないですませるための私たちなりの案をまとめ、来週早々に、あらためて総長ならびに皆様にお伝え
するつもりです。
 急なことで申し訳ありませんが、ご都合のつく方はできるだけ明日の意見交換会に参加していただき、
ご意見を賜りたいと存じます。
  論点を整理いたしますと、
(1)樹木医は、中に大きな空洞ができていることを主たる理由に、倒木の危険がきわめて高い「危険
木」という認定をしているが、空洞のある高木が、そうでない高木より倒れやすいという科学的根拠はな
い。(風で木が倒れるメカニズムを研究されておられる方がいらしたらぜひご教示下さい。)
(2)成長の早いポプラと、成長が遅く、また樹齢が数百年にのぼるハルニレの保全は同一基準では論じ
られない。
(3)樹木医は、根元ぎりぎりまでの舗装や、人・車の通行によるインパクトをきちんと指摘している。
それらを軽減する方策をまず提示すべきである。(交通、道路舗装などの研究者のご検討をお願いいたし
ます。)
(4)21世紀の潮流は、「自然と共存する人間生活の追求」であり、我々は、教育・研究を通じてそれ
を率先して人々に伝える義務がある。大学が教育・研究の場であることは当然であるが、「倒れる危険を
もつ老木といかに共存していくか」を大学が身をもって示すことも重要な教育である。逆に、「教育・研
究のためには少しでも危険のあるものは排除する」という考え方は、少なくとも環境科学・環境倫理にお
いてはなりたち難い。
(5)つねに何がしかの危険をもつ自然と共存するためには、管理者も、これまでのように危険があるか
らといってそれを除去したり改変するのではなく、自然を残すことが求められている。その場合、自然を
残すことによって、何らかの事故が起きたときに、管理者がどこまで責任を問われるかは、必ずしも一義
的には決まらない。まずすべきことは、「倒れるという潜在的な危険がある」という警告を十分に行うこ
とである。(4)に述べたような教育目的のために、北大では潜在的な危険を受容したうえで、老木を残
している、という明確な表示を各入り口や樹木の周辺で周知徹底させるべきである。このような十分は周
知徹底があれば、訪問者の自己責任も問いうるのではないか。(法学的なご検討をお願いいたします。)
(5)万一の事故に対して、いきなり国家賠償を考えるのではなく、「エルム基金」のようなものを設け
て、保険をかけておくことも可能であり、それも検討する必要がある。

 まだいろいろありますが、論点を以上のような5点にまとめてみました。明日の討論に期待しておりま
す。決して「反対のための反対」ではなく、北大のめざす「エコキャンパス」をよりよいものにしていく
ための行動であることをわかっていただきたいと存じます。

2001年2月9日
北大キャンパスの樹林を考える市民の会 準備委員会
代表 小野有五
賛同者:学内・学外(北大名誉教授を含む)多数の市民
2月9日正午現在: 署名者265名、 学内賛同メール発信者 68名。



準備会連絡先::エコネットワーク    TEL011−737−7841
                                    FAX:  737−9606
       北大地球環境研地球生態学講座:小野有五
                内線2220   FAX:011-706-4866

小野有五2/5|渡辺暉夫2/5| 高橋英樹2/6|齋藤 裕2/6| 辻下 徹 2/8|齋藤 裕2/9| 小野有五2/9|渡辺暉夫2/9|辻下 徹 2/10|斎藤 裕 2/11|渡辺暉夫 2/12|辻下 徹 2/13|藤田博美小野有五2/15

Date: Fri, 9 Feb 2001 19:26:01 +0900
To: hu-members
From: Yutaka Saito
Subject: 辻下さんの疑問へ


以下は 2001.2.9 Fri 10:58:10 に受信したものです。伐採は評議会が承認済みであ
ることは本日の理学部教授会で渡辺暉夫教授から報告がありました。他の点について
は問いあわせ等はしておりませんが、明日の意見交換会に必要な情報と思いますので
回送致します。(辻下)
--------------------------------------------------------------------------

辻下様
 以下のコメントにお答えいたします。ただし、これは1委員のやや曖昧な記憶に基
づくものですので、詳しくは親委員会に問い合わせて事実関係を確認後に、公開いた
だければと思います。
>

>
> 伐採に関して、施設・環境委員会・キャンパス環境専門委員会に最終決定権があった
> のでしょうか。それとも、総長もしくは評議会などの上位機関によって最終的に伐採
> が決定されたのでしょうか。

→これは、当該委員会がWGであることから、当然親委員会すなわち施設計画委員会
で審議され、さらにその上(多分評議員会)で決定された方針であると理解していま
す。

>
> 伐採決定の主な理由は保存経費が高額な点だ、と齋藤樣は以下のように説明されてい
> ますが、経費を考慮した上での伐採是非の総合的判断は、本来、総長または評議会に
> よってされるべきことではないか、と思ったのでお聞きした次第です。

→最終決定についてはおっしゃる通りです。専門委員会としては、保存と再生につい
て、経費だけではなく、今後の学内の環境特に樹木の育成管理について専門的な立場
で、そのWGの結論を出したということです。先生のおっしゃる意味の決定というの
がよくわかりませんが、WGとして一定の諮問に対して、諮問されたことに方向性に
ついて結論を出すのはあたりまえではないでしょうか。おっしゃる意味は、決定せず
に親委員会に投げるのが正しい、ということですか?
>


→一読すれば、だれでもおっしゃることがもっともだと考えると思います。しかし、
北海道大学の構内にどれでけの危険な古損木があり、どれでけの森が、市民の土壌盗
掘、あるいは植物採取、さらには学生のゴミ投棄、森の中での心ないスト−ム行為な
どで痛めつけられているか、あるいは野生動物が、学内の心ない(というよりその害
がわかっていない)人たちが放置したり、飼育したりしているイヌやネコ、さらに散
歩に来て放たれたイヌなどによって生命を落としているかを、ご存知ですか。この委
員会は、これらの諸問題について新たな方向性をだすために設置された委員会です。
それらの問題解決のためには、それぞれにかなりの費用と労力が必要であり、それら
を総合して勘案した上で、果たしてあのポプラだけを無理して保存することができる
か、そのような議論を行った上での結論です。研究や教育に回す予算を大幅に削って
も、もっとコンサ−バティブな学内環境保全をやるべきだというコンセンサスを得る
のでなければ、今回のことだけを取り上げて問題にすることが妥当かどうか、お考え
下さい。

> 保存すべきだという意見をもつ委員が大半で、技術的にも保存可能だったとすれば、
> 専門委員会の使命は、それを上位機関に報告するところまでなのではないでしょう
> か。保存実現のために必要な多額の経費が他の諸経費と比べてどちらが重要かという
> 判断は、総長もしくは評議会により、全学の意向や市民の意見等も汲み、北大の未来
> 戦略を鑑み、総合的見地か判断されるべきことではないでしょうか。
→ これは、間違っています。委員のほとんどはできるなら保存したいという方向で
検討したが、結局それはポプラのような弱い樹種(もともと基本的に、街路樹として
は不適当な樹種なのです)では、ここまで古くなって痛んでいては無理だと判断した
ということで、保存すべきだという意見の委員が大半なのではありません。

> なお、北大のシンボルであり、一朝一石には取り戻せない、メインストリートに聳え
> る元気な老ポプラ達を治療し支え保存することは、数億円の創立125年記念基金の
> 使い途として(既に使用計画が決まっていなかったとすれば)適切なものという感想
> を持ちました。

→ 私もそれは同感です。秋に見るあのポプラは、わたしの30年間の北大での生活に
とっても、思いで深いものです。しかし、お考えいただきたいのは、あのポプラにそ
れだけのお金を使って、では他のケイテキの原始の森は消えてもいいのか、あるはポ
プラ並木もどうでもよいのか、さらに18条通りは、木も植えずに放置して良いのか、
そういう全体の中で、125周年記念事業の環境整備を行ってきたのです。数年は、多
分歯の抜けたような景観となるのでしょうが、私たちの後でこの大學で学ぶ人たちに
は、立派に育った後継樹や、125周年事業で新たに植えられた多くの緑を残して、快
適なキャンパスライフがおくれるように、それが緑化推進に関わる委員会の考えてい
ることなのです。

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                  〒060-8589
               札幌市北区北9条西9丁目
                 北海道大学大学院農学研究科
      環境資源学専攻生物生態学体系学講座
      動物生態学研究室
            (北海道大学農学部 応用動物学講座)
             齋藤 裕
        Tel/Fax:011-706-3893
      Fax:  011-757-5595
  URL:http://www.agr.hokudai.ac.jp/ecosys/depes.html
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小野有五2/5|渡辺暉夫2/5| 高橋英樹2/6|齋藤 裕2/6| 辻下 徹 2/8|齋藤 裕2/9| 小野有五2/9|渡辺暉夫2/9|辻下 徹 2/10|斎藤 裕 2/11|渡辺暉夫 2/12|辻下 徹 2/13|藤田博美小野有五2/15

Date: Fri, 9 Feb 2001 19:28:17 +0900
To: Ono Yugo
From: Teruo Watanabe
Subject: Re: ポプラ並木を含む学内の大樹伐採:経過報告と意見交換会のお知らせ
Cc: hu-members

小野先生

取り急ぎ

小野先生のご指摘:伐採しないですませるための私たちなりの案をまとめ、来
週早々 に、あらためて総長ならびに皆様にお伝えするつもりです。

ーーー危険性の問題をクリヤーできればあの見事なポプラは残っていて欲しいという 気持ちです.

ただ,万一,事故がおきたら(以前,ポプラの大きな枝が折れたそうです.確
率は低 いにせよ,当たり所が悪いと死亡事故になったと目撃された先生はおっ
しゃっておら れた),これは刑事責任になります.そして危険だと認定され
ている以上,刑罰は避 けられません.この点だけは決して軽視しないでくだ
さい.

(3)樹木医は、根元ぎりぎりまでの舗装や、人・車の通行によるインパクトをきちんと指摘している。
>それらを軽減する方策をまず提示すべきである。(交通、道路舗装などの研究者の ご検討をお願いいたします。)

ーーーキャンパス・マスター・プランでは中央道路に車を入れないことを基本
として いるのです.それがいつ実現するかはわかりませんが.当面のいろい
ろな策もあるか もしれませんが.


>的には決まらない。まずすべきことは、「倒れるという潜在的な危険がある」とい う警告を十分に行うこ
>とである。(4)に述べたような教育目的のために、北大では潜在的な危険を受容 したうえで、老木を残
>している、という明確な表示を各入り口や樹木の周辺で周知徹底させるべきである 。このような十分は周
>知徹底があれば、訪問者の自己責任も問いうるのではないか。

ーーー場所は人と車の通りの多い中央道路ですからね.訪問者の自己責任で済むでし ょうか?

私は豊浜トンネルの事故で,事故調が「予知予測は困難」とした問題を例に出
したい と思います.検察審査会にかかって検察の不起訴は不当とされ,再度
検討され,結局 は不起訴となりました.この10日が時効だそうです.予知予
測が困難であってもーー, なのです.
今問題になっているポプラ並木で万一事故がおきれば,過失ですよ.
有名なポプラ並木で事故がおきれば考え方は別になるのかもしれません.


(5)万一の事故に対して、いきなり国家賠償を考えるのではなく、「エルム基金」 のようなものを設け
>て、保険をかけておくことも可能であり、それも検討する必要がある。

ーーー死亡事故さえありうるとすれば,基金の問題ではないのでは?

ともあれ,市民に愛され,人と自然の調和したキャンパス作りを目指したいと
いうお 気持ちは良くわかりました. 
市民がポプラを愛して下さることを大切にしたいと思います.平成のポプラ並
木が見 事な枝振りを見せる日が早くくることを願っています.

Teruo Watanabe
Division of Earth & Planetary Sciences
Graduate School of Science,