通信ログ
[kd 03-07-22] 「信なくば立たず―認証評価制度は実施できるのか」
国公私立大学通信 2003.07.22(火)
http://ac-net.org/kd/03/722.html

--[kd 03-07-22 目次]--------------------------------------------
[1] 7/21 北海道新聞「多面的な評価制度をーー基礎研究軽視に懸念」
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000014.html

[2] 喜多村 和之「信なくば立たず―認証評価制度は実施できるのか」
  アルカディア学報(教育学術新聞2107号(2003.06.25)掲載コラム)	
http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia124.html

[3] 小林 雅之「二者択一論を超えて―高等教育研究者の役割」
http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia123.html
アルカディア学報(教育学術新聞2003.06.18掲載コラム)	

[4] 「21世紀COEプログラム」の研究教育拠点の選定
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000007.html

[5] 7/18 東京大学職員組合 改革問題特別委員会 「包括的な授権」に反対する
−7月15日総長「今後の法人化作業についての所信表明」を批判する−
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030718kaitokuiseimei.html

  [5-1] 7/17 東職法人化対策特別委員会 管理運営問題WG
「今後の法人化作業についての所信表明」に対する見解
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030717WGkenkai.html

[6] 宮脇磊介「騙されやすい日本人」
新潮文庫, 2003.3.1 発行、ISBN 4-10-116421-5
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4101164215

[7] Movable Type への移行
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000008.html

[8] 7/21 国立大学独立行政法人化問題週報 No 118 
http://ac-net.org/wr/wr-118.html
---------------------------------------------------------------------- 

「国立大学独立行政法人化の諸問題」サイトで、
Movable Type を用いることにしました[7]。今後は、そ
のArchive 機能を利用してこの通信発行を「効率化」し
たいと考えています(編集人)。

----------------------------------------------------------------------
[1] 7/21 北海道新聞「多面的な評価制度をーー基礎研究軽視に懸念」
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000014.html
記者の視点  報道本部 岩本 進

(抜粋)
「法人化は合理化や効率性に重きを置くが、成果が出る
まで長い年月を要する研究もある。過去三十数年間の流
氷観測を今後、だれがどうフォローするのか」。2004年
度にも廃止される北大流氷研究施設(紋別)の白沢邦男
助教授は嘆く。

流氷研は北大低温学科学研究所(札幌)の附属施設。紋
別など三ヶ所のレーダー観測で、流氷の分布や動きの長
期的変動などを研究し、地元にも流氷情報を提供してき
た。

廃止については北大側は「法人化と関係ない」という。
しかし、白沢助教授は「直接のきっかけはレーダー更新
だが、大学側は当然、(コストを含め)法人化後の大学
運営を考えて決めたはずだ」

流氷研究は低温研内に解説される環オホーツク研究セン
ターが引き継ぐが、「札幌で継続的な研究ができるのか」
と白沢助教授は言う。・・・」


----------------------------------------------------------------------
[2] 喜多村 和之(私学高等教育研究所主幹)
    信なくば立たず―認証評価制度は実施できるのか
    アルカディア学報(教育学術新聞2107号(2003.06.25)掲載コラム)	
     http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia124.html
----------------------------------------------------------------------

#(昨年、学校教育法が改正され、文部科学省の認証を
受けた評価機関による評価を受けることが、すべての高
等教育機関に法的に義務付けられた。それが「認証評価
制度」である。大学評価研究の権威である喜多村氏が、
その実行可能性への疑念を表明したもの。)

「こうみてくると、そもそもこの「認証評価制度」なる
ものは、実行可能なのか、という疑問が出てくるのを禁
じがたい。たんにヒト、カネ、モノという資源の不足も
さることながら、評価のシステムというソフトの未成熟
や限られた時間(五〜七年)という制約があるのであ
る。」

----------------------------------------------------------------------
[3] 東京大学大学総合教育研究センター  小林 雅之
    二者択一論を超えて―高等教育研究者の役割
    アルカディア学報(教育学術新聞2003.06.18掲載コラム)	
http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia123.html
----------------------------------------------------------------------

「・・・競争の条件を等しくするようなインフラの整備
がなければ、不平等はむしろ拡大し競争の正当性が疑問
視されよう。この意味で、競争条件を等しくするような、
最低限の一律補助は必ず必要であり、二者択一ではあり
得ない。欧米でも基盤の部分にはそれなりの公的補助が
なされており、完全に競争的な資源配分方式はとられて
いない。・・・」

----------------------------------------------------------------------
[4] 「21世紀COEプログラム」の研究教育拠点の選定
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000007.html
----------------------------------------------------------------------

#(文部科学省サイトで提供されているPDFファイル
はイメージデータである。二次利用しにくい形式でしか
一次データを提供しないのは、評価委員の名簿公開には
積極的ではないことを示している。)

---------------------------------------------------------------------
[5] 東京大学職員組合 改革問題特別委員会 「包括的な授権」に反対する
−7月15日総長「今後の法人化作業についての所信表明」を批判する−
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030718kaitokuiseimei.html
---------------------------------------------------------------------

1.所信表明のねらい---大学は法人法にどう対処すべきか
2.「包括的な授権」の背景、その行き着くところ
3.評議会は信任投票を行うべきではない

----------------------------------------------------------------------
[5-1] 東職法人化対策特別委員会 管理運営問題WG
「今後の法人化作業についての所信表明」に対する見解
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030717WGkenkai.html
----------------------------------------------------------------------

「今後の法人化作業についての所信表明」に対する見解

2003年7月17日
東京大学職員組合
法人化対策特別委員会 管理運営問題WG

 佐々木総長は7月15日に行われた評議会において、
「今後の法人化作業についての所信表明」なる文書を発
表し、それに対する信任投票を求めた。
(全文は、http://www.adm.u-tokyo.ac.jp/admin/1268.htm)

 しかし、私たちは、評議会における信任投票は行われ
るべきではないと考える。したがって、それを求めた
「今後の法人化作業についての所信表明」の最終パラグ
ラフなど該当部分は、削除すべきである。

理由:

 東京大学ではこれまで、「重大な案件について学内の
意見を徴する」という「本学の伝統」に則り、UT21会議
などにおいて、法人化に向けた検討を行ってきた。しか
し今回、「時間が限られている」という理由で、これま
での積み重ねを反古にする形での「包括的な授権」を、
「極めて異例の」信任投票という形で求めることは、大
学のあるべき姿を大きく逸脱するものと言わざるを得な
い。

 今回、所信表明をされたこと自体については一定の評
価ができようが、これまで東職が要求し続けてきた大学
構成員に対する説明責任は、果たされていない。この所
信表明は、特別の権限を得てから事を進めようという政
治的手法を学内に持ち込むものと言わざるを得ない。し
かも、自らのフリーハンドの代償としての、説明責任の
あり方、部局の意見を汲み上げる仕組み、およびチェッ
クアンドバランスのあり方などについては、一切触れら
れていない。

 今回の信任投票は、既に総長として広く信任されてい
る佐々木氏個人に対する信認と、総長に「包括的な授権」
を与えることへの信認とが未分離かつ不明確になってお
り、教職員に"踏み絵"を迫るかのごとき印象を与えてい
る。

 総長は、今後どのような組織・運営の諸機構を構築し
ていくのかを具体的に公表し、そのためにどこまでのリー
ダーシップが必要なのかを、まずは明示すべきであろ
う。」

----------------------------------------------------------------------
[6] 宮脇磊介「騙されやすい日本人」
新潮文庫, 2003.3.1 発行、ISBN 4-10-116421-5
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4101164215
---------------------------------------------------------------------

#(主張全体の方向性には危惧を感じるが、政府の中枢
近くにいた著者による、日本の構造的問題の全貌につい
ての貴重な証言になっている。以下、国会運営とマスメ
ディアに関する部分だけ紹介。)

p23 「国民の目を永田町の実態から隔離してきたカベは、
いわゆる55年体制下において限りなく有効に機能して
きた。それは、与党自民党の中での密室政治にとどまら
ず、与野党間の密室談合によって作られたシナリオに沿っ
た国会運営をもたらすことで、その真骨頂を発揮する。
これがいわゆる国対型国会運営、「国対政治」といわれ
るものである。そして、政治記者はシナリオーー国会対
策委員会のいわゆるウラ国対で、党利党略の調整の結果
まとめたシナリオーーを尊重して、そのシナリオにあっ
た記事作り、紙面構成をしてきた。・・・自民党は国会
対策上、重要法案を最終的に会期内に可決するために、
いかにも野党の立場を尊重して五分五分の与野党対決を
しているかのようなシナリオを、野党と談合の上で作る。
国対委員長が、そのシナリオライターであった。政治記
者は、そのシナリオを作成する経緯がわかっていても、
紙面で暴露するようなことはしない。むしろ、時にはシ
ナリオ作りに加担することさえあったといわれる。この
シナリオには、必ず、「審議拒否」が重要な意味を有す
る。つまり、白熱シナリオのクライマックスであ
る。・・・野党は審議に復帰し、法案成立のタイムリミッ
トにぎりぎりで間に合う。・・・与野党談合、政治記者
黙認の共同作業が生んだお決りの展開が繰り返されてい
く。」

#(国立大学法人法案の審議では、与野党間は談合はな
かったと信じたいが、参議院文教科学委員会の最後2回
の審議では、民主党議員の質疑内容と態度に、その疑念
を抱かせるものがあった。)


p186「 行政とジャーナリズムのとの癒着の最大の場は、
つとにその弊害が指摘されている記者クラブ制であろう。
記者クラブは、政・官・業いずれとの間にも存在するが、
政治家と番記者との関係に次いで癒着度が高いのは、官
庁記者クラブであるといわれる。長年の記者クラブと行
政官庁との間の歴史の中で、次第に記者の独自取材や調
査報道の力が削がれ、行政官庁のいわゆる「発表もの」
に依存するようになってしまった。「新聞の官報化」は、
かねてから指摘されているところである。」

p192 「癒着によりジャーナリズムが書かないこと、ジャー
ナリズムの腐敗である。マスメディア自身も国民も「癒
着は腐敗である」との厳しい見方で臨まないと、マスメ
ディアのモラルハザードが進行する。日本のマスメディ
アの場合には、ニュースソースとの関係において、意識
的・理性的に選択されたポリシーとしてのオープンな協
力関係と、こうした癒着とがはっきり区別して意識され
ていないために、緊張感が欠けて腐敗を生んでいるので
あろう。」

p194 「私が内閣広報官の仕事をしている間に自分自身
で感得した言葉に、"毒をまわす"という語がある。・・・
「魂を奪う」とか「肝を抜く」という言葉は承知してい
た。「毒をまわす」とは、丁寧に言えば「ご理解いただ
き、ご協力を賜る」ということである。・・・毒をまわ
す手法は、・・・システムとしても形成されてい
る。・・・その最も有効なシステムが「叙勲」をエサに
魂を奪い虜にすることである。そのシステムの典型は、
政・官が特に役所を窓口として、政・官においてこれか
ら実現しようとする政策に対して批判勢力になりかねな
いマスメディアの関係者・評論家・学者や財界人などを
懐柔するための段階的システムである。・・・新聞関係
では、特定の新聞社の社長が新聞協会の会長を順に務め
るとになっているが、会長経験者には、勲章、それも勲
一等瑞宝章が授与されるとが慣行として定着しつつある。
新聞人にあっては、叙勲を辞退した人がどれだけいるで
あろうか。・・・」

----------------------------------------------------------------------
[7] Movable Type への移行
http://www.ac-net.org/dgh/blog/archives/000008.html
---------------------------------------------------------------------

#(国立大学の激変期に入り、今後、長期間にわたって、
重要な情報が多数発生することが予想されます。しかし、
メディアは政府公報機関として、上からの一方的な情報
や見解を流すのみである、この3年間で証明されました。

人工的なサバイバル競争による大学界の分断化を回避す
るには、新しい連帯を形成しなければなりません。その
ためには、ボトムアップな情報や認識を共有することが
不可欠です。本務である教育と研究の合間に情報を共有
する活動は困難なようですが、ICT (Information and
Communication Technology) 革命が、それを可能にしま
した。その中でも, wiki と blog の活用が期待されま
す。

Movable Type のような blog Tools を使うと、日々流
れてくる情報を記録するだけで、時系列とテーマ別のロ
グが生成されます。また、RSSで、自動的に「情報市場」
に掲載され、大学関係の内からの情報が広い人の目に触
れることになります。これは、大学界と社会の新しい繋
がりを形成していくでしょう。)

----------------------------------------------------------------------	
[8] 7/21 国立大学独立行政法人化問題週報 No 118 
http://ac-net.org/wr/wr-118.html
----------------------------------------------------------------------	 

----------------------------------------------------------------------
編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd