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国立大学独立行政法人化問題週報


Weekly Reports  No.118 2003.7.21 Ver 1
http://ac-net.org/wr/wr-118.html
総目次:http://ac-net.org/wr/all.html
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	       国立大学独立行政法人化問題週報
	     Weekly Reports  No.118 2003.7.21
	      http://ac-net.org/wr/wr-118.html
	   総目次:http://ac-net.org/wr/all.html
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			   目  次
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[0] 内容紹介

  [0-1] 与野党の談合が推測された国対政治

  [0-2] 最大の功労者はマスメディア。

  [0-3] 諸問題の基盤をなす構造的問題の解決が大学復興の近道

  [0-4] 国公私立大学通信の転載

[1] 7/9 12:30 am 国立大学法人法案に対する議員別投票結果
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/vote/156/156-0709-v001.htm

[2] 宮脇磊介「騙されやすい日本人」
        新潮文庫, 2003.3.1 発行、ISBN 4-10-116421-5
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4101164215
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[0] 内容紹介

[0-1] 与野党の談合が推測された国対政治

国立大学法人法が7月9日に参議院本会議で可決されました[1]。

この週報は、国立大学の独立行政法人化政策の問題性を大学内外に
理解してもらうことを主目的として2000年3月に発刊を始めた
ものでしたが、最後の段階では、当事者である国立大学関係者自身
の意見表明などの行動を喚起する方に時間をとられ、大学外のみな
さまに訴える余裕がなく、残念でした。

前号を発行した6月16日以降、参議院文教科学委員会での審議が
紛糾し、会期末の6月18日までには成立せず、国立大学法人法案
等は廃案または継続審議となるべきものでした。しかし、会期延長
の中で、実質的な審議がないまま、委員長の職権による強行採決が
行なわれ、可決されました。本会議では賛成131反対101で、
与党議員の中でも棄権が9名あるというきわどい結果でした。しか
も、23項目もの付帯決議がなされ、国会自身が「欠陥法案」であ
るという註釈付きの可決となりました。

百年の一度の大改革にたいしても、数を頼む与党の無責任で粗雑な
政権担姿勢が、国会対策委員会による議事運営[2]に現れていたと
感じましたが、最終的には、野党の一部の「談合」的姿勢にも、失
望は禁じえませんでした。


[0-2] 最大の功労者はマスメディア。

旧文部省が1999年に国立大学を独立行政法人化する方針に転換
したときから、国立大学全体が独立行政法人化を既定事実として法
人化対策に終始しようとしていたことに、当事者意識の希薄さに編
集人は驚きました。また、独立行政法人化で大学の自主性が増すと
いう政府見解を執拗に報道しながら、その問題点は一切報道しよう
としないメディアの偏向に驚きましたーー国立学校設置法・国立大
学特別会計法・教育公務員特例法などの法によって運営的・財務的
な独立性がかなり保障されている国立大学制度を廃止し、政府の強
い管理下に大学を置く、という点を一切報道しようとしなかったの
です。

これらのことに危惧を頂き、主に大学関係者に対し、慣れない広報
活動を行ってきましたが、焼け石に水のようでした。マスメディア
により毎日数千万人にばらまかれる偏った情報の効果を、週に一回、
千数百人に配布するメールマガジンの情報で打ち消すことなど、で
きようがはずはありません。(その点で、4月以降に野村さんが中
心となって行われた4回にわたる意見広告は多大な効果がありまし
た。)

国立大学法人法可決の最大の「功労者」はマスメディアです。その
功の中心にいた「文教族記者」の一部が、教員あるいは理事として
国立大学法人に「天下る」ことは必至でしょう[2][0-3] 諸問題の基盤をなす構造的問題の解決が大学復興の近道

今後は、国立大学法人制度の「白紙」の部分を文部科学省と国立大
学協会が協力して埋めていくのでしょう。しかし、国立大学協会が
政府の言いなりの存在であることが、この4年間の行状により、そ
してなにより、法案公表から可決までの4ヶ月間の沈黙により、白
日の下に曝されましたので、政府が国会の委任を受けて思いのまま
に国立大学法人制度を作っていくことを妨げるものはもはや何もな
いでしょう。

長期的に種々の弊害の発生が予期されている国立大学法人制度への
移行が断行されたのと同じような問題は、種々の分野で起きていま
す。問題の解決を阻む諸政策が一部の人たちの利益のために実現さ
れることを可能にする構造が存在することの方が、ここの問題より
深刻ですが、特に、情報支配に伴う重い責任への自覚がマスメディ
ア界全体に欠如していることが深刻な問題です。

マスメディアによる情報支配を無効化するための技術的契機はすで
に準備されていますが、ここでも問題となるのは情報の「信頼性」
や「質」です。これを組織的に確保するためには、大学関係者の多
岐わたる取組みが必要となります。そのような活動を通して、荒廃
した日本の復興が可能となる土壌が形成されていけば、大学の存在
意義は明確となり、場当たり的な大学政策の連発で疲弊し荒廃が進
んでいる日本の大学界全体の復興は、おのずとなされることでしょ
うーー夢物語のようですが、そういった社会全体の行く末とリンク
した長期的なビジョンを大学界内外で多くの人が共有しなければ、
大学の復興などありえないと思います。


[0-4] 国公私立大学通信の転載

今後は「国公私立大学通信」を配信させて頂くことにします。これ
は、「国立大学独立行政法人化の諸問題」サイトのウェブログの見
出しとリンクを紹介するものです。(編集人)

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			   本  文
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[1] 7/9 12:30 am 国立大学法人法案に対する議員別投票結果
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/vote/156/156-0709-v001.htm
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#(与党9名(自民・保守7名、公明2名)が棄権。しかし、野党6名(民主
党3名,国会改革連絡会1名、社会民主党・護憲連合1名)も棄権。)
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案件名:日程第1 国立大学法人法案(内閣提出、衆議院送付)

投票総数 232   賛成票 131   反対票 101

# 〇が賛成、●が反対

自由民主党・保守新党(116名) 	賛成票 109   反対票 0

○阿南  一成 ○阿部  正俊 ○愛知  治郎 ○青木  幹雄
○荒井  正吾 ○有馬  朗人 ○有村  治子  井上  吉夫
○泉   信也 ○市川  一朗 ○入澤   肇 ○岩井  國臣
○岩城  光英 ○岩永  浩美 ○上杉  光弘 ○上野  公成
○魚住  汎英 ○小野  清子 ○尾辻  秀久 ○大島   慶久
○大仁田  厚 ○大野 つや子 ○太田  豊秋 ○扇   千景
○岡田   広 ○加治屋 義人 ○加藤  紀文  加納  時男
○狩野   安 ○景山 俊太郎 ○柏村  武昭 ○片山 虎之助
○金田  勝年 ○亀井  郁夫 ○河本  英典 ○木村   仁
○岸   宏一 ○北岡  秀二 ○久世  公堯 ○沓掛  哲男
○国井  正幸 ○小泉  顕雄  小斉平 敏文 ○小林   温
○後藤  博子 ○鴻池  祥肇 ○近藤   剛 ○佐々木 知子
○佐藤  昭郎 ○佐藤  泰三 ○斉藤  滋宣 ○斎藤  十朗
○桜井   新 ○山東  昭子 ○清水 嘉与子 ○清水  達雄
○椎名  一保 ○陣内  孝雄 ○鈴木  政二 ○世耕  弘成
○関谷  勝嗣 ○田浦   直 ○田中  直紀 ○田村  公平
○田村 耕太郎 ○伊達  忠一 ○竹山   裕 ○武見  敬三
○谷川  秀善  段本  幸男 ○月原  茂皓 ○常田  享詳
○鶴保  庸介 ○中川  義雄 ○中島  啓雄 ○中島  眞人
○中曽根 弘文 ○中原   爽 ○仲道  俊哉  西田  吉宏
○西銘 順志郎 ○野上 浩太郎 ○野沢  太三 ○野間   赳
○南野 知惠子 ○橋本  聖子 ○服部 三男雄 ○林   芳正
○日出  英輔 ○福島 啓史郎 ○藤井  基之  保坂  三蔵
○真鍋  賢二 ○舛添  要一 ○松谷 蒼一郎 ○松田  岩夫
○松村  龍二 ○松山  政司 ○三浦  一水 ○溝手  顕正
○宮崎  秀樹 ○森下  博之 ○森田  次夫 ○森元  恒雄
○森山   裕 ○矢野  哲朗 ○山内  俊夫 ○山崎   力
○山崎  正昭 ○山下  英利 ○山下  善彦 ○山本  一太
 吉田  博美 ○吉村 剛太郎 ○若林  正俊 ○脇   雅史
               
民主党・新緑風会( 60名) 賛成票 0   反対票 57
●浅尾 慶一郎  ●朝日  俊弘   伊藤  基隆  ●池口  修次
●今泉   昭  ●岩本   司  ●海野   徹  ●江田  五月
●江本  孟紀   小川  勝也  ●小川  敏夫  ●大塚  耕平
●岡崎 トミ子  ●勝木  健司  ●神本 美恵子  ●川橋  幸子
●木俣  佳丈  ●北澤  俊美  ●郡司   彰  ●小林   元
●輿石   東  ●佐藤  泰介  ●佐藤  道夫  ●佐藤  雄平
●齋藤   勁  ●櫻井   充  ●榛葉 賀津也  ●鈴木   寛
●高嶋  良充  ●高橋  千秋  ●谷   博之   谷林  正昭
●千葉  景子  ●ツルネン マルテイ ●辻 泰弘  ●角田  義一
●内藤  正光  ●直嶋  正行  ●中島  章夫  ●信田  邦雄
●羽田 雄一郎  ●長谷川  清  ●平田  健二  ●広中 和歌子
●福山  哲郎  ●藤井  俊男  ●藤原  正司  ●堀   利和
●本田  良一  ●松井  孝治  ●円  より子  ●峰崎  直樹
●簗瀬   進  ●柳田   稔  ●山下 八洲夫  ●山根  隆治
●山本  孝史  ●和田 ひろ子  ●若林  秀樹  ●藁科  滿治
               
公明党( 24名) 賛成票 22   反対票 0
○荒木  清寛 ○魚住 裕一郎 ○加藤  修一 ○風間   昶
○草川  昭三 ○木庭 健太郎 ○沢  たまき ○白浜  一良
 高野  博師 ○続   訓弘 ○鶴岡   洋  遠山  清彦
○浜田 卓二郎 ○浜四津 敏子 ○日笠  勝之 ○弘友  和夫
○福本  潤一 ○松  あきら ○森本  晃司 ○山口 那津男
○山下  栄一 ○山本  香苗 ○山本   保 ○渡辺  孝男
               
日本共産党( 20名) 賛成票 0   反対票 20
●井上  哲士  ●井上  美代  ●池田  幹幸  ●市田  忠義
●岩佐  恵美  ●緒方  靖夫  ●大沢  辰美  ●紙   智子
●小池   晃  ●小泉  親司  ●小林 美恵子  ●大門 実紀史
●富樫  練三  ●西山 登紀子  ●畑野  君枝  ●八田 ひろ子
●林   紀子  ●宮本  岳志  ●吉岡  吉典  ●吉川  春子
               
国会改革連絡会(自由党・無所属の会( 14名) 賛成票 0   反対票 13
●岩本  荘太  ●大江  康弘  ●島袋  宗康   田名部 匡省
●田村  秀昭  ●高橋 紀世子  ●西岡  武夫  ●平野  貞夫
●平野  達男  ●広野 ただし  ●松岡 滿壽男  ●森 ゆうこ
●山本  正和  ●渡辺  秀央        
               
社会民主党・護憲連合( 6名) 賛成票 0   反対票 5
●大脇  雅子  ●大田  昌秀  ●田   英夫  ●福島  瑞穂
 渕上  貞雄  ●又市  征治        
               
各派に属しない議員( 7名) 賛成票 0   反対票 6
●大渕  絹子   倉田  寛之  ●黒岩  宇洋  ●椎名  素夫
●中村  敦夫  ●西川 きよし  ●本岡  昭次    
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[2] 宮脇磊介「騙されやすい日本人」
        新潮文庫, 2003.3.1 発行、ISBN 4-10-116421-5
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/detail/-/books/4101164215
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#(主張の全体的方向性には、ある種の危惧を感じたが、政府の中
枢近くにいた著者による、現代日本の構造的問題の全貌についての
貴重な証言になっている。以下、国会運営とマスメディアに関する
部分だけ紹介。)

p23 「国民の目を永田町の実態から隔離してきたカベは、いわゆる
55年体制下において限りなく有効に機能してきた。それは、与党
自民党の中での密室政治にとどまらず、与野党間の密室談合によっ
て作られたシナリオに沿った国会運営をもたらすことで、その真骨
頂を発揮する。これがいわゆる国対型国会運営、「国対政治」とい
われるものである。そして、政治記者はシナリオーー国会対策委員
会のいわゆるウラ国対で、党利党略の調整の結果まとめたシナリ
オーーを尊重して、そのシナリオにあった記事作り、紙面構成をし
てきた。・・・自民党は国会対策上、重要法案を最終的に会期内に
可決するために、いかにも野党の立場を尊重して五分五分の与野党
対決をしているかのようなシナリオを、野党と談合の上で作る。国
対委員長が、そのシナリオライターであった。政治記者は、そのシ
ナリオを作成する経緯がわかっていても、紙面で暴露するようなこ
とはしない。むしろ、時にはシナリオ作りに加担することさえあっ
たといわれる。このシナリオには、必ず、「審議拒否」が重要な意
味を有する。つまり、白熱シナリオのクライマックスである。・・・
野党は審議に復帰し、法案成立のタイムリミットにぎりぎりで間に
合う。・・・与野党談合、政治記者黙認の共同作業が生んだお決り
の展開が繰り返されていく。」
#(国立大学法人法案の審議では、与野党間は談合はなかったと信
じたいが、参議院文教科学委員会の最後2回の審議では、民主党議
員の質疑内容と態度に、その疑念を抱かせるものがあった。)

p186「 行政とジャーナリズムのとの癒着の最大の場は、つとにそ
の弊害が指摘されている記者クラブ制であろう。記者クラブは、政・
官・業いずれとの間にも存在するが、政治家と番記者との関係に次
いで癒着度が高いのは、官庁記者クラブであるといわれる。長年の
記者クラブと行政官庁との間の歴史の中で、次第に記者の独自取材
や調査報道の力が削がれ、行政官庁のいわゆる「発表もの」に依存
するようになってしまった。「新聞の官報化」は、かねてから指摘
されているところである。」

p192 「癒着によりジャーナリズムが書かないこと、ジャーナリズ
ムの腐敗である。マスメディア自身も国民も「癒着は腐敗である」
との厳しい見方で臨まないと、マスメディアのモラルハザードが進
行する。日本のマスメディアの場合には、ニュースソースとの関係
において、意識的・理性的に選択されたポリシーとしてのオープン
な協力関係と、こうした癒着とがはっきり区別して意識されていな
いために、緊張感が欠けて腐敗を生んでいるのであろう。」

p194 「私が内閣広報官の仕事をしている間に自分自身で感得した
言葉に、"毒をまわす"という語がある。・・・「魂を奪う」とか
「肝を抜く」という言葉は承知していた。「毒をまわす」とは、丁
寧に言えば「ご理解いただき、ご協力を賜る」ということであ
る。・・・毒をまわす手法は、・・・システムとしても形成されて
いる。・・・その最も有効なシステムが「叙勲」をエサに魂を奪い
虜にすることである。そのシステムの典型は、政・官が特に役所を
窓口として、政・官においてこれから実現しようとする政策に対し
て批判勢力になりかねないマスメディアの関係者・評論家・学者や
財界人などを懐柔するための段階的システムである。・・・新聞関
係では、特定の新聞社の社長が新聞協会の会長を順に務めるとになっ
ているが、会長経験者には、勲章、それも勲一等瑞宝章が授与され
るとが慣行として定着しつつある。新聞人にあっては、叙勲を辞退
した人がどれだけいるであろうか。・・・」


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編集発行人:辻下 徹 e-mail: tjst@ac-net.org