数学は「限りがないコト」を無限集合というモノにより捉える戦略を20世紀初頭に採択し大発展しました。その中で、無限の本質にある不定さが、当初はネガティブな雰囲気を伴って姿をあらわしたのですが、その積極的な意義を明らかにしたのが超準解析でした。その誕生から半世紀が経過し、無限集合というモノには頼らずに多くの分野の実質的部分が、厳密かつ直観的議論で簡潔に展開できることがわかってきています。しかし、いまなお超準解析は現代数学の補助手段としてしか認識されていないため不自然な制約があり、新しい数学としての面目躍如というところには至っていません。この講義では、超準数学を「現代数学」とは独立した新しい数学と位置づけ、「限りがないコト」を不定性を保ちつつとらえることが「数学をする」日常においてどのように可能となるかを例示したいと思います。(2012.3.23)