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国立大学法人法案について種々の批判が展開されています。ひっそりと重大な
「罠」も仕掛けられているので、できるだけ多くの人が種々の視点で検討するこ
とが必要です。
たとえば、第11条4項により、国立大学法人は、学部、学科だけでなく大学
をも独自の判断で改廃を決定できる一方、第22条3項によれば、国立大学法人
の業務として「当該国立大学法人以外の者から委託を受け、又はこれと共同して
行う研究の実施その他の当該国立大学法人以外の者と連携して教育研究活動を行
うこと」ができます。この2つを並べてみれば、国立大学法人は大学部門を廃止
し、もっぱら教育・研究を受託して実施する会社として活動することも可能となっ
ています。大学株式会社設立の法的準備が出来ることになっています。
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目 次
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[107-1] 独立行政法人反対首都圏ネットワーク:国立大学法人法案批判
[107-2] 国立大学独立行政法人化阻止全国ネットワーク見解
[107-3] 国立大学法人法案目次
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本 文
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[107-1] 独立行政法人反対首都圏ネットワーク:国立大学法人法案批判
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030307houanbunnseki-syutoken.htm
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国立大学法人法案批判 2003年3月6日
独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局
2月28日、国立大学法人法案(以下、法案)が、国立大学法人法等の施行に伴
う関係法律の整備に関する法律案、独立行政法人国立高等専門学校機構法案、独
立行政法人大学評価・学位授与機構法案など関連5法案とともに国会に提出され
た。言うまでもなく、同日に閣議決定された法案は、その直前の「法案概要」を
めぐる国大協理事会における紛糾に示されるように、国立大学側の了解を得てい
ない。また、法人化をめぐる強い批判・反対があるために国会提出後のこの法案
の帰趨もいまだ定かでない。1.設置形態と国立大学法人の性格
1)設置者としての国立大学法人
法案は、すでに「法案概要」をめぐって議論があったように、調査検討会議の
「最終報告」までの、国立大学を法人とする「直接方式」ではなく、「国立大学」
を設置する「国立大学法人」を設立することとしている(法案2条1項)。
法案がとった「間接方式」によれば、学校教育法上、国立大学の費用負担の第1
次的責任は法人に帰せられることになる(学校教育法5条)。国の財政責任を回
避する意図が込められているといってよいであろう。以下に見るとおり、法人の
自己責任を強化するための財務の仕組みがとられようとしているからである。
また、これも以下に見るように、国立大学法人と国立大学との関係について不明
な点を残すことになった。
2)私立大学よりも強い包括的な大学統制
法案の第2の特徴は、国立大学法人の組織と業務に関して、詳細かつ包括的な
行政的規制を加えていることである。“法人化によって国立大学の運営が自由に
なる”という議論があるが、事態はまったく正反対である。中期目標・中期計画
などを通じた国立大学の官僚的統制は現行システムよりもはるかに強まるだけで
なく、法案の規定する管理運営組織などは、私立学校法が定めるそれよりもはる
かに自由度の小さいものになっている。
3)「大学の自治」の崩壊? −法人と大学−
法案が規定する管理運営組織によれば、法人に設けられる学長・役員会が最終
的な意思決定権限を有し、役員会、経営協議会には学外者を含むことが強制され
ている。かつ、経営協議会と教育研究評議会の審議事項などを見れば、従来、教
授会、評議会が有していた権限は大幅に無力化される。
「大学の自治」は、法案によって崩壊の危機に瀕している。
2.通則法体系に組み込まれた国立大学法人法案
1)通則法の準用 −通則法に準拠した法人法案の骨格−
法案は、独立行政法人通則法(以下、通則法)の39か条の条文を準用するとし
ている(法案35条)。通則法中、特定独立行政法人(公務員型)に関する規定を
除けば、通則法のほとんどの規定が「準用」され、準用されない規定のほとんど
すべてが法案における同等の規定に置き換えられているにすぎない。
後述する国立大学法人に特有の規定を除けば、法案全体の骨格は、通則法その
ものといっても過言ではない。
2)中期目標・中期計画と評価のシステム
法案第3章「中期目標等」に規定される条文は2か条しかない。それ以外の規
定はすべて通則法によるのである。
以下、法案によって準用される通則法の規定を挙げておく。
−業務方法書の大臣による認可(通則法28条)
−年度計画・年度評価:評価委員会による評価と「審議会」(総務省)への報告、
評価委員会による勧告、審議会の評価委員会に対する意見(同31条、32条)
−中期目標期間終了時の事業報告、評価委員会による評価(総合的評定)と「審
議会」への報告、評価委員会による勧告、大臣による検討(業務の改廃を含む)、
「審議会」による大臣への勧告(改廃を含む)(同33条、34条、35条)
以上に見るように、通則法の年度評価・計画、中期目標期間終了時の評価・検
討に関する通則法の規定は、国立大学法人にダイレクトに適用される。再編淘汰
の仕組みがビルトインされているのである。
法案が通則法と異なる規定を置いているのは、中期目標・中期計画の内容と策
定手続きである。しかし、目標・計画の内容に関する規定(法案30条2項、31条2
項)は、教育研究という「業務」の当然の差異を反映したもので実質的な変更は
ないとみてよい。むしろ、業務運営の改善・効率化、財務内容の改善という通則
法と同じ目標が掲げられていることに注目すべきである。
中期目標・中期計画に関して唯一、通則法と実質的に異なりうるのは、文部科
学大臣が中期目標を定める際に、「国立大学法人等の意見を聴き、当該意見に配
慮する」(法案30条3項)とする規定である。国立大学の自主性を尊重するとい
うのが、本来のこの規定の趣旨であったが、当初大学が提出する「原案」を「十
分に尊重する」(調査検討会議「最終報告」)とされていた構想は、「意見」に
「配慮する」だけのものとなった。それだけ、主務大臣が中期目標を独立行政法
人に付与するという通則法に近似するものになった。
要約すれば、大学による「意見」の提出とこれへの「配慮」(法案30条3項)を
除けば、ほぼ全面的に通則法のシステムが貫徹しているといえるのである。言い
換えれば、国立大学法人法案は、国立大学を行政の「実施機関」の如く統制・管
理するシステムである。
3)財務・会計
財務・会計においても、企業会計原則、会計監査人、利益(剰余金)・損失の
処理、財源措置など通則法36条以下の規定が全面的に適用される。財源措置に関
する通則法の規定によれば、「政府は、予算の範囲内において、・・・業務の財
源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額を交付することがで
きる」(通則法46条)とされており、国立学校特別会計の廃止(整備法2条)と
相まって、運営費交付金の額は不確定な要素を多く含むことになる。
法案が、通則法に加えて規定する条項は、以下のとおりである。
−積立金の使用(大臣の承認を受けた金額:法案32条1項)
−通則法45条5項の「個別法に別段の定め」に基づく長期借入・債券発行(法案
33条)
これらを総合すれば、運営費交付金、剰余(積立金)などにおける大臣の裁量が
広く認められることになるであろう。それは、“評価に連動した資源配分”を可
能にする。
さらに注目すべき点は、通則法では原則として禁じられている長期借入・債券発
行が可能とされていることである。これによって、資本市場から資金を調達する
という“企業的経営”の観念が支配的になり、“経営の自立”・公費投入に対す
る削減圧力、評価に基づく再編淘汰の圧力が強まる可能性がある。
4)役員の任免
通則法第2章(役員及び職員)は準用されていないが、これに対応する法案の条
項(法案10条以下)は、法人の長・監事・その他の役員、役員の職務・権限、大
臣による長と監事の任免、解任事由などに関し通則法の規定とほぼ同様の内容の
ものになっている。
法案において、唯一通則法と実質的に異なるのは、法人の長の任命・解任に関
し、大学法人・学長選考会議の申出(法案12条、17条4項)が必要とされる点で
ある。これについては後にまたふれる。
3.国立大学法人法案と大学の特性
1)大学の特性
法案3条は、法律の運用において「教育研究の特性に常に配慮しなければならな
い」と規定する。通則法3条3項に独立行政法人の「業務運営における自主性」に
配慮しなければならない、という規定があるから、この規定がどの程度実質的な
意味をもつか不明である。しかし、法案が、大学の特性に関連して、独自の規定
を有していることは明らかである。法案は、独立行政法人一般ではなく、大学に
特殊な規制を加えている。
2)通則法に対する特則
前項で見たように、法案は、以下のような通則法と異なる規定をもっている。
−学長任免における学長選考会議の申出
−中期目標についての「意見」への配慮
しかし、これらがどの程度大学の自主性を保証しうるか定かでない。
学長選考会議(法案12条2項)は、経営協議会から選出される学外委員と教育研
究評議会から選出される委員とが同数で構成され、場合によって学長・理事を含
むことができるとされているからである。学外者の役員・委員の役割がきわめて
高くなっており、これまでの教員による全学投票を慣行としてきた伝統的自治と
の差異は大きい。また、学長解任事由とされる「業績悪化」の規定(17条3項)
は、通則法とまったく同じであり、業務の効率、財務事情などが解任事由になり
うることを意味している。
後者の中期目標策定における大学の「意見」への配慮義務も前述のように法案
の立案過程で弱められてきた。文部科学大臣の権限が強化されているのである。
さらに、現下の中期目標・中期計画作業の実情を見るなら、大学が自主的に作成
する中期目標・中期計画という考え方はほとんど形骸化する可能性が高いといえ
る。
3)国立大学法人に特有の管理運営組織
国立大学法人の内部組織についての詳細な規定は、通則法に見られない法案の
特徴である。通則法による独立行政法人であれば、内部組織はより自主的に定め
ることができるはずである。すなわち、法人法案は、国立大学を統制するための
法律であるといいうる。
−学長および役員会の権限
法案において、学長・役員会の権限は異様に強化されている(法案11条2項)。
私立学校法における業務の決定に関する規定が「理事の過半数」(同法36条)と
していることと比較しても特異である。さらに、学長の決定権限が明示されてい
ることとの関係で、経営協議会や教育研究評議会の権限がどのような性質のもの
になるか不明である。
−学外者役員の必置
文部科学大臣が任命する監事、学長が任命する理事には学外者が含まれなければ
ならない(法案14条)。理事は、法案12条7項に規定する者のうちから任命され
なければならないとされている(法案13条1項)が、学外者の理事に期待されて
いるのはおそらく、財務・人事に関する民間の経営専門家であろう。企業会計原
則の採用や債券発行の可能性、職員の非公務員化などに対応するために、これら
の学外専門家が導入される可能性は高い。
−経営協議会と教育研究評議会
経営協議会(法案20条)、教育研究評議会(法案21条)は、国立大学法人内の経
営と教学を分離し、「経営」における学外委員を優位させる、という特徴をもっ
ている。言うまでもなく、これは、教員の発言権を狭い「教学」の分野に閉じ込
め、「経営」から排除することを意味する。さらに、両機関の審議事項から「当
該国立大学、学部、学科その他の重要な組織の設置又は廃止」(法案11条2項、
役員会の議決事項)が排除されている点に注目すべきである。大学内の教育研究
組織の再編が「トップダウン」で行われる可能性があるということになる。
教育研究に密着したこうした問題について教授会の権限、教育研究評議会の権限
が失われるとすれば重大な問題である。
−部局の地位
首都圏ネットワークが公開した法案(骨子素案)に規定されていた「学部及び研
究科等」に関する款が法案では全体として脱落した。学部、研究科、付置研究所
等を文部科学省令で定めるとした規定がなくなったために、国立大学法人は省令
によらず、法人の判断で学部等の改廃をなしうることになるものと思われる。法
人の「経営」判断による学内の教育研究組織の再編成を促すねらいがあると思わ
れる。
−不明な「国立大学」の組織
法案は、「国立大学」を設置する「国立大学法人」の組織を規定するのみで、国
立大学の組織について規定するところがない。後述するように国立学校設置法が
廃止されるので、学校教育法が国立大学を規制することになる。学校教育法によ
れば、大学の重要事項を審議するために教授会を置かなければならない(学校教
育法59条)が、教学事項を含めて国立大学法人の組織に審議・決定権限が移行す
るために、教授会に関する規定は形骸化されるおそれがある。
4)財務:企業化する大学「経営」
前述したように、国立大学法人の財務は、通則法を基礎としつつ、いくつかの
特例的な規定によって規律される。あらためて国立大学法人の財務の特徴を要約
すれば、それは、国立大学の企業化ということになるであろう。
まず、運営費交付金における大臣の裁量、評価に基づく配分は、評価制度と相まっ
て、国立大学法人の財務的な「自立」への志向を強化するであろう。
債券発行は、全体としての大学法人の財務を企業的な経営に巻き込む可能性を高
め、さらに、債権管理会社(法案33条7項)の大学「経営」に対する発言権を強
める可能性をもっている。債券発行による自己資本の調達は、おそらく、産学連
携、ベンチャービジネスへの出資など(法案22条5号、6号)を中心的な目的とす
るものになるであろう。
5)国立大学の企業化としての大学の特性
要約すれば、法案が意識している「教育研究の特性」とは、つぎのようなものに
ほかならない。①通則法と異なり、大学の「自主性」に一定度配慮すること(中
期目標「意見」への「配慮」、学長任免の申出)、②しかし、その「自主性」は、
大学の自由を意味しない(詳細な法律による管理運営組織の規定)。③法律に定
める管理運営組織は、学長・役員会の権限の肥大化(トップダウン)、学外者の
発言権の強化によって伝統的な「大学の自治」・「教授会の自治」を破壊し、④
トップダウンの「経営」は、産学連携、大学の企業化を実現するためのメカニズ
ムになっている。
4.現行の国立大学法制との乖離
1)教授会自治の消滅?
学校教育法59条と国立学校設置法の規定によって、現行の国立大学の管理運営組
織は、教授会を基礎として、評議会によって全学的意思決定をするシステムになっ
ている。学外者を含む運営諮問会議が置かれているが、これは諮問的な権限しか
もたない。
国立学校設置法の全面廃止(整備法2条)によって、現行のシステムは法的には
消滅することになる。とりわけ、法人と大学が分離されたことによって、大学に
置かれる教授会と法人に置かれる諸機関との関係は形式的には分断されることに
なる。しかし、法人の諸機関が教学に関する事項を含めて大学の重要事項を決定
することになるため、教授会に残される権限がどうなるかまったく不明である。
なお、文科省が法案とともに公表した「参照条文」から学校教育法59条は脱落し
ている。
2)教育公務員特例法の不適用
教育公務員特例法の改正(整備法案6条)によって、国立大学・国立学校の教員
等は適用対象から全面的に排除される。教特法は、内容からすれば公立学校・公
立大学の教員等のみを対象とするものに変わる。法人法案による非公務員化(法
案附則5条)に対応するものである。教特法3条が廃止される結果、「国立大学」
の教員等が公務員身分を有するという規定も失われた。
教特法の身分保障に関する規定は、「学問の自由」を保障するためのものと理解
されてきたから、この教特法改正は重大な意味をもっている。
教特法の趣旨は、就業規則で定めるというのが調査検討会議「最終報告」の見解
であったが、法案によれば、人事に関する規則は経営協議会の審議事項とされ
(法案20条4項)、他方、教育研究評議会の審議事項に「教員人事に関する事項」
が掲げられてはいる(法案21条3項4号)ものの、教育研究評議会の権限が「審議」
にとどまることを考えると、なお予断を許さない。
3)教育基本法
教育基本法10条は、教育行政の目的を条件整備に限定し、教育の政治的権力から
の独立性を保障しようとするものである。法案の、教育研究の内容にまでかかわ
る中期目標を大臣が付与し、中期計画を認可するという仕組みは、この教育基本
法の規定に反する。法案は、教育基本法の形骸化に先鞭をつけるものとなる。
他方、法人法案と平行して教育基本法「改正」問題が生じている。法案は、教育
基本法「改正」とともに、基本法的な教育のあり方を根本から変える可能性をは
らんでいる。
5.国立大学の行方
最後に、法案がめざす国立大学のあり方を要約しておこう。
1)国家統制の強化と官僚的業務の肥大化
通則法との関連でふれたように、法人法案の最大の特徴は、国家統制を強化す
ることにある。中期目標・中期計画、年度計画、国立大学法人評価委員会と総務
省「審議会」による評価、中期目標終了時の総合的評価と検討などの制度は、こ
れまでの国立大学にはまったく存在しなかった。これらの仕組みを通じて、国立
大学の運営に対する行政的な統制が強まるだけでなく、教育研究内容にまで及ぶ
統制が可能になる。さらにそれだけでなく、これらの計画、評価などのための官
僚的業務が膨大に膨れ上がる可能性がある。法人法案は、世上流布されているよ
うに「国立大学の自主性を高める」ものではなく、その反対である。
さらに、前項までにふれなかったが、役員数の増加(法案附則別表第一)によ
る財政支出の増加など、財政的に見ても効率がよいわけではない。こうした費用
を既存の予算から賄うとすれば、研究教育経費がそれだけ削減されることになる。
そして、研究教育経費の確保を目的として、安易な授業料引き上げが行われるこ
とになる。
2)学外者の影響力による大学「経営」
他方、大学の管理運営組織は、一方で教員集団から「経営」権限を分離するとと
もに、学外者の発言権を強める構成をとっている。大学運営のあり方、予算の配
分、教育研究組織のあり方などが、教育研究に責任をもつ教職員によってではな
く、これから分離された「経営」担当者によって決定される仕組みになっている
のである。
大学発ベンチャーへの投資、研究成果の特許化、これら企業的事業への投資のた
めの債券発行など、文字通り企業的な経営が大学の重要な事業になる可能性が高
い。「遠山プラン」が展望した国立大学のこうした企業化を担うために学外者の
能力と経験が必要とされているのである。けっして、「社会」一般の意見を大学
に反映させることが目的ではない。
3)大学の「企業化」と教育研究
このような管理運営組織は、教育研究の本来的なあり方という視点からではなく、
「経営」の効率性やパフォーマンスの視点から大学を運営するという事態を帰結
する可能性が高い。
法人化問題が生起して以来たびたび強調されてきた基礎研究の軽視や人文科学研
究の衰退という危惧が現実化する可能性がある。
法案は、私立大学を含む大学の教育研究のあり方、日本の文化のあり方に大きな
負の影響を与える可能性が高い。こうした大学の変化によって最も深刻な被害を
こうむるのは、学生・院生であり、国民である。
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[107-2] 「大学の教育・研究を文科省の「許認可事項」にしてはならない」
国立大学独立行政法人化阻止全国ネットワーク見解
http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet/kenkai030310a.html
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大学の教育・研究を文科省の「許認可事項」にしてはならない
— 国立大学法人法案についての見解 —
国立大学独法化阻止全国ネットワーク
事務局長 豊島 耕一
世話人 白井 浩子
辻下 徹
野田 隆三郎
橋本 修輔
「説明責任」に背く文部科学省
政府は去る2月28日の閣議で,国立大学を「独立行政法人」(行法化と略)
に変えるための国立大学法人法案を閣議決定した.これは,独立行政法人との違
いは名称のみに過ぎず,むしろ,学長への過剰な権限集中など,その有害さはよ
り重大である.すなわち,97年の文部大臣の次の指摘はそのままこの法案によ
り一層当てはまるものとなっている.
「文部大臣が3〜5年の目標を提示し,大学がこれに基づき教育研究計画を
作成,実施する仕組み,及び計画終了後に,業務継続の必要性,設置形態の
在り方の見直しが制度化される仕組みは,大学の自主的な教育研究活動を阻
害し,教育研究水準の大幅な低下を招き,大学の活性化とは結びつくもので
はない」
文部科学省は,なぜこのわずか数年前の自らの見解に反する法案を提出したの
か,この見解は誤りであったのか,今日に至るまで何らの説明もしていない.い
やしくも教育・文化に関わる官庁がこのように「説明責任」を全く無視した態度
をとるのであれば,その存在の意味さえ疑われるであろう.同様の批判は,今で
も「独立行政法人通則法に基づく法人化に反対」のはずにも関わらず行法化を推
進している国大協にも当てはまる.
戦前にもなかった「官」から「学」への命令制度
行法化とは,政府自身の説明[1]によると,行政機関を企画部門と実施部門に
分離し,前者を中央官庁に移し,後者だけを「独立」させるというものである.
この制度における「中期目標」とはその「企画部門」による「立案」に相当する.
このように,政府によってその目標を決められるような団体が独立した法人格を
持つなどとは到底言えないであろう.またそもそも大学は行政機関ではない.こ
のような制度を大学に当てはめることは,単に不適切というだけでなく,教育へ
の「不当な支配」を禁止した教育基本法10条や「学問の自由」とそのための
「大学の自治」を認めた憲法23条に違反する.
「国立大学法人」制度,すなわち独立行政法人制度における「中期目標」とは
要するに「官」すなわち文科省による大学への命令である.それを命令として有
効たらしめるのは,その法的強制力はもちろん,政府による達成度評価で予算が
コントロールされることであり,さらには大臣による廃校に関する権限[2]であ
る.またこれは,大学が作成を義務づけられる「中期計画」の文部科学大臣によ
る認可制によって細部まで徹底される.しかも後者に関しては罰則まで用意され
ているのである[3].このような「官」から「学」への命令制度は戦前の日本に
も存在しなかったものである.
憲法と教育基本法に違反
「中期目標」として挙げられている項目の第一には「教育研究の質の向上に関
する事項」が挙げられているが,これを「教育研究の内容」と区別することは困
難である.したがって大学にまで「教科書検定」や「学習指導要領」が押しつけ
られても不思議ではない.このような危険な制度が憲法23条に違反することは
あまりにも明白であろう.
教育基本法10条に違反するという事実も見逃してはならない.この条文の前
段は「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つ
て行われるべきものである」と規定している.「不当な支配」が何を意味するか
については,これを制定した第九二回帝国議会における辻田文部事務官の答弁が
参考になる.それによると,「従来官僚とか一部の政党とか、その他不当な外部
的干渉と申しますか、容喙と申しますかによって教育の内容が随分ゆがめられた」
ことを排するため,「教育権の独立・・・の精神を表した」ものであると述べて
いる[4].文部科学省から大学への命令制度は官僚支配そのものであり,10条
違反はあまりにも明かである.
たしかに国立大学に対する官僚支配は従来もあったが,その多くは法的根拠が
ないだけでなく,教育基本法10条や旧文部省設置法6条2項に反する違法なも
のであった.「国立大学法人法」はこの支配に法的根拠を与えるものである.
「学問の自由」に対するもう一つの脅威は,この法案が職員の雇用形態を「非
公務員型」としていることである.これは,単に雇用の不安定化を意味するだけ
ではなく,国立大学の教員が教育公務員特例法による保護を失うことを意味する.
この法律は,国公立大学に属する教員の人事への,行政も含む外部権力の介入の
余地をなくすことで,学問の自由を守っている.この法律の適用対象は国公立学
校であるが,実質的には私立学校における雇員の労使関係にも影響を与えている.
「非公務員化」は大学におけるこの法律の対象の大半が消滅することを意味し,
国立大学教員の権利の問題にとどまらず,この法律そのものの空洞化につながる
恐れがある.また,事務職員にとっても,公務員としての地位を正当な理由もな
く奪われることは到底受け入れられないことであろう.
大学自治の否定
憲法23条が間接的に保障する「大学の自治」は,管理運営部門への学外者の
大量導入と,学長独裁制とも言うべき学長への権限集中によっても破壊される.
学長の権限は,「法人」と「大学」両者の長を学長が兼ね,またそれらの管理部
門の任命権をほとんど独占することでグロテスクなまでに肥大化している.これ
と比べられるのは独裁国家の政治システムか,あるいはカルト教団における支配
構造だけであろう.また学長への異様な権限集中は,法案第二条によって「法人」
と「大学」が言葉の上では分離されているにも関わらず,事実上これらが一体化
されていることをも意味する.
この「法人」と「大学」の,つまり経営と教学の形式上の分離と事実上の一体
化により二つの問題が生じる.一つは,大学の設置者を「法人」としたことは国
の財政責任の放棄を意味する点である.これは,高等教育において「諸条件の整
備確立」の義務を抛棄する点で,すでに述べたのとは別に意味で教育基本法10
条に背くものと言えよう.授業料の値上げは必至であろう.二つには既存の「学
校法人」の制度への悪影響がある.法人制度の長い歴史を持つ私立学校において
は,経営と教学とが原則的に分離され,それによって恣意的,独裁的な学校経営
を防止する制度と文化が創られているが,これらの事実上の一体化はこれを蝕む
ものと言わなければならない.
法案における「法人」と「大学」の関係の混沌ぶりは,22条の「業務の範囲」
にも表れている.その第3項に「当該国立大学法人以外の者と連携して教育研究
活動を行うこと」とある.大学すなわち「学校」ではなく「法人」自身による研
究教育活動を可能にした狙いは何であろうか.あるいはこれは「混沌」ではなく,
営利目的の教育研究活動を展開する「大学株式会社」への道を示したものであろ
うか.
「法人」と「大学」の一体化の重大で実質的な悪影響は,教育研究評議会にお
いて顕在化する.この機関は,名称からも審議内容からも実質的には「教学」に,
つまり「大学」に属するべきものと考えられるが,これを規定する21条は「国
立大学法人に(中略)教育研究評議会を置く」とあり,「法人」に属するものと
なっている.このため教育研究活動についても,「大学」よりも「法人」で行わ
れるものが優先されることになろう.何れにせよ「大学」に代わって「法人」は
「高等教育機関」の役割を果しはじめるのであるが,しかし「高等教育機関」に
本来求められる重要な役割は果たせないであろう.
実際,例えばユネスコの高等教育世界宣言[5]が求めるような社会的発言をこ
の機関やメンバーが行ったとすれば,役員は最高20万円の罰金を払わなければな
らないだろう.なぜならこれは法人の「業務リスト」にはないからである.因み
にユネスコの宣言二条b項には次のように書かれている.
「高等教育機関およびその職員と学生は」「社会が必要とするある種の学術的権
威を行使することによって、倫理的、文化的および社会的問題について完全に独
立に、そしてその責任を十分に自覚して発言する機会を与えられ」るべきである.
また,この機関に与えられる「重要事項」の審議権と,学校教育法で規定され
た教授会が持つ同じ権限との間の優劣関係も不明である.もし新しい法律が優位
とされれば,良かれ悪しかれこれまで「大学自治」の中心となってきた存在が失
われることになる.
国策と産業界への従属
上に見たように行法化が現行法体系に基本的に反するということ,そして「学
校法人」制度の慣行を破壊するものでものであることは,この制度の致命的な欠
陥である.同時にこれは国立大学の研究活動そのものにも破壊的な影響を与える.
そしてこのことはすでに多くの国立大学関係者によって指摘されている[6].
すなわち,文部科学省による命令制度と,政府がレフェリーとなる大学間,教
員間の「競争」,それに大量の学外者の決定への関与によって,大学は国家と産
業界のための道具とされる.そして,わが国の産業のグローバルな市場での競争
のための知的資源として動員され,大学の自主性はおろそかにされるであろう.
大学の知的活動が経済や産業に寄与することを期待されるのは当然であるが,大
学の中心的な使命とのバランスを欠いた「動員」とも言うべき政策は,学問の均
衡の取れた発展を妨げ,また大学独自の価値と文化を破壊しかねない.「法人」
自身による独自の教育研究活動の展開を可能にした22条は,「大学」側の教育
と研究を痩せ細らせ,それを「法人」側に振り向けることで,この「動員」の重
要な梃子となるかも知れない.
この他にも,学長の任命権だけでなく解任権までも文部科学大臣が握ること,
諸合議体に与えられた封建的,時代錯誤的な枠組みなど,その官僚的な醜悪さは
枚挙にいとまがない.また,学長・監事の文部科学省による任命制と「役員」職
の大量発生が多くの「天下り」を生み,政府の言う「行革」にも反する結果を招
くことは,先行の独立行政法人の経験からも明かである.
廃案が唯一の「対案」
このような「国立大学法人法」は廃案にすべきであり,いかなる修正によって
も「改革」に価するものにはなりえない.上に述べたように,この制度は教育基
本法10条を空文化するものであるため,もし成立するようなことがあれば,政
府が目論む教育基本法「改正」の露払いとなるであろう.決して大学だけの問題
にはとどまらないのである.
どのような改革が必要なのか
大学において改革すべきものはさしあたってその「制度」にあるのではない.
制度改革は書類と会議を量産するのみで,文部科学省という,書類がないと仕事
にならない役所のための「公共事業」に過ぎない.このことは,90年代の「大学
改革」がもたらした大学全体の広汎な荒廃によってすでに証明されている.
本当に改革すべき問題は「ソフト」にある.文部科学省のいかなる審議会も
「学生参加」について述べることはない.また,権力者や著名人ではない,普通
の市民の大学への発言権について語られることもない.しかしこれらのことにこ
そ現在の大学がかかえる問題を解決する鍵があると思われる.
当事者とメディアの責任
国立大学の関係者の方々は,「中期目標」の検討などこれまでの行法化を仮定
した「相対的」な活動は活動として,法案提出という此の期に臨んでは,この法
案についての当事者としての「絶対評価」を正直に述べていただきたい.それは
国民と国会の正確な判断のためには不可欠であろう.特に,著名な研究者の方々
は,その名声に伴う社会的責任,すなわち「ノブレス・オブリージュ」に応えて
いただきたい.教育者・研究者のかけがえのない財産である「学問の自由」が危
機に瀕しており,これを「消費」するだけでは許されないと思われる.
また,マスメディアの方々は,ともすると官庁の発表をそのまま繰り返すだけ
で,この制度の問題点を無視し勝ちであったこれまでの報道姿勢を改め,真に公
平な態度でこの問題を扱っていただきたい.
最後に,この法案準備のために多大の労力を費やされたであろう文部科学省の
職員の方々に申し上げたい.あなた方の労力がまさに大学とその文化を破壊する
ために使われようとしている.国から大学への命令制度,それも教育・研究の内
容にまで踏み込み兼ねない命令制度という,戦前にさえなかったものをあなた方
は導入しようとしているのである.五年後,十年後に弊害が明らかになった時,
あなた方はどのように責任をとられるのだろうか.どうか今からでも引き返す勇
気を持っていただきたい.引き返すことは地を覆えすように無理に見えても,組
織の論理に一人が疑義を述べることが流れを変えることは有り得る.文部科学省
にも勇気ある方々が少なからずおられることを信じる.
独法化阻止全国ネットワークは,あらゆる人と対話し,また他のあらゆる努力
によってこの法案の成立を阻止するものである.
2003年 3月 10日
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註
[1] 参議院行革・税制特別委員会,1999年12月3日午前10時30分より持永
総務庁政務次官 「独法は企画調整部門と実施部門を分離する。一般的か整理さ
せてほしい。」
http://www.kokko-net.org/kokkororen/t9912-02.htm
YomiuriOn-Line 大手町博士のゼミナール 導入半年の独立行政法人
大手町博士
「国の行政組織の中は、政策を決める企画部門と決まった政策を実施する部門に
分けることができる。独立行政法人は実施部門の効率化を進めるために作られる
組織なんだ」
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/dr/20011016md01.htm
[2] 通則法35条が準用される.
[3] 40条6項
[4] 中谷彪編著,「資料 教育基本法の成立過程」, 発行 株式会社タイムス,
1985年または,レジュメ「教育基本法 第十条の条文の成立過程」参照
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/Education/edulaw-art10.html
[5] ユネスコ高等教育世界宣言「21世紀の高等教育 展望と行動」,1998年.
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/AGENDA21.htm
[6] 例えば1999年の「国立大学理学部長会議声明」参照.
http://www.sci.nagoya-u.ac.jp/991110.html
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[107-3] 国立大学法人法案目次
http://www.mext.go.jp/b_menu/houan/an/030202c.pdf
text: http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/030228hiuanhou2.htm
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第一章 総則
第一節 通則(第一条〜第八条)
第二節 国立大学法人評価委員会(第九条)
第二章 組織及び業務
第一節 国立大学法人
第一款 役員及び職員(第十条〜第十九条)
第二款 経営協議会等(第二十条・第二十一条)
第三款 業務等(第二十二条・第二十三条)
第二節 大学共同利用機関法人
第一款 役員及び職員(第二十四条〜第二十六条)
第二款 経営協議会等(第二十七条・第二十八条)
第三款 業務等(第二十九条)
第三章 中期目標等(第三十条・第三十一条)
第四章 財務及び会計(第三十二条〜第三十四条)
第五章 雑則(第三十五条〜第三十七条)
第六章 罰則(第三十八条〜第四十一条〉
附則
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独立行政法人化批判サイト
独立行政法人反対首都圏ネットワーク
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nettop.html
国立大学独法化阻止 全国ネットワーク
http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet.html
大学改革を考えるアピールの会
http://homepage2.nifty.com/~yuasaf/appeal/index.html
国立大学独立行政法人化の諸問題
http://ac-net.org/dgh/
ミラーサイト: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org (tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp)
関連ページ:http://ac-net.org/dgh/
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End of Weekly Reports 107