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国立大学独立行政法人化の諸問題
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国立大学独立行政法人化問題週報
Weekly Reports No.82 2002.2.11 Ver 1.01
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-82.html
総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
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目 次
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[82-0] 内容紹介
[82-0-1] 非公務員化の問題点
[82-0-2] 公務員型独立行政法人化の問題点
[82-0-3] 公務員制度改革大綱の問題点
[82-0-4] 国立大学ML
[82-1] 「非公務員型化」問題をめぐって
[82-1-1] 首都圏ネットワーク事務局:法人化問題をめぐる現情勢について
[82-1-2] 連絡調整委員会配付資料「非公務員型に関する意見」
[82-1-3] 「非公務員型を主張するセクタの偏りを見て思うこと」
[82-1-4] 国立大学教職員組合委員長連名「国立大学職員の『非公務員化』に反対する」
[82-1-5] 東大職員組合から国立大学教職員組合への連名参加呼びかけ
[82-3] 公務員制度に関する資料
[82-3-1] 川村祐三「独立行政法人の職員」より「「国家公務員の身分」とは何か」
[82-3-2] 公務員制度改革大綱:平成13年12月25日閣議決定
[82-3-3] 教育公務員特例法 抜粋
[82-3-4] 政治活動の意味:国家公務員法・人事院規則・人事院規則の運用方針
[82-3-5] 教育基本法
[82-3-6] 国家公務員の身分を与えない独立行政法人の職員の地位等
[82-4] ■ 全国ネットワークから文部科学大臣への公開質問状
[82-5] 国立大学MLの紹介
[82-6] 「パートタイム大学生」制度への意見提出の勧め
[82-7] 大学の法人化問題シンポジウム
[82-8] その他目次(国立大学独立行政法人化問題のお知らせ欄より)
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[82-0] 内容紹介
[82-0-1] 非公務員化の問題点
文部科学省の国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議の最終報告
で「非公務員型」独立行政法人化が結論になる可能性が高くなっている。
最終報告に向けて、調査検討会議連絡調整委員会が定期的に開催されている。
第2回(1月25日)配付資料「法人化後の職員の身分に関する主な意見」の
中に、7団体2政党2新聞による非公務員型を是とする主張を掲載する一方、
公務員型を主張する意見としては全大教のもののみを挙げ、「その他」として
国大協のパブリックコメントと提言の2件を掲げている。非公務員型を主張す
る9団体の名簿を見ると、少人数の意見を水増したものであることが歴然とし
ており、「結論が先にある」ことを示す資料となっている[82-1-2]。
独立行政法人は、国家業務外部化(アウトソーシング)という設計趣旨から
すれば本来非公務員型なのだが、設立時に「特定独立行政法人」という種類が
導入された。それが「公務員型」と呼ばれているものである。導入理由は、移
行時の労使間摩擦を減らすためであった、とも言われている[82-3-1]。これま
で独立行政法人化した国家機関の大半は特定独立行政法人である。もっとも、
法人化後に任用された職員には公務員身分を与えないなども可能であり、短期
間に本来の独立行政法人に移行することが予想される[82-3-1]。
「非公務員型独立行政法人化」することがなぜそれほどまでに重要なのか?
最大の「効果」として「教育公務員特例法」[82-3-3]が自動消滅することが
ある。この法律は、教員の任免権を評議会に与え、評議員(≒部局長)は教員
が選ぶことを規定している。産業界の窮状に対し国立大学が無関心なのはこの
法律のせいだ、という意見が少なくない。しかし、教育公務員特例法廃止によ
り、教育基本法第6条[82-3-5]が言う「教員身分の尊重と待遇の適性」の配慮は
各大学の「私法」に委ねられることになる。
財政誘導を通して、多額の研究費を要する実験分野への行政の影響力は強ま
り「大学の自治」は形骸化してきた。しかし、教員任免において教育・研究と
は無関係な価値基準が介入することを禁ずる教育公務員特例法は、行政の影響
力を間接的なものとしているだけでなく、短期間に変化する社会のニーズに即
応することによって、「普遍的知」を深める機能を大学が失うことを防いでい
る。
大学の教員任免の現状に問題があるとすれば、その解決は「教員人事」のシ
ステムの改善にしかない。教育公務員特例法を廃止し、評議会からも人事権を
奪い、教員以外の者が教員の任免権を持つようにすれば、問題は悪化するだろ
う。それだけではない。教育・研究に従事したことのない「有識者」(企業経
営者または官僚が主となるであろう)が学外から強い権限を持って大学運営に
加わることは、社会のニーズに即応した国家政策に応じて大学を改変すること
になり、(これまでも何度も起こったように)政策が見当外れなものであった
ときの国家的ダメージは測り知れないものがある。政策の変更に応じて大学の
研究・教育体制を「機動的」に変更するシステムは、教育・研究の生理を無視
したもので、機能しない。
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[82-0-2] 公務員型独立行政法人化の問題点
一方、公務員型独立行政法人化ならば、独立行政法人化する必要は認め難い。
最近の文部科学省の大学政策を見る限り、今の国立大学制度でできない大学改
革はない、と言ってよいだろう。大学評価機構は動きだし、COE(トップ3
0)で大学間の競争は動き始めている、さらに統廃合も文部科学省の指導の下
で実現しつつある。独立行政法人化には膨大な人的・財政的資源が費やされる。
独立行政法人化には、国立大学が使用している不動産の登記と評価作業だけで
数千億の費用が必要であるという[82-8-15]。独立行政法人化後は、独立行政
法人会計基準に基づく経理の他に、今まで通りの公会計も併行して行われると
いう。公務員の数を見せかけ上減らす以外のメリットは、2年を経過し大学改
革が進行した今、全くなくなったと言えるだろう。
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[82-0-3] 公務員制度改革大綱の問題点
現行国家公務員法は、日本国憲法の定める「全体の奉仕者」としての公務員
制度を実現するために、国民のために「公務の民主的かつ能率的な運営を保障
する」(国家公務員法1条)ことを基本理念とし、官吏・雇員・傭人という官
庁内部の身分制を撤廃し、成績制度を基礎として、公務員の人事行政の政治的
中立性を確保するためのものであるという[82-3-1]。
改革大綱[82-3-2]の内容は問題が多い。上級幹部職員の「集中育成期間」を
設け「能力評価及び業績評価に加えて、職務遂行状況や育成状況を把握し、集
中育成の対象としての適性を厳正に評価した上で、集中育成対象とすることが
不適当であると認める職員はその対象から外すものとする。」とある。これは、
行政硬直化の元凶と認知されている中央省庁官僚の権限と閉鎖性を強めるもの
であろう。このような改革を、マスメディアはなぜ申し訳程度にしか批判しな
いのだろうか。官僚からのリーク情報を報道することにジャーナリズムが退化
しているわけではあるまい。日本の病を悪化させる「公務員改革」を看過しな
い報道活動を望みたい。
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[82-0-4] 国立大学ML
大学社会全体が共有する大学関連情報が、ジャーナリズムを介して伝えられる
文部科学省からのリーク情報に限られている現状を改善するために、メールを
用いた情報交換の試行を開始した。この週報の要約を含め、種々の情報や意見
を約9200名の教職員に配信している(例[82-5])。急速に大学情勢が変化
している今、情報の偏在を解消することが急務である。なお登録受付は ac.jp
ドメインアドレスに限定している。
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