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国立大学独立行政法人化問題週報

Weekly Reports  No.86 2002.3.25 Ver 1.1

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-86.html
総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━               目   次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-0] 内容紹介  [86-0-1] 大学評価公表により露呈した独立行政法人化の問題点  [86-0-2] 文部科学省を囲んだ人の輪  [86-0-3] 「大学システムの改革に関する研究会」有志の提言の意図への疑念  [86-0-4] 国立大学法人化の現実的不可能性  [86-0-5] 黒川放談の盲点  [86-0-6] 大学改革における「時間」コスト [86-1] 大学評価機構の評価公表について2002.3.22  [86-1-1] 報道記事 2002.3.22/23  [86-1-2] 報道記事についてのコメント  [86-1-3] 国大協第8常置委員長から大学評価機構への申し入れ(2002.3.1) [86-2] 文部科学省を囲んだ人間の鎖  [86-2-1] 写真記録:170名の人間の鎖が完成ー「最終報告」の撤回を!  [86-2-2] 3月22日文部科学省前行動 報告  [86-3] 高等教育フォーラムの1週間を振り返って  [86-3-1] 2002年03月09日 4300 大学教員が砂に見える高所からの大学改革  [86-3-2] 2002年03月17日 4405 再編統合による大学の個性喪失について  [86-3-3] 2002年03月18日 4409 教育の現場への競争原理導入について  [86-3-4] 2002年03月18日 4412 大学の足腰の弱さの懸念  [86-3-5] 2002年03月18日 4415 国立大学批判への質問  [86-3-6] 2002年03月20日 4435 独立行政法人化した研究所の現状  [86-3-7] 2002年03月21日 4450 民主的かつ迅速な合意形成法   [86-3-8] 2002年03月22日 4461 黒川提言2000.10について  [86-3-9] 2002年03月22日 4465 私立/国立という不毛な線引き  [86-3-10] 2002年03月23日 4477 「基本大学法(試案)」の提言」など  [86-3-11] 2002年03月23日 4485 黒川放談の問題点 [86-4] 中教審第3回2002.3.13 基本問題部会(資料目録)  [86-4-1] 教育振興基本計画(柱立て)<素案>  [86-4-2] 教育振興基本計画の主な枠組みについて(検討メモ2002.2.25)  [86-4-3] 中央教育審議会基本問題部会委員名簿  [86-4-4] 第2回2002.2.25「議事録」 [86-5] 声明・公開質問書・交渉申し入れ等  [86-5-1] 3.22 国立大学学長に申し入れ:26大学教職員組合  [86-5-2] 3.22 調査検討会議に交渉申し入れ:25大学教職員組合  [86-5-3] 3.15 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局声明  [86-5-4] 3.14 名大学長への公開質問状 名大職員組合中央執行委員会  [86-5-6] 3.14 名古屋大学教職員組合中央執行委員会 見解  [86-5-7] 3.14 宮崎大学教職員組合から宮崎大学学長への要望  [86-5-8] 3.10 全国大学高専教職員組合第25回臨時大会決議 [86-6] 記事・意見等  [86-6-1] 大学システム改革への提言 「大学システムの改革に関する研究会」有志  [86-6-2] 黒川清「21世紀の研究システムの再構築−求められる価値観の転換−」  [86-6-3] ◆国立大の値段は? 法人移行控え資産計算に難問(朝日 2002.3.2)  [86-6-4] 「ムルアカ氏の奨学金問題の本質」(国立大学付属病院教官 2002.3.19)   [86-6-4-1] 文部官僚、鈴木氏秘書ムルアカ氏に私大講師の職を紹介(朝日 2002/03/15)   [86-6-4-2] cf:参議院予算委員会3/12(ムルアカ氏研究奨励金問題)  [86-6-5] 団藤保晴氏の論説に対するコメント(竹田保正氏 2002.3.02)  [86-6-6] 「国連大学:「融資」と「学問の自由」の危い関係」(2001.5.21)  [86-6-7] 黒木玄氏サイト「大学院“改革”が悲劇の出発点になった」(2001.10.14) [86-7] IDE 2002年2月号<私の大学改革論ー現場からの発言>  [86-7-1] 伊丹敬之「資源投入と役割を考える」p5-8  [86-7-2] 草原克豪「政府と大学との関わり方を問う」p9-13  [86-7-3] 広田照幸「「時間」コストに配慮した大学改革を」p45-48 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-0]     内 容 紹 介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-0-1] 大学評価公表により露呈した独立行政法人化の問題点  大学評価・学位授与機構が昨年度に行った国立大学評価結果を公表した [86-1-1]が、国立大学協会第8常置委員会の詳細な調査により評価行為の杜撰 さが明らかになっている[86-1-3]。同委員会から大学評価機構へ種々の問題点 を指摘し改善を要求した3月1日の公開申し入れ書に回答することもなく、杜 撰な評価結果の公表に踏み切ったことは、同機構には「評価行為の正確さ・公 平さと評価方法の絶えざる改善への関心」が欠如していることを示したもので あり、同機構に対する大学社会全体の信頼を著しく損った。それだけでなく、 国立大学独立行政法人化政策の基盤の一つとされている同機構が、評価に杜撰 であるだけでなく、杜撰であることを意に介さない組織であることが証明され たことにより、独立行政法人化政策に対する国立大学社会の疑惑に新たな重大 な要素が加わることとなった。 ---------------------------------------------------------------------- [86-0-2] 文部科学省を囲んだ人の輪 号外で紹介した運動は約170の参加者があり文部科学省を囲んだ[86-2-2]。 報道はされなかったようだが、組織の力を借りずにこれだけの人数が集まった ことは予想外のことであったという。人の輪として現れた「精神の輪」が、こ れを契機に新たな次元で生長・進化していくことと思う。 ---------------------------------------------------------------------- [86-0-3] 「大学システムの改革に関する研究会」有志の提言の意図への疑念 「大学システムの改革に関する研究会」の提言[86-6-1] の趣旨は、提言冒頭 に書かれているように、従来の断片的大学政策を縫い合わせ全体像を描くこと により現在の改革作業の能率を上げることにある。提言の中で、3月6日の最 終報告案に取り入れられたものが多いこと、メンバーに独立行政法人化推進派 の石弘光国立大学協会副会長も含まれていること、そして、提言が出された2 月1日という時期を合わせて考えると、独法化推進派への援護射撃という役割 を持っていたように推測される。  とは言え、国からの独立性を強く主張している点で「国立大学法人化」にお ける行政の関与を弱めることへ影響力があると思われるが、文部科学省と他省 庁の確執に利用されるだけだとすると有害無益なものとなる。 ---------------------------------------------------------------------- [86-0-4] 国立大学法人化の現実的不可能性  国立大学法人化をする場合に会計上必要となる、土地・建物・資産の価値確 定の作業が膨大で、実行可能性が危ぶまれているという[86-6-3]。独立行政法 人会計原則は企業会計原則に準じたもので大学の事業とは整合性が低い。独立 行政法人化が大学にもたらす歪みの一例であり、多くの人的・財政的資源が浪 費(数千億円の費用と数年の歳月が必要と言われている)されることになろう だろう。 ---------------------------------------------------------------------- [86-0-5] 黒川放談の盲点 黒川日本学術会議副会長は、日本の大学システムの問題点を解決するためには アメリカ流に変更することが最善であることを主張している。そのためには独 立行政法人化を非公務員型とすることが必要だと強調している[86-6-2]。産学 官連携の文脈が大学を語る唯一の文脈とすれば、多くの正論が語られていると 思うのだが、他の文脈への無関心は異様とも言える。私立大学の方の批判 [86-3-11] は、その点を具体的に指摘していて説得力がある。 ---------------------------------------------------------------------- [86-0-6] 大学改革における「時間」コスト IDE 2002年2月号 特集「私の大学改革論」は、調査検討会議などの「大学改革 実務家」の視野の外にある、問題の核心を衝く論説が多い。  伊丹敬之氏(一橋大学・経営学)が、大学改革を論じる3つの要点として 「財政投入」「役割」「仕組み」を挙げ、現在のように前2者を現状通りにし て仕組みだけを変えようとしても効果は余り望めないことを指摘し、低度均衡 から高度均衡へともっていくことが大学改革論の第一条であると述べている [86-7-1]。また、人材育成における大学と他の機関との分業について「高度専 門職業人の養成が大学の使命という言い方は,この分業の線を大きく大学のほ うへと振り,大学が育成し,実社会がその人材を使う,というイメージを生む 危険がある。」と警告している。  草原克豪氏(拓殖大学副学長)は政府と大学の関係をあいまいにしたままで 進んでいる大学改革の議論に不信感を表明している[86-7-2]。  広田照幸氏(東京大学・教育社会学)は、大学改革において「時間」コスト の視点が欠落していることを危惧している[86-7-3]。結語「時間コストを忘れた大学改 革案は、いかに美しい提案であっても、教育研究の充実とは縁遠いものである。」 は、(美しくもない)独立行政法人化の不毛さをみごとに言い表している。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━             本    文 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-1] 大学評価機構の評価公表について2002.3.22 ---------------------------------------------------------------------- [86-1-1] 報道記事 2002.3.22/23 共同通信3.22 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nth3638.htm 日経新聞3.22 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3635.htm 毎日新聞3.22 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3633.htm 朝日新聞3.22 http://www.asahi.com/national/update/0322/037.html 東京新聞3.23 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3642.htm NHK3.23 ---------------------------------------------------------------------- [86-1-2] 報道記事についてのコメント ♯(2002.3.24: NHK・東京新聞の23日の記事は、文部科学省と国立大学協会 との批判を紹介している。後者は文書として公開されているが、文部科学省か らの機構批判は公表されているのか?また東京新聞の「学問分野別では今後も 抽出評価にとどめる方針で、これでは公正な客観評価は得にくい」というコメ ントは問題点を逸している。国立大学協会の3月1日の公開抗議書を読んで頂 きたい。) ---------------------------------------------------------------------- [86-1-3] 国大協第8常置委員長から大学評価機構への申し入れ(2002.3.1) http://www.kokudaikyo.gr.jp/iken/txt/h14_3_1.html 「意見申し立て」の取り扱いと評価結果の公表についての申し入れ 平成14年3月1日国立大学協会第8常置委員長 佐々木 毅 抜粋 「上述のように、今回の評価については、具体的な事実誤認にとどまらず、評 価の方法や手続き、その結果の表記形態などにかかわって不備な点が多い。今 回の評価はあくまで試行であることからすればこれは致し方のないことともい えるかもしれない。しかしその結果が、いったん大学評価の結果として公表さ れれば、社会においてはそれが本来の意味を超えて用いられる危険が大きいこ とはいうまでもない。試行段階であるからこそ、率直に問題を認識し、改善の 努力を積み重ね続けることこそが必要なはずであって、現在の段階での評価事 業の成果の誇示にこだわるようなことがあってはならない。」 「現在の評価システムでは、実施に要する大学側の負担は予想したより遥かに 大きいものである。その反面で、評価の結果に必ずしも首肯し得ない場合も少 なくなく、大学の側の自己改善に大きく寄与し得るとも必ずしもいえない。し かもこの評価の結果、必ずしも正確とはいえない情報が社会に流通することさ えありえる。これでは大学は良い結果を得るためだけの一種のゲームを演じる ことになってしまい、健全な評価システムを育成することは難しい。」 「これまで国立大学協会第8常置委員会は、数度にわたって大学評価・学位授 与機構に対して「申し入れ」を行ってきたが、これに対する機構の判断、措置 が明確に回答されたことはなかった。すでに評価結果の公表が予定されており、 このままでは機構の側は評価対象である大学の意見にかかわりなく、一方的に 評価の作業を進めていくことになり、評価の公正性、公平性に対する、大学と 社会の信頼を損なう可能性が大きい。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-2] 文部科学省を囲んだ人間の鎖 3月25日に全国ネットと文部科学省との交渉が予定されている。 ---------------------------------------------------------------------- [86-2-1] 写真記録:170名の人間の鎖が完成ー「最終報告」の撤回を! http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/020322chain.html ---------------------------------------------------------------------- [86-2-2] 3月22日文部科学省前行動 報告  http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3640.htm ---------------------------------------------------------------------- [86-3] 高等教育フォーラムの1週間を振り返って 松田良一氏らが主催する「高等教育フォーラム」では独立行政法人化に関連す る議論も時々おこなわれている。以下は最近印象に残ったものの感想。 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4494.html サブタイトルは発行者が付けたもの。「」がオリジナルなタイトル。 ---------------------------------------------------------------------- [86-3-1] 2002年03月09日 4300 大学教員が砂に見える高所からの大学改革 O 「「GN」4299辻下様へ」について http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4300.html 「大学の教員個人個人は砂のようなもので、意見のまとめようがありません」 という意見が、ずっとひっかかっています。「だから、行政主導で大学改革を 進めるのは仕方がないのではないか」と続くように感じます。大学の諸活動を 担う教職員が砂にしか見えない高所から大学改革が出来るのだろうか、という のが素朴な疑念です。果てしのない「大学改革」が個々の砂に与えている影響 は高所からは見えないことは仕方がないと思いますが。 ---------------------------------------------------------------------- [86-3-2] 2002年03月17日 4405 再編統合による大学の個性喪失について OS「大学の再編統合 4402辻下さんへ」について http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4405.html 国立大学の統廃合への懸念に共感を持ちました。小さな組織ほど小さな改善を 積み重ねやすく個性的になるように思います。 「最近の国立大学の状況をみると「統合・再編」がとても気になります。小さ な組織にすることで個々の意思が運営にも反映できるので、小さな単位の大学 がいいです。大きな組織にすると個々の意思が反映されなくなるので、問題が 解決できなくなり硬直した大学になってしまいます。」 ---------------------------------------------------------------------- [86-3-3] 2002年03月18日 4409 教育の現場への競争原理導入について HS「完全な制度などないが」 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4409.html 日本についてのーーさんの危機感の深さには共感を覚える部分もあります。 「教育の現場においても、市場による競争原理は万能ではなくても、それを上 回るシステムが無い以上、排除できないという事です。」(No 1900)という 意見は、日本の現状と近未来に深い危機感・絶望感を持つ人達の中でかなりの 割合を占めているのかも知れません。 しかし、日本もかなりの「競争」社会でしたし今もそうです。従来とは種類が 違うとは言え、社会全体が「競争原理」強化の方向に動きつつあることに危機 感を感じますーー過度の競争がもたらす「人心の疲弊・荒廃」という影響に対 する無関心が日本を覆っていることへの危機感です。「日本型過当競争*1」と 「市場による競争原理」との相乗効果がどうなるか心配です。 *1: 例: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/common-sense/morinaga.html ---------------------------------------------------------------------- [86-3-4] 2002年03月18日 4412 大学の足腰の弱さの懸念 KS [あまり言いたくはないのだけれど] http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4412.html 市場化の大きな流れの中で大学は受動的に流されるだけなのか、と問われてい ることが響きました。 「崩壊した産業構造の再建には、民間活力を期待し、規制緩和の方向で、つま り、自由競争にさらすことで再生を賭けるのに対し、大学へは国からの管理体 制を強化し、鼻先にワッカをつけて引きずりまわそうとしている。現在の大学 とは、国の官僚から、「俺たちが、かつての経済成長を成し遂げたことを、今 度は、大学の教育において担っていかねばならん」と思わせるくらい、足腰が 弱いのでしょうか?」 ---------------------------------------------------------------------- [86-3-5] 2002年03月18日 4415 国立大学批判への質問 匿名希望 [ーーーーさんへの質問] http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4415.html  この発言には種々の批判が出ましたが、ーーさんが「代表」しているセクタ の国立大学批判に見られる「主観性」への批判としては無視できないものと私 は感じました、それによって政策が決められようとしているのですから。この 方の発言には共感を覚えることが多いです。1999年10月のNo 531,No 525,No 521 は、多くの大学教員の思いをかなり適確に表現されていると思います。な お、この方は、職場等を含めた社会的アイデンティティはかなり明確になって いる(4064)ので、実質的に実名での参加に近いと感じます。(黒木玄さんのウェ ブサイト http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/ で許容される匿名と思い ます。) ---------------------------------------------------------------------- [86-3-6] 2002年03月20日 4435 独立行政法人化した研究所の現状 4435 PN:武竿 [大学改善は絶対必要。独法化は?] http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4435.html 大学をひとつにひっくるめて議論することの不毛さを指摘されていることに共 感を覚えました。また、独法化した研究所にいる方からの、国立大学独立行政 法人化がもたらすダメージの予想は生々しく感じました。しかし、「いまは大 学による大学改善のための方法論を模索すべき段階だと思います。このことと 大学独法化の議論を混ぜてしまうと,政府の思うつぼになるような気がします。」 という指摘は、今、この時期に大学関係者が模索しなければならない「第三の 道」を示唆しているようで、襟を正す思いがしました。 「現在私はポスドクとして独法化した研究所にいます。場所も状況も4421さん とほぼ一緒だと考えられます。その拠点で独法化の実体を見ると,1)事務・理 事サイドの権限が強化され,2)研究テーマへの予算配分はかなり恣意的に見受 けられ,3)研究をしない研究者にも身分が保護されるようなポストが作られ, 4)若手の採用は非常に厳しい上に,若手にのみ数年の任期を課す,というよう なことが行われています。つまり簡単に言えば,論文生産に寄与しなかった年 寄りは楽に遊んで暮らすことができ,業績を挙げる若者には厳しくし,事務作 業が研究者へ一方的に押しつけられ,そして研究所自体はおいしい天下り先に なっているわけです。現在のところは独法化によって良くなったことは見えて きません。  同じことはいくつかの大学でも起こるでしょう。教育もせず論文を書かない ような"教官"は,自分の身分保護にだけは異常な執着を示すのが一般的です。 もし独法化となったら,低レベル教官は,いかにその内容を骨抜きにするかに 腐心し,組織的に動き,声を荒らげて周囲を恫喝してまわり,大学院生や助手 の業績を吸い上げて見かけの業績を量産し,優秀な教官におおきな迷惑をかけ ることでしょう。すでにわれわれは,若手の助手に任期を課し,仕事をしない 助教授・教授は形ばかりの評価とした骨抜き任期制や,東大の定年延長などの 悪例を見てきたではないですか。そんな類推から,下手に組織を改造しようと すると,最悪のシナリオ−研究教育しない人にとって住み良い大学−が実現す るような気がしてなりません。大学ではグレシャムの法則が働きます。そして 真面目な学生と教官が大きな損害を被るのです。」 ---------------------------------------------------------------------- [86-3-7] 2002年03月21日 4450 民主的かつ迅速な合意形成法  wakei [re4440 やはり声は届きませんか?] http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4450.html wakei さんの一連のご発言に教えられることが少なくありません。「変わるた めには、変わる方向性に関する基本的合意が必要なんで、合意形成に失敗すれ ば、対応するのは難しいのではないでしょうか。」ということが国立大学の独 立行政法人化に関連して一番懸念されることの一つです。 ---------------------------------------------------------------------- [86-3-8] 2002年03月22日 4461 黒川提言2000.10について KS「北村薫さんへ」 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4461.html 北村薫(PN)さんが紹介した「黒川放談」への賛意を表明されたものでした。科 学新聞2000年10月13日号に掲載された黒川氏の提言には大変感銘を受 け記事抜粋をNo 1734 で述べました。この後のコメントは参考になると思いま す。アメリカにおられる落合さん・原さんのコメントは参考になりました。 1738 2000年10月22日 [黒川提言についての補足コメント] 辻下 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/1738.html 1737 2000年10月20日 [アメリカでは・・・?] http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4405.html 1735 2000年10月19日 [「黒川提言」について] http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/1734.html 1734 2000年10月18日 [日本学術会議黒川副会長の提言について] 辻下 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/1734.html ---------------------------------------------------------------------- [86-3-9] 2002年03月22日 4465 私立/国立という不毛な線引き http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4465.html http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4482.html 国立/私立という線引の無意味さを簡潔に述べられています。wakei さんの 4450 末尾にある問いに対し、私が4458で、「国立大学歳出の6割、私立大学 歳出の1割が国庫補助」というつもりで書いた「国立大学は「60%国立40 %私立」、私立大学は「10%国立90%私立」」という悪文のあいまいさを 正して頂いたようです。 ---------------------------------------------------------------------- [86-3-10] 2002年03月23日 4477 「基本大学法(試案)」の提言」など 近藤義臣 「国立大学独立法人化の問題点と 「基本大学法(試案)」の提言」 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4477.html 私が No 4174で述べたことは、基本大学法(試案)に含まれていました。近藤 さんの試案と、北村薫さんが紹介した「大学システムの改革に関する研究会」 の提言(テキスト版: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/201-teigen-original.html)を比 較すると「政府からの独立性」が不可欠とするところは共通しています。 ただ、「大学システムの改革に関する研究会」の提言の趣旨は、提言冒頭に書 かれているように、バラバラに出されてきた従来の断片的大学政策を縫い合わ せ全体像を描くことにあります。したがって現在の大学改革の流れは前提とし、 それを「改善」しようという点で現実的であるのと同時に現在の改革の流れに は肯定的でもあります。この2月1日提言の中で(国立大学法人についての) 3月6日の最終報告案に取り入れられたものが多いことと、メンバーには独立 行政法人化推進派の石弘光国立大学協会副会長も含まれていますから、提言が 出された時期を考えると、独法化推進派への援護射撃という役割を持っている という印象は拭い難いものがあります。 とは言え、国からの独立性を強く主張している点で「国立大学法人化」におけ る行政の関与を弱めることへの影響力があると思います。ただ、文部科学省と 他省庁の確執に利用されるだけだと有害無益になります。 ---------------------------------------------------------------------- [86-3-11] 2002年03月23日 4485 黒川放談の問題点 4485 wakei 「re4470 団藤さんの処方箋もそれだけでは不十分」 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4485.html 「黒川放談」が、学術活動の全体には妥当しないことを指摘されたもので、強い共感を覚えました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-4] 中教審第3回2002.3.13 基本問題部会(資料目録) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/002/020302.htm ---------------------------------------------------------------------- [86-4-1] 教育振興基本計画(柱立て)<素案> http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/002/020302/020302a.htm 教育振興基本計画(柱立て) <素案> 概ね10年後の教育の目指すべき姿を想定しながら、その実現のために概ね5 年間に実施すべき施策を盛り込んだ計画とする。 第一 教育に関する施策の基本的な方針 1.教育の現状と課題 2.21世紀の教育が目指すもの (1) これからの教育の目標 (2) 教育改革の基本的方向 第二 教育の目標を達成するため総合的かつ計画的に実施すべき施策 ○ 具体的な政策目標 ○ それを達成するために必要な施策 1.確かな学力の向上 (1)基礎知識・基礎学力の習得 2.豊かな人間性の育成 (1)豊かな心と健やかな体の育成 (2)伝統・文化や公共の精神の尊重 3.優れた教員の養成・確保 4.柔軟な学校システムの実現 5.国際競争力のある大学の実現 (1)世界最高水準の大学づくり (2)個性化、多様化の推進 (3)リーダー養成など社会貢献機能の強化 6.教育における国際化・情報化の推進 7.家庭や地域の教育力の向上と学校、家庭・地域の連携 (1)家庭の教育力の向上 (2)地域の教育力の向上と学校、家庭・地域の連携 8.個人の生涯を通じた体系的な生涯学習システムの整備 第三 施策を推進するために必要な事項 1.施策を推進するために必要な教育投資の在り方 2.施策を推進するための政府及び地方公共団体の役割、連携等 ---------------------------------------------------------------------- [86-4-2] 教育振興基本計画の主な枠組みについて(検討メモ2002.2.25) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/002/020301/020301h.htm ---------------------------------------------------------------------- [86-4-3] 中央教育審議会基本問題部会委員名簿 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/002/020201/020201a.htm ---------------------------------------------------------------------- [86-4-4] 第2回2002.2.25「議事録」 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/002/020302.htm ♯(このような重大なテーマを扱う審議会記録が匿名発言を羅列した「議事概要」だけで良いのか) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-5] 声明・公開質問書・交渉申し入れ等 ---------------------------------------------------------------------- [86-5-1] 3.22 国立大学学長に申し入れ:26大学教職員組合執行委員長連名2002.3.22 「調査検討会議最終報告の拒否を」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/0203162bunsyo.htm#gakutyou" ---------------------------------------------------------------------- [86-5-2] 3.22 調査検討会議に交渉申し入れ:25大学教職員組合執行委員長連名2002.3.22 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/0203162bunsyo.htm#kousyou 文部科学省調査検討会議「最終報告」決定前の交渉を申し入れ ---------------------------------------------------------------------- [86-5-3] 3.15 独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局声明 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010315syutoseimei.htm ---------------------------------------------------------------------- [86-5-4] 3.14 名大学長への公開質問状 名古屋大学職員組合中央執行委員会 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/314-nuufs-to-matsuo.html http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3632.htm 「・・・振り返ってみると、1997年から98年にかけて、当時の文部省は、当時 の大学審議会が出した『答申』に基づき、「戦後最大の国立大学改革」を進め るとしつつ、独立行政法人通則法に言う独立行政法人制度は、国立大学になじ まないものであって反対であると表明してきました。それが、99年9月の国立 大学の独立行政法人化に関する『検討の方向』では、公務員型・教学と経営の 一体性・国立大学独自の目標と評価の制度などを前提として、独立行政法人化 へと転換しました。この転換を促した要因の一つは、国立大学協会において、 松尾総長を担当者としてまとめられた2つの報告書、いわゆる第1次と第2次 の『松尾レポート』(*1)であったと言われています。 (*1) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/net/netmatuo.htm   上記の前提のもとで、文部(科学)省は、2000年7月に調査検討会議 を発足させ、法人化の検討を行ってきましたが、結局、この3月に報告されよ うとしている「新しい『国立大学法人像』について」では、非公務員型、教学 と経営の分離、通則法の枠組をほぼ採用した目標・評価制度などがもりこまれ、 文部科学省の「敗北」と 言ってよい内容になっています。この間、松尾総長 は、国大協副会長、将来構想ワーキンググループ座長、また調査検討会議の主 要メンバーとして、この「敗北」に深くかかわってきました。  上記の点について、松尾総長はこの数年間の活動をどのように総括されてい るのか、ご自身の(心情や感慨ではなく)結果責任の観点から、明確にお答え ください。・・・」 ---------------------------------------------------------------------- [86-5-6] 3.14 名古屋大学教職員組合中央執行委員会 見解 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/314-nuufs.html ---------------------------------------------------------------------- [86-5-7] 3.14 宮崎大学教職員組合から宮崎大学学長への要望 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3621.htm ---------------------------------------------------------------------- [86-5-8] 3.10 全国大学高専教職員組合第25回臨時大会決議(2002.3.10) http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/02-3-10ketugi.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-6] 記事・意見等 ---------------------------------------------------------------------- [86-6-1] 大学システム改革への提言 「大学システムの改革に関する研究会」有志 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/201-teigen-original.html ---------------------------------------------------------------------- [86-6-2] 黒川清「21世紀の研究システムの再構築−求められる価値観の転換−」 http://www.sci-news.co.jp/news/kikaku/kurokawa1.htm 2001.11.16 http://www.sci-news.co.jp/news/kikaku/kurokawa2.htm 2001.11.23 「・・・だから今、「産・官・学の連携」の強化というのは、経済産業省、文 部科学省がいろいろ対応してやっているけど、基本的に国立大学を独法化した ら研究者は「非公務員型」を原則しないとだめですね。大学はまず一義的には 教育と人材の育成に責任を持ってください。そのおカネは国が払います。研究 は競争で自分で取ってきてくださいね。それは国公私立関係なく同じ土俵で競 争しましょうねと。これが経済産業省が出している「イコールフッティング」 という意味です。」 ---------------------------------------------------------------------- [86-6-3] ◆国立大の値段は? 法人移行控え資産計算に難問(朝日 2002.3.2) http://www.asahi.com/edu/news/K2002030201551.html 「著名画家が卒業制作で描いた絵に値をつけるとしたら、いくらになるか。大 学が持つ演習林に立ち木は何本あるか−−。全国99の国立大学が、こんな課 題に挑んでいる。早ければ04年度に独立行政法人へ衣替えするのに伴い、大 学ごとの資産を計算する必要があるからだ。学問上の財産をどうカネ勘定する か。最高学府が「応用問題」に悩んでいる。  旧帝大の中でも広大な演習林を持つ北海道大学。観光名所のポプラ並木なら 「50本」と、大学側も把握している。しかし、演習林7カ所の面積は6億5 175万平方メートル。その中にある立ち木の本数を数えて一本一本の資産価 値を出すのは、気が遠くなるような作業だ。  「ほとんど人が入っていない山林もある。演習林の境界も図面上と実際は違 うことがあるし、未登記の土地もある。どうなるのでしょうか」と北大側は心 配する。  東北大の担当者も演習林や農場について「立ち木は木に番号をつけているは ずだが、時価1本いくらと計算をし始めると作業はパンクする。ひと山いくら で出せないものか」。  東京大学も演習林の立ち木数や境界は確定していない。史料編纂所や図書館 所蔵の古い書籍などもある。  美術、工芸、音楽をはじめ国内の著名な芸術家が多数輩出した東京芸術大学。 学内の美術館には、学生の卒業制作品のほか、国宝などの指定文化財約40点 を含む所蔵品約4万5000点が収められている。  上村松園の「序の舞」、狩野芳崖の「悲母観音」、高橋由一の「鮭」……。 挙げ始めたらきりがない。これらの資産価値はいくらなのか。  東京芸大によると、教材用に取得した美術品は取得価格があるが、卒業制作 の作品などは物品台帳での管理だけだ。  大学側が「念頭に置いている」という事例が、昨年4月に一足早く法人化さ れた国立博物館だ。  国立博物館の場合、美術品などは国から無償で受け継ぐ形を取り、時価を出 していない。さらに、収蔵品を譲渡したり担保にしたりする際は国の認可が必 要という縛りもかけ、法人化移行時には、建物や土地などの価格算定が主体だっ た。  「価格算定よりむしろ、展示品や土器のかけらのような収蔵品を含めて約1 0万点近く所有していたので、その数の確定作業が大変だった」と、法人化に かかわった文化庁担当者は話す。  国立大学も、法人化すると国の組織から切り離され、法人としての土地、建 物や資産価値の確定が会計上、必要になってくる。  国立大学法人化法案(仮称)やそれに伴う細則づくりは文部科学省が進める 予定だ。その骨格となる最終報告が近くまとまり、順調に行けば来年1月の通 常国会に法案を提出、法人化実施は04年度当初の見込みだ。準備期間は2年 ほどしかない。  国立大学は各大学ともその土地の風土と密接しながら文化価値、歴史的価値 を保ってきただけに、これから、どの大学も事務作業に右往左往しそうだ。」 ---------------------------------------------------------------------- [86-6-4] 「ムルアカ氏の奨学金問題の本質」(国立大学付属病院教官 2002.3.19) http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/320-muruaka.html 「鈴木宗男氏の問題は従来の政官界の構造的な問題のみならず、その秘書ムル ア カ氏の問題から、政―官―学界の問題をも露呈することとなった。国会答 弁にも あるように、ムルアカ氏は我が国を代表する“独立行政法人”研究機 関で、研究 者として受け入れられ、1000万円以上の奨学金の交付を受け ている。ムルア カ氏は国会議員秘書という極めて多忙で、医学研究者として の活動などおよそ不 可能であるのは自明であり、また若手(35歳以下)でな いにもかかわらず特別に 奨学金を受けるに値するか否かは常識からして明ら かであろう。(どのような経 緯で政治家秘書がこの研究所の研究員になった のかははっきりされていない。)  また、国会審議、文部科学省の予算配分等より予算の大小が決まる研究機関 が 政治家の圧力に屈したか、自ら迎合したのかは不明であるが、すくなくと も異様 な奨学金交付に決定的な関与をしたことは事実であろう。さらに困っ たことに、 この研究機関は原子力利用の規制や国民の健康に関わる政策に影 響する多数の研 究とデータの報告を行っており、これが国家の政策に影響し ている。この研究所 の発表データ、研究方針が他にも政治屋の圧力に屈して いないか、迎合していな いかという保証がどこにあろうか?。  最近の行政、政治主導の独立法人化論議は研究者のデータといえども一政治 屋 の恣意で捻じ曲げられる、あるいは政治屋に迎合しない研究者はその活動 ができ ないというまさに戦慄すべき“大官僚翼賛体制”であることを、国民 各層に訴え ていく必要があろう。  この他、文部科学省の官僚はムロアカ氏をいくつかの私立大学に講師(こち ら はさすがに医学研究者ではなくアフリカ問題の専門家)として採用を要請 してい る。(予算他でいくらでも圧力かけられるし、国立大学のように政治 的中立を侵 したなどと文句を言われないところを狙った極めて卑怯な行動で あろう。今後、 独立行政法人の上層部特に、管理部門は官僚OBの天下り先に なるのは火をみるよ り明らかである。独立行政法人化が避けられないならば、 事前にこのような天下 り阻止条項(予算審査権限等を有する官僚経験者は、 国立大学が移行した独立行 政法人の管理職、顧問などに就職することを禁じ る。)が絶対必要であろう。ま た最近の厚生労働省のスキャンダルや東海村 事故などに代表されるように、官僚 の干渉に対して独立して研究を行える予 算などを確保できる担保措置が絶対に必 要なことを訴えなければならない。 このままでは独立行政法人から行政従属法人 になり、最後は政治屋隷属法人 になることは必至である。 この事件を鈴木氏の特異なキャラクターに矮小化してはいけない。」 ---------------------------------------------------------------------- [86-6-4-1] 文部官僚、鈴木氏秘書ムルアカ氏に私大講師の職を紹介(朝日 2002/03/15) http://www.asahi.com/politics/gaimusho/K2002031501356.html ---------------------------------------------------------------------- [86-6-4-2] cf:参議院予算委員会3/12(ムルアカ氏研究奨励金問題) http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/kokkai/02/312-san-yosan.html ---------------------------------------------------------------------- [86-6-5] 団藤保晴氏の論説に対するコメント(竹田保正氏 2002.3.02) http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/320-takeda.html ---------------------------------------------------------------------- [86-6-6] 「国連大学:「融資」と「学問の自由」の危い関係」(2001.5.21) http://www.debito.org/mediaupdatej052101.html ---------------------------------------------------------------------- [86-6-7] 黒木玄氏サイト「大学院“改革”が悲劇の出発点になった」(2001.10.14) http://www.math.tohoku.ac.jp/~kuroki/keijiban/e0013.html#e20011014050133 「「大学院重点化」という名の大学院“改革”の実態の一部については Yomiuri On-Line 中部発の「教育の大地第二部:大学院はいま」でレポートさ れています。「定員2倍 仕事も激増」「院生あふれ もう限界」「モラトリ アム院生 急増」……。 大学教授にとっても大学院生にとっても嬉しくない“改革”がなぜ実行されて しまったか、その“改革”の煽動者は誰で損してないのは誰なのか、などなど についてはもっと詳しい調査があっても良いように思えます。 “改革”による大学院の研究・教育環境の悪化と就職難に加えて、もしも育英 会奨学金が本当に廃止されるということになれば、日本で次の世代の科学研究 がどれだけのダメージを受けるかちょっと想像が付きませんね。まあ、しばら くのあいだは研究に理解があって裕福な親を持つ大学院生たちが育つので目立 たないかもしれませんが、長期的には皆に不愉快な結果をもたらすことになる でしょう。 科学研究のレベルを上げることと特定の組織や分野に重点的にお金をたくさん 配ることは違います。特に日本の場合はアメリカと違って、研究者の輸入超過 はできないでしょう。だから、人を自前で育てなければいけない。しかし、現 実には人を育てるためにお金が使われているようには全然見えないのだ。官邸 から出て来る「科学」の話はどの組織と分野にどれだけ重点的にお金を配るか という話だけ。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [86-7] IDE 2002年2月号<私の大学改革論ー現場からの発言> 定価600円・送料120円 電話03-3431-6822,ふりかえ00130-3-148214 ---------------------------------------------------------------------- [86-7-1] 伊丹敬之「資源投入と役割を考える」p5-8 (一橋大学大学院教授・経営学) ♯(大学改革論で「役割」「資源投入」を不問にして「仕組み」だけを論じて いる現状を批判。少ない資源投入の中で仕組みだけを変えても貢献度はそれほ どかわらないことを指摘。「いわば、これまでの大学は、少ない資源投入と少 ない責任で低度均衡が取れていたのかもしれない。しかし、それを高度均衡へ ともっていくこと、それが大学改革論の第一条である」は核心を衝いている。 また、人材育成における、大学と実社会の機関との間の教育分業のあり方は、 経営学という実社会に深く関わる分野においても、自明ではないというコメン トは意外であり共感を覚えた。以下、引用しよう。 「例えば,高度専門職業人の育成が大学の使命であることがとくに強く強調さ れることが多い。私も,それが大学の使命の一つであることには賛成である。 間題は,その育成プロセスで何が「大学らしい」貢献なのか、という点である。 私の専門の経営学の分野で言えば,経営の専門家の育成を日本社会はこれまで, 圧倒的に企業内部での育成プロセスに頼ってきた。いわば,社会全体としての 分業では,大学は基礎的なものの考え方の訓練を担当し,企業が実務知識と経 験をベースにした実際の経営者の育成プロセスを担当するという分業だった。 高度専門職業人の養成が大学の使命という言い方は,この分業の線を大きく大 学のほうへと振り,大学が育成し,実社会がその人材を使う,というイメージ を生む危険がある。経営の世界では,このイメージは間違いである。経営者の 育成はそんな簡単なものではない。経営者が本格的に育つのは,あくまで与え られる仕事の場の大きさが中心であり続けるであろう。その現場での育ち方に, 大学院での高度職業人教育で培われた従来よりもさらにがっちりした基礎が意 味をもつ。そういう分業関係が望ましい。決して,分業の線を大きく大学の側 へ振ることが望ましいのではない。」 「しかし,大学のもっとも大切な役割は,汲み出す価値のある知が大きな湖と して貯まるようなきちんとした研究活動,知の創造活動なのである。  社会の中の教育の分業の担い手として,企業,専門学校,セミナー機関,な どさまざまな機関があるべきである。そうした全体構図の中での大学の役割を 考えないと,大学がお手軽な実務知識伝達機構になりかねない。そうなってし まったら,それは大学の死を意味する。」 ---------------------------------------------------------------------- [86-7-2] 草原克豪「政府と大学との関わり方を問う」p9-13 (拓殖大学副学長・拓殖大学北海道短期大学学長) 「文部科学省は個々の大学経営に責任を負わねばならない、などと考える必要 はない。現に国立大学といえども国民の税金で賄われているのは経費全体の6 割弱にすぎず、あとは授業料や病院収入などの自己収入に依存している。とい うことは、財政構造からみれば、国立大学の実体は6割国立であり、私立大学 の実態は1割国立なのである。政府としては、各大学の教育研究の内容に応じ て国費の投入を加減できる仕組みを作ればよいのである。」 「政府と大学の関係をどのように位置づけるかという基本的な制度論が必要な のである。そのような議論を避けているところに大きな問題があると思う。政 府と大学の関係を見直すということは、文部科学省の役割を見直すということ でもある。昨今の議論にはその視点が欠落している。」 ---------------------------------------------------------------------- [86-7-3] 広田照幸「「時間」コストに配慮した大学改革を」p45-48 (東京大学大学院・教育社会学・教育史・社会史) 「現在の改革論議は「資源」というとき、お金だけが想定されていて、時間と いう資源については無視されているように思われる。」 「・・・「たえざる改革・改善の努力」ほど、時間をくい続ける、やっかいな ものはないのだ。改革をどこかで一段落させて、その後は20年後や30年後 にあらためて見直すというのであれば、余計な雑務が減って、教育や研究にもっ と力を注ぐことができるはずである。  <知>の発展には、ムダやムラが必要である。大半の研究は、既存の知をよ り高いものへと発酵させ、蒸留させるための十分な時間を必要としている。時 間的余裕のない中での研究は、大きな飛躍も転換も期待できない。「組織改善」 というメタ次元での活動の増加は、<知の生産>とは無関係な部分で時間をい たずらに浪費させるばかりである。時間コストを忘れた大学改革案は、いかに 美しい提案であっても、教育研究の充実とは縁遠いものである。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題に関連する情報(主に新聞報道・ オンライン資料・文献・講演会記録等)へのリンクと抜粋を紹介。種々のML・ 検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 【関連サイト】http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp ------------------------- 発行部数(括弧内は3/21からの増減) (2002.3.24 現在) 1700(+3): Mag2:985(+2)|CocodeMail:382(0)|Pubzine:98(+1)|melma:73(0)|  melten:58(0)|Macky!:45(-1)|melonpan:30(+1)|emaga:29(0) 直送 860(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等) ------------------------- Digest 版 10297(国立大学通信), 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