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国立大学独立行政法人化問題週報

Weekly Reports  No.87 2002.4.7 Ver 1

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-87.html
総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━               目   次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-0] 発行者の願い [87-1] 文部科学省国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議報告2002.3.26  [87-1-1] 文部科学省サイト,html形式  [87-1-2] 平成14年3月29日文部科学大臣会見の概要  [87-1-3] 最終報告案(3月6日付)と最終報告(3月26日付)の異同一覧 (首都圏ネットワーク)  [87-1-4] 解説:新潟大学から「法人化」後の大学を考える [87-2] 報道・解説・社説など  [87-2-1] NHK「あすを読む・国立大学法人化に一歩」(早川信夫解説委員)3.28  [87-2-2] 3/28 『毎日新聞』社説 2002年3月28日付 [87-3] 学部・団体等の声明  [87-3-1] ◆独立行政法人化問題を考える北大ネットワーク声明 2002.4.2  [87-3-2] 宮崎大学教職員組合:宮崎大学長宛要望書提出2002.4.2  [87-3-3] 北海道大学教職員組合: 北大学長・評議員への申し入れ 2002.4.2  [87-3-4] 金沢大学理学部 学部会声明  [87-3-5] 全大教中央執行委員会声明3.27  [87-3-6] 東京大学職員組合臨時総会決議3.26  [87-3-7] 日本国家公務員労働組合連合会 小田川義和書記長 談話3.26  [87-3-8] 宮崎大学総決起集会アピール3.26 [87-4] 国立大学協会の動き  [87-4-1]  国立大学学長会議2002.4.3での学長からの批判(報道より)    [87-4-1-1] 『日本経済新聞』2002年4月4日付:文科相「一大転換、改革を」  [87-4-2] 国立大学協会設置形態検討特別委員会見解 2002.4.1 [87-5] 通常国会  [87-5-1] ◆衆議院文部科学委員会議事録3/22(山梨大学・山梨医科大学の統廃合)  [87-5-2] ◆参議院文教科学委員会議事録4/2(統廃合問題・独立行政法人問題)   [87-5-2-1] 山本議員(公明党)質疑   [87-5-2-2] 林議員(共産党)質疑  [87-5-3] ◆衆議院予算委員会第四分科会(文部科学省所管について審査 ) [87-6] 経済財政諮問会議2002.4.3  [87-6-1] グローバル化への対応(本文、参考資料)(有識者議員提出資料)  [87-6-2] ◆研究・技術開発の活性化について(本文、参考資料)(有識者議員提出資料)  [87-6-3] 坂口臨時議員提出資料(厚生労働行政における対応)  [87-6-4] ◆遠山臨時議員提出資料(経済の活性化と大学)  [87-6-5] 尾身臨時議員提出資料(科学技術を中心とした経済の活性化方策について)  [87-6-6] 平沼議員提出資料(グローバル化による経済活力再生について、技術開  [87-6-7] 塩川議員提出資料(『経済活性化』のための研究開発と税制)  [87-6-8] 休日の長期化・分散化の経済効果について [87-7] 総務省 政策評価・独立行政法人評価委員会  [87-7-1] 第14回2002.3.22議事要旨  [87-7-2] ◆第13回2002.2.22議事録より [87-8] 意見など  [87-8-1] ◆下山房雄下関市立大学長:"Season's Greetings"(02.03.27)   [87-8-1-1]「大学と社会―交流の深化に向けて」  [87-8-2] 北海道新聞・今を読む2002.4.7 野田正彰「校長職に埋没していないか」  [87-8-3] 岡本 和夫(東京大学大学院数理科学研究科前研究長)「自由を我らに」  [87-8-4] 長谷川浩司「最近の動きから」   [87-8-3-1] 2002.4.2   [87-8-3-2] 2002.3.30.  [87-8-5] 高等教育フォーラムより [87-9] ◆意見募集「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針(草案)」(締切 4/30) [87-10] 日経新聞訴訟判決「一審判決で会社ぐるみの違法行為を認定」2002.3.26 [87-11] 法科大学院問題サイト  [87-11-1] これはやばいよロースクール(法科大学院)  [87-11-2] Manaboo's Room:司法制度改革リンク 最終更新:2002/4/4 [87-12] ◆読者からのメール  [87-12-1] アメリカ感染症 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━           本       文 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-0] 発行者の願い  3月26日に文部科学省の「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討 会議」が報告書を出した。それを受け、文部科学大臣は4月3日に国立大学長 会議を召集し法人化の方針を伝えた。国立大学側の要求の大半を実質的に退け た報告書への大学社会からの反発を「ガス抜き」するために、学長会議前に、 国立大学協会と文部科学省幹部が二人三脚で各地のブロック学長会議を回って 説得に努めたと言う[87-4-1-1] 。しかし、4月3日の学長会議では法人化案 に対し疑義を表明した学長の方々が居たことが報じられた[87-4-1]。果敢な発 言に勇気つけられた者は少なくない。  奇妙なことに「旧帝大」学長の発言は報道されていない。大学重点化後に進 行した大学間財政格差を際限なく拡大する独立行政法人化政策は、少し頑張れ ばほぼ確実に重点投資される大学の経営者としては敢えて異を唱える必要を感 じないのだろう。しかし、時代を超えた視点からの社会貢献を主たる存在理由 とする大学制度を担う指導者には、経営者的観点を超えて、国立大学の独立行 政法人化が日本の大学システムに与える影響を見据えた行動が期待される。時 代の圧力に追従せず、また組織の論理に埋没せず、自己の信念を表明できる多 数の学長を今の日本は必要としている。4月19日の臨時国立大学協会では、 学長の方々が、日本の大学制度に対する歴史的責任の大きさを再考し、自立し た個人として真摯な議論を展開し、日本の人々からの直接の付託に応えられる であろうことを祈る。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-1] 文部科学省国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議報告2002.3.26 ---------------------------------------------------------------------- [87-1-1] 文部科学省サイト,html形式 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/14/03/020327.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-1-2] 平成14年3月29日文部科学大臣会見の概要 http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/020309.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-1-3] 最終報告案(3月6日付)と最終報告(3月26日付)の異同一覧 (首都圏ネットワーク) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/01326idou.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-1-4] 解説:新潟大学から「法人化」後の大学を考える その2「教育人間科学部改組問題を素材に公務員型独法化の持つ問題点を考える」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre4074.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-2] 報道・解説・社説など http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/326-news.html 3/31 『東奥日報』社説 2002年3月31日付:国は大学の支援に徹せよ 3/29 『日本経済新聞』社説 2002.3.29: 大学経営の責任強まる「国立大法人」 3/28 『北國新聞』社説 2002.3.28:国立大法人化 多様な「非公務員」登用を 3/27 『朝日新聞』社説 2002.3.27: 変身の好機と考えて 国立大学法人 3/29 『神戸新聞』社説 2002.3.29:国立大法人化/変えるもの変わらぬもの 3/29 『宮崎日日新聞』社説 2002.3.29:国立大法人化 国は大学自立の芽つぶすな 3/28 朝日(夕刊):素粒子 3/28 『南日本新聞』社説 2002.3.28:【国立大法人化】国は大学支援に徹して 3/28 『読売新聞』社説 2002.3.28:国立大法人化 教育・研究の活性化につなげよ 3/28 『北國新聞』社説 2002.3.28:国立大法人化 多様な「非公務員」登用を 3/28 『東京新聞』社説 2002.3.28:国立大法人化 自主性高める契機に 3/28 『西日本新聞』社説 2002.3.28:国立大法人化 評価基準をはっきりと 3/28『琉球新報』社説 2002.3.28:国立大法人化・未来を開く柔軟な発想を 3/28 『山陰中央新報』社説 2002.3.28:国立大の法人化/国は自立への支援に徹せよ 3/28 『毎日新聞』社説 2002.3.28:国立大学 理想の法人目指す努力を 3/28 NHK「あすを読む・国立大学法人化に一歩」(早川信夫解説委員) 3/26 共同:国立大の裁量広げ競争促す 法人化で最終報告 3/26 毎日:国立大独法化:学費、給与にも格差 大学間の競争激しく 3/26 朝日:国立大、04年度にも法人化 検討会議が最終報告 3/26 毎日:国立大独法化:教職員「非公務員」に 検討会議が最終報告 3/27 読売:外国人の学長可能、国立大法人化で最終報告 3/26 日経:国立大教職員の身分、非公務員に 3/27 日経:国立大法人化最終報告 「外部の目」活用 経営課題審議に有識者 3/27 東京新聞:国立大法人化 教職員、非公務員に 3/27 西日本:国立大法人化文科省最終報告  ---------------------------------------------------------------------- [87-2-1] NHK「あすを読む・国立大学法人化に一歩」(早川信夫解説委員)3.28 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/326-news.html#328-nhk 「国立大学が独立行政法人に移行したあとのあり方について議論してきました 文部科学省の調査検討会議は、おととい、最終報告をまとめて遠山文部科学大 臣に提出しました。116年におよぶ国立大学の歴史の中で、設置形態にまで手 を加えるのは初めてです。今夜はこの報告の内容と課題について考えたいと思 います。  法人化されると国立大学はどう変わるのでしょうか。国の行政組織の一部に 過ぎなかったものが、大学ごとに法人として独立した存在となります。つまり これまでは自治は認めつつも国立大学全体の舵取りは国が面倒を見てきました。 各大学は保護者の手を離れ、自分の責任で歩んでいくことになります。人生に たとえるならば、親離れ、子離れにあたるのかもしれません。かといって私立 大学になるわけではありません。大学の予算は国からのお金でまかなわれ、名 称も国立大学のままです。お金の使い道について縛りがゆるめられますけれど も、大学ごとに収支が問われることになります。これからはお金は自分でやり くりしなければなりません。しかしその分、自分でがんばって儲けたお金は自 由に使えるようになります。自立性を認める代わりに自己責任が求められると いうわけです。  では今回の最終報告では、法人化に向けてどんな提言をしているのでしょう か。柱は四つです。  まず、トップダウン方式の強化。学長を中心に役員会を作り、責任をもって 経営を担ってもらうことにします。大学は議論ばかりしていてなかなか改革が 進まない、これでは時代の変化のスピードに追いつけない、と批判されてきま した。教授会の決定を通さなければ何も決まらない、という今の方式を改め役 員会の決定に委ねようというのです。学長のリーダーシップの強化が狙いです。  二つ目ですけれども、外部パワーの導入です。役員会には学外の専門家を必 ず招き入れることを求めています。外の知恵を借りて大学を活性化させ、「大 学の常識、世間の非常識」と揶揄されないように狙っています。必要ならば、 非常勤とすることも考えます。  三つ目は能力主義の徹底です。そのために教職員は非公務員とするとしてい ます。これによって学長に経営手腕のある外国人を登用できるようになります。 日産自動車のゴーン社長ですとか、サッカー日本代表のトルシエ監督のように、 る外国人が大学を引っ張る日がくるかもしれません。また、社会的に活躍して いる著名人を、名物教授として何年間か採用することも考えられます。さらに、 兼職や兼業の縛りがなくなり、教授がビジネスマンを兼ねる、といったことが 当たり前になるかもしれません。ただし、みなし公務員として引き続き贈収賄 の対象にはなります。  四つ目ですけれども、事後チェック方式への移行。大学はみずからどういう 大学を目指すのか、6年間の中期目標と中期計画を立てるように求められます。 この計画にもとづいて予算が配分されます。そして六年後、目標と計画がどれ だけ達成されているのか、第三者機関によって評価され、その結果に応じて次 の予算配分が決まる仕組みです。評価は教育研究の内容が理解できる専門家が 行います。評価項目をどうするのかといった、具体的な詰めは今後の検討課題 です。  最終報告が出たことで、国立大学は法人化に向けて一歩を踏み出します。し かし、一年八カ月におよぶ今回の議論、けして平坦なものではありませんでし た。といいますのは、今回の議論は行政改革の論議から出てきたものだからで す。会議では時間をかけることで行政改革の呪縛から離れ、自分たちの改革の ペースに持っていこうと、次第に変わっていったという印象を受けました。し かし、地方の国立大学を中心に依然として根強い抵抗感があります。評価結果 による予算配分によって、有力大学にばかり重点配分されるのではないか、と いう心配は解消されませんでした。国から引き継ぐ資産の格差も不安の種です。 また、六年間で結果を出しにくい学問分野が切り捨てられ、基礎研究の低下を 招きかねない、という危惧も払拭されてはいません。その一方、厭戦気分も広 がっているようで、私には気になります。どうせ良くはならないと、若手研究 者を中心に、先行きが見通せるようになるまで、研究条件の良い海外の大学や 研究所に職を求めようという情報が飛び交っているという話を耳にしました。 頭脳流出の加速が心配です。  こうした中、法人化反対を叫んでいた大学も、それぞれに学内の論議を活発 化させています。去年の六月に大学の構造改革プランが文部科学省から打ち出 されました。法人化に加え、国立大学の再編・統合、世界的な水準の研究への 重点的な資金配分、という方針が示されたことは、改革論議に拍車をかけてい ます。すでに今年の一〇月には山梨大学と山梨医科大学、筑波大学と図書館情 報大学が、それぞれひとつの大学に統合する予定です。また来年の統合を目指 して、九州大学と九州芸術工科大学など、八組一七大学が検討を進めています。 この他にも、県域を超えた統合の動きが出始めています。  増えつづけるだけだった国立大学は、再編の時代に入っています。今回の最 終報告を受けて、文部科学省は来年の通常国会を目指して関連法案の作成に取 りかかり、早ければ再来年の春には国立大学法人が誕生する見込みです。そこ で、今後の課題を三点挙げたいと思います。  まず、教員と職員が一体となって改革に取り組んでほしいと思います。検討 会議の議論を聞いていますと、教員だけで大学を経営しているという錯覚に陥っ ているのではないかと感じることがたびたびありました。教員と事務職員が一 体となって知恵を出しあってこそ、大学としての力が発揮できるのではないか と思います。  二つ目は、やはり経営感覚が大事です。法人化によって土地や建物といった 資産が国から大学に移され、大学ごとに収支をとる必要が出てきます。山種証 券の社長から早稲田大学の財務担当の理事になり、多額の債務の処理にあたっ てきた關昭太郎さんは、大学の内側に入ってみると、財務のことをあまりに知 らなさすぎるのに驚かされた、帳簿を読めるまでに職員を一から育て上げるの に七年かかったと話しています。国立大学といえど、財務のプロが必要な時代、 対応が急務です。  第三ですけれども、改革の本義は、受益者である学生や社会にたいして、大 学がどういったサービスを提供できるか、といった問題があります。そうした 配慮のひとつとして、大学ごとに安易に授業料を値上げしないようにとの歯止 めが、報告に盛り込まれた点は評価できます。しかし、法人化がどうサービス 向上につながるのか、といったことはいまだに見えてきていません。競争的な 資金配分、ということが言われだしたとたんに、先生の多くが資金の獲得のた めに、研究、研究と走りはじめたと聞きます。大学の先生たちには、急速な改 革の動きの中で、肝心の教育を忘れないでほしいと思います。また、産学連携 を通して、社会還元を考えることも必要です。  法人化まであと二年。時間はあるようで案外ありません。政府や文部科学省 には、国立大学を法人化することで、大学全体をどうしたいのかといったプラ ンを示すよう求めたいと思います。その上で、大学への投資が充分なのかも含 めて、改革に取り組みやすい条件整備をすすめてほしいと思います。また、大 学関係者には、自分たちの思惑を先行させることなく、大学が果たすべき役割 を考えながら、改革に取り組んでほしいものだと思います。  それでは今夜はこれで失礼いたします。 ---------------------------------------------------------------------- [87-2-2] 3/28 『毎日新聞』社説 2002年3月28日付 「国立大学 理想の法人目指す努力を 文部科学省の「国立大学の独立行政法人化に関する調査検討会議」は26日、 「新しい『国立大学法人』像について」と題する最終報告を公表した。 独立行政法人とは別の「国立大学法人」を大学ごとに設置し、予算や組織面 などで大学の裁量、自由度を拡大する。一方、学外者の大学運営参画を制度化 し、大学への資源配分を第三者評価の導入による事後チェック方式に移行。個 性豊かな、国際競争力のある大学を目指すというものだ。国立大学制度の歴史 的転換といえる。 ただ、最終報告はなお、運用によって右にも左にも行く要素を残している。 狙い通りに大学改革の推進力になる可能性がある一方、これまでと何ら変わら ないことにもなりかねない。国の統制・干渉がむしろ強くなる可能性もある。 大学人の基本姿勢、理念がこれまで以上に重要であり、大学の教育研究につい て、社会の理解を得る努力が欠かせない。 報告は、中間報告で先送りされた課題にも切り込んだ。 まず教職員の身分は、非公務員型を採った。外国人の管理職登用や兼職・兼 業の柔軟化など、多彩な活動が可能となる非公務員型の利点は少なくない。公 務員でないと身分が不安定になる、学問の自由を制度的に保障する教育公務員 特例法が適用されないため教育研究が脅かされる、などの反発も聞かれる。が、 そこは対応次第だろう。学問の自由は憲法に定められた権利であり、毅然とし て臨めばよい。職員の身分は不利にならないような配慮が可能だ。 大学の運営組織は、教学面担当の評議会とともに、経営面の運営協議会(学 外者を含む)を設置。これを踏まえ、学長が最終決定するが、特定の重要事項 は、役員会(同)の議決を経る、とした。大学の意思決定に透明性と説明責任を 取り入れるものにはなった。ただ、これも運用によっては、硬直化、形式化す る恐れもある。 もう一点、国立大学法人の柱である評価システムは、一部煮詰まらなかった。 大学の評価は計量的・外形的な基準だけでは難しい。評価結果を予算に反映さ せるにしても、その方法と手続きは、見えてこない。まだ「具体的に検討する 必要がある」(最終報告)という段階だ。重要な課題であり、慎重な検討が求め られる。 今回の審議は、独立行政法人制度を前提としたところに無理があった。政府 の指揮命令下にある独立行政法人は、自主性・自律性を基本とする大学にはな じまない。報告には工夫もみられるが、限界があったことは否定できない。 その意味でも、今回の報告は、あくまで初めの一歩にすぎない。大学にふさ わしい法人を作る努力は、これからも、不断に続けていかなければならない。 国、文科省には、できる限り抑制的な対応を求めたい。設置主体が国であり、 カネを握っているからといって、安易に権限を振りまわしてはならない。独創 的な、価値ある研究は、国の「指揮命令」的感覚からは生まれない。」 ---------------------------------------------------------------------- [87-3] 学部・団体等の声明 ---------------------------------------------------------------------- [87-3-1] ◆独立行政法人化問題を考える北大ネットワーク声明 2002.4.2 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/402-hunet.html 「新しい国立大学法人」と大学進化の方向 文部科学省の「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」が最終報 告案をまとめた。これは、独立行政法人通則法を大学に適したものに調整する ことが可能かどうかを、文部科学省が協力者60名余と共に4分科会に分かれ 2000年8月以来、1年半をかけ「調査検討」した成果という位置づけになっ ている。しかし、報告案は、現在の政治的・経済的・社会的状況から一方的な 影響を受けており、世紀に一度とも言われる大改革の基盤とすることに耐える 設計図とはなっていない。社会の混乱をとりつくろうために大学改革の青写真 を描いてみても、そこから時代を超えた醒めた普遍的視座は生まれない。調査 検討会議の設計作業が産み落としたものは、まさにそうした、混乱を忠実に反 映したものにほかならない。 大学の内外に、「独立行政法人化という挑戦を受けて立とう」あるいは「受け て立て」、と勇ましく言う人達も少なくない。だが、受けて立つのにふさわし い足場が最終報告の描く「国立大学法人」に果たしてあるのだろうか。“設計 図の歪み”をそのままにして、建築物を立派に仕上げようとする努力は空しい。 私たちが今すべきことは、虚心に、設計図の歪みを点検し、引きなおしていく ことだろう。 最終報告案の特徴 (1)「箸の上げ下ろし」に限定された自主性・自律性 官が「箸の上げ下ろし」まで口を挟む現状を改め、事前管理から事後管理へ重 点を移すことが、独立行政法人制度のメリットの一つとして強調されている。 今の国立大学では、新しい計画実現には概算要求という形式に伴う煩雑なプロ セスと長い時間が必要である。予算執行にも煩雑な事務処理があり大学の活動 の効率を殺いでいる。独立行政法人化後は、運営費交付金が一括して大学に交 付され使用時の裁量が大きくなると言われている。そのかわり、運営費交付金 は、文部科学省が策定する中期目標に対して大学が立てる中期計画に応じて交 付されると共に、事後評価に基づき、改廃および次期運営交付金の増減の審査 を受ける。 簡単に言えば、「箸の上げ下ろし」の自主性・自律性(運営上の裁量)は高ま るが、何を食べるか(教育・研究の活動・組織の内容)については自主性・自 律性を失うことになる。これは「隷属状態中の自主性・自律性」であり、独立 行政法人通則法は大学には適さない、と言われた理由の中で主要なものである。 最終報告における「調整」は、「中期目標については、・・・・あらかじめ各 大学 が文部科学大臣に原案を提出するとともに、文部科学大臣が、この原案 を十分に尊重 し、また、大学の教育研究等の特性に配慮して定める。」となっ ている。国立大学協会が10月29日総会で採択した意見書で強く批判した 「中期目標の大臣策定」と実質的な違いはない。 (2)学術的多様性を損なうトップダウン経営体制  最終報告案は、独立行政法人通則法にはない、大学の運営組織についての詳 細な規制を設けている。簡単に概要を説明しよう。 「国立大学法人」の主な運営組織は、評議会・運営協議会・役員会である。評 議会は「学内の代表者」から成り、運営協議会は「大学の経営に関する学外の 有識者」(非常勤)を含むとあるが、いずれも、選出方法は明記していない。 評議会は教学について審議し、運営協議会は経営面について審議し、学長は、 その審議を踏まえて最終的な意思決定を行う。重要事項については、役員会で 議決する。 役員会は、原則として学長と副学長から構成される。副学長は、大学運営の重 要テーマ(総括、学術研究、教育・学生、財務会計、人事管理、施設管理、学 術情報、環境・医療、産学官連携、国際交流など)に応じて配置され、学長が、 教員、学外者、事務職員から選んで任命する。監事以外に学外者の役員(非常 勤可)を置くことが義務付けられている。 上記のように学長は強い権限を持つが、その選考は、「運営協議会及び評議会 双方のメンバーの代表から構成される学長選考委員会において、学長の選考基 準、手続きを定め、候補者を選考する。」と規定されている。運営協議会は学 外者を含むことになっていて、学長選考に学外者の意見が反映されることにな る。 教員人事については、教員等の人事に関する方針及び基準・手続きは、評議会 の審議を経て、大学内部の規則として定められる。教員の実際の任免について は、学長及び部局長がより大きな役割を果たす、とするが、学部長等の部局長 は学長が任免する、とする。学長が教員任免に直接的関与可能な設計となる。 以上は、大学経営者の権限が強い米国大学の組織に類似している。だが、大学 運営の専門家が米国のようには育っていない日本で、短期間にこのような組織 を強制的に導入すれば、「大学運営の有識者」(文部科学省官僚が大半を占め ることになるのではないだろうか)が、運営協議会委員や 役員に非常勤とし て複数の大学経営に関与し、大学が画一化する原因となる恐れが大きい。 問題はそれだけではない。大学の研究・教育の諸活動は多くの学術的テーマに 分かれており、各テーマの最前線の様相は各分野の者しか判明には認識できな い。独立行政法人化のように大学間競争が強いられる環境で、トップダウンな 経営体制下で少数の分野を重点化する改革を現場の声に耳を傾けることなく断 行するとき、学術的多様性が急速に失われる危惧は大きい。それは日本社会の 知的基盤の衰弱をもたらしかねない。 (3)研究・教育の外部化を指向する国立大学法人制度  最終報告案は非公務員型を提言した。利点として挙げている「柔軟で弾力的 な雇用形態及・給与体系・勤務時間、外国人の学長・管理職・教員への登用、 兼業・兼職の弾力的運用、人事戦略に基く職員採用」の大半は、経営者の視点 からのものでしかない。しかも、連絡調整委員会でも指摘されているように、 外国人登用以外は、公務員型で応対可能なものばかりである。 裁量制・年俸制・ワークシェアリングなど「多様な勤務形態」の導入理由も、 専ら経営の視点からのものとなっている。現在でも、高等教育教員の半数は本 務校を持たない非常勤雇用にあり、専任教員との大きな経済的格差・労働条件 の格差に苦しんでいる。この捩れを専任スタッフの中にも拡大する最終報告案 の行き着く先に見えるものは、労働者・研究労働者をロボットのように効率良 く働かせることにより、研究や高等教育ではなく、利潤追求を主要な関心事と する大学株式会社の姿である。最終報告案が描いた「国立大学法人像」は、非 営利法人化としての私学化を飛び越え、大学の営利法人化を準備するものとなっ ている。 (4)非公務員型によるハードランディング  2月21日の連絡調整委員会でハードランディング(法人化時職員入替)で なければ、独立行政法人化の意義はないと発言する委員が居る が、効率性の 観点だけで人を雇用するという人心無視の経営で大学が活性化するとは思えな い。これは大学に限ることではない。日本社会は人心を凍てつかせて平然とし ている人々によって閉塞状態にある。そういう 人々の価値観が大学を支配す ることを許すことが社会に与える悪影響は決して小さくはあるまい。            ◇ ◇ ◇ ◇ ◇   以上のような「新しい国立大学法人」の設計図で大学を建て直すとき、学問 の自由は「決められたテーマを研究する時の発想と手段の自由」に退化し学術 的多様性は蝕まれ、研究・教育を単なる一つの事業としか見做さない経営者が、 教職員を効率的に働かせることに専念する営利大学に向けて大学は変質してい く。そこには、大学関係者が勇ましく「挑戦を受けて立つ」などと嘯く足場な どどこにもないことを冷静に見極める必要がある。 なお、最終報告の上記問題点の一部が大学側の強い反発によって今後若干修正 されることもあるかも知れない。しかし、独立行政法人制度の骨格を国立大学 法人制度が踏襲するならば、政府の大学への関与の仕方は格段に強まることに は変りはない。特に、6年周期の改廃審査を骨格とする制度であることは、多 様なタイムスパンを持つ諸活動からなる大学の性格に根本的にそぐわないもの と考える。 「痛みを伴う」改革が進行しリスクを回避し生き残りに走る行動が日本社会全 体を覆ったことが、経済的低迷の大きな要因となっていることがしばしば指摘 されている。独立行政法人化により、リスクをとれない環境に国立大学が置か れることになれば、大学全体もまた、長期的な低迷に追いやられるであろうこ とを警告したい。 大学進化の方向  独立行政法人化を含む「大学構造改革プラン」により、国立大学だけでなく、 日本の大学全体が大きな危機を迎えている。研究・教育を受注する下請け会社 になり、自立した精神活動の場としての大学のアイデンティティを失う危機で ある。しかし、同時に大きな好機も到来している。日本社会が必要としている 水路を見いだし呈示することが出来れば、独立行政法人化に向かう大きな流れ を、大学進化への流れに導くことができる可能性はある。 日本の大学はどこに向けて進化することが望ましいのだろうか?それは、大学 自身が困っている問題群の核心ーー各世代の過半数が大学に進む時代において 大学教育の伝統的制度が十分に機能しなくなっていること、初等中等教育への 大学入試の影響の歪みが許容限度を超えつつあること、行政指導が大学の手足 を縛り自由な活動を阻んでいること、高等教育学費の高騰が日本社会の大きな 負担となっていて少子化の原因ともなっていること、等々ーーに向き合っては じめてわかることであろう。 これらの問題の真の解決に向かって大学が進化し始めるための鍵は、多くの関 係者の共通認識となっているように、高等教育予算の充実、予算配分作業を政 府から独立させること、そして、高等教育の形態・内容への夥しい規制の緩和、 にある。これらの困難な課題を回避する改革は、大学を疲弊するだけでなく、 問題を悪化させることになるだろう。 おわりに  「国立大学法人」は、硬直した官の論理と利潤追求を旨とする営利企業の合 体物―フランケンシュタイン―にほかならない。フランケンシュタインは、自 身を創り出した者に襲いかかり、これを滅ぼした。「国立大学法人」がそうな らないという保障はない。この巨大なフランケンシュタインの出現により滅び るのは、日本の学術・高等教育、そしてほかならぬ私たちの社会そのものであ る。そうならないために、私たちは、真の進化を可能にする方向を社会に呈示 し、一歩でも歩み出さなければならない。危機を予知し、これを防ぐために国 立大学教職員に、日本社会が私たちに望んでいるのは何かを考え行動するよう 訴えたい。」 ---------------------------------------------------------------------- [87-3-2] 宮崎大学教職員組合:宮崎大学長宛要望書提出2002.4.2 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3702.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-3-3] 北海道大学教職員組合: 北大学長・評議員への申し入れ 2002.4.2 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3704.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-3-4] 金沢大学理学部 学部会声明 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3703.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-3-5] 全大教中央執行委員会声明3.27 http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/02-03-27seimei.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-3-6] 東京大学職員組合臨時総会決議3.26 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3663.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-3-7] 日本国家公務員労働組合連合会 小田川義和書記長 談話3.26 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/020326kokkoodagawa.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-3-8] 宮崎大学総決起集会アピール3.26 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3700.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-4] 国立大学協会の動き ---------------------------------------------------------------------- [87-4-1] 4/3学長会議での学長からの批判(報道より)  http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3774.htm 宇都宮大学田原博人学長「基礎科学など金にならないが金のかかるものを、各 大学がおろそかにすることが起こりうる」(毎日新聞) 鹿児島大学田中弘允学長「大学の評価結果に基づく予算配分では効率性が重視 され、基礎研究や長期的研究が進まなくなる。文科省が大学の中期計画を認め るというのであれば大学の自主が成立しない」(東京新聞) 滋賀大学宮本憲一学長「2004年度に一斉に法人化するのは無理がある」 (読売新聞) 福井大学児嶋眞平学長「大学の統合再編問題も抱えており、法人化を同時に進 めるのは手続き的にも教職員の負担が大きい」(東京新聞) ---------------------------------------------------------------------- [87-4-1-1] 『日本経済新聞』2002年4月4日付:文科相「一大転換、改革を」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3730.htm 「・・・学長会議に先立ち、国立大学協会と文科省の幹部は二人三脚で、法人 化問題で各地のブロック学長会議を回る"説得行脚"を繰り広げた。国大協は十 九日の臨時大会で最終報告を受け入れるかどうかを決めるが、教職員を「非公 務員」とする内容に組合側から雇用不安、一部大学から「地方切り捨て」との 声が上がったからだ。  全国大学高専教職員組合は「最終報告はアウトソーシング促進など人事の流 動化を提示している。教職員の雇用・身分保障が不安定になる」とし、殊に事 務職員に不安が強いとされる。  また、地方都市の一部大学には法人化のデメリットの方が大きく映っている ようだ。「企業立地や県民所得格差があり、大学経営の自由と言って地方では 実効を伴わない。地方の国大と地域社会にとって憂慮すべき制度設計」と訴え る学長もいる。ブロック会議でも「非公務員化で産学連携が進むというが、大 都市部はともかく地方ではどうか」などの疑問が投げかけられたという。  もっとも、こうした意見はある意味で織り込み済み。「事前の"ガス抜き"が 必要だった」と行脚の意味を打ち明ける大学幹部もいた。」 ---------------------------------------------------------------------- [87-4-2] ◆国立大学協会設置形態検討特別委員会見解 2002.4.1 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/401-kdk.html #(文部科学省と「二人三脚」で法人化案を作成してきた旧帝大法学系「専門 委員」作成文書。このような「黒を白と」言いなす詭弁は国立大学協会の総意 でもないし、国立大学社会世論の憤激を買うものではないだろうか。  なお、この文書は国立大学通信読者からの送付されたもので、文科省幹部と 「二人三脚」で地方国立大学を説得し回った[87-4-1]時に使われたものではな いかと推測される。) ---------------------------------------------------------------------- 「最終報告「新しい『国立大学法人』像について」の検討結果                      平成14年4月1日                      国立大学協会設置形態検討特別委員会 1. はじめに  国立大学協会は、文部科学省,国立大学等の独立行政法人化に開する調査検討会護の中 間報告に対して、「国立大学法人化のありうべき方向を示すものとして評価することがで きる。しかし、なお、いくつかの重大な問題点が残されている。」として、総括的な問題 と具体的な問題を指摘していた。ここでは、中間報告と比べて変化しあるいは新たに定ま った点を中心に、最終報告をどう受け比めるべきかということを検討する。 2.総評  国立大学の法人化は、戦後日本の大学制度改革の中でもっとも大きな改革の1つである。 国立大学等関係者だけでなく、公私立大学、経済界、言論界、高等教育や学術・科学技術 政策についての有織者、それに担当の文部科学省等から広く知恵を結集して未決着部分も 決着させ、最終報告がまとめられた。  最終報告の法人像は、全体として、国立大学法人法による法人化、国を設置者・経費負 担者とすること、大学と法人一体の組織、教学経営が統一された運営組織、大学業務の特 性を尊重した中期目標・中期計画、外部意見を入れた学長選考制度、さらには柔軟な人事 制度等において、基本的に国の経費で教育研究等を行う開かれた自主・自律の責任組織と なっており、国立大学におおむね適合的な法人像になっている。  また、同時に、「高等教育・学術研究等への効果的で十分な支援について責任が問われる」 と、国の責任も明示されている。  従って、国立大学協会は、最終報告を、基本的には、国立大学が国民の期待に応えて教 育研究等において世界的な競争カをもち地域に貢献する大学として飛躍していくための改 革案であると受け止める。大学構成員は新たな意織で取り組むことが必要である。  ただ、問題点や懸念がないということではない。とくに職員身分の非公務員型について は、環壊整備や法的整備などの点で多くの検討課題があり、また、財務会計制度の財政的 基盤を確保する方式や運営費交付金の積算・配分方式等が依然不明である。これらについ ては、政府は国立大学協会と協議しつつ、今後早急な取り組みを行うべきである。 3. 設置者  国立大学協会は中間報告に対して、学校教育法第2条・第5条との関係で、国を設置者と し、国立大学に対する経賞負担者としての国の責任を明確にするように求めていた。また、 国を国立大学の設置者とすることにより、大学組織と法人組織を一体とすることになる点 からも、国を国立大学の殻置者とすることが必要であると見ていた。  最終報告においても、国を国立大学の設置者とすることが堅持された点は評価できる。 4.運営組織  国立大学協会は中間報告の複数案に対して、それぞれ経営事項と教学事項を中心にした 運営協議会と評議会という審議機関のほかに、役員組織について役員会方式も参考になる とした。ただし、もともと経営と教学の分離には無理があることを指摘するとともに、役 員会に議決制を持ち込むことには賛同せず、また運営組織のあり方について大学ごとの幅 を認めるよう主張した。  最終報告では、役員会・運営協議会・評議会からなる運営組織に落ち着き、経営・教学 の双方にまたがる案件の扱いや、役員会で議決すべき「特定の重要事項」の内容について は、各大学の裁量を認めるなど、一定の配慮がなされている。  なお、役員の選考方法については、学長を中心にした役員会が国立大学法人運営に責任 を持つことになるので、副学長の任命は学長が自らの責任で行なうとともに、大学の外部 の者や事務職員から学長が任命すべき役員の数や比率、選任の基準に特段の定めはないも のと解する。 5.非公務員型  最終報告では、職員身分について「非公務員型とすることが適当である」と結論された。 一方、国立大学協会も、「現行法のままでは非公務員型も考慮に値する」としていた。公 務員制度改革が小幅な場合、非公務員型の検討もありうると見ていた。  最終報告では、非公務員型は、柔軟かつ弾力的な届用形態・採用方法・給与・勤務時間、 外国人の管理織への登用、兼職兼業の弾力化などにメリットをもっており、しかも、非公 務員型の場合でも、法人への職員の引継や退職手当の期間通算には法的措置を講ずるとし、 また、医療保険・年金、宿舎については、国家公務員と同じ扱いになるとしている。  ただ、最終報告では、非公務員型で任期制を広く導入するための法整備や労使関孫を円 滑に処理する仕組み、国家公務員に準じる公共性の確保、職員身分の切り替えに伴う各種 の代替措置や移行の問題など、なお検討課題が多い。付随的な法令・予算上の措置も必要で ある。非公務員型の長所を生かし、移行に伴う当面の混乱を出来るだけ避けるためにも、 政府は国立大学協会と協力して、責任を持ってこれらの課題の検討と整備に当たるべきで ある。 6. 教員等の人事  非公務員型の場合、教員等人事に「教育公務員特例法」が適用されない。最終報告では、 その代替措置として、教員の人事方針・基準・手続きは、「評議会の審議」を経ることにな っており、具体的には選考についても「専門性を有する学部等の考え」も重視されるべき だとしている。国立大学協会はその点の法令化も求めてきた。  不明なのは、学部長等の選考である,この基準・手続き等の扱いは、教員の場合とは違っ ている。教員と同様の基準・手続き等を採りうるものと解する。 7. 学長選考  最終報告は、「学長選考委員会」を学長選考機閣とした。この「学長選考委員会」は、 遅営協議会と評犠会の両方のメンバー(の代表)からなり、候補者の調査や絞り込みと学 長侯補者の最終的な決定を行うことになっており、学内での投票はその中間での学内意向 聴取手続きに位置付けられている。  この学長選考手続きは国立大学法人における学長の性格や運営組織と整合的なものであ る。ここで、「学長選考委員会」を学長選考機関とする基本点を踏まえれば、運営協議会と 評議会の両方を学長選考機関とするなど、ある程度大学ごとの工夫の余地も残すものと理 解する。なお、学長の解任に関しては、どのような学内機関がどのように関与するかなど、 基本的な仕組みの検討が必要である。 8. 目標・評価  最終報告では、理念や長期的な目標が大学の自主性や個性の根元としてとらえられ、中 期目標は文部科学大臣が「定める」ものの、国立大学法人法等によって、各大学の理念等 を踏まえた中期目標原案への配慮の義務や大学業務の特性への配慮の義務を文部科学大臣 に課すことになった。また中期目標に掲げる項目から大学の「理念」が削除されたし、中 期目標・中期計画の原案を各大学で一体的に検討することになった。かなり大学らしい特 徴が出るようになった。  もっとも、運用上の考慮は必要である。例えば、大学評価・学位授与機構の教育研究評 価について、評価基準や人的資源の面で法人化に見合った整備が必要であり、一斉移行後 の評価サイクルの工夫も必要であり、また目標・評価の労カが過大となり大学から教育研 究の時間を奪ってしまうことのないよう配慮すべきである。 9.財務会計  財務会計制度については、特定運営費交付金が「特定の教育研究の施設の運営や事業の 実施」として明確になったこと、「システム」について国立学校財務センターを活用する とされたこと、長期債務を病院を有する大学に承継させる点が改められたこと以外、中間 報告と変わらない。  とくに、「高等教育や科学技術・学術研究に対する公的支援を拡充する」する具体的な 方法と、運営費交付金の算定基礎・配分方式、評価の予算配分への反映方式については、 政府は国立大学協会とも協議しつつ早急に検討作業を進め、骨格の姿を示すことが望まれ る。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-5] 通常国会 ---------------------------------------------------------------------- [87-5-1] ◆衆議院文部科学委員会議事録3/22(山梨大学・山梨医科大学の統廃合) http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009615420020322005.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-5-2] ◆参議院文教科学委員会議事録4/2(統廃合問題・独立行政法人問題) http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0106/154/15404020061005a.html ---------------------------------------------------------------------- [87-5-2-1] 山本議員(公明党)質疑 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/402-san-bunkyoukagaku-yamamoto.html ♯国立大学法人会計基準等検討会議が間もなく発足(岸田副大臣) ---------------------------------------------------------------------- [87-5-2-2] 林議員(共産党)質疑 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/402-san-bunkyoukagaku-hayashi.html ---------------------------------------------------------------------- [87-5-3] ◆衆議院予算委員会第四分科会(文部科学省所管について審査 ) #大学構造改革政策に関する種々の質疑 http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/0034_f.htm 第1号3/1 http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/003415420020301001.htm 第2号3/4 http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/003415420020304002.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-6] 経済財政諮問会議2002.4.3 http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403agenda.html ---------------------------------------------------------------------- [87-6-1] グローバル化への対応(本文、参考資料)(有識者議員提出資料) http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403item1.html ---------------------------------------------------------------------- [87-6-2] ◆研究・技術開発の活性化について(本文、参考資料)(有識者議員提出資料) http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403item2.pdf テキスト版:http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3737.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-6-3] 坂口臨時議員提出資料(厚生労働行政における対応) http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403item3.html ---------------------------------------------------------------------- [87-6-4] ◆遠山臨時議員提出資料(経済の活性化と大学) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3736.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-6-5] 尾身臨時議員提出資料(科学技術を中心とした経済の活性化方策について) http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403item5.pdf ---------------------------------------------------------------------- [87-6-6] 平沼議員提出資料(グローバル化による経済活力再生について、技術開 発を通じた経済活性化策について) http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403item6.pdf ---------------------------------------------------------------------- [87-6-7] 塩川議員提出資料(『経済活性化』のための研究開発と税制) http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403item7.pdf ---------------------------------------------------------------------- [87-6-8] 休日の長期化・分散化の経済効果について http://www5.cao.go.jp/shimon/2002/0403/0403item8.pdf ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-7] 総務省 政策評価・独立行政法人評価委員会 ---------------------------------------------------------------------- [87-7-1] 第14回2002.3.22議事要旨 http://www.soumu.go.jp/kansatu/seisaku-giji-1414.html ---------------------------------------------------------------------- [87-7-2] ◆第13回2002.2.22議事録より http://www.soumu.go.jp/kansatu/gijiroku-13.html 平成14年2月22日(金)14時00分から16時20分 出席者 (委員会)  委員:村松岐夫委員長、富田俊基独立行政法人評価分科会長、 樫谷隆夫、竹内佐和子  臨時委員:宇賀克也、金本良嗣、高木勇三、田辺国昭、新村保子、黒川行治  専門委員:翁百合、木村陽子、吉野直行、稲継裕昭、梶川融、武田尚仁、 山本清、山谷清志 (総務省)  若松副大臣、塚本行政評価局長、広瀬審議官、 橋口行政評価局総務課長、新井政策評価官、讃岐評価監視官 ほか -------------------------------------------------- 議題 (1)平成14年度行政評価等プログラムにおける政策評価テーマの取りまとめ に関する審議 (2)政策評価・独立行政法人評価委員会における独立行政法人評価に関する 運営についての取りまとめに関する審議 -------------------------------------------------- 「○金本臨時委員 一つは全体のトーンですが、どうも官僚統制的な書き方というか、総務省が基 準を決めてそれに従っているかどうかチェックしますというふうな書き方になっ ていて、何か少し工夫をする必要があるのかなという気がいたします。  独立行政法人の制度を作った理念というか、もう少しダイナミックなも のを想定をしていたのではないかと。国民に対してすぐれたパフォーマンスを 最低のコストで提供するために最大限の自由度を持たせるということと同時に パフォーマンスをちゃんとチェックしましょうと。そういうダイナミックなも のとして捉えたところにどう貢献できるかというところをもう少し明確にして おいていただかないと、何か官僚的基準があって、それに従っているかどうか、 それを調べますという書き方に見えてしまう。本来の意図はそうではないんだ と思うのですが、そう見えないような工夫を少し、前文のあたりとか中身の書 き方についてお願いできればと思います。 もう一つは、独立行政法人ですと、いわゆるベンチマーキングというの が手法のかなりのものになるんだと思うんですが、これはただ基準というか単 価を計算して機械的に比較をするというところで終わるものではなくて、いか にうまいベンチマーキングを組み立てるかというところが一つの、民間企業等 ですと経営者の能力の一つであろうというふうに思います。ですから、きちん と正確に比較ができているかということを調べますということよりは、むしろ その組織にとってパフォーマンスを向上させるために一番ベストなベンチマー キングのやり方になっているかどうかというところが重要なんではないかなと いう気がしていまして、横断的に見る組織もそういう視点でそれぞれのところ がそれぞれにベンチマーキングの仕方を工夫するわけですけれども、それが本 当に非常に有効なものになっているかという視点を入れる必要があるのではな いかなという気がしています。 ただ、これ余り強調してそういうところに手を突っ込み過ぎると、かえっ て個々の組織を萎縮させてしまうという面がございますので、実際の適用の仕 方というのは難しい面があるんですが、いずれにせよ独立行政法人はどの組織 をとっても、それほど簡単に評価ができるわけではありませんので、評価の仕 方が本当に適切になっているかどうかというのは上から基準を設けて客観的・ 公正かどうかとかということでは済まないんだというふうに思います。」 「○讃岐評価監視官・・・ 一つだけ。基準というのはあくまでも各府省評価委員会が自分たちの所管の独 立行政法人をどのように評価するのか、そこをまず府省評価委員会が基準を作 ると。その基準に適合しているのかどうかということについて基準適合性とこ こで書いているのは、その府省評価委員会も第三者機関であって、独自の第三 者機関としての評価を行うわけですが、それがそこで定められた基準に沿って やっているのかということがまず重要であろうという、そういう考え方に立っ ているということであります。 ベンチマーキングなどにつきましても、一律にというわけではなくて、やはり 金本先生御指摘のように、本当に有効なベンチマーキングというのがどのよう にでき得るものなのか、やはりまだいろいろな手法もあるかもしれませんし、 そういったものをいかにして高めていったらいいのか、実効性を向上させてい くにはどうしたらいいのだろうかと、そういう意識の中でまたこれから具体的 な評価結果が出てきましたら、そういったことも含めて御議論をいただくよう な形にしていければというふうに思っております。」 ・・・・ 「○富田分科会長  金本先生より、非常に官僚統制的な表現だと言われたんですが、私は国民、 納税者の立場から考えた場合に、独立行政法人という組織が初めてできると、 それは立法府からも従来より独立し、民主主義的な統制がかかりにくい、しか も民間企業のように市場に出ていないので、市場メカニズムによる統制も利か ないという新しい船出を我が国でするわけでして、そういう意味で、納税者と しては、いろいろときちんと評価してもらわないといけないと。この評価と申 しますのは、結局は、民間企業であればマーケットで評価されるわけですけれ ども、それに代わるものとして各府省の評価委員会があり、その各府省の評価 委員会の仕事がきっちりいくかどうかについて、この当審議会が役割を果たす ということを考えた場合に、不安材料は非常に多いというのが私の印象でして、 とりわけ各府省の評価委員会で評価する場合に、ここでもありましたけれども、 利害関係者の意見だけで評価してしまうというようなことではなしに、またそ こには当然情報の非対象という専門家しか評価できないという問題に絶えずぶ ち当たるわけですけれども、そういうこともやっぱり乗り越えて、やはり各府 省きちんとした第一次評価をするということの重要性ということを、ややくど くど言われたらそうなんですけれども、やっぱりこれまで以上に民主主義の統 制も市場の統制もきかないところに各独立行政法人が乗り出していくわけです から、私はやはり各府省の独立行政法人評価委員会がきちんとした評価できる ような後ろ盾になるようなものなので、これは官僚統制的というよりも民主主 義的統制の表現として私は考えたいというふうに思うんです。 先生がおっしゃったように、ベンチマーキングの問題というのは私そのと おり各独立法人でそれぞれ工夫してこれから作っていくべきものであるし、も ともと簡単に評価できないことも確かだと思うんです。ただ、明確な目標を設 定して、それをプライマリーである各省大臣と独立行政法人の長が契約して、 ちゃんとやっているかどうかということをやっぱり評価していくための仕組み としては、私は結構重たいものだと思います。そういう意味で、官僚統制とい うよりも、私の場合はちょっと先生とは違うんですけれども、厳しい方が納税 者からして当然いいだろうというふうに思います。」 「○山本専門委員 金本先生の御意見はごもっともでして、結局ニュー・パブリック・マネジ メントというのは裁量性を与えるかわりにアウトプットで管理しようというわ けです。ですから、当然このアウトプットを管理するための基準をお書きになっ て、非常に統制がかかって、独立行政法人の評価が重要であるということはそ のとおりなんですが、まさしく前文と3ページ目の表現の最初の出だしのとこ ろに、やはり主務大臣からいわゆる手続とかプロセスに関する裁量性を十二分 に与えて、それで評価も機能するんだということを、やはり盛る必要があると 思うんです。 先般、先週エージェンシー化に関する権威者であるポリット先生も来られ まして、財務省でも講演していただいたのですけれども、要するに裁量性を与 えずに成果だけをがんじがらめに評価するということは、これは一番ニュー・ パブリック・マネジメントに対する効果をないがしろにするということであり ました。したがって、統制を厳格にしてこういう基準を明確にするという ことは当然必要であるわけなんですが、主務大臣から過度の従来どおりの干渉 なり関与がないかどうか、主務省及び財務省からの過剰な財務統制がないかど うか、そういったことについてもそれなりに盛り込むというのは金本先生おっ しゃるとおりだというふうに理解しております。」 「○山谷専門委員 つまり、評価というかコントロールの考え方が2種類あって、そこのとこ ろがはっきり区別されていないところに問題があるんじゃないかなと思うんで す。つまり、きちんとした仕事をさせるという、英語で言えばコンプライアン スとかレギュラリティとか、そこの部分を担保するというコントロールの仕方 と、もう一方では成果を出してアウトカムあるいは業績を上げるという2種類 あるんですが、これを読んでいる限りはやっぱり前者のきちんとした手続を守っ てどうのこうのという、その印象が強過ぎるんですね。だから、これやっぱり 分けて書いて、あるいはもう少し工夫してやらないと、今までこの独立行政法 人の人たちというのはまさにコンプライアンスとかレギュラリティだけでやっ てきた人たちですから、そうじゃないものもあるんだということをはっきり言 わないとまずいんだろうと思うんです。」 「○竹内委員  まず、富田さんがおっしゃった独立行政法人がマーケットによる評価が受け られるかどうかという点について言及なさったので、ちょっとその点、まず1 点目なんですが、やはり独立行政法人はあくまでも顧客がいるという前提があ るんではないかと。つまり、省庁が直接に政策とサービスをやるんではなくて、 政策は作るけれども、サービスの提供ないしは研究開発などはこの独立の組織 がやるという場合に、この独立の行政組織がいかに社会的ニーズを非常に即応 的に、社会のニーズに応じて新しく開発して、新しい研究をしてくというよう なことから言えば、擬似的にはマーケットはあるんではないかと。その擬似的 なマーケットをどのような指標で捉えていくかという場合に、恐らく方法はあ るんじゃないかと。もちろん利用者数とか、あるいはもし維持的な料金という ふうな形をとれれば、会計的な手法を経年変化でとるという方向もあるし、私 はサービスとの関係でいえば十分に市場の動きを反映させる方法があると思う ので、それはきちっとやるべきではないかと。・・・ 2番目なんですが、コントロール的なやり方は研究開発機関には余り適応でき ないものがあるんじゃないかと。研究開発というのはある面で天才を育てない 限りは新しいものは出てこないわけで、やはりとんでもないものを上位の研究 者のレベルをがんと上げないことにはどうにもならないんで、余り平均値に合 わせた評価ということは、要するにむだになっちゃう。つまり研究環境がいか に自由に、異質なものも含めてどんどん上位のレベルを上げられるかというこ とになれば、これはもうコンプライアンスとか言っている場合じゃなくて、と にかく天才を育てるくらいのことを考えない限りはもったいないというか、税 金を使って研究開発している意味がないというふうに考えると、コンプライア ンスとかそういうパフォーマンスという言葉でもちょっと弱い、もっと新しい 方法というか、戦略的目標みたいなものも含めてここの独立行政法人にくっつ けていくというか、そういう方法もあるんじゃないかと思うので、アウトカム の方についてはもう少し何か伸び伸びとした指標をくっつけるという方法があ るんじゃないかと。」 ・・・・ 「○田辺臨時委員 1点ほどですけれども、恐らく各府省でやっている方の独立行政法人の評価委 員会及び評価の評価をやっている我々の仕事、特に我々の方の仕事ですけれど も、恐らく三つぐらい法律の中に書いてあるわけですね。一つは、各年度の評 価を見て、法律をもう一回評価して意見を言うという部分。 それから2番目は、中期目標期間が終了した段階でどうなっていたんだという 評価をもう一回見て意見を言うという部分。 それから3番目に、ここは若干ジャンプしている気がするんですけれども、主 要な事務であるとか事業の改廃に関して意見を言って民間化せよであるとか、 この事業を廃止したらといった点を勧告することだろうと思うんです。そうな りますと、この評価を行った後、どういう利用のされ方をするのかということ を考えて、その利用を高めるような形の環境というか、眼差しを我々が提供す るということが必要になってくるんだろうと思います。 そこから見ていきますと、一つ明らかにこれ問題ではないかなという気がする のは、例えば5ページのところの(イ)のところですけれども、「中期目標期 間に係る業務の実績に関する評価結果」の評価の部分ですけれども、これ各年 度でやっている作業と全く同じという見方です。そうなりますと、各年度の積 み上げとして中期目標期間が終わった後というのは、例えば次に中期目標を大 臣の側が設定するときに何か役に立たせるようなことになりますし、それから 独立行政法人の方で中期計画を目標を受けて立てるときにもう一回役に立つよ うな情報が出ているかどうかということになろうと思われます。これは次年度 に役立てるという、各年度の評価の情報とはちょっと質が違うんではないかと 思うんです。そうなりますと、これ「(ア)に準じて評価を行うこととする」 とそのまま書いていいのかなと。つまり、中期目標期間が終わった後というの はもう少し見方、それから利用のされ方が異なりますので、それを入れ込む必 要があるのではないかというのが1点目です。 それから2点目は、ここの中には書いておりませんけれども、主要な事務・事 業の改廃に関してということです。これは、大臣に意見を言うわけですけれど も、例えば民間化等になりますと設置法を変えるということになりますので、 かなりある意味では強い権限ではあるんですけれども、そこは中期目標期間の 後の評価を、それだけではないと思いますけれども、ベースにして何かをもう 一回言うと、我々が言うということになりますので、そこがうまく入り込める ようなものに、この段階ではまだ書かれておりませんけれども、形を作ってい ただければと思います。以上。」   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-8] 意見など ---------------------------------------------------------------------- [87-8-1] ◆下山房雄下関市立大学長:"Season's Greetings"(02.03.27) (「下山房雄の論集」ページより、許可を得て転載します) http://www.shimonoseki-cu.ac.jp/~shimoyama/ 「卒業式が一昨日済み、次の大きなイベント=4月8日の入学式に向けて、桜を 眺めています。ふつうでしたら、うきうきした気持ちになるところですが、大 学問題がミクロ、マクロ両レベルにおいて、深刻な事態で胸は重い。  まず前者のレベル。下関市立大学来年度財政が、授業料増収分3000万円だけ 歳入超過となる、つまり市は大学で3000万円もうけて他の財源に充てることに なった。市議会の審議に注目してはいたが、案の定、市の方針は規制されなかっ た。授業料・入学金だけで経常費をまかなうというまことに特異な大学財政の 積年の構造が一層悪い方向に「改革」されたというほかない。  マクロのレベル。「調査検討会議」答申の形でこのたび提示された国立大学 の独立法人化の姿が、9条解釈改憲でアジア最大の軍事力を備えたのにも似た 23条解釈改憲というほかない大学自治破壊の内実のものであること。大学は運 営諮問会議などによって社会各層の意見を聞くべきであるが(「大学と社会― 交流の深化に向けて」[87-8-1-1]参照)、それをどう消化するかは大学が主体 的に決定すべきであるのに、重要事項を決定する「役員会」に学外者を必ず含 めるとするなど外部介入のルートを設け、教員の直接民主主義でことを決定す る「教授会自治」はまったくの片鱗も残されていない姿。次に引用する私の大 学管理論とはまったく逆の提案である。憂慮に耐えない。  ・・・「 現在、時論として囃される大学管理論は、経済危機のもとで漂流 状態にある民間経営手法をあえて高く評価し、その大学への導入を唱える議論 である。学長の指令を、賃金とポストの裁量的決定を武器として教員に徹底さ せるトップダウン方式で大学改革が成就するというのである。学長のイニシア は不可欠であるが、しかし、教員が自己の教育理念に基づき行なう自発的努力 が全体のものとなり制度化されていくというボトムアップ方式を軽視してはな らない。」(下関市立大学同窓会会長へ第4回大学振興賞候補者を推薦す る手紙から) ---------------------------------------------------------------------- [87-8-1-1] 下山房雄(下関市立大学学長)「大学と社会―交流の深化に向けて」 http://www.shimonoseki-cu.ac.jp/~shimoyama/daigaku-syakai.htm 「第二次大戦後、日本の大学は国家主義の鎖から解放され「学問の自由」のも とに大いに学術研究を進めてきた。しかし「大学の自治」が象牙の塔に引きこ もって教員の狭い職業的利益を守る盾に使われる弊害も無いわけでは無かった。 社会との密度の濃い交流を拒否せず、むしろそこから研究教育進展のエネルギー を汲み出していく大学「改革」が為されねばならない。  社会とは当然に産業界のみではない。また産業界自体、会社だけでなく、労 組あり、協同組合ありの複合的構成の存在だ。  大学と社会の関係を取引関係に擬して、タックスペイヤーの意見を大学は聞 くべきとの主張は最近強力だ。だが国民住民の中には、税金も納められない経 済弱者が含まれること一つを考えても、その主張は大学が関わるべき社会を狭 くしすぎている。高額所得者だけに選挙権があった時代とは、今日は違うので ある。  経済社会に占める位置、抱く思想信条などなどにおいて、多種多様な要素か ら成る社会と、大学が繁く深く付き合っていくのはなかなか大変な途である。 しかしその途を進まねばならない。  その際に、社会の側は大学の実情を正確に理解せねばならぬだろう。メディ アの論壇で支配的な怠惰な大学教員のイメージ、進学が大衆層に及んだので大 学生がバカになったという議論などは殆ど間違いと私は主張する。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-8-2] 北海道新聞・今を読む2002.4.7 野田正彰「校長職に埋没していないか」 #結語「自分の職業、地位によく適応する者は、社会全体での機能を見失う」は 高等学校の校長に対する警告に留まらない普遍性を持つ警告といえまいか。 ---------------------------------------------------------------------- [87-8-3] 岡本 和夫(東京大学大学院数理科学研究科前研究長)「自由を我らに」 http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews/news2001-1.html#kantou 「・・・まじめに考えなくてはいけないことは、競争原理の導入が規制強化と 裏腹に行われようとしている現実である。国立大学の法人化問題がどんな結末 を迎えるのか、未だ予断は許さない。一方、先行して独立行政法人化した諸機 関の話を聞くと、法人化によって獲得したものは自由と言う名の新しい規制強 化であるように思えてならない。「あなたは自由です。だから私たちの要求に 応じる必要はありません。私たちの要求に応じようと拒否しようと財政的には 自立することができる自由が、あなた方にはあるのですから。」 ---------------------------------------------------------------------- [87-8-4] 長谷川浩司「最近の動きから」 http://www.math.tohoku.ac.jp/~kojihas/index-j.html#comment ---------------------------------------------------------------------- [87-8-3-1] 2002.4.2 「農水省プラス厚生労働省の BSD 無策についての報告では、表現が丸くなっ た点があるものの「失政」が認定され、今後の課題として専門的知識のある人々 による委員会が設けられるべきだという内容となった。文科省の昨今の政策に ついても構造は同じだと思われ、同様の報告あるいは提言があってしかるべき だと思う。しかし大学が霞ヶ関の強い統制下に入りつつある現在、政策の誤り を訴えるのは容易なことではない。(文科省以外にも、たとえば大学ごとに違 う看板を強制するのは財務省のようでもあるが。文科省が研究の実態がわかっ ていない人々の組織だからそれに屈するのであろう。) 大学に関してだけでなく、教育基本法第 10 条にうたわれるように国は側面か らの支援に徹するべきである。教育機関の独立性を確保するため、事務局=文 部省が主導する中教審を廃止して、より独立性の高い新たな機関が独自の事務 局とともに構想されるべきだと思う。」 ---------------------------------------------------------------------- [87-8-3-2] 2002.3.30. 「新聞をはじめとして、色々な形で国立大学の今後が話題にされている中、数 学会を機会に丸山正樹氏(京大)などに話を聞いた。いわく、文科省「調査検討 会議」の最終報告とりまとめ最後の段階で、長尾会長が少しでも押しかえそう とした努力は多とすべき点があるとのこと(中期目標関係の文言の削除)。しか し具体的な文章となったことで、某研究科長に「この法人化ではまったくメリッ トがない」とまで言わせるなど、報告は失望感を与えている。今後各メディア の言論には少しでも大本営的にならず、有益な役割をはたすよう願いたい:ま だ努力の余地はある、とのことであった。奨学金の問題をはじめ高等教育への 国の投資義務を明確にすることや、無原則な改組の抑止などが問題とされるべ きであろう。(追記:マスコミもこれだけ電波があるのだから、政治家個人の 問題以外にも重要な政策論議について粘りづよい報道をしてほしいものだ。)」 ---------------------------------------------------------------------- [87-8-5] 高等教育フォーラムより ♯(独法化後の国立大学に教官として赴任を予定している貝塚民雄氏(企業研 究者・ペンネーム?)が独立行政法人化反対派を批判(4571)すると同時に国立 大学批判をも批判(4537)している。また、「ファシズムの台頭に先立って知識 人バッシングが起こるという原則」があることを指摘し、「官僚バッシング、 政治家バッシングから大学及び大学教官バッシングへと時代の気分が移ってき ている」ことを憂慮している(4562)。) No.4537 「事実にもとづいて議論しよう」 2002.3.30 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4537.html No 4562 「蝶の舌」 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4562.html No.4571 「団藤さんの処方箋」 2002.4.4 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/4571.html ---------------------------------------------------------------------- [87-9] ◆意見募集「文部科学省における研究及び開発に関する評価指針(草案)」(締切 4/30) http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2002/020306.htm ---------------------------------------------------------------------- [87-10] 日経新聞訴訟判決「一審判決で守屋氏ほか会社ぐるみの違法行為を認定」2002.3.26 http://www5a.biglobe.ne.jp/~NKSUCKS/journal1.html#020326 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-11] 法科大学院問題サイト ---------------------------------------------------------------------- [87-11-1] これはやばいよロースクール(法科大学院) http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Stock/4867/ ---------------------------------------------------------------------- [87-11-2] Manaboo's Room:司法制度改革リンク 最終更新:2002/4/4 http://www.manaboo.com/shihou-link2.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [87-12] 読者からのメール ---------------------------------------------------------------------- [87-12-1] アメリカ感染症 Date: 2002.3.26 From: 国立大学付属病院教官(匿名希望) http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/02/326-kurokawa.html 人はどうしても自らの立場と体験から,物事を判断し発言せざるを得ない。黒 川氏の御発言*1も“公正さ透明性”などなるほど傾聴に値する部分も多く、有 意義な御発言とは思うが、見方によっては私のように逆の取りようもある。ま ず、医学という実学の世界ではなるほど,指摘されたように米国の水準は高く、 世界をリードしている。しかし高度な医療がお金があればいくらでも受けられ るその一方で、社会保障の面では貧しきものに非常に冷たい国であることも否 定はできまい。米国に比べ劣っているシステムと指摘された欧州とはまったく 比較になるまい。私には米国に長期留学した経験がないので、直接見聞したわ けではないが、米国での補助金獲得合戦の弊害は良く指摘されている。研究者 とは名ばかりで、研究費獲得が主な仕事になっていることはめずらしくないよ うだ。大学や研究所の業績は予算をできるだけ集めていかによい設備どころか ほとんど研究そのものを購入できるかにかかっている場合もあると聞く。これ は企業での空洞化現象と全くおなじであり、経済論理を優先する米国流のいき つく先ではないでか。(既に日本でも仕様書作成が主要な研究活動と化してい るところもあるように思われる。)。私には巨額な研究経費を拠出できる経済 と英語使用の有利性をアメリカの制度が優れていると誤認しているように思え る。挙げ足をとるわけではないが“文系科学者も”という辺りの発言が気にな る。そもそも科学とは人文科学と自然科学が両輪のはずであり、どうも応用面 重視の御提案と思うのである。   *1 http://www.sci-news.co.jp/news/kikaku/kurokawa1.htm  また税金の使用を強調されるが、税金の使用であるからこそこのような効率 第一主義では困るのである。経済的に利益が上がるのであれば誰も苦労はしな い。社会基盤の整備、特に教育や学術は資金を投下したものがそれを回収でき ないからこそ、税金で行われるのである。研究者に経営感覚が要求されるとい う現在の風潮を安易に是認することはおかしい。おかしいことはおかしいので ある。(医学系は特に安易に受け入れすぎる。病院業務と研究の分離が特にあ いまいなためであろうか。)ソクラテスは妻の言うような愚か者であろうか! 黒川氏はさらにアメリカ式が日本で取り入れられないと批判を繰り返される。 でも良く考えるとこれは当然のことであろう!。日本では長年日本語が話され、 日本式の思考や情緒が共有されている。どこの国でも同じである。その国に生 まれ育った人でも、一旦もし外国の思考や情緒に変わってしまい、母国に帰っ て、その思考や情緒を押し通せば周囲に軋轢をおこすことはやむを得ないであ ろう。研究者といえども日本で暮らす生活者である。社会構造構造を無視して “アメリカでは雇用はこうだ”と実行されるならアメリカで部下を雇用してい ただくか、部下を持たない立場でなければ許されない(我が国には我が国の労 働慣習にのっとった労働法規が厳に存在する。)であろう。 また年金等の社会構造改革?について述べているのも、どのような裏付けがあ るのか理解に苦しむところである。現在の一般的な日本の社会構造とは合わな い研究者雇用形態を作るために、なぜ一般国民の年金制度を変更しなければな らないのか、これを契機に(このリストラ時代に)他の産業の労働者にどのよ うな不利がおよぶか考えたうえでの発言なのか、またいったいそれを国民が受 け入れうるのか、考慮すべき点は多々存在する。 そして最後に米国で研究を行った多くの外国人研究者が指摘する,米国の教育 問題の深刻さを指摘しておきたい。米国の研究が多数の外国人研究者によって 支えられている点を忘れてはならない。“種まく人と刈る人と”である。今後 日本はその経済的繁栄により東南アジアの優秀な研究者を吸い寄せ、研究マネー ジャーとなり、一国繁栄主義を採るならば米国流も悪くないが。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題に関連する情報(主に新聞報道・ オンライン資料・文献・講演会記録等)へのリンクと抜粋を紹介。種々のML・ 検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 【関連サイト】http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp ------------------------- 発行部数(括弧内は3/24からの増減) (2002.4.5 現在) 1720(+20): Mag2:993(+8)|CocodeMail:388(+6)|Pubzine:97(-1)|melma:77(+4)|  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