通信ログ
Subject: [kd 03-06-12] 小柴氏が国立大法人化を批判
From: TSUJISHITA Toru

国公立大学通信 2003.06.12(木)

--[kd 03-06-12 目次]--------------------------------------------
[1] 6/12 東京大学職員組合「参議院文教科学委員会は中止になりました」
[2] 6/11朝日新聞ニュース速報 国大協の法人法案めぐり、一部学長から異論
[3] 6/12共同:「基礎科学は「冷や飯」 国立大法人化に強い懸念 小柴氏」
[4] 6/3文教科学委員会における小野善康参考人の意見
 [4-1] 国会での参考人意見陳述(6/3)録より
[5] 意見広告6/10の画像ファイル
[6] 全大教九州、九州私大教連、国公九ブロから文教科学委員への再度要請
[7] 神沼公三郎(北海道大学)「参議院文教科学委員会傍聴記」
[8] 渡辺信久(北海道大学):参議院文教科学委員会委員への要請
[9] 数理News 2003-1(5/15) 薩摩順吉(東京大学)「法人化」
[10] リンク訂正:国会審議を中断させた資料
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国立大学協会総会の傍聴は、国立大学教員には許されていませんが、報道関係
者には許されています。昨日の総会では結局、何も意見表明はしなかったよう
ですが、そのような協会運営への批判意見は報道されました[2]。国立大学協
会の責務放棄に疑義を唱えた学長が複数おられただけでも、救われる思いがし
ます。しかし、「国大協は文部科学省と交渉を続けてきたが、社会の声や政治
的な力で今の形に落ち着かざるを得なかった。改めて見解を出して、どこまで
効果が期待できるだろうか」という、覇気のない没理的な会長発言で収束した
ところに、「国立大学」の命運が尽きていることが象徴されているように感ず
る人も少くないのではないでしょうか。これが国会審議に与える負の影響はは
かりしれないと思いますので残念です。

              □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 

6月3日の参議院文教科学委員会における大学関係者の意見陳述の議事録がオ
ンライン化されました[4]。国立大学関係者6名が証言していますが、内容は
豊かで、ぜひ全文をお読みください。学長3名の賛成意見も、内容的には反対
意見に近く、単に、これまでの経緯で賛成するしかない、という証言でもある
と言えます。

  国立大学の独立行政法人化について、小野善康大阪大学教授は「大学全部が
役所化するということです」と証言したのにたいし、松尾稔名古屋大学長は
「千載一遇のチャンス」と強調しています。研究と教育の現場に居る者と、大
学を経営する者との間の、独立行政法人化についての意識の違いを象徴的に示
しています。経営者の立場からいえば、独立行政法人大学では、文科省や評価
委員に効力のある分量を持つ文書を絶えまなく迅速に産出できる能力もある教
員を役人として使うことが不可欠となり、まさに、大学を役所化することが重
要なテーマとなるわけです。しかし、大学を役所にし教員を役人にしてまで追
究すべき「千載一遇のチャンス」とは、一体、何のための誰にとってのチャン
スなのでしょうか?

              □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 

ノーベル賞受賞者といえども、その意見は、政府の意に叶うものは受け入れら
れ、そうでないものは単に無視されてきました。ナチスまがいの発言(**)をし
て憚からない受賞者はCOEの予算配分権を持って大学に君臨しているのに対
し、白川英樹氏が総合科学技術会議の議員として、氏の体験に基き、国立大学
の「校費」は世界で稀なすぐれたシステムであると主張したこと(*)は一顧だ
にされず、その正反対の制度である独立行政法人化がいま推進されています。
独立行政法人化に対する小柴氏の警告[3]もまた無視するのでしょうか?

(*)http://ac-net.org/dgh/doc/shirakawa.html
(**)http://www.mainichi.co.jp/edu/mori/kisya/2002/0218.html

              □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 

文教科学委員21名に、北大教官有志の意見書をファックスをしましたが、
「お話中」には一度も遭遇せずに送信できました。11万人に責任がある問題
が審議されているのに意見を伝えるファックスの頻度は、お話中になるほどで
はない、ということでしょうか。身近に感じる議員に一言でもファックスで気
持ちを伝えてはどうでしょうか。ファックス番号は、以下にあります。
http://ac-net.org/kd/03/607.html#[6]

              □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 

全面の意見広告[5]はかなり迫力があります。A3コピー二枚を張りあわせて
同じ大きさのポスターにして、学生が多いところに掲示してみました。この広
告により、学生でも、ある程度自分で判断するのに必要な基礎知識が得られる
のではないかと思います。(編集人)
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[1] 6/12 東京大学職員組合「参議院文教科学委員会は中止になりました」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/kokkaijousei.html
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[2] 6/11朝日新聞ニュース速報 国大協の法人法案めぐり、一部学長から異論
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「国立大学協会(会長=長尾真・京都大学長)が11日に東京都内で開いた総
会で、国立大学法人法案について、国会での可決後に見解を出すという執行部
の方針に、法案に批判的な立場の一部学長から反発が出た。反対の声は、
「国立大の存亡の問題なのに法案が通過してから見解を出すのは不見識」
(滋賀大)、「法人化で権限が集中する学長が集まっているのだから、審議
中に見解を出すべきだ」(宇都宮大)などだ。執行部は「心配があれば国へ
の要請事項に書き込む」と説明した。法案の成立後、改めて臨時総会を開き、
見解をまとめるという。これまで、協会は法案について「特別な問題点は生
じていない」とする見解を特別委員会でまとめたが、総会では議論していな
い。長尾会長は「国大協は文部科学省と交渉を続けてきたが、社会の声や政治
的な力で今の形に落ち着かざるを得なかった。改めて見解を出して、どこまで
効果が期待できるだろうか」と話した。」
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[3] 6/12共同:「基礎科学は「冷や飯」 国立大法人化に強い懸念 小柴氏」
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共同通信ニュース速報

 国会で審議中の国立大法人化について、ノーベル物理学賞受賞の小柴昌俊・
東大名誉教授(76)が十一日までに共同通信のインタビューに応じ「法人化
されて独立採算となると、四、五年以内に産業への見返りがないような研究は
冷や飯を食わざるを得ない。理学部や文学部の仕事はどうなるのか」と強い懸
念を示した。

 小柴氏は「基礎科学は成果を出すまでに五十年、百年かかることもある。五、
六年の期間に利益を出すかどうかですべて処理されたら困る。一律に判定を下
すことは考えた方がいい。画一性は時に害を及ぼす」と強調。

 法人化した各大学が、文部科学相が示す期間六年の「中期目標」に沿って研
究・教育面などの「中期計画」を立てる仕組みに疑問を示した。

 以前から基礎科学の重要性を訴えてきた小柴氏は「二、三年後にもうけがぶ
ら下がっている研究ではないけれども、中には大きな見返りを出すものもある」
と指摘。

 「十九世紀に発見された電子が二十世紀後半にエレクトロニクスという大産
業に発展した。こういう例はいくらでもある。科学は対象の魅力や面白さで研
究するもの。役に立つ、立たないというスケールだけで処理されたら困る」と
話した。

 「見返りがないかもしれない基礎科学は国レベルで支えるしかない。景気に
関係なく、継続的にサポートすべきだ。人類共通の知的財産を増やすことにつ
ながる」とも。

 小柴氏は基礎科学分野を応援する財団設立に取り組んでおり「ぜひ応援して
ほしい」と訴えた。(了)」
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[4] 6/3文教科学委員会における小野善康参考人の意見
http://ac-net.org/dgh/03/603-san-bunkyou.html
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○委員長(大野つや子君)次に、小野参考人にお願いいたします。小野参考人。

○参考人(小野善康君) ・・・・・・

 さて、その前に、評価というのは一体できるかということについて申し上げ
ると、私は絶対にできないと思います。その理由は、専門家というのは、ちゃ
んと研究をやっていらっしゃる方というのはそういうふうに合意してくださる
と思いますが、非常に狭い自分の範囲の中で深く研究して、それで優れた研究
を上げるというものでありまして、広い範囲をよく知っているという専門家は、
私は乱暴に言えばインチキだというふうに思います。

 それで、私のような者だったらそうだろうかということをおっしゃるかもし
れませんが、じゃ、例えば評価委員の中で、それこそノーベル賞を取るような
方をお連れしたと。その方は、その分野については卓越した研究能力を持って
いるけれども、ほかの分野は全くの素人です。そのとき、そういう集団で、じゃ
全部の評価ができるようなそういう集団を作るにはどうしたらいいかといった
ら、世の中にある何千という分野全部の専門家を連れてこなきゃいけない。そ
れは不可能ですから、そうすると選ばれた人しか来ないと。それは、はっきり
言えば素人集団なわけです。その素人集団はどういう決断を下すかといえば、
単なるはやりと話題性を追求すると。それは、その方が安全だからです。

 例えば、そんなことは絶対ないと思いますが、私がその委員に推薦されたと
いうことになったとすると、私なら今何をやるかと言われたら、ナノテクとゲ
ノムがいいと多分言うと思います。理由は簡単で、新聞で読んだからだと。こ
れだけのことで、もちろんそうは言いませんが、そういうふうに言うと思いま
す。

 同じことは経済学でも起こっていると。数年前に複雑系金融工学、こういう
ものがはやったんですが、今、金融工学というのはほとんど見ない。もちろん、
金融工学はちゃんと地道に長い間研究の積み重ねでやっています。ですが、あ
の当時、我々の研究所を含めていろいろな大学で金融工学のセンターができた。
文科省は我々のところにも来て、そういうのを作ったらどうだと言われました
けれども、我々は、それはそんなに作ってもしようがないといって申し上げた。
あのとき作ったら良かったでしょうかということです。

 さて、こういう不完全な評価、もう明らかに不完全な評価だと思いますけれ
ども、それで、強権、今回のようなトップダウンというのが完全に確立したの
とが相まつとどういうことが起こるかというと、本来、その評価する方を信じ
ていれば、皆さんは自分が面白いと信ずる最先端の研究を分かりやすく説明し
て、是非自分はいいんだということで競争しようと、こういうことになると思
いますが、そうじゃないので、金が取りやすくて素人受けする研究というのを
一生懸命出そうとすると。これは経営者としての学長のインセンティブからいっ
てもぴったり合う。金を取れて、大きくその大学の予算規模が増える。そうな
ると、工学や医学の大規模プロジェクトが花盛りになるだろうというふうに思
います。

 同時に、同じ人間を使うならば、ほとんど小さな範囲しかやらないような、
例えば経済学みたいなものは、じゃこれは減らして、より産業とかそういう方
向に行くべきだというふうになってくる。さらに、文科省の意向がそのような
素人集団に対して色濃く反映するでしょうから、文科省に気に入る書き方を伝
授するような人が欲しくなる。それから、文科省の意向はどうであるか、文科
省とどういうふうに交渉したらいいかということが是非欲しくなる。これは、
私が学長にもしなったら、なるわけないですが、もしなりましたら是非文科省
のOBを雇いたいということであります。

 さらに、中期計画、中期目標ということであれば、私たちは実現しやすい目
標を立てる。もしチャレンジングで面白いという本気の計画を立てたらどうい
うことになるか。それが実現できない可能性があるわけです。できなかったら、
後でひどい評価を得て、その組織はつぶされると、こういうことであります。
そういう書類作りに膨大な時間が掛かる、こういうことであります。

 さて、そういうことを申し上げると、そういう危険はあるだろうと。確かに、
今、佐々木参考人もそういう危険についてはある程度おっしゃっていた。それ
は危険はあるけれども、でも改革は必要である、こうおっしゃるかもしれない
んですが、私は、この危険はまず間違いなく起こる、そのぐらい断言できる。

 なぜそんな断言ができるのかというと、最初に申し上げましたが、研究所再
定義問題というので、つい数か月前にほとんどこれと同じ構造で前哨戦があっ
て、我々はとんでもない目に遭ったということをこれからお話ししようと思い
ます。

・・・・・・・・・

 こんなことが起こっていいのかと実は思うんですが、しかし我々も生き残ら
なければ研究ができないわけです。ですから、そういう方向で一生懸命これか
ら努力しようと。そのために文書書きに追われて、これから先もずっとそうい
う会議もさんざんあります。昨日もありました。そういうことが起こる。これ
は、大学全部が役所化するということです。文書書きですね。

 これは、さらに現在の政治の流れである中央集権から分権化ということでい
うと正反対である。これは中期計画、中期目標を文科省に出させて、そこが認
可すると言っているわけです。もちろん、文科省はそんなすごいことを、おま
えらこうしろ、こうしろなんていうことは絶対言わないわけですけれども、そ
ういう制度であると我々がそれを斟酌始めるわけです。怖くてしようがないで
す。現に、今回のように二つの小さな研究所がちゃんとつぶされているわけで
す。一つは社情研という、御存じでありましょうけれども、非常に伝統のある
新聞研と昔から言われたその研究所がつぶされているわけです。そういうこと
になっている。

 私は、結論的に申し上げると、納税者への国立大学の教官の責任というのは、
研究をやって論文を発表し、著書を書き、それを教育し、かつ一般に広め、そ
れから例えば政策提言をしたり、そういうことだと思います。決して文科省へ
の対策に使うとか、それで私たちのように半年間全く研究ができなくなる状態
になるとか、それじゃないと思います。それがもう必ず起こると、本当に危惧
しております。・・・」

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[4-1] 国会(6/3)での参考人意見陳述および質疑録より
     http://ac-net.org/dgh/03/603-san-bunkyou.html
#(是非、全文をご一読ください。)
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小野善康(大阪大学教授)「・・・要するに、先ほど申し上げたように、中期
目標、中期計画というのを設定して、それを実現するというふうになった途端
に、いかにそれを実質のないものにするかという努力をするわけです。それは
別にその人が悪いわけじゃないわけで、そういうインセンティブメカニズムを
設計されているということなので、是非これはやめてほしいということなので
あります。」
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本田和子(お茶の水大学長) 「極端な言い方をする人たちは、この評価はい
ずれ小規模大学を消していく評価でしょうなどということを言われて、まさか
私はそこまで日本の文科省もたちが悪いとは思っていないのですが、そのよう
な懸念も抱かざるを得ないという状態にございますので、評価の問題は十分に
時間を掛けて慎重に検討しながら、そしてテスト的な段階であるということを
十分に確認しながら進めていかなえければならないかと考えております。」
「せんだっても、産学官連携の在り方などというのを評価されまして、そのよ
うな評価をされますと私どもの大学などは最下位に来てしまうのですが、工学
部系の学長さんが集まっていらっしゃるところで、お気の毒さまというような
ことを言われましたので、私も、いえ、仕方がございません、うちは産業界な
どからお金は入れません、清く正しく美しくでまいりますというようなことを
申しましたら、皆さんが笑って、清く貧しく美しくでしょうと言われました。
確かに清く貧しく美しい大学として生き残りを考える場合に、予算、運営交付
金の配分などというのは非常に関心がございますけれども、これに関してどう
も将来が明示されていないということは将来を設計いたします場合の一つのネッ
クになっていようかと思いま
す。」
「例えば、本当に些少なことでかわいらしいことでございますけれども、理事
の数というのが指定されまして、これは上限だから全部理事を満たさなくても
いいと言われておりますけれども、とりあえず四人の理事を置きなさいという
ようなことを言われます。ところが、その理事のためのポストというのは付い
てこないわけでございますから、既存の定員の中からそれを振り向けなければ
ならない。これは何千人という教官定員をお抱えの大学には想像も付かない問
題でいらっしゃるかと思いますけれども、私どものように二百何十人という規
模の大学でございますと、・・・どの方が定年で退官されたらそのポストを理
事の方に回そうかというような考え方をしなければならないわけで、理事の数
だけ退官者がない場合にはどうしようかなどというせっぱ詰まった問題も起こっ
てきたりいたします。」
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糟谷正彦(元大阪大学事務局長)「何でこんな、一番民営化と官営の悪いとこ
ろだけ取ったような案になっているんですね。独立行政法人というのは民営化
と官営の一番いいところだけ取るという制度なんですよ。だけれども、それを
そのまま大学に持ってくると悪いところだけ取った制度になっているので、ほ
かのやり方をやるべきだと、同じ法人化するにしてもですよ。それは技術的に
可能なんです。それが私の意見でございます。
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[5] 意見広告6/10の画像ファイル
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#(意見広告の会:http://geocities.jp/houjinka
email:houjinka@magellan.c.u-tokyo.ac.jp,tel & fax:03-3813-1565)

左上 http://www.geocities.jp/houjinka/koukoku200_01.jpg
右上 http://www.geocities.jp/houjinka/koukoku200_02.jpg
左下 http://www.geocities.jp/houjinka/koukoku200_03.jpg
右下 http://www.geocities.jp/houjinka/koukoku200_04.jpg
2値画像
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/znet/news/koukoku200_01.gif
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/znet/news/koukoku200_02gif
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/znet/news/koukoku200_03gif
http://www.geocities.jp/chikushijiro2002/znet/news/koukoku200_04.gif
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[6] 全大教九州、九州私大教連、国公九ブロから文教科学委員への再度要請
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030611zennkyuusyuu.html
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[7] 神沼公三郎(北海道大学)「参議院文教科学委員会傍聴記」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030611hokudaikaminuma.html
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・・・
<最後に>

 国立大学の独法化は文科省が無理に無理を重ねてつくりあげた空中楼閣であ
ることが、6月10日の事態でいよいよはっきりした。文科省は国会を軽視し、
そのうえウソまでつかなくてはならないほど追いつめられている。6月10日は、
文科省官僚のいいようのない焦りを間近に見た感じである。

(注)この文科省文書は2002年12月10日の国大協第10回法人化特別委員会で文
科省が配布した「未定稿 国立大学法人(仮称)の中期目標・中期計画の項目
等について(案) 平成14年12月文部科学省」。このなかには、次のように細
かな指示が書かれている。桜井議員は以下の部分を紹介しつつ、文科省を厳し
く追及した。

「4.様式・分量は、A4版横長用紙に横書き(10ポイント、1ページ40行、
1行72 字=本資料の書式)で、現段階では1大学当たり概ね10〜20ページ・・・
を一応の目安としてください。

5.中期目標(案)・中期計画(案)のほか、その参考資料(文部科学大臣に
よる提示・認可の対象外)として、『学部等に固有の具体的事項』を作成し、
中期目標(案)・中期計画(案)の提出と同時に文部科学省に提出してくださ
い。内容は、・・・、学部・研究科・附置研究所など各大学の基本的な教育研
究組織ごとに固有のより具体的な事項を記載してください。分量は、現段階で
は各組織ごとに5ページ以内を一応の目安としてください。」
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[8] 渡辺信久(北海道大学):参議院文教科学委員会委員への要請
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030611hokudaiwatanabe.html
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                                                       2003年6月11日

参議院文教科学委員会
委員 **** 先生
                                  北海道大学大学院理学学研究科助教授
                                                          渡邉 信久
                  国立大学法人法案の廃案へのお願い

  時下,ますますご清栄のこととお慶び申し上げます.

  参院文教科学委員会での御審議によって法案の問題点がつぎつぎと浮かび上っ
て参りました.国立大学に籍を置きます者として,委員の先生方のご努力に大
変感謝しております.

 10日の委員会審議で明らかにされた文科省の未定稿資料「国立大学法人(仮
称)の中期目標・中期計画の項目等について(案)」には,中期計画の記載例
として「教職員の人事の適正化に関する目標を達成するための措置」に「任期
制・公募制の導入など教員の流動性向上に関する具体的方策」を記すよう求め
ています.これは明らかに「いやしくも大学に対して,任期制の導入を当該大
学の教育研究条件の整備支援の条件とする等の誘導や干渉は一切行わないこと」
という大学教員任期制法の参院付帯決議に反しており,国会を軽視するもので
す.

 この文科省の誘導により,北大の中期目標・計画案の当該部分にも任期制導
入の検討・導入実施が記されております.6月5日の北大理学部教授会では,
「理学部は任期制の導入を考えていないが,計画案の任期制部分の記述は原案
どおりとしたい」というような趣旨の説明のあと採決し,賛成52,反対43,白
票6の僅差で原案が認められてしまいました.

 法人化する前の現在ですらこのような状況ですから,目標策定と評価の権限
が文科省に集中してしまう法人化後は,大学の自主・自律的な運営など全く望
めないと考えられます.

 どうぞ,審議を尽くして,国立大学を文科省の統制下に置く政府案は廃案と
し,国立大学を国会すなわち国民の下に置く方策をご検討下さいますよう,強
くお願いいたします.」
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[9] 数理News 2003-1(5/15) 薩摩順吉「法人化」
http://kyokan.ms.u-tokyo.ac.jp/~surinews/news2003-1.html
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「東京大学数理科学研究科  2003年5月15日発行

				法人化
				   
			  研究科長 薩摩順吉
				   
「・・・・・・どうも暗い話になりました。私たちが担っている教育というも
のは、もともときわめて効率の悪いものです。結果は何十年たたないと分かり
ません。数学のような基礎研究も然りです。生命科学研究者のいっているよう
に、長期間にわたる努力の末成果が出るもので、ときには百年のオーダーで評
価される類のものです。6年という期間はあまりにも短すぎます。先行法人の
例のように、中期目標では例えば毎年1%の経費削減といった運営の効率化の
みが要求される可能性もあります。法人化によってもともと自律的な大学とい
う組織が疲弊し、活力がなくなり、国際競争力を失うことにならないよう祈る
ばかりです。 」
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[10] リンク訂正:国会審議を中断させた資料:
http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/agency/specialcommittees/specom10-2mokuhyo.pdf
http://ac-net.org/dgh/03/specom10-2mokuhyo.pdf
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
国公立大学通信ログ:http://ac-net.org/kd
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配信数 27732