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Subject: [kd] 国公立大学通信のご案内
From: TSUJISHITA Toru
Date: Sat, 25 Jan 2003 17:09:56 +0900
平成15年1月25日(土)
国立学校教職員の皆さま
いま、日本の大学システム全体が大きく変えられようとしています。1月20
日に召集された通常国会では国立大学法人法案(仮称)を提出することを文部科
学省は正式に発表し、その要旨を
「国立大学及び大学共同利用機関を独立行政法人化するため、国立大学
法人及び大学共同利用機関法人の組織及び運営に関し必要な事項を定め
るとともに、これらの法人が設置する国立大学及び大学共同利用機関の
設置等について定める。」
と述べました、3年余にわたる大学社会の検討の大前提「国立大学が法人格を
取得する」は「国立大学法人が国立大学を設置する」と変わり、「国立大学法
人」は経営を業務とする法人であり、それが設置する「国立大学」は、法人組
織の中で従属的なものとなりました。しかも学校法人が私立大学を設置する場
合と違い、経営と教学のバランスは経営に偏重した組織が最終的な法案となり
ました。法案の内容が、国立大学全体のコンセンサスが全く欠如したものに変
貌したことを、しかしながら、新聞は伝えていません。
この例はほんの氷山の一角です。大学についての情報は、大学教職員や学生
でも、マスメディアを通し間接的にしか得られません。そのため、行政や産業
界からの大学批判を無批判に時代の声でもあるかのように伝えるマスメディア
の報道に影響されてか、大学社会の住人自身の中にも、社会から大学は支持さ
れなくなっていると思う人も増えているように思われます。
また、教育・研究の現場の情報を相互に広く直接伝え合う方法がないために、
いま大学が変えられようとしている方向について、大学関係者の大半が懐疑し
将来を危惧していても、その危惧が結集され流れにブレーキをかけるようには
なりません。それどころか、大学も認めたかのような形式をとって事態が進ん
でいます。教育・研究を知らない人々による大学システム改造の進行に、教育・
研究の現場の声を反映させるには、大学社会全体に直接的情報路をつくり、大
学社会の新たな情報構造を構築することが不可欠と思われます。
北海道大学では3年前に教員有志がほぼ全教員のメール連絡網を作り、独立
行政法人化関係の種々の情報を提供し見解を表明してきましたが、現在、それ
を、大学セクタ全体に拡張する作業を、私が個人的に少しずつ進めています
(ログの一部: http://ac-net.org/kd/)。国立大学の独立行政法人化問題の
ような、どちらかと言えばマイナーな問題においてすら、マスメディア全体が
一致して行なってきた情報操作を3年間観察してきますと、新たな「情報構造」
の構築なしには日本社会に未来はないように思います。大学社会という小社会
における直接的情報路の形成は、その試みとしても意義のあるものと考えてい
ます。
なお、最近は、公立大学の法人化問題が、行政と大学の距離が近いだけに、
国立大学より憂慮される方向に急速に動きはじめています。そこで、公立大学
の方にも配信を始めました。また、国公立大学の改変が私立大学にも具体的な
強い影響を与え始めていますので、私立大学の方にも配信したいと考えており
ます。大学社会における、新しいタイプのメディアに成長し、知の共同体の場
としての大学の進化を促す一因子となることを願っています。
平均すると週1回程度のものですが、ご迷惑となるばあいは、Subject欄に
no kd と書いたメールを発行人(tjst@ac-net.org) までごお送りください。
ご参考までに、先週発行しました「独立行政法人化問題週報102号」抄を添
付します。また、1月19日に配信した、国立大学法人法案概要の情報は
http://ac-net.org/kd/03/119.html にあります。
編集発行人 辻下 徹 (北海道大学大学院理学研究科) tjst@ac-net.org
独立行政法人化問題:http://ac-net.org/dgh/
国立大学法案の行方:http://ac-net.org/dgh/doc/houan.html
*この通信は個人的広報活動であり、編集発行人が所属する組織とは関係があ
りません。一部の社会セクタが、己が都合に合わせて、大学システム全体を強
引に作り変えようとしていることを危惧し、教育基本法「教育は、不当な支配
に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものであ
る」に従い、その危惧を日本社会に伝える活動を行なっています。