通信ログ
国公立大学通信 2003.06.08(日)

--[kd 03-06-08 目次]---------------------------------------------------------
[1] 6/10 午前11時よりソウルで日韓共同「大学問題」記者会見
[2] 6/8 意見広告の会:第三次意見広告の詳細
[3] 6/6 日本の教育と学術研究の未来を憂慮するアピール(その2)
[4] 6/6 九大教授小田垣孝氏の意見書「国立大学法人法案は廃案にすべきだ」
[5] 交流連絡会「参院文教科学委員に慎重審議の要請を」
[6] 5/29 参議院文教科学委員会議事録
 [6-1] 有馬議員の質疑
 [6-2] 鈴木議員の質疑
 [6-3] 草川議員の質疑
 [6-4] 林議員の質疑
 [6-5] 西岡議員の質疑
[7] 6/5 愛知教育大学教職員組合から田原学長への国大協総会にあたっての要望
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6/5の参議院文教科学委員会の最後の方(5h27m55s)で、遠山大臣の
答弁に「独立行政法人化という議論を海外にいたときに聞きまして、愕然とい
たしまして、・・・大使公邸の中で地団太を踏んだことがあります。」という
部分があります(当時トルコ大使)。その後は、それが思い違いであったとい
うように続くのですが。

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40日程度の会期延長があるようです。文科省は民主党の賛成も得て法案が成
立することを望んでいると答弁していますが[6-2]、それならば、議論を尽し、
て欲しいと思います。強行採決しようとすること自身、この法案のいかがわし
さを示し、大学社会の嫌悪感を増し志気を殺ぐものです。有無をいわせぬ押し
つけの匂いほど、研究と教育に必要な意欲を損うのに効果のあるものは余りな
いと思います。

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「サイレントマジョリティは法案を支持している」といわれることがあります。
この4年間、ほとんどの大学教授会は意見交換するだけで議決を避けて「マジョ
リティ」の意向を確認することを回避してきました。一昨日の北大理学部教授
会決議は、慎重審議を求めるだけのものにすぎませんが、大学社会のマジョリ
ティが現在の法案に危惧を抱いていることを示唆するものです、しかも、教授
層ではなく若手教官層が危惧を抱いている、ということです。

多数決で決めれば良いということを言っているのではなく、マジョリティを説
得できているかどうかは、意見表明に対する「報復」への漠たる恐れが日増し
に強まっている大学においては、無記名投票しなければ確認できない、という
ことを言っているだけです。こんなことは小学校で学んだことではないでしょ
うか。独立行政法人化は良い、と国会でも意見を述べている学長達が居ますが、
大学構成員を説得できたかどうかを確認しようとしてこなかったことは、独立
行政法人化が学内の少数者ーー大学の使命の全体を担っているわけではない少
数者ーーの利益に資するだけであり、構成員を説得は不可能であることを痛い
ほど認識しているのではないでしょうか。(編集人)

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■今週10日に全国ネット等が韓国の教授組合等と共同声明を発表します[1]。

■第三次意見広告の詳しい内容紹介があります[2]。

■「日本の教育と学術研究の未来を憂慮するアピール」(その2)[3]への賛
同者募集が(第一次のアピールに賛同された方以外を対象として)始まりまし
た。
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--予定([]内は関連項目)-------------------------------------------------
6/10(火)
     第三次意見広告(読売新聞)[2]
     日韓「大学問題」共同声明[1]
     参議院文教科学委員会[4]
     国大協定例総会第1日[7]
6/11(水)
     国大協定例総会第2日[7]
6/12(木)
     参議院文教科学委員会
     全国立大学長会議(文科省が召集する会議)
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[1] 6/10 午前11時よりソウルで日韓共同「大学問題」記者会見
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                          2003年6月8日
        大学問題で日韓共同記者会見を予定

                 国立大学独法化阻止全国ネットワーク

6月10日午前11時よりソウルで,韓国側が複数の教授組合,職員組合と,
日本側が独法化阻止全国ネット,佐賀大学教職員組合,全大教九州の三者とで
記者会見を開き,共同声明を発表することになりました.場所はソウル中心部,
インサドン(仁寺洞)の「参与連帯」があるビルです.共同声明は作成中です
が,韓国側の問題としては,国立大学運営に関する特別法,国立大学の責任経
営制,総長選挙のありかた,教授契約制について取り上げます.日本側に関し
ては,現在国会で審議中の「国立大学法人法」への反対を表明します.日本側
からは全国ネット事務局長の豊島と佐賀大学教職組の執行委員1名が出席しま
す.
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[2] 6/8 意見広告の会:第三次意見広告の詳細
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*掲載紙 6月10日「読売新聞」朝刊 東京本社版 全面。
     エリア 中部・北陸地方以東
    *関西地区以西の方には、ただちには御覧になってはいただけません。
     申し訳ありませんが、ご了承をお願い申しあげます。
     これらの地区の3次賛同の方々には、掲載紙をお送り致します。

内容
***
・今回は、賛同者の氏名掲載は致しません。

・ほぼ、「著名人意見」+「毎日新聞掲載時の意見・説明」+「用語解説」+
「呼びかけ人氏名」によって構成されています。「経過説明」は、紙面構成上
「用語解説」の中に埋め込まざるをえませんでした。それでも、字の量の多い
紙面構成になっています。

・「意見掲載者」
 池内了さん    (名古屋大学 大学院理学研究科)
  井上ひさしさん (作 家)
 櫻井よしこさん (ジャーナリスト)
  田中弘允        (前鹿児島大学学長)
  間宮陽介        (京都大学 大学院人間・環境学研究科)
  リチャード・ゴンブリッチさん(オックスフォード大学ベイリオル
                      ・カレッジ教授 サンスクリット学、仏教哲学)
***

***
井上ひさしさんと、櫻井よしこさんの原稿の一部を紹介させていただきます。
続きは新聞紙面でご覧下さい。

・井上ひさしさん

 戦前戦中の、あのガチガチの国家主義の時代にも「大学の自治」がありまし
た。それは東京帝国大学の例を見ても一目で判ります。大正一二年(一九二三)
九月の関東大震災で全建物面積の三分の一を失ったとき、全教授と全助教授が
投票で移転先を決めて、その結果を大蔵大臣に提出しました。ちなみに一位が
近郊(陸軍代々木練兵場)で一五一票、二位が本郷居据りで一三一票、三位が
郊外(三鷹)で一〇三票でした。つまり教授会にそれだけの力があったのです。
もっとも近郊移転は陸軍省の猛反対で実現はしませんでしたが。

・櫻井よしこさん

 国立大学法人化で、大学の教育・研究目標を六年単位で区切って中期目標と
し、それを文部科学大臣が決めるようになるのだそうだ。
 全国でいずれ八七になる国立大学の教育・研究の中期的概要を決定する能力
が、一体、文科大臣や文科官僚にあるのか。問うのさえ赤面の至りで、答えは
明白だ。
 にも拘わらず、日本の大学教育・研究は、いまや彼らの狭量な支配の下に置
かれようとしている。国費を投入するからには、国として責任をもたなければ
ならないからだと遠山大臣は力説する。しかし、これまでも、今も、国立大学
に国費は投入されてきた。それでも教育・研究目標を、政治や行政が決めるな
どという愚かなことはかつてなかった。政治家も官僚aも犯してはならない知の
領域の重要性を辛うじて認識していたからである。
***


ご案内
***
・第3次の意見広告に賛同される方は、1次・2次の時と同様の申し込み方式
で、賛同カンパ金の提供予定額(口数)を示して、これまでの申し込み宛先に
ご連絡下さい。
  メールの宛先   houjinka@magellan.c.u-tokyo.ac.jp
         campaign@sbp.fp.a.u-tokyo.ac.jp
 FAXの宛先  03−3813−1565 電話兼用
・送金は 郵便振替口座 『「法人法案」事務局』  
         00190−9−702697   へお願い致します。
・ご注意
 3次の拠金につきましては、必ず「3次」と明記して下さい。
 なお1次・2次広告賛同金未納の方は、「1次、2次」など明記の上、早急
にご入金下さいますよう。
***

この「意見広告」は、既に御案内の通り、一部の「呼びかけ人」の高額の資金
提供によって基金を準備しています。
少しでも負担を軽くする意味で、どうか皆様の浄財をご提供下さいますよう、
お願い申しあげます。

また、関係諸団体・知人の方々へのご連絡・呼びかけをよろしくお願い申しあ
げます。

これが最後の「意見広告」です。
どうぞ、ご賛同の上、御拠金をお願い申しあげます。」
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[3] 6/6 日本の教育と学術研究の未来を憂慮するアピール(その2)
http://homepage2.nifty.com/~yuasaf/appeal/appeal2.pdf
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	私たちは教育基本法の見直しと国立大学法人法に反対します


いま日本の教育と学術研究の未来を危うくする2つの「改革」が進められてい
ます。

ひとつは教育基本法の見直しです。本年3月に提出された中央教育審議会の答
申「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」
は、教育基本法見直しの必要性について、社会状況の大きな変化と教育が現在
さまざまな問題をかかえていることをその理由としてあげています。しかし国
際的に見ても教育基本法は決して時代遅れとなっているのではなく、むしろユ
ネスコなどの教育研究関連の諸勧告に照らしてみたとき、日本の教育基本法の
示す方向がますます重要となっていることは明らかです。また日本の教育が現
在多くの問題をかかえていることは事実ですが、それは教育基本法のせいでは
なく、逆に教育基本法が守られなかったことに起因しているといわなければな
りません。

もちろん、どのような法律も決して永遠不変のものではありませんが、しかし
中教審の答申に示された見直しの方向は、かえって教育の本来の姿をゆがめ、
未来を担う青少年たちの人格形成や能力の発達を妨げるものです。とりわけ問
題なのは、現行の基本法第10条の「教育は不当な支配に服することなく」、教
育行政は「必要な諸条件の整備確立を目標」とするという条文を残しながら、
その「必要な諸条件の整備」には教育内容等も含まれるとしていることです。
この部分は中間報告にはなく、最終報告にはじめて明確に盛り込まれたもので
すが、教育内容にも行政が関与していくということこそ、まさに教育にたいす
る「不当な支配」にほかなりません。これでは政府が教育内容を恣意的に決め
られることとなり、戦前の国定教科書の時代と同じことになります。すでに文
部科学省は昨年4月に全国すべての小・中学校の道徳の副読本として『心のノー
ト』を配布しています。文科省はこの本の使用を強制しないといっていますが、
事実上は強制使用となっており、いわば「国定」の教科書となっているのです。
その狙いは、礼儀、感謝、美しい心、約束を守るなどの徳目とともに、「自由
は自分勝手とは違う」とか、「義務を果たそう」とか、「社会の秩序を守ろう」
とか、権利を制限し義務を強調する道徳を、心理学の手法を用いて子どもの心
に擦り込ませることにあります。

「愛国心」が強調されていることも見逃すことは出来ません。すでに「愛国心」
を成績評価の項目のひとつに含めている学校も出てきていますが、国を愛する
かどうかは心の内面の問題ですから、これを表面的な形で判断して評価するこ
とは思想の自由を侵害する危険があるばかりでなく、表面だけをつくろう偽善
的な態度を生み出していく危険もあります。

同じように教育と研究の内容に政府が介入しようとしているのが「国立大学の
法人化」というもうひとつの「改革」です。「法人化」することによって大学
の自由度が増し、自己責任で改革を進めることが出来るようになると宣伝され
ていますが、大学に対する政府の統制はかえって厳しくなります。とくに問題
なのは大学の中期目標や中期計画を文部科学省が決定し、その達成度を評価し
て結果を予算に反映させるとしていることです。これでは研究も教育も萎縮し、
政府の顔色ばかりうかがう大学ができあがっていくことでしょう。世界的に見
ても国が大学の目標や計画を定めるような例は見あたりません。また国立大学
法人法には学長の選出方法について細かい規定がありますが、現在の国立大学
学長は評議会が選出すると決めているだけで、それ以上のことは各大学の自主
性に任されています。大学の管理運営体制も教育研究と切り離されて画一化さ
れていくことになります。公立大学は、地方自治体の独立行政法人となり、国
立大学と同じような問題を抱え込むか、あるいはさらに厳しい状況に立たされ
ることになりつつあります。

もちろん大学は国公立でなければならないという理由はありません。法人が設
置者となっている大学は現に多数あり、それぞれに研究教育において立派な業
績をあげています。しかし国立大学法人の場合、形式上は法人が設置者となる
ため、国が財政責任をまぬかれ、法案の経営重視の方向は受益者負担を口実に
学費の値上げが必至となり、教育の機会均等がくずれ、受験戦争のいっそうの
激化を招く一方で、研究や教育に政府が細かく介入するという国立大学法人法
の目指す方向は、大学としては最悪の形態です。政府はこの「大学改革」によっ
て「日本経済の活性化をめざす」としていますが、大学を経済活性化の手段と
考える発想が基本的に誤っているばかりでなく、このような萎縮した大学を作
ることは日本経済の活性化にも決してつながるものではありません。社会に対
する大学の貢献は「学問の自由」が保障されることによってはじめて可能にな
るのです。

本年1月に発表した私たちの最初のアピールに対して、多くの方々からご支持
をえていますが、国立大学法人法の廃案と教育基本法の見直しの中止を求めて、
さらに多くの方々からご賛同をいただけるよう、重ねて訴えます。

2003年6月6日

呼びかけ人

赤川次郎(作家)、浅見輝男(茨城大学名誉教授)、阿部猛(東京学芸大学元
学長)、池内了(名古屋大学教授・呼びかけ人代表)、井上ひさし(作家)、
岩崎稔(東京外国語大学助教授)、上田誠吉(弁護士)、上原信博(静岡大学
名誉教授)、碓田のぼる(歌人)、大澤豊(映画監督)、大原穣子(方言指
導)、小山内美江子(脚本家)、小田実(作家)、上條恒彦(歌手)、亀田美
佐子(ヴァイオリニスト)、河井智康(海洋サイエンティスト)、小出昭一郎
(元山梨大学学長)、神山征二郎(映画監督)、小室等(音楽家)、菰口治
(福岡教育大学元学長)、早乙女勝元(作家)、櫻井武雄(音楽家大阪芸術大
学名誉教授)、佐藤貴美子(作家)、菅井幸雄(演劇評論家明治大学名誉教
授)、鈴木瑞穂(俳優)、田沼武能(写真家)、丹野章(写真家)、茶本繁正
(ジャーナリスト)、津上忠(劇作・演出家)、辻真先(推理作家・脚本家)、
辻下徹(北海道大学教授)、鶴見俊輔(哲学者)、寺島アキ子(劇作・脚本
家)、中村梅之助(「前進座」俳優)、中村方子(中央大学名誉教授)、浜林
正夫(一橋大学名誉教授)、平岡敏夫(筑波大学名誉教授・日本学術会議会
員)、星埜惇(福島大学元学長)、古田足日(児童文学者)、増田れい子
(ジャーナリスト)、松野迅(ヴァイオリニスト)、松山政路(俳優)、美濃
部民子(画家)、宮本和郎(日本画家)、無着成恭(宗教家)、森与志男(作
家・日本民主主義文学会会長)、諸井昭二(指揮者・作曲家)、山田洋次(映
画監督)、湯浅精二(世界科学者連盟副会長)、弓削達(元フェリス女学院大
学学長)、吉開那津子(作家)以上51人
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アピールの会ホームページより
http://homepage2.nifty.com/~yuasaf/appeal/

「教育基本法の見直しと国立大学法人法に反対する「アピ−ル」第二弾として、
6月6日、【日本の教育と学術研究の未来を憂慮するアピ−ル】(「アピ−ル」
その2)を発表しました。

¶この文案をご検討の上、この「アピ−ル」の賛同者として名を連ねていただ
けますよう、お願いします。賛同者を集約し、公表すると共に、関係機関に送
付しますので、できるだけ多くの方々に賛同の輪を広めて頂ければ幸いです。

¶お願い:「アピ−ル」(その1)は「アピ−ル」(その1)を継続させたもので
すので、集計の際の重複を避けるために、「アピ−ル」(その1)に署名され
た方は、「アピ−ル」(その2)の署名はご遠慮下さい。

¶「アピ−ル」「アピ−ル賛同のお願い」「賛同署名用紙」をダウンロ−ド後
印刷してご利用下さい。なお、署名方法も各種用意していますので適宜ご利用
下さい。」
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[4] 6/6 九大教授小田垣孝氏の意見書「国立大学法人法案は廃案にすべきだ」
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#(6月6日に参議院議長と参議院文教委員会委員全員にFax で送付された意
見書です。これはあくまでも小田垣氏個人の意見であり、理学研究院の意見で
はない旨連絡を受けています。)
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         国立大学法人法案は廃案にすべきだ
                                                     平成15年6月6日
                                             九州大学大学院理学研究院長
                                                     小 田 垣   孝

大学が病んでおり、変革されなければならないことは1970年前後の大学闘
争の中ですでに指摘されていた。現在国会で審議されている法案は、文部科学
省の説明とは裏腹に、いわば独裁的に大学を支配する集団の出現を可能にする
ものであり、欠陥法案と言わざるを得ない。さらにこの法案は、人事、予算の
配分を通じて、大学を文部科学省の完全な統制下に置くことを可能にするもの
であり、「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任
を負って行われるべきものである」という教育基本法第10条に抵触する結果
をもたらすものである。

 「国立大学法人法案」の特徴の一つは、人事・運営に関する権限の集中であ
り、1.運営の中心が役員会(学長及び学長が任命する理事で構成)となる。
2.自身を含め学長の指名した者が大半を占める選考委員会で学長が決められ
る。3.監事2名は文部科学大臣の指名で、必ず学外者が含まれる。という点
にある。学長がひとたび選ばれると、学長及びそのサポートグループの独裁制
が強化され、かつ「世襲」的に学長が選出されることが予想され、学長選考に
は教員の意見がほとんど反映されなくなる。また大学執行部は各部局の代表で
はなく、学長の指名したグループで形成され、理事や監事に文部科学省経験者
や前学長、役員会委員を委嘱できるので、文部官僚の天下りを助長する制度で
ある。

 次に、法案によれば、大学の運営は1.各国立大学法人等の中期目標は文部
大臣が定める。2.国立大学法人評価委員会は文部科学省に置かれる。3.財
務内容の改善が求められ、大学債の発行などが奨励される。4.収支計画・資
金計画を含む中期計画は、評価委員会の意見に基づき文部科学大臣が認可する。
という手順で行われる。つまり、大学の営為そのものが文部科学大臣の指定す
るものとなり、大学はそれに従った計画を立案・実行し、6年後その達成状況
により予算の配分が決定される。すなわち、国策のための教育・研究をやらな
ければ、予算が付かなくなることが起こり得、結果的に学問の自由は失われる。
戦時中の統制経済が失敗したのと同様、統制的な教育・研究は大学を荒廃させ
るだけである。また、財務内容の改善のために、授業料が高騰することも予想
され、国民がひとしく高等教育を受ける権利が損なわれることが危惧される。
さらに、評価は、文部科学省に置かれるただ一つの評価機関によって行われる
ので、先の大学評価機関による試験的評価において見られたように大学の画一
化を招くことになる。

 現在の大学の問題は、学長がリーダーシップを発揮できないのではなく、真
のリーダーの資質を持つ学長がいないことにある。「人の問題」は、いくらシ
ステムを変えても解決できないものであり、法案のように権限の集中を可能に
すれば、リーダーではなくディクテイターを創り出すだけに終わるであろう。
戦後の学制の中で、大学の運営は不十分だがそれなりに民主化されていたが、
この法案により、大学が封建領主制に逆戻りすることが予想される。実際、昨
年来各地の大学で先行的に行われている独立行政法人化への取り組みを見てみ
れば、この危惧が現実のものとなっている。

 大学は変わらなければならない、しかし現在審議中の国立大学法人法案は廃
案にすべきである。
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[5] 交流連絡会「参院文教科学委員に慎重審議の要請を」
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「国立大学法人法案に反対する大学教職員交流連絡会」の事務局です。

このMLでも、すでに何人かの方から参議院文教科学委員のメールアドレスが配
信され、慎重審議を含む要請を各議員に行おうとの提起がなされています。

これまでの審議において、参院の文科委員会では、委員のなかでも慎重審議を
求める声が強まってきています。しかし、国会の会期末をひかえ、与党側は強
行な対応に出てくる可能性も伝えられています。したがって、来週の文教科学
委員会(10日、12日)での審議の内容がきわめて重要になります。

各大学の教職員組合、教授会、教職員有志、個人におかれては、全ての文教科
学委員に対し、「慎重審議を強く求める」要望を集中するようにされてはどう
でしょう。例えば、以下の諸点が要請内容として考えられます。

○国立大学法人法案の審議は尽くされていない。引き続き慎重な審議を続けられるこ
とを強く要望する。

○大学改革は“国家百年の計”に関わる。与野党不一致のまま採決が強行される事態
は、ぜひとも避けていただきたい。

○会期にとらわれず、「良識の府」として理性ある法案への対応をお願いしたい。

また要請の際、メールとともにファックスも重視するようにしてはいかがでしょ
う。議員は、「届けられたFAX用紙の量」も、「世論」の動向を判断する材料
とされているようです。

下記に、参議院文教科学委員の名簿を付けます。これをご活用いただき、各地
から議員への要請を集中しましょう。

参議院文教科学委員会  平成15年4月23日現在(21名)

     氏 名   会 派  会館  会館TEL   FAX
委員長 大野 つや子(自 保)  242    3508-8242   5512-2242
理事  仲道 俊哉  (自 保)   429    3508-8429   5512-2429
理事  橋本 聖子  (自 保)   302    3508-8302   5512-2302
理事  佐藤 泰介  (民 主)  411    3508-8411   5512-2411
理事  山本 香苗  (公 明)  319    3508-8319   5512-2319
理事  林  紀子  (共 産)  342    3508-8342   3508-8342
   有馬 朗人  (自 保)   223    3508-8223   5512-2223
   有村 治子  (自 保)   229    3508-8229   5512-2229
   大仁田 厚  (自 保)   706    3508-8706   5512-2706
   扇 千景   (自 保)   436    3508-8436   3592-0407
   北岡 秀二  (自 保)   236    3508-8236   5512-2236
   後藤 博子  (自 保)   538    3508-8538   5512-2538
   中曽根 弘文 (自 保)   630    3508-8630   3592-2424
   江本 孟紀  (民 主)   740    3508-8740   3580-1116
   神本 美恵子 (民 主)   421    3508-8421   3508-0010
   岩本  司  (民 主)   231    3508-8231   5512-2231
   山根 隆治  (民 主)   707    3508-8707   5512-2707
   草川 昭三  (公 明)   202    3508-8202   5512-5400
   畑野 君枝  (共 産)   629    3508-8629   3508-8629
   西岡 武夫  (国 連)   542    3508-8542   5512-2542
   山本 正和  (国 連)   216    3508-8216   3502-8853
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6/5に以下の交替があります:
後藤 博子--> 藤井  基之   (自 保)  3508-8536   3508-4536
山根 隆治--> 浅尾  慶一郎(民  主)   3508-8711   5512-2711
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[6] 5/29 参議院文教科学委員会5/29議事録
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[6-1] 有馬議員の質疑
http://ac-net.org/dgh/03/529-san-bun-arima.html
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[6-2] 鈴木議員の質疑
http://ac-net.org/dgh/03/529-san-bun-suzuki.html

「○鈴木寛君 ・・・最後に是非申し上げたいわけでありますが、この法案に
ついては、趣旨において私たち別に反対するわけではございません。そして、
そうしたことがどんどん進むように我々も本当に真摯に検討し、修正案の提案
ということを衆議院で行わせていただきました。今日の御議論で、やはり少し
でも懸念があることは、真意に邪心がないということは分かりましたから、で
あればそのことを法律上きれいに書いて、そしていろんなところからなされて
いる懸念というのは全くない形で、私はこれ、正に多くの関係者が、多くの会
派が賛成をした形で、正に五十年ぶりの大学改革政策の大転換期でありますか
ら、そうした船出を私はした方がいいのではないかというふうに思います。

 そのためには、是非この審議なども踏まえながら、条文の修正ということに
ついても真摯に御検討をいただきたいというふうに思いますが、その点につい
ての文部科学大臣の御答弁を求めます。

国務大臣(遠山敦子君) 今日、鈴木委員が本当に真剣に大学の将来考えてい
ただいて、ポイントとなる御質問をいただきました。私どもも誠実にその御質
問にお答えしてまいったつもりでございます。

 冒頭にもお答えいたしましたように、私どももできるだけ多くの党の御賛同
を得ながら、この非常に大事な法案の門出を見たいと思っていたわけでござい
ますが、御党の方からの御提出案が余りにも国の責任という角度から見て取り
上げにくいということで衆議院において否決されたわけでございます。

 ただ、答弁を通じ、あるいは討議を通じまして、私どもといたしまして、大
学の自主性の尊重という点を十分に踏まえて、国としての責任ある対応を今後
ともしていくということで明確な態度を表明したところでございます。

 その意味におきまして、今回の法案の理念あるいは目的とすることも私ども
としては明確にしたつもりでございまして、私といたしましては、このままの
内容で多くの会派の方の御賛同をいただきたいというふうに考えております。」
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[6-3] 草川議員の質疑
http://ac-net.org/dgh/03/529-san-bun-kusakawa.html
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[6-4] 林議員の質疑
http://ac-net.org/dgh/03/529-san-bun-hayashi.html
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[6-5] 西岡議員の質疑
http://ac-net.org/dgh/03/529-san-bun-nishioka.html

「○西岡武夫君 文部科学大臣に御質問申し上げます前に、委員長と与党の皆
様方にお願いを申し上げます。

 これだけ、これまでの各委員の御議論を承っておりましても、また衆議院で
の審議の状況等々も報告を受けておりますけれども、これだけ大きな問題でご
ざいますから、基本的な理念、そしてそれをめぐる周辺の問題、そして更に逐
条の審議まで含めますと、かなりの時間が、審議の時間が必要だろうと思いま
す。

 その点におきまして、委員長におかれては、十分この法案について、日本に
とって将来を左右する大変大きな問題でございますので、十分な審議時間をお
取りいただくように御配慮をいただきたい、まずお願いを申し上げます。いか
がでしょうか。

○委員長(大野つや子君) ただいまの御意見、確かに大変重要な問題である
ということでございますので、十分な審議を尽くすように理事会でも諮ってい
きたいと思っております。」

「○西岡武夫君 ・・・私は、たまたまこの文教委員会に籍を置くようになり
ましたのが、あの昭和四十四年をピークといたします大学紛争のとき以来でご
ざいまして、そのときの大学の自治というものの在り方というのは、極端なこ
とを申しますと、大学の中で殺人が行われても大学の自治の名の下に警察権は
介入できないという、そういうすさまじい状況が現にありました。その中で、
この大学紛争を何とか収束させなければいけないということで私どもが文教委
員会に配属されまして、それから文部行政についていささか今日までいろいろ
と意見を申し上げ、法案も立案をしてきたわけでございますけれども。

 その私の経験からいたしましても、今回のこの国立大学法人の法案の内容は
余りにも文部大臣に権限が集中しているのではないかと。私が言うんですから。
大学紛争のときは、本当に大学の自治というのはこんなものなのかと思うくら
いの経験をしたわけであります。その私の立場で考えても、今回のこの法案、
これ逐条でお話をしたいんですけれども時間がありませんからできませんけれ
ども、今日はできませんが、文部大臣が結局は何でもかんでも決められるよう
な感じになっていると私は思うんです。・・・」
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[7] 6/5 愛知教育大学教職員組合から田原学長への国大協総会にあたっての要望
       http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030608ihimedi.html
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2003年6月5日

愛知教育大学長
 田原 賢一 殿
 
                        愛知教育大学教職員組合
                           委員長 折出 健二

国立大学協会第112回定期総会出席にあたって(要望)


 来る6月10〜11日に開催される標記の総会に出席されるにあたり、何よ
りもまず、「国立大学法人法案」の国会審議における重大な局面において、国
立大学が高等教育・学術研究機関としての本来の使命を果たすことができるよ
う、自主性と自律性、学問の自由と大学の自治を擁護し発展させる立場から、
法案の問題点を明確に指摘されることを、貴職からも国大協執行部に対して求
められることを強く要望するものです。このことは、去る4月の「愛知教育大
学憲章」制定の主旨に則った貴職としての社会的な責務でもあると考えます。

 またこの総会において、法人化問題の他にも、再編・統合問題、教員任期制
の問題、予算の傾斜・重点問題、教職員の待遇改善・地位確立について、以下
の諸点につきまして充分な検討を必要とする旨、貴職からも発議されますよう、
ここに要望する次第です。

一 「国立大学法人法案」について

「国立大学法人法案」は、文部科学大臣が中期目標を定め、中期計画を認可す
ること、文部科学省に設置される国立大学法人評価委員会が法人の業績評価を
行い、業績評価と資源配分が直結されることなどにみられるように、国による
統制と関与を強めるものです。また、大学運営のシステムは、学長と少数の理
事によるトップダウン型とされるとともに、経営協議会・学長選考会議などへ
の多数の学外委員の参画によって、経営優先の運営に陥ることが強く危惧され
るものです。

 教育研究を目的とする大学の運営組織は、貴職も国大協特別委員会のアンケー
ト回答で述べておられるように、その自律的機能を高めるために教育研究を直
接に担う学内構成員の意見を最大限に反映するシステムとして、あくまで教育
研究を優先したものであるべきです。また、その教育研究活動を中心とする大
学の目標を文部科学大臣が定め計画を認可するというやり方は、憲法が保障す
る学問の自由と大学自治の理念を侵す危険性が高いものであります。

 このように「国立大学法人法案」には多くの問題点があり、そのことはこれ
までの国会審議を通じていっそう具体的に指摘されてきています。

 貴職におかれましても、以下の諸点から国大協の真摯な審議を求め、かつ大
学人並びに国民に対する国大協としての説明責任を果たすように積極的な発議
を要望するものです。

(1)大学の自主性と自律性、学問の自由と大学の自治を擁護し、発展させる
立場から、「国立大学法人法案」の内容を検討し、その問題点を明確に指摘・
批判する見解を公表すること。

(2)衆議院の審議において、法人移行によって労働安全衛生法が適用される
ことになったときに違法となりうる状態が国立大学に存在すること、こうした
事態を解消するために必要な対策、経費支弁等の措置が遅れていることが明ら
かにされた。このようなきわめて重大な問題を抱えたままの法人移行は本来不
可能であり、同法案の廃案を国大協として求めていくよう、貴職からも要請さ
れること。

二 国立大学の再編・統合問題について

私たちは、国立大学の再編・統合問題について、次の点を求めるものです。貴
職におかれましても、このことについて真摯な発議を要望致します。

(1)各地域の事情に照らして国立大学の拡充・整備を図るべきであって、理念
なき再編・統合をおこなわないこと

(2)教員養成系大学・学部については、大学における「教員養成開放制」の原
則に反する強権的な再編・統合をおこなわないこと。

(3)附属学校園についても、拙速な統廃合を計画したりせずに、大学と附属学
校園の多様な連携をおこない、研究協力や教育実習のいっそうな充実がはかられ
るよう条件整備をはかること。

(4)再編・統合問題の検討に当たって、全構成員に重要情報を遅滞なく開示
し、民主的な検討をおこなうこと。

三 教員任期制問題について

 任期制の拡大は、学術研究の総合的な発展に資するものではなく、むしろ大
学における教育者・研究者の養成や高等教育の充実を阻害するものです。貴職
におかれましも、慎重なる対応をなされるよう強く要望する次第です。

四 予算の傾斜・重点配分問題

競争的資金の増加や校費配分方式の変更等、予算の傾斜・重点配分問題は、大
学の教育・研究に重大な影響を与えています。「21世紀COEプログラム」の選
考結果は、大学間の財政基盤上の格差がいっそう拡大することを促すであろう
と深く憂慮せざるを得ないものであります。私たちは、政府予算編成期に当た
り、校費の充実等、研究・教育の総合的発展に資する立場から基盤的経費の充
実を強く要求して取り組んでおります。

 貴職におかれましても、引き続きご尽力いただきますようお願いします。

五 大学教職員の定員増

 この問題につきましては、定員削減による教育・研究・医療への影響を明ら
かにしつつ、大学の特性をふまえ、客観的根拠に基づく定員確保(定員増)の
要求が重要であると考えております。貴職のご理解とご協力をお願いします。

六 教職員の待遇改善・地位確立について

 私たちは、「高等教育の教職員の地位に関するユネスコ勧告」(1997年)
も視野に入れ、教員並びに事務系職員の職務評価と専門性を高め、待遇改善・
地位確立をはかる立場から、給与水準、「手当」等の新設、昇格改善など勤務
条件改善の取り組みを進めているところです。

 また、事務系職員にあっては大学運営を担うエキスパートとして、それぞれ
の職種の地位確立と、業務の専門性発揮にみあう勤務条件向上および待遇改善
が急務であります。

 貴職におかれましても、国大協における積極的で前進的な審議を求めるよう
に、ご理解とご協力をお願いします。
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