通信ログ
国公立大学通信 2003.06.14(土)
--[kd 03-06-14 目次]--------------------------------------------
[1] 6/13 九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門 有志声明
[2] 6/10 意見広告内容紹介(1) 「国立大学法人法」用語解説
[3] 6/06 京都府職労府大支部執行委員会声明「地方独立行政法人法案」反対
[4] 6/13 医系教官からのお便り(2003.6.13)
[5] 6/13 共同通信経済ニュース速報:「数値目標低い」と異論
[6] 6/12「教育基本法改悪反対意見広告」
[7] 6/14 ある国立大学教職員組合からのお便り「教員試算基準」
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[0-1]来週月曜日の国会内集会*は12:30からの90分という時間で参加者
の意見表明を中心に情報と認識の交換と共有を目指したいと思います。集会後
15時まで同会場で参加者の交流が可能です。これらが、来週火曜日の審議再
開後の議論が深まる契機となることを願っています。
*http://ac-net.org/dgh/03/616-dgh.php
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[0-2]昨夜のニュース23(TBS)が国立大学法人法案の審議が中断された
こと、来週火曜日に審議が再開されるが与党の出かたが注目される、と報じま
した。無修正可決+付帯決議では到底済まない事態になりましたので、野党の
廃案要求や修正要求に対して与党がどのような姿勢を示すかが焦点になった、
という状況判断を伝えたものと推測しました。櫻井よしこ氏は、最低限、中期
目標を届出制にすべきだと、コメントされました。評価と資源配分の連動を背
景にした強力な行政指導の下では、その修正が認められても、文部科学省の統
制力は実質的には変らないことも危惧されます。が、その修正だけでも実現さ
れることの象徴的な意義は大きく、国立大学が元気を取りもどす契機となるか
も知れません。
番組では、6月3日の参議院文教科学委員会で参考人として松尾名古屋大学長
が「千載一遇のチャンスです」と発言する場面を映し、11日の国立大学協会
総会の場面と、法人化を了承する昨年4月の文書とを映しました。了承は、昨
年のことであることが説明されていましたが、11日の国立大学協会総会が法
案を了承したのだ、という印象をサブリミナルに与えるのではないかと危惧さ
れます。
2月27日に法案が公表されて以来、法案を支持する意見を述べた大学関係
者は数名の学長だけであり、学長以外には一人も居ない、という事実は余り報
じられていません。学長には絶大な権限を長期間ものにする千載一遇のチャン
スですので、法案を支持したくなる学長がいることは理解できます。しかし、
法案に賛成だと主張する学長ですら、その主張の内容を聞けば、法人化には賛
成だが法案には問題が多いと言っており、実質的には法案への反対意見となっ
ています。そういう分析を報道することもジャーナリズムの使命のように思い
ます。
なお、今回は、反対意見も報じられ、5月23日の文部科学省記者クラブでの
反対運動主体の共同会見*1で、広告の会世話人の野村さんが5月21日の第二
次意見広告を提示し、法人化後の見通しについての質問に対し「これから問題
は噴出してくると思います」とコメントされたこと、また、国会でも参考人と
しても意見を述べられた田端博邦さんが、中期計画を提示し6年で達成度が評
価される制度では、野心的な研究が少なくなる、と警告されていることなどが
紹介されました。これは、お便り[4]にあったコメント「そもそも医学は実学
ではありますが、病気の病態解明のブレイクスルーになるのは、しばしば一文
にもならないと思われていた所から出るものです。皆が注目するところは結局
ブレイクスルーには成りえません。」と文理の違いを越えて共通することと言
えます。
*1
http://ac-net.org/kd/03/527.html#[1]
最後の方で、二人の東大生とおぼしき学生が、実感がわかない、卒業するので
自分には関係がない、とコメントするのを紹介し、「自律的、魅力的な大学が
出来きるのか、主役であるはずの学生がみせる無関心さは、その答を物語って
いるようです」と結んでいました。しかし、学生を大学の主役にしてはいけな
い、ということが70年以降の大学政策の中心的テーマの一つでした。そして、
国立大学法人制度の中心的テーマは、教員を大学の主役にしてはいけない、と
いうことです。それでは誰が大学の主役に?大学の主役は学外者でなければな
らない、ということが国立大学法人法案のテーマであり、その学外者とは卒業
生や父兄や市民ではなく「産官」でなければならない、ということが、総合科
学技術会議の夥しい文書の中で繰り返し繰り返し主張しているのです。
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[0-3]昨日紹介しました、茨城の主婦の方のご意見は、日本社会の「器官」で
ある国立大学を、国立大学法人法案という方法で摘出する外科手術について、
被術者である日本社会のインフォームドコンセントが全く得られていないこと
を見事に証明しています。意見広告の会事務局では、会期延長に応じて第4次
の意見広告の検討も始めているようです。その実現可能性は第三次までの支援
状況によると推測されます。第三次の意見広告の内容を3回にわけて紹介しま
すので、意義があると思われる方は支援されますように。
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[0-4]標準運営費交付金の「教員試算基準」の驚くような内容ーー独立採算に
近い内容ーーについて山形大学の品川教授が既に注意を喚起していますが*2、
新たにコメントが寄せられましたので重なる部分もありますが紹介します[7]。
それによれば、外形標準で配分される標準運営費交付金による「標準教員」の
数は現在の1/4になり、現在の3/4が、特定運営費交付金による「特定教
員」すなわち「研究、教育、管理運営などに専念する教員」になります。後者
は部局横断的な性格ですから部局の自律性は消滅しますし、評価によってはゼ
ロとすることで、スムーズに民営化が完了することになります[5]ーー民営化
といっても、独立採算という点だけの民営化であって国から命令されるところ
は何も変りません。「教員資産基準」このこと学長集団は知らなかったのか、
知っていて隠してきたのか、と問いかけています。
*2
http://ac-net.org/kd/03/611.html#[9]
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[0-5]公立大学が法人化するときに適用される「地方独立行政法人法案」*3が
6月5日に衆議院で可決され、参議院の総務委員会での審議がはじまりました
[3]。法人長の任免権は地方自治体の長が持つ、中期目標期間は3−5年、中
期目標は自治体の長が決める等々、非公務員型とする、等々。これによる公立
大学の法人化は、まさに独立行政法人通則法そのものによる法人化となるわけ
です。国立大学が将来地方移管される場合に適用される法律ですから国立大学
関係者も留意すべきものです。ただ、法人化するかどうかは自治体の判断に任
せる、という点が、国立大学とは大きく違うということでしょうか。独立行政
法人化しないことを決める公立大学には優秀な研究者が殺到することが予想さ
れます。
*3 http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g15605116.htm
(編集人)
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[1] 6/13 九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門 有志声明
http://ac-net.org/kd/03/614.html#[1]
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===========国立大学法人化関連法案の慎重審議を求める要望書=========
参議院文教科学委員
####殿
国立大学を法人化し、中期計画・中期目標を軸とする運営への転換をはかる国
立大学法人化関連法案に私たちは強い懸念を覚えます。現法案が成立すれば、
4〜5年という短期間に産業界に役立つ成果をあげるような研究ばかりが優遇
され、基礎的な研究や、応用・基礎を問わず長い研究期間を要するような独創
的な研究は冷遇され、そのような研究分野は淘汰される危険があり、多様性と
独創性が鍵となる研究目標・計画も文科省や総務省の事前指導やコントロール
の下に置かれる可能性が大きいからです。この法案が通過すれば、日本の大学
教育と研究環境は壊滅的な打撃を被るかもしれないと私たちは危惧しています。
私たちの大学の各部局においても、法人化についての議論と検討をよく行った
ところほど、この案に対する疑念と懸念が多数あがっています。「効率化」と
か「競争原理の導入」などの耳あたりのいい言葉で、表面的な説明を受ける段
階では反対しなかった人も、法案の中身について知るにつれ上記のようなさま
ざまな疑問がわき出し、「ちょっと待ってくれ」と言い出すことが多かったの
です。しかし、きちんとした説明と議論を保障する時間は多くの場合確保され
ませんでした。全国的スケールで、あれよあれよという間に法案成立へ向けて
のレールがひかれ、大学の教官や事務員は中期目標と中期計画の作成に追われ
る毎日を送ってきたのです。
そんな私たちは、先日6月10日の参議院文教科学委員会の櫻井議員と遠山文
部科学大臣の質疑応答を聞いて、その理不尽さに驚き、ここに緊急の意見書を
準備しました。文部科学大臣のいう「ざっくりした計画」と、われわれを駆り
立ててきた文科省の12月文書の細かな指示内容とは全然違うではありません
か。これは単に文科省内部に食い違いがあるというにとどまりません。法案審
議の場では各法人や部局の具体的な研究内容には細かなチェックを入れないと
いって法案成立をはかる一方で、大学の現場では各研究機関の具体的な研究内
容を中期目標・中期計画に書けと指示しているのです。これは官僚の暴走であ
ると言わざるをえません。法案審議の場では研究内容の自由が確保されるかの
ように言うのに反して、現場では文科省によって研究内容をコントロールする
体制を準備させている。法案推進者は、こんなあきらかな矛盾を抱えたいいか
げんな状態で、「百年の計」である教育研究体制をひっくりかえすつもりなの
でしょうか。
国立大学の法人化とは、大学を、特定の産業や国策に役立つ成果を短期間に達
成する機関に変えることを目指すものだと私たちは理解しています。そのよう
な短期的「利益」をあげられない機関は、予算を削られることにより淘汰され、
国立大学(法人)の研究機関はいやおうなしに矮小な目的達成に特化する方向
に「進化」していくでしょう。応用科学上の成果を本当にあげるためには、基
礎科学の研究の充実と人材の育成が不可欠であることは、科学に携わる人なら
だれでも知っていることです。分子生物学黎明期にオペロン説を提唱して、現
在のゲノム科学興隆の基礎をきずいたフランソワ・ジャコブ(1965年ノーベル
賞受賞)が、その仮説の提唱に決定的な結果を得る前にどれだけ「無駄な」実
験をしてきたか[1,2]、この法案の提出者は知っているのでしょうか。時のフ
ランス大統領ドゴールは、自らを「軍人としては帰結が手に取るような計画が
好きなのだ」としながらも、「得体の知れない、今後もわかる気遣いのない」
分子生物学に「やがて生命現象に光をあて、新しい医学を築く礎になるかもし
れない」という正しい予見のもとに特別予算を投入したのです[2]。このドゴー
ルの言葉を国立大学法人法案提出者や法案の推進者はどう受け止めるのでしょ
うか。
[1] F. ジャコブ著「内なる肖像」(1989年刊) みすず書房; [2] F. ジャコ
ブ著「ハエ、マウス、ヒト」(2000年刊) みすず書房
現在の国立大学法人関連法案がこのまま成立すれば、先進国の教育研究行政と
して、人類史上かつて例をみない愚策として後世に語り継がれることになりか
ねません。推進者は「官僚の天下り先が増える」こと以外に、この法人化にいっ
たいどんな利点があるのかを国民に分かりやすく説明するべきです。
貴委員会がこの国立大学法人化関連法案を慎重に審議され、賢明な決定をされ
ることを切に要望します。
九州大学大学院 理学研究院 生物科学部門
呼びかけ人:太和田勝久(生体高分子学研究室教授)
佐々木顕(数理生物学研究室助教授)
舘田英典(細胞機能学研究室教授)
矢原徹一(生態科学研究室教授)
賛同者:12人
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[2] 6/10 意見広告内容紹介(1) 「国立大学法人法」用語解説
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―国立大学がどうなろうとしているのかわかります―
(太字語は解説があります)
学校法人
私立学校法によって定められている法人(つまり団体)。私立学校(大学を含
む)の設置を目的とする。学校法人の長とそれが設立する私立学校の長は本来
異なる人物であることが望ましいが、実際には同一人物である場合もある。
国立大学法人
国立大学法人法(法人法と略す)により新たに定められる法人。国立大学の設
置を目的とする。この法律によれば国立大学の長は必ずそれを設置する国立大
学法人の長と同一人物でなければならない。学校法人と国立大学法人を比べる
と、この法律の特異さがわかる。
独立行政法人
行革の一環として造幣局、大学入試センター等のように業務が単純で数値的に
評価できる国の機関の業務効率化のために導入された制度。数値化の難しい教
育と創造的研究という目的を持つ大学にとっては、不向きな制度。現在の国立
大学法人法案は、大学を造幣局のような組織とみなすという発想に基づいてい
る。
中期目標
「独立行政法人通則法」に示されているコンセプト。各独立行政法人が3−5年
の間に達成すべき目標を所轄大臣が定め、それを実行する計画を独立行政法人
の長が中期計画として大臣に提出することになっている。法人法はこの制度を、
期間を6年に延長するだけでそのまま大学に適用している。それは大学を文部
科学省の子会社とみなすことを意味している。
国大協
国立大学協会の略称。形式的には全国の国立大学を会員とする組織だが、実質
的には国立大学の学長からなる組織。1950年に戦前の大学と国家の関係に対す
る反省の上に立ち、学問の自由と大学の自治を守るという精神のもとに設立さ
れた。大学法人化問題では当初大学人としての立場から様々な要求を行ってい
たが、文部科学省をはじめとする中央官庁への妥協を繰り返した結果、法人法
には多くの不満を持つにもかかわらず「ノー」と言う勇気を失い、大学を衰退
させる張本人になりつつある。なお本日から国大協の定例総会が開かれるが、
法人法について話し合わないことを国大協幹部は決めている。
遠山プラン
2001年6月に文科省が発表した国立大学改造計画。具体的な目標として「特許
数を10年後に1500件に」とか「社会人キャリアアップ100万人計画」のように
数字だけを並べ、高等教育の質に関する言及は皆無。大学の教育研究を数値化
してとらえようとする文科省の考え方を象徴している。
大学の設置者
学校教育法の定める制度。同法は教育機関の設置者は、その機関の教育条件の
整備の経費負担義務を負うと定めている。法人法により国立大学の設置者は国
から各大学法人に変わることになり、国は国立大学に対する財政的責任を負わ
なくてよくなる。各大学の学長は交付金の為に文科省の意に従わざるを得ない
立場に自動的に追い込まれる仕組みになっている。
大学の自律性
文科省は法人法により大学の自律性が高まると言っている。しかし大学はこの
法律によって経済的自立を強いられるに過ぎず(=設置者が国から大学法人に
かわる)、教育研究の運営については今よりも文科省に従属する(=中期目標
を文科大臣が定める)。これは世界でも希な制度。
役員会
法人法において、大学の運営上最も大きな権限を持つ組織。学長と学長が任命
する理事から構成される。2002年3月の法案最終報告で「理事」は「副学長」
と呼ばれ、明確な役割が定められていたが、法案の作成過程で、中央省庁の圧
力によって「理事」という曖昧な存在に置き換えられた経緯がある。全国で
400以上の理事ポストが法人法により創出される。「理事」という曖昧な名は
天下り先として最適。なお各大学の理事定員数が、法人法「別表1」という人
目につきにくい箇所で定められている。
評価委員会
法人法が、各国立大学の業務実績を評価する組織として定めている委員会。文
部科学省の内部に設置される。通則法は、評価委員会の評価に基づき文科大臣
が各大学の「組織と業務全般を検討し必要な措置を講ずる」としており、大学
の運営費交付金は評価委員会の評価に応じて配分されることになる。文科省や
国大協は評価委員の評価を「第三者評価」と呼ぶが、これは日本語の誤用。本
来の第三者評価とは、専門誌、シンクタンク、マスコミ、高校教育関係者、予
備校など、大学自身とも政府とも違った独立の第三者による評価のこと。
非公務員化
法人法による大きな変化の一つが大学教職員の非公務員化。その結果新たに労
働基準法や労働安全衛生法が国立大学に適用されることになるが、国立大学の
研究室の相当数がこれらの法規の定める基準を満たしておらず、法人法が実施
される来年4月には大半の国立大学が違法状態に置かれることがほぼ確実視さ
れている。この問題はなお国会で審議中。国大協は、これらの法規の適用に関
する「配慮」を関係省庁に要請する文書を5月初旬に各大学に配布したが、そ
れが違法行為の黙認要請であることに気づき、文書を修正しようと試みている。
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#(意見広告の会から)
・第3次の意見広告に賛同される方は、1次・2次の時と同様の申し込み方式
で、賛同カンパ金の提供予定額(口数)を示して、これまでの申し込み宛先に
ご連絡下さい。
メールの宛先 houjinka@magellan.c.u-tokyo.ac.jp
campaign@sbp.fp.a.u-tokyo.ac.jp
FAXの宛先 03−3813−1565 電話兼用
なお、郵便振替口座を利用されて、直接連絡していただいても、結構です。
ただし今後の連絡のために、なるべくメールでご連絡下さい。
・単位 1口5000円。 または1000円単位で、どのようにでも賛同金
カンパを受け付けております。
・送金は郵便振替口座『「法人法案」事務局』00190−9−702697
へお願い致します。
・ご注意:これは第3次の「意見広告」です。ご送金の際には振替用紙に、必
ず「3次」とお書き下さい。
・カンパ金を送られた方々には、会計報告をいたします。ご連絡先をお忘れなく。
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[3] 6/06 京都府職労府大支部執行委員会声明「地方独立行政法人法案」反対
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030613kyoufusyoku.html
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公立大学の法人化を狙う「地方独立行政法人法案」に強く反対する!
国会は「地方独立行政法人法案」を廃案にすべきである!
2003年6月6日
京都府職員労働組合府大支部執行委員会
公立大学の法人化を可能とする「地方独立行政法人法案」が、6月5日、衆議
院本会議にて与党の賛成多数で可決され、参議院に送付された。同法案は4月
末の閣議決定後、5月29日に衆議院本会議で趣旨説明、6月3日には同総務
委員会にて質疑、討論が行われた。そこでは民主、自由、共産、社民の野党4
党がそろって反対討論を行ったものの、即日採決に付され、自民、公明、保守
の与党3党の賛成により可決された。
まずもって、国会がこの重要法案について、数多くの疑義が呈されていたにも
かかわらず、たった1日の審議で、しかも「国立大学法人法案」の審議にみら
れるような大学関係者の参考人質疑さえも行わずに採決を強行したことに対し
て、私たちは強い憤りを覚える。2004年4月導入が先にありきの拙速な審議は
断じて許されない。
同法案は、公立大学のみならず、試験研究機関や水道や鉄道、病院等といった
公営企業事業、保育所や社会福祉施設などの社会福祉事業、その他図書館や公
民館等の公共施設といった地方自治体のほとんどの事業を法人化の対象として
いる。これら住民生活や福祉に密接で公共性の極めて高い事業が法人化される
ことには、(1)経営効率の追求により住民サービスの後退や住民負担の拡大が
もたらされる、(2)設置団体(自治体)の長に権限が集中する一方で、住民参
加や住民によるチェック機能が失われる、(3)現教職員は本人の同意もなく自
動的に法人職員に移行し、「非公務員型」法人の場合は公務員の身分を失う、
(4)賃金や労働条件が切り下げられかねない、といった重大な問題をはらんで
いる。
このような「地方独立行政法人法案」を私たちは決して容認することはできない。
また、同法案が狙う公立大学法人には、次のような問題点がある。
(1)まず、同法案は、「国立大学法人法案」と同様、高等教育・学術研究の
発展に重大な支障をもたらすものである。それは、教育研究活動を中心とする
大学の「中期目標」を自治体の長が「定め」、大学に「指示する」(国立大学
法人法案では「示す」)、そして大学が作成した「中期計画」を認可する、さ
らに自治体の設置する地方独立行政法人評価委員会が毎年業務実績の「評価」
を行い、自治体の長は6年の「中期目標」期間終了時に業務「継続」の有無を
含む検討ののち「所要の措置」を講ずるとする。このような制度は、日本国憲
法が保障する「学問の自由」を著しく侵害する危険性を有し、大学における教
育研究活動の自主性・自律性を脅かし、高等教育・研究機関としての大学の有
する普遍的な存在意義や社会的役割が歪められることになる。また、国立大学
法人の場合は独立行政法人通則法とは異なる独自法をもって規定しようとして
いるが、公立大学法人の場合はあくまでも地方独立行政法人の「特例」にすぎ
ないという問題を有する。なお、公立大学法人の設置に際して、文部科学大臣
の認可のみならず総務大臣の認可も得なければならず、こうした二重の認可制
度となることも問題である。
(2)同法案では、公立大学法人の運営組織についてその重要な部分を法律で
規定せず、「定款」という形で自治体の裁量に一切を委ねている。経営審議機
関や教育研究審議機関の構成や運営方法はもちろんのこと、その審議事項も国
立大学法人法案第20条(経営協議会)及び21条(教育研究評議会)に見られる
ような具体的な規定が「特例」の中においてさえ全くない。これでは大学の経
営や教育研究に関する重要事項の決定権をすべて設立団体である自治体の長に
委ねてしまっており、国立大学法人法案よりも大きく後退した内容と言わざる
を得ず、公立大学法人における「学問の自由」や教育の自主性の尊重の精神
(教育基本法第10 条)はないがしろにされている。また、国立大学法人法案
では「中期目標」の筆頭に「教育研究の質の向上に関する事項」を掲げている
が、同法案の場合はこの項目は存在せず、あえて対応する項目を捜そうとすれ
ば地方独立行政法人一般の目標の一つである「住民に対して提供するサービス
その他の業務の質の向上に関する事項」があげられるのみである。このことか
ら見ても、高等教育・学術研究機関としての公立大学法人の位置づけや役割を
軽視した法案と言える。
(3)公立大学の教職員は法人化した場合、国立大学法人と同様「非公務員型」
とならざるを得ず、法人に移行と同時に公務員としての身分を失うことになる。
すなわち、本人の同意もなく一律に退職が強要される。また、法人自体が業績
等を理由に解散すれば、解雇され、保障も一切ない。教員の場合はさらに教育
公務員特例法の適用外となり、「教育を通じて国民全体に奉仕する教育公務員
の職務とその責任の特殊性に基」(教特法第1条)く身分保障も失うこととな
る。とりわけ、学長や部局長、教員の採用等についての根拠規定を喪失し、
「大学の自治」の核心をなす教員人事の自治の中心的役割を果たす教授会の位
置づけを大きく後退させることになる。
また、法人においては法人化前の賃金や労働条件等は必ずしも引き継がれない。
これらは労使交渉事項とされるが、賃金には能力主義・成績主義といった競争
原理が導入されるばかりか、今日のような財政事情の下では大幅に切り下げら
れ、後退する可能性が極めて高い。
(4)法人化は自治体の財政責任をあいまいにするため、大学運営に必要不可
欠な最低限の経常的経費さえも保障されない恐れがある。このことは大学の財
政基盤を大きく不安定化させることとなり、財政危機、行財政改革の名の下に、
現在でさえ十分とはとても言えない教育研究水準を維持し得なくなることは容
易に予想される。経営効率のみが追求されれば、教育研究条件整備の後退や教
職員数の削減、学費の大幅値上げ等が不可避となろう。もしそうなれば多くの
住民・国民の高等教育を受ける機会を閉ざすこととなり、生涯にわたって学ぶ
権利もまた侵害されることになる。
以上から、私たちは「地方独立行政法人法案」に強く反対するとともに、国
会に対して「国立大学法人法案」とともに同法案を廃案にするよう強く求める
ものである。
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[4] 6/13 医系教官からのお便り(2003.6.13)
http://ac-net.org/kd/03/614.html#[4]
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私、一地方大学で医系教官(教官というよりは臨床医?) をやっている者で
す。以前から先生方の頑張りとお仕事にとても敬服しております。医系教官に
今回の事について危機意識が薄いと指摘されておりますが、我々はもともと教
育・研究者というよりは、単なる人材派遣業と化しているいわゆる医局の中の
駒でしかなく、既定路線とされている任期制の導入と相まって運動らしい運動
はできずにおります。月曜日の国会内行動も病院での実務から、全く参加する
ことはできませんが、先生方の活動は陰ながら応援させていただいております。
そもそも医学は実学ではありますが、病気の病態解明のブレイクスルーにな
るのは、しばしば一文にもならないと思われていた所から出るものです。皆が
注目するところは結局ブレイクスルーには成りえません。今回のシステムは様々
な所から指摘されているように目先の実学に競争的進歩は促されるかもしれま
せんが、しょせんそれだけになってしまいます。景気低迷が続く中少ないお金
を何処に本当にかけていくべきなのか。自衛隊の派遣に躍起になる前に、米百
俵の逸話がお好きな首相の音頭取りとは思えない改革と思います。
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[5] 6/13 共同通信経済ニュース速報:「数値目標低い」と異論
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030613kyoudoutusin.html
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政府の特殊法人等改革推進本部参与会議(座長・飯田亮セコム最高顧問)は
12日、今年10月に特殊法人などから独立行政法人に移行する32法人につ
いて所管する9府省からのヒアリングを開始した。
府省側は、業務の効率化やサービス内容充実のため、具体的な数値を盛り込
んだ中期目標・計画案を提示したが、出席者からは「数値目標が低い」と異論
が続出し、府省側に再検討を指示した。ヒアリングは16日、19日にも実施
する予定。
12日は内閣府、文部科学省、経済産業省が所管する5法人を中心に中期目
標・計画案を精査。
経済産業省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は管理
経費を4年半で5%削減する案を出したが、出席者は「そんな低い数値では何
も減らないのと同じだ」と批判。飯田座長も会議後の記者会見で「民間企業な
ら初年度15%、その後も10%ずつぐらい減らしていく」と指摘、再考を求
めた。 (了)
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[6] 6/12「教育基本法改悪反対意見広告」
http://ac-net.org/kd/03/614.html#[6]
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教育って誰のため?!
教育基本法改悪反対!
多彩な意見広告にご協力を
子ども一人ひとりのための教育ではなく、
お国に都合のよい「人材」をつくるための教育に変えようとする教育基本法改悪。
こんなの絶対許せない!!
私たちは、新聞、雑誌、ラジオでの広告、駅ポスター、
電車内での広告など、多彩な意見広告を考えています。
◎私たちが呼びかけます
梅原 猛(哲学者)
大田 堯(教育学者)
子どもが、身と心とで紡ぎ出すアートとしての教育を。手厚い条件
整備こそ政府の責務です。愛する心などへの立ち入りはご遠慮を。
小山内美江子(シナリオライター)
二度と過ちをくり返さず、日本の教育が世界平和に貢献すると
いう根本は、簡単に変えてよいものではありません。
落合 恵子(作家)
川田 龍平(人権アクティビストの会)
子どもたちのためにならない、教育基本法改悪に反対します。
姜 尚中(大学教員)
高橋 哲哉(大学教員)
「愛国心」をもて、国家に役立つ「人材」になれと、子ども
たちの「心」を「国家戦略」に動員する、「こころ総動員法」は
許せません。
竹下 景子(女優)
教育の泉を涸らしてはなりません。一握りの子どものための
教育や愛国心の強要は、泉の源を絶つに等しい行為です。
辻井 喬(作家)
暉峻 淑子(埼玉大学名誉教授)
子どもたちを不幸にする教育基本法の改正を、いまこそ私達
おとなが、子どもに代わって止めなければと思っています。
灰谷 健次郎(作家)
山田 洋次(映画監督)
教育基本法改悪反対・「多彩な意見広告」の会
〒113−0033 東京都文京区本郷5−19−6 坪井法律事務所内
TEL&FAX: 03(3812)5510
Eメールアドレス: 準備中
ホームページ: 準備中
賛同金
個 人 : 1口 1000円(できるだけ 2口以上)
グループ・団体 : 1口 3000円(できるだけ 2口以上)
送り先 郵便振替口座: 加入者名 「多彩な意見広告」の会
口座番号 00170−5−443947
●通信欄にはお名前とフリガナ、新聞への名前公表の可否を必ずご記入ください。
(最後に賛同mailを送れる署名欄がありますので、最後まで見てください)
※いろいろな団体で取り組んでいますので、重複して受け取られた方は、
まわりの方に広めてください。
目標は新聞の全国紙一面広告ですが、
お金の集まり具合を見て、ラジオ、駅ポスターなど
多彩な意見広告を展開していく予定です。
全国紙一面広告
全国紙半面広告
駅や電車での広告
ラジオスポット
意見広告のための広告、雑誌・地方紙
※広告の内容により、協力してくださった皆さんの
お名前を公表させていただけない場合もございます。
第1次集約 6/15
第2次集約 7/15
<<以上>>
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[7]ある国立大学教職員組合からのお便り「教員試算基準」
http://ac-net.org/kd/03/614.html#[7]
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「たぶん、来年度概算要求に関わっておられる方は御存じとは思いますが、法
人化後の標準運営費交付金の算定根拠となる教員の員数計算表が添付資料1*
のように明らかになりました。これは、あくまでも全体の一部で、肝腎の全体
像は、私どもはまだ入手できていません。漏れ出てきたこの情報によると、学
生当たりの標準教員数は、学部学生・大学院学生ともに、現在よりもほぼ1/
4ほどに(1/4ほどが、ではないことに注意)減算されています。このこと
の確認と、それへの注意の喚起を全国に訴えられることをお願いいたします。
これは、法人化のもたらす具体像を、数字として示していると思います。
なお、添付資料2にあるように、運営費交付金の骨格については、昨年暮れ
に出された、「国立大学法人(仮称)の運営費交付金算定ルール(案)」の冒
頭に、国立大学法人(仮称)の事業費区分は、標準運営費交付金と特定運営費
交付金に大別され、前者は全国共通、後者は大学と地域の事情に合わせて個別
に積算することになっております。これは文部科学省の査定によると思われま
す。それぞれの交付金の算定は事細かに定量化されています(略、希望者には
配付できます)。
添付資料1の標準教員数にもとづいて、標準運営費交付金にあるさまざまな
事業費が決められますが、標準運営費交付金にかかる教員数(標準教員数)は、
例外なく現状より大幅に減員することになります。標準教員当たりの単価が不
明ですので、具体的にどれほどの収入が予定されるのかは、全く検討がつきま
せんが、標準運営費交付金の基礎となる教員数が減少することの意味は大きい
と思います。
一方、添付資料2によれば、特定運営費交付金にかかる教員数(特定教員数)
は、大学の特色を示すために研究、教育、管理運営などに専念する教員にあた
り、特定の学部などに所属することは必要ないと規定されています。 仮に、
標準教員数と現状の教員数との差が特定教員数となるとすれば、現状の3/4
の教員が「研究、教育、管理運営などに専念する教員」となります。これは学
生定員とは無関係になりますので、流動的となる可能性が高いのではないでしょ
うか。さらに憶測すれば、大学毎に文科省が格付けをして、研究大学であれば
研究専任教員、教育を主とする大学であれば教育専任教員のポストに当たる経
費を公布するための仕掛けではないでしょうか。
繰り替えしますが、いずれの場合も、各教員の単価(研究費や給料など)が
示されているかどうか、当方には不明です。
このような情報を手にして考えてみますと、以下の疑問が湧きます。
(1)法案が通る前から、法案に基づいて、来年度概算要求づくりという行政
指導が、事細かに行われているのではないか。
(2)予算的根拠は法人化後の教育研究の根幹であるのに、それも知らせずに、
中期目標や中期計画を策定しろという、これまでの行政指導は何だったのか?
(3)国会で、国立大学法人化法案に賛成された国立大学学長諸氏は、以上の
予算的根拠を御存じの上で賛成を表明されたのであろうか?そうであれば、彼
等は国立大学全体のコミュニテイに対する説明責任を果たしていないのではな
いか?
また、御存じないまま賛成されたとすれば、そのような方がたの情勢判断を、
我々は認めることができるのであろうか?
(4)そもそも、こんな状況での法人化の審議を認めて良いのであろうか?
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* 添付資料1:http://ac-net.org/kd/03/614-unneihi-1.pdf
** 添付資料2:http://ac-net.org/kd/03/614-unneihi-2.pdf
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org
通信ログ:http://ac-net.org/kd
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