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国立大学独立行政法人化問題 週報
Weekly Reports No.25 2000.10.2 Ver 1.0
独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports No.25 2000.10.2 Ver. 1.0
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(ミラーサイト http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-25-00a02.html)
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===============================目次===================================
[25-0]発行者より
[25-1]これまでに文部省ホームページに掲載された調査検討会議議事概要
[25-2]都立4大学外部監査で、東京都からの教職員給与は無しとして計算か。
[25-3]全教「教育改革国民会議「中間報告」に対する中央執行委員会見解」
[25-4]全医労本部パンフ「輝いて看護..」山田洋二監督の巻頭の言葉
[25-5]岩佐 茂氏「国立大学の独法化の狙いと現実」
[25-7]益田隆司氏「国立大学:競い合いへの構造改革−学生の主体性の尊重を−」
[25-8]田中宇氏国際ニュース解説「知のディズニーランド、ハーバード大学」
[25-9]藤原正彦氏(お茶の水女子大学理学部教授)「驕るな経済」より
[25-10]澤地久枝氏「少年犯罪対策に疑問」(北海道新聞2000.9.18)より
=========================発行者より===================================
[25-0]国立大学の独立行政法人化が大学セクターの構造的改善を困難にすると
いう指摘[25-7]は、これまで論議されていなかった。日本の教育体制全体を視
野において国立大学独立行政法人化の是非を議論することが全くされていない。
調査検討会議の項目には、そのようなものはない。文部省は、世紀に1度ある
かないかと言われる大手術が、日本の教育体制全体に与える影響の吟味なしに
着手してよいのだろうか。
調査検討会議の議事概要が3回分出ている[25-1]。会議の形式に問題点がいく
つもある。発言者は事務局と協力者の2種類にしか分類されていない。国立大
学協会からの参加者は個人の立場で発言している。文部省に対し質問はあるが
要求がない。結局「国立大学協会代表としての発言」という設定ががない。こ
れを黙認したということは、国立大学協会は事実上分解したことを意味しない
か。
各学長は個別大学の行く末に関する重い責任があり職員組合も同様である。日
本の大学全体の行く末を心配できるのは一般教員以外にはないのではないか。
しかし、独立行政法人化を危惧する多くの教職員の意思を結集する契機が乏し
い。
都立4大学の外部監査は独立採算を前提にして赤字を報告している[25-2]。教
育改革<国民会議>の雑多な思いつきは初等中等教育をさらに混乱させようと
している。国立病院の独立行政法人化も、力強い反対運動にもかかわらず、進
んでいる[25-4]。大学セクター内の、独立行政法人化に疑念を持つ意見を結集
し、日本社会に向けて発信すべき時が来たのではないか。それは国立大学の現
状の無理解を解く契機となるだろう。
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[25-1]これまでに文部省ホームページに掲載された調査検討会議議事概要
[25-1-1]調査検討会議(第一回組織業務委員会2000.7.31)議事概要
http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000433/
[25-1-2]調査検討会議 (第一回目標評価委員会2000.8.16)議事要旨
http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000440/
[25-1-3]調査検討会議(第二回組織業務委員会2000.8.30)議事概要
http://www.monbu.go.jp/singi/chosa/00000442/
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[25-2]都立4大学外部監査で、東京都からの教職員給与は無しとして計算か。
『東京新聞』「都立4大学 計167億円の赤字都外部監査『効率化』統合後押し」
2000年9月30日付より
「結合収支決算書によると、四大学すべてが赤字で、都立大の赤字が百二十一
億円と最大。四大学の収入は授業料がほとんどで都立大が最も多く三十五億円、
四大学で計四十八億円だった。これに対し、支出は教員や職員の人件費が大部
分を占め、四大学で計二百十五億円だった。」
Nikkei Net 「都立4大学、99年度の赤字167億円」2000年9月29日付より
「監査報告書によると、99年度の4大学合計の授業料などの収入は約48億円な
のに対し、支出は約215億円。経営構造の問題点として教職員の多さを挙げ、
教員1人当たりの学生数が都立4大学の平均約11人に対し、私立大学の平均は
3倍の35人であることなどを指摘している。」
『毎日新聞』「<外部監査>都立大など都立4大学が大幅赤字 統合構想加速に」
2000年9月29日付より
「東京都は29日、東京都立大など都立4大学の外部監査結果を発表した。4
大学の総合収支を初めて算出し、昨年度は計167億円の支出超過で大幅な赤
字経営となっていることが分かった。監査人は4大学の統合、他の公立大学と
の連合を検討の視野に入れるべきだと指摘した。石原慎太郎都知事は2月に都
立4大学の統合構想を打ち上げるなど大学改革に意欲を示しており、今回の監
査結果でその流れが加速しそうだ。
外部監査は地方自治法の改正を受けて昨年度から全国の自治体で実施されて
いる。今回の監査対象は、都立大(八王子市)、都立科学技術大(日野市)、
都立短期大(昭島市)、都立保健科学大(荒川区)。
4大学の総合収支計算によると、昨年度の収入は48億円、支出は215億
円。監査人は、大学事業を効率的に運用する部署を都庁内に設置するよう提案
した。」
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[25-3]全日本教職員組合「教育改革国民会議「中間報告」に対する中央執行委員会
見解」より
http://www.ny.airnet.ne.jp/zenkyo/seimei12.htm
「...「画一を排し、個性重視」の教育が、競争の教育に拍車をかけ、偏差
値のみならず子どもたちの人格や内面までも序列化し、人間らしい成長・発達
を歪めてきたことは、国内に止まらず、国際的にも鋭く指摘されてきたところ
です。わたしたちは、激しい競争の教育を抜本的に見直すことこそ、いま日本
の教育改革の最も重要な課題であると考えます。....」
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[25-4]山田洋二監督の巻頭の言葉
全医労本部パンフ「「輝いて看護 守ろう命」いのちも「効率」の対象です
か?とりもどそうゆとりの看護」
「ぼくの家のすぐ近くにあった、国立大蔵病院は住民たちの反対に関わらず閉
鎖されて小児病院として改築中。今まで通院していた病をもつ人たちを絶望に
おとしいれてしましました。病院に経済原則をもちこまれることほど、病に苦
しむ人にとっての不幸はありません。大学を含めて、国立病院の独立行政法人
化には絶対反対です。全医労のみなさん、がんばってください」
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[25-5]岩佐 茂氏(一橋大学教授)「国立大学の独法化の狙いと現実」
「技術政策研究」2号 p1--11 より
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/009/28-iwasa.html
「..それゆえ、国立大学法人にすれば問題が解決されるというのは、幻想で
しかない。国立大学が法人格をもとうと、もつまいと、確保されなければなら
ないのは学問の自由に基づく大学の自治であり、それを保障する安定した財政
基盤の確保である。文部省が「大学の自主性・自律性」といっても、大学の自
治ということをけっして口にしないのは、自らの大学への統制・管理の意思を
捨てていないからである。「日の丸」問題に象徴されるように、文部省による
大学の自治への介入が、概算要求時の「窓口指導」等によっておこなわれてい
る以上、文部省の姿勢が変わらないかぎり、たとえ国立大学法人になったとし
ても、今日の事態が根本的に転換されることはありえない。問われているのは、
文部省の姿勢なのである。」
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[25-6]野田隆三郎氏(岡山大学教授)「独法化問題の現状と課題」より
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/009/28-noda.html
「...
来年半ばには調査検討会議の中間まとめが出される予定です。出てしまったあ
とで、それを修正させることが至難の業であることは「学校教育法」改正の経
験が教えています。行政寄りの「中間まとめ」を出させないための取り組みが
いま何よりも大切と思われます。
私たちがいま取り組んでいる教職員対象の「国大協への署名運動」
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/008/25-shomei.html
もその一翼を担うものと考えますが、同時に全国民を対象にした全国レベルの
署名運動に再度、早急に取り組むことが望まれます。
そして、いま進行しつつある半世紀に一度の大改悪を国民、特に学生に対し
て訴えるべきです。国立大学教員にとって、いまこの問題の教育以上に重要な
教育が他にあるでしょうか。」
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[25-7]益田隆司氏(電気通信大学教授・元東大大学院理学研究科長)
「国立大学:競い合いへの構造改革 −学生の主体性の尊重を−」より
http://www-masuda.cs.uec.ac.jp/‾masuda/etc/article0.html
「...独立行政法人化をすると大学間に競争状況が生まれるという現在の推
進派の考えにはまちがった論理の飛躍がある。この論文では、大学における
「競争」を「分野、領域ごとの開放的な競い合い」と定義し、それを実現する
ための方策を提言したが、現在論じられている独立行政法人化の議論には、"
競争" の定義がない。国立大学には競争がないように見える、独立行政法人化
をして評価をすれば、競争をするようになるのではないかといった期待感だけ
である。大学院重点化の例をみても分かる通り、国立大学を現状のままで独立
行政法人化することは、閉鎖性の強い大学が、それぞれ身を守るためにますま
す閉鎖性を強めるだけである。上位の大学間の序列もそのまま残る。この論文
で述べてきたような開放的な競い合いの構造、学生の流動性は決して発生しな
い。外部機関の評価によって、立場の弱い国立大学の整理、統合は始まるかも
しれない。大学への管理のみが厳しくなり、これまで国立大学が担ってきた基
礎的教育研究部門は日が当らない方向へと追いやられることにもなるだろう。
上位の国立大学の一部には自分たちは法人化されても生き残れる、自由度も増
すのではないかという思惑をもっているようにも感じられるが、短視眼的な自
己中心的なあやまった判断である。...」
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[25-8]TNN「知のディズニーランド、ハーバード大学」
(田中宇の国際ニュース解説 2000.9.21)
http://tanakanews.com/a0921harvard.htm
「...その翌日に講演したエズラ・ボーゲルは、日本でここ数年間に停滞が
ひどい分野の一つは、大学を中心とする高等教育だ、と指摘していた。特に国
立大学は、文部省を頂点とする硬直化した官僚制度のため、時代の変化に柔軟
に対応する教育や研究ができなくなっている、と語っていた。...」
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[25-9]藤原正彦氏(お茶の水女子大学理学部教授)「驕るな経済」より
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/009/28-fujiwara.html
「市場原理とか効率運営などというものを持ち出すのは文部官僚ではない。教
育とか研究に通じている者の発想ではないからである。政府の委員会や審議会
において、最近なぜか重用されているエコノミストや経営者、あるいはその経
済至上主義に染まった人々が、主張しているのだろう。だから産業界に役立つ
人材を大学は養成しろ、などという冗談のような注文も出される。大学は産業
界のためにあるのではない。学問を守り抜くためには産業界などむしろ眼中に
あってはならないとさえ言える。そんな気概がないと産業に役立たない多くの
分野は早晩切り捨てられてしまう。....
「経済」の物言いは大学に対してばかりでない。小中学校で起業家精神を育て
るための教育をせよ、中高生に株や債券の知識を与えよなどとも言う。週二十
数時間の窮屈の中、こんなことに時間をさいたら基礎学力がガタガタになる。
ここ数年アメリカ発のグローバルスタンダードすなわち市場原理が、不況克服
の錦の御旗の下、わがもの顔に日本をのし歩いている。大量のリストラや底無
し沼の如き金融ゲームによる大型倒産などを目にすると、経済に限ってもそれ
でよいのか大いに疑問なのに、いよいよ今度は学問や教育に押し寄せる。十年
近く続いた不況そのものより、「経済」の跋扈による災禍の方がはるかに大き
くなりそうだ。」
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[25-10]澤地久枝氏「少年犯罪対策に疑問」(北海道新聞2000.9.18)より
「...なにか音をたてて時代がいやな方向へ変わっていく感じがある。そし
て、正面から異を唱える人たちは例外なく暴言を浴びさせられ、孤立させられ
ようとしている。...
型に入れた上意下達の教育や訓練によって、みずみずしい人間性も生命への敏
感な感性も奪われる。犯罪が減少する保証などない。..」
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◆国立大学独立行政法人化問題サイトの入り口
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/
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発行者: 辻下 徹
homepage:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/
e-mail: tujisita@geocities.co.jp
総目次:
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html
登録 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/mg2.html
発行部数 1003 (2000.10.2現在)
内訳:Mag2:568 / CocodeMail:314 / Pubzine:58 /Macky!:32 / emaga:20 / melma:11
その他直送 約 200 /ダイジェスト版直送 約 2000
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End of Weekly Reports No.25 2000-10-2
**この週報は発行者の個人的な意思で行っています**
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