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Weekly Reports No.41 2001.2.19 Ver 1.11
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━━━━━━━━━━━━━━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[41-0] 発行者より
[41-1] 国立大学法人の枠組についての試案
[41-1-1]発行者から北大評議員へ:
[41-2]「東京大学が法人格をもつとした場合に満たされるべき基本的な条件」
[41-3] 財務省方針:2002年度から独立行政法人予算を段階縮小
[41-4] 講座・学科目改変権を国大に与える国立学校設置法改正案(毎日新聞2
[41-5] 科学研究費基盤研究(S)新設
[41-6] 文部科学省サイト:中央教育審議会について
[41-7]「総合科学技術会議発足1カ月技術力回復へ重い課題」
[41-8] 独行法情報速報 No.1 特集:評価問題 独立行政法人問題千葉大学情報
[41-8] 永井 實「自主・自立の大学を」(近刊琉球大学50周年誌より)
[41-10] 中山 茂「研究の100年--フンボルト理念から大学資本主義へ--」
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[41-0]発行者より
国立大学協会設置形態特別委員会委員長の試案[41-1]が国大内で広く配付さ
れている。3月2日の国立大学協会理事会で国立大学協会案とするための手続
きと思われる。放置すれば国大は、非本質的な修正を施した独立行政法人とな
ることを自ら選ぶことになる。
独立行政法人問題千葉大学情報分析センター[41-8]が設立された。待ち望ま
れていた活動である。
中山 茂氏「研究の100年」[41-10]の最後の節「民営化の果て」で最近
の情勢を次のように総括している。「金をもうけることも知的に興味あること
ではあるが,それには限定がある。それに対して無限定なのが学問の自由であ
る。無限定な学問の人文系はもとより,社会科学系も,純粋科学系も,企業化
した大学を支える科学技術の余禄,捨て扶持で支えられることになる。」
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[41-1]国大協委員会「国立大学法人の枠組についての試案」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nagaosian.html
2001年2月7日
国立大学法人の枠組についての試案
国立大学協会
設置形態検討特別委員会
委員長 長 尾 真
国立大学協会設置形態検討特別委員会は昨年7月発足以来、今回まで9回の討
議を重ねて来た。その間に扱ったテーマは多岐にわたる。一方、この特別委員
会の下にもうけた4つの専門委員会でも設置形態の詳細を検討して来た。今後
さらに検討を進めてゆくためには、今後の国立大学のあるべき形態の検討とと
もに、仮に国立大学が法人格を取得した場合にも教育・研究の質の向上、国際
競争力の強化や地域貢献につながるものとなる枠組について、現時点での特別
委員会の意見の集約をすることが大切であり、これまでの委員会での議論、お
よび2度にわたる各委員・専門委員からの意見の集約を行い、この試案を作成
した。
...
3.法人格の取得によって、大学は自主性・自律性が高まり、個性化とともに
教育研究の質が向上するものでなければならず、これを保証する国立大学法人
法を独立行政法人の基本的枠組を参考にして作る。
6.大学に評議会を置き、最高の審議機関とする。部局に部局教授会を置き、
部局の重要事項を審議する。
8.学長の選考は、運営諮聞会議の意見を聞いて評議会が定める選考基準にし
たがって評議会が行い、その申し出によって主務大臣が任命する。学長の解任
についても同じ。
9.大学の中期的な活動の目標とその目標達成のための具体的な計画は、数年
の期間について、主務省と協議して大学が決定する。
10.大学の評価は、計画期間の終了時に、設定した目標に対する計画の達成度
を中心に行うが、教育・研究に関しては大学評価・学位授与機構などの機関に
よる多元的評価に基づく。
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[41-1-1]発行者から北大評議員へ:
「国大協設置形態検討特別委員会の委員長名による法人化試案(資料1)(以
下、長尾試案)が2月7日付けで出され、北大を始め多くの国立大学内で配付
されています。この手続きを経て、2月22日の設置形態検討特別委員会で、
委員会案とされ、3月2日の理事会で国立大学協会案とされる可能性は高いと
思われます。
長尾試案は独立行政法人制度の骨格を前提としたもので、実質的な独立行政
法人化の容認となっています。昨年6月の国立大学協会総会前の北大評議会で
の議論に照らして長尾試案を検討し、北大の意思を代表する評議会として責任
ある行動をとることをお願い申し上げます。
--------------
【問題点1】<中期目標・中期計画・事後評価>形式
項目3で、国立大学法人法を設計する際、独立行政法人の基本的枠組を参考に
すると述べられています。しかも、項目9,10 では、<中期目標・中期計画・
事後評価>形式が暗黙の内に前提とされています。しかし、この形こそ、独立
行政法人制度の骨格であり、大学の研究教育活動にとっての有害性の核心部分
です。
この形式の有害性は具体性を帯び始めています:
大学評価機構の評価方法ができて明らかになったことは、事後評価の基準とな
る中期計画は具体的で詳細なものになることです。さらに、4月より独立行政
法人になる国立研究所の例から明確になったことは、中期目標・計画は法人運
営に留まらず、法人の活動全般に及ぶことです。従って大学の場合には、中期
目標・計画は教育・研究内容に及ぶことは確実であり、実際、文部科学省自身
もそのように考えていることは、調査検討会議目標評価委員会(2000.12.13)で
次のように述べていることからわかります:
「独立行政法人の制度設計をした官庁も、すでに先行独立行政法人の中期目
標を見ながら議論をしているが、その中でも特に「業務」と「業務運営」との
峻別を意識していないようであり、今のところは、むしろその機関の特性に配
慮しながらも、業務が丸ごと目標の対象になり得るという前提で考えられてい
るのではないかと受け止めている。」
長尾試案が最終的に文部科学省案に取り入れられたとしても、詳細な中期計画
の遂行に大学は存廃を賭けて励まなければならなくなります。各教官の価値観・
見識・問題意識を配慮する余地は大学にはほとんどないでしょう。目標を大学
が選び、計画を大学が建て、学長を大学が選び、評議会が大学の最高意思決定
機関となり、評価を大学評価機構がしたところで、試案に基づく国立大学法人
の自主性・自律性と、教員の自主性・自律性とは両立せず、後者を基盤とする
学問の自由は残らないのです。
【問題点2】学長選挙廃止・評議会の審議会化の容認
項目6、8は、昨年4月に施行された、改正学校教育法・教育公務員特例法を
復唱したものであり、学長選挙を廃止し評議会を最高の意思決定機関ではなく
することを、大学自身が追認することになります。この点は、東京大学の法人
化小委員会が1月30日に出した「東京大学が法人格をもつとした場合に満た
されるべき基本的な条件について」(添付資料2)の項目2で、「総長を法人
の長、評議会を法人の基本的な事項に関する最高の意思決定機関として位置づ
け、総長は教授等教育研究に責任を負う構成員の選挙によって選ぶものとする。
」と明記しています。法人化しようがしまいが、昨年4月に国立大学が失った
ものを取り戻すことは、今後の国立大学に必要な自主性・自律性の鍵であると
共に、その発露となる意思表明行為の第一歩となるのではないでしょうか。
--------------
私たち大学にいま在籍する者は、独立行政法人化のもたらすものを何度でも初
心に戻って根気よく直視すべきであると思います:大学も学部も学科も講座も
教官も、それぞれの零和ゲ−ム(実際は負和ゲ−ム)に投げ込まれ、大学は容
易に民営化される体制に移され、教育の機会均等が損なわれ、大学が<科学技
術>だけの場となり学問の多様性が破壊され日本社会の知的ポテンシャルが急
速に失われ、そして何よりも、大学と学問が全面的に国家に従属させられ,先
人たちが何とか守り続けて来た学問の自由が破壊されてしまうのです。
国大制度の中でも出来る改革は無数にあることが、この1年余の間に、明らか
になりました。私たちが努めるべきことは、国大制度に留まっての改革の方法
を真剣に検討し、形の上の改革を静かに拒否し勇気を持って国大制度に留まり、
各教官が社会に感謝しつつ落ち着いて自分の信じる所に従って研究教育に励み、
日本の精神風土を豊にしていくことに努め、白川博士が強調されたように、大
学と社会との直接的紐帯を時間をかけて強めていくことではないでしょうか。
産学連携もその一環として初めて長期的な効力を持つようになるのではないで
しょうか。
北大評議員の皆さま、明日、評議会が開かれると聞きました。北大評議会を今
一度、日本全体の将来をも視野に入れた議論の場とし、未来世代に対する責任
を意識した決断をされることを、お願い致します。
・・・」
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[41-2]「東京大学が法人格をもつとした場合に満たされるべき基本的な条件について」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010218kihonjouken.html
「2.国の設置する大学である東京大学においては、自律的な意思に基づく教
育研究の推進のために、教学と経営は一体化したものでなければならない。そ
のためには、総長を法人の長、評議会を法人の基本的な事項に関する最高の意
思決定機関として位置づけ、総長は教授等教育研究に責任を負う構成員の選挙
によって選ぶものとする。他方で、東京大学は、与えられた使命を実現するた
めに従来以上に責任ある大学運営体制を確立するとともに、第三者を含む会議
体の設置などにより、大学運営の透明性を高める必要がある。」
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[41-3]財務省方針:2002年度から独立行政法人予算を段階縮小
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1649.html
『日本経済新聞』2001年2月18日付
「財務省は国の現業部門を切り離して四月に発足させる独立行政法人の予算措
置について、2002年度以降は一定の上限を設け、段階的に縮小することを
検討する。国の業務を減らして効率化を進める独立行政法人の設置目的を踏ま
えた措置。毎年の削減幅は当面、5−10%としたい考え。夏に予定している
2002年度政府予算案の概算要求基準の決定にあわせて、正式に決める方針
だ。
・・・
運営費交付金を受け取った独立行政法人は、自ら定める経営計画のなかで、
人件費や研究費などへの配分割合を独自に決めることができる。財務省は各機
関が人件費削減や運営効率化を推し進めたり事業収入を活用したりすることで、
運営費交付金を段階的に減らしていくことができるとみている。」
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[41-4]講座・学科目改変権を国大に与える国立学校設置法改正案(毎日新聞2/13)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1637.html
毎日新聞ニュース速報[2001-02-13-19:25]
「自民党文部科学部会は13日、国立学校設置法改正案を了承した。文部科学
省が通常国会に提案するもので、現行法は国立大学の学科内の講座・学科目を
省令で規定するよう定めているが、改正案はこの規定を廃止し、各国立大が自
主的に講座・学科目を編制できるようにする。」
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[41-5]科学研究費基盤研究(S)新設
http://www.jsps.ab.psiweb.com/koubos.htm
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1646.html
科学新聞:「1人または少人数の研究者が共同で行う独創的・先駆的研究を支
援する基盤研究(S)を新設。研究期間は5年間程度、1課題あたり総額5000万〜
1億円程度(年間2000万円程度)。日本学術振興会が2月前半には公募要領を
発表し、3月末くらいには各機関からの申請書を受け付ける。7月頃には内定
する予定。予算規模が約20億円弱のため、100件弱が採択される予定である。」
#同一機関内研究組織のみを対象としており、次期科学技術計画に謳われてい
る大学間競争を促す政策の第一弾か。30%の間接経費が上乗せされ代表者が
所属する大学に配当される。
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[41-6]文部科学省サイト:中央教育審議会について
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gaiyou/010201.htm
「中央省庁等改革の一環として,従来の中央教育審議会を母体としつつ,生涯
学習審議会,理科教育及び産業教育審議会,教育課程審議会,教育職員養成審
議会,大学審議会,保健体育審議会の機能を整理・統合して,平成13年1月6
日付けで文部科学省に設置。」
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[41-7]「総合科学技術会議発足1カ月技術力回復へ重い課題」
朝日新聞夕刊2001.1.31
http://www.jca.apc.org/toudai-shokuren/dekigoto/010131ae.html
「・・・
省庁再編で、科学技術の主要な担い手である文部省と科学技術庁が一緒になっ
たが、融合は進んでいない。「大学は文部、原子力推進は科技庁」と既得権の
壁は厚く、同会議には大所高所からの政策評価への期待もかかる。
・・・
予算や人材の配分、国家的に重要な研究開発の評価をする点が、前身の科学
技術会議と異なる。諮問がなくても首相らに意見を述べることができるなど、
能動性も高まった。
また科学技術会議は年に1、2回しか本会議が開かれず、下部組織や省庁が
作った政策を追認するだけだったが、今回は議員が徹底的に議論するとしてい
る。」
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[41-8]独行法情報速報 No.1 特集:評価問題 独立行政法人問題千葉大学情報
分析センター
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010219-tiba-no1.html
「各国立大学とその連合体(Federation)である国立大学協会(国大協)が繰り返
し国立大学の独立行政法人化(独法化)に深い懸念と反対の意思を表明している
にもかかわらず、独立行政法人(独行法)の内実作りが強引かつ急速に進められ
ています。こうしたなかで、独法化への諦めが拡がっていますが、しかし、よ
り深刻なのは、各大学で、情報の部分的流布とその御都合主義的な解釈に踊ら
されて、個別大学、個別部局の目先の利益追求という生存競争の論理へと縮退
する傾向が強まっていることです。 "背に腹は代えられない"と、このまま生
存競争に埋没していけば、普遍性を語源に持つ大学システムを大学自らが破壊
することになりかねません。そこで、私たちは、「独立行政法人問題千葉大学
情報分析センター」を作り、以下のような活動を開始することにしました。
■開示 本来、独行法にかかわる情報はすべての大学構成員に速やかに開示さ
れなければなりません。しかし、現実には情報は十分には行き渡っていません
し、入手された頃には既に決定済みということがしばしばです。幸い全国的な
情報については既にアクセスシステムが出来ていますので、その紹介にとどめ、
本速報は千葉大学にかかわる情報や資料の速やかな開示と紹介に力点を置きま
す。
■分析 情報は科学的・批判的に分析してこそ意義があります。本速報では、
得られた情報・資料について分析を試みます。特に、千葉大学で起こっている
ことが、独行法とどのような関係があるかについても検討します。
■提言 観念的な評論や現実への無批判な拝跪は無力であるばかりか有害です。
根本的な改善・変革へと繋がる具体的な方策への提言が今ほど求められている
時はありません。分析どまりではなく、変革への展望をもった提言を未成熟な
形であっても提示します。
■討論 上記の分析や提言は一面的であったり、不正確であったりすることも
あるでしょう。また、複雑過ぎて立ち往生することも考えられます。こうした
時は、本速報上で、厳しい反論も含めた活発な討論の場を提供します。従って、
投稿などの形でご意見をお寄せくださることを歓迎致します。必要に応じて、
討論会などを組織することも考えています。
...」
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[41-8]永井 實「自主・自立の大学を」(近刊琉球大学50周年誌より)
http://www.ac-net.org/doc/01/217-nagai.html
「...
太平洋戦争の後,戦争を放棄した新憲法の下で,全国各地に一斉に設置された
いわゆる「新制国立大学」との,相互比較研究においても,あるいは国立大学
一般の今後のあり方を語る上でも,本学の経験がきわめて貴重な情報を提供す
ることに誰も異存はないであろう。時あたかも大学の「独立行政法人化」が喧
伝され,有事法制,平和・民主憲法の見直しまで議論されるこの節目の時代に,
今後50年ほどの大学の未来,あるべき姿を,しっかり見据えることは決して
無駄ではないと思われる。
タイトルに掲げた「自主・自立」と「独立行政法人」は一見相通ずる様に見
え,またそれを肯定する議論も一部にあるようだがそれは真っ赤な嘘・虚構と
云うべきであろう。国立大学協会を始め多くの心ある大学人がくり返し明らか
にしているように,「独立行政法人化」は政府・文部省の高等教育に対する責
任放棄であり,大学運営までも資本主義的市場原理に投げ込むこと以外の何も
のでもない。そもそもこの国の高等教育施策および財政は福祉の施策・財政と
並んで先進国中もっとも貧しく,劣悪でさえあることは今や知らない人の方が
少ないのではなかろうか。国立大学も私立大学も乏しい教育予算の中で骨身を
削る大学運営を余儀無くされ,学生とその親達は「受益者負担」の名のもとに
世界一高く,かつ毎年上昇する入学金と授業料の重圧に喘いでいる。教育の機
会均等とは裏腹に今や「東京大学」に入れる子の親の平均年収は2000万円
を下らないといわれている。
...」
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[41-10]中山 茂「研究の100年--フンボルト理念から大学資本主義へ--」
(IDE 2000.12 p39-43)抜粋
http://www.ac-net.org/doc/01/218-nakayama.html
「5.民営化の果て
...
かくして,大学の研究者はそれぞれの企業とライセンス契約を結ぶ。大学当局
も個々の教授の研究契約からオーバーへッドを大学の経営資金に操り入れるた
めに,ライセンス研究を奨励促進する。そして,学会誌に無償で発表して,人
類共有の知的財産に貢献しようとする自由で開放的な古典的アカデミック・サ
イエンスは崩壊し,産業化科学が進行する。これを大学資本主義 Academic
Capitalismともいえよう。そして「旧式の純粋科学者と未未志向の企業家的教
員との対立が進行する」((マサオ・ミョシ「売却済みの象牙の塔」「現代思
想』2000年9月p‐41)かつてジェネンティックスが大学に進出して,研究成果
の公表公開よりも,研究室間に企業秘密の壁が設けられることになった,と嘆
かれたが,今や基礎研究・応用研究という学問分類よりも,ファイアウォール
なしの研究と,ファイアウォールの中の研究とに分類される。
今日問題になっている日本の大学のエイジェンシー化,独立行政法人化のねら
いの一部、あるいは大部分は,こうした大学資本主義である。そして,腕に自
信があり,産学協同に野心を燃やす理工系.バイオ系の純粋よりも応用的な分
野の教員によって推進される。いまや欧米と同し路線に収斂したのだから,80
年代までのように,日本が金儲けのための研究に専心して,欧米を抜くという
ことはできなくなった。同じ路線の上での競争となると,アメリカなどに負け
そうである。そういう危機意識から,産業界も独立行政法人化を支持する。教
育レベルでは古典的教養科目派のいう「いやらしい専門主義 grim
professionalism」がはびこり,径営,法律,コンピュータ科学のような「金
になる」学科が跋扈し,大学の専門学校化が進行する。その目的とするところ
は役に立つこと,それも深い意味で有用というのではなくて,目先の「金にな
らないか,なるか」によって,古典的リベラル・アーツ(そこには研究面では
基礎科学・アカデミック・サイエンスが対応する)か,プロフェッショナリズ
ムかが分かれる。金をもうけることも知的に興味あることではあるが,それに
は限定がある。それに対して無限定なのが学問の自由である。無限定な学問の
人文系はもとより,社会科学系も,純粋科学系も,企業化した大学を支える科
学技術の余禄,捨て扶持で支えられることになる。」
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発行者: 辻下 徹
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/
e-mail: tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
発行部数 1158 (2001.2.19現在)
Mag2:670|CocodeMail:349|Pubzine:57|Macky!:41|emaga:23|melma:18
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End of Weekly Reports 39
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