==> |Back Number総目次
独法化問題週報への登録:
右のフィールドのいずれかに
電子メールアドレス(半角)を
入れてください。
Mag2 に登録

Cocode Mailに登録
melmaに登録
Number of access to this page since 2001.6.26...

Weekly Reports  No.58  2001.6.26 Ver 1.02

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-58.html 総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-0] 今週号の紹介 ---------------------------------------------------------------------- [58-0-1] 大学社会が液状化しかねない今、大学関係者が何を思っているかを 発信していくことがますます必要になる。これがアカウンタビリティの原点で あると考えたい。今後この週報でも種々の意見を紹介していきたい。今週は、 遠山プランについての意見を掲載した[58-1]。 ---------------------------------------------------------------------- [58-0-2] 国大協総会出席者の詳しい報告が公表[58-6-1]され、「委員改案了 承報道」が完全な誤報であることは明確になったが、誤報を訂正してインパク トがあるのか、という政治的視座に徹した意見が説得力を持っているという。 また、会長が「大筋了承した」と記者に述べたという情報もある[58-6-4]。 政治家ですら糾弾されるような明白な虚偽を使った没理的な政治的戦略で法 人化を実現したところで、「真理」探求を法的に義務付けられている大学が本 当に良くなるはずはない。大学を取り巻く政治的状況が先月より急速に悪化し ていることで動転していることはわかるが、存在基盤が液状化しつつある時に は「現実主義」は何の役にもたたないことを悟って欲しい。 ---------------------------------------------------------------------- [58-0-3]バブル時に某政府高官は「日本の科学技術はもう十分だ」と発言した という[58-1-2]。「権力の座」に居るものには、「普遍的真理」を追求する習 性を持つ学問的活動は良くても無用、場合によっては危険で邪魔なもの、と見 えることは、秦の始皇帝の焚書坑儒に限らず時と場所を越えた現象と言えるだ ろう。しかし、国大協のような政治力のない集団にまで、真実を厭うような 「権力の座」があるとすれば馬鹿げている。 ---------------------------------------------------------------------- [58-0-4]「遠山プラン」[58-4-1]には、各方面から危惧の声は出ている。国鉄 民営化の奇跡を一人で実現したといわれている加藤寛等の私大関係者が「遠山 プラン」を批判し、小泉首相に対案作成を約束したという[58-3-2]。また、朝 日新聞の社説[58-10-1]は、国大協の法人化案では大学の自主性・自律性など が改善するのかと疑念を述べ、また、ユネスコの「21世紀の高等教育に向けて の世界宣言:展望と行動」を引き、学生の大学運営への参加の重要性を指摘し ている。 ---------------------------------------------------------------------- [58-0-5] 「民で出来ることは民で(=企業として経営が成り立つことは企業 に任せよ)」、という古い合言葉が呪文のように合唱されているが、例えば教 育の分野で、政府に替わって企業がすべてを引き受けるとき、全国民が「買え る」値段では最低限の品質すら保ち得ないないことは自明のことである。高価 な教育を購入できる国民層にしかまともな教育に手が届かなくなる。医療や老 後保証等々についても、同じであろう。 もちろん、こういった変化は、政策決定にかかわる人達や、世論に影響力の ある「有名人」・スポーツ選手・有識者・メディア関係者の多くは、より快適 になる改革に反対するはずはなく、痛みは「弱者」にしかかかわりのないこと で自分とは無関係の問題として気にもとめていないのだろう。日本社会全体の 行く末に対する社会的「強者」の徹底した無関心こそ、現代日本の弱体化の主 因ではないのか。 しかし、また、小泉内閣の高支持率から推測されることは、市井の多くの人 達までが、持てるものがさらに快適になり多数が永続的な痛みを耐えることに なる政策を支持することにより、自己を強者と同一視する錯覚に奇妙な喜びを 感じているようにすら見える。  企業の活動を政府が邪魔しないようにする「小さな政府」政策−−それは、 近未来小説によくあるような、少数の巨大多国籍企業が政府に替わって世界を 支配する時代を呼ぶものだろう。平成14年度通常国会での成立を目指し、商 法等改正の準備が着々と進んでいる[58-13]が、大企業優先の改革と言われて いる内容は国民に充分知らされているとは言えない。法制審議会議事録で発言 者を匿名にする理由もわからないが、なぜ圧縮ファイルで提供しなければなら ないかも理由がわからない。意図の有無とは別に、これではインターネットの 検索エンジンでは発言内容を検索できない。経済構造改革による脅威はわかり にくい分だけ無監視に何でも決まってしまう危険性が高い。特に経済や法学の 専門家の大半が口と閉ざしているためにその危険性が高くなっている。 ---------------------------------------------------------------------- [58-0-6] 教育行政の失政を取り戻すには数十年の時間がかかると言われる。 しかし、今日本が直面しているリスクはその比ではない。ニュージーランドの ある議員から日本に向けた次のような悲痛なメッセージがある「長い間法律や 制度の中で培われていた市民の絆と社会的連帯のシステムは、一度失われてし まえば、それを取り戻すのには100年かかる、したがってそうした大切なも のを失わないように、われわれの失敗に学んで、規制緩和にぜひとも反対して 欲しい」[58-3-5]。 現内閣が一気に実現しようとしている構造改革政策は、新しいものではなく、 これまでに種々の分析がなされ、その帰結についてはかなり明確に予想が出来 るようになっている[58-3-5]。ジャーナリストの中には使命感を持った方々も 少なくないはずだ。ぜひ、こういったものを取り上げ、規制緩和や「民ででき ることは民で」ということの本当の内容と帰結を正確に詳細に伝える努力を本 気でしてほしい。 ━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-1] ◆コラム:大学を考える◆ [58-1-1] 藤田博美(北海道大学)2001.6.21 国立大学とは何であったのか?  [58-1-2] 渡辺勇一(新潟大学)2001.6.24 =科学を金もうけの道具としかみなさない愚行で   日本の科学は衰退する:科学史に照らして= [58-1-3] 皆村武一(鹿児島大学)2001.6.26 驚くべき方向に急展開する「国立大学の独立行政化法人化問題」 [58-1-4] 発行人からの「お願い」2001.6.21 ---------------------------------------------------------------------- [58-2] 衆議院文部科学委員会2001.6.5議事録 より [58-2-1] 独立行政法人化について [58-2-2] ◆飛び入学について ---------------------------------------------------------------------- [58-3] 小泉内閣の骨太構造改革案 2001.6.21 [58-3-1] ◆今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針より [58-3-2] ◆母校慶大OBが首相に苦言「トップ30大学」構想で [58-3-3] 財務総合政策研究所:「経済の発展・衰退・再生に関する研究会」報告書 [58-3-4] NASDA・NEDOなど13の研究開発型法人も約6000億円の政府出資金を原則廃止に [58-3-5] ◆内橋 克人他「規制緩和―何をもたらすか」1998 [58-3-5-1]内橋 克人「すり替えられた規制緩和」 [58-3-5-2]ジェーン・ケルシー「ニュージーランドで何が行われたか」 ---------------------------------------------------------------------- [58-4] 文部科学省「遠山プラン」を巡って [58-4-1] 文科省ホームページ「経済財政諮問会議(第10回)への提出資料について 」 [58-4-2] 平成13年度国立大学長会議2001.6.14 における文部科学大臣挨拶 [58-4-3] ◆文部科学大臣会見2001.6.15の概要 [58-4-4] 沖縄振興へ大学院大学 3年後開校へ政府が構想(asahi.com 2001.6.20.03:04) [58-4-5] ◆沖縄への大学院構想に難色 協力要請に文部科学相(共同通信) [58-4-6] 文部科学省国大独立行政法人化調査検討会議、資料など [58-4-6-1] 文部科学省所轄ならびに国立大学附置研究所長会議アピール(文部科学大臣宛) ---------------------------------------------------------------------- [58-5] 総務省:独立行政法人評価委員会 [58-5-1] 独立行政法人とその業績評価について [58-5-2] 独立行政法人関係主要業務のフローチャート(未定稿) [58-5-3] 政策評価・独立行政法人評価委員会(第5回)議事要旨2001.5.25 ---------------------------------------------------------------------- [58-6] 国大協第108回定期総会2001.6.12/13の諸問題 [58-6-1] ◆第108回国立大学協会総会ならびに平成13年度国立大学長会議報告 [58-6-2] 総会での意見書 [58-6-2-1] ◆国立大学法人化についての疑問と提案 [58-6-2-2] ◆「国立大学法人化についての基本的考え方」および・・一意見一 [58-6-3] 「臨時国大協総会開催要求」の呼びかけ(東大職組) [58-6-4] ◆「法人化案了承」報道について [58-6-5] 全大教中央執行委員会声明 2001.6.17 [58-6-6] 国大協設置形態検討特別委員会案に対して北海道大学大学院理学研究科・ ---------------------------------------------------------------------- [58-7] 国大協第8常置委員会 [58-7-1] ◆2001.4.3 議事要録 [58-7-2] 国立大学協会「日本の将来と国立大学の役割」(PDF, 2001.5) ---------------------------------------------------------------------- [58-8] 国立大学独立行政法人化阻止全国ネット [58-8-1] ◆ ゴンブリッチ教授のメッセージ ---------------------------------------------------------------------- [58-9] 国立大学の独立行政法人化に反対する首都圏学生実行委員会 [58-9-1] ◆6月27日(水)第6回・月例文部科学省行動の呼びかけ [58-9-2] 第5回・文部科学省申し入れ行動2001.5.25報告 ---------------------------------------------------------------------- [58-10] 意見・報道など [58-10-1] ◆『朝日新聞』社説「大学改革 めざすべきは活性化だ」2001.6.24 [58-10-2] 地方大 「存亡の危機」 「切り捨て」反発広がる [58-10-3] ◆(独立行政法人研究所より)「自己責任」とは??? [58-10-4] 行政監視局 No184-1, #(保育園民営化の影響の例) ---------------------------------------------------------------------- [58-11] 数年前の状況 [58-11-1] 経済戦略会議「国立大の民営化 不適当と回答」(1999.7) [58-11-2] 「任期制「法制化」は、将来の国立大学民営化の伏線では?」(1997.3.18) ---------------------------------------------------------------------- [58-12] 発行者の意見など [58-12-1] 北大評議員へのメール 2001.6.20 [58-12-1] 北大評議員へのメール 2001.6.21 ---------------------------------------------------------------------- [58-13] 法制審議会商法部会第146回会議 議事録 2000.9.6 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-1] ◆◆コラム:大学を考える◆◆ ---------------------------------------------------------------------- [58-1-1] 藤田博美・北海道大学 2001.6.21 国立大学とは何であったのか?  http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/voices/01621-fujita.html 世に「独立法人化をすれば大学は良くなる」という風潮があるらしい。我々 個人個人が変わらない限り制度などいじっても良くなる訳ないなどと考えてい る自分が居る。に、しても国立大学はその使命を終えたと一方的に宣言された ときに、うまい反論の言葉が出てこない。(いや、これは国立大学でなくても いい。日本の大学は使命を終えたという宣言であったとしても、やはり反論の 言葉がうまく出てこない。) そもそも、国立大学とは何であったのか、が、実は不勉強な私には判らない。 戦後、焼け跡の何もない時期に、物質的に何もないがゆえに抽象的な文化をこ れからの日本の生き残る道にしようと考えた人が居たのかもしれない。それを 象徴するのが各々の都道府県に一つづつ設置された国立大学であったのかもし れない。かつて、ある田舎町の国立大学の古びた体育館に古びたプレートがは め込まれていた。ブラジル在住の県人達が、故郷に大学が出来ると聞いて資金 を応援してくれて建設されたのがこの体育館であると。古びたプレートと体育 館は故郷に文化の中心をと期待する遠く離れた人々の心があるゆえに輝いて見 えた。そういう時期があったらしい。 68年という時代があった。それまで、まがりなりにもエリートでありえた大 学生に、一般大衆としての未来しか準備されていない、しかしながら大学の教 員はその大衆化した現実から離れたところにしかいない、そのようなことへの 若者のプロテストであった、と結論した本を見かけたことがある。歴史として 正しいかどうか、私は知らない。 そして、もしそれが歴史に対する正しい見方の一つであるとするならば、学 生の問いかけに対して大学は何を答えたのだろうか?恐らくは答えなかった。 あるいは答えられなかった。政府の主導した機動隊を使った正常化に載っかっ ただけではなかったのだろうか? 70年代、受益者負担論による国立大学の授業料値上げが始まった。多分、そ れにも載ってしまった。今、国立大学は受益者負担論の毒が全身に廻ってしまっ ているのではないだろうか?受益者負担の向こうには抽象的な文化の輝きも何 もなく、あるのは就職に有利、社会で役に立つ、だから授業料を払っているの だ、そういう「社会」からの目しか残っていなかったのではないだろうか。 さて、あの頃から30年ほど過ぎて、大衆化社会では受益者負担が当然と認識 されるようになったこの日本で、我々に文化の重要性、抽象的な思考の大切さ を社会に対して説得できるだけの言葉が残っているのだろうか、30年の沈黙の 後で? 研究についてなら幾らでも語ることは出来る。あるべき研究システムについ ても語ることは出来る。しかしながら、文化装置としての大学についての理想 を社会にどう語りかければよいのか、ひたすらにおろおろするばかりである。                 北海道大学大学院医学研究科社会医学専攻                  http://www.med.hokudai.ac.jp/‾hyg-w/ ---------------------------------------------------------------------- [58-1-2] 渡辺勇一・新潟大学 2001.6.24 =科学を金もうけの道具としかみなさない愚行で   日本の科学は衰退する:科学史に照らして= http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/voices/01624-watanabe-y.html  ひと昔前なら、今すさまじい勢いで「新産業創出」の言葉のもとで進行して いる産学協同の動きがこうも簡単に許されなかったと思うが、現在の大学は全 く異なってしまっている。なぜ「学問の自由」が必要かを、自らの学問に重ね て違和感なく主張できる人間がどのくらい存在しているのだろうか。もっとも 多くの研究者は、そんなスローガンに関係なく、いかにその自由が圧迫される 状態になっても、自分の研究の楽しみをどこかに見出し、したたかに生きて行 く積もりなのかも知れない。  安斎育郎氏は、その著「理科離れの真相」(朝日新聞社)の中で、バブル時 の、政府高官の「日本の科学技術はもう十分だ」という発言を示し、この時代 に理科履修のための授業時間が激減した事実をあげている。  バブルが崩壊した後、今も低迷を続けている現在の日本において、財界と為 政者が科学を推進するシステムに極めて強い支配力を発揮し続けているのは、 上記の事情の裏返しである。今回発表された「大学の構造改革の方針」には、 尾身氏が表した 「科学技術立国論」の目指した方向が、より粗野に凶暴な形で表出している。 簡単に言えば、科学に金を生ませるために相当な投資をしたのだから、これま での形を許さない、利益をもたらす企業の如くシステムを全面的に変えろとい う脅迫である。科学技術基本計画に基づく17兆円(1996-2000)の投資が始まっ た翌年(1997)には、遠慮がちに任期制法案だけが国会を通過したが、今や大 学組織自体の存亡までが語られるようになった。しかもその施策を打ち出して ゆく人間が、今回の構造改革案では完全に大学の外の人間のみになっている。 いわば科学や教育の現場を知らない人達が、現場と無関係に大変強い政策を打 ち出してきたのである。形だけを見ても、現場を無視して、国全体の科学の発 展は起こり得ないだろうと直感するが、後述する様に創造性を重視する科学の 現場は、非予見性に富んでいる。評価に応じて予算に差をつけるとか、組織の 存続を許さないといった恫喝は、予見できない多様な道に踏み込むために必須 な、科学者の自由な精神活動を大きく萎縮させるであろう。  国立大学の独法化、民営化の流れを受け入れる論調の根にある感覚の一つに、 「国の財政悪化」が顕著だから仕方がないというものがある。筆者の周囲でも 文系の教員にこの意見が多いが、理系の教員とて例外ではない。「金が不足し ているから、国立は現在の様に贅沢はできない」という論調は、ほぼ百の国立 大学を維持するための「国立大学特別会計繰入金」全体(今年度は約1.6兆円) を上回る3-4兆円台の予算が、新産業創出を目指して1996年から毎年使われて いる事をみれば吹き飛んでしまう。  これほどの金を注ぎ込んで何が得られたかよりも、費やした事自体が、それ こそ只では済まない事態を生んでいっているのである。これらの巨額の予算の 下に、研究者を競争に駆り立てれば、それで財界が望む成果が得られるという 自信を財界人と為政者達はお持ちなのだろうか。経済が悪化した時だけに科学 を推進するシステム丸ごとを無理に改造しようとする行為は、大変危ういもの だと言える。学問を日々進める者として、実際の科学者の発言からその無謀さ を示してゆきたい。  まず、科学で一定の成果を望みたいのであれば、無駄と思える人数、組織は 欠かせない事である。BBC放送が著明な研究者に行ったインタビューを本にま とめた、「科学に魅せられた人びと」(L.Wolpert & A. Richards 共著、東京 化学同人、1991)には、科学の成果の予見がいかに困難であるかが繰り返し示 されている。   「ある問題を解こうとやりはじめて、突然にわき道に興味ある分野が開け   ていることを発見し、それがずっと実りのあるやりがいのあるもののよう   に見えればそちらに進んで行くことには心配しませんね。(中略)そして   この予期しない道、予期しない枝分れが、私達を非常に実りある、驚くべ   き道へと導いてくれるのがわかるのです」(マイケル・ペリー)P.79   「アイデイアがどのように浮かんでくるかということは、長い時間をかけ   て論文を読み、話し合い、考える必要があるということを除けば、はっき   りしないものです」(フランシス・クリック、ノーベル賞受賞)P.147   「研究の98は何も生み出さない事を知っているが、困ることはどの98な   のかがわからないことだ」(ジョン・ベイン、ノーベル賞受賞)P.280  他にもあるが、この辺りで引用をやめよう。研究の道筋がいかに予測できな いかということは、研究を推進する部隊を選りすぐって少数にすることが、い かに愚かであるかを意味している。現在進められている、競争と選別は、科学 史を知らない人達の政策であろう。また評価に応じて予算を配分しようとする 行為も同様に科学史に無知な人の突き進む道であると言える。  また、研究者というのは、弱みを見せないけれど、大変弱い精神を持ってい る。研究の過程で常に高揚した精神と自信を持ち続けられるものではない。や はりノーベル賞を獲得している、レヴィ・モンタルチーニ女史は、成果が得ら れる前の自信のなさを;「私は自分の研究の見通しに不安を抱いていたので、 ルリアやドウルベッコに相談に行ったり、幾晩も眠れぬ夜を過ごしたりした」 と語っている。           (美しき未完成、女史の著作、平凡社)  次に競争について言及したい。原典は再び「科学に魅せられた人びと」であ る。   「私たちは、最初の一時期、公式にはライバルと考えられていましたが、   二人ともまったく行きづまったとき、一緒に行動しました。(中略)最後   には、私達は共同で論文を出したのです」(ドロシー・ホジキン、ノーベ   ル賞受賞)P.120 勿論、「ノーベル賞の決闘」(ウエイド著、岩波現代選書)に描かれた様 に、最後まで競争を続けながら、視床下部ホルモンの構造決定を二度も争った ギヤマンとシャリーの例もあるが、果たして彼等の間に競争というものが必要 だったのか。この点にゆいて、著者のウェイドも、「彼等二人が実験結果や研 究方法のコツを知らせ合って共同で仕事をしたならば、進歩はずっと速かった のではなかろうか」(P.12)という疑問を投げかけている。  さて、最後に今後の日本の研究者を育てる「教育」についてである。研究は 論文の数などで、定量化しやすいために、研究者は選別と競争のもとでの予算 獲得の為には必死になり、止めどもなく教育のための時間を減らしてゆく。こ の事情は研究者以でなくとも簡単に理解される事ではないだろうか。しかし現 実は、教員のFD、カリキュラム改革、などが評価の対象になるために、教員 達は相当な時間を費やして、「改革」WGのような活動を行うのである。この ような活動が全て無駄というのではないが、まず制度を変えて評価を良くして もらおうとする傾向は強く、授業の内容は変わらないことになる。結果はどう あれ、「授業そのもの」へ注ぎ込むエネルギーと時間が大きく削られてゆく。 それだけではない。評価は研究と教育だけではない。公開講座など地域社会へ の貢献も、同様に評価項目の大きなものであるから、そちらへも努力が必要と なる。  上記の様にして、「科学技術立国」なるものを目指しているはずの、我が国 の教育現場では、あれもこれもの作業の増加の中で、生気を急速に失い続けて ゆく教員達による、質の低下した(あるいは改善されないままの)講義が大多 数を占め、一部の良心的な教員の講義などは、焼け石に水という状態になるの である。  独立行政法人になれば、現在数年おきに多大な努力を払って準備している、 評価目標に関する書類の他、企業会計に基づく予算・決算書にも手を取られる。 現状の教員の志気の低下どころではないのだ。   大学には、「必要な時には社会に警鐘を鳴らす」という重大な役割があるは ずである。辻下氏の「独自の価値観に立ち社会にとって掛け替えのない存在と なることを志向し進化を続ける」というのは、そのような理想を実現する大学 の姿を示したものと考える。しかし現実には、教育と研究を自らの判断で推し 進めるという、警鐘以前に大学が持たねばならぬ基本的機能が危うくなってい るのである。財界・政治家を問わず、日本人全体にとって、この事がマイナス にならないはずはない。科学技術のレベル低下に気づいて研究教育のシステム を修復するためには、どれだけの時間が必要となるのだろうか。それよりも元 に修復できるのだろうか。                         新潟大学理学部生物学科 ---------------------------------------------------------------------- [58-1-3]皆村武一・鹿児島大学 2001.6.26 驚くべき方向に急展開する「国立大学の独立行政化法人化問題」 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/voices/01626-minamura.html  異常ともいえる国民的な支持を背景に、小泉内閣は構造改革を急ピッチで進 めようとしている。大きな改革には痛みを伴うことは必然であるが、痛みの後 には改善が期待されるものでなければならない。ニュージランドの轍を踏まな いよう、われわれも改革にむけて内部努力をするとともに、いまこそ社会に対 して国立大学の使命を積極的なアッピールを行う必要がある。  大学、とりわけ国立大学においては、1991年の『大綱化』以降、膨大な 労力と時間を大学改革のために振り向けてきた。ほとんどの大学人が研究の時 間を割いて大学改革に取りみ、その成果も徐々にあがりつつある。そのような 状況のなかで、1999年4月、「大学の自主性を尊重しつつ大学改革の一環 として、国立大学の独立行政法人化について検討し、15年までに結論を得る」 という閣議決定がなされた。それを受けて、国大協は、「設置形態特別検討委 員会」を設置して国立大学の制度設計について検討を重ね、2001年6月1 2日の国大協総会で「国立大学法人化の基本的な考え方」及び「国立大学法人 化の枠組」(中間まとめ)が報告された。国大協総会では、「枠組」に関して かなりの反対意見が出され、承認には至らなかったという。にもかかわらず、 長尾国大協会長の記者会見の結果は、国大協は「枠組」を了承した、と報じら れている。  長尾氏の作為なのかマスコミの誤解なのか、部外者には分かるはずもないが、 報道の内容を見る限り文部科学省の意向を踏まえたものであるということは間 違いないであろう。それよりも驚くべきことは、文部科学省が経済財政諮問会 議に提出した「大学(国立大学)の構造改革の方針」である。文部科学省は、 大学の自主的改革といいながら、国大協に事前に諮ることもなく唐突に、経済 財政諮問会議に「大学(国立大学)の構造改革の方針」(原案)を提出し、国 大協総会で事後に説明するという方法を選択したのである。これはまさしく 「上位下達」であり、国大協及び大学人は、今後の自主改革の意欲を失い、悪 しき意味での大学間競争を煽り、国立大学協会を分断することになるであろう。 今後、各大学は文部科学省案にどう対応していくかということに方向づけられ るであろうが、長期的な観点にたって、国大協が一体となってわが国の高等教 育及び国立大学の在り方を追求し、主張していくべきであろう。   大学における学術研究の成果は、広く社会の発展や人類の幸福のために還元 されるべきものである。このような、大学の使命ゆえに、各国において大学が 公的な支援を受け、学術研究が様々な助成を受けているのは、学術研究の公共 財としての特性に基づくものであり、学術研究を推進することは、未来への先 行投資と考えられる」からである。だからこそ、大学審議会答申『21世紀の 大学像と今後の改革方策ー競争的環境の中で個性が輝く大学ー』(平成10年 10月)も、「高等教育を取り巻く21世紀初頭における社会状況は現状から さらに大きく転換し、人類にとって真に豊かな未来の創造、科学と人類や社会 さらにそれらを取り巻く自然との調和ある発展等を図るため、多様で新しい価 値観や文明観の提示等が強く求められるようになると考えられる。このため、 その知的活動によって社会をリードし、社会の発展を支えていくという重要な 役割を担う大学等が、知識の量だけではなく、より幅広い視点から「知」を総 合的に捉え直していくとともに、知的活動の一層 の強化のための高等教育の 構造改革を進めることが強く求められる時代ー「知」の再構築が求められる時 代ーとなっていくものと考えられる」と指摘しているのである。21世紀の日 本は、「経済大国」から「文化国家」へと成長発展することによって「成熟社 会」を迎えることが期待されている。国家財政が厳しい状況にあるとはいえ、 「国家百年の計」を誤らないためにも、高等教育の財政基盤の弱体化は是非と も回避する必要がある。教育への投資は短期的・直接的にその成果が表われ、 量的に計測できる性格のものではない。政府も財界もそのことを認識する必要 がある。  わが国がグローバル化するなかで、地域の産業や文化を育み世界に発進する とともに、地方分権化を推進していくためにも、交通情報網の整備と同様に、 地方国立大学の整備が今後ますます重要な課題になってくるのである。                      鹿児島大学法文学部経済情報学科 ---------------------------------------------------------------------- [58-1-4] 発行人からの「お願い」2001.6.21 「文部科学省が6月11日に大学の意思とは無関係に大学を構造改革する方針 を明言したことにより、日本の大学全体は歴史的な岐路に直面しています。独 自の価値観に立ち社会にとって掛け替えのない存在となることを志向し進化を 続けるか、戦前と同様に国家に奉仕するだけの機関に退化し社会に背を向けた 存在となって衰退して行くか、そのいずれかの道を選択するかを決断せざるを 得なくなりました。その中間の道はなくなりました。  この危機にありながら、国大協は大学よりは行政の意見を代弁する機関とし てしか機能しなくなってしまいました。大学社会の意見を集約する新たな場が 求められています。その第一歩として、・・・「Weekly Reports」を利用して 高等教育・学術研究に携わる者の意見を直接発信していくことから始めようと 思います。・・・  早速ですが、文部科学省案についてのコメント・ご意見・批判等をお寄せ下 さいますようお願いいたします。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-2] 衆議院文部科学委員会2001.6.5議事録 より http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/kaigiroku/009615120010605015.htm http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/kokkai/01605-monbukagaku.html ---------------------------------------------------------------------- [58-2-1] 独立行政法人化について http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/kokkai/01605-monbukagaku.html#fujimura 50 ○藤村委員 おはようございます。民主党の藤村修でございます。 ・・・ 107 ○藤村委員 それでは、大臣にもう一度確認したいのですが、今のお言葉の中 108 には、国立大学の法人化は当然でありますとお答えになったのですが、私は前 109 の町村大臣のときにはこういう提案をしたのです。国立大学九十八ですか、何 110 かいわゆる護送船団で全部を法人化という話ではないでしょうという質問に対 111 しては、そういうことに割に同意しながら、一部は民営化であったり、場合に 112 よっては、国立大学を残してもいいのでしょうかという、私はそういう提案も 113 しているのですが、今のお話は九十八すべての国立大学についてもう法人化は 114 当然である、そうお答えになったと理解してよろしいのですね。 115 116 ○遠山国務大臣 当然ながら、すべての国立大学がそのまま法人化というよう 117 なことが結果的に出てくるかどうかというのは、私は今断言できないと思いま 118 すし、また、そういう方向でやりますよりは、やはり大学改革の一環として、 119 本当に国立大学が担っている諸機能を十分に発揮していくにはどうしたらいい 120 のか、その際に法人化との関係でどうあったらいいのかということが根本的に 121 議論されて、そして結果的なものが出てまいると思います。 122 123  今、検討中でございますので、今の段階で、では数を少なくするかとか、ど 124 の部分をどうするかというようなことはもちろん申し上げられない段階でござ 125 いますけれども、そういった諸般のいろいろな状況の中で、どのように最善の 126 解決策を見出していくかという非常に大事な時期であるということを自覚いた 127 しております。 128 129 ○藤村委員 この件はこのぐらいにしておきますが、高等教育局長も経験され 130 て、高等教育に大変造詣の深い遠山大臣のことでありますので、その発言は非 131 常に重いわけで、にわかに民営化であるとかあるいは法人化であるとかという 132 ことでなしに、今、独立行政法人化のことも、まさに調査検討チームですか、 133 何かつくって、非常に精力的にやっていらっしゃるというところをよく見ていっ 134 ていただきたいなということを申し上げたいと思います。 ---------------------------------------------------------------------- [58-2-2] ◆飛び入学について http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/kokkai/01605-monbukagaku.html#yamamoto http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/kokkai/01605-monbukagaku.html#nakanishi ・・・ 578 ○高市委員長 文部科学省に伺いますが、本日の質疑の中で同じ御質問があっ 579 たと思います。いろいろシミュレーション云々という話と似通った話だと存じ 580 ます。先ほど、ないとの答弁がございましたけれども、出せますか。 581 582 ○岸田副大臣 ですから、実証する資料としましては、この飛び入学制度は、 583 数学、物理学という分野を限定してスタートして、今日までの実績、これがそ 584 の資料のすべてであります。 ・・・・ 611 ○遠山国務大臣 委員が、この制度の導入によって高校教育が影響され過ぎた 612 りというようなことを懸念されて、いろいろな御質問がある、そのお考えは私 613 としてももちろん理解できるところでありますけれども、今の問題に直接お答 614 えするのではありませんけれども、私は、今回の飛び入学制度の導入によって、 615 高校教育が余りにも大きく影響されてしまったり、あるいは多くの生徒が受験 616 対策をしてしまったり、あるいは必要以上に競ったりというものではないと思 617 うのです。そこのところの御理解がやや十分ではないから、次々に、資料であ 618 り、データであり、調査研究ということのお話だと思いますけれども。 619 620  私としては、今回の措置も、やはり他にぬきんでてすぐれた資質を持つ生徒 621 に、三年間高校にいるのではなくて、十七歳から上位の学校へ行く道を開くと 622 いうことでございますので、数が膨大になってしまったり、あるいはそのこと 623 で高校教育が影響を受けたりということは、これはないというふうに理解して 624 おりますし、また、そのことを導かないように今いろいろ手だてを考えている 625 ところでございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。 626 627 ○中西委員 影響がないということをあなたはおっしゃるけれども、そういう 628 ことが実証できますかと言うのです、さっきから盛んに言っているのは。そし 629 てしかも、可能性を求めていくと言うのだけれども、こういうことを、例えば 630 高校の進路指導がどうなるかということを我々心配しているのに、その際に、 631 あなたたちのように、可能性を持ってこれを引き出していくのだというような 632 ことをやられたのでは、実験をするのだったら、こんなところでやるべきでな 633 いですよ。しかも、法律で決めてすべてをやらせるなどということは、到底こ 634 れは考えられぬ。全くあなたたちは勝手なことをやっていますよ。これはちょっ 635 と聞き捨てならぬですね。ちょっとひどいですよ、可能性を求めるなどという 636 ことを言われたのではね。・・・・」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-3] 小泉内閣の骨太構造改革案 2001.6.21 ---------------------------------------------------------------------- [58-3-1] ◆今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針より http://www5.cao.go.jp/shimon/2001/0621/item3.pdf 要約: 補足: ---------------------------------------------------------------------- [58-3-2] ◆母校慶大OBが首相に苦言「トップ30大学」構想で 『信濃毎日新聞』2001年6月19日付 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/619-kato-koizumi.html 「小泉純一郎首相は18日昼、首相官邸で安西祐一郎慶応大塾長ら首相の母校 である慶大関係者と会い、文部科学省の「大学の構造改革の方針」に盛り込ま れた、業績の優れた大学に重点的に予算配分するという「トップ30大学」構 想を見直すよう求められた。  安西塾長とともに訪れたのは、いずれも慶大名誉教授の加藤寛千葉商科大学 長、堀江湛尚美学園大学長ら。小泉首相の構造改革路線をバックアップする 「慶応の応援団」(関係者)のはずだったが、「トップ30大学」構想につい ては、加藤氏らが「ばかげている。日本の教育が悪くなる」と苦言を呈した。  首相が「代案はあるのか」と尋ねたため、加藤氏らが独自に大学教育の改革 案を検討することになった。会談は、昼食を取りながら行われ、地方への税源 移譲などについても意見交換した。」 ---------------------------------------------------------------------- [58-3-3] 財務総合政策研究所:「経済の発展・衰退・再生に関する研究会」報告書 (2001.6.21) http://www.mof.go.jp/jouhou/soken/kenkyu/zk051.htm #(報告書自身も近日中に財務省のHPに掲載予定。なお、報告書は、研究所 員の個人的見解である、と断ってある) ---------------------------------------------------------------------- [58-3-4] NASDA・NEDOなど13の研究開発型法人も約6000億円の政府出資金を原則廃止に http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre3573.html 特殊法人見直し「中間とりまとめ」要旨 (日経 6/22) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre3574.html ---------------------------------------------------------------------- [58-3-5] ◆内橋 克人 (著)「規制緩和―何をもたらすか」 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4000033980/ 岩波ブックレットNo.458 ¥440 71 p (1998/07/01) ISBN: 4000033980 ---------------------------------------------------------------------- [58-3-5-1]内橋 克人「すり替えられた規制緩和」 p4−22 p6 企業行動完全自由化要求運動 「そこでまず、日本における規制緩和はどういう特微をもって進んできたのか、 項目に分けながらお話をしたいと思います。 戦後、わが国におきましては、経済民主主義が大変強調されてまいりました けれども、現実には、今に至るまで官僚独裁、行政独裁の構造が大変長く続い てきました。何事も官僚、行政の裁量下にありまして、民は官のお伺いを立て なければ物事を成すことができない状況です。こうした現実へのアンチテーゼ として、真の意味での民主的な社会を再構築するには、何よりもまず、行政官 僚が掌握しておりました権力を民に再配分することが至上命題であり、規制緩 和はそのための方策なのだ、と私たちは説得されてきました。 ところが、官から民ヘ、という権力の再配分の向かう先は、民は民でも市民 ではなく巨大な民間企業に権限を移そうという方向であり、それがあっという 間に進んでしまいました。国家権力の再配分先には市民はいうまでもなく、中 小零細企業も、中小零細な商店も入っておりません。つまり規制緩和によって ダメージセ受ける当事者がすべて排除されたまま政策プロクラムは進んでいる のです。その本質を一言で申しますと、いま進みつつある規制緩和とは経団連 傘下にある巨大なる企業にとっての企業行動完全自由化要求運動にほかならな いというべきです。経団連とは、いうまでもなく、55年体制下の自民党支配 を政治献金などによって支えた財界の組織です。私はこの現実を「すり替えら れ規制緩和」と呼んでおります。 40年間、日本経済を見てまいりました私には、長らく経団連が主張してき たことが今、規制緩和の名の下に、一挙に、あれもこれも実現されようとして いることが、とてもよく分かります。権力の多くが、官から民へと移る代わり に、官から業へ移っているというのが偽らざる実態です。 これまで日本社会の大きな弊害として、鉄のトライアンクルと呼ばれる構造 がさんざん取り上げられてまいりました。政、官、業の癒着です。今、これを 打破しなけれならないのに、政から官へ、官から業へと、その三者の仲間うち で権力、権限が回されている。・・・・」 ---------------------------------------------------------------------- [58-3-5-2]ジェーン・ケルシー「ニュージーランドで何が行われたか」 p23-38 26「・・・規制緩和に取り組む政治家や官僚を結集した国際的な研究が行わ れていて、政策実行のための共通の筋書きがあるのです。それによれば、議論 をリードする中心的な政治家、官僚、民間人を持つことが非常に重要だとされ ています。また、ある種の危機感を創出し、人々に他に方法がないと信じさせ ることが大切だともいっています。さらに、いったん規制緩和のプロセスを開 始したら、できるだけ急速に、できるだけ多くの政策分野で事を実行しろと述 べています。国民が先週の変化について考えている間に、来週の変化を準備せ よというわけです。そうなれば国民はいつも状況対応で、決して議論をリード することはないというのです。 また、相互に関連したさまざまな分野のすべてにおいて、政策を持たねばなら ないとされています。つまり、あらゆる政策変更の分野を、一つの論理が支え ているのです。そのため、将来、これら密接に絡み合った政策のなかの一つを 修正することは、非常に困難になるのです。それから、メディアの強力な支持 を得ることの重要性も指摘しています。権威者たちが変革支持の論調を張り、 これへの批判が片隅に追いやられます。批判する者たちは死減しゆく恐竜か、 国家よりも自分の利益を優先する既得権層だといって退けられるのです。変化 を支持する者こそが、無私の人だとされるのです。 ニュージーランドの革命のリーダーたちは今、世界を回って、彼らがいかにし て変革を実行したかを各国政府に説き、同し道を歩むように説いて回っていま す。彼らはよくいいます。「国民は、何が彼らのためになるかがわからない。 だから、事前に事を知らせてはいけない。規制緩和の価値は、それを実行しな ければ理解できないのだ」と。このような姿勢がわが国における民主主義の危 機を招きました。ところが、あまりに多くの権力が民間部門に移されたため、 私たちが勢力を盛り返し、民主主義的政権を作ったとしても、私たちの生活に 影響を与える多くの分野で政府は力を行使できないのです。 ・・・ p38誰のための規制緩和か こういうわけで、ニュージーランドの規制緩和は成功だったという人に対して は、誰のための成功なのかと問いかけます。規制緩和は、私たちの社会を危機 に陥れました。多くの人々と家族の生活を破壊し、約束していたはずの経済繁 栄はどこにもありません。彼らは長期的な幸福のためには、短期的な痛みは仕 方ないといいました。私たちは散々痛めつけられましたが、幸福がやってくる とは思えません。 こうした経験を日本で回避することは可能です。しかし、そのためには実状を しっかりと知り、大胆に発言し、そのためのリスクを恐れない心構えを持たね ばなりません。そして影響力と力を持った人々が、女性や、少数者や、力を持 たない人々といっしょに声をあげる決意が必要なのです。孤立の中で闘っても 勝利を得ることはできません。連帯してのみ、勝つことができるのです。そし て、なるべく早い段階から闘いに立ち上がることが大切です。ニュージーラン ドでは、13年の革命的変化の後で、元に戻ることは不可能です。また私たち の多くはそれを望んでもいません。旧来の官僚制と、福祉国家と、経済体制に は多くの問題がありました。私たちに今必要なのは、まったく異なった、私た ち自身の世界に向かって、いかに前進するかということです。 みなさんには、私たちのような状況になる前に、違う道を行くチャンスがあり ます。そこで一番大切なことは、単に規割緩和に反対するだけの議論ではなく、 あなたがた自身のオルタナティブな道、日本の民衆の利益に合致する、よりよ い道を提案することです。それに向けてみなさんが健闘されることを祈ります。 」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-4] 文部科学省「遠山プラン」を巡って ---------------------------------------------------------------------- [58-4-1] 文科省ホームページ「経済財政諮問会議(第10回)への提出資料について 」 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/06/010607.htm [本件問い合わせ先] ○「大学(国立大学)の構造改革の方針」について 高等教育局大学課長 合田 隆史(内線3305)(直通5511−0881) ○「大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プラン」について 官房政策課長 丸山 剛司(内線2241)(直通5511−0838) ---------------------------------------------------------------------- [58-4-2] 平成13年度国立大学長会議2001.6.14 における文部科学大臣挨拶 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/614bunsyouaisatu.html 「平成13年度国立大学長会議における文部科学大臣挨拶                          平成13年6月14日(木) 4月末の小泉内閣発足に伴いまして、はからずも文部科学大臣に就任いたしま した遠山でございます。旧知の方もいらっしゃる学長の皆様方とこういうかた ちで一緒に仕事ができますこと、本当に嬉しいはずなのですが、その責任の重 さに身の引き締まる思いがいたします。ここで、学長の皆様方の日頃の御尽力 に感謝申し上げますとともに、この難局にあって、どうぞ改めてのお力添えと 御協力をお願い申し上げます。  本日の国立大学長会議の開催に当たりまして、関係するいくつかの事柄につ きまして、私の所見の一端をお話させていただきます。  まず第一に、これからの国立大学の進むべき方向について申し述べます。  20世紀後半、急速に経済発展をみた我が国社会も、90年代以降、残念ながら 経済が長期にわたって低迷し、社会に閉塞感が充満しております。これまでう まく機能してきた仕組みが、21世妃の社会には必ずしもふさわしくないことが、 明らかになってまいりました。このような状況下で、日本の大学も大学改革を 目指して、教育、研究の充実、大学運営の改善に取り組んでこられたことに敬 意を表します。しかしながら、今もって、日本の大学は、国民の期待に十分に 応えているとはいえず、産業界をはじめとする社会からのさまざまな批判もあ り、これらを謙虚に受け止め、さらに改革への努力がなされるべきでありまし よう。その前提の上で、私は、「大学の構造改革なくして、日本の再生と発展 はない」との信念の下に、国立大学を、活力に富み、国際競争力のある大学に するため、三つの方針で改革を実行すべきものと考えております。これからの 日本にとって、国立大学がその役割と責務を果たすことは極めて重大と考える からです。  ここで、既に報道されておりますが、過日11日の経済財政諮問会議において 私が発表した資料を用いながら、御説明申し上げます。  その第一点は、「国立大学の再編・統合を大胆に進める」という方針です。  戦後、我が国の国立大学は、旧制の大学に専門学枚等を含め、新制大学全69 校で発足いたしました。その後、経済成長に伴う人材養成の必要性や国民の進 学意欲の高まりなどを背景に、一貫して拡充整備が進み、今日の99校こ至って います。  しかし、現下の厳しい経済、財政状況や、法人化の流れも考慮しつつ、将来 への更なる発展を目指して各大学の運営基盤を強化するためには、大胆かつ柔 軟な発想に立って、大学間の再編、統合等を進めることが不可欠であると考え ております。  すでに、山梨大学と山梨医科大学、筑波大学と図書館情報大学などを始めと して、一部の大学間では、学長のご見識とリーダーシップの下に、新しい大学 づくりのための積極的かつ具体的な検討が強められており、心から敬意を表し たいと思います。  学長の皆様から、将来の大学像を年頭に、それぞれ特色としっかりした内実 をもった、真に国民の期待に応えられる国立大学を目指して、積極的に、再編、 統合等の大胆な計画をお聞かせいただきたいのでございます。皆様のご意見を 伺いながら、最終的には当省の責任において具体的な計画を策定したいと思っ ております。  第二点は、「国立大学に民間的発想の経営手法を導入する」という方針です。  国立大学の運営の在り方については、一昨年の学校教育法等の改正を踏まえ、 各大学で新しい運営方法を意欲的に採り入れていただいていますが、法人化に 際しては、そのメリットを最大限に生かせるよう、いわば民間的発想の経営手 法を積極的に導入し、民営化という議論もある中で、むしろ大胆に民間型の手 法をとり入れることが必要になると私は考えております。  幸い、この点については、国立大学協会でも真剣な検討が行われ、先に、国 立大学協会内の特別委員会から報告がまとめられております。また、当省に置 かれた調査検討会議においても、具体的な検討が進んでおり、この秋にも中間 まとめが予定されていますが、私としては、これらの検討状況を踏まえつつ、 国立大学が社会の期待に応えて、より活性化することを願っているものでござ います。  第三点は、「大学に第三者評価による競争原理を導入する」という方針です。  私は、大学の教育研究の世界に、いわゆる市場原理をそのまま適用するのは 必ずしも適当でないと考えていますが、他方、第三者による評価システムを通 じて、より競争的な環境を整えるえることは、大学の教育研究の活性化や水準 の向上にとって、極めて重要なことと思います。  この点、国立大学については、大学の評価・学位授与機構等による第三者評 価の本格的な導入が予定されているところですが、皆様の御協力によりしっか りした評価システムを構築し、各大学の個性や特色に留意しつつ、国公私立、 各種学問分野を通じ、世界をリードするトップクラスの大学の育成に力点をお いていくことが、今、当省に求められている最大の責務の一つであると考えで おります。  以上、本来ならば、まず学長の皆様にお示しした上で、と思っていたのです が、経済財政諮問会議において、大変なスピードで、いわゆる「骨太の方針」 が固まりつつある状況を踏まえ、我が省の責任において、大学の構造改革の方 針を明らかにしたものでございます。この大きな決意の背後には、国立大学の あり方に対し、厳しい眼が注がれいることを想起していただきたいと思います。 いろいろな御意見もあろうかと存じますが、要は、「これなら大学に重点投資 をしてよいだろう」との世上の期待と支援をとりつけて、もっと「世界を相手 に勝てる大学」「国民から信頼される大学」になってほしいのであります。学 長の皆様方におかれても、国立大学の更なる飛躍のために、御理解と御協力を 賜りますようお願いいたします。  なお、11日の会議では、「大学を起点とする日本経済活性化のための構造 改革プラン」も配布しております。これは、今後、政府の産業構造改革・雇用 対策本部等の場で具体的に提案していくつもりのものであり、大学を核とした 改革の柱として、 世界最高水準の大学作り、・人材大国の創造、・都市・地 域の再生の三つを掲げて、改革の方向性と具体的な施策を示しております。特 に、大学としての社会への貢献のほか、産業界等からの支援と協力の促進も含 めた産学提携の強化の必要性など問題提起しております。このプランにつきま しても、御理解いただくとともに、「大学が変わる、日本を変える」という意 気込みを持って、産業界や他省からの注文を受身で取り入れるのではなく、大 学側として積極的な取組を進めていただようお願いいたします。  第二に、過日、大阪教育大学の附属小学校で起きた痛ましい事件に関連して 申し上げます。  何ともやりきれなく、心痛む事件でありまして、二度とこのようなことがお こらぬよう、学校における安全管理の徹底について、我が省としても、最大限 の対応に努力してまいりますが、政府全体としての安全な社会づくりのための 取組の検討も重要になってくると考えております。  幼い子どもたちや患者さんなどをお預かりしている大学はもちろん、全ての 大学において、従来の常識が通用しなくなりつつあるという現状を踏まえて、 万金の安金管理が図られるよう、御配慮をお願いいたします。  関連して、各種の危機管理について申し添えます。  昨今、附属病院における医療事故や不正経理事件、大学入試に係るミス等が 発生しております。それぞれの事柄に応じて、原因や背景は多様であるものの、 どうぞ学長の皆様が先頭に立って、学内の注意を喚起し、再発防止策を徹底す るとともに、適切かつ迅速な善後策等に遺憾なきを期していただくようお願い いたします。  最後に、日下精力的に進めでおります教育改革について申し上げます。  一国の未来は教育の成否にかかっております。今、我が国の教育はさまぎま な問題を抱えておりますが、何といっても、まず、国民の学校教育への信頼を 取り戻し、「学校が良くなる、教育が変わる」ことを目指して、国民が期待す る教育改革を断行することが不可欠であります。その大きな道筋は、既に教育 改革国民会議の最終報告等を踏まえて取りまとめられた、「21世紀教育新生プ ラン」に示されており、現在、私としましても、自ら先頭に立って、その実現 に取り組んでいるところです。  具体的には、まずは緊急に対応すべき事項として、今国会に学校教育法をは じめとする教育改革関連法案を6本提出し、その成立に全力をあげて取り組ん でおります。今回の法改正が成立すれば、日本の初等中等教育においては、社 会奉仕体験活動等の充実により、児童生徒の社会性や豊かな人間性が一層育ま れるととも、指導の不適切な教員対しては他の職への転職を可能とし、また、 児童生徒の問題行動への対応等が、より適切にとり得るようになります。さら に、高等教育においては、大学における飛び入学の促進等により、一人一人の 能力・適性に応じた教育が一層推進されることになります。  教育基本法の見直しと教育振興基本針画の策定については、教育改革国民会 議の最終報告を踏まえ、省内で検討を行った上で、中央教審議会等で幅広く国 民的な議論を深めていくこととしております。  また、4月11日には、中央教育審議会対して諮問を行い、現在、高等教育に 関しては、「今後の高等教育改革の推進方策について」幅広く御審議いただい ております。その審議の動向こ御留意いただくとともに、学長の皆様からも、 いろいろな 会に御示唆等をいただければ幸いに存じます。  以上、目下重要と考えるいくつかの問題について申し述べました。学長の皆 様方におかれましては、多事多難な中、御苦労をおかけいたしますが、当省と しても必要な支援は最大限にいたしますので、リーダーシップを十二分に発揮 され、国立大学が社会の期待に応え、より活発で充実した教育研究活動を展開 し、新世紀の日本を担う力を発揮して下さるよう、一層の御尽力をお願い申し 上げまして、私のあいさつといたします。 ---------------------------------------------------------------------- [58-4-3] ◆文部科学大臣会見2001.6.15の概要 http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/010605.htm 記者)昨日の学長会議の席で、記事にもなっていますが、文部科学省の責任で 最終的には統合・再編の方策を打ち出すと。 大臣)それは前段がありまして、それぞれの大学でよく考えられて、学長がリー ダーシップを持って将来のあるべき国立大学の姿をきちんと構想して、示して 頂くことがまずあります。その上で、最終的には当然ながら設置者たる文部科 学省がという意味でありまして、文部科学省だけで決めることはもちろんやる べきではありませんし、十分意見を聞きながら、しかし昨日申し述べたような 方針に沿って考えてもらいたいという主旨です。 記者)最終的な時期はいつ頃でしょうか。 大臣)まだもう少し時間がかかります。法人化の議論もまだ最終結論に至って おりませんし、時間はかかると思いますが、できるだけ速やかにと思っており ます。・・・・ 記者)国立大学の関係ですが、一県一国立大学を見直すという発言が昨日あり ましたけれども、それについては。 大臣)一県一大学の大原則と言いますか、そのこと自体もどう考えるかという ことでありますけれども、昨日の話は、そういうことにもとらわれないで、大 学のあるべき姿というところから考えて欲しいということでありまして、それ を崩すであるとかを主に言ったわけではございません。ですから、大方針に言っ ている大学の構造改革なくして日本の再生、発展はないという信念に基づく三 つのポイントを話しまして、そのことを前提にどのように再編・統合をしてい くかという議論の中で、県境を超えたということもあり得るかもしれませんし、 従来の考え方にとらわれないで本当に足腰の強い、国民の期待に応えるような 国立大学になってもらいたいと、またなるべきであるという主旨で申し上げた わけでございます。 記者)意味するところは、キャンパスを無くしてしまうということではなく て、仮に法人としての国立大学が無くなるとしても、分校のような形では残る ということでしょうか。 大臣)その辺も含めて、これから考えて欲しいということです。単純にキャン パスを残すとか、そうは行かないと思いますけど、それぞれの歴史を持ってお りますから、そう簡単に決めるということもできないと思います。ですからそ ういうことも含めて、それぞれの実態と可能な方途を探ってもらいたいという 意味で申し上げたわけでございます。 記者)大幅削減というのは、表現があいまいですけれども、どれくらい削減し たら大幅とお考えですか。 大臣)特に数を申し上げるようなところまで詰めておりませんし、今申し上げ るべきでないと思います。それほど明確になってないわけですから。しかし、 大胆にこの問題については取り組んでもらいたいという主旨です。 ・・・」 (大臣官房総務課広報室) ---------------------------------------------------------------------- [58-4-4] 沖縄振興へ大学院大学 3年後開校へ政府が構想 (asahi.com 2001.6.20.03:04) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2162.htm ---------------------------------------------------------------------- [58-4-5] ◆沖縄への大学院構想に難色 協力要請に文部科学相(共同通信) http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/620-okinawa.html#kyodo #(独立行政法人大学の理想モデルとして構想された大学院大学に文部科学省 が難色を示すという。) ---------------------------------------------------------------------- [58-4-6] 文部科学省国大独立行政法人化調査検討会議、資料など ---------------------------------------------------------------------- [58-4-6-1] 文部科学省所轄ならびに国立大学附置研究所長会議アピール (文部科学大臣宛) http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130615-4.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-5] 総務省:独立行政法人評価委員会 ---------------------------------------------------------------------- [58-5-1] 独立行政法人とその業績評価について http://www.soumu.go.jp/kansatu/seisaku-hyoukaiinkai.htm ---------------------------------------------------------------------- [58-5-2] 独立行政法人関係主要業務のフローチャート(未定稿) http://www.soumu.go.jp/kansatu/flowchart.htm ---------------------------------------------------------------------- [58-5-3] 政策評価・独立行政法人評価委員会(第5回)議事要旨2001.5.25 http://www.soumu.go.jp/kansatu/seisaku-giji-1305.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-6] 国大協第108回定期総会2001.6.12/13の諸問題 ---------------------------------------------------------------------- [58-6-1] ◆第108回国立大学協会総会ならびに平成13年度国立大学長会議報告 (鹿児島大学2001.6.19) http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/108/ 「1.総会に至るまでの経緯  6月1日の国大協理事会では,国大協総会には「国立大学法人化の基本的考 え方」と「国立大学法人化の枠組」とが,“提案”としてではなく,設置形態 検討特別委員会からの“報告事項”として“報告”されることで了承された。 したがってそれは「国立大学法人化に関する本委員会の検討結果の取りまとめ 等について(報告)」(下線引用者)と題されている(以下「報告」と略す)。 これを受け,何人かの学長と話し合った結果,「国立大学法人化の基本的考え 方」,特に「国立大学法人化の枠組」(以下「枠組」と略す)には多くの問題 点があるので,総会で共同で質問してはどうか,ということになった。そのよ うにして出来上がった質問文ないし意見文が,私が作成した下記の「国立大学 法人化についての疑問と提案」および佐藤博明静岡大学長が作成された「『国 立大学法人化の基本的考え方』および『国立大学法人化の枠組』について―意 見―」である。これらの共同意見文に対する賛同者は,6月11日4時現在で, それぞれ20名と21名であった(12日にはさらに数名加わった)。 2.国大協総会における議論の概要(平成13年6月12,13日) 設置形 態検討特別委員会から“報告”された「国立大学法人化の基本的考え方」と 「国立大学法人化の枠組」に対して,まず野村大分大学長が「九州地区国立大 学長会議からの意見ならびに要望」によって質問された。ついで私が「国立大 学法人化についての疑問と提案」によって,また佐藤静岡大学長が「『国立大 学法人化の基本的考え方』および『国立大学法人化の枠組』について―意見―」 によって,それぞれ代表質問を行った。  これらを受け,討論に入った。数多くの学長方が発言され,議論百出の状態 となった。客観的に見て,大部分は「枠組」に対する批判的意見であった。何 度か長尾会長から,この「報告」の取り扱いについて,何とか“了承”ないし “受理”したことにして欲しい,との要望があったが,“了承”や“受理”は ありえない,“再検討”することにしてはどうか,等の意見が圧倒的に多く, 会長の要望は受け入れられなかった。結局,国大協総会は「報告」を受け取っ たが,この「報告」に対して種々の意見が出された,という趣旨で記者会見に 臨むことで合意された。上記3つの質問に対してはほとんど返答がなかった, というのが真相である。それら質問の具体的内容については,今後設置形態検 討特別委員会で検討する旨の回答があっただけである。  また,これだけ大学間の事情が違っては一律に論じられない,との認識が顕 在化し,その旨の発言が(法人化に積極的な大学も含め)かなりあったことを 付記しておく。 3.国立大学長会議(6月14日)における質問と文部省回答  まず遠山文部科学大臣から,「平成13年度国立大学長会議における文部科 学大臣挨拶」にもとづいて挨拶があった。内容は,国大協総会の前日6月11 日に政府の経済財政諮問会議に提出されたスキーム「大学(国立大学)の構造 改革の方針」を敷衍したものであった。文部科学大臣退出の後,通例の報告が あり,その後質疑に入った。私はほぼ以下のような質問および意見を述べた。 (1)「スクラップ・アンド・ビルドで活性化」という点について: ○「大学(国立大学)の構造改革の方針」には,「国立大学の数の大幅な削減」 とか「県域を越えた大学間の再編・統合」とあるが,これは「1県1国立大学」 という最低線(ナショナル・ミニマム)まで崩す考えであるのかどうか,伺い たい。  地方国立大学は,それぞれ地域独自の産業・文化・生活等の基盤を維持・活 性化する上で中心的役割を担っており,その役割は大学院重点化大学のそれと は異なり,それらによって代替できるものではない。したがって,もし1県1 国立大学というナショナル・ミニマムが崩されることになれば,地方の衰退は 必至である。この点は中央や大都市圏からは理解され難いが,現在の条件下で は「地方切り捨て」となることは明らかであり,反対せざるを得ない。 ○これに対して工藤高等教育局長から,1県1国立大学の原則は金科玉条では ない,との答弁があった。 (2)「新しい「国立大学法人」に早期移行」という点について: ○参議院文教科学委員会2001年5月31日の会議録(*)によれば,民主 党内藤正光議員は,国立大学の独立行政法人化について,「99の国立大学は それぞれに事情が違う」ので「すべてを同列に扱うことは難しい」,したがっ て独法化の議論は「単純にすべて99の大学を一まとめに扱うんではなくて, 場合によっては一部独法化あるいはまた一部地方移管,一部民営化あるいはま た場合によっては一部国立大学として残すようなものもあり得る」,そういう 議論と理解してよろしいか,という趣旨の質問をしている。  これに対して,遠山文部科学大臣は「そういったいろんな選択肢があり得る ということを当然視野に入れながら検討されるということを期待している」, 「そういう可能性をもちろん持っているということは言えると思います」と答 弁しておられる。文部省として現在もこの考えに変わりがないか,お聞きした い。 (*)http://www.sangiin.go.jp/japanese/johol/kaigirok/daily/select0107 ○これに対して工藤高等教育局長から,国立大学の設置形態にはさまざまな可 能性を残しておきたい,との答弁があった。また局長説明の最後では,大学側 からの積極的で具体的な案やアイデアの提起を期待している旨の発言があった。 4.長尾国立大学協会長の記者会見の内容について  上述の通り,国大協総会における合意は,「報告」を受け取って議論したが, 断じて“了承”ないし“受理”した,というようなものではない。それにもか かわらず,翌日のいくつかの新聞紙上では,国大協が報告書を“了承”した旨 の報道がなされている。もし記者会見の席上,会長がそのような発言をしたの であれば,明らかに独走であり国大協の総意をないがしろにするものと言わざ るを得ない。この問題の重要性に鑑み,公的に明確な対応を求めていくつもり である。この点で特に重要なのは,この設置形態検討特別委員会では,「もし 法人化するとすれば」という条件の下で議論してきたのに,「枠組」の冒頭の 「法人化を行うものとする」という文言が,何人かのまた何遍かの訂正要求に もかかわらず会長によって黙殺され,独断で残された点である。今や問題は, 議論を理性的にコントロールしうるか否か,いわば理性力の問題と言える。ま たもし新聞記事が会長発言の通りでなければ,当該新聞に対して質問ないし抗 議せざるをえないと考えている。 5.国大協総会における発言の骨子  先に述べたように,国大協総会における私の発言の中心は,共同質問「国立 大学法人化についての疑問と提案」であった。口頭で追加した発言を含め,以 下に掲載します。」 ---------------------------------------------------------------------- [58-6-2] 総会での意見書 ---------------------------------------------------------------------- [58-6-2-1] ◆国立大学法人化についての疑問と提案 鹿児島大学長 田中弘允 他 20名 http://www.kagoshima-u.ac.jp/univ/president/108/ http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/612-tanaka.html ---------------------------------------------------------------------- [58-6-2-2] ◆「国立大学法人化についての基本的考え方」および・・一意見一 静岡大学長 佐藤博明 他21名 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2175.htm http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/612-sato.html ---------------------------------------------------------------------- [58-6-3] 「臨時国大協総会開催要求」の呼びかけ(東大職組) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2186.html ---------------------------------------------------------------------- [58-6-4] ◆「法人化案了承」報道について http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/613-kdk-houdou.html#hosoku #(長尾会長が記者に対し「法人化案は大筋が了承された」と明確に発言した という情報もある。) ---------------------------------------------------------------------- [58-6-5] 全大教中央執行委員会声明 2001.6.17 「国立大学等の独立行政法人化をめぐる最近の動向と私たちの立場」 2001年6月17日 全国大学高専教職員組合中央執行委員会 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2176.htm #「・・・国大協総会において重大な問題を有する「枠組」が「了承」された ことはきわめて遺憾であると言わざるをえない。・・・」とあるが、誤報道を 追認することにならないのか。 ---------------------------------------------------------------------- [58-6-6] 国大協設置形態検討特別委員会案に対して北海道大学大学院理学研究科・ 理学部教授会懇談会(2001.6.1)で出された意見 http://www.sci.hokudai.ac.jp/oshirase.htm#d ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-7] 国大協第8常置委員会 ---------------------------------------------------------------------- [58-7-1] ◆2001.4.3 議事要録 http://res-info.nagoya-u.ac.jp/kokudai/010403.pdf テキスト版 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/403-kdk8.html 1 国大協第8常置委員会議事要録 2 日 時 平成13 年4 月3 日(火)13 :30 〜16 :00 3 場 所 国立大学協会会議室 4 出席者 松尾委員長 5 田頭,金子,大澤,椎貝,森本,佐藤,藤本,赤木,鳥居, 6 河野,内田,田中,天野各委員 7 岡田,池田,野角各専門委員 8 (オブザーバ)堀田国立遺伝学研究所長 9 陪席者 文部科学省:渡辺高等教育企画課専門官,淵上大学評価専門官 10 大学評価・学位授与機構:齋藤副機構長,山本評価事業部長,神田評価第1 課長 108 2 .平成13 年度実施予定の大学評価に対する要望について 228 3 .専門委員会B (目標評価委員会)への意見の検討について 299 ○ このイメージで,はっきりしないことの一つに運営費交付金のことがある。 300 これは外形基準なりでなるべく平等に配ろうというものと,それ以外に,競争 301 的に配分しようとするもの,全く別のカテゴリーとしての新規事業の3 つぐ 302 らいの部分から成り立っている。今までは全部概算要求という形でかなり隠れ 303 ていたのが今度は表面に出てくることになるが,その仕分けがはっきりしてい 304 ない。そういうものを書き分けていくのが計画だと思う。計画を立てたときに 305 予算を付けるか付けないかは査定の問題であり,5 年後に,予算を付けたが 306 これしかできなかった,というのは評価の問題である。その辺を区別して考え 307 なければいけない。もしそうなると,あまり細かく教育・研究の目標を書くこ 308 とが望ましいかどうか,非常に疑問がある。また,機構が行う評価は学部・研 309 究科単位,あるいはテーマ別で行うが,それと中期計画なり中期目標とは,直 310 接の関係はない。その辺の区分けをした上で計画のイメージを出した方がいい 311 のではないか。 312 313 ○ 専門委員会B(目標評価委員会)では,機構の評価を予算に結びつける議論 314 は一切しておらず,予算に関しても不明確で,政策的経費の補正予算的なもの, 315 新規事業的なものがそれに当たるのではないかと思う。 316 317 ○ 専門委員会D のところで,運営費交付金などのところがもう少し詰まって 318 くれば,それを踏まえてイメージ例をもう少しステップアップする必要がある。 319 必ずしも国立大学の中だけでイメージ例を考えるのではなく,国立大学以外の 320 方々が国立大学の改革等の問題について,どのように理解していただけるかと 321 いうところも非常に重要なファクターである。 322 323 ○ 評価と査定は区別して考えていくべきだと思う。 346 ○ 専門B の委員の間ではできるだけ大綱的,基本的ということで理解されて 347 いるが,文部科学省の目標評価委員会では非常に細かい意見が出てくる。 348 349 ○ 民間会社の人と評価について話すと,目標を立て,目標に対応して指標を 350 立てると必ず言う。ところが,ここではまだ目標と計画しか出ていない。指標 351 という概念を中に入れておかなければ,指標が計画の中に入ってしまうという 352 危なさがあるので,そこを注意してもらいたい。 361 ○ 財政的なことが切り離されている中で目標,計画を議論することは非常に 362 歯痒く思う。中期目標を立てろ,中期計画を出せというからには,その間のこ 363 とをきちんとサポートするという意図が国の方になければならないと思う。国 364 大協としては,そういう制度をきちんとしてほしいという要求,あるいは計画 365 案を出すという姿勢が必要なのではないか。 373 以上のような意見交換があった後,委員長から,本日いただいた「中期目標・ 374 中期計画のイメージ例」も含め,お気づきの点があればお寄せいただき,それ 375 らを専門委員会B の作業チーム等で検討し,文部科学省の目標評価委員会に 376 臨みたいと思っている旨述べられた。また,併せて委員長から第8 常置委員 377 会のホームページに書きこみが可能な「掲示板」を設置する旨発言があった。 ---------------------------------------------------------------------- [58-7-2] 国立大学協会「日本の将来と国立大学の役割」(PDF, 2001.5) http://res-info.nagoya-u.ac.jp/kokudai/panf.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-8] 国立大学独立行政法人化阻止全国ネット http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet.html ---------------------------------------------------------------------- [58-8-1] ◆ ゴンブリッチ教授のメッセージ http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/gombrich.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-9] 国立大学の独立行政法人化に反対する首都圏学生実行委員会 ---------------------------------------------------------------------- [58-9-1] ◆6月27日(水)第6回・月例文部科学省行動の呼びかけ http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/625-students.html 連絡先:東京工業大学サークル連合会     東京都目黒区大岡山2-12-1 Tel/Fax 03-5734-2476 e-mail:ZAN35044@nifty.com(石垣) 場所・時間:6月27日(水)13時30分 文部科学省前集合               14時00分 交渉開始 紹介議員:植田至紀衆議院議員(社会民主党) ---------------------------------------------------------------------- [58-9-2] 第5回・文部科学省申し入れ行動2001.5.25報告 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/625-students.html#525 ・・・・ ◆(申入書内容と文部科学省からの回答の要旨) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-10] 意見・報道など ---------------------------------------------------------------------- [58-10-1] ◆『朝日新聞』社説「大学改革 めざすべきは活性化だ」2001.6.24 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/624-asahi-kdk.html ---------------------------------------------------------------------- [58-10-2] 地方大 「存亡の危機」 「切り捨て」反発広がる 改革列島 国立大にも再編の波 『朝日新聞』2001.6.21(木) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre3570.html ---------------------------------------------------------------------- [58-10-3] ◆(独立行政法人研究所より)「自己責任」とは??? 出典:週刊産総研労組つくば第7分会 斗争ニュース(No.7914,6月22日号) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010625sannsoukentukuba.htm #(6月16日朝日新聞に大学について論じた澤昭裕氏は、旧通産省所轄の1 6研究所を1独立行政法人に統廃合することを推進した元人事課長だが、新独 立行政法人「産業技術総合研究所」誕生前に、他の独立行政法人「経済産業研 究所」に転勤したことについて論じている) ---------------------------------------------------------------------- [58-10-4] 行政監視局 No184-1, #(保育園民営化の影響の例) http://www8.freeweb.ne.jp/area/kanshi/etck18.htm#184-1 「保育園を民営化するのはよいけれども、行政、親ともよく監視して、こんな 千円の散髪屋(やはり人がどんどん代わる)のような経済合理性のみの経営を させないようにしなければまずいでしょう。保育園は手を抜いて誰でもできる ように標準化する、などということは出来ない子供を預かるところです。 ・・・・ マニュアルさえ見れば誰でもできる仕事ではない。経験や保育士の人間性が大 きくものをいうと思います。何年勤めても年収2、3百万では良い保育士、経 験をつんだ保育士を繋ぎ止めるのは出来ないでしょう。保育士だって生活があ り子供を養っている(子供を育てた経験のある保育士が何人かは居ないとだめ だと思います。)のだから、一生年収三百万ではやっていられないでしょう。 一概に民営化してコストを下げればいいというものではないはずだ。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-11] 数年前の状況 ---------------------------------------------------------------------- [58-11-1] 経済戦略会議「国立大の民営化 不適当と回答」(1999.7) http://www.zenshigaku-np.co.jp/backnumber/19990703/2.html ---------------------------------------------------------------------- [58-11-2] 「任期制「法制化」は、将来の国立大学民営化の伏線では?」(1997.3.18) http://cue078.e.chiba-u.ac.jp/reform/reform-374.html 「昨年11月(1996.11)の国立大学協会総会後の国立大学学長懇談会の場で、 「国立大学の民営化を回避するためには任期制の導入もやむをえない。」とい う議論があったといわれていますが、これはまったく誤った議論だといわなけ ればなりません。」 #(現在「民営化を回避するためには独立行政法人化はやむをえない」と学長 層周辺は言っている。現内閣が独立行政法人化の際に民営化・地方移管等も検 討すると明確に述べ大学自治を無視する宣言したことは、大学が長年の行政指 導の圧政下で培われた不毛で不合理な強迫観念から自由になり真の自律性を取 り戻す好機ではないだろうか。) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-12] 発行者の意見など ---------------------------------------------------------------------- [58-12-1] 北大評議員へのメール 2001.6.20 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/01620-tjst.html ---------------------------------------------------------------------- [58-12-2] 北大評議員へのメール 2001.6.21 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/01621-tjst.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [58-13] 法制審議会商法部会第146回会議 議事録 2000.9.6 http://www.moj.go.jp/SHINGI/000906-1-1.lzh テキスト版 http://www.ac-net.org/go/moj/00906-shouhou.shtml 425  まず最初に,基本的な方針としまして,商法部会における検討スケジュー 426 ルが述べられております。コマーシャル・ペーパーのペーパーレス化につ 427 きましては,社債決済制度の改善とあわせて,次の通常国会への法案提出 428 を目指す,会社法制の大幅な見直しに基づく改正法案の提出が平成14年 429 春の通常国会,そして現代語化につきましては平成16年春の通常国会は 430 どうか,そういう提案がなされているわけでございます。作業量を考えま 431 すと,相当にハードな検討作業が必要になるかと思いますが,現在の会社 432 を取り巻く社会経済情勢を考えますと,やむを得ないところではないかと 433 考えられます。この点につきまして御意見を伺いたいと存じます。いかが 434 でございましょうか。 469 ● 本日の議題でございます「今後の商法改正について」,経済界に籍を 470 置く委員の一人として,三,四分意見を述べさせていただきます。 471 472  今回の商法改正については,先ほどの資料の「基本的な方針」にありま 473 すとおり,企業統治の実効性の確保,高度情報化社会への対応,企業の資 474 金調達の改善,及び企業活動の国際化への対応という視点から,商法,特 475 に会社法制の大幅な見直しを行い,平成14年通常国会への法案の提出を 476 目途に検討を行うとされておりまして,保岡法務大臣からも同趣旨の御発 477 言を承っております。経済界といたしましては,今回の一連の動きを高く 478 評価させていただいており,この商法部会での今後の審議の状況に大きな 479 期待を持っておるところでございます。 480 481  現在の日本経済の内外の環境の変化は,極めて急速なものがございます。 482 今後の日本経済の新生を図り,一層の発展軌道に乗せるためには,その前 483 提としての重要なインフラである企業法制の改革の更なるスピード化が求 484 められていると私どもは認識いたしております。 485 486  変化は多面的に起こっております。第1に,経済のボーダーレス化に伴 487 う国際整合性のある法制の対応,第2に,経済構造の変化への対応,加え 488 て第3には,IT革命への法制面の対応が急務となっておるわけでござい 489 ます。その中で,経済界の抱えている企業の法制上の課題は数多くござい 490 ますが,その主要項目は,恐れ入りますが提出しております資料,左上に 491 「産業新生会議提出資料」と書いてあるもののとおりでございます。この 492 資料は,去る8月31日に総理官邸で行われました産業新生会議に,産業 493 側の委員として私から提出し,説明させていただいたものでございます。 494 495  その中で,アンダーラインを引いております4項目,まずCP等のペー 496 パーレス化,これは直接金融への流れ,及びIT化への対応でございます。 497 それから,先ほどもお話がございましたけれども,株式の純資産額基準, 498 1株5万円以上の撤廃。これは,直接的には株式の分割,間接的にはより 499 多くのべンチャー創出への対応でございます。それから3番目,インター 500 ネットを利用した総会運営及び法定公告,会社情報の開示等,これは国際 501 化並びにIT化への対応でございます。4番目,ストック・オプション制 502 度の見直し。これは人材確保・育成,制度としての国際的な整合性の対応 503 でございます。これらについては,私どもとしては明年の通常国会までに 504 前倒しで実現していただきたい旨,強く要望いたしました。 505 506  また,資料の2ページの最上段に記載されております代表訴訟制度の見 507 直しについては,別途議員立法で取り扱われる方向であると承知しており 508 ますが,政府においても格別の御支援をお願いしたい旨,申し上げた次第 509 でございます。 510 511  この8月31日の会議におきましては,森総理並びに関係大臣から,前 512 向きに検討する旨の答えをいただき,次回,10月開催予定の産業新生会 513 議において,具体的な項目についてスケジュールを含めた御回答をいただ 514 くことになっております。 515 516  以上,企業法制上の課題について,経済界の立場から最近の状況を報告 517 させていただきましたが,今の時代,企業を取り巻く環境は,その構造改 518 革の面においても,グローバル化の面においても,更にIT化への対応に 519 ついても,かつてない著しい変化の中にありますことについて,重ねて御 520 理解を賜りますようお願いいたしまして,私の発言とさせていただきます。 521 ありがとうございました。 817 ● 内容については,今いろいろ御議論が出ているのですが,私はこの法 818 制審議会の商法部会での改正の作業の進め方について質問をさせていただ 819 きたいと思います。 820 821  私は,まだ委員になりまして日が長くないものですから,商法部会の法 822 律改正についての作業の手順について正確に理解していないかもしれない 823 のですが,今まで理解しているところによりますと,小委員会で御検討を 824 いただいて,それを部会に上げていただくというような形でやっていると 825 思うのですが,それがある限定されたことでしたらそれでいいのかも分か 826 らないのですが,今回のように非常に多岐にわたって改正項目があります。 827 そして,今も御議論が出ておりますように,非常に改正を急いでほしいと 828 いう御要望が一方ではありますし,また一方ではそれは目先のことだけ, 829 言葉は悪いですが,そのことと同時に全体との兼ね合いといいますか,全 830 体におけるその問題の位置関係なども見て,根本的な改正にわたるところ 831 もあるので慎重にしなければならない事項もあるというような御回答もい 832 ただいていると思うのです。そうしますと,例えばこういう非常に多くの 833 項目にわたっているものを,作業チームをそれぞれに組んで,そして検討 834 をして,それを小委員会なら小委員会でまとめていただくというような, 835 そういうやり方をお考えなのでしょうか。どういう改正作業を具体的にお 836 考えなのでしょうか。そういうところをお尋ねしたいと思うのですが。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立 つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)を 紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。  メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は目次番号が記事 にリンクされている。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ ---------------------------------------------------------------------- 発行部数 2114 (2001.6.24現在) 1382 Mag2:827|CocodeMail:357|Pubzine:84|Macky!:54|emaga:31|melma:29 732 直送(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・議員等) ---------------------------------------------------------------------- Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 58