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Weekly Reports  No.62  2001.7.26 Ver 1.1

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-62.html 総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━        目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-0]内容紹介  [62-0-1]週刊朝日:文部科学省に関する連載企画  [62-0-2]第一期科学技術基本計画を巡って  [62-0-3]「独法化で命がけの実験が違法となり国際競争力が失われる」  [62-0-4] 空想:最近の大学政策の本当の目的  [62-0-5] 総合科学技術会議事務局の官僚集団70名の采配 [62-1]◆コラム:大学を考える 河野 敬雄「京大内部から見えたこと」 [62-2]内閣府総合規制改革会議「重点6分野に関する中間とりまとめ(案)」 [62-3]大学事務局による独立行政法人問題資料集  [62-3-1]熊本大学:大学改革・独立行政法人化に係るこれまでの経緯  [62-3-2]東京農工大学;国立大学法人化関連資料(PDF) [62-4]国立大学独法化阻止ネットによる参議院選挙候補へのアンケート集計  [62-4-1]政党の選択肢への回答部分: [62-5]◆科学技術基本計画をめぐって  [62-5-1]「科学情報会社ISI:4分野で日本の大学がベスト5入り」   [62-5-1-1] ◆Yahoo JAPAN コメント  [62-5-2]◆ポスドク1万人計画と研究体制一若手研究者の現状と悩み  [62-5-3]◆学術審議会学術研究体制特別委員会議事録2000.4.11  [62-5-4]日本経済新聞連載「17兆円の決算ー科学技術基本計画」  [62-5-5]1996-2001 政府研究開発投資17兆円の内訳 [62-6]新聞記事より  [62-6-1]週刊朝日文部科学省特集   [62-6-1-1]「「文科省に食い物にされた」私大」   [62-6-1-2]◆「文科省国立大「脅し」の全容 」  [62-6-2]東京新聞社説07/23「すそ野あっての高峰」  [62-6-3] ◆(BBC News, 2001.1.24)イギリスの大学に迫る危機 [62-7]主張・論説など  [62-7-1]◆五味健作「東京大学憲章について考える」  [62-7-2]五味健作コラム  [62-7-3]佐藤学「真の改革とは 2 教育緊急要する三つの課題  [62-7-4]◆塚田広人「市場経済システムと教育制度ー教育費負担原則、と ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-0]内容紹介 --------------- [62-0-1]週刊朝日が文部科学省に関する連載企画  週間朝日が2週続けて文部科学省の行状を取り上げている[62-6-1]。概算要 求の場での有無を言わせない統廃合の行政指導の諸例が生々しく取り上げられ ている。「私が言うことをそのまま聞いてくれるなら私は嬉しいが、もしもそ のようなことをすれば、私は人間としてのあなたの見識を疑う。」[62-6-1-2] と言う人がいたら、ふつうは信用を失う。 --------------- [62-0-2]第一期科学技術基本計画を巡って 「科学・自然・人間」7月号[62-5-2]に、「物理学者の社会的責任」シンポジ ウム「ポスドク1万人計画の研究体制−−若手研究者の現状と悩み」の記録が ある。 その中で、世界的な研究者が、「巨費が天上から降ってくる」時代になった のだから、体制がどう変ろうと余り心配はいらない、と言う趣旨の発言をして いる[62-5-2]。しかし、過去5年間に天から降った17兆円がどこに降ったの かはいまだに明確にされていないし、それが有効に使われたかどうかは誰も明 言できない[62-5-4]。自分の所に降らせた審査員も少なからず居たことさえ話 題になったことがある。天上から巨費が降る時代が来たからもう心配は要らな い、という見方には違和感を覚える。  しかし、種々の問題点はあるにもかかわらず、17兆円は有効だったという 「物証」らしいものもある。最近、科学情報会社ISIが最近10年間で論文 引用数が多い世界の研究機関を分野別に公表したが、4分野で日本の大学がベ スト5入った[62-5-1]。これについて、Yahoo JAPAN! の掲示板にこういう意 見があった[62-5-1-1] 「91年のSICENCEの記事ではかなり開いていた日本のトップ大学と欧米の大 学の業績の差が2001年に縮まってきたということは、1)日本の大学の研究業 績が特に1995年以前に低いことの理由は高等教育への予算が欧米より小さかっ たことが大学側の能力不足よりも大きいだろうということ、2)増えたとはい え未だに欧米の1/2以下の高等教育への予算である程度キャッチアップできた ことは、日本の大学の潜在能力を示しているのではないか、ということです。  つまり現在までの日本の大学の研究業績を律速しているのは大学側の能力で はなく、高等教育支出を抑え続けてきた政治の側の問題ではないだろうかとい うことです。」 不明朗な科学技術基本計画が有効だったのは、国立大学予算が、それまで余 りに貧困だったからだ、という指摘は鋭い。 --------------- [62-0-3]「独法化で命がけの研究が違法となり国際競争力が失われる」  ところで、1996年〜2000年に投入されたという「17兆円」という 数字にはトリックがある。91年〜95年は12.6兆円だった[62-5-3]ので、 新たに5年間に投入された額は4.4兆円、平均すると年に約8000億であ る。文部省関係では年ごとの増額は2000億程度であり、その大半は科研費 の増額とポスドク5千人増大に割り当てられたことになるようだ。施設改善に ほとんど回らないのも当然である。  そのため、実験系の研究室では、文字通り「命掛け」の危険な環境の中で実 験が行われている所も少なくない、と聞く。以前3名の若い方が亡くなった爆 発事故が阪大の研究室であったが、それは日本の大学の研究室ではどこでも起 こりうることかも知れない。独立行政法人化されると厚生労働省の安全基準が 適用されるため命がけの実験ができなくなり、今まで程度の研究費では成果を 出すことは不可能になる、だから独立行政法人化が心配だ、と言う方もいる。 命など大事にするような非効率な人間は、国に財政的負担を掛けずに効率良 く国際競争に勝つことを至上命令とする日本の大学には不要だ、というのが日 本という国が今思い描いている学術政策の本質と言えるだろう。 --------------- [62-0-4] 空想:最近の大学政策の本当の目的  こういった大学政策が実現され、大学が命を削る場となり、行政文書を山の ように作成することが研究費を得るだけでなく生活費を稼ぐためにも必要とな るほど殺伐とした場となったとき、大学は、考え学ぶことを好む人種にとって は何の魅力も感じない存在となることが予想される。その場合には、日本の大 学の国際競争力など問題にもならなくなるだろう[62-6-3]。このようなことが 有能な官僚集団に見えていないはずはないから、最近の大学政策の本当の目的 は、考え学ぶことが好きな人間を大学が大量に抱え込んで産業経済力の成長を 邪魔している状況に終止符を打つため、大学を日本から駆除することにあるに 違いない。・・・・とまあ、このような馬鹿げた空想が自然に思えるほど、昨 今の大学政策は長期的に見れば馬鹿げている。 --------------- [62-0-5] 総合科学技術会議事務局の官僚集団70名の采配 総合科学技術会議事務局には70名程度の官僚がいて、次期科学技術基本計 画を立案したという[62-5-2]。エネルギーと野心に満ち、全勤務時間を当該問 題に投入できる70名の有能な「憂国」の官僚集団ーーその意思の実現を阻む ことは一見すると不可能に近い。「いろんなところでキーパーソンに皆さんが いうことが大事」というアドバイスは現実的には理解できるが、このクリティ カルな時期には、それだけでは済まない。戦時中の行政による学術社会の完全 コントロールを再現させてよいかどうか、その判断を大学は迫られている。こ れから決めるべきことについて、もう決める余地がない「不可避」なことだと いうのは、単に決断からの逃避に過ぎない。 ━━本文━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-1]コラム:大学を考える 河野 敬雄「京大内部から見えたこと」 「数日前に京都大学のホームページの総長室、総長式辞集のページの中に、6 月18日創立記念式典における総長挨拶の全文が載っていることに気づき、中 身を読んで驚愕しました。その中で、総長はつい1週間前に開催された国大協 総会において、「自主性、自律性をもった法人としてのありうる枠組を国立大 学協会総会に報告し、了承されました」とあったからです。報告が了承された か否かに関して異論があることは予め承知しておりましたから、京大の広報担 当の責任者である森本総長補佐に問いただしたところ、自分は6月18日の式 典に欠席していたため、本当にそのような挨拶をしたかどうか知らない、とい うことと、問題の個所に関して、広報担当者が勝手に修正することは出来ない、 旨の返答がありました。私自身、この件に関してはまったく1次情報を持たな いわけですから、是非、直接の当事者どうしで、事実を明確にしていただきた いものです。この京大総長の挨拶の内容がどこまで、いわゆる京大の執行部で 検討の上なされたかははなはだ疑問ですが(多分、していないと想像されます が)京大のトップが公開の席上で予め準備した原稿を読み上げて、ご丁寧にそ れを京大のホームページで公開する以上対外的にこれが京大の公式見解である、 と理解されるのが当然です。また、京大の学内においてもいくら他大学の人が 異論を唱えている、と主張してみても自分の大学の学長の見解が優先するのも 当然といえば当然でしょう。 ところで、それでは京大としての公式見解、というものが本当に責任と権限 のある場所で議論されて決まっているか、ということに関してははなはだ危惧 の念を抱かざるを得ません。といいますのは、京大の場合、全ての責任は最終 的には各部局にある、という発想をするからです。京大全体に対して責任を持 つ様ないわば「総長部局」というスーパー部局を絶対に認めようとしないよう です(法学部の「大学自治=学部自治」論だと思いますが)。 このように、京大の「意思」というものがあるのかどうか、さえよくわかり ませんが、現実問題として総長、副学長、総長補佐のいわゆる執行部が独立行 政法人化を前提とした将来計画を考えていることは疑う余地がありません。問 題はそのような現状に対してすら学内での盛り上がりや議論(賛成にしろ、反 対にしろ)もない、ということです。独立法人化に関するシンポジウムも何度 か学内で開かれましたが、回を重ねる毎にむしろ参加者が減ったように思われ ます。これがかって、「産学協同反対」で盛り上がった同じ京大か、と感じる のはもう旧守派の感傷なのでしょうか。 このような現状では、「了承された」のか、「いや、それは違う」という論 争が果たして意味があるのかどうか、さえ疑わしくなってきます。しかし、些 細な現状追認が結局今日の事態を招いたことを考えると、京大総長の挨拶の中 の「国立大学法人化の検討状況」というのはあるいは意図的な文章ではないか、 とも考えられます。この4月から広報委員会が改組されて、このような京大全 体に関わる広報に関しては、広報担当の総長補佐が対外的な窓口になることが 決まったのですから、是非初仕事として総長とともに真剣に対応して頂きたい ものです。それが、京大構成員に対しても、また国大協の会長校として全国の 国立大学に対しても一定の責任を負っている京大の責務ではないでしょうか。 「京大の責務」という場合は、京大の構成員である私自身の責務、というもの もあると考えますが、それがどのようなものであるべきか、という明確な確信 はないまま、試行錯誤しております。 以上      (7月19日)」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-2]内閣府総合規制改革会議「重点6分野に関する中間とりまとめ(案)」 2001年7月24日 http://www8.cao.go.jp/kisei/giji/006/index.html 抜粋:http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2305.htm ---------------- 〔具体的施策〕 (1)大学における教育研究活動を活性化し、競争環境を整備するための規制改 革 大学における研究体制の弱体化に歯止めをかけるためには、様々な競争的資 金の拡充を進めていくことが必要であり、その際、研究機関が研究資金を多く 持ち込める研究者の採用を競争的に進めるインセンティブを与えるべきである。 同時に、競争的資金による、研究者の雇用、博士課程学生の給与型支援の日本 学術振興会特別研究員制度をモデルとするものへの拡大や、その現場への定着 など具体的改革方策を進めるべきである。  【平成13年度中に検討、結論】 また、国立大学の独立法人化を検討する際には、寄付金、受託研究等の扱い が公私の大学で相互に競争的になるようにすることを検討する必要がある。                      【平成13年度中に検討、結論】 さらに、大学教育に対する公的支援については、機関補助に世界最高水準の 大学を作るための競争という観点を反映させるとともに、個人支援を重視する 方向で公的支援全体を見直す中で、教育を受ける意欲と能力がある人が確実に これを受けられるよう、奨学金の充実や教育を受ける個人の自助努力を支援す る施策を検討することが必要であると考える。【平成13年度中に検討、結論】 大学生の学習に対する動機付けの促進のためには、ダブルメジャー制、学生 に対する成績評価の厳格化、学生のキャリア教育の活性化(インターンシップ 制度の積極的活用等)などについても推進していくべきである。                      【平成13年度以降継続的に推進】 一方、大学の教員については研究・教育力の適正な評価を行い、その結果を 外部に公表するとともに、結果に応じた処遇(インセンティブの付与等)を大 学が行えるようにすることについても検討するべきである。                      【平成13年度中に検討、結論】 特に、いわゆる招へい型を始めとした任期付き教官に対して給与法上の特例 措置をとり、能力・実績に応じた給与等の処遇の改善を検討するべきである。                         【平成13年度中に検討】 (2)大学の組織を活性化する規制改革 大学がより自主的自律的な運営をすることができるようにするため、設置さ れた後の学部については、第三者機関による継続的な評価(いわゆる「アクレ ディテーション」)を前提として、その改廃を一層弾力化するよう、大学設置 基準の見直しを行うべきである。また、新規産業やイノベーション開花の観点 から、工業(場)等制限制度の見直しをするべきである。                         【平成13年度中に検討】 また、大学の運営に当たっては、教育研究活動の実効性を向上させるため、 外部から専門家の参加を得るなどガバナンスの改革を図るとともに、情報公開 や第三者評価の実施など運営の透明性を向上させていくべきである。                     【平成13年度以降継続的に推進】 さらに、運営の効率化の観点から、大学における事務部門のアウトソーシン グを大学の判断で自由に行えるようにするなど、大学の組織をより活発なもの にするための検討を早急に行うべきである。 【平成13年度中に検討、結論】 (3)社会人のキャリアアップを強力に支援し、労働移動の円滑化に資する規制 改革 社会人のキャリアアップを強力に支援するため、社会人向け大学教育、大学 院教育をさらに促進するべきである。例えば、コミュニティカレッジ、一年制 大学院、夜間大学院、通信制大学院、都心部におけるサテライトキャンパス、 インターネット等の活用など、社会人が大学や大学院に一層通いやすくなる仕 組み作りについて検討するべきである。 【平成13年度中から段階的に実施】 また、産業界等との連携による学習ニーズを的確に捉えた教育コースの設置 や、実務家の積極的な大学教員への登用についても積極的に行うべきである。 【平成13年度以降継続的に推進】 特別免許状制度や特別非常勤講師制度の一層の活用を促進することなどによ り、学校教育の場において企業勤務等の経験を有する社会人の活用を飛躍的に 伸ばしていくべきである        【次期予算措置から段階的に実施】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-3]大学事務局による独立行政法人問題資料集 ---------------- [62-3-1]熊本大学資料集:大学改革・独立行政法人化に係るこれまでの経緯 http://www.kumamoto-u.ac.jp/CONTENTS/KAIKAKU/dokuhouka/dokuritsu-keii.html --------------- [62-3-2]東京農工大学総務部総務課;国立大学法人化関連資料(PDF) http://www.tuat.ac.jp/‾number01/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-4]国立大学独法化阻止ネットによる参議院選挙候補へのアンケート集計 (2001.7.24までの回答) http://www17.u-page.so-net.ne.jp/da2/saku/senkyo.html 一覧表 http://www17.u-page.so-net.ne.jp/da2/saku/enquete/sentaku.html 政党  http://www17.u-page.so-net.ne.jp/da2/saku/enquete/party.html 選挙区 http://www17.u-page.so-net.ne.jp/da2/saku/enquete/senkyoku.html 比例区 http://www17.u-page.so-net.ne.jp/da2/saku/enquete/hireiku.html --------------- [62-4-1]政党の選択肢への回答部分: 国立大学独立行政法人化について   賛成:自由連合、保守党  反対:社民党、新社会党、二院クラブ、日本共産党  保留:公明党、民主党、自由民主党 国立大学民営化について  賛成:民主党  反対:社民党、新社会党、二院クラブ、日本共産党、保守党  保留:公明党、自由連合、自由民主党 行政(文部科学省)と国立大学との現在の関係   「不当な支配」に当たるほどの干渉,介入が疑われる     ...社民党、新社会党、二院クラブ、日本共産党   おおむね妥当な関係である...公明党、自由連合、保守党  もっと行政が指導力を行使すべきである  回答保留...民主党 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-5]◆科学技術基本計画をめぐって --------------- [62-5-1]朝日新聞「科学情報会社ISI:4分野で日本の大学がベスト5入り」 (asahi.com 2001.7.17) http://www.asahi.com/national/update/0717/027.html 「科学情報会社ISIが17日、最近10年間で論文引用数が多い世界の研究 機関を分野別に公表。4分野で日本の大学がベスト5入り」 [62-5-1-1] Yahoo JAPAN コメント ホーム>教育>入学試験や各種資格>全般>国立大の独立行政法人化! でのコメント2001年7月23日 午後 8時51分 http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=ED&action=m&board=1086166&tid=9qna9bga4nfhna99tc0afka1bfm2bda1aa&sid=1086166&mid=2980 「・・・このトピックにも良くあったのですが、日本の国立大学は大量の国費 の投入にもかかわらず国際的に全く評価されていないというキャンペーンがあ ります。  91年のSICENCEの記事ではかなり開いていた日本のトップ大学と欧米の大学 の業績の差が2001年に縮まってきたということは、1)日本の大学の研究業績 が特に1995年以前に低いことの理由は高等教育への予算が欧米より小さかった ことが大学側の能力不足よりも大きいだろうということ、2)増えたとはいえ 未だに欧米の1/2以下の高等教育への予算である程度キャッチアップできたこ とは、日本の大学の潜在能力を示しているのではないか、ということです。  つまり現在までの日本の大学の研究業績を律速しているのは大学側の能力で はなく、高等教育支出を抑え続けてきた政治の側の問題ではないだろうかとい うことです。  日本の財政再建と絡んで国立大学の独立法人化が出てきた訳で、その理由付 けに研究業績が上がっていないことが上げられたりしています。  しかし、高等教育予算の増加を認めなかった中曽根内閣以来に限れば、日本 の財政をここまで悪化させるほど大学に投資したことなどなかったし、大学は 投資相応の業績は上げていたのではないだろうか、ということです。」 --------------- [62-5-2]ポスドク1万人計画と研究体制一若手研究者の現状と悩み 「科学・社会・人間」77号(2001.7) p3−27 第25回「物理学者の社会的責任」シンポジウム   ポスドク問題の歴史と現状       平山貴之  ・・・3   現場からの問題提起          向井宏一郎 ・・・7   日本のポスドク問題          丸山瑛一  ・・・13   最近の科学政策とオーバードクター問題 佐藤文隆  ・・・17        給合討論                  ・・・22 抜粋   p20 佐藤文隆 「私の考えの大意は今も変らない。状況は20年前の「窮乏の時代」とは違っ て、現在は巨費が天上から降ってくる時代に変っている。第二期「計画」には 人材計画に関しては「任期制・流動性」「若手研究者の自立」が掲げられ、具 体策が書いてある。「第一期」のパイを食った人は次はこれですよ、と丁寧に 計画されている。  物理学はこの流れにどう上手く付きあうのか。この大元との関連でのみPD F問題の局面変化もあるというのが筆者の考えである。」 p25 総合討論より 丸山 第一次科学技術基本計画が終わったが、あの17兆円の成果の評価はき ちんとできていない。・・・今度は第二次で、24兆円。・・・本当の意味で 24兆円を生かして使うためには、人を育てるのが一番重要なのだから、そう いう仕組みをどう作るか、もっと声を挙げて、科学技術会議で考えて貰う必要 がある。計画を作る過程もある程度知っているが、いろいろな有識者の意見を 聞いて、役所がとりまとめてはめ込んで、皆さんの顔を立てて文章に纏める。 だから、いろんなところでキーパーソンに皆さんがいうことが大事だ。70人 くらい官僚がいて、そこで立案する。物・装置ではなく、人を育てる仕組みを どう作るかが日本の将来のために必要だ、ということをそこに反映する必要が ある。 藤田 このシンポジウムで大学の設置基準の大綱化・教養部の廃止、独立法人 化、今回のPD問題と議論してきたが、いつも苛立ちを覚える。その原因はい ろいろあるが、誰が決めたのかわからない、ということがある。文部大臣を辞 めた有馬氏は前回の講師だったが、自分も教養部廃止に反対だった、といった。 今も、キーパーソンに話を通じろというが、それは大きく間違っていると思う。 大学の問題、研究者の問題を大学人、研究者が議論するのではなく、どこかで 誰かが考えて、学術会議の偉い人にも政治家にも話はつけてある、お金も出る、 という形で決まって、それが上から降ってくる、という形が続いている。大学 が大学の問題を、学者が学問の問題を、学生が自分達の大学の問題を決めるこ とを止めてしまった。そこに私は強い危機感を持っている。このPDの問題も、 大学院重点化で大学院生を量産して、どうなるんだ、と少しでも先を考える人 は思っていた。ところが、そうすればお金がついてくる、何がついてくる、と いうことで大学が時勢に乗って、今のようなことになった。あのときはバブル の絶頂期で、その破綻が予想できなかった、などということはない。あんな暴 走的な経済発展が破綻する事は、ちょっと冷静に考えれば誰にでもわかる。昨 日のエイズの裁判のように免罪してはいけない。その責任は、自分達の問題に ついての決定権を放棄したわれわれ大学人に戻る。ここ数年のこのシンボジウ ムでの議論を聞いていての苛立ちはそこだ。いつも、誰かが決めてしまってさ あ大変だ、となる。決めた主体が見えない。これだけでは済まなくて、これか らいろいろな問題が起きてくると思うけれども、もう一度原点に戻らなくては ならない、と考える。 ・・・・ --------------- [62-5-3]学術審議会学術研究体制特別委員会議事録2000.4.11 --------------- 8 3.出席者(委員)井村主査、阿部、池端、石井、宇井、大、末松、高橋、 9 豊島、野依、水野、薬師寺、脇田、増本の各委員、猪瀬会長、奥島副会長 10 (科学官)勝木、中村の各科学官 11 (事務局)学術国際局長、学術国際局担当審議官、学術課長、 12 研究機関課長、研究助成課長、他関係官 13 (橘淹洌舗科学技術庁科学技術政策局担当審議官、計画・評価課長、研究振興課長、 14 他関係官 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/726-gaku.html 44 △基礎研究のためのものかどうか分からないが、競争的資金という公募型 45 のものが、平成7年度に約1,200億円だったのが、平成12年度は2, 46 900億円に増えている。科研費補助金は、平成7年度に924億円だっ 47 たのが、12年度は1,419億円となっている。科研費補助金、それか 48 ら科学技術庁の様々な公募型の研究費という意味では、2倍以上に増えて 49 いる。 65 ○おっしゃることは非常に重要な点であると思う。17兆円の研究費とい 66 うと、随分実際の研究に使うお金が増えたように思うが、実はその大部分 67 は、人件費である。国立大学、国立研究所の人件費が相当な額に上ってお 68 り、本来の研究費が十分であるのかという点は考えておかないといけない。 93 ○科学技術基本計画を受けての5年間の科学技術関係経費の累計が17兆 94 円ということだが、従前ベースに比べてその増分はどのくらいになるのか。 95 96 △今の基本計画ができる前の5年間の累計は12兆6,000億円、今回 97 の基本計画の5年間での累計が17兆2,000億円であり、4兆6,0 98 00億円の増で、率で大体36%増になる。 99 100 ○最近伺う意見として、科学技術基本計画ができて17兆円の投資をした 101 のに、どんな見るべき成果があがったのか、その様な感じをお持ちの向き 102 があるのも事実である。そうすると、その17兆円という数字がちょっと 103 一人歩きをしすぎている。科学技術基本計画に基づく新規投資は、一体ど 104 こに向けられたのか。先程の競争的資金が非常に増えて、研究費のフロー 105 が増えたのはそのとおりで、研究者もおそらく大変評価しているであろう 106 と思うが、それは千億円単位である。つまり、基本計画での投資が、どう 107 いうところに向けられたからどうだということを分かりやすく提示してい 108 ただければ、今後の答申の方向にヒントが得られるのではないか。それほ 109 ど難しい作業ではないと思うので、御教示いただければありがたい。 110 111 ○増加分が約4兆円として、年間8,000億円ずつくらい増えているこ 112 とになる。その年間8,000億円がどこに行っているのかという質問だ 113 ろうと思う。競争的資金が、大分増えたので、それが一番大きく増えてい 114 ると思うが、それ以外に文部省の施設の改善もある。 115 116 △4兆6,000億円のうち、補正予算が大体1兆9,000億円あるの 117 で、その分で引き算すると、5年間で2兆7,000億円である。 118 119 ○毎年5,000億円くらい増えたことになるのか。 120 121 △累計なので5,000億円まで増えていないと思う。2,000億円か 122 そのくらいかと思うが、競争的資金が、基本計画の前後で1,700億円 123 ぐらい増えている。ほかに、ポスドク1万人計画もあるが、差額について 124 はどこに行ったのか、分かりやすく提示できるよう工夫してみたい。 125 126 ○基礎研究に対する国の投資が、国の研究開発投資全体の中でどれくらい 127 を占めるかということがよく議論される。米国と比べると日本はかなり低 128 かったと思うが、その点、対GDP比は、大分改善されたと考えてよいの 129 か。 130 131 △日本は対GDP比で、0.67%くらいと思うが、諸外国は0.8%と 132 か0.9%くらいであり、まだ追いついていない。 133 159 ○競争的資金が増えてくる、あるいは、ここにも書かれているように競争 160 的環境を整備することが重要だというのは一面の真理だが、こういうもの 161 ばかりだとせわしない大学環境、研究環境のようなものをどんどん助長し 162 ていくことになりかねない。人文・社会系でいうと、5年先、10年先は 163 大体見当がつくので、世の中がひっくり返るような新しいパラダイムが出 164 てくるというわけでもない。そういう意味では、ライフワークをきっちり 165 まとめていきたいという気持ちがずっとある。競争的資金によって賄うこ 166 とは、全く不可能ではないと思う。作文をうまくすることで、科研費をと 167 れないことはないのだが、3年なら3年で研究を一まとめにするサイクル 168 が、学者の生活の中に非常に深く入り込んできていて、競争的資金を巡っ 169 て一つの時計がつくられてきているのではないか。そういう意味で、基盤 170 的な研究経費、インフラストラクチャのようなものを、もっと充実させる 171 という方向も強調する必要がある。どうも、その3年という時計が、アカ 172 デミックライフそのものを強力に規定し始めているのではないかという気 173 がする。 174 175  それからもう一つ、基礎的なところで、人文・社会系の人間として申し 176 上げると、人文・社会系分野は、科学技術とのバランス、あるいは連携協 177 力面でとかく注目され、論じられることが多いが、やはり固有の価値がそ 178 れぞれあるわけで、そういうところに科学技術基本計画として配慮すると 179 いう、少なくとも姿勢だけはあってよいのではないか。ちなみに、科学技 180 術基本法は、最初に「科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)」と 181 書いてあるが、この()書きくらいは削る法律改正が行われてよいという 182 気もする。基礎の基礎、社会の厚み、世界から尊敬される日本人の社会と 183 いうものは、狭い範囲の科学技術だけではだめだし、また、人文・社会科 184 学は、必ずしもそれを支えるためにあるわけではない。もうそろそろ、こ 185 ういう価値が認められてしかるべきではないか。 216 ○先ほどの意見に、「学者」という言葉が出てきたが、自然科学系と理工 217 系には、「学者」はもう殆どいないのではないか。つまり、科学技術基本 218 計画、その他いろいろなサポートがあり、多くの優秀な「研究者」がたく 219 さん育って活躍しているが、「学者」は殆どいなくなっている。自然科学 220 系でいうと、大学における研究活動では、研究者と教育者の両方の活動の 221 乖離が著しい。研究だけをして、研究成果が出ればいいというのであれば、 222 大学は必要ない。これは現在、世の中から大変批判を受けている点ではな 223 いかと思う。基本計画により17兆円を投下した結果、何々賞を取ったと 224 か、論文がどれだけ出たとかということは、プラスの面である。一方、人 225 材、学者の養成ということについては、マイナスの面が非常に大きいので 226 はないかと思う。優秀な「研究者」であれば、国研で研究すれば良く、語 227 弊があるかもしれないが、5年、10年先のことであれば、国研で集中的 228 にやれば良い。大事なことは、立派な「学者」を養成するということであ 229 る。一方、翻って日頃仕事をしている学会等を見ると、有能な、優秀な、 230 プロダクティブな研究者はいるが、ただ働くだけの、学者とは到底言えな 231 い人になってしまっている。学者をさらに養成するということになると、 232 17兆円の使い方が問題となり、重点整備、重点投資も結構だと思うが、 233 初等中等教育や家庭教育をきちんとしない限り、将来指導者になるような 234 志の高い学者は育たないだろう。これでは、「有能な」、「優秀な」、 235 「プロダクティブな」研究者ばかり製造することになって、富国強兵で強 236 力な兵隊を養成しているのとあまり変わりないという気がする。人文・社 237 会系には、まだ「学者」と呼べる方がたくさんいて素晴らしい。 239 ○基礎研究は、チームでやるのか、個人でやるのかという問題がある。科 240 研費をはじめ、全てのプロジェクトに個人で応募しても、ノーベル賞級の 241 研究者のような、世の中に認められている個人でないとなかなか研究費が 242 とれない。学者でも相当有名な人しか研究費がとれない。そうなると、今 243 度はチームか、個人かという話と同時に、若手か、中堅かということが問 244 題になる。若い人たちの個人研究を支えるシステムが日本にはないが、ア 245 メリカでは非常に発達していて、日本はかなり遅れている。日本は社会的 246 に集団主義で、ある種の実績がないと続けて科研費等がもらえない。審査 247 のプロセスがそうなっている。 248 249  それから、大学でやるのか、あるいは、違う民間の研究所でやるのかと 250 いうのが、同じ比率で考えられない。民間の研究者は民間の金を使い、国 251 のお金は国で研究することになる。そうすると、大学、研究所、国の組織、 252 民間の組織、そういうものを一緒に扱わない限り、日本の科学技術立国と 253 しての問題の解決は難しいのではないか。チーム/個人、若手/中堅、有 254 名/有名ではない、国/民間、というように分けていくとかなり複雑なマ 255 トリクスになるが、難しくなく政策ができるのではないか。今まで力点を 256 置かないところが、我が国の科学技術予算の中にあって、官というしがら 257 みや、有名とか、中堅というところに、重点的に投資しているわけである。 258 文科系、理科系ということではなくて、もっとたくさんのダイコトミー 259 (二分法)のマトリクスの中で、スポットとして空白の部分があるのだか 260 ら、そこに重点的に、あるいは、重点でなくとも、ちょっと投資すれば、 261 結構日本の研究成果は上がるのではないか。 356 ○学術研究が日本で全く行われなくなったら大変なことになると非常に心 357 配している。プロジェクト研究というものが、学問の研究全般を推進して 358 いく推進力になっていくのであれば大変ありがたいが、「この指とまれ」 359 で、この指に止まらないと、研究もお金もなく、意欲も出なくなってしま 360 うということになると大変困る。学術研究を大いに推進するのか、それと 361 も科学技術というプロジェクト研究に資金を注ぎ込むのかという二者択一 362 という格好での選択はあり得ないと思っている。やはり、学問をちゃんと 363 知っている人が大勢いて、学者も学者の卵も随時リクルートできるという 364 状態になって、初めて大きなプロジェクト研究が成功するのだと思う。そ 365 ういう非常に肥沃な苗床をいつも用意しておくことが、科学技術の進歩だ 366 けではなく、社会全般の発展のために絶対不可欠であるということは人間 367 の歴史が証明している。その点を、前向きな格好で強調していただきたい。 --------------- 第17期学術審議会委員名簿 (任期 平成12年2月16日〜平成14年2月15日) (会 長)猪瀬  博   国立情報学研究所長 (副会長)奥島 孝康   早稲田大学長 青木 利晴 株式会社NTTデータ代表取締役社長 阿部 博之 東北大学長 池端 雪浦 東京外国語大学教授(アジア・アフリカ言語文化研究所)  石井 紫郎 国際日本文化研究センター教授 井村 裕夫 科学技術会議議員 宇井 理生 東京都臨床医学総合研究所長 大崎  仁 国立学校財務センター所長 太田 朋子 国立遺伝学研究所名誉教授 大塚 榮子 北海道大学名誉教授 末松 安晴 高知工科大学長 菅原 寛孝 高エネルギー加速器研究機構長 鈴木 昭憲 秋田県立大学長 平  朝彦 東京大学教授(海洋研究所) 高橋真理子 朝日新聞東京本社論説委員 武田 康嗣 日立工機株式会社代表取締役社長 谷口 維紹 東京大学教授(大学院医学系研究科) 豊島久真男 財団法人住友病院院長 中村 桂子 JT生命誌研究館副館長 野依 良治 名古屋大学教授(大学院理学研究科) 蓮實 重彦 東京大学長 増本  健 財団法人電気磁気材料研究所長 水野  繁 前日本たばこ産業株式会社代表取締役社長 薬師寺泰蔵 慶應義塾大学教授(法学部) 山本 明夫 東京工業大学名誉教授 脇田 晴子 滋賀県立大学教授(人間文化学部) --------------- [62-5-4]日本経済新聞連載「17兆円の決算ー科学技術基本計画」 http://www.jca.apc.org/toudai-shokuren/dekigoto/00056n.html 上 研究開発投資 ミスマッチ  2000年5月22日 中 研究者増加、環境は整わず  2000年5月29日 下 研究評価に透明性必要    2000年6月 5日 --------------- [62-5-5]1996-2001 政府研究開発投資17兆円の内訳 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99b30-watanabe.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-6]新聞記事より --------------- [62-6-1]週刊朝日文部科学省特集 記事の最後に「大学に関する情報、取り上げてほしいテーマなどを編集部まで お寄せください。電子メール wa@cg.pub.asahi-np.co.jp」とある。 --------------- [62-6-1-1]「「文科省に食い物にされた」私大」 『週刊朝日』2001年7月27日号、pp.156-157. 「幹部職員のおよそ6割が文部科学省OBという私立大学がある。・・・ ・・・ 文部科学省は国立大の再編に向けて着々と準備を進めているが、学内関係者は こう嘆くのだ。「これだけ経営幹部に文科省OBがいるのに、大学はこんな状 態です。これでは、いくら文科省が音頭をとっても、結果は推して知るべしと いう感じです。」 --------------- [62-6-1-2]◆「文科省国立大「脅し」の全容 統廃合プランで事務局長からヒアリング」 『週刊朝日』2001年8月3日号、pp.136-137. ・・・ 関東の国立大の場合は、こうだ。「文科省から『大学の理念については、この 際いっさい関係ない。とにかく統廃合の案をもってきてもらいたい』と言われ た。もう学問なんてまったく関係ないという雰囲気です。それでいて、すでに 始まっている他大との連携については『それはダメなんじゃないの』などと言 うんです」  ・・・・ 文科省は何を考えているのか。合田隆史・大学課長はこう語る「・・・言わ れたとおりにするのなら、役所にとって都合がいいかもしれないが、大学とし ては見識に乏しい。各大学の検討状況は来年1月の次回ヒアリングでも聞くが、 それまでに結論を出せと言っているわけではありません。できるだけ早いほう がいいが、単なる数合わせでは意味がないですから。」 ・・・ --------------- [62-6-2]東京新聞社説07/23「すそ野あっての高峰」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2303.htm 「二十一世紀は、大競争の時代といわれ、競争原理の導入を、小泉純一郎内閣 の構造改革も掲げていますが、この場合の競争は二十世紀型レースではありま せん。  新しいことに挑戦し、創造していくゲーム。だとすれば、ベンチャー企業が 生まれにくい、育ちにくいシステムは変革しなければならないわけですが、文 部科学省がこのほどまとめた「大学の構造改革の方針」は、そういった時代の 要請にこたえるものなのかどうか。  国立、公立、私立を含めて、上位三十校に対して予算を重点的に配分し、世 界最高水準に育成するというのです。  ・・・・  官僚のキャリア組とノンキャリア組みたいに、六百校近い国、公、私立大学 を、三十のエリート校と、そうでないその他大勢校に分けることが、これから の日本にとってプラスなのかどうか疑問です。」 --------------- [62-6-3] (BBC News, 2001.1.24)イギリスの大学に迫る危機 'Crisis on horizon' in UK universities http://news.bbc.co.uk/hi/english/education/newsid_1135000/1135215.stm 「高等教育セクタは危機に向かいつつある。それを避けるには、もっと多くの 若い人々を学術世界に募り留まらせなければならない、と学術界の長老が警告 している。」"The higher education sector is heading for crisis unless more young people can be recruited and retained in academia, a senior academic warns." ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [62-7]主張・論説など --------------- [62-7-1]五味健作「東京大学憲章について考える」 http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/charta.htm 「東京大学が「大学憲章」を定めることになり、21世紀学術経営戦略会議がそ の「論点整理案」を公表した。 一見して問題を幾つも孕んでいる。それが何 かを指摘し改善案を示そう。ただしこれは、東京大学に即して述べるものの、 適宜に書き換えれば総ての国立大学に適用可能という意味で、国立大学普遍の ものである。」 ・・・・ 「東京大学憲章論点整理案」のもっと異様な問題点は、「民主」という言葉の 見当たらないことである。 日本は民主国家であるが、国内の組織団体の中に は民主的でないものも存在し得ている。 国が民主制をとっても、その中の組 織団体が民主制をとるのは当然ではない。 だから、東京大学が民主的な制度 運営をとるか否かの規定は不可欠に思われる。」 --------------- [62-7-2]五味健作コラム http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/thinkmore.htm#column 無知狭量に啓す(01/7/23) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/ignor.htm 何の役に立つのですか(01/7/22) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/use.htm 民主的な制度運営(01/7/21) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/democ.htm 種別と制度運営(01/7/20) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/categ.htm 自治権と自律義務(01/7/19) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/self.htm 市場原理と国民の生命(01/7/18) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/econ.htm 競争を強いる者と競争を強いられる者(01/7/17) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/compet.htm この国の主権者は誰か(01/7/16) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/sover.htm 「粛々」という言葉(01/7/15) http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/column/silent.htm --------------- [62-7-3]佐藤学「真の改革とは 2 教育緊急要する三つの課題 まず財源、若者の社会参加の機会を奪うな」 (東京大学大学院教育学研究科教授) 『東京新聞』2001年7月19日付夕刊 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2295.html 「・・・・しかし、日本の大学は、もともと民間に依存するかたちで発展して きた。欧米諸国を見ても、大学は国の財源に依存することなしに維持すること は不可能である。大学の法人化(民営化)と競争原理の導入は、地方の国立大学 を存続の危機に陥れ、一世紀以上にわたって蓄積してきた学問の資源と装置を 崩壊させてしまう危険がある。法人化にあたって国立大学の財政基盤を確保し、 各大学の自主的な改革を推進する政策は急務である。 ◆ ◆ 「聖域なき構造改革」と言われるが、その実態は、もっとも「聖域」となる べき子どもと若者の未来と教育を最大の犠牲とする改革として進行している。 その他、前回の参院選で自民党以外のすべての政党が掲げた三十人学級を実現 する政策、国際的な孤立をまねく「歴史教科書問題」の解決など、国際的な規 準に照らしてお粗末な教育の現状を克服する政策も急務である。 未来の日本に希望をつなぐとすれば、子どもや若者に学びの意味を提示し、 教師たちの献身的な努力を励ます改革が必要であり、教育を最優先に掲げた政 策を検討すべきである。それ以外に日本社会を再生させる道はない。」 --------------- [62-7-4]塚田広人「市場経済システムと教育制度ー教育費負担原則、と くに高等教育と国立大学の授業料の負担方法をめぐってー」1998/9,11 山口経済学雑誌第46巻第5号、第6号(pp.19-43)(pp.65-98) http://www.cc.yamaguchi-u.ac.jp/‾ht/education.htm 「そもそも人間は自分がその中で生きているその社会が公正かつ慈恵的であり、 同時に効率的であるとき、初めてその協力関係=社会それ自体を維持し続けよ うという意欲を持つことができる。たとえば、たとえある政策を採ることによっ て、(ここではある種の学費負担方法を採ることによって)短期的には社会全 体としての満足の総計が増えたとしても、それを行うことが少数個々人の社会 的協力への意欲を大きく欠如させるとしたら、それは社会の基礎的な安定性と いう、社会の持つ最重要な効用を掘り 崩すものとなり兼ねない。それは社会 の靱帯を破壊するというもっとも重大なマイナスの効果を社会に対して与えか ねない。どれだけその社会が効率的、競争的であっても、その存立条件が、 (市場経済社会においては競争条件が)不公正と感じられるならば、その社会 は不安定なものとならざるをえない。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立 つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)を 紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。  メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は目次番号が記事 にリンクされている。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ --------------- 発行部数 2253 (2001.7.25現在) 1521 Mag2:865|CocodeMail:360|Pubzine:90|melten:79|Macky!:56 |melma:40|emaga:31 732 直送(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等) --------------- Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 62