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Weekly Reports  No.67  2001.9.10 Ver 1.1

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-67.html 総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━        目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-1] コラム:私学化・独法化・民営化 [67-2] 独立行政法人化に関する調査検討会議 中間報告案 [67-3]「トップ30」政策続報  [67-3-1]「『国公私「トッブ30」の概算要求について』の懇談について(報告)」  [67-3-2] 森田竜義「国公私トップ30」の全体像 (reform 3685) [67-4] 総合科学技術会議第9回(2001.8.30)  [67-4-1]「経済活性化のための地域科学技術振興プラン」の素描。 [67-5] 文部科学省内部での国大大学分類表 [67-6] 来月の国立大学理学部長会議で法人化問題を検討か  [67-6-1]北大理学研究科教授会2001.9.7での提案  [67-6-2] 北大理学部教授会懇談会(2001/06/01)で出された意見(01/06/19) [67-7]「我々の目指す大学像ー文科省『大学構造改革計画』による大学破壊に対抗して」 [67-8] 討論集会「国立大の『独立』行政法人化は真に大学の独立性を高めるか」 [67-9](文献紹介)市川昭午「高等教育の変貌と財政」玉川大学出版2000.3  [67-9-1]「地方移管論」  [67-9-2]「独立行政法人化輪」  [67-9-3]「私立大学民営化論」  [67-9-4]「コスト意識に欠ける(評価政策)」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━        本文 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-1] コラム:私学化・独法化・民営化 「私立大学民営化論」[67-9-3]は、企業による大学設置・経営の規制緩和を説 く。有馬氏は「私立大学独立行政法人化」に言及したことがある[67-1-5]。こ れらは私学化・独法化・民営化の以下のような相互関係を明示する。  日本の私立大学は、国立・公立大学と同じ法律(「学校教育法」・「大学設 置基準」等)により教育施設・教育課程等の条件を詳細に規定されており、準 公的教育機関と言って良い。また、私立大学を設置する法人は、私立学校法で 組織・業務を詳細に規定された非営利法人(学校法人)である。使命や組織に おいても、設置認可と補助金受給において文部科学省の指揮下にある点におい ても、私立大学と国立大学との違いは、私立大学と営利企業との違い程には大 きくはない。 しかし、国立大学の民営化論は私学化論と混同されることが多い。私学化は 現行法下の大学制度を変えることなく実施が可能な政策だが、営利法人化とし ての国立大学民営化は、営利企業の高等教育参入を許すことにもなる法改正を 伴うものであり、日本の大学制度を根本から変えてしまう。  国立大学の「独立行政法人化」は「私学化」と「民営化」の中間に位置する。 独立採算ではないため私学化より良いと考える人も多いが、独立行政法人大学 制度の実現は、日本の大学システムを経済産業界に組み込む準備となる。「出 資者」である国から指示される中期目標を、決められた資金内で達成すると共 に、「利潤」の役割を果たす種々の評価数値を最大化するよう効率的に活動し なければ、6年目の改廃審査をパスできない。  さらに、中間報告案[67-2]にあるように、私立大学と異り、大学自身を法人 とすれば、教育・研究セクタが経営セクタに直接従属することは避がたくなる [67-1-1]。実際、中間報告では、経営のプロや官僚が学外から参加できる役員 会が大学をトップダウンに運営し、学科再編成や教員の雇用・解雇を自由に行 い、運営交付金・競争的資金等を増やすために教員を「社畜」ならぬ「学畜」 として活用することになる。  このように、国立大学の独立行政法人化は学校法人化と異り、営利大学 (for-profit university)[67-1-4]の雛形を日本に誕生させるものであり、繰 り返すが、大学システム全体を経済界に従属させる一歩となり兼ねないのであ る。 大学基礎教育の一部を受験予備校にアウトソーシングする[67-1-2]ことも現 実化しつつあり、また、現在の大学における人的資源では実現が困難と言われ る法科大学院における教育の一部を司法予備校[67-1-3]へアウトソーシングす ることも可能性としてはあるだろう。こういったことが進めば、営利大学の登 場は時間の問題となるのではないか。 (発行者) ------------------------------ [67-1-1]蔵原清人「法人ということの考察」 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/99b19-kurahara.html ------------------------------ [67-1-2]駿河台予備校「リメディアル教育プログラムのご案内と実績紹介」 http://www2.sundai.ac.jp/kyouken/rimediaru.html ------------------------------ [67-1-3]辰巳法律研究所 http://www.tatsumi.co.jp/ ------------------------------ [67-1-4]The Chronicle: For-Profit Higher Education http://chronicle.com/indepth/forprofit/ "Colleges and universities operated for profit are getting increased attention in higher education. They have been gaining in popularity and causing some traditional institutions to worry about the increased competition." ------------------------------ [67-1-5] 有馬朗人「私立大も「独法化」が有効」 朝日新聞連載「!大学はどこへ 独立行政法人化の波」2000.5.26 http://www.jca.apc.org/toudai-shokuren/dekigoto/000526a.html                   ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-2] 独立行政法人化に関する調査検討会議 中間報告案 http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/mon-1.htm#no.103 #(会議は、長尾座長(主査)に中間報告のとりまとめを一任したという。世 紀に一度という程の変革には「細心の注意」が必要ではないのか。) -------------------- [67-2-1]8月9日の案との異同表(独立行政法人化反対首都圏ネットワーク作成) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010909idouhyou.htm #(「法人化を契機に民間的発想の経営手法を大胆に導入する」は削られ、 「国からの財政投入によって支えられる」が加わる。「政策目標」という言葉 は「高等教育・学術研究に係るグランドデザイン」に変換。「憲法上保障され ている学問の自由に由来する「大学の自治」の基本」という言葉が入る等、委 員の意見で理念的なものはかなり反映されたが、実質的内容には変化はなく、 「教育公務員特例法の精神」という言葉が「自主性・自律性」という曖昧な言 葉に置き変わるなど、後退もある。)                   ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-3]「トップ30」政策続報 #(各大学が、審査を希望する分野を選ぶ、と文部科学省の未定稿資料にある。 各大学に、専攻間競争を導入する政策。異る学問分野の間での「学問的競争」 は意味を成さない以上、学内ロビー活動の活性化以外を期待はできない。) ------------------------------ [67-3-1]「『国公私「トッブ30」の概算要求について』の懇談について(報告)」 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/831-kdk.html 「2 分野構成 ○人文、社会科学から自然科学までの学問分野を下記の10分野に構成。 ○分野をまたがるものについても適切な配慮。 ○申請に当たっては、各大学がどの分野での審査を希望するかを申告。 分野           (細分野(例示)) 生命科学(バイオサイエンス、生物学、医用工学・生体工学、農学、薬学等) 医学系(医学、歯学、看護学、保健学等) 数学、物理学(数学、物理学等) 化学、地球科学(化学、地球科学等) 情報・電気・電子(情報科学、電気通信工学等) 機械・材料(機械工学、システム工学、材料科学、金属工学、繊維工学等) 土木・建築、その他工学(土木工学、建築工学、プロセス工学等) 人文科学(文学、史学、哲学、心理学、教育学、演劇、語学、芸術等) 社会科学(法学、政治学、経済学、社会学、総合政策等) 学際・その他(環境科学、生活科学、エネルギー科学、国際関係等)」 ------------------------------ [67-3-2] 森田竜義「国公私トップ30」の全体像 (reform 3685) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre3694.htm (1)「大学間競争を意識させ、国際競争力を育てるのが狙い」とされる。 (2)既存の科学研究費補助金などとは全く別に事業予算を確保、初年度となる 来年度は概算要求段階で422億円を見込む (3)配分の対象は、基本的には大学院の博士課程を持つ大学とするが、研究所 などにも応募の道を開く。 (4)大学院の専攻レベルを分野分けの単位とし、各分野ごとに最先端の研究や 優れた教育活動について、大学院の専攻単位で「トップ30」を選ぶ。 (5)初年度の02年度は5分野を予定し、2年目から10分野に拡大する方針 (6)対象10分野は「生命科学」「医学系」「数学、物理学」「化学、地球科 学」「情報・電気・電子」「機械・材料」「土木・建築、その他工学」「人文 科学」「社会科学」「学際・その他」 (7)来年1月に大学に募集要項を示し、7月ごろに選考する。希望する研究分 野の実績や研究データのほか、施設や人材などのどこに資金投入し、いつまで に成果をあげるかという将来戦略の提出を受ける。 (8)大学の申請に基づき、審査委員会が評価。私立大も含めた評価機関がない ため、国立大が対象の大学評価・学位授与機構の手法を参考に、来年度国公立 や私立も含めて大学の研究分野ごとに有識者十人あまりの審査委員会を4月に 文科省に設けて研究や教育の成果を評価する制度を発足 (9)重点配分は5年間継続で、研究費や人件費、設備費など年間1億〜5億円 程度を配分する(のべ約300大学に平均約2億8000万円ずつ配分)。予算 の使途は限定せず、各大学の判断に任せる予定。 (10)選ばれた大学は、国立学校特別会計や私学助成などでも優遇措置を受ける。 1年ごとに一部入れ替え。」                   ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-4] 総合科学技術会議第9回(2001.8.30) http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/giji/giji09/giji-si09.htm #(前回の会議(7月11日)が策定した「平成14年度の科学技術に関する予 算、人材等の資源配分の方針(案)」*1に対する、指導的研究者集団からの批 判への言及はない。) *1 http://www.nao.ac.jp/20010711_youbousyo.txt ------------------------------ ITER(国際熱核融合実験炉)計画が科学技術基本計画予算「24兆円」 は一部となる予定。) 予算編成の9月の日程表。分野別推進戦略は9月下旬の総合科学技術会議に おいて決定する予定。 http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu09/siryo1-1.pdf ------------------------------ [67-4-1]「経済活性化のための地域科学技術振興プラン」の素描。 http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu09/siryo5.pdf #(大学を活用するプラン。学官共同のコンソーシアム方式・大学連携型イン キュベータ・目利き人材・産学官連携サミット等々。経済産業省による施策の 効果の試算に「税収増により、5年間で予算投入額を回収」と楽観。)                   ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-5] 文部科学省内部での国大大学分類表 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/0193ranging.htm #(分類の仕方を見ると、大学が事務組織に付随するものとしてしか見做され ていないことがよくわかる。また、独立行政法人化を検討する時も大学・本省 間の転勤をどう法的に位置づけるを熱心に検討していた、という話も聞く。教 員を大学という施設の「必要悪」と見做している可能性は高い。) 旧帝大=第2次大戦終了(1845.5.15)以前にその前身が帝国大学として設立 されたもの。ただし(1973.10.1設立)筑波大学は旧帝大グループに属す。 旧官立大=第2次大戦終了以前に大学として設立されたもの。 新7大=第2次大戦終了後、新制大学成立(1949.5.31)より前に設立。 部制大=新制大学成立後に設立された大学で、事務組織に “部制”がとられ ている大学。例えば、事務局長の下に総務部長が配置されている大学など。 その他大=新制大学成立後に設立された大学で、事務組織に“部制”がとられ ていない大学。例えば、事務局長の下に総務部長はおらず、直接総務課長が配 置されている大学など。 ・・・・ 「この間の「大学改革」は殆ど例外なく、この序列に従って実行された。課長 以上の本省人事もこの序列の中で進められている。こうして大学の序列化が長 期亘って推進されたのである。文科省『中間報告(案)』では、この序列化推 進によって形成された厳然たる格差を、「置かれている状況や条件」だと人ご とのように言い、それを踏まえて、“「多様化」「個性化」せよ”と命じてい る。それは、明治時代以来の大学ヒエラルキーをさらに制度的に固定しようと するものである。」                   ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-6] 来月の国立大学理学部長会議で法人化問題を検討か #(発行者による提案[67-6-1]を議題には取り上げなかったが、議長の長田研 究科長は上記会議で独立行政法人化問題を取り上げるように働きかけているこ とを出席者に告げた。科長の努力に甘えず、理学研究科の全教員は中間報告を 国立大学協会特別委員会の法人化案の時[67-6-2]と同様に吟味すべきではな いか。) ------------------------------ [67-6-1]北大理学研究科教授会2001.9.7での提案 (1)文科省国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議の「中間報告」 に対する理学研究科の意見を10月中に表明する。 (2)全構成員の意見を反映させる方法の勘案、および、意見の取りまとめ等 には、評議員・専攻長を中心とするWGが行う。 【主な提案理由】 (1)「中間報告」により具体的議論が可能となった。特に中期目標・中期計 画の具体例が呈示され、大学の日常的活動への影響を具体的に分析できる。 (2)国立大学協会は主に大学経営の視点から行動しているため、教育・研究 現場の視点からの率直な見解が未だに社会には伝わっていない。 (3)遠山プランにより、独立行政法人化の目的が「企業的発想の経営手法導 入のため」と変化し、民営化の準備段階としての性格が明確になった。「安定 した制度としての独立行政法人制度」という暗黙の前提が崩れた以上、再検討 が必要。 (4)「評価に基づく資源配分」への移行が雪崩を打ったように進められてい るが、採択率3%の基盤研究Sが象徴するような「非効率な競争的資金」の跋 扈は、評価者・被評価者を疲弊させ、「得」をすると思っている大学も、基盤 的機能の低下は避けられない(*1)。「評価に基づく資源配分」を基盤とする独 立行政法人制度が機能するのか再検討が必要。 ------------------------------ [67-6-2] 北大理学部教授会懇談会(2001/06/01)で出された意見(01/06/19) http://www.sci.hokudai.ac.jp/oshirase.htm#d                   ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-7]「我々の目指す大学像ー文科省『大学構造改革計画』による大学破壊に 対抗して」独立行政法人問題千葉大学情報センター事務局東職改革問題特別委 員会・独法化反対宮崎大学実行委員会 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2518.htm #(「慣習も法である」以上、実質的に法人である国立大学を法的に法人化す る作業は不要なものであり、それを敢えて進めるのは大学自治の慣行を破壊す る意図が疑われる/トップ30体制とは正反対の分権的大学システムを構築し、 競争原理に代わって分権と共同性を大学システムの基本原理とすべき等、独立 行政法人化とは全く異る方向を提言している。)                   ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-8] 討論集会「国立大の『独立』行政法人化は真に大学の独立性を高めるか」 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/meeting.html #(全政党に発言を依頼中。集会後、文部科学省交渉を行う予定となっている。) ------------------------------      政治家・市民・学生・大学教職員による討論集会 「国立大の『独立』行政法人化は真に大学の独立性を高めるか」 日時 2001年10月5日 12時30分〜15時30分 場所 衆議院第一議員会館 第一会議室 (地下鉄「国会議事堂前」すぐ) 主催 国立大学独法化阻止全国ネットワーク (代表 山住 正己)    事務局 佐賀大学理工学部 豊島耕一      0952-28-8845,toyo@cc.saga-u.ac.jp      ホームページ http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet.html ------------------------------                趣旨 国立大学の独立行政法人化(独法化)や,「トップ30大学構想」などがメディ ア上ですでに当然のこと,決まったことのように扱われていますが,独法化に ついてはまだ法律案さえできておらず,後者についても文部科学省のアドバルー ンの段階に過ぎません.どちらも大学における学問の自由を左右しかねない重 大な問題を含んでいるにもかかわらず,大学関係者はすでにこれに「どう対応 するか」だけに汲々としはじめています.  しかしはたして「独立」行政法人化はその名前のとおり大学の独立性を高め るものでしょうか.そして「トップ30大学構想」は大学の教育と研究を本当 にレベルアップするものなのでしょうか.独法化のもとでは,大学が従来自主 的に決めてきた運営の基本方針が「中期目標」として文部科学省に指示される ことになります.また「トップ30大学構想」とは,ルールを役所が決め,そ して役所が審判員となる「政府主催の大学レース」に国公私立すべての大学が 巻き込まれていくことになりかねません.  いずれも大学の自主性を殺ぎ,官僚支配をより一層強めていく恐れがありま す.にも拘わらず,十分な議論がなされているとはとても言えない状態です. 国民の多くは,国立大学の独法化とは一体何なのか,まだほとんど知らないの ではないでしょうか.  私たちは,先の参議院選挙に際して,この政策について賛否を問うアンケー トを全政党と候補者に実施しましたが,最大与党の自民党を含め,ほとんどの 政党はまだ態度を決めていないか,または反対の立場を表明され,賛成を表明 されたのは3つの党にとどまりました.このことは,まさにこの問題がこれか ら国民的な議論によってその是非を論じる段階にあることを示しており,「す でに決まったこと,動かし難いこと」という態度そのものが国会無視,国民無 視であると言わなければなりません.  大学のありようがわが国の将来を大きく左右するということについては,ど なたも異論はないと思います.今回のような大きな制度の改変を,十分な吟味 もなく,スケジュールに追われ,あるいは文部科学省主導のやりかたを容認す るとすれば,そして何よりも一般の国民がこの問題を十分理解することなく事 が運ばれるとすれば,将来に大変な禍根を残すことになるでしょう.党派や立 場をこえての率直な意見交換こそが今最も必要とされているのではないでしょ うか.政治家・市民・学生・大学教職員のすべての皆様に集会への参加を訴え ます.  主催者の私たち「国立大学独法化阻止全国ネットワーク」には多くの大学関 係者が参加しており,教育・研究の現場からの率直な意見をお知らせすること で,討論に大いに貢献したいと思っています.(Ver. 1.0 - 8/9/01)                   ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [67-9](文献紹介)市川昭午「高等教育の変貌と財政」玉川大学出版2000.3 http://www.tamagawa.ac.jp/sisetu/up/isbn/isbn4-472-40141-X.html http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3477.htm #(学費問題・評価・設置形態等について審議会等で「常識」とされていると 推測される、種々の考え方や視点や争点が網羅的に取り上げられている。常識 的正論に対してどういう反論が用意されているかがよくわかる。実際の大学行 政への根本的批判も少なくない。) ------------------------------ [67-9-1]「地方移管論」 第7章 大学の財政と設置形態・国立大学設置形態変更論より http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3477.htm 「・・・・まず,国立大学を引き受けられる地方団体が現在どれだけあるかと いうことである.受け入れ態勢が整備されている地方自治体はすでに公立大学 をもっている.それ以外の自治体は大学管理運営の経験が不足なためノウハウ や人材が欠如していたり,財源維持能力に欠けている場合が多いのが実情であ ろう.したがって,地方税源の大幅な拡充といった財政構造の抜本的改革や道 州制への移行などといった地方制度の根本的な改変を前提としないかぎり,移 管はほとんど期待できない. 次に,地方移管を引き受ける自治体があるとして,移譲する大学の選別,線引 きをどうするかが問題となる.これは国立大学の地方移管を図ろうとする場合, ほとんど必然的に付随する問題であり,アメリカ占領軍の国立大学地方委譲案 も旧帝大を中心に10大学を国立として残すというものであった。学部について も地域型と全国型の区分が必要になろう.跡田氏の案は旧帝大など主要国立大 学は学校法人化し,地方国立大学は全国7ブロック単位の道州立大学とすると いうものだが,やはり同じ問題を孕んでいるといえよう.・・・」 ------------------------------ [67-9-2]「独立行政法人化輪」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe3477.htm 「・・・・この制度の導入に深くかかわった専門家の解説によれば独立行政法 人制度の目的は当該業務に関し担当組織に“独立性”を与えることだそうであ るが,現行制度の下でもかなり広範な独立性が与えられている国立大学の場合, 独立行政法人化しても本質的に変わりがないということである.既存の特殊法 人立大学としては放送大学があるが,たんに放送法との関係で国立大学にでき なかったために特殊法人になっているにすぎず,その実態も国立大学とあまり 変わらない.放送大学の収入に占める政府一般会計からの補助の割合はむしろ 国立大学を上回っており,財政支出削減には役立っていない.  かつて臨時教育審議会第3次答申(1987.4.1)が現行の特殊法人は大学に 必ずしも適さないが,大学の自主・自律性を確立するうえで有益な示唆を与え るとして,大学にふさわしい「新たな特殊法人」として形態を模索するよう積 極的な研究調査を求めた.しかし,臨教審の委嘱を受けた「大学の組織運営に 関する研究会」が詳細な検討を行った結果,デメリットを上回るメリットはみ いだしがたいという結論[67-9-2-1]を出している。  国立大学を独立行政法人にするとしても,全国立大学を一括して単一の法人 とするのでは,国立大学庁という外局による管理と実質的に変わりがなく,大 学ごとの自由裁量の余地は拡大しない.かといって各大学が個別に法人化する のでは100近い法人ができることになり,大勢の役職者をおく必要が生じる. これでは行政改革に逆行するし,それだけの数の有能な経営者が存在するとは 考えにくい.  そこで川村氏の構想にもあるような「基本的には幾つかの大学ごとの連合体 方式」が浮上してくる.この場合には,半世紀前に旧制の官立高等教育機関を 新制大学に統合移管させる際に生じたように,どの大学と連合するのか,グルー プ分けが難しい課題となる.また,仮に統合が実現されたとしたところで,そ れは大都市以外にはみられなかった巨大なマンモス大学が地方に出現すること になるだけでなく,キャンパスがいくつかの府県にまたがることになる.新制 国立大学発足時に問題となったとき以上のスケールの蛸の足大学がはたして効 率的に運営できるかどうかは疑問である.  文部省の原案によれば各国立大学ごとに法人格をもつことになるようである が,現状と比べてどれほど独立性が高まるのか,効率的経営ができるのかは定 かではない.しかし,大学と社会および行政との間を媒介すべき理事会がおか れないこと,あるいは付属病院を除けば最大の自己収入源である授業料につい て裁量権限が認められない可能性があることなどを勘案すると,文部省と大学 との関係はこれまでと大きくは変わらないようである.」 [67-9-2-1] 大学の組織運営に関する研究報告書1987.2 抜粋 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/906-rks.html ------------------------------ [67-9-3]「私立大学民営化論」 第7章 大学の財政と設置形態 「参入親制撤廃論 p142 エコノミストのなかには私立大学は非営利の建て前と一律機関補助であるこ とから,効率的経営を行うインセンティブが乏しいとして,機関補助を個人補 助に切り替えるとともに,利潤分配の禁止規制を廃止し,長期的には営利法人 の参入を認めるべきだと提言する人もいる.・・・・ 営利企業による大学経営はけっして荒唐無稽な絵空事ではない.すでにアメリ カで急速な発展をみており,年商35億ドルのビジネス産業に成長している.・・・・ 営利型大学の利点としては・・・・教育二一ズに敏感になり効果的な教育が行 われること,大幅に税金に依存する既存型大学に対抗するために能率的な経営 がなされること,・・・・資金を市場で調達できるため労働需要の変化などに 敏速に対応できること,・・・・補助金をはるかに上回る税金を納入している 点で納税者負担を軽減すること,などが挙げられている。 しかし,次の段階になると,営利型大学も公費補助を要求するようになる.・・・・ しかし、営利型大学学生への奨学金が非営利型大学学生に対するそれに近づく につれて,納税者に面倒をかけないという営利型大学の謳い文句は効力を失っ てくることになる. わが国でも福祉事業にはすでに営利企業の進出が認められているし,病院等に ついても規制緩和が検討されている.高等教育においてもその一部と認められ つつある専門学校については,設置者が学校法人でなければならぬという縛り がない.こうした状況からみて,大学だけが例外でいられるという保障は乏し いといわねばならない. ・・・・経済的な効率性という観点からみるかぎり,広義の行政機関である国 立大学よりは学校法人である私立大学の方が,また非営利法人である私立大学 よりは営利法人である高等教育機関の方が優れているということになりそうで ある.しかし,だからといって,国立大学を私立大学化し,学校法人を営利法 人化していけばよいということにはならない. 周知のようにヨーロッパ諸国ではほとんどの大学が国立か公立だし,市場化を 主張するエコノミストがモデルと仰ぐアメリカでも公立大学が圧倒的なシェア を占めている.こうした事実は大学が効率性の原理だけで運営されているので はないことを示している.どこの国でも大学に非営利法人の地位を付与したり, 公費補助をしているのは,大学には消費者を喜ばせる以上の使命があると考え られてきたからであり,その教育や研究を消費者の選択に任せきりにしておく のは適切ではないという社会的判断があったからである.市場化で問題が解決 するのであれぱ,そうした配慮は必要なかったはずである.大学は経営問題を 有するにしてもあくまでも教育研究機関であり,教育サービスを売る企業では ないのである. ボールディングは「非効率の礼賛」と題した論文で,経済学者として大学運営 効率化の必要性を認めながらも,それがすべてではなく,人間的な効率が大切 だという見地から次のように述べている.「大学の余計なものや非効率は人間 活動の究極的な生産物の一部であり,生きていく理由でもある.大学を狭い意 味で効率的にするのは社会に対する最もひどい仕打ちになるかもしれない」 ------------------------------ [67-9-4]「コスト意識に欠ける(評価政策)」 第6章 大学評価と資源配分」p124 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/906-ichikawa.html 「・・・・ 大学評価に同僚評価はつきものだが,それは第一級の科学の専門家の時間と才 能を著しく浪費する.評価をする人はされる人よりも高い能力を有しなければ ならないが,当然のことながらそうした人の数は限られる.研究・教育の第一 線に立つ人々が大学評価に専念するようになれば,信頼のおける評価結果が得 られるかもしれないが,数年にして学術研究は壊滅してしまうだろう.かといっ て第一線から退いた人々やもともと第一線に立ったことがない人々が評価に当 たったのでは,評価結果も信頼は得られないであろう. ところで,大学評価が世間で利用されないのは,長年にわたってアクレディテー ションを実施してきたアメリカでも基本的に同じようである.大学教育のクラ イアントやスポンサーはアクレディテーションの報告書を読むよりは,マスメ ディアのランキングに頼っている.これは時間や費用などを考慮すればむしろ 賢明な行動といえよう.・・・・ 模範的な大学評価が行われているはずのアメリカでさえこのような状況にある とすれば,作成や利用に高いコストを必要とするアクレディテーションをなぜ 続けているのか,不可解である.まして日本がなぜそれを真似しなければなら ないのか甚だ疑問である.」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立 つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)へ のリンクと抜粋を紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者から の情報等に拠る。メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は 目次番号が記事にリンクされている。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 【関連サイト】http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp ------------------------- 発行部数(括弧内は増減) (2001.9.9現在) 1592(+21): Mag2:928(+15)|CocodeMail:365(+3)|Pubzine:91(0) |melten:75(0)|Macky!:56(0)|melma:50(+2)|emaga:30(+1) 直送 約730(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等) ------------------------- Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 67
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