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国立大学独立行政法人化問題週報

Weekly Reports  No.72  2001.10.15 Ver 1.11

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-72.html
総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
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       目次
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[72-0] 内容紹介
 [72-0-1] 総合科学技術会議のフタを開けてみると・・
 [72-0-2] Σ計画の失敗の要因を調べる慎重さが望まれる
 [72-0-3] 有識者の前の「御前試合」で良いのか
 [72-0-4] 小学校教員採用数増加の「朗報」の内実
 [72-0-5] 組織構造の操作で作る<リーダーシップ>の行く末
 [72-0-6] 戦後教育の効果

[72-1] ◆政治家・市民・学生・大学教職員による討論集会2001.10.5 集会決議
[72-2] 黒木玄氏ウェブサイト「通産省Σプロジェクト、失敗を失敗と認めること」
 [72-2-1] 「シグマはどこへ消えた?」
 [72-2-2] 情報処理振興事業協会「未踏ソフトウェア創造事業」
[72-3] 総合科学技術会議の動き
 [72-3-1] 国の研究開発評価に関する大綱的指針(案)
  [72-3-1-1] ◆意見募集:2001.10.5-10.24:最大文字数1,600字程度 提出フォーム:
 [72-3-2] 科学新聞社=連載=第2期科学技術基本計画各界の有識者に聞く
  [72-3-2-1] 7/13 前田勝之助(東レ会長)総合科学技術会議議員
  [72-3-2-2] 7/20 吉川弘之・日本学術会議会長
  [72-3-2-3] 7/ 6 堀場雅夫・堀場製作所会長(文部科学省科学技術・学術審議会委員)
  [72-3-2-4] 6/23 桑原 洋・総合科学技術会議議員
  [72-3-2-5] 6/15 石井紫郎・総合科学技術会議議員
  [72-3-2-6] 6/ 8 井村裕夫・総合科学技術会議議員
 [72-3-4] 尾身幸次科学技術担当大臣「日本の産学連携に注文」
 [72-3-5] 分野別推進戦略(2001.9.21)
 [72-3-6] 「危惧すべき「重点4分野」への排他的な研究資金の集中」
[72-4] 閣議決定:司法制度改革推進法案 2001.9.28
 [72-4-1] 法科大学院制度に関する意見募集(2001.10.15-11.15)
 [72-4-2] 内閣官房司法制度改革推進準備室
 [72-4-3]  法科大学院の諸問題
[72-5] 中間報告を巡って
 [72-5-1] 国立大学協会第7回2001.10.1 将来構想ワーキング・グループ(議事メモ) 
 [72-5-2] ◆日本科学者会議「新しい『国立大学法人』像について」に対する見解
[72-6] 論説・発言など
 [72-6-1] 喜多村和之「自己評価と第三者評価―私大はいずれの路線をとるのか
 [72-6-2] 道上鳥取大学長「国立大学の果たした役割と将来」( 山陰中央新報09/02)
 [72-6-3] ◆団藤保晴「ポスドク1万人計画と科学技術立国」(2001.9.27)
 [72-6-4] 澤柿教伸氏ウェブサイトcolumnv 
 [72-6-5] ◆畑恵「利根川進教授ロングインタビュー」2000.9.13
 [72-6-6] ◆小沢弘明『「遠山プラン」と大学改革』『経済』No.74(2001年11月),
[72-7] 野依教授ノーベル受賞関連
 [72-7-1] 野依教授記者会見 2001.10.11
 [72-7-2] 長谷川浩司氏ウェブサイト「最近の動きについて 2001.10.10」
 [72-7-3] 高等教育フォーラム No 3602 藤田博美「戦後教育の功」抜粋
[72-8] 報道等
 [72-8-1] 北海道新聞社説10/12「野依教授の志に学ぶ」より抜粋
 [72-8-2] 読売新聞中部本社連載:大学院は今(2001.10.1〜7)
 [72-8-3] 朝日新聞「教員採用氷河期、一気に「雪解け」 小学校5割増」
  [72-8-3-1] cf:◆[32-2-2]中嶋哲彦氏(名古屋大学・教育行政学)のコメント
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[72-0] 内容紹介
[72-0-1] 総合科学技術会議のフタを開けてみると・・

総合科学技術会議についての有識者(会議の民間人議員が主)の見解を科学新
聞が連載している[72-3-2]。吉川日本学術会議会長が、「フタを開けてみると、
数人の有識者議員が全分野を網羅しているわけではなく、専門調査会の下に基
本計画の各重点分野プロジェクトを作り、そこで議論して決めていった。・・・
昔の審議会と同じような顔ぶれで、議論もやや昔と同じ。自分の領域が大切な
んだという意見、いわゆる陳情型意見がたくさん出てきて、必ずしも問題は解
決されていない。・・・」と述べている[72-3-2-2]。           
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[72-0-2] Σ計画の失敗の要因を調べる慎重さが望まれる

 出だしは良かったが「フタを開けてみると昔の審議会と同じような顔ぶれで
・・」という成り行きで、最後に華々しく失敗した国家プロジェクトの例があ
る。旧通産省のΣ計画である。黒木玄氏のウェブサイトに関連情報がリストアッ
プされている[72-2]が、1984年の産業構造審議会報告書「1990年には60
万人のソフトウェア開発技術者が不足する」から始まり、当初、「ソフトウェ
アの開発者・研究者が自由に情報やツールを交換できるような、全国的な通信
ネットワークの構築」という、IT革命そのものといえる提案から始まったプ
ロジェクトが、常連の「産学官」有識者によって、時代遅れのメインフレーム
の生き残りプロジェクトに変貌し、5年間250億円を費やし「全く何も成果
を出さないどころか、存在すること自体がコンピュータの進歩の邪魔であるこ
とが何人にも分かるようになってしまった」という。

  第二期科学技術基本計画は産学官連携強化を戦略の中核に据えて5年間で2
4兆円を使う予定だ。しかし、その滑り出しで既にΣ計画の時と同質の変質が
起こっている[72-3-2-2]。規模の途方もない大きさゆえ、また、大学の資源全
体を巻き込むものであるが故に、計画の失敗が日本を完全な科学技術後進国に
してしまうことは確実であろう。少なくともΣプロジェクト失敗の原因を詳し
く分析する慎重さが求められる。関係者のメンツがそれを阻むような体質を引
き摺っているようでは、第二期科学技術基本計画の失敗は最初から構造的に運
命付けられていることになる。

 なお、情報処理振興事業協会「未踏ソフトウェア創造事業」[72-2-2]は、全
く新しいタイプの審査方式をとる研究助成で、Σプロジェクトの失敗への反省
の上に考えられたものではないか、と黒木氏は指摘している。
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[72-0-3] 有識者の前の「御前試合」で良いのか

 利根川氏も畑恵氏のインタビュー[72-6-5]の中で「競争の原理というのは導
入しないといけないと思うから、そのためには国の力を弱めないといけない、・・・・
だけど、それと同時に、国はカネを出さなきゃダメ、税金を使わなきゃダメ。」
と強調している。科学技術政策・学術政策・高等教育政策すべてにわたって、
「競争原理」を強調する一方で「国の関与」が強調されているのは、関係者が、
<有識者>の前での「御前試合」で「競争原理」が実現できると無意識に思い
込んでいるのではないだろうか。
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[72-0-4] 小学校教員採用数増加の「朗報」の内実

来春から小学校教員の採用数が大幅に増え「今年度からの5年間で小、中学校
などあわせ て2万6900人」となる計画という。これは、昨年12月に報
道された文部省の教職員定数の改善(増員)計画[32-2-1]の実現であろう。こ
れついては、教育委員も兼職している教育行政研究者が、中途半端な増員であ
るため教諭の定数を崩して非常勤講師を任用することになる可能性が高いこと
を指摘し「非常勤講師は授業時間単位での雇用となり、授業が終われば帰って
いく、または別の学校の授業に向かわなければならない。生徒との交流や、他
の教職員との連携が困難」「「不安定雇用の教職員を大量に生み出す」などの
問題点を挙げているとともに、教科ごとの能力別編成が導入されることを危惧
している[32-2-2]。

  今回の増員計画は特定科目学習時だけの20人編成を目指したものであり、
初等中等教育の「荒廃」改善には30人以下学級実現が最低限必要であるとい
う関係者の「共通認識」を無視したものであり、「全人教育」ではなく「人材
育成」の視点に終始する教育行政の体質が浮き彫りになっているとも言える。

 なお、増える採用数は「雇用対策」の一環としてか「社会人」に割り当てら
れる見込みも強く、さらに、校長に「経営の専門家」である非教員を充当する
「政策」を進める契機となりそうである。
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[72-0-5] 組織構造の操作で作る<リーダーシップ>の行く末

 こういった「経営者優先政策」が、日本の至るところで進行している。米国
の種々の組織が、強いリーダーシップの下で機動的に機能していることに、素
朴に憧れる人達は多い。組織のリーダーを信頼し自分の使命遂行にだけ専念で
きることは素晴らしいことだろう。最近の日本の大学改革が目指しているのも
そういう方向のようだ。
  しかし、相互信頼の裏付けのない<リーダーシップ>が組織構造の操作だけ
で強められれば、構成員の創造性・自発性は萎み組織の機能は平板なものに衰
退していくことは自明なことだろう。教育・研究に携わる者から信頼されるは
ずもない「経営の専門家」や「教育行政担当者」が有無を言わせぬ「リーダー
シップ」を取る大学の行く末に寒々としたものを感じる。大学統治なる概念を
振り回すような人達を信用することに発行者は困難を覚える。
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[72-0-6] 戦後教育の効果

高等教育フォーラムで藤田博美氏が、今回のノーベル賞が戦後の新制大学の教
育体制が戦前の教育体制より有効に機能したことの傍証として見る視点を提供
し「戦後教育が始まって50年余り、その成果が現われるにはこれだけの時間が
必要であるということは、教育の内容を短期間のうちに安易に動かしてしまう、
昨今の風潮に対する一つの警鐘ではないか」と注意を促している。どのような
警鐘が鳴ろうと、憑かれたかのように定方向に歩み続ける社会は、無気味だ。

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==> 本文
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【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立
つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)へ
のリンクと抜粋を紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者から
の情報等に拠る。メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は
目次番号が記事にリンクされている。転送等歓迎。
【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ
ひ読んで頂きたいもの。
【関連サイト】http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/
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発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp
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発行部数(括弧内は増減)  (2001.10.14 現在)  
1614(-6): Mag2:943(-3)|CocodeMail:366(0)|Pubzine:93(0)
   |melten:69(-4)|Macky!:55(0)|melma:60(+1)|emaga:28(0)
直送 約730(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等)
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Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail)
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End of Weekly Reports 72
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