通信ログ
国公立大学通信 2003.06.15(日)
http://ac-net.org/kd/03/615.html

--[kd 03-06-15 目次]--------------------------------------------
[0] 6/09 日本教育法学会会員有志声明の会、要望(6月9日)
[1] 6/15 毎日:小野田武『「国立大学法人」への期待』
[2] 6/15 Publicity 660:国立大学法人法案の現状       
[3] 6/10 意見広告内容紹介(2) 
  [3-1] 池内 了(名古屋大学 大学院理学研究科)
  [3-2] 井上ひさし(作 家)
  [3-3] 櫻井よしこ(ジャーナリスト)
  [3-4] 田中弘允(前鹿児島大学学長 医学博士)
  [3-5] 間宮陽介(京都大学 大学院人間・環境学研究科)
  [3-6] リチャード・ゴンブリッチ  Richard Gombrich
[4] 6/13 TBS News「どうなる大学改革、法人法案に疑問の声」
[5] 6/10 民主党ニュース・トピックス  2003年6月10日
[6] 6/13 毎日・茨城 学長選考など3項目、法人化で要望書−−筑波大教員
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[0-1]明日の国会内集会へは多くの方が
参加されますように:

   国立大学法人法案と大学の未来を考える国会内集会
   日時:6月16日(月)12:30〜14:00
       第二部 14:00−15:00交流会
   場所:参議院議員会館第一会議室
   詳細:http://ac-net.org/dgh/03/616-dgh.php

             □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 

[0-2]教育法学会会員有志が、国会議員へ要望を送っています[0]。専門家によ
る鋭い指摘があります。特に、「付帯決議による法文の意味の限定」は「法の
支配」という民主主義の基本原理と矛盾するという指摘は重要です。初心に戻
り、以下の指摘を無視しない議員の方がおられることを願っています。
 
   「付帯決議が長文または詳細であればあるほど、法それ自体の持つ
   深刻な欠陥を立法府が認識していながら、それを放置したことを意
   味し、立法府による自らの責任の放棄に他ならないと考えます。」

             □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ 

[0-3]『「国立大学法人」への期待』の真意

昨日、大学関係者から法案への賛成意見がないと書きましたが、もちろん、大
学に在籍して産業界の意見を代弁するかたは居ます。今朝の毎日新聞に寄稿
[1]している小野田氏は日本大学教授の肩書で国会でも参考人として法案賛成
の意見*を述べています。

*http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009615620030423010.htm

この方については、昨年10月の「独立行政法人化問題週報No98」で以下
のように紹介したことがあります:

「三菱化学顧問から日本大学総合科学研究所教授となり、一貫して国立大学の
独立行政法人化の重要性を主張している小野田武氏が2000年7月に『今までも、
この独法化の問題に関連したいろいろたくさんのレポート、提言が大学サイド
から出ています。・・・。私はあれを読むたびにむかっとするのは、一番最初
に「憲法に保証された学問の自由」。もういい加減にしてくれないか。何かも
うちょっと卒直になって書いていただかないと、あまりに教条主義にすぎる。』
と述べている[98-13]。「学問の自由を守れ」という主張が卒直な発言ではな
く教条主義としか聞こえない人が大学教授となって、為政者の前で「研究者」
を代表して発言していることを考えると事態の深刻さがわかる。」

以下の講演タイトルからもわかりますように、小野田氏は自他共に認める産業
人です。

小野田武「独立行政法人化時代の国立大学運営」ーー産業人から見た大学の課
題ーー」http://ac-net.org/wr/wr-98.html#[98-13]
第35回公開研究会「独立行政法人化時代の国立大学運営」(2000.7.31)4-31
筑波大学大学研究センター発行「大学研究第23号」(2002年3月発行)
http://130.158.176.12/publish.html

さて、大学関係者が恐れている「リスク」とはなんでしょうか。国立大学法人
制度では、教育や研究に不可欠な試行錯誤に伴う「リスク」がとれないため、
日本の教育と研究はほぼ確実に衰退するーーその「リスク」を大学関係者が恐
れている、ということは理解できないのでしょうか。

しかし、小野田氏の論考[1]の主旨は、学長の賛成意見と同様に、法人化賛成
意見にすぎず、大学を政府が今以上に支配することになる現法案への反対意見
としても通用することに筆者は気付いていないはずはありません。なぜ、それ
では法案に反対しないのか。

  結局こういうことではないでしょうか。産業界や経済産業省の今回の目標は、
国立大学制度廃止と国立大学教職員の非公務員化にあり、法人法案によって文
部科学省の統制力が強まることは、数年後に民営化の口実となるので、かえっ
て都合がよい、と考えているのではないでしょうか。この疑念は、1995年
に旧通産省に設置された産業政策局産業技術課大学等連携推進室(1995年) 
[1-2]が1995年にまとめた報告書にある「産学連携に向けての方策 (2)テク
ニカルに実現可能な対応策」[1-1]が短期間に実現されていることからみれば、
杞憂ではないことがわかります。産官ぐるみで産業界による大学の簒奪が進行
してきたというべきでしょう。大学には鐚一文お金を出してこなかった産業界
が今度は大学の資源をすべて手に入れよう、という、おいしい話しのようです。
 
  産官が一致して「大学等と産業界との連携を、人・金・情報・モノあらゆる
面で促進」[1-2]すれば、わずか5年で大学自身がこぞって産学連携を叫ぶよ
うになるとはーー金に糸目をつけない情報操作の効果はまことに驚くべきもの
があります。(編集人)
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[0] 6/09 日本教育法学会会員有志声明の会、要望(6月9日)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/web030614kyouikugakai.html
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参議院文教科学委員のみなさま

日本教育法学会会員有志声明の会
事務局長 植田健男(名古屋大学)

国立大学法人法案審議についての要望

 私たちは、現在、参議院文教委員会で審議されている「国立大学法人法案お
よび関連五法案」は、今後の日本の行方を決定づけるきわめて重要な法案であ
り、国会での慎重かつ徹底的な審議を必要としていると考えます。もしも、こ
こで審議を尽くさずに性急に法案を通過させてしまうようなことがあれば、こ
の先、数十年間にわたって日本の高等教育に大きな禍根を残すことになりかね
ませんし、ひいては日本の未来を大きく損ねる事態となりかねません。

 私たちは、教育法学の専門的立場から、今回の国立大学法人法案に対して重
大な疑義を抱いています。何よりも日本国憲法第23条および教育基本法第1
0条に抵触しているという点に、本法案の最大の法的問題点があると考え、先
日、声明「国立大学法人法案は、明らかに憲法23条及び教育基本法10条に
抵触する−同法案の廃案を訴える−」(全文は下記に掲載)を公表するととも
に、文部科学省内記者クラブで会見を行いました。

 この二ヶ月あまりの間に、国会で本法案に関する多くの論議が行われました。
私たちは衆参両院の委員のみなさまに、心より敬意を表するものであります。
しかし、この法案には、上記以外にも幾つもの重要な問題点が含まれていると
考えています。

 第一に、教育研究の内容への教育行政機関の関与をめぐる問題です。国会答
弁で、遠山敦子文科相は「学問研究の内容についてはその特性を配慮する」と
繰り返し述べておられますが、その法的根拠は条文の中には見当たりません。
「配慮する」というのならば、もとより文部科学大臣が中期目標を策定すると
いう行為そのものの是非が論じられるべきですし、文科大臣が果たす役割につ
いて教育基本法十条二項に抵触することのないよう条文に明記することが必要
です。

 第二は、大学に対する国の財政責任を明確にする問題です。学校教育法第5
条に定められた設置者経費負担主義の原則から言えば、大学設置主体を変更す
ることによって、国は財政負担責任を放棄しようとしていると解釈されかねま
せん。

 第三は、大学運営のあり方をめぐる問題です。本法案における学長選考方法・
学内運営体制(教育研究評議会・役員会・経営協議会)の規定は、いくつもの
非民主的かつ不公正な運営規定が見られます。例えば、現学長が次期学長の選
考(自らが再選される場合でさえも)に大きな権限をもつことや、教授会の権限
を定めた学校教育法の趣旨はどう生かされるのか、などの点について論議が必
要です。

 第四は、教職員身分の非公務員化にともなう問題です。労働基準法・労働安
全衛生法の適用を受けることになった場合、その運用の仕方だけではなく、法
制度上の整合性についての論議がなされなくてはなりません。

 第五に、本法案と現行教育法体制との関係をめぐる問題です。先に申し述べ
たように、日本国憲法・教育基本法の規定と国立大学法人法案とは正面から矛
盾する内容を含んでいるといわざるを得ません。日本国憲法との関連性につい
ては言及されていますが、教育基本法その他の教育法規との整合性について、
国会内での明確な論議はなされていません。

 第六は、関連五法案についてです。国会内では、国立大学法人法案に審議が
集中し、関連法案についてはほとんど議論がなされておりません。

 以上の点をふまえて、次のことを要望いたします。

一、国立大学法人法案について逐条審議を行い、危惧される問題点について明
確に疑念が解決されるまで徹底して論議を行うこと

一、国立大学法人法案に関連する五法案についても、同様の審議を行うこと

 なお、伝え聞くところでは、衆議院文部科学委員会が決議した本法案の付帯
決議よりも長文かつ詳細な付帯決議が準備されているとのことですが、この付
帯決議は、本法案の意味を限定することにより、憲法23条および教育基本法10 
条と本法案との整合性について提出されている重大な疑念を払拭することを目
的としているものと思われます。

 しかし、付帯決議による法文の意味の限定という行為は、国民代表によって
構成された国会が定める「法律」によって行政府の活動を拘束する、「法の支
配」という民主主義の基本原理との矛盾を指摘せざるを得ません。

 付帯決議によって法律の欠陥を修正しようとしても、現実には、付帯決議に
よって加えられた修正は、法律ではないがゆえに、法の執行の段階で考慮され
ることなく、修正としての意味を持たない場合が多いのです(そのような例の
典型として任期制法をあげることができます)。付帯決議によって国民代表の
意思が法律の執行段階で反映されると考えるのは幻想です。

 法案の欠点あるいはそれに対する強い疑念は、立法府による法案の修正によっ
てこそ除去されるべきものです。そして、付帯決議が短文であればあるほど、
微修正で済むことを知りながらそれを立法府が施さなかったことを意味し、そ
れは立法府の怠慢の自己証明に他なりません。また、付帯決議が長文または詳
細であればあるほど、法それ自体の持つ深刻な欠陥を立法府が認識していなが
ら、それを放置したことを意味し、立法府による自らの責任の放棄に他ならな
いと考えます。
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[1] 6/15 毎日:小野田武『「国立大学法人」への期待』より
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		   発言席 「国立大学法人」への期待

		 日本大学総合科学研究所教授 小野田武

筆者は、四十余年にわたり民間企業で研究開発、新規事業開発や経営に従事し
できた。その間学会活動や講師、客員教授等の兼務を通じで、わが国の大学と
大学人に、親近感とともに強い危機感を抱き続けできた。企業人として、80年
代の米国の企業や大学の変貌、ソ連邦体制崩壊後の欧州の変化、また、最近で
は中国の激変に接しながら、経済活動にとどまらない国際化と社会構造の変化
の潮流を痛感しできた。

20世紀後半、わが国を世界屈指の豊かな文明社会に成長させたけん引車は産業
であり、産業技術である。世界の産業地図が激動する中で、産業競争力の確保
を欠いては、衰退あるのみである。また資源エネルギー・環境等の現代文明社
会に突きつけられた課題に対しでも、積極的な対応が困難となる。

ここで留意すべきは、これからの国際競争の様相の変化である。国のすべての
機能の競争力が問われている点である。「個」「組織」「仕組み」等のすべで
が強化されなくては、力負けしてしまうのが 世界の現実である。

大学は、「知」の中核組織であるとともに、「人材育成」の基盤である。国際
競争の先頭に立つべき最重要な機能である。特にわが国においては、国立大学
への質的依存度は高い。この国立大学は、従来、行政組織の一部としで、国の
保護と規制の下に置かれ、大学人のいう自治・自由とは、寵の中あの鳥の自由
に過ぎず、持てる力を存分に発揮できる状態には程遠い。この度の国立大学法
人化は、大学改革の基盤となるものと期待される。国が国立大学の果たすべき
役割や責務を明示して、その実現に責任を持つ枠組みは経費の大部分に税金を
投入することからも必然であろう。

その中で、「個」の活力は、非公務員型への移行や種々の規制緩和により、そ
の意欲と才能を存分に発揮する格段の自由度を獲得できる。「組織」は、学長
と「役員会」への権限強化により、個性豊かな構想策定と指導力を発揮できる。
また、それを支える学外有識者の経営能力を活用しての「経営協議会」、学内
代表者による「教育研究評議会」によって、予算執行・組織・運営・学内人事
等を自律的に遂行できる。

加えて大学には、「個」と「組織」の力を発揮させる「仕組み」を、自らの判
断と裁量で構築する自律の自由度が付与されでいる。

しかし、改革にはリスクを伴う。多くの大学関係者が、疑念や危倶を表明して
いる。寵という保護を失う不安もあれば、未知なる大空を飛べるだろうかとい
う不安もあろう。だが、リスクを恐れで停滞するよりも、リスクを覚悟して進
むことが、大学人としでの自主・自律の志ではなかろうか「また、大学を社会
に開くことにより、社会から寄せられる大学への関心の高まりは、そのリスク
を低減してくれるに違いない。

さらに強調したい。国立大学法人化は大学改革の出発点に過ぎない。適切な国
費の投入は必須の要件である。教育・研究への投資が、極めで有効な先行投資
であることは歴史が証明している。また大学改革に資する施策を継続実施する
必要がある。迷走する初中等教育の改善、時代遅れの大学教員職務規程の見直
し、多大な学業阻害を看過している就職過程の悪慣習の改革等、課題は山積し
ている。

大学の学術研究・人材育成の視点は、「社会を先導」するものであってほしい。
未来への洞察力が求められる。未来は、現在の理解を欠いては洞察できない。
「社会に開かれ、社会と共に歩み、社会を先導する国立大学」として、大空に
羽ばたいてほしい。(毎週日曜日に掲載)
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[1-1] 1995 産学連携から見た日米技術系大学の比較・評価調査報告書より
    http://ac-net.org/dgh/01/714-sangaku.html
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「4.産学連携に向けての方策 (2)テクニカルに実現可能な対応策

国の行うべきもの

○ 大学運営に関する規制撤廃

○ 教員の身分や大学の活動に関わる部分と、会計上の問題に大別されるが、
規制の根底にある、「管理し・統制する」という基本姿勢や、「悪平等的」基
本思想そのものを撤廃すべき。行政と大学でプロジェクト・チームを作り、研
究経費に関わる費目のしばりや兼業の禁止等の問題について、規制緩和に取り
組むべきである。

○国家予算の「産学連携」と「大学の環境改善」への傾斜配分

○「産学連携」プロジェクトに対する研究費補助、税制上の優遇措置や基本的
住環境(スペースの拡大)に対する国家予算の投入を行うべきである。

○国レベルでの「産学連携」のための専門組織の設置

○国立大学が法律的なしばりによって、動きがとれないのであれば、私学を中
心に「産学連携促進センター」を設立し、知的所有権・機密事項に関する基本
ルールの確立、大学間のコーディネーションによる大型プロジェクトの推進等
を行うことを検討すべき。

大学の行うべきもの

○大学の硬直的組織運営の改善・プロジェクトに応じた研究組織の形成

○硬直的運営の一因として、「講座制」が、産学連携」に不可欠なフレキシブ
ルな組織運営を不可能にしている。「産学連携」において、最強のプロジェク
トチームを編成することは、プロジェクトを獲得する上での必須条件であり、
臨時に必要な人材を雇用できるリサーチ・アソシエートを取り入れるべきであ
る。

○大学レベルでの「産学連携」のための専門組織の設置

○大学に「産学連携」のための専門組織を設置することは、大学自らのイニシ
アチブで、すぐにでも取り組むべきものである。トップダウンでポリシーを明
確に示し、産学連携のための専門組織を設置し、産学連携に関わる評価・報酬
システムの開発、知的所有権・機密事項の取扱いに関するルールの確立、マー
ケティング機能、企業の課題に的確に応えるための最適なチームを編成する仕
組みづくり等を行うことが必要である。

○教員に対する評価制度の確立

○現在、評価は「論文の量」のみによっており、論文の量を稼ぐために研究領
域が選ばれている。これでは、産学連携は結果論に陥るのは当然であり、これ
を改善するため、論文の質の評価、特許及び産学連携に関わる活動の評価制度
を確立し、競争原理を導入するとともに、報酬・処遇に反映させることが必要。

○教員の企業・社会的常識の確立

○企業と大学とどちらが歩みよるかという問題はあるが、大学はその研究成果
を社会に提供することを目的とするものであるから、大学側から歩みよるべき
もの。米国では、兼業として、企業にコンサルティングを行い、また、ベン
チャーに関与することで、企業・社会的常識が身に付いていく。大学からは無
給で、企業の研究所で研究を行い、報酬を得る形のサバティカル制度を導入す
るのも一案である。」

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[1-2] 1995 II. 大学等連携推進室の業務
     http://ac-net.org/dgh/doc/sgrk/r1.html
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1.基本的スタンス

大学等を経済社会へ有為な人材を提供する極めて重要な機関として再認識する 
とともに、高度な知的資産が集積された機関として、その活性化・活用を図る 
ことが、我が国経済社会の活性化・高度化のためには不可欠。

アプローチとしては、大学等と産業界との連携を、人・金・情報・モノあらゆ
る面で促進し、

  (1) 大学等と経済社会とのインターフェースの抜本的拡充
  (2) 大学間の競争意識の醸成

等を図ることにより、

  (3) 実践的な知識・技術を中核とする人材育成(教育)の 推進による労働
    需給の質的ミス・マッチの解消
  (4) 大学の知的資産と企業の実践的ノウ・ハウと融合した研究開発の推進

等を目指す。
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[2] 6/15 Publicity 660:国立大学法人法案の現状       
     http://www.emaga.com/bn/?2003060039895826008390.7777
     登録:http://www.emaga.com/info/7777.html
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【めでぃあ・オフノート】

▼日中30度! む、蒸し暑い。夏が来た、と書いたが、その
前に梅雨が来るんだねえ。一緒に来たみたいだ。

▼イラクが、どうも「ベトナム戦争初期」に似てきているとい
う、深刻な分析を神浦氏が行っている。末尾に転載。

神浦氏の分析に触れるかぎり、アメリカはどうしようもない泥
沼にはまり込んでいる。そのことを、日本のマスメディアは報
じなければならない。でないと、あまりにも無責任だ。書いて
いて空しくなるが、それでも書かざるを得ない。無責任だ。

▼「国立大学法人法案」について、ほとんど取り上げてこなか
った。これも、よくみればトンデモない法案だということで、
高橋哲哉氏も強く主張されていた。

「国公立大学通信」というメールマガジンがあって、そこから
、最近の情況についてコピーしておこう。

(略)

▼また、同通信に転載されていた6/12付の共同通信ニュース速
報によると、ノーベル物理学賞受賞の小柴昌俊・東大名誉教授
(76)も同法案に強い懸念を示している。

「法人化されて独立採算となると、四、五年以内に産業への見
返りがないような研究は冷や飯を食わざるを得ない。理学部や
文学部の仕事はどうなるのか」と強い懸念を示しているそうだ
。

「基礎科学は成果を出すまでに五十年、百年かかることもある
。五、六年の期間に利益を出すかどうかですべて処理されたら
困る。一律に判定を下すことは考えた方がいい。画一性は時に
害を及ぼす」

法人化した各大学が、文部科学相が示す期間六年の「中期目標
」に沿って研究・教育面などの「中期計画」を立てる仕組みに
疑問を示した。

「二、三年後にもうけがぶら下がっている研究ではないけれど
も、中には大きな見返りを出すものもある」

「十九世紀に発見された電子が二十世紀後半にエレクトロニク
スという大産業に発展した。こういう例はいくらでもある。科
学は対象の魅力や面白さで研究するもの。役に立つ、立たない
というスケールだけで処理されたら困る」

「見返りがないかもしれない基礎科学は国レベルで支えるしか
ない。景気に関係なく、継続的にサポートすべきだ。人類共通
の知的財産を増やすことにつながる」

▼うーん、なるほど、スジが通っているねえ。というより、な
んでそんな厄介な法案をわざわざつくるんだ?

軍産学複合体充実のためか? 廃刊前で、文壇ネタがやたらと
多くなっている「噂の真相」あたりに、ザクッと突いてほしい
ところだ。
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[3] 6/10 意見広告内容紹介(2) 
       http://www.geocities.jp/houjinka/
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[3-1] 池内 了(名古屋大学 大学院理学研究科)

 自然科学の研究は未知のものを相手にしている。それだけに、どのような成
果がでるかはわからないまま船出をする。幸運によって大発見につながる場合
も、積み上げた労苦が報われない場合もある。それを予め知ることができない
からこそ研究を続けているのかもしれない。しかし、法人化によって中期計画
を組まねばならず、それに従っての研究は近視眼的な成果主義に追いやられる
ばかりで、大きな目標を掲げた研究は廃れてしまうだろう。また、そのような
研究者によって育てられた若手は、さらに近場の成果主義に走ることが習い性
になっていくだろう。10年、20年の単位で見たとき、基礎科学の地盤は浅くな
り、本当の科学力を身につけた人材が払底してしまうことになりかねない。科
学の成果は、金で買えるものではないし、ましてや研究者を成果主義に追いつ
めて得られるものでもない。法人化によって、大学が安手の論文生産工場と化
し、視野の広い大きな夢を抱く研究者が消えていけば、日本はどのような国に
なるのだろうか、それを最も憂慮している。

[3-2] 井上ひさし(作 家)

 戦前戦中の、あのガチガチの国家主義の時代にも「大学の自治」がありまし
た。それは東京帝国大学の例を見ても一目で判ります。大正一二年(一九二三)
九月の関東大震災で全建物面積の三分の一を失ったとき、全教授と全助教授が
投票で移転先を決めて、その結果を大蔵大臣に提出しました。ちなみに一位が
近郊(陸軍代々木練兵場)で一五一票、二位が本郷居据りで一三一票、三位が
郊外(三鷹)で一〇三票でした。つまり教授会にそれだけの力があったのです。
もっとも近郊移転は陸軍省の猛反対で実現はしませんでしたが。
 大正八年(一九一九)には、それまで二十年間つづいていた優等生への恩賜
の銀時計の下賜が、教師と学生たちの声で廃止されました。理由は、天皇が行
幸になると、大学構内に警備のための警察官が大勢やってくる。そのこと自体
が大学の自治を乱すからというものでした。
 このような例はまだまだありますが、紙幅がないのでもう一つだけ書きます。
昭和二〇年(一九四五)六月、帝都防衛司令部が本郷キャンパスの使用を申し
入れてきた。幕僚以下三〇〇〇人の兵士で、ここを使うというのです。当時の
内田祥三総長は、「ここでは一日も欠かすことのできない教育研究を行ってい
るのであり、自分たち学問の道を歩む者たちの死場所でもある。動くわけには
行きません」と断わった。――ところがいま、一片の法律で、総長・学長を大
臣が任命し、また解任できるという途方もないことが行われようとしています。
そんなことになれば、「大学の自治」も「学問の自由」もただの画餅、戦前戦
中よりもさらにひどいガチガチ国家主義の時代になってしまうのでしょうか。

[3-3] 櫻井よしこ(ジャーナリスト)

 国立大学法人化で、大学の教育・研究目標を六年単位で区切って中期目標と
し、それを文部科学大臣が決めるようになるのだそうだ。
 全国でいずれ八七になる国立大学の教育・研究の中期的概要を決定する能力
が、一体、文科大臣や文科官僚にあるのか。問うのさえ赤面の至りで、答えは
明白だ。
 にも拘わらず、日本の大学教育・研究は、いまや彼らの狭量な支配の下に置
かれようとしている。国費を投入するからには、国として責任をもたなければ
ならないからだと遠山大臣は力説する。しかし、これまでも、今も、国立大学
に国費は投入されてきた。それでも教育・研究目標を、政治や行政が決めるな
どという愚かなことはかつてなかった。政治家も官僚も犯してはならない知の
領域の重要性を辛うじて認識していたからである。
 それが今回の法人化議論でたがが外れ、世界に類例のない、政治と行政によ
る学問の支配が法制化されようとしている。
 学問への支配は、大学の人事の支配によって更に息苦しいまでに強化される。
法人化された大学では学長の任命権も解任権も文科大臣が握ることになる。生
殺与奪の力を文科大臣に握られてしまえば、学長は文科省の意向に従わざるを
得なくなり、大学の自立の精神は土台から揺らぐ。理事の数まで、大学毎にこ
と細かに法律によって決められてしまう制度のなかで、大学の自由裁量は絶望
的に損なわれていく。文科省の顔色を忖度しながら行われている現在の大学運
営は、法人化以降は更に蝕まれ、文科省の指導に決定的に隷属する形で行われ
るようになるだろう。
 大学の自主自立と独創性を高め、学問を深めると説明された国立大学法人化
は、その建前とは裏腹に、自主自立と独創性を大学から奪い取り、大学教育と
学問を殺してしまうだろう。
 経済政策で間違っても、産業政策で間違っても、やり直しは可能だ。しかし
教育政策における間違いは決してやり直しがきかない。日本の未来の可能性を
喰い潰してしまうこの大学法人化に、心から反対する所以である。

[3-4] 田中弘允(前鹿児島大学学長 医学博士)

 私は、国立大の独法化に反対です。独法化は、大学を官僚統制と市場原理と
いう二重のくびきの下に置き、学間の自由な展開を阻害し、財源の確保の為に
企業化するからです。これは、将来のための多様な知の形成と創造力ある人材
の育成という大学の本質的な役割の遂行を阻害します。
 私達国民は、本来の社会的公共的使命を達成するにふさわしい自由闊達な大
学を、社会的共通資本として育てなければならないと思います。
 本法案は、それとは正反対の方向を目指しています。後世に大きな付けを残
してはなりません。
 選良の皆様一人ひとりに、未来を見据えた長期的視点と世界や日本全体を視
野に入れた大所高所からの思慮深い判断が、いま国民から期待されています。

[3-5] 間宮陽介(京都大学 大学院人間・環境学研究科)

 国立大学の独立行政法人化を実現させようとしている政党、文科省、国立大
学協会の方々は、ほんとうにこの「改革」が学問・研究の自由度を高め、その
水準を飛躍的に向上させると信じているのだろうか。私はいまだ彼ら諸氏の口
から納得のいく説明を聞いたことがない。大学間の競争を高める?そうかもし
れない。しかしそのとき、大学を超えた研究者の協働はかえって損なわれるで
あろう。学問・研究上の競争とは理論や学説をめぐる競争であって、大学間の
ビジネス競争とはなんの関係もない。
 彼らは、独立行政法人化の効能を信じているというより、信じようと必死に
つとめているように見える。法人化に最初は反対した国大協は、バスの発車が
不可避と見るや、バスに乗り遅れることをおそれ、法人化がもたらす利益の分
け前に与ろうと必死になっている。
 大学は自らをもっと外に開いていかなければならない。大学人は自己保身に
汲々としてはならない。国立大学の法人化はこのようなもっともな批判に応え
るように見えて、そのじつは大学を内に閉ざす。対外的な広報活動は活発にな
るだろうが、開放的なのは外見のみである。
 われわれ大学人に求められているのは、「バスに乗り遅れるな」ではなく、
バスを発車させないことである。そのうえで、真摯に自己改革につとめていく
ことである。

[3-6] リチャード・ゴンブリッチ  Richard Gombrich
(オックスフォード大学ベイリオル・カレッジ教授
サンスクリット学、仏教哲学)

 日本の真の友人たちと同様、学問の自由に影響を及ぼすようなやり方で国立
大学を「改革」するという政府の提案には、私も失望しています。官僚や政治
家に学問的、知的活動を支配する権力を与えるこのような動きは、悲惨な結果
をもたらし得るだけであることを、歴史は繰り返し示しています。
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[4] 6/13 TBS News「どうなる大学改革、法人法案に疑問の声」
http://news.tbs.co.jp/20030613/newseye/tbs_newseye766126.html
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 「国立大学にとって100年に1度の改革」と文部科学省が豪語する「国立
大学法人法案」が国会で審議中です。これは来年4月から全国の国立大学をそ
れぞれ独立した「法人」にしようというものですが、そこで大きな影響を受け
るのが予算の決め方です。

 これまで、文部科学省は大学ごとの要求を受けて予算を決めてきましたが、
法人化されることになると、文科省がまず大学の「中期目標」を決定。さらに、
その「業績評価」に応じて、交付金を出すというものです。文部科学省の評価
によって交付金が増減する可能性もある法案に疑問の声が上がっています。

 先月23日、参議院での審議が始まった国立大学法人法案に批判が相次いで
います。そもそも国立大を法人化する狙いは学長トップにすばやい意志決定が
できる、給与システムが非公務員型になり、規制が撤廃されるなど、大学ごと
の自由度を増して、活性化しようというものです。

 新しい産業や技術が求められる今、大学改革への期待は強く、国立大学協会
も去年の時点で、法人化を受け入れました。しかし、文部科学省によって法案
の中身が明らかにされたのは今年2月末でした。そして、これを見た大学関係
者から強い反発の声が出ました。

 最大の問題は大学の中期目標を文部科学大臣が定める点です。これが自由な
研究を阻害するのではないかと懸念されているのです。文部科学省では「中期
目標のベースは大学が作り、役所は詳細な研究まで口を出さない」と繰り返し
強調しています。

 しかし、今週の国会で、文部科学省が昨年末、大学側に示していた「6月末、
中期目標を提出。学部など組織ごとに具体的な事項を記載してください」とい
う文書が問題になりました。民主党の櫻井充議員の「今まで文科省は『中期計
画は漠とした物』と言っていた」という指摘で委員会の審議が止まってしまっ
たのです。

 また、大学では6年毎の中期目標で業績を評価されることに戸惑いがありま
す。東大社会科学研究所の田端博邦教授は「大きな研究課題を書き込むのは非
常に難しい。野心的な研究が姿を消す恐れもある」と指摘します。

 大学改革について積極的に発言してきた櫻井よし子さんは「一番いいのは廃
案。大学の中期目標を文部科学大臣ではなく、大学に決めさせ、届出制にすべ
き」と話します。

 一方、国立大学の学生からは「教授とかはシビアに捉えていると思うが、学
生としては実感はない」「卒業しちゃうので関係ない」といった声が聞かれま
す。国会審議も大詰めに入った法人化ですが、自立的・魅力的な大学は実現で
きるのか、主役のはずの学生がみせる無関心さはその答えを物語っているよう
です。

 国会審議は17日に再開されますが、与党の出方に注目が集まりそうです。」
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[5] 6/10 民主党ニュース・トピックス  2003年6月10日
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【参院文科委】櫻井議員、自治を奪う国立大学法人法案を批判 

 参議院文教科学委員会で10日、政府提出の国立大学法人法案について質疑
が行われ、民主党・新緑風会の櫻井充議員が、文部科学省による大学運営への
新たな介入の目論見を批判した。

 櫻井議員は、国立大学法人法案においては新たに文部科学相が定めるとされ
ている「中期目標・中期計画」の問題を取り上げ、まず「来年度の予算要求ま
でに作成しなければいけないのか」と質した。遠山文部科学相は、「来年の予
算要求までにやらなくてよいが、大学がいろいろ考えてくれているはず」と答
弁。これを受けて櫻井議員が「文科省から大学側に作成を働きかけているのか」
と質すと、遠山文科相、河村副文科相は「大学側からの問い合わせに応じて大
体のものを示した」と答え、文科省が法案審議の前から「中期目標・中期計画」
の内容について大学側に示していたことが明らかになった。

 また、中期目標・中期計画に添付する大学の各科毎の参考資料について、河
村副文科相が「添付は義務ではなく、つけても良いという意味だ」と発言した
のに対し、櫻井議員は昨年12月に国立大学協会の会議で文科省から配布され
た資料を提示。資料には「A4用紙に○行○文字で○ページで、研究組織毎に
より具体的な事項を記入してください」などと提出に際しての事細かな指示が
書かれており、文科省が参考資料の提出を事実上強制している実態が明らかに
なった。

 櫻井議員は文科省側のごまかし答弁に強く抗議し、審議はストップ。文科省
側も態度を改めないまま、この日の委員会は散会となった。櫻井議員は、「国
立大学をしめつけ、大学の自治を奪うような法案の成立を阻止するため、全力
で臨む」と述べている。
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[6] 6/13 毎日・茨城 学長選考など3項目、法人化で要望書−−筑波大教員
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学長選考など3項目、法人化で要望書−−筑波大教員

 来年度からの国立大学法人化に向け、筑波大の教員有志17人が12日、北
原保雄学長に3項目の要望書を提出した。現代語・現代文化学系の津田幸男教
授らが個人的に呼びかけ、同学系などの教員が連名で出した。

 要望書は、法人化後の学長候補者の選考について、学長に従来より強力な権
限が与えられることを考慮し、全候補者による公開討論会を開き、これまで通
りに全教員の投票による選挙を行うことなどを求めている。【中山信】
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要望 #(全文 http://ac-net.org/kd/03/613.html#[6])

1.「法人法」」では、中期目標は文部科学大臣が定めるとあるにもかかわら
ず、「学長文書」は大学が自主的に中期目標を定められる印象を与えています。
  この点についてより正確な説明を要望します。

2.「法人法」は学長にこれまでよりも強力な権限を与えます。このことを考
慮するならば、法人化後の学長の候補者の選考は十分な情報公開のもとに行わ
れることが望ましいと考えます。そのためには全候補者による公開討論会を開
催し、その上でこれまでどおり全教員の投票による学長選挙を実施することを
要望します。

3.「法人法」の合法的適用が不可能、あるいは極めて困難であるならば、学
長はその旨を大学内外に明らかにし、この法律の成立と実施を急ぐべきでない
ことを表明されることを要望します。
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編集発行人:辻下 徹 tjst@ac-net.org   
通信ログ:http://ac-net.org/kd
登録・停止方法:http://ac-net.org/kd/a.html
転載・転送歓迎。ただし URL "http://ac-net.org/kd" を併記してください。
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