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Weekly Reports  No.69  2001.9.24 Ver 1.2

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-69.html
総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
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       目次
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[69-0] 内容紹介
 [69-0-1] 調査検討会議における国立大学側の全面敗退
 [69-0-2] 暗闇の中の灯光:地方国立大学長28名提言
 [69-0-3] 白川英樹議員の「激怒」
 [69-0-4] 経済財政諮問会議における「枕詞」発言
 [69-0-5] 豊島氏の提言
[69-1] 国立大学等の独法化のための調査検討会議中間報告:大学側の全面敗退
 [69-1-1] 中間報告に関連する主要文書
 [69-1-2] 国立大学協会ホームページアドレス
 [69-1-3] 国立大学協会での法人化論議のハイライト
  [69-1-3-1] 理事会 2001.3.2
  [69-1-3-2] 設置形態検討特別委員会 2001.5.21
  [69-1-3-3] 理事会 2001.6.1
  [69-1-3-4] 国立大学協会第108回総会 2001.6.12-13 
  [69-1-3-5] 第一常置委員会 2001.6.13
  [69-1-3-6] 理事会将来構想WG第5回2001.8.31
[69-2] ◆地方国立大学長28名「《国立大学地域交流ネットワーク》構築の提言―
[69-3] 白川博士の激怒:総合科学技術会議 第六回評価専門調査会 2001.8.31
[69-4] 第20回経済財政諮問会議「枕詞で国民を安心させよ」
 [69-4-1] 第20回経済財政諮問会議(平成13年9月21日)議事録
  [69-4-1-1] 国交相「大学を核としたまちづくり事業の推進」
  [69-4-1-2] 経産相:景気の状況
  [69-4-1-3] 国民を枕詞で安心させよ。
 [69-4-2] 改革工程表
  [69-4-2-1] 改革工程表のポイント
  [69-4-2-2](工程表)人材育成・教育 p23
  [69-4-2-3] 規制改革(教育)p45 
[69-5] ◆豊島耕一「全大教教研集会参加報告2001年 9月 14日〜16日」

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[69-0]    内容紹介
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遭遇した方々が辿った運命の酷さからを人々の目を反らせようとするかのよう
に、同時多発テロの派手な映像が際限なく放映される中で、この惨劇を利用す
るかのような動きが着々と進行しているが、遺族の方々を含め、それに疑義を
唱える声が合衆国でも高まっている。

 一つの文明を支えるものは何か。単純な答えはないだろうが、社会への信頼
と相互信頼とが空気のように遍在していることは不可欠だろう。その濃度が低
下し続け、ある限界を超すとき、さしたる外的原因もなく文明は瞬く間に衰退
するのではないか。テロは、信頼という基盤の攻撃により文明そのものを崩壊
させようとする狂気である。しかし、その狂気の原因に無頓着な物理的対策は、
狂気を励まし力づけ、文明を更に危機に追いやることにならないか。

 ある程度の規模の社会は、だれも気付かないようなかすかな相互信頼がそれ
を支えているに違いない。「痛みを伴う改革」ーー高所に立って、犠牲になる
人達一人ひとりが辿る具体的悲劇の内容には全く関心を持たない突貫工事ーー
は、日本社会の「信頼成分」の濃度を低下させ日本社会を衰退させないだろう
か。学術教育社会に、自らを審判者とする怪しげな競争原理を無際限に持ち込
もうとしている為政者は、この小社会を支える多様な信頼システムを退化・劣
化させ、有機体である学術教育社会そのものを解体させるのではないだろうか。

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[69-0-1] 調査検討会議における国立大学側の全面敗退

経済財政諮問会議の改革工程表2001.9.21 が発表された[69-4-2]。国立大学の
法人化については、9月中に中間報告をだし、今年度中に、「非公務員型の選
択や経営責任の明確化、民間的経営手法の導入」などの方向を決めた最終報告
を出す、という突貫工事の日程が記されている。工程の最初が、9月27日の
中間報告発表である。

 国立大学側のある調査検討会議委員の話を聞くと、1年間の攻防は大学側の
完敗に終わったようである。委員を辞すべきだと考えた時もあったが、時期を
逸した、と言う[69-1]。

  学長をはじめとして大学運営に携わる方々の1年間の奮闘には敬意を評した
いところだが、昨年6月の国立大学協会総会で調査検討会議に協力者として国
立大学が参加することを決めたこと[14]は、誰の目にも独立行政法人化容認の
明確な意思表示であり、その後の努力は総会前後の国大協会長の言動[59-7]の
ように、形を繕うだけのものとならざるを得ないことは十分予想されていたこ
とと感じる。

 大学運営の立場からは「どのような独法化であれ学校法人化でなければ大成
功」と考えるのは自然かも知れないが、教育・研究に携わる者にとっては、政
府と財界の出張所のような役員会の指令に従って一糸乱れぬ戦隊を組んで教育・
研究に当たることになる独立行政法人化が、本当に学校法人化より、あるいは、
そもそも国立大学にとどまり定員削減や予算削減に耐えることより、良いもの
かは、疑問である。

  教育・研究の現場には、独立行政法人化によって大学と似て非なるものとなっ
た大学を次世代に残すことに忍びない人達は少なくない。その懸念を社会に伝
えることのできる時間は余り残されていない。

  国立大学教員の方々は、是非、中間報告を自分自身で読み、そこに描かれて
いるような大学を次世代に押し付けて良いかどうかご自身で判断して頂きたい
[69-1-1]。それは、たいした労力が要ることではない。そして、10月に予定
されているパブリックコメント期間に国立大学教員全員が意見を提出してほし
い、たとえ1行であっても。また、各学科・専攻・部局等で何らかの声明を出
してほしい、独立行政法人化後の大学には学科・専攻・部局の自立性はなくな
るのだから。

  次世代の教育研究者に対して、この程度の労力は惜まないようにしようでは
ないか。
                                        ------------------------------

[69-0-2] 暗闇の中の灯光:地方国立大学長28名提言

産業界に国立大学を「拠出」する遠山プランに対して、地方国立大学長有志2
8名が、全く異る志向を伴う提言を持って立ち上がった[69-2]。協力原理に基
づくことを宣言した点で、競争原理主義者が日本社会を滅ぼしつつある暗闇の
中で希望の灯となるだろう。受験競争の弊害を根本から解決するには、全大学
が協力するしかないのである。

 この提言は、国土交通省の「大学を核としたまちづくり事業の推進」政策
[69-4-1-1]と調和するものではないか。

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[69-0-3] 白川英樹議員の「激怒」

総合科学技術会議の評価専門調査会議事録[69-3]に、白川議員が事務局作成の
文書に激怒したこと、また、表現に品位がないと叱咤したことが記録されてい
る。総合科学技術会議が発足して8ヶ月になるが白川議員の意思は政策に全く
活かされていない。孤軍奮闘する博士を応援しようというジャーナリズムの動
きも全くない。
                                        ------------------------------

[69-0-4] 経済財政諮問会議における「枕詞」発言

奥田議員(トヨタ自動車)の「枕詞で国民を安心させることが一番大事だ。」
という発言や、牛尾議員(ウシオ電機)の「国民があまり驚かないように、総
理が・・・とか・・・というようなことをきちっと言えばよい。」という発言
が記録されている[69-4-1-3]。これらは「国民」を愚弄するものと言えまいか。
もっともこういう会話が公開されることの方が、大進歩かも知れないが。

                                        ------------------------------

[69-0-5] 豊島氏の提言

豊島耕一氏が、独立行政法人化に関して国立大学教員が陥っている不毛な思考
回路に照明を当てている[69-5]。全国立大学教員が一読すべき文書。

「最も必要なのは「不可避論」で情勢通を装うことではなく,阻止運動の構築
と発展の戦略とそのためのあらゆる手段について思いを巡らし,それを実践す
ることであろう.そしてそれらを交流しあって仲間と自分自身をエンパワー
(注6)することである.」

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       本文
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[69-1] 国立大学等の独法化のための調査検討会議中間報告:大学側の全面敗退

国立大学等の独立行政法人化のための調査検討会議の中間報告が9月27日に
公表される。ある国立大学側委員によれば、国立大学側の全面的敗北だという。
実際に、9月6日の段階での案では、大学を政府だけでなく産業界からも直接
コントロールできる組織構造を組み込んでおり、独立行政法人化以上に大学を
外部に隷属させる法人化となっている。

国立大学協会のホームページが出来て、国立大学協会内部で延々と続けられて
きた受け身な議論の全貌が、オンライン化された議事録[6-1-3]を通して克明
に追うことができる。
                                        ------------------------------

[69-1-1] 中間報告に関連する主要文書
(●:国立大学協会、◎:文部科学省)

●国立大学協会設置形態検討特別委員会
・「国立大学法人化についての基本的考え方」
http://www.kokudaikyo.gr.jp/chosa/txt/h13_5_21b.html
・「国立大学法人化の枠組」
http://www.kokudaikyo.gr.jp/chosa/txt/h13_5_21a.html

◎国立大学等独立行政法人化調査検討会議中間報告事務局原案 2001.6.29
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/629-tkk-matome.html

◎「中間報告のとりまとめの方向(案)」についての各委員会における主な意見
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130730-1.htm

◎国立大学等独立行政法人化調査検討会議 中間報告(案)行番号付 2001.8.9
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/809-tkk.html

○文部省調査検討会議『中間報告(案)』の異同一覧(6/29案対8/9案)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010809tyuukanhoukokuidohyou.htm

○独立行政法人化反対首都圏ネットワーク 2001.8.22
:文部科学省調査検討会議『中間報告(案)』分析メモ Ver. 1
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010822netmemo.htm

◎国立大学等独立行政法人化調査検討会議 中間報告(案)2001.9.6
http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/agency/M1-13.09.06-02-1.pdf
付録中期目標・中期計画の例
http://www.bur.hiroshima-u.ac.jp/~houjin/agency/M1-13.09.06-02-2.pdf

○文部省調査検討会議『中間報告(案)』の異同一覧(8/9案対9/6案)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010909idouhyou.htm

○独立行政法人問題千葉大学情報分析センター速報 No.8 (2001.9.13) 
「特集:文科省の目指す大学像」
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/n8.html
                                        ------------------------------

[69-1-2] 国立大学協会ホームページアドレス
http://www.kokudaikyo.gr.jp/
役員名簿
http://www.kokudaikyo.gr.jp/soshiki/meibo_yakuin.html
委員会等活動記録
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/
総会議事録一覧
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/giji_soukai.html
理事会議事録一覧
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/giji_riji.html
設置形態検討特別委員会議事録一覧
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/giji_keitai.html
                                        ------------------------------

[69-1-3] 国立大学協会での法人化論議のハイライト

[69-1-3-1] 理事会 2001.3.2
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/txt_riji/h13_3_2.txt

「以上の報告があったのち,会長から,配付資料17,18について,阿部座長か
ら補足説明願いたい旨述べられ,同座長から次のように述べられた。

1月30日の作業委員メンバーによるまとめでは,各論併記の形となっていた。
これは組織業務委員会の中にある様々な考え方からの意見を代表して,幾つか
を併記したこともあり,特に異論はなかったが,それをもとに集約したのが資
料18である。そこで議論となったのは,同資料の項目21にある学長(役員組織
と評議会等)に関する組織運営案のところに,「法人の議決機関として評議会
を置き,次の項目を審議しまたは行う。」として,(1)学長の選考および解任
請求,教員の処分,(2)法人の予算方針・基本予算決算,人事方針,給与制度・
方針,財産管理方針,運営組織改廃等,(3)研究教育の組織改廃・学生定員,
学則等規則の制定改廃,教育課程編成,入学・学位授与方針,学生の懲戒,学
生厚生補導方針等,(4)法人の目標評価方針,(5)法人の組織変更(統合・解散),
その他,法人の運営に関する重要事項となっている。このことについて法人格
を大学が取得した場合に現在の国立大学が持っている意思決定に加えて,これ
までの文部科学省等が行ってきた部分のある部分が大学の意思決定に移るわけ
であり,それを法人の議決機関として評議会の事項に掲げたわけである。すな
わち,現在の評議会がやっている部分もあるが,やってこなかった部分につい
ても議決機関ということになっているわけで,これに対し強い批判が多くの方
から出た。評議会にそういうことを認めることは法人の経営に関する重要事項
まで審議するのはやり過ぎという意見もあって,これに対する意見の遣り取り
があった。従って,限られた時間内に共通の理解を得て,一致点を見出すのは
難しい状況にある。また,これは産業界,私学だけでなく地方の国立大学長の
なかにも評議会に大きな権限を与えないで欲しいとの声もあり,そのまとめに
作業委員メンバーも苦慮しているところである。また様々な意見というのは,
今の国立大学をもっと独立性,機動性を強め,自ら判断し経営をし易くすると
いう意味で批判しているわけで,そのため非常に強めた案を仮に作成すると現
在の私学と国立大学の線引き問題に発展することにもなりかねないので,非常
に難しい決断を迫られることになる。その意味で今しばらく,結論を急がない
方がよいのではないかと申し上げた次第である。他にも意見はあるが,特に評
議会について紛糾したということである。」
                                        ------------------------------

[69-1-3-2] 設置形態検討特別委員会 2001.5.21
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/txt_keitai/h13_5_21.txt

「以上のような意見交換があった後,委員長より,次のように諮られ,了承さ
れた。設置形態検討特別委員会で1年にわたり議論してきた成果を,次の総会
に報告する必要があるし,また文部科学省あるいは社会に対しても,国大協が
議論してきたことを明確に示す必要があると考えるので,専門委員会連絡会議
より提出いただいた資料3「国立大学法人化の1つのありうる枠組」及び資料
4「国立大学法人化についての基本的考え方」について,設置形態検討特別委
員会として基本的にご承認いただきたい。

  ご承認いただければ,本日の議論を踏まえ,専門委員会連絡会議の方々と相
談し,所要の修正作業を行いたいと考えるので,これについては委員長に一任
願いしたい。また,修文したものを,来る6月1日開催の理事会に設置形態検
討特別委員会の報告として提出し,理事会において総会での取扱い方について
審議いただきたいと思う。以上のような提案があった後,次のような発言があっ
た。

○ 大方の方は,大きな方向で賛成のようだが,私はまだ納得できないので,
理事会において,付帯意見として,そのような意見もあったことを報告いただ
きたい。

最後に委員長より,次のよう諮られ,了承された。

只今の田中委員の発言については,理事会で報告することとしたい。また,99
の国立大学関係者は,本日の特別委員会の審議結果に関して多大の関心を持っ
ているので,全国立大学の更なる議論に資するために,本日の配付資料(「国
立大学法人化についての基本的考え方」及び「国立大学法人化の1つのありう
る枠組」)を一両日中に送付するともに,来る5月27日に専門委員会連絡会議
を開催し,本日の特別委員会の審議を踏まえ加筆・修正の作業を行う予定であ
るので,これについては委員長及び専門委員会連絡会議に一任いただきたい。
なお,修正案は改めて委員・専門委員宛に送付したい。」
                                        ------------------------------

[69-1-3-3] 理事会 2001.6.1
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/txt_riji/h13_6_1.txt

「14. 当面する諸問題について
会長から,次のような報告があった後,意見交換が行われた。

設置形態検討特別委員会は,昨年の総会以降,十数回開催されているが,3月
7日の同委員会において,A,B,C,Dの各専門委員会の専門委員会連絡会
議(座長:馬渡東北大学副学長)を設置し,3月21日に第1回を開催した。同
連絡会議には,これまでの議論を調整整理して具体的な案を作ることを依頼し
た。同連絡会議は,泊りがけの作業も含め精力的に検討を進め,5月の連休明
けに,設置形態検討特別委員会委員長に,同連絡会議案の提出があった。設置
形態検討特別委員会は,これについて5月21日に審議し,文字の一部修正を会
長に一任したうえで委員会名とすることを了承し,各国立大学長に報告をした。
この文章の加除修正後の報告書案が資料10,11である。

総会では,設置形態検討特別委員会の検討結果を報告し,委員会の報告として
了承してもらう方向でいきたいと考えている。

〇 総会には,設置形態検討特別委員会報告という形で提出され,公表される
のか。 この公表は,設置形態検討特別委員会名か,国大協名か。

〇 設置形態検討特別委員会名では如何かと考えている。

〇 国大協として,独法化について何かまとめたものを総会後公表するのか。
あるいは,この報告書案を総会で承認するだけなのか。国大協として意見を出
さないうちに,独法化が進んでいくことに大変危惧を抱いている。

〇 まだ,事態は流動的であり,後々手足をしばられないためにも今の段階で
は,設置形態検討特別委員会名で発表した方が良いと考える。

〇 設置形態検討特別委員会名で発表することに賛成だが,報告書案では,随
所に「国立大学協会」という表現がある。

〇 資料10について議論すればきりがない。総会での扱いは,会長の提案が妥
当である。

〇 この報告書案は,外から見ると国大協が出していると見える。総会を経,
設置形態検討特別委員会名ではおかしくないか。今度の総会で国大協が,何も
言わないと次のチャンスはなくなる。

〇 今の段階では,設置形態検討特別委員会名で発表した方が良いという提案
に賛成。ただ,総会の場において,国大協が,何らかの意思表示をした方が良
いということであれば,そこでの議論を踏まえて会長が,記者会見をされると
か,談話を発表されたら良い。

〇 総会での扱いは,会長提案のとおりとすることに賛成だが,「基本的考え
方」と「枠組」の間で,乖離しているところがある。そういった矛盾等につい
ての意見を,どういう機会に,どのような形で述べたら良いのか。

〇 設置形態検討特別委員会は,今後,まだまだ細部に亘って検討を続けてい
かなくてはならないと思っているので,ご意見をいただいて,参考にし,ある
いは検討したい。

〇 国大協としての発言がなくて設置形態検討特別委員会名で出すとすると,
今年中に独法化の骨組みが出来上がる大事な時にそれで良いのか。

〇 報道機関から,報告書案について記者会見をして欲しいという要求がある
ので,理事会終了後,設置形態検討特別委員会委員長として,説明したいと思っ
ている。

〇 この報告書案について,九州地区から,要望書を提出している。内容につ
いては,省略するが,再検討をお願いしたい。
 しかし,ここに至っては,何かをしなくてはいけないことも事実なので,設
置形態検討特別委員会がまとめたものであるという形で発表してもらえば良い。

〇 設置形態検討特別委員会がまとめたということを,総会に報告して,総会
が受理するというので良いのではないか。今の段階で国大協が,何も発言しな
いというのは,極めて不利な状況なので,設置形態検討特別委員会名でこれを
発信していただくということに意義があるのではないか。

〇 報告書をまとめるに当たって留意した点は,独立行政法人通則法をそのま
まの形で国立大学に適用することには強く反対するという従来からの国大協の
姿勢を保ちつつ,現実との闘いの中で大学の特性を生かした自主・自律性を拡
大し,個性化を進めることや運営費交付金を確実に確保するにはどうしたら良
いか,ぎりぎりの接点を探ったことである。基本的考え方と枠組の間に,齟齬
はないと考えている。

〇 この問題には,3本柱が建っており,1番左は国大協,真中は文部科学省
と調査検討会議,右側には経済財政諮問会議,内閣総理大臣の発言等がある。
国大協の中にもいろいろな意見があり,理事会にもいろいろな意見がある。だ
んだん右側の意見が,物凄い勢いで押し寄せて来るのではないかと危機的に考
えている。こういう状況の中で,設置形態検討特別委員会名で出しても,世の
中は,国大協の意見として受け取る。総会を経て,そこでまとまらなければま
とまらないということも含めて世の中に発表すればよい。

〇 世の中では,国大協ではまとまらない,具体的な案を出す能力はない,そ
ういう見方をしている。国大協には,当事者能力がないのだから,別のところ
できちんとしたものを作らせるのだという考え方が圧倒的に強い。

〇 この報告書案は問題点も残っているが,いろいろ検討され良く出来ており,
戦略的には有効だろうと思う。
 しかし,民営化の問題に対して,国大協は,どういう姿勢を持つのか。今の
総理大臣だと,民営化というところまで行くかもしれない。今の基本的な考え
方や枠組みの話は,飛んでしまう。それに,どう対処していくのか,国大協の
考え方がいるのではないか。

〇 国大協が,この問題に関して,相当な期間を掛けて議論してきたことは確
かであり,何らかの発信をしないと,国大協は,当事者能力がないと世間は受
け取る。この報告書案の取り扱いは,先程から出ている案が,一番良い。

〇 設置形態検討特別委員会の委員の方々が,大変苦労されてまとめられた報
告書を,設置形態検討特別委員会名でも良いから,発信することが,これから
の国大協あるいは国立大学全体にとって,大変大事なことだと認識している。

〇 この報告書作りに携わった大学は,背景が良く判るが,それ以外の大学は,
一方的に受けるだけである。情報量の差があるから,総会では,きちんとした
議論が不可欠である。

〇 総理大臣が強く主張している国立大学の民営化,地方移管について,国大
協としてしっかりした考え方を持たないといけない。記者会見で民営化につい
て聞かれると推測されるが,民営化は良くないということを説得性を持って,
お答えいただきたいということが非常に難しいが,全力を尽くしていただくし
かない。

〇 この段階になると,いろんな形で難しい問題があるが,具体的な状況にお
ける具体的な判断を,いかに適切に伝えるか,そこに力点がどうしても移って
いかざるを得ないということが実情である。今日,会長が,記者会見されるが,
設置形態検討特別委員会委員長としてであることを踏まえて,今の論点につい
て,委員長の判断で発言していただくということ以外には考えられない。

〇 理解に差があるのは当然であり,理解して貰うという努力は容易ではない
が必要である。設置形態検討特別委員会は,これで解散するわけでないので,
今後,そういう努力を重ねていくために,会長として,上手に舵を取ってもら
いたい。そして,記者会見においては,設置形態検討特別委員会委員長として,
はっきり所信を訴えていただきたい。民営化については,浮き足立って取り上
げることは非常に危険である。この報告書案を読めば,とても民営化は考えら
れないということが自明である。民営化について記者会見で問われれば,その
対応については,執行部に一任したい。

〇 記者会見の席で,会長から,民営化については反対であるという声明を出
してもらいたい。
 会長から,報告書案(資料10,11)の取り扱いについては,設置形態検討特
別委員会の報告として,総会に提出したい旨述べられ,了承された。
                                        ------------------------------

[69-1-3-4] 国立大学協会第108回総会 2001.6.12-13 
第1日(2001.6.12)
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/txt_soukai/h13_6_12.txt
次のような意見交換が行われた。

○ 九州地区学長会議(5.24)で国立大学法人化についての「基本的考え方」
と「枠組」について議論し,その結果取りまとめた意見並びに要望を会長及び
設置特委委員長宛提出した。「基本的考え方」については,昨年6月開催の第
106回総会で合意された原則が貫かれており評価するが,「枠組」については,
「基本的考え方」に示された方向とは大きく乖離している。特に,「基本的考
え方」にある自主,自律の尊重ということと,「枠組」に示された,中期目標
の指示,中期計画の認可,教育研究の評価,運営費交付金の算定・交付という
一連の仕組みによる自主,自律の束縛との乖離が問題である。「枠組」につい
ての再検討を強く要望する。

○ 同じ趣旨から,「枠組」についての疑問と提案を他の学長の賛同を得て文
書にし,総会に配付をお願いしたので,朗読の上コメントしたい。(朗読のう
え,「枠組」が基本的な点で独立行政法人通則法と変わらない内容になってい
ること。特に,主務大臣による目標の指示,計画の認可ということとは大学の
自主性・自律性と相反し疑義があること,国立大学の種別化がわが国の高等教
育政策の基本方針になるのであれば,国立大学の種別に相応しい設置形態を正
面から検討していくべきである旨意見があった。)

○ 「基本的考え方」については了解するが,「基本的考え方」と制度設計に
示された「枠組」との間に整合性がとれてないと思う。「枠組」の再検討を希
望する立場から,他の学長の賛同を得て設置特委委員長宛提出するとともに総
会に配付をお願いした。(配付資料にもとづき疑問点等について説明があった。)

○ 6月1日に理事会が終了した時点で設置特委委員長として記者会見し考え
方の方向を発表している。この総会は設置特委の「報告書」をどう扱うかが問
題であり,個々の項目について修正するかどうかを議論する場ではないと理解
している。

○ 設置特委の報告を統轄的にご了承いただくことを期待する。総会でこれが
了承されないと,外部からみた場合,国大協は意思決定能力がないと見做され
ないかを恐れる。

○ 総会で一致了承を求めようとすると,エンドレスの議論になるおそれがあ
る。設置特委の報告を総会として受理したということであれば,ある一定の幅
の意見はありながら,国大協として一つの行動を示したことになるのではない
か。

○ 了承はとてもできかねる。これだけ多くの意見,注文があるのだから,
「枠組」について修正を加え,その上でもう一度議論すべきである。

○ 「基本的考え方」についてはほぼご了解がいただけるのではないか。「基
本的考え方」を認めた上でご指摘があった疑問点等については,その多くは今
後の検討に俟つところと思う。一方,「基本的考え方」と「枠組」にギャップ
があるという指摘については,解釈の違いということもあると思う。「基本的
考え方」では,何より,大学の自主性,自律性の尊重ということを主張してお
り,その考え方に沿って「枠組」はつくられている。つまり「枠組」の内容は
「基本的考え方」の精神に沿って解釈してもらいたいということで,この2つ
の文書があるのである。たとえば,「法人化の意義」では,「大学の自主性と
自律性を拡大し,個性化を進め……」と記しており,以下の項目もこの精神で
読んでいただきたい。

○ これまで,国大協として法人化について明確な意見を出せないでいるのは
社会との関係で心配だ。設置特委の報告書に示された条件が整えば国大協とし
て法人化を受け入れると解釈してよいか。今回の総会を逃せば国大協としての
意思表明をすることなく,どんどん具体的に法人化が進められる危険が強い。

○ 設置特委での検討と,国大協としての意見表明は別に扱うのがよい。「枠
組」の内容は,文部科学省・調査検討会議の議論とオーバーラップしており,
この場で細かい議論をしてもあまり生産的でない。「基本的考え方」と「枠組」
を設置特委の名で公表することを総会として了承してはどうか。

○ 「基本的考え方」と「枠組」に書かれていることは最低限実現して貰わな
いと困ることである。たとえば,「中期目標」,「中期計画」については,通
則法では主務大臣が機関の長に一方的に指示し認可を与えることになっている
が,そこは「枠組」では,大学が申請し文部科学大臣がそれを認可する形にし
ている。そのほかにも,大学の自主性,自律性の確保の観点から随所に工夫が
施されている。これが文部科学省・調査検討会議の報告にできるかぎり反映さ
れることが望ましい。また,今後の法人化の議論の展開を考えても,総会とし
て設置特委の報告書を受理することがいいと思われる。

○ 文部科学省の「大学の構造改革の方針」の2.に,「新しい国立大学法人
に早期移行」とあるが,これは国大協として議論したことはなく,文部科学省
が抜き打ち的に出してきたものであって承服しかねる。また,同時に「国立大
学の数の大幅な削減」も明記されている。これは,小泉総理が目指す“民営化”
路線への文部科学省の政策転換であり,事態が切迫していることを感じざるを
得ない。

○ 法人化の問題には,制度の問題と実質の問題がある。実質の問題は国とし
て将来国立大学をどうリードしていくか,高等教育をどうしていくかというこ
とであるが,国民的議論が十分熟してない中で,突如「国立大学の構造改革の
方針」が出された。それは早期に法人化するが,99大学を国の責任で維持して
いくことはしないという一方的宣言の形できた。これに対し,99国立大学すべ
て残らなければならないとは言わないが,国大協として異議申立てをすべきと
思う。

○ 国立大学が99いるのかどうか国大協として明確にさせる必要がある。また,
「枠組」についても,規制撤廃・緩和の方向にある中で,特に「中期目標」を
主務大臣から認可を受けるというのは抵抗感がある。そのへんもさらに検討さ
れたい。

○ 明後日の学長会議で「国立大学の構造改革の方針」等について文部科学大
臣から説明があるが,それはそれとして,明日の総会に関係官から説明を聞く
ことにしてよろしいか。

○ 「国立大学の構造改革の方針」は非常に重要な問題をはらんでいるので,
総会でぜひ,文部科学省から説明を聞きたいし,また,これに対し国大協とし
て何らかの意見表明が必要と思う。

○ 「国立大学の構造改革の方針」に国大協としてどう対応すべきか,それは
明日,文部科学省から説明を聞いた上で考えたい。それから,設置特委の「報
告書」の扱いについては,時間をかけて検討を重ね,幅のある形でまとめられ
たものであり,詰めを要する点も残されているとは思うが,この範囲であれば,
大学が自主性をもちつつ,十分教育研究をやっていけると信じている。これを
総会として了承することは難しいと思うが,設置特委の報告として了承いただ
けないか。

○ 「基本的考え方」については,反対はなく,了解できると思う。「枠組」
については,さらに検討するということにし,「中間報告」の扱いにしてはど
うか。

○ 「枠組」は,このままでは了解できない。特に,「中期目標」については,
「試案」の段階では「文部科学省と協議し,大学が決定する」となっていたが,
今回「大学が申請し,文部科学大臣が認可する」とされており,後退している。
これを元に戻す修正をしてほしい。

○ いろいろな幅の意見があるから「枠組」について議論しても容易に収斂し
ないと思う。投げかけられた意見については今後詰めていくこととして,ここ
は一先ず,設置特委の報告を承ったということにし,むしろ,記者会見で会長
が何を述べるべきかについて議論すべきではないか。

○ 設置特委から出された「報告書」を国大協として受理したという形で,外
向きに議論すべきであろう。それと同時に,引続き内部で議論を深めていただ
きたい。法人化の問題は,そこを切り分けないと対応できないのではないか。

概ね以上のような意見交換があった後,会長から,設置特委がまとめた報告書
を,総会として受け取るということでご了承をいただけるかとの発言があり,
特に意見が出なかったことから,ご了承を得たものとして扱う旨の会長のまと
めがあった。

なお,翌日予定されていた記者会見に関連して会長から,報告書については批
判的な意見も含めていろいろな意見があった旨も付け加えて,報道関係者には
話をしたい旨の発言があった。

                                        ------------------------------

第2日(2001.6.13 午後)
#(午前に第一常置委員会[69-1-3-5]で、より詳しい説明が行われた)
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/txt_soukai/h13_6_13.txt

清水文部科学省審議官「このように,文部科学省の調査検討会議あるいは国大
協の設置特委でどうすれば独立法人制度の中で国立大学の特性を生かしつつそ
の活性化にフィットする制度設計ができるかという問題意識とはまったく違う
形での議論が焦点化しつつある状況である。そういう中で,遠山大臣のイニシ
アチブで,経済財政諮問会議の骨太の方針案の中に国立大学の改革として進め
てきたこと,進めようとしている方向性をどう確立,定着させるかという問題
意識のもとにこのプランをとりまとめた。」

「独立行政法人についての行政改革会議における検討では,国の機関がもって
いる諸機能のうち,民営化,地方移管できるものはないか,そういう検討をし
た上で,残ったものを独立行政法人化するという検討の流れであった。国立大
学法人に基本的に移行する中にあって,具体的な個別大学のもつ機能を考えて,
地方移管できるもの,民営化できるものの検討は必要だし,小泉総理が国会答
弁で,法人の検討を進めると同時に,民営化すべきものは民営化する,地方移
管すべきものは地方移管すると答えられたのは当然のこととして,文部科学省
は対応している。」

「国公私トップ30を世界最高水準に育成」ということのバックグランドを伺い
たい。」「いまやどの国にあっても,国際競争力が大学セクターにおいて大き
な焦点になっていることは否定しがたい状況である。また,国立大学法人,民
営化の議論の基底を流れるのはイコール・フッティング論である。そういう中
で,教育研究における国際競争力ということを,国公私トータルとしての枠組
で施策を考えていくとすれば,それは分野を通じて,国公私を問わず評価にも
とづく重点的助成,プロポーザル方式を考えていくことになる。そういうもの
をシンボリックにいえば,「トップ30」という言い方になるということである。」

                                        ------------------------------

[69-1-3-5] 第一常置委員会 2001.6.13
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/txt_1/h13_6_13.txt

 (1) 「遠山プラン」について
 文部科学省から出席の清水審議官から,次のとおり説明があった。

「・・・・
こうした背景には,財界レベル,省庁レベル及び政治レベルの3つの流れがあ
る。財界レベルでは,産業新生会議や規制改革委員会等において,むしろ国立
大学の在り方というテーマを更に広げて,国公私を含めて,大学の設置・運営
に関して営利企業の参入を認めようという流れがある。さらに,総合科学技術
会議においては,科学技術政策において国立大学の在り方は大きな一つのフォー
カスであるとの問題意識のもとに産学官連携の観点から検討する動きが始まっ
ており,既に産学官連携のプロジェクトを総合科学技術会議の中に設置するこ
とを決め,産学官連携に焦点を当て,大学改革のキーとしての国立大学の法人
化問題を議論していこうとしている。省庁レベルでは,副大臣レベルでの会合
を設け,人材の源泉である大学の産学官連携に向けた改革等々を取りあげ,主
に産学官連携の在り方にフォーカスを当てながら,産学連携に向けた大学の在
り方について検討している。この検討の流れの中で,法人化の問題,職員の身
分の問題というものを取り上げようということで,まとめからは削除されてい
るが,産学連携ということにフォーカスを絞っている。政治レベル,自民党関
係では,経済産業部会のベンチャー育成小委員会では,ベンチャー育成の観点
から国立大学法人について非公務員型を原則とすべしという提言を取りまとめ
ている。また,民主党では,国立大学の統廃合,組織や給与任用等の人事面に
おける自由度を増すことにより創意工夫できる環境,様々な形での大学間の競
争関係をつくることを前提として国立大学の地方移管或いは民営化等について
中間報告を取りまとめている。
  こうした状況下での,先日の総理の答弁となったわけであるが,私どもは総
理の答弁を,これまでの流れ,民営化すべきものは民営化し,地方移管すべき
ものは地方移管し,国として行うべきものについて法人化という流れにおいて
は,ある意味で当然のことと受け止めている。当面は,今進めようとしている
改革の方向について基本的に理解いただくことが最重点であるが,むしろ単に
独立行政法人化問題にとどまらず,国立大学をどのような形で構造改革してい
くかというコンテクストの中で,さらには経済活性化と大学ということに関し
て,経済界或いはその他の関係者から発信される大学改革への課題について,
大学或いは文部科学省の側から経済活性化のために大学は何が出来るか,或い
は逆にそれを通じて産業界等に注文を付けていくというスタンスに立たない限
り,現在の大学をめぐる様々な状況,とりわけ国立大学の独立行政法人化或い
は民営化をめぐる問題についても,ひとつの切り札にはならないだろうという
ことで,急遽とりまとめられたものが,この遠山プランである。」
                                        ------------------------------

[69-1-3-6] 理事会将来構想WG第5回2001.8.31
http://www.kokudaikyo.gr.jp/katsudo/txt_riji/h13_8_30.txt

「(その後の情報)文部科学省は、9月6日の連絡調整委員会の後、省内等の
調整を経て、「中間報告」を9月下旬には公表し、広くパブリックコメントを
求める予定であると聞いている。本WGは、出来るだけスピードを上げてやっ
ているが、9月6日までに各項目に対するコメントを提出することは不可能で
ある。あと3回(9月12日、10月1日、10月25日)でまとめようとし
ているので、9月6日までには間に合わない。

そのため、各界からのパブリックコメントとは別に、国大協・理事会の意見を
10月中に提出するので、特別に重要視してもらいたい旨申し入れて、(口答
ではあるが)了解を取っている。

その間に、臨時理事会(9月27日)・理事会(11月1日)が開催されるこ
と、設置形態検討特別委員会(9月19日)との関係も当然考慮したいことを
申し添えたい。」
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━


[69-2] ◆地方国立大学長28名「《国立大学地域交流ネットワーク》構築の提言―
地方国立大学と地域社会の活性化のために―」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/01092028teigen.html

「・・・

ーー提言の二つの柱ーー

1.地方国立大学と地域社会の間に全面的で根本的な交流関係を築き、両者の相
互的・相乗的な活性化をはかる。

(1)各大学は、地域社会の現場に赴き、あらゆる面で《地域社会との問題の共
有および共同解決》をはかり、地域社会の活性化に寄与する。

(2)各大学は、地域社会との問題の共有および共同解決を通して、地域現場が
かかえる現実的問題の多様性・複雑性に深く学び、大学の活性化をはかる。

2.この地方国立大学と地域社会との間の相互的相乗的な活性化の関係を全国的
規模で結合する《国立大学地域交流ネットワーク》を構築し、日本の地域社会
全体を支える。このネットワークの各地域における拠点として、各大学に《地
域交流センター》を設置する。

(1)一地域一大学の活性化を、ネットワークを通して広く全国に伝え、他の地
域や大学の活性化を促す。これにより、全国的規模での相互的相乗的な活性化
が可能となる。

(2)一大学一地域で解決不可能な問題は、サテライト方式により大学間でネッ
トワークを通じて互いに情報を交換し合い、その都度の問題状況に応じて相互
補完的に役割を分担し合いながら、(傍点開始)ネットワーク全体で共同解決す
る(傍点終了)。これにより、問題解決の水準とスピードと効率性は全国的規模
で飛躍的に高まる。

・・・・

ーーネットワーク成立の条件ーー

このネットワーク成立のための条件は、次の2点である。

(1)基本的に協力原理に基づくこと、

(2)日本の地域社会全体の問題をネットワーク全体で共同解決するものとして、
国立大学のネットワーク化であるべきこと。

以上の意味において、このネットワークは、全国的に張り巡された《知的協力
ネットワーク》として、また《知的セーフティネット》として、日本の地域社
会全体を支え活性化することができる。それは真の意味での「国力」の基礎と
なるであろう。」
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[69-3] 白川博士の激怒:総合科学技術会議 第六回評価専門調査会 2001.8.31
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/831-cstp-eval.html

【白川議員】
「評価実施主体、研究者及び評価者の責務」のところにある、研究者のとこ
ろ(*1)について述べたい。ここで述べていることは、あまりにも当たり前のことで
あり、研究者にとってやや失礼である。また何も新しいことではないので、そ
のようなことを指針に書く必要があるのか。また、大綱的指針である割には表
現に品位がない。たとえこの文章が必要だとしても、表現を工夫した方がよい
のでないか。」
(*1)#(以下は修正されたものか?)
「「国の研究開発評価に関する大綱的指針(案)
http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/haihu07/siryo2.pdf
(2 )研究者の責務
研究者は、研究活動の一環として評価の重要性を十分に認識し、自発的かつ積
極的に評価に協力する。また研究者は研究開発の評価において専門的見地から
の評価が重要な役割を果たすものであることを十分に認識し、相互の評価を平
常から厳しく率直に行うとともに、評価活動に積極的に協力する。」

【江崎委員】
大型プロジェクトはトップダウン型の研究だが、ノーベル賞を目指すような独
創的研究は、先ほど指摘のあった流動性のある研究を含めてボトムアップであ
る。IBM の高温超伝導はその例である。また白川先生の業績もそうではないか。
ボトムアップの研究については研究者に任せるようなところが大きいので、こ
のような研究への評価の配慮を十分盛り込む必要がある。

                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[69-4] 第20回経済財政諮問会議、改革工程表

[69-4-1] 第20回経済財政諮問会議(平成13年9月21日)議事録
http://www5.cao.go.jp/shimon/2001/0921/0921item1.pdf
                                        ------------------------------

[69-4-1-1] 国交相「大学を核としたまちづくり事業の推進」
(扇臨時議員)
(「大学を核としたまちづくり事業の推進」について)
これは国土交通省が文部科学省との壁を乗り越えておこなうもので、大学の移
転に伴い、移転先のまちづくりを国土交通省が担うものである。普通であれば
大学を設置する場合、大学整備の予算で非公共事業の施設整備費扱いをされる
が、国土交通省が公共事業でまちづくりを大学整備と一体に行おうというもの
で、費用の削減となるばかりか、留学生の住宅を造成したり、大学のキャンパ
スと公園を共用することなどを通じて国立大学と地方公共団体とが連携できる
という効果が期待できる。しかし、地方財政再建特別措置法24 条では地方公
共団体が国立大学に何らかの援助をしてはならないとなっており、問題がない
わけではないが、構造改革の壁を破るという意味で、私は是非実行したいと考
えている。
                                        ------------------------------

[69-4-1-2] 経産相:景気の状況
・・・
(平沼議員)景気は、極めて厳しい状況。足腰は極めて弱く、とりわけ生産に
関しては、第1 次オイルショック時に匹敵するほどの急速な落ち込みがあっ
て、デフレも進展している。4 −6 月期の実質GDP 成長率はマイナスと
なることは必至で、このままでは13 年度のゼロ成長すらおぼつかない状況と
認識している。

 このように将来に対する期待が持てない結果、企業によるリストラ計画が相
次いでおり、負のスパイラルが懸念される。例えば、オイルショック後の生産
減少幅は−15.3 %であったが、今回これが-14.4となっており、ほぼ同じ水
準だ。このまま実体経済が推移すると、更なる不良債権の発生の恐れがあり、
構造改革そのものが進まなくなる懸念すらある。世界同時減速のおそれもある
中で、ここ2 、3 年の経済運営がまさに正念場。従来型の対策を講じても効
果は限定的で、セーフティネットの充実を図るとともに、雇用の受け皿となる
新たな雇用需要、投資市場への創出に向けて、あらゆる政策手段を動員をして
いかなければならない。

  小泉総理の言われる構造改革は、もちろん第一義的にやらなければならない。
日本経済はポテンシャリティがあるので、新しい発想に基づくある面の景気刺
激策も行わなければならないのではないか。
・・・
                                        ------------------------------

[69-4-1-3] 国民を枕詞で安心させよ。
(牛尾議員)国民があまり驚かないように、総理が「構造改革を行っても必ず
見通があるから大丈夫」とか「雇用もセーフティネットをつくる」というよう
なことをきちっと言えばよい。ここにいる閣僚の方々にも同様の姿勢でいても
らいたい。

(牛尾議員) 大変だ大変だというのはやめた方がいい。必要以上に不安をあ
おることになる。こういうときこそ、毅然とした態度で臨み、各大臣にも役割
分担をお願いしたい。

(奥田議員)枕詞で国民を安心させることが一番大事だ。

(牛尾議員)とにかく閣議の前によく相談して、各大臣の役割分担を決めて発
表して欲しい。いまは、各大臣がぶっつけ本番で言っている感じだ。これから
も毎週大事ですから、気を引き締めてやって欲しい。

(竹中議員) 昨日コロンビア大学のジェラルド・カーティス教授が総理を訪
れ、総理の魅力は、大胆さとその先にあるオプティミズムであるとおっしゃっ
た、そういう総理の魅力と、それと塩川大臣、我々の役割をうまく散りばめて
難局を乗り切りたい。
                                        ------------------------------

[69-4-2] 改革工程表
http://www5.cao.go.jp/shimon/2001/0921/0921item3.pdf
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2584.html

目次 
5 .人材育成・教育 18P〜

【次期通常国会】国公私立大を通じ世界最高水準の「トップ30 」を育成す
るため、第三者評価による競争原理を導入し、重点投資。国立大学を早期に法
人化するため、非公務員型の選択や経営責任の明確化、民間的経営手法の導入
など13年度中に国立大学改革の方向性を定める。

----------------------------------------------------------------------
[69-4-2-1] 改革工程表のポイント

4 .知的資産倍増プログラム
@人材活性化

○ 初等中等教育の一層の活性化を図るなど、教育の構造改革の柱である「2
1 世紀教育新生プラン」を、「学校いきいきプラン」の促進すること等によ
り、一層推進する。(14 年度予算で措置)

○ 大学、大学院等における高度な社会人向け教育訓練コースの指定拡大を図
るなど、教育訓練給付制度の重点的・機動的な講座指定により、その効果的な
活用の促進を図る。(9 月末までに措置)

○ 学生、社会人に対して、奨学金の充実や教育を受ける個人の自助努力を支
援する施策について検討する。 (14 年度予算で措置)

A科学技術創造立国

○ 総合科学技術会議は、@ライフサイエンス、A情報通信、B環境、Cナノ
テクノロジー・材料の4 分野を中心に研究開発資源が重点配分されるよう、必
要に応じて予算編成過程で財政当局と連携を図る。また、「科学技術の振興
(ライフサイエンス等の4 分野への重点化等)」に関しては、各省庁の施策に
ついて同会議が調整を行い、各省庁が要求する。プロジェクト選定の際、外部
評価を活用し、また、その評価を公開することにより、選定結果の妥当性を高
める。 (14 年度予算で措置)

○ 大学発ベンチャーの国立大学施設使用や国立大学教官の非役員兼業に関す
る基準の明確化を含めた規制緩和について、平成13 年度中に結論を得る。
(14 年3 月までに措置)

○ 産学官連携の推進に関する制度改革・規制緩和等を含む具体的方策を取り
まとめる。また、国立大学等の法人化に際し、改革の方向性を打ち出すととも
に、私立大学での研究開発の促進のため、私立大学への民間資金の導入を促進
する観点から、民間からの委託研究費に対する減税措置等について検討する。
さらに、全国の大学等と企業トップが一同に会する産学官連携サミットを開催
する。 (14 年3 月までに措置)

BIT 国家の実現

○ 学校、図書館等の超高速インターネット接続の推進や関連するIT 環境の
整備等を通じ、学校等の情報化を推進する。 (14 年3 月までに措置)

○ 世界最先端のIT 国家の姿を国民のみならず世界に広く提示するため、最
先端技術の開発、実証実験等を実施する。 (平成14 年度中に措置)

C国際競争力のある大学形成

○ 国立大学を早期に法人化するため、非公務員型の選択や経営責任の明確化、
民間的経営手法の導入など平成13 年度中に国立大学改革の方向性を定める。
(14 年3 月までに措置)

○ 国公私立大学を通じ、国際競争力のある世界最高水準の「トップ30 」を
育成するため、第三者評価による競争原理を導入し、重点投資を推進する。ま
た、高度な教育、先端的・先導的な学術研究を行う意欲と可能性に富んだ私立
大学を重点的に支援する。(14 年度予算で措置)
----------------------------------------------------------------------
[69-4-2-2](工程表)人材育成・教育 p23

経済社会が大きく変貌し、I T を始め、技術革新も急速な進展を見せる中、
労働力には、柔軟で質の高い技術・能力が備わっている必要がある。このため、
教育全般について、そのあり方を検討する。特に国立大学は、早期に法人化し
て自主性を高めるとともに、民営化を含め民間的発想の経営手法を導入し、国
際競争力のある大学を目指す。大学教育に対する公的支援については、機関補
助に世界最高水準の大学を作るための競争という観点を反映させる。さらに、
個人支援を重視する方向で、公的支援全体を見直す中で、教育を受ける意欲と
能力のある人が確実にこれを受けられるよう、奨学金の充実や教育を受ける個
人の自助努力を支援する施策を検討する。また、大学、大学院等の積極的な活
用により、世界にも通用する高度な人材育成のための環境整備を図る。

I. 9月末までに措置
○国立大学を早期に法人化し、競争的な環境の下で民営化を含め民間的な経営
手法を導入すべく、具体的な制度設計について、「国立大学等の独立行政法人
化に関する調査検討会議」の中間報告を9 月中に行う。(文部科学省)

○大学、大学院等における高度な社会人向け教育訓練コースの指定拡大を図る
など、教育訓練給付制度の重点的・機動的な講座指定により、その効果的な活
用の促進を図る。(文部科学省・厚生労働省)

II. 臨時国会で措置

○学校教育の一層の活性化を目指し「学校いきいきプラン」(3 年間で5万
人を目標に社会人を学校に配置)を促進する。(非常勤職員型及びボランティ
ア型の配置)(文部科学省)

○放課後児童の受入体制の整備(文部科学省)

○大学等で教育を受ける意欲と能力がある者に対する奨学金を拡充する。(文
部科学省)

○雇用のミスマッチ解消を図るため、大学等の教育訓練資源を活用し、効果的
な職業能力開発を強化する。(文部科学省・厚生労働省)

III 10月以降に措置(II 除く)
III-1. 14 年3 月までに措置
III-1-@通常国会で措置
III-1-@-(A)14 年度予算
○国立大学の再編・統合に着手する。(文部科学省)
○国公私立大学を通じ、国際競争力のある世界最高水準の「トップ30 」を
育成するため、第三者評価による競争原理を導入し、重点投資を推進する。ま
た、高度な教育、先端的・先導的な学術研究を行う意欲と可能性に富んだ私立
大学を重点的に支援する。(文部科学省)
○初等中等教育の一層の活性化を図るなど、教育の構造改革の柱である21 世
紀教育新生プラン」を、「学校いきいきプラン」の促進等により、一層推進す
る。(文部科学省)
○学生、社会人に対して、奨学金の充実や教育を受ける個人の自助努力を支援
する施策について検討する。(文部科学省・厚生労働省)
○教育を受ける個人の自助努力を支援するため、専修学校社会人キャリアアッ
プ教育推進事業、大学等の地域社会人キャリアアップ推進事業など個人の主体
的な能力開発を支援する。また、ビジネススクール等の実践的な専門大学院の
整備の推進を図る。(文部科学省)
○大学・大学院、NPO 等を活用した高度な人材育成を図るための推進体制
の整備等を推進する。(厚生労働省・文部科学省)
○司法制度改革審議会の意見書を踏まえ、平成16 年4 月の学生受入を目指し
た法科大学院の整備に着手する。(文部科学省)

III-1-@-(B)法改正
○国立大学の再編・統合等を図るため国立学校設置法の一部改正法案を提出す
る。(文部科学省)

III-1-Aその他で措置
○大学院の1年制の専門大学院の制度化、通信制博士課程の制度化について、
中央教育審議会大学分科会において審議し、答申を得て、実施する。また、短
大の社会人の再教育等に柔軟に応える機能(いわゆるコミュニティ・カレッジ)
を強化(地域総合科学科の設置の推奨等)する。(文部科学省)

○国立大学を早期に法人化するため、非公務員型の選択や経営責任の明確化、
民間的経営手法の導入など平成13 年度中に国立大学改革の方向性を定める。
(文部科学省)

○国立大学の独立法人化を検討する際には、寄附金、受託研究等の扱いが公私
の大学で相互に競争的になるようにすることを検討する。(文部科学省・総務
省・財務省)

○大学の自主性を高めるため、学科新設・改廃等の認可制見直しを含む大学設
置認可の望ましいあり方について、中央教育審議会で結論を得る。(文部科学
省)

III-2 14年度中に措置

○国立大学について、国際競争力のある大学を目指し、再編・統合計画を策定
する。(文部科学省)

○国際競争力ある大学育成のため、任期付教員の処遇改善に関して、早ければ
平成14 年通常国会に「大学の教員等の任期に関する法律」の一部改正法案を
提出する。(文部科学省)

III-3 15年度以降
○大学評価・学位授与機構による評価を平成15年度から本格実施する。(文
部科学省)

                                        ------------------------------

[69-4-2-3] 規制改革(教育)p45 

大学教育においては、競争的な環境の整備を通じて教育研究活動の活性化を図
る。初等中等教育においては、児童・生徒の能力・適性に応じた教育機会を提
供するため、学校の透明性を高め、多様化を進める。

I.  9 月末まで措置
○大学、大学院等における社会人の再教育・再訓練の推進方策に係る関係
府省間での検討(文部科学省・厚生労働省)

○教育訓練給付制度について大学、大学院等の講座指定の拡大
(厚生労働省)

II 臨時国会で措置

○学校への補助教員を含む公的部門の緊急かつ臨時的な雇用の確保(文部科学
省・厚生労働省)

○大学等の教育訓練資源を活用した中高年ホワイトカラー離職者等への効果的
な職業能力開発の強化(文部科学省・厚生労働省)

III 10 月以降に措置(II を除く)
III-(1)14 年3 月までに措置
III-(1)-@通常国会で措置
III-(1)-@(A)14 年度予算
#(以下は特に断らない限り文部科学省が担当)
○競争的資金の拡充による大学における教育研究活動の活性化

○競争的資金による研究者の雇用と博士課程学生の給与型支援の拡充

○大学等による社会人キャリアアップ教育の拡充

○特別免許状制度や特別非常勤講師制度の一層の活用促進などによる、学校教
育の場における社会人の活用の飛躍的な拡大

○新しいタイプの学校運営の在り方に関する実践研究

○大学等におけるe‐ Learning の推進文部科学省

○地域の大学等を中心とした産学官連携事業による地域経済支援、新事業・ベ
ンチャー企業創出(文部科学省・経済産業省)

○企業経験者の積極的採用や教員が企業等学校外において研修を受ける機会の
充実

○スクールカウンセラーの配置の推進

○教員を評価し処遇するシステムの確立に向けた調査研究や、学校の評価シス
テムの確立と全校実施、学校評価の外部公開に向けた調査研究

○初等中等教育における教育内容の充実

○国際的に開かれた教育を推進するための留学生の支援の充実や宿舎等受入れ
体制の整備等の実施


III-(1)-Aその他で措置

○大学教育における公的支援のあり方についての検討

○大学生の学習に対する動機付けの促進(継続的に推進)

○大学教員の評価、結果公表、評価結果に応じた処遇

○短大等が社会人の再教育・再訓練に柔軟に応える機能(いわゆるコミュニティ
カレッジ)の強化、一年制専門大学院の制度化、大学院の通信制博士課程の制
度化

○大学教員の任期制の推進(能力、実績に応じた給与等の処遇)

○学科の設置及び学部・学科の改廃を一層弾力化するよう、第三者機関による
継続的な評価の在り方の検討や大学設置基準等の見直し

○大学新増設等における工業(場)等制限制度の見直しの検討(国土交通省)

○大学運営における第三者評価の実施(継続的に推進)

○国立大学の法人化にともなう、外部からの専門家参加、情報公開等による透
明性の確保や、事務部門のアウトソーシング等運営の自由度の向上の確保の検
討、結論

○コミュニティ・スクールの可能性や課題についての検討

○私立学校の設置促進のための施策の検討(設置基準、「準則主義」、私学審
議会)

○公立学校システムに関する教員人事権のあり方を含めた検討
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[69-5] ◆豊島耕一「全大教教研集会参加報告2001年 9月 14日〜16日」
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/kagoshima.html

「・・・

 梶井氏は,調査検討会議が設置されるとき,「どうしても大学に適合しない
ということになれば,その時引き返せばいい」と文部科学省の担当官に言われ
たので,その条件ならということで参加したという経緯を紹介した.そこで私
が,今こそ引き返すべきその時ではないのか,と質問したが,答えはノーであっ
た.筆者は昨年の札幌教研で,国大協が調査検討会議に入ることは独法化を認
めることであるとしてこれを批判したが(注3),残念ながらこの通りの結果に
なったようである.しかし過ちを改めるのに遅すぎると言うことはないはずだ.

・・・

 私も,先に述べた基本的な質問に加えて,中間報告案において大学の管理運
営組織のメンバーとして繰り返し使われる「有識者」という言葉の定義を尋ね
たが,「分かりません」との返事であった.この言葉はこれに限らず政府系の
文書でしばしば見られるが,あいまいな言葉で国民を「有識者」と「無識者」
に二分するもので,反民主主義的,身分制的な意識に基づくものと思われる.
このような言葉を使う人は自分のことを「有識者」だと思っているのだろうか.

・・・

 私も5分ほどフロアから次のような発言をした.言いたかったことなど多少
尾ひれをつけるのをご了解願いたい.

 「法人化不可避論」を口にすることで自らの「深刻さの認識」を演出しよう
という傾向はいただけない.議論で明らかになったようにこれは風評に過ぎず,
これをみだりに口にすることは反対運動に「風評被害」をもたらすものである
(注4).そもそも,国会に掛かるべき法案の姿形さえない段階ですでにものご
とが決まったかのように言うのは,国会無視,国民無視といわれても仕方がな
いだろう.

 また,このようないわば「決定論的」なものの見方は,社会をあまりにも単
純化し過ぎていないだろうか.多体問題であり複雑系であるこの社会を,あた
かも線形な振る舞いをする単純なシステムと見なしているように思える.しか
も自分自身がそれの一構成要素であることも度外視されているようだ.あるい
は,文部科学省やその調査検討会議の意向を決定的なものと見なす背景には,
国会に出す前に「当事者」で大筋を決めておかなければならないと考える,我々
の中の「談合精神」があるのではないかと思われる.国大協が調査検討会議へ
の参加を決めたのもその精神からかも知れない.

 独法化問題とはどのような性質の問題かを認識することが重要だ.これは憲
法23条の「学問の自由」と教育基本法10条の「教育は不当な支配を受けない」
という,この社会の根本的な価値に関わるものである.したがって「条件闘争」
などという性質のものではなく,たとえ情勢がどんなに不利になろうとも,た
とえ一人だけになってもこれに反対し続けなければならないのである.

 このような事を言うとすぐ「玉砕ではないか」という人が必ずいるが,比喩
は正しく使わなければならない(注5).反対し続けてももちろん殺されはしな
いし,クビになることもない.国鉄労働者の闘いとは比較にならない贅沢な闘
いである.その有利さを最大限に生かさなければバチが当たるというものだ.
また,個々の大学が文部科学省からイジメを受けるという事はあり得るが,そ
の事ばかり考えて我が国の大学の全体としての命運,すなわち「自由なアカデ
ミズム」の「生き残り」の事はあまり気に掛けない,あるいは犠牲にしてもや
むを得ない,という態度はあまりにもバランスを欠いていると思われる.

必要なのは大学人のエンパワーメント

 最後に,これは想像だが,組合が”掛け値なし”の独法化反対を掲げようと
しないのは,ひょっとすると「結果責任」という言葉に囚われているのではな
いかと思われる.つまり「敗北」するような方針を出すわけにはいかない,と
考えているのではないか.しかしそれは闘わずしてあらかじめ敗北してしまう
ことを意味するだけであり,そのほうがむしろ罪は重いだろう.仮に敗北する
としても,原則的態度を貫いたかどうかは独法化の内容にも最も大きく影響す
るだろうし,また何よりもその後の運動の基盤を決定的に左右するだろう.

 最も必要なのは「不可避論」で情勢通を装うことではなく,阻止運動の構築
と発展の戦略とそのためのあらゆる手段について思いを巡らし,それを実践す
ることであろう.そしてそれらを交流しあって仲間と自分自身をエンパワー
(注6)することである.

・・・・」

(注3) 札幌教研の私のレジメと発言は次をご覧下さい.
 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/sapporoA1.html
 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/sapporo-oral.html

(注4) 「言葉狩り」と誤解されないように願いたい.

(注5) このような文脈で「玉砕」という言葉がしばしば使われるようだが,こ
れは言語の分野での戦争の後遺症ではないかと思われる.これには,最後まで
反対し続けることが悪いことでもあるかのようなニュアンスが込められている.
近年「腰抜け」が量産されているのもこれで説明できるかも知れない.

(注6) ロングマン英英辞典から
empower / verb [transitive]
1 to give someone more control over their own life or situation: The
aim of the course is to empower women.
2 省略 

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つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)へ
のリンクと抜粋を紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者から
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