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Weekly Reports  No.59  2001.7.4 Ver 1.001

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-59.html 総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-0]内容紹介  [59-0-1]国大協理事会2001.7.5  [59-0-2]文部科学省中間報告原案2001.6.27  [59-0-3]文部官僚の出張講演について  [59-0-4]文部科学委員会 2001.6.6 「目利き」と「自覚」発言  [59-0-5]産学連携推進委員会議事録 2001.5.15 を読んで  [59-0-6]教育改革関連6法成立 2001.6.29 [59-0-7] 発行者からのお願い ---------------------------------------------------------------------- [59-1]コラム:大学を考える  [59-1-1]岡本 洋三「文部科学省の「大学の構造改革の方針」について」 [59-2]◆衆議院文部科学委員会2001.6.6斎藤議員質疑より [59-3]行政改革推進事務局ホームページ  [59-3-1]◆文部科学省ヒアリング 2001.4.26  [59-3-2]石原伸晃行政改革担当大臣記者会見概要 2001.6.22 [59-4]文部科学省  [59-4-1]◆科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会  [59-4-2]国立学校特別会計の財務諸表の試算・作成について(文部科学省HP)  [59-4-3]科研費間接経費の主な使途の例  [59-4-4]「大学発のベンチャーで国立大にスカウト常駐へ」 [59-4-5] 教育改革関連6法の成立を受けての文部科学大臣談話 2001.6.29 [59-5]◆文部科学省の出張講演  [59-5-1]2001.6.27 静岡:徳永 保 文部科学省大臣官房総括会計官  [59-5-2]2001.7.14 奈良:杉野 剛 文部科学省高等教育局大学課大学推進室長  [59-6]調査検討会議  [59-6-1]国立大学等独立行政法人科調査検討会議事務局案報道(首都圏ネットHP)  [59-6-2]◆国立大学等独立行政法人化調査検討会議中間報告事務局原案 [59-7]長尾発言問題  [59-7-1]◆国立大学協会・記者会見要旨(6月13日)  [59-7-2]京都大学創立104周年記念式典式辞(2001.6.18)における報告の誤り  [59-7-3]長尾発言問題 [59-8]国大協総会関係  [59-8-1]京大職組総長交渉(2001.6.29)  [59-8-2]千葉大学HP[学長メッセージ 大学改革に関する所感]  [59-8-3]全大教「国立大学協会第108回総会等をふまえた要望書」2001.6.27  [59-8-4]阪大教職組から国大協会長へ「臨時総会開催要求書」 [59-9]大学の動き  [59-9-1]「窓」―学長選挙(朝日新聞)九大学長選挙の改正  [59-9-2]宮崎大学「独法化反対」実行委員会声明2001.7.2  [59-9-3]「独法化の新しい流れと島大の行方」2001.6.22  [59-9-4]◆千葉大学情報分析センター「今こそ全大学の横断的連帯を」 [59-10]都立大学の動き  [59-10-1]東京都の四大学統合を糾弾する公開質問状(Yahoo! JAPAN 掲示板)  [59-10-2]都立4大学統合 外部意見取り入れへ諮問会議発足(NHK)2001. 7.3 [59-11]産業技術総合研究所 研究者憲章[reform 03578] [59-12]文献・サイト等の紹介  [59-12-1]◆広渡清吾「大学と司法改革−−法科大学院の文脈」  [59-12-2]五味健作「国立大学改革論議を正すーー正しい軌道の提示」  [59-12-3]「デミング博士が日本に教えたこと」アシスト 2001年5月1日 No.91  [59-12-4]書評より   [59-12-4-1]「モーラル・エコノミー 東南アジアの農民叛乱と生存維持」   [59-12-4-2]長谷川 幸洋著「 経済危機の読み方 日米「破局のシナリオ」」 [59-13]◆経団連の提言「科学技術戦略の変革に向けて」(2001.6.11) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-0]内容紹介 ---------------------------------------------------------------------- [59-0-1]国大協理事会2001.7.5 長尾氏の「法人化案了承」発言に関連する混乱をこれ以上放置することは許さ れない。「了承」について公的に正反対の発言がある以上、国大協として明確 にすることは社会的常識に属することだろう[59-7]。明日7月5日の国大協理 事会での健全な議論を期待したい。 ---------------------------------------------------------------------- [59-0-2]文部科学省中間報告原案2001.6.27 文部科学省の国立大学等独立行政法人化調査検討会議の事務局が中間報告原案 [59-6-2]をまとめた。中央省庁等改革推進本部の設置期限終了[59-3-2]直前の 6月27日である。国大協総会で多くの批判があった、設置形態検討特別委員 会の案の後半「国立大学法人化の枠組」[53-3]を取り込み、さらに遠山プラン が盛り込まれている。かなり詳細な「国立大学法人」の設計図が出た以上、大 学関係者、大学・部局・学科・個人等のレベルで吟味し、現場の立場から見て 明らかに問題がある点を指摘する義務である。 どの職業にも仕事を遂行するにはある種の権利は不可欠である。たとえ「既 得権益」と呼ばれようとも、良質の研究・教育の遂行に欠かせないものは守ら ならなければならない。 ---------------------------------------------------------------------- [59-0-3]文部官僚の出張講演について 文部科学省は、遠山プランを具体化する案を年末までに各大学に出すように、 指示した[59-8-2]。それは、6/14国立大学長会議の後の国立大学事務局長会議 でのことと聞く。呼応して文部省官僚の出張講演会が各地で始まった[59-5]。 講演日程を全国的に把握し、各地区で講演内容・質疑の要約を早急に公開し、 各地区では、他地区での文部科学省の発言を踏まえて質疑をすることにより、 大学全体と文部科学省との継時的対話を実現できる。講演会の日程などを知ら せて頂きたい。 ---------------------------------------------------------------------- [59-0-4]文部科学委員会 2001.6.6 「目利き」と「自覚」発言 6月6日の衆議院文部科学委員会で斎藤鉄夫委員が、大学における競争的環境 の重要性を主張したあと、大学における基礎研究の重要性に触れ、競争的環境 と創造的研究の両立は容易ではないこと、基礎研究の適切な評価法がまだない ことを述べ文科大臣に意見を求めている[59-2]。それに対し「目利き」と「大 学人の自覚」が必要だと答えている。「目利き度」評価の困難性は基礎研究の 評価の困難性をはるかに越えるものであることは言うまでもない。 ---------------------------------------------------------------------- [59-0-5]産学連携推進委員会議事録 2001.5.15 を読んで 文部科学省内の科学技術・学術審議会の技術・研究基盤部会産学官連携推進委 員会の5月15日の議事録[59-4-1]がある。「ハイテクの中小企業を助けて産 業を興していくという方向が、大学あるいは国研の技術移転の重要な点である と思う。」という発言が注目される。大学を利用しようという大企業サイドの 露骨な希望[59-13]への冷静な対処を期待したい。 また、ある委員が、米国では産学連携が活発である一方で、産学連携に批判 的な人達も居て別のスタイルの大学生活を送っている、と指摘している。独立 行政法人大学の運営上の自由度が有効となる分野や研究スタイルもあれば、運 営の自由度と表裏一体となるトップダウンな管理体制が障害となる分野や研究 スタイルもある。分野や研究スタイルに合った職場を用意することが、研究活 動の効率を高めるものではないのか。画一的に独立行政法人大学を作るのは効 率性の点でも得策ではない。 ロースクール構想はパイロット事業的に漸進的に慎重に実現していくべきだ、 という主張[59-12-1]がある、国立大学の独立行政法人化でも同様に進めるべ だ。 沖縄に独立行政法人大学のモデル校を作るという内閣府の構想に対し、文部 科学省は難色を示したという[58-4-4]。独立行政法人大学のパイロット事業と して、少なくとも全く新しい制度には不可避な予想外の問題点を知る実験とし ては機能するだろう。独立行政法人制度の予想外の欠陥により全国立大学がダ メージを受けるリスクへの対処として、最低限必要な実験とも言えるだろう。 ---------------------------------------------------------------------- [59-0-6] 教育改革関連6法成立 2001.6.29 通常国会最終日に教育改革関連6法が成立した。「問題ある者は排除すればよ い」という素朴な荒療治が、教育現場を支える信頼関係全体を目に見えないと ころで変質させるリスクを押さえながらどこまで機能するだろうか。750万 人の小学生が通い41万人の先生が教える2万4千余の小学校と、424万人 の中学生が通い26万人の先生が教える1万1千余の中学校とを日本社会全体 が息の長い関心を持って見守ることが必要だ。 ---------------------------------------------------------------------- [59-0-7] 発行者からのお願い 文部科学省の中間報告原案[59-6-2]について、評価できる点、問題ある点、対 案等のコメントや意見などをお寄せください。長さは自由です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-1]コラム:大学を考える ---------------------------------------------------------------------- [59-1-1]岡本 洋三「文部科学省の「大学の構造改革の方針」について」 2001.6.28 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/voices/01628-okamoto.html 文部科学省の「大学の構造改革の方針」は、なぜ「構造改革」が必要か、どこ がどう問題なのかという検討は見られません。最初から「国立大学の再編・統 合−スクラップ・アンド・ビルド−国立大学の数の大幅な削減を目指す」とい い、「国立大学に民間的発想の経営手法を導入」「大学役員や経営組織に外部 の専門家を登用、経営責任の明確化により機動的・戦略的に大学を運営、能力 主義・業績主義に立った新しい人事システムを導入」、「大学に専門家・民間 人が参画する第三者評価による競争原理を導入」「評価結果に応じて資金を重 点配分、国公私を通じた競争的資金を拡充」など、企業経営と同じ発想・手法 で競争させ、政府・財界の思いどうりの「大学」にしようと言うものです。大 企業の利益を計るために、大学を企業に奉仕する「研究企業」「人材育成企業」 に「構造」を変えようとする浅薄で愚劣な方針です。それは俗にいう「金の卵 を求めて鶏の腹を割く」愚行です。さしあたりは民間手法の導入と言うことで、 目先の利益を追求する「研究」が優遇され、重点配分で「特定の大学」を肥ら せることはできるでしょうが、そのような札束で人々の尻をたたき、リストラ で脅かすやり方で、研究者の独創性を育むことはできないでしょう。それがど ような結果を生みだすか、すでに実験済みのことではありませんか。これまで の政府主導の原子力開発や大企業の犯罪的な手抜き生産、公害の垂れ流し、そ の結果の大災害の事例に明らかです。学問や研究のもっとも本質的な源泉は、 人間の真理探究の願いであり、それに近づくことへの喜びであり、そのような 人間の営みが「結果的に」人類の英知を発展させてきたのです。そのような源 泉を歪め圧殺して何が生まれてくるでしょうか。これまでの学問の発達史に明 らかなように、政治や権力は、学問・教育を支配することによって、人類に多 大な災悪をもたらしました。そういう最も基本的で本質的な観点が、政府の教 育や学問研究の政策には完全に欠落しています。さらに愁うべきことは、それ が大学の中からも失われつつあることです。世の中の風潮やマスコミの論調が 「制度改革」や「国際競争」あるいは「リストラ」「経済効率」の追求を煽り 立てていることが人々の感覚を支配し思考に影響することは避けられない点は あるでしょうが、学問の研究教育を職としている人間が同じような風潮に流さ れるのでは、社会がその職に期待していることに背いていると言わざるをえな いでしょう。そういう人間が大学の多数を占めるようになったら、そういう大 学は「大学」の名に値しないものですから、それこそ「リストラ」されても当 たり前です。                           鹿児島大学名誉教授 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-2]衆議院文部科学委員会2001.6.6斎藤議員質疑より http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/kaigiroku/009615120010606016.htm http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/606-saito.html #( 斎藤:「競争的環境と創造的研究の両立の困難性・基礎研究の評価法はまだない」 遠山:「目きき」の存在、大学人・研究者の自覚、が大事 ) ○斉藤(鉄)委員 大臣の御答弁、私も同感でございます。競争的資金、また 人事の面でも競争的な部分をふやすべきだということ、その点については、私 は異論もございません。  しかし、それにプラスして、やはり基礎的な研究という場合、大学の中で自 由な発想が許される、そしてその自由な発想が濶達に議論される、そういうこ とが奨励されるような場面、雰囲気ということも、基礎学問、基礎的な研究に ついては非常に重要ではないかと思います。  このことは決して、先ほど大臣がおっしゃった競争的な環境、競争的な雰囲 気とは矛盾するものではないと思いますけれども、運用を間違えますと、往々 にしてその二つは相反するものになってしまう、そうであってはいけないわけ ですけれども。そこら辺、競争的な雰囲気、つまり、評価をきちんとやって、 その評価に対してフィードバックをするということと、それから自由な発想。 少々とっぴなことを言っても決してつまはじきにされない、かえってまた、そ ういうとっぴな発想なり、これまでの価値観に基づかない発想の方が尊敬され る、そういう雰囲気。この二つはなかなか共存は難しいと思うのですが、共存 するような大学、そういう大学を目指すことが真の大学改革なのではないか、 このように思うわけでございます。  この点については、そういう意味では今の大学には評価がないということで ございますが、ある意味では全く別な評価軸を持ってきて、基礎的な学問、こ こ五十年、百年では役に立たないかもしれないと思われるようなものについて もきちんと評価をする全く新しい評価軸を持ってくること、これも大学改革の 非常に大きな点ではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○遠山国務大臣 基礎研究の評価に当たりまして、御指摘のように、早急な成 果を求めるということは決してすぐれた研究を生み出す条件にならないと思い ます。したがいまして、長期的にすぐれた研究をはぐくむという視点をもちろ ん重視しながらも、しかし、どれが本当にすぐれている研究であるかというこ とをきちんと見分ける目ききの存在というものも大変大事でございます。  それから、新しい発想で出てきた論文であるとか、あるいはアイデアに対し て、今までなかったではないかとか、これは大先生の何々に反するというよう なことで排除するようなことは絶対にあってはいけないと思うのですね。それ はまさに、知の殿堂たるゆえんをみずから崩壊させているようなものだと思い ます。  ですから、それぞれの分野での目きき、自分もすばらしい成果を上げられた 研究者のような方が、次代を育てるという観点で、新しいものもどんどん奨励 をし、むしろ励ましてそれをやってもらうような、そういう風土でなくてはい けないと思います。  それは、もうまさに、あすからでもやろうと思ったらできるのですね。何か 物的な条件が整わなくてはとかいうことではなくて、日本の大学が、みずから の大学なり研究所なりがみずからの使命を自覚して、そしていい研究を伸ばし ていこうという姿勢になれば、それはすぐにでも取りかかれることだと思って おりますが、しかし、そういうことを可能にしていくいろいろな手だても必要 かと思います。  例えばピア・レビューですね、その分野の研究者による評価というものを重 視する。その中に若手研究者の視点も入れていく、さらには論文の量ではなく て質の観点からの評価というものを重視していくようなこととか、いろいろや るべきことはあろうかと思いますが、でも、大事なのは、やはり大学人なり研 究者の自覚であると私自身は見ております。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-3]行政改革推進事務局ホームページ http://www.gyoukaku.go.jp/index.html ---------------------------------------------------------------------- [59-3-1]文部科学省ヒアリング 2001.4.26 「サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会 」 http://www5.cao.go.jp/shimon/2001/0426koyoukakudai-s.html 1.開催日時:2001年4月26日(木)14:30〜17:30 ・・・ (文部科学省)経済社会の変化に対応した人的資本の形成についてご説明申し 上げる。 人づくりのための戦略的な未来への先行投資をいかに行うか、ということが大 切。その際、雇用の流動化、キャリアパスの多様化、求められる人材・能力が 時代とともに変化をする、といった点に留意しつつ、一人一人が生涯にわたり 必要とするときに知識、技術、能力を向上できるような仕組みを作る必要があ る。 そのため、(1)高等教育機関へのアクセスの拡大、(2)大学の設置 認可等事前規制の自由化、(3)事後チェック型行政への移行に伴う多元的な 評価システムの確立と情報公開の推進、(4)ファウンディングシステムとし ての機関補助から個人補助への転換、(5)学校の設置主体の規制緩和、につ いて問題提起がなされていると認識している。 (1)については、現在、社会人のニーズに応えようとする各大学の取り組み を支援するという基本的な枠組みの下で動いており、制度改正等も行っている 結果、各大学における取り組みは進展している。 (2)については、基本的には大学の設置認可は正規の学校制度にどう位置付 けるかということを確認する仕組みであり、その仕組みは国際的にも基本的に 共通なものである。また、それは最低基準の教育研究水準をどう担保するかと いう仕組みでもある。しかし、そうした認識に立ちつつも、大学設置基準の大 綱化や、設置認可申請手続きの弾力化・簡素化といった措置は講じてきている ところ。 (3)については、現在その取り組みを進めてきているところであるが、事後 チェックシステムについて、仮に経営能力が乏しい大学、質が低い大学が退出 する仕組みが、変更、中止勧告や命令等により強制的に退出する仕組みを意味 しているのであれば、私学の自主性という理念からも文部科学省としては強く 懸念を抱くものである。 (4)については、高等教育に対する公的支出はGDP比で見て極めて低く、 また個別の私学の収入を見ても欧米に比して非常に少なく、経営基盤が極めて 脆弱であるという問題がある。そうした中で、現状は私学助成が教育研究の安 定性の下支えや、高度化・情報化等のプロジェクトに対するバックアップとし ての役割、向上への誘導的機能を果たしているといったことを勘案すると、私 学助成を廃止するというのは問題がある。 また、育英奨学事業も充実に取り 組んできており、現在は貸与を希望する学生にはほぼ貸与することが可能にな るような仕組みになっているが、社会人との関係でいえば、経済的な問題は残っ ている。なお、別途厚生労働省においては、教育訓練給付金という形の仕組み で助成措置があるが、1年未満等制度上の制限もある。 勤労学生控除につい ては、なかなか改善の目途が立っていない状況である。 結論的には、現在の 脆弱な高等教育の仕組みにあっては、機関補助、個人補助という形でどちらか に特化するということでなく、むしろ両方あいまった形で教育研究、教育機会 の確保を図っていくというようにあるべきではないか。 (5)については、現在の設置者を公の性質を持つものに限定している学校教 育法の仕組みは、利潤の追求を目的とした経済活動を基本とする営利法人は公 共性、安定性、継続性を確保することが実態として難しいのではないかという 経験的な流れからできあがったものであり、学校の経営主体が健全な発達をし、 脆弱なファウンディングの仕組みの中で安定的かつ継続的に、教育という目的 を達成する仕組みを作っていくための1つの枠組みであるということをご理解 いただきたい。 (大田委員)本調査会の観点からは、生涯教育、社会人教育の場を広げていく 一方で、大学の側からも社会人のニーズの高まりに対応するように性格を変え ていくということが求められる。その時に、大学がカリキュラムの組み方や開 講時間等について、自らニーズを汲み取りながらそれに応えていく、そういっ たイノベーティブな精神、態度が必要である。  そのために、大学設置の認可制を届出制に緩和すべきであり、それに併せて、 事後チェックをするために私学の財務に関する情報開示を義務付けなければな らない。国立大学についても、財務状況、少なくとも内部補助や学費の算定等 については当然開示されなければならない。社会人教育の場合には特に情報開 示は不可欠である。また、税制面で優遇をしているという観点からも、一刻も 早く情報開示の義務づけを行うべきだと考えている。  また、そうした制度になったときに、当然ダメなところは退出していかなけ ればならないわけで、情報の非対称性がある場合には事前の最小限の規制と、 情報開示及び退出のルールはセットで不可欠なものである。従って、金融機関 と同じく、財務状況が悪化すれば早期是正措置、業務停止命令といった仕組み が必要であり、その時に学生が被害を受けない、つまり大学にもう一度入り直 すといっても年齢が経ってしまっているため、そこの不可逆性をどうしていく かというルールを作らなければならない。  学校の経営主体の問題については、まだ他委員会等でも議論がこなれてない ところがあるため中長期的な検討課題であると考えており、当面は設置の一段 の自由化と情報開示及び退出のルールが、特に社会人教育ということになれば 一段と必要ではないか。 (島田会長代理)規制改革委員会等の議論についても教えていただきたい。 (文部科学省)学科の設置の自由化については規制改革委員会において議論し ており、また現在中央教育審議会にそのことも含めて諮問しており、議論を行っ ていくこととしている。 (大田委員)学科ではあまり意味がない。学部の設置の自由化が必要だ。 (文部科学省)そのあたりはまたいろいろ議論させていただきたい。また、退 出のルールについては、大学の強制的な閉鎖、変更に問題があると申し上げた。 (大田委員)金融機関と同じく、一定基準を割り込んだら、当然早期是正措置 が必要である。つまり、ここから先は学生を受け入れるな、ということは当然 必要だ。 (樋口委員)社会人の再教育の取り組みが進展しているということだが、統計 を見ても、自己啓発をしている人の比率は必ずしも上がっていない。特に、大 学、大学院において再教育を受ける人数は、多少は増えているが急激には増え ていない。一方で企業の方は経費削減で能力開発から手を引くということが起 こっており、こうした再教育を阻害している要因についてどう考えるか。  例えば、入試制度の問題、魅力ある授業の欠如、あるいは本人の社会的、時 間的な制約といったものが考えられるが、そうした阻害要因について、どこを どのように直したらよいかについても併せてご教示いただきたい。  特に、教育訓練給付金について、大学で利用しているケースはあまりなく、 むしろ専門学校のほうがイニシアチブを取っているように思えるが、それはな ぜか。  最後に、学童を学校に受け入れる、学童保育の問題について、どこにどうい う形でアプローチすればよいか教えていただきたい。 (文部科学省)最後の問題については、補助金という形の学童保育は厚生労働 省である。 (島田会長代理)補助金は自治体に出しているのだろうが、場所を貸している のは学校ではないか。 (文部科学省)学校という形態も多い。 (島田会長代理)公民館もある。 (大田委員)5時とか6時とかで学童保育を打ち切るというのは、学校の使用 上の規制はあるのか。 (文部科学省)一般的にそういうことはない。それぞれ個別のケースで見てど うか、ということだ。 (樋口委員)おそらく文部科学省にとっても今後非常に重要な問題になってい くと思うので、ぜひ考えを聞かせていただきたい。 (島田会長代理)本調査会の関心は、停滞している経済を中長期的に活性化す るために、情報化の進展に伴う雇用吸収力の弱化を、トータルで雇用を増やす ことにより吸収する、そのために我々の持っているストックの価値を最大限に 生かせるような社会を作るということである。その際、特に重要なストックは 人的ストックである。 そのため、高齢化、成熟化していく中で、国民の能力 が、技術革新のペースが速くなっていくことにあわせて、常にアップデート出 来ていくということが重要であり、基礎教育を受けた後で、社会のニーズに合 わせた様々な役に立つ教育機会を自由に選択し、能力をリニューアルすること が必要である。その際、市場に任せるというのが基本的な方向であり、市場が 適正に機能するために安全規制の導入、情報開示が必要である。この部分につ いては行政が提供する仕組みの中でやるべきという行政側のスタンスとの間に 多少のギャップが存在するものの、根本的には高齢化、成熟化している社会の 中で、人材が最後まで活力を持って活躍できるようにするという意味では、教 育機能が非常に重要であり、特に大学の果たす役割が重要である。 また、人 材の長期的な活用の上での役割に加え、技術開発センターとして果たす役割も 非常に重要であり、社会のブレインタンクとして、新規事業を起こしていくと いった面でもどんどん活用されるべきであり、そういう場面で大学の教授の産 業人としての活躍は十分あっていいのではないか。そういうところにも大きな 関心があり、追って質問を出させていただきたい。 (大田委員)営利法人や株式会社の参入は中長期的な課題と申し上げたが、現 在のスキームにおいても、例えばある大学が全国にチェーン展開して、放送大 学のような通信講座と併せてセットで提供する、というようなことは当然あり うる。その時に資金調達を広くやって、株式会社として生涯教育、リカレント 教育の分野に参入していくことができるようにする必要がある。 (島田会長代理)もう既にやっている例も見られる。 (大田委員)そうであれば、それをもっと大々的にできてもいいのではないか ということだ。 (島田会長代理)大々的にできていいし、また、大学教授が会社経営を行うこ とももっと自由であってよいのではないか。ただし、一定水準に達したときは 情報開示が必要だ。 いずれにしても、大学を始めとした教育機関の持ってい る能力をもっともっと人材育成や産業発達のために使う時代がきているのは事 実だ。そういう観点から、追って質問を出させていただく。 (樋口委員)奨学金制度は貸与しかないが、給付制度の実現は問題なのか。 (文部科学省)給付制度の実現を考えたこともあるが、なかなか実現していない。 (樋口委員)資料があればいただきたい。 ---------------------------------------------------------------------- [59-3-2]石原伸晃行政改革担当大臣記者会見概要 2001.6.22 http://www.gyoukaku.go.jp/minister/kaiken.html#h130622 「中央省庁改革推進本部の3年間の設置期間が満了するにあたり、今朝の閣僚 懇で総理から発言があったのでご紹介する。  「本年1月に新たな省体制に移行し、内閣機能の強化等を実現した中央省庁 等改革は21世紀のわが国にふさわしい行政システムを構築するための歴史的な 第一歩ですが、これは行政改革の始まりに過ぎません。今後、『民間にできる ことは民間に委ね、地方にできることは地方に委ねる』との原則に基づき、特 殊法人等改革、公益法人改革、公務員制度改革等に取り組み、行政の構造改革 を推進しなくてはなりません。閣僚各位におかれては、国民の期待に応えるた め、引き続き格段のご尽力をいただくようお願いする次第でございます。」  これを受けて私からは、「小泉総理からのご発言にありましたように、中央 省庁等改革は内閣機能の強化、1府12省庁への再編、独立行政法人制度の新設 等、画期的な改革ではあったが、引き続き特殊法人等改革、公務員制度改革、 公益法人改革、そして規制改革に取り組んでまいる所存でございます。  特殊法人等改革については、先に成立した特殊法人等改革基本法に基づき設 置された特殊法人等改革推進本部の第1回会合を本日の夕方に開催し、事業見 直しの方向性を示す中間取りまとめをご報告いたします。今後この中間報告に 従い、事業の見直しを進めるとともに、その結果を踏まえ、組織形態の抜本的 見直しに取組み、各特殊法人の整理・合理化計画を策定いたします。  公務員制度については、3月に示した公務員制度改革の大枠にのっとって進 めており、各省のご理解とご協力を得ながら、今月中にグランドデザインとし ての基本設計を取りまとめたいと考えております。  この他、公益法人改革、規制改革につきましても、節目節目で作業の結果を 明らかにしつつ、着実に取り組んで参ります。関係閣僚におきましても、特殊 法人改革等、行政改革の推進に格段のご尽力をいただきますよう、お願い申し 上げたい。」という意味の発言をさせていただいた。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-4]文部科学省 ---------------------------------------------------------------------- [59-4-1]◆科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会産学官連携推進委員会 (第1回) 2001/05/15議事録 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu8/gijiroku/010501.htm 行番号付: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/515-mext-sangakurenkei.html 「○・・・委員 △・・・事務局 ○資料5の論点、課題とは別の点で確認しておきたい。一つは、ここでいう 「産」には外国企業も入るのか。日本の大学の先生方が、日本の企業と組むの か、外国の企業と組むのか、さらにはグローバルな企業と組むのか、といった 問題が当然起こり得る。・・・ △ 第一点目の外国の企業については、科学技術基本計画等にある国内産業の 育成と競争力強化という主軸はぶれないが、外国の企業を排除する考えではな い。・・・・ ○・・・・・ 私は、2年間米国にいたが、向こうにはいろいろな方がおり、技術移転に反 対で、学者は研究すべきだと言っている人も多い。米国にもいろいろな議論が あるが、大事なことは、米国人にはオプションがあり、選択できる自由が比較 的広いということである。 例えば私は、今、博士課程で、遺伝子の進化とかおもしろいと思って勉強し ているが、絶対、商業化の見込みはない。それでも、私はこれを研究したいと 思うし、そう思う方はたくさんいると思う。そういう方はもちろんいるし、実 用化に近い方ももちろんいるし、みんなが自由に自分の方向性を伸ばしていけ るという大学あるいはそれをサポートする事務局をどうやって作っていくかが 非常に大事である。・・・ ○先ほどから大企業、それから、中小企業という話が出ているが、バイドール 法一つにしてもメインはスモールビジネスというのがはっきりうたっているが、 日本の場合の産学連携というのは、ほとんどそこのところは強調されてないと 思う。今、大企業が大学といろいろな技術で連携するのは当然必要で重要なこ とであるが、新しい産業を興すとか、そういうことを考えるときに成功するか しないかは、大企業の産業界とこれからどうするかという議論ではなく、中小 企業の産業界をどうするかという議論がきちんとできるかにあると思う。日本 の場合にはハイテクの中小企業が非常に少ない現状であり、これからそれを作 りながら、ハイテクの中小企業を助けて産業を興していくという方向が、大学 あるいは国研の技術移転の重要な点であると思う。」 ---------------------------------------------------------------------- [59-4-2]国立学校特別会計の財務諸表の試算・作成について(文部科学省HP) http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/syohyou/010601.htm ---------------------------------------------------------------------- [59-4-3]科研費間接経費の主な使途の例 (要するに「直接経費として申請したもの以外なら何でも良い」) http://www.rikkyo.ne.jp/grp/jyoseika/kakenkansetukeihisito.htm ---------------------------------------------------------------------- [59-4-4]「大学発のベンチャーで国立大にスカウト常駐へ」 Yomiuri On-Line 2001年7月1日 「小泉内閣が経済再生の目玉の一つに掲げる大学発ベンチャーを推進するため、 文部科学省は、大学の研究室に足を運んで産業化のタネを見つけ出す先端科学 の「スカウトマン」を、今後5年間で約700人育成し、国立大のキャンパス などに常駐させる活性化策をまとめた。「この研究はいける」というセンスに 優れた目利きを身近に配置することで教授や学生の起業が一気に増えると期待 している。  大学の基礎研究は、実用化をあまり気にせず、探究心だけが原動力という場 合も多い。スカウトマンはその成果をもとにベンチャー企業化を計画したり、 既存の企業に橋渡ししたりする。ベンチャー大国の米国に対し、日本には目利 きがいないに等しく、研究が競争力に結びつかない原因の一つと指摘されてい た。  人材としては、民間企業で特許関連の業務経験を持つ専門家を活用。来年度 には10―20の国立大に第1陣を送り込む計画だ。」 ---------------------------------------------------------------------- [59-4-5] 教育改革関連6法の成立を受けての文部科学大臣談話 2001.6.29 http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/06/010696.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-5]文部科学省の出張講演 ---------------------------------------------------------------------- [59-5-1]2001.6.27 静岡:徳永 保 文部科学省大臣官房総括会計官 ・初等中等教育局主任視学官「大学改革の現状と課題」 ---------------------------------------------------------------------- [59-5-2]2001.7.14 奈良:杉野 剛 文部科学省高等教育局大学課大学推進室長  「国立大学の構造改革について」 奈良先端科学技術大学院大学構内(生駒市高山町8916番地5) 対象者:奈良女子大学・奈良教育大学・奈良先端科学技術大学院・大学教職員   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-6]調査検討会議 ---------------------------------------------------------------------- [59-6-1]国立大学等独立行政法人科調査検討会議事務局案報道(首都圏ネットHP) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010628.htm ---------------------------------------------------------------------- [59-6-2]◆国立大学等独立行政法人化調査検討会議中間報告事務局原案 http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130627-1.htm http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/629-tkk-matome.html #(調査検討会議中間報告事務局原案が出て、法人化の是非を具体的に議論で きるようになった。国大協の委員会案のときにも増して各個人・学科・専攻・ 部局・大学で詳しく検討し意見表明すべきである。 原案の内容の第一次近似を「国立大学協会特別委員会案「法人化の枠組」+遠 山プラ ン(≒平沼プラン?)」と考えると、国大協総会で前者が了承されな かった以上、この原案も国大協としては了承されないと予想される(そのよう な機会が「与えられ」ないとすれば、国立大学協会は自分で作らなければなら ない。) 1999年9月に、第一常置委員会中間報告を文部省が取り込んで「検討の方 向」を出した時と状況が似ているが、1999年の場合は、中間報告は国大協 臨時総会で了承されていたために国大協としては身動きがとれなくなったのに 対し、今回は、総会で「委員会案」は了承されなかったので、国大協は、文部 科学省の中間まとめと距離を置いて発言できるところが大きな違いではないか と思われる ) #(「検討の視点」部分だけ抜粋) ------------------------------------------------------------------ I 基本的な考え方(4つの委員会を通じた基本的な考え方の整理) 1.検討の前提(国立大学の法人化を検討する場合に、まず前提とされるべき 基本的な考え方の整理) 前提1:「大学改革の推進」 ・大学改革の一環としての法人化の検討 ・法人化のメリットを活用した国立大学の改革・新生 ・国公私立を通じた大学制度全体の活性化への寄与 など 前提2:「国立大学の使命」 ・国立大学として果たすべき使命・役割 ・国立大学にふさわしい法人制度の整備 ・国立大学の名にふさわしい教育研究の展開 など 前提3:「自主性・自律性」 ・大学としての自主性・自律性の尊重 ・大学運営上の裁量の拡大による自主性・自律性の向上 ・各大学の特色・個性を活かしうる柔軟なシステムの導入 など #(以上の点は国大協委員会の「基本的考え方」と同様、表面的には問題はない。) ---------------------------------------- 2.検討の視点(法人化を契機に、国立大学がどのように変わるのか、どのよ うな大学になるのか、という基本的な視点の整理) #(国立大学がどのように変わるのか、それを大学毎で考えることができるの が、法人化のメリットだったのではないか。) ---------------------------------------- 視点1:世界トップレベルの教育研究を展開する個性豊かな大学へ ・国が責任を負う大学として世界的な教育研究の拠点へ ・国立大学の使命を踏まえた各大学の理念・目標の明確化 ・教育研究の多様な展開や個性豊かな大学づくりを可能とするシステムの弾力 化 ・多様な発展と基盤強化を目指した大学間の再編・統合等の推進 など #(これは政府と一部の大学人にとっての法人化のメリットであり大学すべて にとってのメリットとは言えまい。) ---------------------------------------- 視点2:国民や社会へのアカウンタビリティの重視と競争原理の導入 #(前半と後半が「と」で結ばれる必然性はない。情報公開は競争原理とは相 性が良くない) ・教育研究、組織運営、人事、財務など大学運営全般にわたる透明性の確保と 情報公開の徹底 #(これは歓迎) ・国民に支えられる大学として、国民や社会の意見を大学運営に適切に反映さ せ、また、社会の知恵を大学運営に積極的に活用 #(言葉のムード的使用例。「国民の意見」と「社会の意見」の違いは何か。 「社会の知恵」をもう少し詳しく言うべきではないか。) ・厳正かつ客観的な第三者評価システムの確立と、評価結果に基づく重点的な 資源配分の徹底   など #(日本の大学システム全体の強化戦略としては、「評価結果」に基づき、評 価が低いところにまず重点的に資源配分する、という考えの方が普通ではない か。) ---------------------------------------- 視点3:経営責任の明確化による機動的・戦略的な大学運営の実現 #(機動的な戦略で運営が大失敗するリスクは大きいが、経営者が 責任を取れば問題が解決するわけではあるまい。) ・大学運営における経営面の責任の所在の明確化 ・法人化により拡大する権限の適切な運用体制の確立 ・学部等の枠を越えた全学的な将来戦略の策定・実行 ・自助努力による財源調達機能の充実 #(これは事実上の民営化への移行) ・学内での教育、研究、運営等の適切な役割分担による諸機能の強化 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-7]長尾発言問題 ---------------------------------------------------------------------- [59-7-1]◆国立大学協会・記者会見要旨(6月13日) 『文部科学教育通信』第30号(2001年6月25日号)、19頁。 会長 長尾眞(京都大学長) 副会長 松尾稔(名古屋大学長) 副会長 石弘光(一橋大学長) 副会長 中嶋嶺雄(東京外国語大学長) 「大学の構造改革の方針」を真摯に受けとめる 長尾会長 設置形態検討特別委員会を昨年春の総会で設置することを決め、一 年間議論し報告して総会でおおむね了承し、受理した。その間、月曜日の夕方 に経済財政諮問会議に文部科学省から大学の構造改革の方針が提出された。か なりドラスチックなもので、これについて清水審議官に来ていただき説明を受 けた。その結果、いろいろ意見があったが、次のような会長個人としての談話 を発表したい。  文部科学省が出した大学の構造改革の方針については真摯に受けとめたい。 ただ、今後の検討がなされる過程においては、国立大学協会の設置形態検討特 別委員会が出した報告書の内容を十分に反映してもらいたい。そういったこと につきまして、総会の中で意見交換をいたしましたところ、いろいろ意見がご ざいまして、例えば大幅削減をするというようなことが書かれているけれども、 これは地方大学の切り捨てにつながらないか非常に心配である。これについて 十分配慮してもらわなくては困るということ。あるいはこれからいろいろ国立 大学の改革が行われていく中で、あまりにもいろいろなことが起こる結果、大 学全体が混乱することになって教育・研究の力が殺がれていく心配がないか。 そういうことについて十分な配慮をしながらやっていく必要がある。それから、 当然のことでありますけれども、教育および研究というものは国の将来を担う ものでありますから、これが混乱することによって国の将来が危うくなるといっ たことがないように、慎重にやってもらわなくては困るということ。そういっ た面から言いますと、今まで国立大学が果たしてきた役割といいますのはいろ いろあるわけでありまして、もっと社会に評価していただく必要があり、それ についてはわれわれのPRも不足していたのかもしれません。一昨日文部科学省 が出しました案は、経済界に向けた案で書かれておりまして、学術文化の本質 については何ら触れられていない。これについては当然のことながら十分今後 大切に考えて進んでいってもらわなくては困るという意見があり、さらに、こ れまで一年間かかって検討してきた設置特委の報告の作業の努力というのはか なりの面で文部科学省の案に反映されているわけで、われわれの検討の今後に ついても十分文部科学省はそれを参考にしていただく必要があるという考えで す」 石副会長 大変な時期に大変な役割を引き受けたと思っていますが、その意味 は、大学改革が広く国民的課題になったということだと思う。今や大学改革と いうのは、経済界あるいは産業界、経済産業省も含めそちらの方々からの大き な問題提起がある。そういう意味で、われわれは国民的な視点から今後の国立 大学の再編等々を考えなければいけない。いわゆる遠山プランを真剣に受けと めて議論をしなければいけない。 松尾副会長 国立大学は積極的に改革あるいは情報の外への発信が足りなかっ た。今、私は、この問題に関して三年ほど前から非常に恐ろしく感じているこ とは、国立大学の中に関することについて国民の方々の無関心なのです。今回 の問題は、六十年安保や大学紛争と同じように外からかかってきた問題で、そ の時々にそれに対していろいろなことを考えたわけで、今日も同じような状況 です。しかし、「黒船が来た」と悪い方向にとらえずに、大学人自身が積極的 に好機ととらえて改革をしていくことが大事です。 質疑応答 記者 真摯に受けとめるとはどういう姿勢か。 会長 遠山プランは民営化ということは一切言わないし、独立行政法人通則法 でもない。大学法人法という形で行くと言っているわけで、そういうことにつ いてわれわれは真摯に受けとめて考えるということです。 記者 削減について。 会長 それは深刻に受けとめている。特に地方が切り捨てられないように、地 方にある大学も十分機能を果たし大きな貢献をしてきたわけですから、そうい うことがきちっとやっていけるように考えてもらわなくては困るという危機感、 心配がある。それは責任あるところで十分検討していただくべきことだと認識 しています。」 ---------------------------------------------------------------------- [59-7-2]京都大学創立104周年記念式典式辞(2001.6.18)における報告の誤り http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/628-nagao-problem.html http://www.adm.kyoto-u.ac.jp/soucho/speech14.htm 「99校からなる国立大学協会は、この問題について昨年の春から設置形態検 討特別委員会をもうけ、このような観点をふまえて鋭意検討を重ねて来まして、 最近そのまとめを行い、自主性、自律性をもった法人としてのありうる枠組を 国立大学協会総会に報告し、了承されました。・・・・これからの法人化の法 案作成作業において、文部科学省がこの報告書の内容を十分に尊重することを 要請いたしますが、厳しい政治的環境の下でどこまで我々の考えていることを 実現できるかは予断を許しません。・・・」 ---------------------------------------------------------------------- [59-7-3]長尾発言問題 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/629-nagao-problem.html #国立大学の将来を左右する事柄について、国大協総会出席者の公的発言に食 い違いがある以上、国大協は事実関係を公的に明確にせざるを得ない。 それ は社会常識に属することだ。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-8]国大協総会関係 ---------------------------------------------------------------------- [59-8-1]京大職組総長交渉(2001.6.29) http://web.kyoto-inet.or.jp/org/ku-union/topics/010629kosyou/010629kosyou.html ---------------------------------------------------------------------- [59-8-2]千葉大学HP[学長メッセージ 大学改革に関する所感] http://www.chiba-u.ac.jp/JP/soumuka/message2.htm 「文部科学省は三つの構造改革の方針に添った各大学の改革案を求めてきまし た。それもゆっくりしたものではありません。今年中に「案」をまとめなさい、 というものです。もし大学独自で「案」がまとまらないのであれば、文部科学 省の「案」で改革をしてもらう、というものです。」 ---------------------------------------------------------------------- [59-8-3]全大教「国立大学協会第108回総会等をふまえた要望書」2001.6.27 http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/01-6-27kokudaikyoyobo.htm 「1.貴設置形態検討特別委員会等において、総会での「意見書」等や議論を 十分ふまえ、「国立大学の法人化の枠組」についてその抜本的な再検討を行い、 「知の共同体」にふさわしい内容を追求されること。 2.文部科学省による「大学(国立大学)の構造改革の方針」について、臨時 総会の開催を含め、充分検討する場を追求されること。 3.この問題について、早急に各大学での検討を提起し、広く大学人の英知を 結集されるよう努力されること。」 ---------------------------------------------------------------------- [59-8-4]阪大教職組から国大協会長へ「臨時総会開催要求書」2001.6.29 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2211.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-9]大学の動き ---------------------------------------------------------------------- [59-9-1]「窓」―学長選挙(朝日新聞)九大学長選挙の改正 朝日新聞ニュース速報 「九州大学が学長選挙の規則を改定し、本選挙の選挙人から助手を除外するこ とを決めた。教育・研究に占める助手の役割が大きい理系学部では反対の声が 強かったが、「管理運営の効率化」を求める当局に押し切られた。  九大の学長は、1次と2次の予備選挙を経て、一定数に絞った候補者の中か ら本選挙で選ばれる仕組みである。助手は今回の改定で1次の予備選挙にしか 投票できなくなり、本選挙の選挙人は講師以上に限られることになった。  九大で助手の「参政権」が実現したのは70年のこと。68年の米軍機墜落 事故や、69年の文部省による学長事務取扱発令拒否をめぐって紛争が長期化 した末の改革だった。  学長選挙のあり方を論議した学内の小委員会は、助手を排除する論拠として、 98年に出された大学審議会の答申をあげている。  「適任者を選ぶためには、……数名の適任者を事前に絞り候補者として示し た上で投票を行うこと、その際、……投票に参加する教員の範囲について大学 運営の最高責任者を選ぶ上で適切なものとすることなどが必要である」  大学が独立行政法人化すれば、的確な意思決定が重要さを増すだろう。日々 の業務は限られたメンバーで決するのが妥当かも知れない。  しかし、4年に1度の学長選挙まで助手を排除する必要があるとは思えない。 「助手は無責任な投票をする」とでもいうのだろうか。「独立行政法人化」に おびえた過剰反応ではないか。  〈哲〉[2001-06-29-14:30]」 ---------------------------------------------------------------------- [59-9-2]宮崎大学「独法化反対」実行委員会声明2001.7.2 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2226.htm ---------------------------------------------------------------------- [59-9-3]「独法化の新しい流れと島大の行方」2001.6.22 http://sula0043.soc.shimane-u.ac.jp/News/No2.htm 「島根大学における独立行政法人化の問題点整理(シミュレーション)」 に対する教職員組合中央執行委員会の検討内容 http://sula0043.soc.shimane-u.ac.jp/News/kentounaiyou.htm ---------------------------------------------------------------------- [59-9-4]◆千葉大学情報分析センター「今こそ全大学の横断的連帯を」 ーー個別大学の生き残り策追求は大学システム破壊への道ーー 2001.6.29 独立行政法人問題千葉大学情報分析センター事務局 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Club/9154/n6.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-10]都立大学の動き ---------------------------------------------------------------------- [59-10-1]東京都の四大学統合を糾弾する公開質問状(Yahoo! JAPAN 掲示板) http://messages.yahoo.co.jp/bbs?.mm=ED&action=m&board=1086165&tid=a1zeta4nbbmbg3xefd9ga4r5jcfa49a4k8x3abbcaldbeu1&sid=1086165&mid=1 「都の四大学統合を糾弾する公開質問状 2001年6月27日 東京都教育長 横山洋吉 殿 東京都立大学総長 荻上紘一 殿 東京都教育庁総務部企画室スタッフ 御中                            一都民拝   (長いので、ところどころ略します)簡単に言えば、上記の人物を中心とする スタッフが、都民・教職員・学生の意向を無視して、都立の四大学(都立大学・ 都立科学技術大学・都立保健科学大学・都立短期大学)を「統合・改革」する と偽り、実質的に「改悪」しようとしていることにあります。以下、都立大を 中心に、改革の問題点を列挙します(一部メールやインターネット上で収集し た資料を利用させて頂きました)。 1.都立大学は優良な大学である。  都政モニターの調査によれば、都立大学は実に都民の98パーセント、企業の 88に認知されており、65の都民が都立の大学は必要と答えています(「不要」 という答えは15%しかありません)。また、「大学情報総合データベースサー ビス」でも、都立大学は常にベスト大学の10位以内にランクインしています。 このような「良い大学」をあえてなぜ「変え」なければならないのか。現在の 教育庁総務部企画室の作成した「東京都大学改革基本方針」は、いかにも前向 きな「改革」であることをうたっていますが、これは全くの建前です。それで は、ホンネは何かと言えば、答えは簡単、お金の問題です 2、都立大は都の予算を圧迫などしていない。  実のところ都立大の予算規模は、都政を圧迫などまったくしていません。都 立大学の予算額は大阪市立大学(附属病院をのぞく)・大阪府立大学、横浜市 立大学などよりも少なく、都の予算総額の0.2パーセントにすぎません(大阪 市は市予算の1.5%を大阪市大に支出)。それも96年より、減少の一路を辿っ ています。昨年度都税の増収入は4800億円もあったのに、都は都立短大と都立 大B類(夜学)を潰し、教員数を削減してまで予算の削減を図っています。  都は「東京都大学基本方針」の中で、都民に向けて「学生教育の改善」「大 学院教育研究の充実」「教育者養成大学の検討」「産学公連携の充実強化」 「都民に開かれた大学システムの構築」などと耳障りのよい事ばかり並べ立て ていますが、これらを本気でやろうとしたら、当然にもこれまで以上に人も予 算も必要になるはずです。にもかかわらず、都は大学に対して金は出せない、 人も減らせと要求しているのであり(しかも数年後には独立行政法人化が実現 します)、その分学生負担の学費は大幅に跳ね上がります。都立大の都民入学 者学費の安さが、どれだけ貧しくも優秀な学生たちを助け、育てて来たかわか りません(都政モニターアンケートで、都立の大学の印象について、一番多かっ たのが「授業料が安い」(82.6%)で、ついで「優秀な学生が多い」(61%) です)。こういう子供達や、また少数派といえども、B類のような働く学生な どにサービスするのが本当の都民サービスではないでしょうか。案の定、都政 モニターアンケートでも、都立大にかける予算を減らすべきだなどという都民 の意見は出ておりません。そう考えているのは、東京都であって、要するに臨 海副都心などでは壮絶なムダ遣いを続けながら、その分「教育」方面の予算は ケチりたいのです。なぜならば、こういった方面からは文句が出にくいからで す。  それから都立大B類の需要が少ないというのもウソで、人文学部B類の入試倍 率(平成12年度)は人文学部10.9倍 、法学部7.3倍、経済学部6.4倍、理学部 6.0倍、工学部4.3倍で、定員割れしている私立短大などの多い昨今、むしろ大 変な人気があると言えます。それなのにこれを強引に潰そうとするのは、B類 分の教員人員が削減できる(人件費の節約)からです。B類学生こそ、いい迷 惑でしょう。B類廃止反対署名も既に3000を越えるとのことですが、日ごろ都 民の声に耳を傾けているとアピールする都庁が、どうしてこうした大きな声を 黙殺しようとするのでしょうか・・・・」 ---------------------------------------------------------------------- [59-10-2]都立4大学統合 外部意見取り入れへ諮問会議発足(NHK)2001. 7.3 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2229.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-11]産業技術総合研究所 研究者憲章[reform 03578] http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre3578.html http://www.zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/01-6-27kokudaikyoyobo.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-12]文献・サイト等の紹介 ---------------------------------------------------------------------- [59-12-1]◆広渡清吾「大学と司法改革−−法科大学院の文脈」 法律時報73巻第7号p23-27 1.大学と司法の産業界へのサービス機関化 2 法科大学院に対する大学のアンビヴァレンス 3 法曹養成制度と大学の役割 4 大学改革と法科大学院ーー理念と基礎からの再構築 (抜粋) 「このように、総じてみれば、法科大学院の設立による法曹の大幅増員という 「国家的」大事業は、結果として、日本の90を超える法学部、20万人近い 法学部生およびそれを教える法学教師という既存の資源を基礎にそれをリスト ラしつつ進むことになるであろう。日弁連との間で法科大学院に関する協議を 何らかの形で実際に行っている大学は、その関心度は様々であろうが、東京・ 関東地区24大学、近畿地区21大学、中部・中国地区8大学、九州・東北・ 北海道・四国地区で20大学ということである[4]。こうした見通しは、法科 大学院構想の真髄である「プロセスとしての法曹養成」によって法曹の量の拡 大と同時に質の向上を図るという抱負と矛盾し、法曹を粗製濫造する危険を予 測させる。・・・・」 「・・・。法曹の量的拡大が基本釣に産業界の二−ズに発しているのであるに せよ、あるいはまた法曹の量的拡大を目指しながら法曹養成に対する公的なコ スト負担を軽減したいという思惑が授業料を徴収できる大学に法曹養成を委ね るという方策を生み出したのであったとしても、国民のために質の高い法曹を 作り出すために大学の法学教育が正面から関与するというのは、それとして一 つの正道であろう。したがって、問題は正道を正道たらしめる条件の考祭を行 うことである。いくつかの論点を提示してみよう。 第一に、法科大学院を成功させるためには、そのための教師の配置と物的施 設が十分でなければならない。また、法曹養成教育のカリキュラムと教育方 法についてその研究が事前に十分に行われ準備されなければならない。既存 の法学部が法科大学院を併設しようとする場合、既存法学部のスタッフと施 設の「転用」がおおかた計画されるようてあるが、これは二つの理由によっ て安易に行われてはならない。・・・・  ・・・・ 第二に、筆者は、競争的横並び的法科大学院の設立を避けることが大切であ り、法科大学院構想の是非を検証しつつ、その漸進的実現を図るためにパイ ロット事業を実施してはどうかと考える。 法科大学院の設立を自由競争ではなく、なんらかの計画性をもって進める手 段は文部科学省の設置認可以外にはないが、しかし設置認可がそのような手段 に使われることは大学側にとって望ましいことではなく、また、文部科学省の 政策にも合致しないであろう。司法制度改革審議会の中間報告も「法科大学院」 の「公平性・開放性・多様性」を強調し、設置認可による「計画的統制」を排 している。それゆえ、パイロット事業の主導役は日弁連にしか期待できない。 現在の司法試験の合格者は、首都圏および近離圏の大学出身者に集中してい る。合格者1000人であった1999年度についてみると、7割弱が首都圏 大学、2割強が近畿圏大学である。地方における弁護士不足が法曹の量的拡大 を必要とする重要な一つの論拠とされているのであるから、このパイロット事 業では、たとえば南九州、四国、北陸、北海道などの地域に法科大学院を設立 することとする。それぞれの地域では可能なら大学連合を受皿としながらいず れかの大学に立地することとし、準備は関連法学部のスタッフが行うが、法科 大学院の新スタッフの過半は公募制で全国から募集する。これらの法科大学院 は、法曹養成教育の実験的開発を進めるものとして位置づけられ、また法科大 学院の教師たちの研究のあり方もここで模索される。こうした試みが大学と日 弁連の協力で行われるならば、文部科学省はこれを助成し、推進すべきである。 法科大学院を経由して養成される法曹数は、それゆえ、いきなり大きな数にな らず、法科大学院全体のキャパシティー(人的リソース・物的施設)の整備に 応じて漸進的に増加させるものとすればよい。」 「国立大学が大学の連営について明確な自己責任を担うこと、社会のニーズに 適切に対応し、説明責任を果たすこと、教育と研究の成果により敏感なシステ ムを構築すること、これらは大学自らがこれまで追求し努力してきたことであ り大学にとって原理的なことである。そしてこれらの原理的なものは、大学と いう制度の有する普遍的な理念に最終的に資すべきものとして想定できる。大 学は、教育と研究が構成員の自由を基礎に行われるところに本質をもち、その 自由の行使において社会と国民への責任の果たし方が模索され決定され、その 決定に対する批判に応じながら活動を再生産していくものである。法人化の制 度設計はこのような大学の本質を判断基準として進められ、またその適否が論 じられるべきである。 ときどきの時代精神は、社会の諸制度・諸要素をあますところなく自己に服 せしめる要求をもつものである。これに対し大学は原理的に普遍に奉仕するも のであり、それを確保するために個的自由が置かれ、自治としてそれが対外的 に主張される。普遍に奉仕するものを社会のなかに置くことによって時代精神 は、逆にまたありうべきその誤謬から救われるのである。大学自らがそのよう な使命を自覚して行動することなしには、大学が直面している困難を打開する ことはできないであろう。上記のジャーナリスティックな論評にはリアリティ があるが、そのリアリティこそ大学が目を据えて吟味すべき時代精神への従属 であるかもしれないのである。・・・」 ---------------------------------------------------------------------- [59-12-2]五味健作「国立大学改革論議を正すーー正しい軌道の提示」 http://village.infoweb.ne.jp/‾gomiken/univ/reform.htm ---------------------------------------------------------------------- [59-12-3]「デミング博士が日本に教えたこと」アシスト 2001年5月1日 No.91 http://www.ashisuto.co.jp/kka/magazine/91/topic08.html ---------------------------------------------------------------------- [59-12-4]書評より ---------------------------------------------------------------------- [59-12-4-1]「モーラル・エコノミー 東南アジアの農民叛乱と生存維持」 ジェームス・C・スコット著高橋 彰訳出版:勁草書房ISBN:4-326-50166-9 発行年月:1999.7 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_rev.cgi/3acf0c57e6ce4010676e?bibid=01689623&revid=0000034275 「・・・  この本は僕らに沢山のことを教えてくれる。そのうち三つを挙げとこう。 第一、大抵、僕らは「人間は利益を最大にするように行動する」って考えてる。 これは普通の経済学の考えでもある。学界言葉を使うと、「〈大抵の人〉は 〈利潤極大化〉を目標にして〈経済合理性〉にもとづいて行動する」ってとこ か。そう行動しない人は「合理的じゃない」ってされる。でも、スコットさん によれば、経済行動の目標は別に「利潤極大化」じゃなくてもOK。その目標 めざして合理的に行動すれば、「経済合理性」を持ってるって考えてもOK。 「〈利潤極大化〉イコール〈経済合理性〉イコール〈大抵の人〉」っていう、 普通の経済学が前提にしてる考えは、ただの仮説なんだ。ついでに言うと、 「規制緩和は絶対必要だぜ」って叫んでる人は、大抵この仮説にもとづいてる。 彼らがこの本を読んだら、どんな感想を持つんだろうか。  第二、リスクを嫌うのは、なにも東南アジアの昔の貧しい農民だけじゃない。 生きつづけなくちゃいけないのは、今の人も、他の地域の住民も、豊かな人も、 国家も、企業も、皆同じこと。たとえば、企業が多角化や垂直統合を進めるの は、経営上のリスクを小さくするためだ。国家が規制緩和つまり「〈小さい政 府〉化」を進めるのは、統治上のリスクを小さくするためかも。そして、実は、 誰かのリスクが減るとき、別の人のリスクが増えることがある。スコットさん はこのことを、地代をめぐる地主と農民の関係や、税金をめぐる国家と農民の 関係をみながら、具体的に明らかにした。リスク好きな人がリスクをおかすの はOKだけど、リスク嫌いな人のリスクが(別な人の都合で)増えるのはちょっ となぁ。  第三、「利潤極大化」とか「生存維持」っていう経済活動の目標は、各々の 人の価値観にもとづいてる。でも、それをかえることはできる。たとえば、 「生存維持」から「利潤極大化」に乗りかえてもらうには、最低収入を保証し、 「生存維持」は大丈夫だって納得してもらえばいい。そのためには、社会保障 制度や公共事業が役立ちそうだ。そう考えると、この二つは、豊かな人や国家 や企業にとってもメリットがある。」 ---------------------------------------------------------------------- [59-12-4-2]長谷川 幸洋著「 経済危機の読み方 日米「破局のシナリオ」」 講談社現代新書 1556 ISBN:4-06-149556-9 http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_rev.cgi/3acf0c57e6ce4010676e?bibid=02029508&revid=0000035496 「第一章。一九九〇年代を通じて、民間部門(会社)から公的部門(政府)に カネが流れこんだ(「日本経済の壮大な社会主義化」)。政府は、流れこんだ カネのかなりの部分を「無駄な公共投資で食いつぶしている」。一方で「民間 企業が成長力を失って株価が暴落」してる。だから規制緩和(民間部門の自由 化)だけじゃ駄目で、民営化(「民間部門そのものを拡大する構造改革」)が 必要。とくに郵政三事業の民営化が大切。これを断行して会社にカネをまわせ ば、会社はカネを投資するはず。そうすれば日本経済も成長するはず。この長 谷川さんの主張は、よくみると、ちょっとトホホ。だって、こう主張したけれ ば、公共投資は無駄で非効率的だ、カネが来ないから会社は成長力を失った、 郵政三事業を民営化すれば会社にカネが来る、カネが来れば会社は投資する、 この四つの理屈を前もって証明しとくことが必要なのに、証明がない。だから、 長谷川さんの理屈の逆だって「あり」になる。たとえば、第二の理屈の逆に、 会社が成長力を失うと、株価は上がらず、カネを借りないから、カネが来ない、 と考えてもいいじゃん、とかね。」 「この本の前半への疑問。後半(第四章から第六章)はアメリカ経済をバラン スよく論じてるのに、日本経済が対象だとちょっとトホホになるのはなぜか。 「経済や経済政策を論じるのに、正解はない」といいながら、根拠なく断言す るのはなぜか。・・・・理由は本人しかわかんないけど、よくあるのは、いい たいことがはじめからある場合。この本だと、民営化を進めて公共事業はやめ ろ、日銀は通貨供給量を増やせ、ってとこか。いいたいことがあるのは別にい いけど、「論理的に破綻していないかどうか」は難しいところ。というわけで、 日本経済論がちょっとトホホなので、評価は二つ星。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [59-13]経団連の提言「科学技術戦略の変革に向けて」(2001.6.11) http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/028.html 「企業においても、わが国の大学の研究成果に目を向けていくとともに、新事 業の創出に向け、大学等の外部資源をより活用する姿勢を強めていく必要があ ると考える。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立 つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)を 紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。  メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は目次番号が記事 にリンクされている。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ ---------------------------------------------------------------------- 発行部数 2142 (2001.7.2現在) 1410 Mag2:837|CocodeMail:365|Pubzine:89|Macky!:54|emaga:32|melma:33 732 直送(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・議員等) ---------------------------------------------------------------------- Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 59