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Weekly Reports  No.52  2001.5.14 Ver 1.1

http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-52-01514.html 総目次:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-0] 内容紹介 [52-0-1]文部科学省は、小泉首相の国大民営化・公営化発言に対して抗議する ことなくただちに検討を始めた[52-1-2]。これが意味することは、首相発言が 文部科学省の了承を得ていたこと、そして、昨年5月の文部大臣あいさつ [12-1]で示された方針に大きな変更が既にあったことである。当該あいさつに 呼応した昨年6月の国立大学協会総会合意[14-4]が無意味となった以上、国立 大学関係委員は調査検討会議を辞任し、国立大学協会は大学の諸問題(過度の 受験競争・学内運営の偏り・大学間の極端な財政格差等)の真の解決を意図す る大学改革構想を構築・呈示し日本社会に民営化の是非を問うべきであろう。 創造的な事業については「低コスト低品質、高コスト高品質」しかなく、効率 化によって「低コスト・高品質」が実現することは有りえない。教育・研究は まさにそういう事業の典型である[52-7-1]。長岡藩の米百俵の逸話[52-1-4]と 国立大学の民営化[52-1-1]とを同一人物が同時に語ることが一体全体どうして 可能なのだろうか、と思うのは国立大学関係者だけなのだろうか。 [52-0-2]国立大学独立行政法人化のための文部科学省調査検討会議の財務会計 制度専門委員会は、法人化後に国立大学の授業料格差を許容することを決めた と報じられた[52-2-1]。独法化の是非は細部を検討してから、という当初の文 部科学省方針に従えば「独立行政法人化後は授業料格差が不可欠になることが わかった」という言い方しかできないはずだ。「独立行政法人化に授業料一律 から格差容認へ」という物言いは、記者による修飾がないとすれば、文部科学 省が調査検討会議をどう考えているかを露呈したものといえる・・・誰でも最 初から知っていたことではあるが、公式に明確になったのは今回が初めてであ るから、国立大学協会は疑義を呈するべきではないか。 調査検討会議の目標評価委員会の「中期計画イメージ」は、独立行政法人化が 大学にもたらす過度の「ノルマ主義」を予想させる[52-2-4][52-0-3] 今週金曜日5月18日に、東京で独立行政法人化問題に関する種々 の集会が開かれる[51-8]予定だが、それに向けた声明「全大学人に訴える。大 学をいったいどうするのか。」が出た[52-5]。 同日、「独立行政法人化阻止、国民ネットワーク」(仮称)の結成総会 [52-6]も開かれる。高野孟氏の i-Insider No 16 に掲載された[52-6-1]。 ━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-0] 内容紹介 [52-1] 首相の国立大学民営化・公営化発言 [52-1-1] 参議院本会議2001.5.11 ビデオライブラリー [52-1-2] 国立大学の民営化 検討に着手(NHK [2001-05-12-10:42]) [52-1-3] 小泉首相、国立大の民営化に賛意 (時事通信2001年5月11日) [52-1-4] ◆長岡市HP「米百俵の精神」 [52-2] 文部科学省国立大学独立行政法人化調査検討会議 [52-2-1] 「授業料一律から格差容認へ 国立大、法人化後に」 [52-2-2] 第9回(2001.5.8)人事制度専門委員会資料 [52-2-3] 第9回(2001.4.27)目標評価専門委員会資料 [52-2-4] ◆「姿を見せた官僚支配の独法化構想」”法人中期目標・ 計画” [52-3] 総務省独立行政法人評価委員会(第4回 2001.4.20)議事要旨 [52-4] 独立行政法人化した国研情報 [52-4-1] 「産業技術総合研究所主要ポストは本省(主務省庁)が独占」 [52-4-2] 「独立行政法人化で求められるのは、研究者の意識改革」 [52-4-3] 『情報処理』2001年5月号「独立行政法人は儲けてナンボ?・・・・」 [52-5] ◆「全大学人に訴える。大学をいったいどうするのか。」 [52-6] 「国立大学独法化阻止 国民ネットワーク」結成総会の日時・場所 [52-6-1]高野孟氏: i-NSIDER No.0016 / 2001-05-10 / [52-7] 千葉大学情報分析センター速報No.4「特集:大学評価問題考察」 [52-8] 意見紹介等 [52-7-1] ◆佐々木毅「体験的21世紀の大学戦略 」 [52-7-2] ◆田中宇の国際ニュース解説「アメリ カの戦争を支えた大学」 [52-7-extra] ◆浦辺氏(東大)メッセージ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-1] 首相の国立大学民営化・公営化発言 --------------------------------------------------------------------- [52-1-1] 参議院本会議2001.5.11 ビデオライブラリー http://online.sangiin.go.jp/cgi-bin/online.cgi?s=01/05/11 #(小林(民主党)議員の質問(4:09-4:11 約2分間 )に対する答弁の中で 小泉首相は国立大学の民営化・地方移管化の視点の重要性に言及( 4:26-4:27 約1分間)。) --------------------------------------------------------------------- [52-1-2] 国立大学の民営化 検討に着手(NHK [2001-05-12-10:42]) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1914.htm --------------------------------------------------------------------- [52-1-3] 小泉首相、国立大の民営化に賛意 (時事通信2001年5月11日) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1910.htm --------------------------------------------------------------------- [52-1-4] ◆長岡市HP「米百俵の精神」 http://www.city.nagaoka.niigata.jp/d010/d010b050/pg1-3-1.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-2] 文部科学省国立大学独立行政法人化調査検討会議 --------------------------------------------------------------------- [52-2-1] 「授業料一律から格差容認へ 国立大、法人化後に」 財務会計制度専門委員会 共同通信ニュース速報05/11 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1909.html 日本経済新聞05/11 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1907.htm --------------------------------------------------------------------- [52-2-2] 第9回(2001.5.8)人事制度専門委員会資料 http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/chosa-jinji.htm#l09    独立行政法人における中期目標の考え方より http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/chosa-mokuhyo.htm#l09 #(業務のアウトソーシングや、任期付職員の割合を増やすことなどが例とし て上げられている。) --------------------------------------------------------------------- [52-2-3] 第9回(2001.4.27)目標評価専門委員会資料 http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/chosa-mokuhyo.htm#l09 「評価」の論点整理 http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130509-01.htm --------------------------------------------------------------------- [52-2-4] ◆「姿を見せた官僚支配の独法化構想」”法人中期目標・ 計画” 新大職組・理学部分会ニュース すなやま 2001. 5. 1 No.382 「このまま誘導されれば ノルマ工場」 ● 独法化問題:こんな目標・計画で大学はどうなる?●  忙しい、忙しいと言っている教職員の方々! 本日ここにお示しする様な目 標を大学(法人)が持つようになったら、とても今のような忙しさではなくな ります。  4月中旬にあった文部科学省関係の会議で中期目標イメージという冊子が、 全国の国立大学副学長クラスに渡され、インターネットでもこの内容を見るこ とができます(下記 URL)。 http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130412-07.pdf  独法化が何を狙って行われるものか、これほど露骨な姿を見せた文章は今ま でなかったでしょう。これは限りなく官僚に大学を従属させる事を狙った文章 と言えます(確かに Volunteer 受け入れまで、入っている!)。 急ぎ骨子 を紹介します。 (o): =目標、(p):=計画、・・・・は中略部。多少文言を変えてある) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 大学全体の理念 (o): 世界でも屈指の研究機関として、先端的・学際的領域の基礎研究におい て国際的な水準の研究成果を生み出す・・・・国内で最高水準の研究機関とな ることを目指す。   ・他大学からの大学院生を増やすために学部学生数の縮減を検討   ・○○大学との統合を目指し、検討を進める 教育  (o): 教養教育の充実・・・・外国語によるコミュニケーション能力・情報教    育を重視  (p):○○学部では3年進級時に上位半数の TOEFL 平均スコアが600点以上    に・・  (o): 現職教員の再教育を推進する  (o): 学部、研究科として教育活動の評価を適切に実施   (p):○年までに、質の高い授業担当能力を持つと評価された教員にのみ 授業開講権を認めるシステムの導入について検討 研究 (p):国際的 citation の頻度、国際的な学会組織の役員職の頻度、 国際的な賞の受賞歴等を各教授ごとにまとめ、学内の全職員に 対し公表、希望者については学外へも公表 (p):優れた教員に対する支援方策を検討、・・・サバテイカル年  を希望に応じて調整、 (p):○年度に産業界等と連携したバイオサイエンスに関する研究を発足 (p):科研費、受託研究など外部研究資金を目標期間中に○%増加させる。 社会貢献 (p):目標期間中、毎年平均○回の公開講座を開催 (p):○年度に△地区の□□施設の転換による○○研究科のサテライト 教室を開設 その他、TLO,Venture, Liaison Officeなどについての記事あり 国際交流 (p):目標期間中、○○人の外国人研究者、留学生を受け入れる (p): 短期交換留学生として、○人の本学学生を学国の大学に派遣 (p):○校の外国大学との交流協定の締結 学生生活支援 (p):子供を持つ学生のために、○年度に学内に0歳児から受け入れる 保育所を開設 (p):○年度までに、学生からの苦情などに対応する処理システムを設ける その他 (p):○○資格取得の観点から学部教育内容を見直し、新カリキュラム 実施し、△年度からの卒業生の○○資格合格率を現在より#%アッ プさせる 管理運営 (o): 大学運営に国と社会の意見を積極的に反映させるため取り組みを進める (p):○年度の学長選考において、新しい選考方法を採用するよう見直し (p):目標期間開始後1年以内に、法務、財務、労務それぞれについての 担当を整備 <人事> (p): 外国人教員数を○%増加させる。      その他、研修会、研修交流人事、倫理委員会の設置などについて 務機構 (p): ○年度までに○○部門の△△業務の外部委託を実施する、更に  委託率の引き上げ 財務 (p):管理経費の合理化により、その比率を現在より○ポイント縮減する Accountability (o): 環境問題への対応を定め、学内外に周知・公表 (p):○年度に、ISO14001の認証を取得するため、具体的な行動計画を策定 (p):○年度に、点検評価を担当する評価室(仮称)を設置 <情報公開> (p):○年度に、既存のホームページ、公報誌の点検・見直し  (p):○年度までに、ボランテイアの受け入れに関して、全学的な指針を まとめる ●その他の重要目標 (p):講義室稼働率の○%向上、学内の交通計画の見直し、施設の利用 状況点検、学内の伝統的施設の保存、緑化整備計画などが例示さ      れている。 --------------------------------------------------------------------- あとがき:  この数年来、大学の教員は、研究・教育・管理の増大の中で忙殺され、余裕 を失いつつあるように思われます。現在、生き残りというかけ声のもと、とに かく新しい措置をどんどん取り入れる下地が出来上がっています。そこに上記 の、数値で示した中期計画の具体例が、簡単に取り込まれる恐れは充分ありま す。これらの計画が財源措置を伴う評価を受ける訳ですから、法人化後の大学 は、一大「ノルマ工場」になってしまって、全国の法人大学の間で不必要な競 争にエネルギーを費やしてしまう図式が誰にも予測されることは明らかです。 この様な案を作った人間が、本当に数十年後の日本の学術研究のレベルに責任 をもっているとは思えません。教育・研究にふさわしい場を作るのは、現場の 人間の責任である事を確認しその方向を追及するために力を尽くしましょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-3] 総務省独立行政法人評価委員会(第4回 2001.4.20)議事要旨 http://www.soumu.go.jp/kansatu/seisaku-giji-1304.htm #(運営費交付金の「収益」化の方法等、「独立行政法人会計基準」の問題点 について議論。また、独立行政法人評価委員会が、事後評価だけではない活動 もしていくべき、という意見がある。) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-4] 独立行政法人化した国研情報 --------------------------------------------------------------------- [52-4-1] 「産業技術総合研究所主要ポストは本省(主務省庁)が独占」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010508jimukyoku-sabbsou.htm --------------------------------------------------------------------- [52-4-2] 「独立行政法人化で求められるのは、研究者の意識改革」 西嶋昭生氏 InterLab 産学官連携支援マガジンインターラボ 31号(2001.5月) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1912.htm #(自分の判断で研究をしてもらっては困る、という趣旨の発言。) --------------------------------------------------------------------- [52-4-3] 『情報処理』2001年5月号「独立行政法人は儲けてナンボ?・・」 (日本情報処理学会) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1891.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-5] ◆「全大学人に訴える。大学をいったいどうするのか。」 首都圏ネットワーク事務局 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010514syutokenseimei.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-6] 「国立大学独法化阻止 国民ネットワーク」結成総会の日時・場所 5/18 16:30-18:30 東京大学 社会科学研究所 大会議室 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/kessei.html --------------------------------------------------------------------- [52-6-1] i-NSIDER No.0016 2001-05-10 (高野孟氏編集) http://www.smn.co.jp/insider/what/intro.html NO.016(01年5月10日号) FROM THE EDITOR:編集長便り 《LETTER TO THE EDITOR》国立大学の独立行政法人化に反対するネットワーク 《Keyword》中台共同市場 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-7] 千葉大学情報分析センター独行法情報速報No.4「特集:大学評価問題考察」 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/net1899.htm #(間接経費の使い方についての論理的整合性のある提言がある) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-8] 意見紹介等 --------------------------------------------------------------------- [52-7-1] ◆佐々木毅「体験的21世紀の大学戦略 」 『東京新聞』2001年5月13日付 時代を読む http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe1915.html --------------------------------------------------------------------- [52-7-2] ◆田中宇の国際ニュース解説「アメリ カの戦争を支えた大学」(2001.5.14) http://tanakanews.com/b0514university.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [52-7-extra] ◆浦辺氏(東大)メッセージ http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/010518urabe.html より転載 独法化に反対する集会に参加することへの御誘い 浦辺徹郎(東大理学部、地球惑星専攻)  5月18日(金)昼に、本郷キャンパス時計台前で、「大学が危ない!国立大 学の独法化に反対する5.18緊急大集会」という集会が東京大学職員組合により 計画されています。これは5月21日に国大協の特別委員会が「中間報告」の原 案を確定することになっていることと、文部科学省の調査検討会議もほぼ同じ 頃に中間的まとめを決定することを受け、全国の大学に呼びかけて声を上げよ うとするものです。  小生は一足先に独法化された国立研究所(旧:工業技術院地質調査所、現: 産業技術総合研究所)から昨年7月に異動してきた者ですが、そこの研究者に とって、独法化の過程は甘い期待が裏切られて深い失望に変わる事の繰り返し でした。改革の実態は、競争原理と効率性の名のもとに巧妙に隠されており、 外からは伺い知れないものです。現在大多数の大学人が、独法化に対して是々 非々の立場をとっており、もしそれで大学が良くなるならやっても良いと考え ているように見えます。しかし、小生のささやかな経験からいうと、それこそ 国立研究所の失敗の本質でした。いったん独法化を受け入れた後は、最初の約 束がほとんど反故にされても、ずるずると譲歩を重ねざるを得なかったのです。  一方で、構成員が声を一つにして訴えたことは受け入れられました。官僚は 相手の出方を注意深く見守り、値踏みを常にしているという印象でした。その 意味で、教官の大多数を占める非組合員が今回声を上げることは、大きな意味 があると思います。小生は移ってきたばかりで知り合いも少ないのですが、 「不幸の手紙」風に、メールのネットワークが拡がることを願っています。ど うかこれを受取られた方は、賛同してくれそうな同僚に転送して下さい。是非、 5月18日に時計台で会いましょう。当日、職員組合が目印になる「有志の会」 のプラカードを作って下さる予定です。  東大では多くの人が雑務や研究に追われていて、たとえ金曜日の昼休みとは いえ、時間を見つけるのは難しいかもしれません。しかしこの重要な節目に、 今まで沈黙していた教官が独法化反対の声を学内に挙げることは、(仮に独法 化されることになったとしても)大きな波になると思います。一緒に参加しま しょう。  以 上 なお、集会の詳細はhttp://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/にあります。 (以下参考:本年4月に独法化した産総研などの例) ◆政策を立てる側にとっての自主・自律:  産業技術総合研究所(産総研)の場合、研究者自ら理事長を選ぶ権限は与え られず、しかも企画本部は理事長のトップダウンマネージメントの補佐機能と 規定されており、このような組織の中では研究者が自主性・自律性を持つこと は絶望的である。産総研HPにあるように「時代の要請の高い産業技術の研究分 野に人的資源を集中的に投入したり、また横断的・融合的な新しい研究分野を 推進する研究単位を機動的に立ち上げたりすることが可能になりました」と、 "政策を立てる側"にとっての自主・自律となっている。大学にはこのようなピ ラミッド型の運営はなじまず、ネットワーク型の運営にすべきでないか。 ◆バラ色の宣伝と不自由な中身(秘匿される不利な情報):  さらに、産総研HPによると、「独立行政法人化により国の機関としては避け られなかった定員や機構の管理から外れることになります。組織運営において も、会計法や国有財産法等の制約が除去され、(中略)予算費目や単年度会計 制約の撤廃など、自由度が飛躍的に増加し・・」しかし、このことはそのまま 額面通りには受け取れない。情報源にご迷惑がかかるので、詳しくは言えない が、見えないところで、所轄官庁からのみならず、行革推進本部からも2重の 規制がかかっていることが伺える。  独法人において総事業費に占める人件費の割合は、前年度の実人員数の実績 を元に上限が決められており、そのためか産総研の例ではほとんどの研究員の 給与水準が減少するという予測がなされている。また、人員増は厳しく制限さ れていて、事実上不可能との信頼すべき情報があるが、これについても幹部限 りの通達として、公開された情報の中では全く触れられていない。  またほとんどの独法人で収入の増加と、支出の減少が中期目標として挙げら れている。ホームページには数字は記載されていないが、実際には外部評価が 行われる5年後までに10%の経費節減を行うという具体的な「自主」目標が拒否 できない形で約束させられている例が多い。都合の悪いことは伏せられている 事が多く、大学が独法化される時にも同様の情報の秘匿が起こらないという保 証は全く無い。 ◆細部に宿る大きな矛盾:  外務省が4月に出した通達によると、独立行政法人は政府機関ではなくなる ため、旧国立研究所は政府間の約束である科学技術協定に基づく海外研究機関 との各種取り決めを終了するよう指導することになった。地質調査所はこれま で国の機関であったために、外国政府や私企業から無償でデータの提供を受け ることができたし、その発表については国の機関としての重みを持っていたが、 今後の見通しが立たない。これも最初の約束「独法人は国でしかやれないこと を実施する機関」とした定義と大きく矛盾する。  これまで労働環境衛生は、人事院規則で承認ベースで行われていたものが、 民間と同じく労働安全衛生法が適用されて許可ベースに変更になった。労働安 全衛生法には職員の処分や事業所の営業停止などの罰則規定がある。上層部が 処分を恐れる余り、過度の予防策を研究者に課しているケースがある。現状を 改善することなしに、同様の基準を狭小な大学に適用したら、理科系の研究の 何割かは停止せざるを得なくなるのでないか。 ******************************************* 浦辺徹郎 東京大学大学院理学系研究科教授 地球惑星科学専攻 ******************************************* ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学法人化問題を広い視野から考えるのに役立つと思われ る情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)を紹介。種々 のML・検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。  メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は目次番号が記事 にリンクされている。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/ 発行部数 1989 (2001.5.14現在) (1257) Mag2:720|CocodeMail:352|Pubzine:82|Macky!:51|emaga:27|melma:25 直送 732(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・議員等): Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) --------------------------------------------------------------------------- End of Weekly Reports 52 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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