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Weekly Reports  No.71  2001.10.8 Ver 1.13

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-71.html
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       目次
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[71-0] 内容紹介
 [71-0-0] パブリックコメントと科研費申請
 [71-0-1] 国立大学独法化阻止ネットによる10/5 討論集会に105名参加
 [71-0-2] 中間報告「新しい「国立大学法人」像について」を巡って
  [71-0-2-1]  ◆「剰余金」の正体
  [71-0-2-2]  国大協臨時2時間総会10/29計画の謎
  [71-0-2-3]  経団連の「2001年度規制改革要望書」
 [71-0-3]  経常的研究資金をなぜなくすのか?
 [71-0-4] トップ30政策
  [71-0-4-1] 活気づく大学ランキング業界
  [71-0-4-2] トップ30政策:暗闇への抛擲
  [71-0-4-3] 研究評価は本当に易しいのか
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[71-1] 中間報告を巡って
 [71-1-1] 国大協の応対
  [71-1-1-1] 国大協設置形態検討特別委員会(第14回 2001.9.19 議事メモ)
  [71-1-1-2] ◆国立大学協会会長談話 2001.10.1
  [71-1-1-3] 「文科省とスケジュールをあわせた10.29国大協臨時総会」
 [71-1-2] 社説集
  [71-1-2-1] ◆北海道新聞社説(10/5)「国立大法人化*地方切り捨ての不安」
 [71-1-3] 大教作成資料:文部科学省調査検討会議 「中間報告」新旧対照表
 [71-1-4] 自民党文部科学部会・文教制度調査会合同会議(2001.9.27)
 [71-1-5] 東京大学職員組合見解(2001年10月2日)抜粋
 [71-1-6] 2001年度経団連規制改革要望:非公務員型の導入
[71-2] 文部科学省
 [71-2-1] ◆合田大学課長講演「大学構造改革と私学」(2001.9.4)
[71-3] 研究費をめぐる調査・議論など
 [71-3-1] 「我が国の研究活動の実態に関する調査報告」のポイント2001.9
  [71-3-1-1] 調査方法 
  [71-3-1-2] 要約
  [71-3-1-3] ◆経常的研究資金の必要性の理由もしくは効用(複数回答)
  [71-3-1-4] 競争的資金の必要性の理由もしくは効用(複数回答)
 [71-3-2] 「ネットによる公開討論会”独創的研究とは”」(2000.9.8-12.31)
  [71-3-2-1] 本庶 佑「独創的研究とは何か」
  [71-3-2-2] 山岸秀夫、科学者のモラルと喜び(2000/09/25)
 [71-3-3] ◆渡邊勇一「研究評価の難しさ(その1)」
  [71-3-3-1] 渡邊勇一「研究評価について(2)」(2001.10.1)
  [71-3-3-2] 参考:[58-1-2]渡辺勇一(新潟大学)2001.6.24
[71-4] トップ30政策が元気つける大学ランキング業者
 [71-4-1] 清水建宇「大学幕の内」「大学ランキング」創刊者のフォーラム。
  [71-4-1-1] 1999.4 東大入学式学長式辞
 [71-4-2] 旺文社「文部科学省御用達 国公私「トップ30」とは……?」
  [71-4-2-1] 平成12年度 国立大学別歳出&歳入決算額(百万円)
  [71-4-2-2] 朝日新聞夕刊(10/03)「大学トップ30、河合塾・旺文社が私案 」
 [71-4-3] (再)河合塾シンポ 2001.8.23、一傍聴者のメモ.
 [71-4-4] ◆喜多村和之氏の懸念
 [71-4-5] (再)喜多村和之「国際評価は公正か―自虐的な日本人の大学評価」
 [71-4-6] (再)大学ランクは信用できず 米誌の元担当者が暴露
 [71-4-7] 市川昭午「大学評価と資源配分」第6章
 [71-4-8] (再)『国公私「トッブ30」の概算要求について』の懇談について(報告)
 [71-4-9] 「全国ネット」へのリチャード・ゴンブリッチ氏のメッセージ
[71-5] 国大協会長への公開質問状と回答
 [71-5-1] 国大協会長への公開質問状2001.6/7, 9/16
 [71-5-2] 公開質問書に対する国大協会長からの回答2001.9.27
[71-6] ◆福沢啓臣「グローバル化とドイツの大学改革」(2000.3.9)
[71-7] 報道より
 [71-7-1] Nature「日本のとった呆れかえる狂牛病対策」
 [71-7-2] 読売「名大教員に「高等研究院」 年度内にも新設 講義免除、任期5年」
[71-8] 発言
 [71-8-1] ◆九大移転問題・独法化問題・研究院構想に関する意見交換の広場
 [71-8-2] 市川昭午「高等教育費の国際比較―少ない日本の高等教育費支出」(2001.09.19)
 [71-8-3] 矢野 眞和「大学教育の質と経営」(2001.10.3)
 [71-8-4] ◆長谷川浩司氏ウェブサイトより「最近の動きについて 2001.9.21,20,19」
[71-9] 議員会館での討論集会[70-4]に105名参加
 [71-9-1] ◆豊島耕一「4年で価値規範は変わらない」10.5国会内集会レジュメ
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[71-0] 内容紹介

[71-0-0] パブリックコメントと科研費申請

パブリックコメント[70-2]の期間(10月29日締切)は、学術振興会科学研
究費の申請期*1 と重なっている。申請件数は平成13年度で11万3千件
(採択2万1千件)*2。申請数に比例する採択数、経常的研究資金廃止に向か
う流れの加速、そして、学内外の競争的資金配分の根拠となる科研費取得実績、
ーーーこれらが背景となって、年々強まってきていた、多数種目申請傾向が、
遠山プランを契機に強まり、大学・学科・分野等の指導が強化され多くの教員
が申請準備に時間をかけていることが推測される。しかし、今年度の申請種目
数を1つ減らしても、パブリックコメントに時間を割き、経常的研究費がなく
なる「国立大学法人化」に各人が疑義を呈すべきではないだろうか。経常的研
究資金があってこそ効を奏する競争的研究資金であることは、調査結果[71-3-1-3]
が示すように、どちらかと言えば応用的なテーマの研究者にとっても当然のこ
とと認識されている。

*1 http://www.jsps.ab.psiweb.com/image/schedule1.gif

*2 http://www.jsps.ab.psiweb.com/sinsai.gif

[71-0-1] 国立大学独法化阻止ネットによる10/5 討論集会に105名参加

 豊島耕一氏「集会は国会議員8名を含む105名の参加で成功裏に終わりま
した.参加者の皆さん,どうもありがとうございました.主催者では予定して
いなかったのですが,集会決議を出そうという提案がフロアから出され,議長
団に委任されました.参加された皆さんは次の「集会決議案」をクリックし,
ご検討下さい.10日(水)までご意見を伺います.大きな異論がなければ5日
にさかのぼっての「集会決議」としてメディア等に公表します.」[71-9]

 豊島氏の「4年で価値規範は変わらない」[71-9-1]は、時間が経過しただけ
で意味が変化する世界の論理を大学が当然のように受け入れることへの警鐘と
共に、真に必要な改革として「文部科学省と国立大学との関係の正常化・大学
予算編成権の文部科学省からの分離・大学運営への学生の関与・「運営諮問会
議」への市民の参加・予算配分にリンクしない大学評価促進」を掲げている。
                            ------------------------------

[71-0-2] 中間報告「新しい「国立大学法人」像について」を巡って

[71-0-2-1]  「剰余金」の正体

中間報告について疑問を投げ掛ける社説が増える[71-1-2]一方で、産業界や文
部科学省の論理を繰り返すだけの新聞も少なくない。それどころか、文部科学
省提供の中間報告概要[70-2-1]や以前の独立行政法人化宣伝文しか読んでいな
い記事も多い。たとえば、「法人化後は、使途を特定しない運営費交付金とし
て一括支給され、この枠内なら自らの判断で事業に充当することができる。」
などと書く記事などがそうだ。
  中間報告本文には「自己努力による剰余金は、あらかじめ中期計画で認めら
れた使途に充当する」[70-1]とある。剰余金は、中期計画に「剰余金使途」と
記載された事項にしか使えない。逆に言うと、中期目標達成のために立てた計
画実施の資金の一部は自己努力で充当せよと、運営費交付金を財務省が値切る
準備がされているのである。自己努力が足らずに剰余金が出ない場合には中期計
画の一部は達成できず、期末にマイナス評価となる。
 大学関係者には流石に思い違いをしている者は既に居ないと思うが、マスコ
ミ関係者の中には未だに政府公報を鵜呑みにしている方々も少なくないようだ。
大半の政府関係者にとっては、国立大学法人化は、単に財政削減の一手段に過
ぎないのである。
                            ------------------------------

[71-0-2-2]  10/29国大協臨時2時間総会計画の真意

中間報告に関する国大協会長談話[71-1-1-2]が出た。部分的修正は必要だが大
筋では良しとする内容だ。10月29日に2時間の臨時総会で、この談話了承
を求める予定だという。設置形態検討特別委員会の報告「法人化の枠組」
 [53-3-2]は6月総会で意見が割れて了承も否認もされなかった。それより後退
している中間報告を容認する「会長談話」了承の是非について2時間総会で結
論が出るとすれば、単に反論する大学への行政指導の強さを証明するだけのも
のだろう[71-1-5]。
                            ------------------------------

[71-0-2-3]  経団連の「2001年度規制改革要望書」

この中で、国立大学独立行政法人化を非公務員型とすることを要求している
[71-1-6]。ここで「独立行政法人化」と言っていることに注意すべきだ。「国
立大学法人化」という言葉で何か独立行政法人化とは全く異るものになったか
のように見せかけることを喜んでいるのは誰なのだろうか。
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[71-0-3]  経常的研究資金をなぜなくすのか?

文部科学省科学技術・学術政策局調査調整課が、研究開発に携わる理工系の研
究者に65項目からなるアンケート調査を行った[71-3-1]。科学技術振興事業
団ファイルからアクティブな研究者を1200名無作為に選び、771名の回
答を得ている。経常的研究資金の必要性に対する回答[71-3-1-3]が、競争的研
究資金の必要性に対する回答[71-3-1-4]より倍近く多いが、報告書の本文では、
この点には触れていない。応用系の第一線の研究者でも、経常的研究資金が不
可欠とする意見が過半数であることを文部科学省や総合科学技術会議は無視し
て良いのか。研究経験のない官僚や政治家に、日本の科学技術政策を委ねてい
ては大変なことにならないか。
  昨年2月に「大学に、半導体に特化せよと言っても全然そうならない」と、
講演で述べた与党議員の例もある[71-8-4]。
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[71-0-4] トップ30政策

[71-0-4-1] 活気づく大学ランキング業界

 大学ランキングの草分けである清水氏が、香港の大学ランキング調査への回
答を拒絶した理由を述べた蓮實前東大学長の式辞[71-4-1-1]を取り上げ、研究
者との議論を8〜10月の間に行っている[71-4-1]。大学関係者の発言の多く
は、教育・研究の現場に居るものの自然な気持ちを冷静に語っている。

  喜多村氏が、公的機関提供データに基づき業者が大学ランキングを行うイギ
リスの例を挙げて、大学評価機構の社会的影響を懸念している[71-4-4]。トッ
プ30政策は、それに拍車を掛けることになるだろう。
                            ------------------------------

[71-0-4-2] トップ30政策:暗闇への抛擲

 文部科学省大学課長が、「30」という数は、深く考えて出たわけではない
がとても気に入っている、と私学高等教育研究所主催の研究会で発言したそう
だ[71-2-1]。また、評価について自信があるわけではないが、やるしかない、
という趣旨の発言を参加者が記録している。さらに、教育評価をするかどうか
も未定とも言う。一方、トップ30選出の評価項目には、任期制の導入・産業
界との連携などの項目まで入っている。

  遠山プランの本質は、出資者による大学ガバナンスを重視し、トップダウン
「規制」をあらゆる場面で強化することにある。しかし、官僚が大学を操り研
究者の判断を軽視する国で、大学システムが世界的水準を維持できたためしは
ない[71-4-9]という指摘は誰でも納得できることであろう。ドイツでの大学規
制緩和も、権限を学長から学部へと下ろす方向にあるという[71-6]。

  関係者の深い懸念・多様な問題点の指摘等にも怯まずに、一国の高等教育シ
ステム全体を暗闇へ抛擲する「大胆さ」は、誇らしげにくり返し強調するよう
な種類の美徳なのだろうか。あるいは、大学に関係するすべての人間がーー官
僚も含めてーー絶望の末に自暴自棄に陥っているのか。
                            ------------------------------

[71-0-4-3] 研究評価は本当に易しいのか

教育評価は難しいが、研究評価は易しい、という論調が多いが、渡邊勇一氏が
疑念を呈している[71-3-3]。また、ドイツに30年を過ごしてきた研究者の報
告[71-6]があるが、報告者が関係する人文・社会科学などの分野では評価基準
は明確ではない、という。
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-1] 中間報告を巡って

[71-1-1] 国大協の応対

[71-1-1-1] 国大協設置形態検討特別委員会(第14回 2001.9.19 議事メモ)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2668.htm
「〔議事〕 
1.「新しい『国立大学法人』像について」(中間報告案)について

(1)初めに委員長から,「中間報告案」が提出されるまでの文部科学省,国大
協における検討の経緯と前回特別委員会(H.13.5.21)以降,本委員会として
は,「専門委員会連絡会議」に依頼し,文部科学省が発表した「『中間報告の
とりまとめの方向(案)』についての意見を取りまとめていただき,調査検討
会議に提出したことなどの報告があった。
 なお,本日配付の「中間報告案」は未定稿であり,今後,一部修正が加えら
れ「中間報告」として9月27日に公表され,パブリックコメントに付し,再度
の連絡調整会議を中心に調整の上,今年度中に「最終報告」としてまとめられ
る予定であることなどの紹介もあった。

(2)「中間報告案」に関して,9名の委員から意見の提出があったことなどの
紹介があった後,自由な意見交換が行われた。
 委員からは,経営・教学の一致問題,教員身分と教特法,アカデミック・フ
リーダムの精神の盛り込み,施設設備の現物出資,運営組織A〜C案併記と絞
り込み,未確定の事項(A〜C案,教職員の身分,学長の選出方法)に対する
文部科学省の見方,国大協としての意見表明のやり方などに関する発言,意見
交換があった。

(3)これらの意見交換を受け,委員長から,「中間報告」は国立大学に片寄り
すぎる等の批判が,パブリックコメントを含めて,政治家・公私立大学関係者・
他省庁関係者から出る可能性があり,今後は指摘があったように,重要な論点
に絞り,国大協としての意見をしっかり表明することが必要であるとのまとめ
があった。

2.今後の対応について

(1)委員長から,当面の「中間報告」に対する本委員会としての意見の取りま
とめ方が諮られたが,国大協としての意見の取りまとめ方もあり,初めに理事
会「将来構想ワーキング・グループ」の座長,松尾副会長から,ワーキング・
グループにおける国大協理事会としてこの問題への意見の取りまとめ状況の説
明があった。

(2)これを受けて協議の結果,設置形態検討特別委員会としては,次のように
対応することとなった。

 1)「中間報告」に対してはパブリック・コメントとしても対応するため,専
門的な立場からの意見集約を行う。

 2)早急に対応する必要があり,意見の原案作成作業は,設置形態検討特別委
員会の専門委員各位にお願いする。

 3)設置形態検討特別委員会はその原案を審議し,必要があれば「将来構想ワー
キング・グループ」との調整を行い,意見案をまとめる。

(3)国大協としての対応について,次のように確認された。

 1)設置形態検討特別委員会,理事会「将来構想ワーキング・グループ」がま
とめた意見案を,どのような形で一本化し,文部科学省に提示するか(設置特
委の名前で意見案とするか,理事会名か,国大協としてか)は,9月27日の臨
時理事会で協議する。仮に,国大協として意見表明をするなら,締切りが10月
下旬とすれば,臨時総会の議を経る必要がある。

 2)国大協としての正式な見解を表明するとなれば,長尾会長が「長尾見解」
のようなものも準備されるようなことも聞き及ぶので,会長との調整も必要で
ある。以上をもって本日の議事を終了した。

                            ------------------------------

[71-1-1-2] 国立大学協会会長談話 2001.10.1

『新しい「国立大学法人」像』の中間報告等について 
http://zendaikyo.or.jp/dokuhouka/kokudaikyo/01-10kaityoudanwa.htm

「この度、文部科学省の「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」
がまとめた『新しい「国立大学法人」像について』(中間報告)は、国立大学
ひいては我が国の高等教育と学術研究の将来の発展に、決定的な影響を与える
ものとなる。

  本協会においては、昨年6月の第106回総会において、「独立行政法人通則
法を国立大学にそのままの形で適用することには強く反対する」立場を堅持し
つつ、我が国の高等教育と学術研究の健全な発展に資するために、文部科学省
の調査検討会議に積極的に参加して、そこでの討議の方向に本協会の意向を強
く反映させることを決議し、以来、設置形態検討特別委員会において議論を積
み重ね、これらの議論を踏まえて様々な対応を行ってきた。

 今回の中間報告においては、国立大学法人法ないし国立大学法を制定して、
独立行政法人通則法の下における「独立行政法人」とは異なる「国立大学法人」
という枠組と、行政改革の視点を越えた21世紀における国立大学の改革と発展
を目指した様々な新しい仕組みが提示され、一定の評価が出来るものと考える。
しかし、中間報告の内容には、学問の自由に由来する「大学の自治」を基礎に
教育研究を発展させるという観点、あるいは国立大学がもつべき自主性・自律
性という観点から更に検討を要する点がある。とりわけ、いくつかの重要な論
点について、選択的記述がなされ、また曖昧と思われる表現も散見される。今
後最終報告に向けて、パブリック・コメントを参考に、詰めの作業がなされる
が、本協会としては、今回の中間報告を十分検証するとともに、最終的な制度
設計に向けて、引き続き重大な関心を持ち、意見を表明していきたい。

 なお、去る6月に出された「大学(国立大学)の構造改革の方針」は、今回
の中間報告にも微妙な影響を与えている。この内容については本協会等と何ら
の相談も協議もなく、文部科学省が一方的に作成し、発表したものである。現
在の政治状況下にあってやむを得ない面があるとはいえ、文部科学省と本協会
のこれまでの信頼関係を揺るがしかねず、大学の現場では無用の混乱も生じて
いる。「構造改革の方針」に沿って今後の諸施策を進めるとしても、本協会等
において積み重ねてきた議論・意見等や個別大学の事情等も十分考慮し、慎重
になされることを要請する。」
                            ------------------------------

[71-1-1-3] 「文科省とスケジュールをあわせた10.29国大協臨時総会」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2641.htm
   独行法反対首都圏ネットワーク

☆ 文科省とスケジュールをあわせた国大協臨時総会(10/29)
2001.10.2 [he-forum 2641]  文科省とスケジュールをあわせた国大協臨時総会
「
                                                        2001年10月2日
                             独立行政法人反対首都圏ネットワーク事務局

 国大協臨時総会の日程が最終的に判明しました。

 10月29日(月)国大協臨時総会 13:30〜15:30(2時間) 学士会館
 (10月30日は開催されません)

 これをみて驚くのは、9月27日臨時理事会の方針によると、文科省「中間報
告」に関する会長談話(10月1日発表)を報告するという重要な任務を有する臨
時総会に、10月29日午後のわずか2時間という時間しか用意されていないこと
である。このようなわずかな時間で日本の大学システムの未来に関わる重大問
題=独法化関連議題が審議できるというのであろうか。

 この臨時総会日程設定の裏には、文科省スケジュールとの符合が推定される。
すなわち、文科省「中間報告」発表日(9月27日)と国大協臨時理事会開催日の
一致、そして、「中間報告」に対するパブリックコメント締切日(10月29日)と
国大協臨時総会開催日の一致である。

 もはや国大協執行部は独自の意思決定プロセスを放棄し、文科省のスケジュー
ルにあわせた形式的な合意調達のみを行おうとしているのだろうか。このよう
な、臨時総会の日程では十分な議論は不可能であり、私たちは臨時総会の日程
の再考を強く求めるものである。

 なお、定例総会の日程は、以下のように決定されている。

11月14日(水) 国大協総会(定例)  10:00〜17:00/学士会館
11月15日(木) 国大協総会(定例)  10:00〜12:00/学士会館
              学長懇談会(文科省) 13:00〜   /学士会館」
                            ------------------------------
[71-1-2] 社説集
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/928-dgh-report-news.html

[71-1-2-1] 北海道新聞社説(10/5)「国立大法人化*地方切り捨ての不安」
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/928-dgh-report-news.html#doushin-a05
                            ------------------------------

[71-1-3] 大教作成資料:文部科学省調査検討会議 「中間報告」新旧対照表
http://zendaikyo.or.jp/dokuhouka/zendaikyo/tyukantaisyou.htm
                            ------------------------------

[71-1-4] 自民党文部科学部会・文教制度調査会合同会議(2001.9.27)
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2651.html
                            ------------------------------

[71-1-5] 東京大学職員組合見解(2001年10月2日)抜粋
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/011002kenkai.html
「・・・・
1.独立行政法人制度=通則法による制度設計である
・・・・
2.学外者による大学管理・統制への道を開く
・・・・
3.「学問の自由」「大学自治」は瓦解する
・・・・
4.「多様な職種を自由に設定」すれば、職場は荒廃
・・・・
5.競争原理と第三者評価で教育研究は衰退
・・・・
 今回出された中間報告は、昨年の「自民党提言」を下敷きにしており、大学
を国の政策目標を実現するための有力な機関として位置づけ、6月11日に提出
された「大学構造改革方針(遠山プラン)」に見られる、大学を経済政策の道
具に変えようとするものである。
 中間報告の描く大学では、21世紀を担うべき大学像からは遠ざかり、「自主
性・自律性」に欠けた、国家と経済界のコントロール下の大学とならざるを得
ない。もはやそれは、自治的に教育研究を行う大学とは言えないであろう。大
学を、こうした組織へと変質させてはならない。
 学問の自由と大学の自治を守るために、大学で働き、教育と研究を担い、支
える全ての人は、今こそ決然と立ち上がる時である。」
                            ------------------------------

[71-1-6] 2001年度経団連規制改革要望:非公務員型の導入
−経済社会の構造改革と行政改革の断行に向けて−より
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/044/mokuji.html
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2001/044/15.pdf
その他(11 ) 国立大学の独立行政法人化における非公務員型の導入【新規】

規制の現状:企業が国立大学の教員等と共同研究や委託研究を行う際、現在の
公務員の身分では、兼業などにおける制約が大きい。また、公務員として身分
のままでは、給与体系や人材採用の面で柔軟性に欠けており、国立大学の経営
の自由度が十分に担保されない。

要望内容と要望理由
(要望)国立大学を独立行政法人化する際は、非公務員型を導入すべきである。
(理由)国立大学を活性化させ、産学連携を推進するためには、トップのリー
ダーシップ発揮、学部・学科の設置、事務局体制などの組織編成、教官・職員
の雇用形態、企業との契約形態などの面で、国立大学に対して、米国並みの自
由度を付与することが不可欠であり、これらを総合的に実現するためには、国
立大学の独立行政法人化を急ぎ、非公務員型を導入する必要がある。
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-2] 文部科学省
[71-2-1] 合田大学課長講演「大学構造改革と私学」(2001.9.4)
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-3] 研究費をめぐる調査・議論など

[71-3-1] 「我が国の研究活動の実態に関する調査報告」のポイント2001.9
文部科学省科学技術・学術政策局調査調整課
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/09/010914.htm
                            ------------------------------
[71-3-1-1] 調査方法 

「過去1年間(1999 年1 月〜12 月)にJICST ファイル(※)に登録された論
文から、第1著者もしくは第2著者として科学技術論文を執筆している産学官
の研究者を、現在研究活動を行っている研究者として1,200 名を無作為抽出し
た。調査票は郵送し、記入された調査票を返送して頂き、回収した。」有効回
答者数:771 名(64.3 %)。
#(アンケートの項目は65。応用理工学が主であり、理系基礎研究者はほと
んど含まれていない。)
                            ------------------------------

[71-3-1-2] 要約

1.研究者の所属機関によって、研究者個人の評価の処遇への反映度にばらつ
きが見られ、民間企業の研究者は反映されているとの意識が比較的高く、処遇
面では俸給(賞与等含む)に対する期待度が高い。大学等や公的研究機関等の
研究者は、処遇として研究費の増額を望む割合が高い。

2.研究費に占める最適な競争的資金の割合としては、全体では8割近くが50
%未満と回答しており、20%以上30%未満との回答が最も多い。大学では40%
以上と回答した割合が過半数を超え、競争的資金の導入により積極的である。

・大学では研究費の増額を要望する割合が高く(項番1.参照)、現状の研究
費に大幅な増額を期待できず、一部では、経常的研究資金が減額もしくは確保
しづらい状況も存在することから、新たな研究資金源としての競争的資金に対
する期待が高いものと推測される。
・一方、基礎研究を行うに当たっては、長期間にわたる安定した資金も必要で
あることから、経常的資金の必要性も指摘されている。今後、競争的資金と経
常的資金の効用を見極めつつ、これら両資金の在り方について検討を行ってい
く必要がある。

3.過半数の研究者が、研究活動に付随する補助的業務について負担に感じて
おり、中堅層からの指摘が比較的高い。特に30代の若手研究者においては、研
究者の能力が開花しやすい時期であり、優秀な研究者に対しては過去の業績の
如何に関わらず、独立して研究室を主宰し、研究活動に専念できるよう諸制度
を充実させていくことが不可欠である。

4.研究者の流動については、推進すべきでないとする研究者は少数で、研究
者の約7割がある程度の流動を行うべきであると考えている。

・流動の程度としては、研究者全体の10%以上30%未満とする回答が過半となっ
ている。また、流動すべき年齢層については、35歳未満の研究者を対象とする
回答が約7割となっており、その理由として、柔軟性や環境への適応力、研究
者の能力として開花しやすい時期であるとの指摘が多い。

・大学では海外の機関を望ましい派遣先に挙げる回答が多いが、公的機関及び
民間においては大学とするものが、海外の機関とするものより多い。

5.民間企業の研究者の特許化意識と比較し、大学や公的研究機関では基礎研
究など研究成果を特許化するに難しい部門も存在しており一概には言えないが、
大学や公的研究機関の研究者は特許化に消極的といえる」
                            ------------------------------

[71-3-1-3] ◆経常的研究資金の必要性の理由もしくは効用(複数回答)
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/13/09/010914/003.gif
 401名:基礎研究のような長期間にわたる研究には、安定した経常的資金は不可欠で
あるため
 339名:競争的研究資金だけでは、研究テーマ決定に制約を受け、自由な研究活動が
阻害される恐れがあるため
 302名:競争的研究資金では、研究内容が流行に左右され、特定分野にのみ重点的に
配分される恐れがあるため
 233名:萌芽的な研究を育成し、試行錯誤的な研究を保護するため
 172名:競争的資金が確保できなかった場合、研究を継続できなくなる可能性があるため
 152名:競争的研究資金では、確実に成果の期待できる研究に対してのみ重点的に資
金が配分される恐れがあるため
 137名:人件費等の固定費を確保し、安定した研究活動を行う必要があるため
  90名: 争的研究資金の審査体制の公平性等に疑念があるため
                            ------------------------------

[71-3-1-4] 競争的資金の必要性の理由もしくは効用(複数回答)

 252名:戦略分野に効率的に研究資金を集約することが可能であるため
 210名:資金を得るために、評価される研究内容を目指すようになるため
 205名:経常的研究資金のみでは硬直化した研究予算が是正されないため
 190名:経常的研究資金では支出が難しい研究資金を確保できるから
 149名:研究内容のスクラップ&ビルドを促進させるため
 145名:経常的研究資金が減額されている、もしくは確保が難しいため
 130名:資金の流動化は人材の流動化をも促進させ、優秀な人材の集約につながるため
 129名:評価を受けた価値のある研究にのみ資金が配分されるため
 119名:拘束されない自由な発想に基づく研究が可能なため
  72名:経常的研究資金だけでは研究の場が限定され、ポストドクター等の研
究活動が限られてしまうため
                            ------------------------------

[71-3-2] 「ネットによる公開討論会”独創的研究とは”」(2000.9.8-12.31)
日本免疫学会ニュースレター編集委員会
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molonc/www/immune/Originality.html
「吉村昭彦氏の“独創性とは何か、あるいは優れた仕事を成し遂げるには何が
必要か”というエッセイを読み、少なからぬ違和感を覚えたので、あえてJSI
Newsletterに一石を投じ、多くの方からの喧々諤々の論議を期待したいと思う。」
                            ------------------------------

[71-3-2-1] 本庶 佑「独創的研究とは何か」
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molonc/www/immune/OriginalityHonjo1.html#6C
「・・・私は教室の若い人に優れた研究者になるための6つの「C」を説いて
いる。 すなわち、好奇心 (curiosity) を大切にして、勇気(courage)を持っ
て困難な問題に挑戦すること(challenge)。必ずできるという自信
(confidence)を持って、全精力を集中(concentration)し、そして諦めず
に継続すること(continuation)。その中でも最も重要なのは、curiosity,
challenge, continuation の3Cである。これが凡人でも優れた独創的と言わ
れる研究を仕上げるための要素であると私は考える。」
                            ------------------------------

[71-3-2-2] 山岸秀夫、科学者のモラルと喜び(2000/09/25)
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/molonc/www/immune/OriginalityYamagishi8.html
「あえて私の提言はといえば,envision, endeavor, and enjoy( 考え,努力し,
のち楽しむ)の3Eである。・・・私はあえて21世紀に活躍する若い人たちに
3Eの中のenjoy,オンリーワンからスタートしてえた達成感をじっとかみしめ
てその喜びを次の飛躍につなげる事を強調して,はなむけとしたい。
                            ------------------------------

[71-3-3] ◆渡邊勇一「研究評価の難しさ(その1)」
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/3557.html
「・・・・
何故研究の評価が困難か?

 それについては一大論文を必要とするほどの理論を必要としないでしょう。
研究者なら皆すぐに誰にでも解る平易な文章で理由を述べられるはずです。研
究の現場から遠い人達にも以下の事情はわかるでしょう。現実には、いとも気
楽に評価・評価と口走る人達が多く、研究者もおとなしくそれに従っています。
その心の中には、自分の所は多分悪くない評価が下されるという期待があるの
かも知れません。しかしその様な期待で反対をしなければ、正当な理由無しに
排除される組織が現れるという点にまで来てしまったのですから、もうこんな
事を言うのは遅すぎるのかも知れません。

1)どの分野の研究も、進めば進むほど狭い分野に集中しなくてはいけなくな

ります。そして研究者は狭い領域に全精力を毎日注いでいるうちに、自分の学
問の総体を把握する事が困難になってしまう傾向が生じます。この傾向は複雑
な生き物の体や現象を扱う、医学・生物学で特に顕著です。一つの学科組織で、
同僚の研究の意義を説明したり、内容を深く理解するのが困難になっている現
状は、どこの大学でも研究室でも間違いなく存在するのは常識となっています。

2)仕方がないから、どんな雑誌に投稿しているか。また論文数はどの程度か。
ImpactFactorなどを調べることもありますが、これは分野によっては問題があ
るし、これのみに依存するのは、大変危険です。

3)何より困難なのは、大変狭い分野の二つの異なった研究を評価しなくては
いけない時です。一体何を基準にどちらか一方が優れていると断定できるので
しょうか? 大きな予算が関係する場合にはそれこそ死活問題となりましょう。
この決定を下す人間は果たしてその重責に耐えるほどの能力を持っていると自
負できるのでしょうか。

4)更に、どの分野の研究も、多くの研究者の業績が連続したり、重複したり
する部分が多くて、個人で卓越した業績を上げるというのは、幸運に近い出来
事でしょう。真実を偽ったり、自己宣伝に巧みな人間は、自己の成果を全て自
分がした手柄であると吹聴することも多く起こるでしょう。 生物学で有名な
のは、ワトソンとクリックがDNAモデルを思いついた頃に、他の研究室(有
名なロザリンド・フランクリン)のX線解析の写真を見たことで、彼女の果た
した役割は大変重要だったと歴史的に評価されています。不幸にもフランクリ
ンは癌で死んでしまったために、授賞の時に問題は起こらなかったのです。別
にこのような例を出さなくても、時間軸の中では研究というのは他と連続して
いるのが当たり前過ぎることです。

5)上の項目と矛盾する面が少しありますが、新しい研究成果が出現する時に
は、常にそれを支持する沢山の量のデータに裏付けられていないという状況が
あります。独創性が高いほど参考文献が少なくなるのは当然のことです。日本
人は特に支持するデータの量(特に欧米の)を第一の基準に考えて評価判断し
てしまいます。この点も評価の難しさの本質的な面であるといえるでしょう。

 その他にもあるかも知れませんが、これだけあれば評価をどのように行うか
は簡単ではないということを結論づけるのには十分でしょう。」

                            ------------------------------

[71-3-3-1] 渡邊勇一「研究評価について(2)」(2001.10.1)
http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/3558.html

「・・・科学技術創造立国という名の施策が全て産業のための研究という方向
で良いのか、貴重な税金の使途の有効について、accountability を常に問わ
れている大学からすると、我々の研究室の何百倍・何千倍もの予算を取り仕切っ
ている省庁のaccountability と長い目でみた responsibility というのは一
体どうなのかと思います。」
                            ------------------------------

[71-3-3-2] 参考:[58-1-2]渡辺勇一(新潟大学)2001.6.24
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/voices/01624-watanabe-y.html
「=科学を金もうけの道具としかみなさない愚行で
日本の科学は衰退する:科学史に照らして=」
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-4] トップ30政策が元気つける大学ランキング業者

[71-4-1] ◆清水建宇「大学幕の内」「大学ランキング」創刊者のフォーラム。
http://www.asahi.com/column/aic/Thu/univ-bn.html
http://www.asahi.com/column/aic/Thu/d_univ/20010830.html
#(2001.8.30-10.4は蓮實前東大学長の入学式式辞1999.4.12への清水氏の批判
(2001.8.30)から始まる、教員・研究者対ジャーナリストの「大学評価」論争。)
                            ------------------------------

[71-4-1-1] 1999.4 東大入学式学長式辞
http://pe-web.aichi-u.ac.jp/~ueya/toudai.htm
「私がどうしても容認できないのは、「アジアの大学ベストランキング」といっ
たスポーツ・ジャーナリズム的な手法が、大学を語るのにごく自然なものであ
るかのようにいたるところで採用されていることの不自然さであります。その
不自然さを、必要悪として、あるいは知的な遊戯として容認するという態度も
ないではありません。それに耐えてみせることが、成熟した姿勢だという人も
いるでしょう。だが、人間の思考は、いつでもそのようにして頽廃してゆくも
のなのです。そして、知性の名において、その頽廃にさからわねばならないと
いうのがわたくしの考えなのです。」
                            ------------------------------

[71-4-2] ◆旺文社「文部科学省御用達 国公私「トップ30」とは……?」
――活力に富み国際競争力のある国公私立大学づくり――
http://www.obunsha.co.jp/information/month/m0110/m01102.HTM

「・・・これまでみてきた資金配分や、世界的な学術論文数などの実態、ある
いは東京・国立4大学連合(東京医歯大・東京外語大・東京工大・一橋大)など、
新しい教育・研究システム等を踏まえ、各大学のこれまでの実績等を幅広く検
証し、「トップ30」に入るであろう大学を大胆に予測してみると、次の<表7
>にあげたような顔ぶれが浮かんでくるのだが・・・・。

 こうした重点政策は、アメリカやイギリスをはじめ、中国や韓国など、アジ
ア各国でも行われており、成果をあげているという。
 今回の国公私「トップ30」は、こうした諸外国で実施されている重点大学政
策も参考にしているものとみられる。
 しかし、科学技術の進展には基盤となる基礎研究が重要であり、そのための
教育も含めた研究環境を整備することは不可避である。短期的な利益だけを追
求するあまり、特定分野に資金と人材を重点配分し、基礎研究やそれを支える
教育までを疎んじてしまっては、かえって高等教育全体を危ういものにしてし
まうだろう。
 「角を矯(た)めて牛を殺す」ことのないよう、国家的・社会的課題に対応
したバランスのとれた教育・研究の環境づくりが重要だ。」
                            ------------------------------

[71-4-2-1] 平成12年度 国立大学別歳出&歳入決算額(百万円)
 大学     決算額     大学    決算額     大学    決算額
        歳出   歳入          歳出   歳入          歳出   歳入
東 大 193,003 57,767 金沢大 51,465 21,591 長崎大 34,847 19,390
京 大 121,224 42,525 岡山大 50,256 26,498 群馬大 34,791 18,005
東北大  95,943 36,686 千葉大 46,354 25,290 岐阜大 34,751 15,762
九 大  93,788 35,015 新潟大 46,184 22,633 徳島大 33,613 16,672
阪 大  92,843 41,918 信州大 39,189 19,878 山口大 33,276 19,290
北 大  74,226 30,764 東医歯 38,869 18,828 三重大 30,718 17,312
名 大  69,447 31,548 熊本大 38,802 20,021 弘前大 30,620 15,289
筑波大  69,368 22,850 愛媛大 37,638 15,548 山形大 28,846 15,918
広島大  64,372 25,931 東工大 37,216  9,642 琉球大 28,395 13,911
神戸大  56,460 24,615 鹿大   35,724 19,536 鳥取大 26,347 14,333
                            ------------------------------

[71-4-2-2] 朝日新聞夕刊(10/03)「大学トップ30、河合塾・旺文社が私案 」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2658.html
                            ------------------------------

[71-4-3] (再)河合塾シンポ 2001.8.23、一傍聴者のメモ.
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2431.htm
                            ------------------------------

[71-4-4] 喜多村和之氏の懸念
「欧州諸国の大学評価―実地調査にみる印象」(2001.09.26)
http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia50.html
・・・そうなると日本の国立大学もイギリスの大学と同じように、公的機関か
ら提供される「権威あるデータ」に基づいて、トップからボトムまで、あたか
もスポーツの勝敗や番付のように序列化されることになりかねない。そして、
やがて全国の国公私立大学がすべて序列化されることになるとすれば、まこと
に恐ろしい事態といわざるを得ない。
・・・
欧州の大学評価の問題では、ほかに報告したい問題が多々あるが、紙幅の関係
で、日本とも関係する点を挙げるにとどめる。ひとつは、大学評価を直接的に
資源配分に結びつけているのはイギリスだけであり、欧州諸国では英国的評価
は例外的な事例、ある学者によれば最悪の事例(worst examle) とみなされて
いることである。いまひとつは、大学評価は政府の手に委ねるのではなく、大
学自らの自律性にまつべきであるという信念が頑固に志向されている、という
ことである。政府の直接的な介入と大学の自律性の喪失へと向かおうとしてい
るなかにみえる日本の高等教育は、まさにその逆を行こうとしている。その先
には何が待っているのだろうか。
                            ------------------------------

[71-4-5] (再)喜多村和之「国際評価は公正か―自虐的な日本人の大学評価」
http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia44.html
                            ------------------------------

[71-4-6] (再)大学ランクは信用できず 米誌の元担当者が暴露
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2417.htm
                            ------------------------------

[71-4-7] 市川昭午「大学評価と資源配分」第6章
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/906-ichikawa.html

「むろん年毎に多少の変動がある.6年間,U.S.News & WorldReportの編集者
だった人の回顧によれぱ,同誌が行うランキング(America’s BestColleges)
は大学の経営者や管理者を一喜一憂させている.しかし,それは学生の応募に
1割程度の影響は与えるが,あくまでも一要因であるにすぎない.他に経費,
立地,教育の質なども学生の応募を左右する.にもかかわらず,考え方や方法
に対する苦情が絶えず,アメリカの大学を悪くする元凶のようにいわれるのは,
それが奨学寄付金等も左右する場合があるからだという.」

#(以前も紹介した論文[67-9-4]。「大学評価の費用・コスト考慮すると、ア
クレディテーションの代替案も検討することが必要となる、代替案の例として
は、同僚評価・事前評価・高等教育の構造化(種別化)・市場化がある」等。
国立大学も文部科学省も、概算要求等の「事前評価」システムのコストに辟易
してきたが、それに変る国立大学法人における事後評価コストが、今までより
小さなものとなるかどうか誰も知らない。少なくとも、独立行政法人化した旧
国立研究所では、いままでよりも煩雑になっているという。)
                            ------------------------------

[71-4-8] (再)『国公私「トッブ30」の概算要求について』の懇談について(報告)
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/831-kdk.html
                            ------------------------------

[71-4-9] 「全国ネット」へのリチャード・ゴンブリッチ氏のメッセージ
独立行政法人化阻止 全国ネットワーク
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/gombrich.html

「私は,日本の国立大学をいわゆる「独立行政法人」に変えることで,これを
中央政府の強いコントロールの下に置くという新しい立法について知りました.
この制度では,それぞれの大学の計画は文部科学省によって管理されチェック
されます.提案をよく吟味してみると,「独立」という言葉はほとんど本当の
意味を持たず,予見されるのは政府による中央集権的な支配です.そのような
制度はたしかに経済効率を改善し,また行政上の形式を整える事にはなるかも
知れませんが,大学に対しては,学問の自由と大学の本質的な役割を危険にさ
らすに違いありません.大学の本質的な役割とは,彼らが適切と考えるいかな
る方法でも真理を探求すること,そして何の恐れも持たずに,あるいは賛同を
当てにしたりせずに,彼らの見解を発表するということです.間違いなく今日
までの歴史が何度も繰り返し示すことは,学問の自由を危険にさらすことは災
いを招くということです.そのような程度にまで中央集権的な支配を受けて,
それで世界的な水準を維持することが出来た大学というのは世界中を見ても存
在しません.友人として,また親日家として,私は貴国がこのように品格を落
とすのを見ればとても悲しく思うでしょう.」
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-5] 国大協会長への公開質問状と回答

[71-5-1] 国大協会長への公開質問状2001.6/7, 9/16
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2549.html

国立大学協会長 殿             2001年9月16日
国立大学協会理事 各位


 時下,益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

さて、早速ですが、私たちは去る6月の国大協総会に際し、国大協会則28条
に則り、国立大学教員92名共同で、長尾 真会長宛に、別紙の公開質問書を
提出いたしました。 私たちは、質問書の内容から見て、前回の国大協総会に
諮られるものと期待しましたが、諮られることはありませんでした。
 その後も、会長には、私たちの質問書が、会則28条に沿って適正に処理さ
れるよう要望してまいりましたが、未だ、何の回答も得ていません。
 ご存知のとおり、会則28条3項には「意見が協会に提出されたときは、会
長は、これを関係のある事項を担当する委員会に回付するものとする」とあり
ます。論理放棄、ルール無視は学者の自殺行為であり、大学構成員、国民に対
する説明責任を著しく欠く行為と言わねばなりません。
 会則28条に従い、私たちの質問書を、理事会あるいは、然るべき委員会に
おいて検討の上、文書により回答くださいますよう、重ねて要請いたします。

        国立大学教員92名代表
        岡山大学環境理工学部教授 野田隆三郎

(資料)

国立大学協会長 殿             2001年6月7日
国立大学長  各位

  国立大学協会会則28条に基づき、国立大学教員92名共同で以下質問書
を提出しますのでよろしくお取り計らいください。         

           代表 岡山大学教授 野田隆三郎
          700−8530岡山市津島中3丁目 岡山大学環境理工学部
                      TEL 086-251-8820

           公 開 質 問 書

  去る6月1日、国立大学協会理事会は、設置形態検討特別委員会がまとめ
た 「国立大学法人化についての基本的な考え方」、そして「国立大学法人化
の枠組」と題す二つの文書(以下、それぞれ「基本的な考え方」 ,「枠組」)
を承認し、来る6月12、13日の国大協総会に諮ろうとしています。  し
かし、上記の文書には見過ごすことのできない重大な疑問点、問題点があ り、
これらを未解決のまま総会で承認することには強い懸念を表明せずにはい ら
れません。
  具体案である「枠組」に対する最大の疑問は、法人化は大学の自主性・自
律 性の拡大のために行うとされている法人化の目的に根本的に反するのでな
いか ということであり、ひいては、「独立行政法人通則法を国立大学にその
ままの 形で適用することに強く反対する」という国大協の従来からの一貫し
た姿勢に も矛盾するのではないかということです。

  国大協決定の、国立大学構成員に与える影響、さらには日本の教育・研究
の 将来に与える影響の重大さを考えるとき、このような基本的な疑問に答え
ない まま委員会案の承認を急ぐことは、最高学府・最高責任者集団としての
責任を 放棄するものと言わなければなりません。  総会に委員会案を諮る前
に、下記の質問に対して、国大協が誠意ある、明確 な回答を用意されるよう
強く要望するものです。
 
                記

  「基本的考え方」において、法人化は「教育研究の発展のための大学の自主
性・自律性を拡大するものでなければならない」と述べられていますが
 「枠組」において、企画立案、評価、さらには、それに基づく財政配分にま
で、行政の介入を許すことが、どうして大学の自主性・自律性を拡大すること
になるのでしょうか。
 学問の自由、そして大学の自治の観点から見るとき、このような大幅な行政
介入は、「基本的考え方」が自主性・自律性拡大の例として挙げている、予算
上の規制緩和、給与・服務など人事面での規制緩和等とは,到底、引き換えに
できない、重大な問題であると考えますが 国大協の見解をお 伺いします。
  
   共同提出者
        (氏名省略)
                        以上92名」
                            ------------------------------

[71-5-2] 公開質問書に対する国大協会長からの回答2001.9.27
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2631.htm
「
代表 野田隆三郎様         平成13年9月27日

              国立大学協会  会長    長尾 真
 
 2001年6月7日付けで、貴殿を代表とする国立大学教員92名から小職
及び国立大学長各位宛に提出された「公開質問書」(以下「貴意見」という)
については、国立協会会則28条にいう「教員の意見陳述」に当たるかどうか
の問題もありますが、設置形態特別委員会に回付する予定のところ、その後初
めて開催された9月19日の当該委員会では日程の都合で検討できず、本日の
臨時理事会で貴意見の扱いについて協議しました。
 その結果、貴意見を受理して以来、国立大学法人化問題に関する諸情勢は大
きく変化し、この間、国大協としてとってきた対応については、既に総会、理
事会等の会議録等でホームページ等を通して公表しているとおりであり、国大
協としては貴意見を受理したことを記録に止め、今後の参考にすることになり
ましたので、回答します。」
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-6] 福沢啓臣「グローバル化とドイツの大学改革」(2000.3.9)
東大社会科学研究所第12回プロジェクト・セミナー
http://project.iss.u-tokyo.ac.jp/seminar/12th.html

「・・・ドイツの大学は、まず総合大学(131校、五つの学部以上ある大学)
がある。次に、専門単科大学(141大学、日本でいう高専や師範学校のような
ものが格上げになったもの)が1960年代に発足して70年代に増え、これからも
ますます増えていくのではないかと言われている。総合大学に比べると、専門
単科大学は実学的な面を重視する。また日本と比べた場合、ドイツには私立大
学というものが非常に少なく、特に総合大学で私立大学というのは一つか二つ
で、多くのドイツ人にとっては未知の分野に属する。・・・大学生の数は190
万人で(日本では250万人)、総人口(ドイツ:8600万人)の比率から言えば、
それほど少なくはない。ただしドイツの大学生は卒業に平均6、7年かかる。」

「規制緩和は、財政的な面で大学自治を拡大して州の文部省のコントロールを
少なくするという方向で動いている。決定権の民主化というのは、予算などに
関しても、従来は総長などの権限が強かったが、学部に権限をおろすというも
のである。」

「大学の評価制度の確立については、学術評価審議会がどういうものか話して
おく。1957年に連邦政府と州政府のイニシアチブで設立され、対象が大学およ
び高等研究所であり、予算的な分配も含め評価を生かすものである。学術評価
審議会はドイツの学界、大学人にとっても行政側にとっても信頼を得ていて、
審議会の推薦や評価は無視できず、むしをそれを積極的に求める方向にある。
メンバーは54人いて、32人が学術関係者で、学術委員系を構成する。そのうち
24人が学者、8人が一般社会からの代表者である。この32人のメンバーは大統
領から任命される。あと、運営委員が22名いて州の代表(文部大臣)や科学長
官、6人の連邦政府の代表者がいる。それらの54人のメンバーが年に二回、最
高議決機関としての総会を開く。この審議会が出した評価および推薦は、連邦
政府や州政府を含めて関係者は尊重しなければならない。・・・」

「・・・社会科学や人文科学については、何をもって評価の基準とするのか議
論されている明確になっていない。今のところ、カリキュラム通りに学生が卒
業しているか、中途退学率がどのくらいか、就職率、大学教授の予算の獲得、
論文の数、学生へのアンケートなどが評価基準と言われているが、決め手はな
いので、州によって実施のされ方が違い、基準は確立されていない。」

「・・・医学部は1,4という優秀な卒業成績でないと入れないといわれるが、
裁判を起こすとたいてい入れる。といのも基本法によって大学入学資格をもっ
ているすべての人が大学に入れるということが保障されていて、それは「基本
的人権」に近いからである。ただ、そこまでして無理して入ろうとする人は少
ないだけであって、無理して入ろうと思えば入れる。」

「日本では戦後先進工業国として経済成長を達成するための私立大学設立によっ
て高等教育の相当部分を担わせたと言えるが、ドイツの場合、州政府、公のお
金で大学を建てていった。ドイツでは1970年代にはGNPの1,3%が教育予算で、
80年代には長期不況に入って0,9%までに下がったが、また1,1%までに持
ち直した。今は大学予算や研究予算というのは、社民党政権の下では高等教育
がドイツの将来のカギを握っているということで国家予算の中で増えている。」
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-7] 報道より

[71-7-1] Nature「日本のとった呆れかえる狂牛病対策」
( Nature vol. 413 P.333, 27 September 2001)
http://www.natureasia.com/japan/webspecial/bse/
                            ------------------------------

[71-7-2] 読売「名大教員に「高等研究院」 年度内にも新設 講義免除、任期5年」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2648.html
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-8] 発言

[71-8-1] 九大移転問題・独法化問題・研究院構想に関する意見交換の広場
http://tools.geocities.co.jp/CollegeLife/1964/40geoboard/
#(9月の九大学長選での移転問題に関連する議論と報道。)
                            ------------------------------

[71-8-2] 市川昭午「高等教育費の国際比較―少ない日本の高等教育費支出」
(2001.09.19)アルカディア学報 No. 49
http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia49.html
                            ------------------------------

[71-8-3] 矢野 眞和「大学教育の質と経営―「高等教育政策と費用負担」を編集して」
(2001.10.3)アルカディア学報 No. 51
http://www3.ocn.ne.jp/~riihe/arcadia/arcadia51.html
「今日の大学は、「量」と「質」と「財政」の三つの危機にさらされている。
グローバルな社会経済の変化は、大学のマス化からユニバーサル化へという量
の拡大を促している。しかし、その教育を支える財政基盤にゆとりはなく、必
要な教育の質を保証するのが難しくなっている。三つの危機を乗り切る方策と
して、大学の「市場化」と経営の「効率化」が諸外国で共通に提案されている。
大学を民営化すればこの三つが一挙に解決するという暴論もある。大学教育の
営みはそれほどに単純ではない。
・・・そのために、分析作業過程で、奇妙な結果に遭遇することになる。二つ
の例だけを挙げておこう。一つは、有名大学ほど学納金が安く、無名大学ほど
学納金が高い、という結果である。今一つは、学納金の多寡は志願率に無関係
だという結果である。
・・・・現状の問題点と変化の方向をある程度明らかにすることは出来る。し
かし、最終的に残る大問題は、競争的市場の形成が、教育の質を保証し、経営
の効率化を促すか、という問いである。・・・市場に委ねれば教育の質と経営
の効率が一挙に保証されると考えるのは楽観的に過ぎる。」
                            ------------------------------

[71-8-4] 長谷川氏ウェブサイトより「最近の動きについて 2001.9.21,20,19」
http://www.math.tohoku.ac.jp/~kojihas/index-j.html#comment

「2001.9.21 朝日報:これが、例えば地方国立大学の学問的価値を風前の灯と
するものでないことを祈りたい。研究者のいわゆる人事流動化どころか、研究
職自体が消しとんで官僚や地方有力者が座る名誉職にされることなどなきよう
に。(参考)|NHK 報道いずれにしても、日本の将来にかかわる問題がテロの影
響で大した話題にもならず決まっていくのでは虚しい。」

「2001.9.20 ・・・・数年前に英国 Weals の Swansea 大学を訪問した際、私
を招いてくれた方が議論の途中で「明日分校で講義なんだ、すまない」といっ
て夜車で数 10 キロ離れたキャンパスへ向ったことも思い出される。このよう
な毎週の移動は教員に負担であるし、もちろん教育の質に拘ってくるだろう。
教養部も廃止され、学生の前では単なる講義マシンであるかもしれない教員も、
実は研究の最前線に立つ人であることは多い。(たとえば富山大には、数年前
まで私の学生時代の同級生でストリング理論で深い研究をしている H 氏が職
を得ていた。)

ハンドルのあそびが大事といわれるが、数学や物理に限らずそのような部分を
失うことで、日本の知的水準に重大な喪失が招かれるのではないかと思う。す
でに語学教員は多数が非常勤職で生活苦が一般のようであり、これは外交の水
準や翻訳もの出版物の最近の傾向と無縁でないだろう。財務省は遠山プランの
「10分野30大学」以外に研究費を配分しない方針といわれ、小泉改革の中数週
間で文部科学省が作成した、政治の産物というべき「プラン」の分野わけにあ
わせ学部・学科の再編を考える大学もあるようだ。水ものの競争経費を偏った
配分にまかせれば、必要な専門家を育成する制度的保証が失われ、「プラン」
の意図が(大学を良くしたいのか、単に縮小再生産の一貫なのか)どこにあれ日
本の大学は弱体化するのではないか。・・・・「人材大国」などとも言うが、
政治家や官僚がはやりを追うばかりでは、体制ができたころその分野は「終わっ
ている」のではないか。(私の出身地の自民党のさる代議士が、2000年2月に
「大学に半導体に特化せよと言っても全然そうならない」と講演されていたが、
IT不況とまでいわれる今はどう言われるだろうか。こういうことは企業が考え
るべきことだろう。)(参考:科学を儲け話とばかり思ってるからこういうこと
になるのではないか。)
                  ━━━━━━━━━━━━━━━━━

[71-9] 議員会館での討論集会[70-4]に105名参加
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/meeting.html
[71-9-1] ◆豊島耕一「4年で価値規範は変わらない」10.5国会内集会レジュメ

「ウソも百編言えば本当になる.」今起きていることはまさにこれである.9
7年に文部大臣は記者会見*1の中で次のように述べている.

 「独立行政法人のねらいは,効果的な業務の実施にあるが,文部大臣が3〜
5年の目標を提示し,大学がこれに基づき教育研究計画を作成,実施する仕組
み,及び計画終了後に,業務継続の必要性,設置形態の在り方の見直しが制度
化される仕組みは,大学の自主的な教育研究活動を阻害し,教育研究水準の大
幅な低下を招き,大学の活性化とは結びつくものではないこと.
 また,効率性の観点から一律に大学を評価することは,各大学の特色を失わ
せ,現在進めている大学の個性化に逆行すること.」

正論である.そして今文部科学省がやろうとしているのは,この,わずか4年
前に非難したはずの「教育研究活動を阻害」し「教育研究水準の大幅な低下を
招」くことなのだ.上に述べられた問題点は先月出された「中間報告」でもそ
のままであり,何の変化もない.単に時間が経過しただけである.「独立行政
法人化は大学改革である」という言明は4年前にウソであったし,それは大学
関係者の常識であった.それが時間が経ったと言うだけで,文部科学省が方針
を変えたと言うだけで「本当」になるのを許せば,人間としての良心に背き,
また大学教員にとっては,教育と研究に従事する者としての職業的良心に背く.

 最近出された「大学版構造改革」なるものは,教育基本法10条を全く知らな
い人間しか言い出せないことで,さらにこれを実施すべく学長らを「脅し」,
従わなければ「見捨てる」という文部科学省官僚の暴言は,今日に至るまで
「野放し」にされている.これは教育基本法の二重の「解釈改定」を放置する
ことに他ならない.すなわち「教育基本法違反予備罪」と「現行犯」とが不問
に付されるからである.「教育基本法を守るべきだ」と主張する人は,だまっ
ていてはいけないはずである.

 これに対して正面から批判しているのはむしろ保守派(と思う)の加藤寛氏
*2で(日経9月8日),国立大学の学長らは沈黙したままである.それどころか,
山口大学の広中学長は,文部科学省と国立大学とを親子関係にたとえてこれを
支持する*4など,教育基本法を知っているのか疑いたくなる言動をしている.

 大学を変えていくための重要な指針はすでにユネスコの勧告(97年)や宣言
(98年)*3に 出されている.「グローバルスタンダード」を口にしたがる人々
がなぜかユネスコを無視しているのは不思議である.上の二つの文書の日本語
訳を文部科学省は公表していない.これらの文書には,学生の権利の尊重,特
に学生を,「高等教育の革新における主たるパートナー、そして責任のある当
事者」と見なすべきだとある.(文部科学省は「アンケート」を口にするだけ
で,このような観点は全くない.)また,大学構成員の諸権利の尊重と意見の
反映,高等教育機関の自治の重要性を謳っている.

 これを踏まえて管理運営面の改革の重要ポイントを挙げる.

1. 文部科学省と国立大学との関係の正常化
 法に根拠を持たない文部科学省による大学支配が行われている.これが大学
の「独立」性を阻む最大の要因である.これを法律どおりの関係にもどす.
「天下り」を廃止し,大学事務官の人事権を大学が持つ.

2. 大学予算編成権の文部科学省からの分離
 大学が文部科学省にすべて従う理由は,実際にか心理的にかは別にして「概
算要求で自分の大学が不利になる」ことである.これを取り除くため大学と政
府の間の独立した中間機関が国からの資金の配分を行う.

3. 大学運営への学生の関与
 数多い学内の委員会のいくつかに学生代表を入れる.少なくとも「運営諮問
会議」には学生代表を複数名入れる.

4. 「運営諮問会議」への市民の参加
 現在,「あて職」システムによって財界や権力者,有力者によって構成され
ている「運営諮問会議」を,ふつうの市民の意見を大学運営に反映させる制度
に変える.

5. 大学評価は自由である.ただし政府による評価は認められない.ましてこ
れと予算とを結びつけてはならない.

 先月27日に文部科学省調査検討会議の「中間報告」が出されたが,これと国
大協の,この問題を検討する委員会のメンバーとを比べてみると,これらがお
よそ相互に独立した委員会ではないことが明らかになる.すなわち,国立大学
協会の「設置形態検討特別委員会」の28人のメンバーのうち24人(86%)
が文部科学省の「調査検討会議」の委員を兼ねている.これは委員会のクロー
ニングでありしたがって出てくる答申もクローン答申であろう.このようなや
り方は,「衆知を集める」という考えとは正反対の,談合精神を基盤とした
「衆論の整列化」とも言うべきものであろう.

 「文部科学省の案に国立大学の意見を反映させる」という口実で国大協はこ
の委員会への参加を正当化した.しかし結果的には,24人のメンバーは文部
科学省の委員会の中で財界の委員などから「情勢の厳しさを認識」させられ,
逆に文部科学省や財界の意向のメッセンジャーになったでのあろう.

 このように,大学の自治,学問の自由に責任を負うべき国立大学の学長らが
これに背こうとしているとき,もはら彼らに事態を委ねるわけにはいかない.
彼らが自ら自治を破壊しようとしているとき,大学関係者はもちろん,一般国
民もこれを座視していてはいけないだろう.すなわちなん人もこれを批判する
のを躊躇してはならないだろう.」

*1 1997年文部大臣記者会見
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/monbusho97.pdf
*2 日本経済新聞「教育」欄:加藤寛氏論文2001.9.8
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/katokan0908.html
*3 ユネスコ高等教育世界宣言「21世紀の高等教育 展望と行動」
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/AGENDA21.htm
*4 #(これはWeekly Reports で追加したリンク)
<加藤寛のカンカンガクガク(第94回)>放送日:2001年 7月21日
ゲスト:広中 平祐(山口大学学長)テーマ:教育改革を考える
http://www.tv-tokyo.co.jp/kankan/back_number/01_07_21.html

[71-9-2] 集会写真
http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/meeting105/photo.html

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【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立
つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)へ
のリンクと抜粋を紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者から
の情報等に拠る。メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は
目次番号が記事にリンクされている。転送等歓迎。
【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ
ひ読んで頂きたいもの。
【関連サイト】http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/
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発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp
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発行部数(括弧内は増減)  (2001.10.8 現在)  
1620(+12): Mag2:946(+6)|CocodeMail:366(-1)|Pubzine:93(0)
   |melten:73(+2)|Macky!:55(0)|melma:59(+5)|emaga:28(0)
直送 約730(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等)
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Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail)
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End of Weekly Reports 71


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