==> |Back Number総目次と登録国立大学独立行政法人化の諸問題
直接配信希望の方は Subject 欄に sub wr と書いたメールをtujisita@math.sci.hokudai.ac.jpに送ってください。メールマガジンサービスを利用される方は下欄を利用してください。

visits since 2002.1.17

国立大学独立行政法人化問題週報

Weekly Reports  No.80 2002.1.12 Ver 1.03

http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-80.html
総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━               目   次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [80] 「教養教育重点大学配備」への意見募集(締切1月16日)  [80-0] 内容紹介   [80-0-1] 「研究・教育」の分離政策は成功するのか?   [80-0-2] 答申に書かれていない「教養」   [80-0-3] 中央教育審議会委員の重責   [80-0-4] 答申案の先取り:非科学的「金銭的インセンティブ付与」策  [80-1] 「教養教育重点大学」に向けた答申案   [80-1-1] 教養教育重点化   [80-1-2] 設置基準大綱化の問題  [80-2] 第1期中央教育審議会総会(第9回)議事録  [80-3] 第9回教育制度分科会における主な意見の概要2001.11.20より抜粋  [80-4] 中央教育審議会委員名簿  [80-5] 人気7教員に各百万円…北海道・国立北見工業大(読売新聞 1月10日) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [80] 「教養教育重点大学配備」への意見募集(締切1月16日) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [80-0] 内容紹介 [80-0-1] 「研究・教育」の分離政策は成功するのか? 中央教育審議会の「新しい時代における教養教育の在り方について」答申案へ の意見募集[80-1]が行われている。幼児教育から成人教育まで論じ国民に向 けた訓話で大部な答申案となっているが、実質的提言は「教養教育重点大学」 推進政策の提言である。国立大学が独立行政法人化した場合には、文部科学省 はこれに従い教育重点大学と研究重点大学とを計画配備することになることが 予想される。研究志向の者を教育から絶縁し、教育志向の者から研究を絶縁す ることは、大学全体を変質させることは確実である。  意見募集の締切は1月16日である。大学の教育の現場で日頃思う意見や、 一般教育を充実させるために必要なことは何か公式に述べる機会として考えて 頂きたい。また、大学外からも、大学における一般教育のあり方について、ご 自身の大学での体験を振り返って、意見や要望や提案を出して頂きたい。 以下は伝え聞いたことだが、某国の国立大学教員が日本の国立大学に長期滞 在したとき、教員が研究していることに驚いたという、なぜ教員が研究しなけ ればいけないのか、と。その国では大学教員の職務に研究は含まれていないの だそうだ。俄には信じがたい話だし、確認はしていないのだが、十数年後には 他国のことではなくなるかも知れない。  大学種別化政策により研究可能な大学教員ポストが激減し、出資者最優先政 策により企業の研究開発部門が縮小するーーそのような政策の中で、学生を研 究者に育てることも重要な使命である研究重点大学など存続し得るのだろうか。 この答申案に至る過程で、シミュレーションしたのだろうか? ---------------------------------------------------------------------- [80-0-2] 答申に書かれていない「教養」 大学審議会(現在の中央教育審議会大学分科会)の「大学設置基準の大綱化」 答申(1991)は一般教育を弱体化させた。「教養」答申案では大学教員の 意識に問題があったかのような書き方をしている。しかし、大学院重点化政策 を併行して進め教員の主務を大学院教育とすれば、一般教育弱体化は「物理的」 に発生する。それを無視して政策を進めたことは政策立案者の落度であろう。 今回の答申案についても、教養教育重点政策についてシミュレーションしてい るとは思えない、リスクへの言及が全くないからだ。 このことは、答申案の「総花的教養像」には「自分の非を認め、同じ間違い を繰り返さない」ことが含まれていないことと見事に符合する、と言えるだろ う。己が正しさを疑わないことが無教養の最大の印である(この週報がその例 示になっていないことを発行者は祈りたい。)。今の日本社会の指導者層全体 に、この意味での無教養さが蔓延していることが日本社会の病根であり、指導 者層の代表者集団による当該「答申案」が過去の答申に過ちを認めようとしな いことにより、それを例証している、と言えまいか。 ---------------------------------------------------------------------- [80-0-3] 中央教育審議会委員の重責  以前から何度か要望していることだが、中央教育審議会の委員30名[80-4] の方々は、一国の教育システムを左右する権限を持つことにもう少し畏怖の念 を持って任務に当たって頂きたい。月一度の会議で互いに蘊蓄を傾け、最後に 文部科学省事務局が起草した答申案を推敲することが審議員の使命ではない。 しかし、議事要録を見る限りでは、委員の方々がそれ以上の仕事をしている形 跡は見えない。 なお、これも度々繰り返していることだが、発言者の名前を伏せた議事要録 しか公表していないことは納得できない。一国の教育政策を事実上決めている 審議会の記録として、時々公表される発言者名を伏せた議事要録だけでは不十 分である(11月1日の第九回中央教育審議会総会[80-2]のように、テープ起 こしの議事録も例外的にはあるが、やはり会長・副会長以外の発言者名が伏せ てある。)。実質的な議論を行っている分科会については議事要録さえ公表さ れていないものが大半である。これでは、議論の経緯も不明だし、誰が何を主 張したかも不明で個人責任が全く問えない。密室で文部科学省事務局が教育政 策を思いのままに決めていることを文部科学省自身が証明しているようなもの である。 ---------------------------------------------------------------------- [80-0-4] 答申案の先取り:非科学的「金銭的インセンティブ付与」策 教育で業績が高かった教員に100万円のボーナスを支給する大学の試みが 報道された[80-5]。教える内容が、学生の琴線に触れ学生の知的好奇心・探 求心に火を付けることは容易なことではないが、時に成功すればそれだけで 「脳内麻薬」が分泌される。しかし、学生の評判に応じてボーナスを貰える、 あるいは減給される、ということになれば、良い講義をしようという自然な欲 求が微妙に変質するであろうことを感じる。 それ自身が面白い行為に報償を与えることで面白さが消えることを示す種々 の心理学実験がある[80-5]。「金銭的インセンティブ」の有害無益性は創造性 が必要とされる業種ほど大きい。「人間科学的事実」により失敗が確実の政策 が何の疑念も持たれることなく推進されるようとしている。日本の創造力が根 幹から枯渇していくのではないか。「科学的に」政策の是非を分析する「政策 科学」の振興を願わずには居られない。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [80-1] 「教養教育重点大学」に向けた答申案 中央教育審議会「新しい時代における教養教育の在り方について(答申案)」 に対する意見募集について(締切2002.1.16) http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2001/011208.htm ---------------------------------------------------------------------- [80-1-1] 教養教育重点化 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/c26-tks-tousin.html#708 「教養教育の改善に積極的に取り組む教員を支援する必要がある。例えば,授業 内容や指導方法等の改善のための調査研究を行う教員や教員グループに対する 支援の充実や,学内において各教員の教養教育に対する取組を促すための「重 点配分経費」を創設することなどが考えられる。教育能力に特に優れた教員の 表彰の実施や,教育面での実績評価を学内経費の配分や人事に反映させること についても積極的に取り組むべきである。」 ---------------------------------------------------------------------- [80-1-2] 設置基準大綱化の問題 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/c26-tks.html#899 【参考】我が国の大学における教養教育について 我が国の大学における教養教育は,戦後,米国の大学のリベラルアーツ教育を モデルに一般教育として始まった。新制大学は,一般的,人間的教養の基盤の 上に,学問研究と職業人養成を一体化しようとする理念を掲げており,このた め,一般教育を重視して,人文・社会・自然の諸科学にわたり豊かな教養と広 い識見を備えた人材を育成することが目指されたものである。 こうして出発した一般教育であったが,その実施の過程で,次のようないくつ かの問題も生じた。 (1) 各大学において,少人数教育や学生と教員の密接 な交流などの全人的な教育を可能とするための教員数や施設などの条件整備が 十分でなく,多くの場合,実際の授業は,一般教育の理念・目標と乖離したも のになってしまったこと (2) 一般教育を担当する組織や教員に,その理念 が必ずしも浸透しておらず,学生にとっては一般教育の内容が高等学校教育の 焼き直しに映る一方,教員の側にも一般教育の意義や目的が不明確であり,ま た,専門学部との連携協力も不十分であったこと (3) 昭和31年から平成 3年までの大学設置基準においては,人文科学,社会科学,自然科学,外国語, 保健体育などの授業科目の区分や履修単位などが一律に定められており,進学 率の上昇に伴い多様化した大学の実態に適合していなかったこと こうした問 題点を踏まえ,平成3年に大学設置基準が大綱化され,授業科目の区分やこれ に応じた卒業要件単位数の定めなどの取り扱いを弾力化し,これらを各大学の 自主的な取組に委ねることとなった。これは,「学問のすそ野を広げ,様々な 角度から物事を見ることができる能力や,自主的・総合的に考え,的確に判断 する能力,豊かな人間性を養い,自分の知識や人生を社会との関係で位置づけ ることのできる人材を育てる」という教養教育の理念・目的を,一般教育科目 だけでなく,広く大学教育全体を通じて実現することを目指すものであった。 また,大学の多様化が進み,大学により教育理念や教育研究環境が大きく異な る中で,教養教育の在り方を一律に縛るのには限界があり,大学設置基準の大 綱化により各大学における自主的な改革の取組を促すことを通じて,教養教育 の改善を図ろうとするものであった。 大学設置基準の大綱化は,各大学における教養教育の改革の取組を促し,多く の大学において,「くさび型」のカリキュラム編成等教養教育と専門教育の一 貫教育の実施,特色ある授業科目の導入,選択幅の拡大などのカリキュラム改 革が進むとともに,セメスター制の導入や学生による授業評価等を通じた指導 方法の改善等に取り組む大学が増加した。さらに,平成11年の大学設置基準 の改正において,各大学の自己点検・評価が義務づけられるとともに,履修科 目登録単位数の上限の設定,教育内容等の改善のための教員の組織的研修等 (ファカルティ・ディベロップメント)の努力義務化等が行われた。 また,教養教育の実施体制については,大学設置基準の大綱化に伴い国立大学 を中心に教養部が改組され,多くの場合,全学共通の実施組織が設けられ,全 学部の代表からなる委員会の下で学部に所属する教員が授業を担当するように なった。 このように,大学設置基準の大綱化及びその後の改正を踏まえて, 多くの大学で教養教育の改革が行われたが,一方で,次のような課題を抱える こととなった。 (1) 教養教育の位置付けをあいまいにしたまま,教養教育 に関するカリキュラムを安易に削減した大学が存在すること (2) 教養教育 に対する個々の教員の意識改革が十分に進んでおらず,ややもすれば専門教育 が重要で教養教育を面倒な義務と考える教員が存在すること,また,教養教育 を担当する教員が積極的に取り組むインセンティブが不十分なため,具体的な 教育方法や内容の改善が進まないこと (3) 教養部に代わって設置された教 養教育の実施組織の学内での責任体制が明確でな く,その結果,教養教育の 改善が全学的取組となっていないこと (4) 学生の側に,教養教育を含め学 部4年間の教育に対する目的意識が明確でなく,教養教育に熱心に取り組む意 欲が乏しいこと」 ---------------------------------------------------------------------- [80-2] 第1期中央教育審議会総会(第9回)議事録 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gijiroku/001/011101.htm ---------------------------------------------------------------------- [80-3] 第9回教育制度分科会における主な意見の概要2001.11.20より抜粋 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo1/gijiroku/001/011202_b.htm 「○素案に書かれている教養の範囲は広すぎるのではないか。3ページの「知・ 得・体」、「知・情・意」全部だと教育全体になってしまう。教養は共有の知 である。概念の絞り込みが必要。「人間的成長=教養」ではなく、そのコアに なるのが教養である。 ・・・ ○素案は総花的でメリハリがない。素案に書いてあることはすべてもっともな ことばかりだが、その総花的方法論がうまく機能しないという現実認識から議 論を始めるべきであった。「新しい時代における教養」というものをまず定義 するべきではないか。そうでないと、具体的に有効な施策につながる提言はで きないと思う。 ・・・ ○一生涯、一人の人格をして、教養をとらえるということは前からいわれてき た。この素案には、切迫感も問題意識もみられない。ここに書かれていること をそのまま実行すれば、優等生のように小賢しいことはいうが、公共性や人と のバランス感覚など、内的根拠がない人間ができてしまうのではないか。 ・・・ ○総花的な素案である。初中分科会や大学分科会で議論すべきことまで、細か に書かれており絞り込みが必要。現状がなぜ危機なのかについて、戦後、社会 自体が、実利主義に流れ、そういう風潮が教養を衰退させたこと、よい大学に 入ることばかりにかまけていたことなどへの反省を書くべきではないか。人口 問題、環境問題、科学技術の発展などの中でどうするべきか。新しい時代には、 環境を守るために自分のライフスタイルを変えたり、政治に参加したりするこ とが重要。教育基本法では、教養とは「政治的教養」という文言しか使われて いない。絞り込んでとりあえず何をやるのかを明確にすることが必要。とても すべての教養を学校教育で身に付けることはできない。もう少し時間をかけて 議論すべきではないか。 ・・・ ○「教養」は定義できないにしても、「新しい時代の教養」をとらえないとダ メである。昔はよかった、というだけでは若い人の反発を招く。新しい時代の 教養にも昔から普遍的に大切なものはもちろん含まれる。ただ、時代が変わり、 科学技術が大きく発展する中で、特に新しく求められる教養がある。 ・・・ ○人間としての座標軸を人間のそれぞれの成長の過程でもつべきだが、それが ゆるがせにされていることが「危機」なのである。 ・・・ ○博識になるのが教養ではない。一人一人の内側に、土台をもった、見通しを 持った、内的根拠ができているか。これがないと、自分の主体的な判断に結び 付かない。また、これが独善的なものにならないために古今東西の知識や自己 内対話が必要である。公共性という水平的な広がり、歴史という垂直的な広が りが大切。 ・・・ ○米国は多様性を認める国である。表面だけ米国をまねても意味がない。 ---------------------------------------------------------------------- [80-4] 中央教育審議会委員名簿 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/gaiyou/010201.htm#meibo 会長  鳥居泰彦  慶應義塾学事顧問 副会長  木村孟   大学評価・学位授与機構長 茂木友三郎 キッコーマン株式会社代表取締役社長 委員 浅見俊雄  日本体育・学校健康センター国立スポーツ科学センター長 荒木喜久子 新宿区立津久戸小学校長 石倉洋子  一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 今井佐知子 社団法人日本PTA全国協議会顧問 内永ゆか子 日本アイ・ビー・エム株式会社常務取締役 江上節子  東日本旅客鉄道株式会社フロンティアサービス研究所長 奥島孝康  早稲田大学総長 梶田叡一  京都ノートルダム女子大学長 岸本忠三  大阪大学長 國分正明  日本芸術文化振興会理事長 佐藤幸治  近畿大学法学部教授,京都大学名誉教授 高木 剛  ゼンセン同盟会長 高倉 翔  明海大学長 田村哲夫  学校法人渋谷教育学園理事長,渋谷幕張中学・高等学校長 千田捷熙  東京都立両国高等学校長 寺島実郎  株式会社三井物産戦略研究所長,財団法人日本総合研究所理事長 永井多惠子 世田谷文化生活情報センター館長 中嶋嶺雄  アジア太平洋大学交流機構(UMAP)国際事務総長,東京外国語大学名誉教授 中村桂子  JT生命誌研究館副館長 増田明美  スポーツジャーナリスト,スポーツライター 松下倶子  独立行政法人国立少年自然の家理事長 森 隆夫  お茶の水女子大学名誉教授 山下泰裕  東海大学体育学部教授 山本恒夫  大学評価・学位授与機構評価研究部教授 横山英一  教職員共済生活協同組合顧問 横山洋吉  東京都教育委員会教育長 吉川弘之  独立行政法人産業技術総合研究所理事長 ---------------------------------------------------------------------- [80-5] 人気7教員に各百万円…北海道・国立北見工業大(読売新聞 1月10日) http://ha4.seikyou.ne.jp/home/kinkyo/index.htm#01/10_6 ♯中教審答申案を絵に描いたような動きだが、「・・・もっとも、同大の教員 は119人いるが、うち30人は「学生の評価は受けたくない」「受講人数の 違いが評価に考慮されていない」などと反発し、評価対象となることを辞退し たという。・・・」とも報じている。健全な動きだし、辞退も許容しているこ とは当該大学の健全性を示している。 ---------------------------------------------------------------------- 参考[60-11-2]:中嶋哲彦氏「ポストや研究費を競争に委ねたり、経済的報償 の増減によって人を動かそうという発想には、研究者が教育研究に打ち込む内 的動機に対する洞察力の低さを感じてしまう。いま政策立案者に求められるこ とは、まず第一に、人と人づくりに関する豊かなイマジネーションをもつこと だろう。 」(「国立大学独立行政法人化の問題」) ---------------------------------------------------------------------- 参考[47-11-3] アルフィー・コーン「報酬と動機」 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/6165/MOTIVATION.html 「仕事に対し報酬が支払われると、仕事に対する内発的興味は、通常、低下す ることが、一連の研究によって示されています。ここでいう、内発的興味とは、 その仕事自体に行う価値があるという自覚のことです。」 :"Studies Find Reward Often No Motivator, Creativity and intrinsic interest diminish if task is done for gain", By Alfie Kohn http://www.gnu.org/philosophy/motivation.html ---------------------------------------------------------------------- 参考(再録)[48-11-5]:読者より:報酬についての実験の紹介 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr-48-01416.html#[48-11-5] 「Weekly Reports 44 (2001.4.9)を拝読しましたところ、[発行者より]の最後 の部分で「報酬」の問題がとりあげられておりました。この件に関しまして学 生時代に次のような心理学の実験/知見があることを習った覚えがあります。 人間が働くということについての、示唆に富んだ、大変印象深い内容でしたの で、今なお覚えているのですが、ひょっとするとこの著作がその源なのかもし れません。しかし、そうすると「随分昔から判っていたのに(この国では今だ に生かされていない)」ということになります。 [実験/知見の内容] 『絵を描くのが好きな子供(の被験者)を集めて、「絵を描いたらお菓子を与 える」という形で報酬を与える実験を続けたところ、その子供達はそのうちに 「報酬を与えられなければ絵を描かなくなってしまった」。なぜそうなったの かを子供達に尋ねたところ、「初めは(無報酬で)純粋に絵を描くのが好きで 自発的に描いていたんだけれど、報酬が入りこんできて以来、果たして自分が 純粋に絵を描くのが好きで自発的に描いているのか、あるいは単に報酬目当て でやっているのかどうか、判らなくなってきてしまった。混乱している」とい う答えが返ってきた』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【後書】今年もよろしくお願い致します。ことしはテーマを絞るように努めた いと思っております。配信が不規則になる点はご容赦ください。 掲載希望のご意見や情報があればどうぞお寄せください。 今回は、大学における教育活動と研究活動の分離可能性を前提とした中央教 育審議会答申案「新しい時代における教養教育の在り方について」に注意を喚 起することにしました。文部科学省の意見募集の締切は1月16日です。大学 における一般教育と専門教育の関係についての持論があれば、公式に意見表明 できる稀なこの機会を利用して、中央教育審議会に届けることを強く勧めたい と思います。 当事者・関係者と関心を持つ者が、こういった公的機会を見過ごさずに微小 な行政参加を積み重ねることが、「主権在民」にかすかでも実体を付与するこ とになるのではないでしょうか。(発行者) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題に関連する情報(主に新聞報道・ オンライン資料・文献・講演会記録等)へのリンクと抜粋を紹介。種々のML・ 検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 【関連サイト】http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp ------------------------- 発行部数(括弧内は12/29からの増減) (2002.1.7 現在) 1663(-3):Mag2:960(-4)|CocodeMail:372(+1)|Pubzine:98(0)|melma:66(0) |melten:59(-2)|Macky!:56(+1)|emaga:28(0)|melonpan:24(+1) 直送 約730(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等) ------------------------- Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 80