==> |Back Number|総目次
Weekly Reports No.40 2001.2.12 Ver 1.1
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-40-01212.html
総目次:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html
━━━━━━━━━━━━━━━目次━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-0]発行者より
[40-1]総合科学技術会議(第1回2001.1.18)議事要録・配付資料
[40-1-1]運営規則の問題点
[40-1-2] 学術関係議員の権限について
[40-2]大学評価機構:自己評価実施要項・評価実施手引書等を公開
[40-3]「科学技術基本計画について」に対するパブリックコメントへの
[40-4]独立行政法人化調査検討会議議事要旨(文部科学省(MEXT)作成)<
[40-4-1]「人事制度委員会」(第4回2000.12.18)
[40-4-2]「目標評価委員会」(第5回2000.12.13)
[40-4-3]「財務会計制度委員会」(第2回2000.11.17)
[40-5]国大協設置形態検討特別委員会(第8回2000.12.21)議事概要
[40-6]皆村武一氏(鹿児島大学)「国立学校特別会計制度と大学運営
[40-7]岡田正則氏「大学の自治と法人格─ドイツの大学制度を参考に─
[40-8]喜多村氏「政策評価への取組を問う」
[40-9]新保 博氏「書評「市場経済のなかの大学」」より
[40-10]国立大学協会への共同要望書に対する国立大学外からの支持表明
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-0]発行者より
総合科学技術会議[37-3]が政官抗争の場ではなく社会の総意を直に反映する場
となるよう、学術社会は真剣に取り組む必要がある。全議員の合意が決定に必
要であるとする運営規則案は受け入れがたい[40-1-1]。学術関係議員6名をバ
ックアップする組織・ネットワ−ク等を早急に構築する必要がある[40-1-2].
皆村武一氏の論説[40-6]には国立学校特別会計制度の設立時の議論が詳しく紹
介されている。国立大学協会の論点が、独立行政法人化の論議での論点と同じ
ことが印象的である:「(2)この会計は,国立大学財政を,永続的・長期的
観点にたって自主的・弾力的・計画的に運営することを可能ならしめるもので
なければならないこと。(4)この会計においては,大学における研究と教育
の円滑な遂行を可能ならしめる見地から,一時借入金・繰越・予算の流用・継
続費等の諸点において弾カ的な措置が考慮されなければならないこと。等々」
<予算の弾力的運用>を期待した国立学校特別会計は伏魔殿(本間[7-3-4])
となって文部省による大学支配の推進装置となってきた。この点は[27-4]小淵
港「独法化と国立大学予算」でも詳細に論じられている。
なお、「独立採算制を目的とするものではない」という約束は反故にされ、1
970年度には16.3%だった国大全体の自己採算率は、1973年度頃か
ら次第に増加し,1975年度には22.5%,1985年度33.8%,1
990年度には39.7%に,そして1999年度には43.7%に達してい
る(自己採算率は1998年度は東大25%京大34%鹿児島大49%等大学
間の違いが著しい)。特別会計についてさえ守れなかった約束が法人化につい
て守られると期待する者はいないはずだ。<国立大学法人>の中で経営に「成
功」したものは民営化され、「失敗」したものは統廃合されることは不可避で
あろう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-1]総合科学技術会議(第1回2001.1.18)議事要録・配付資料
http://www.ac-net.org/go/cstp/index.shtml
[40-1-1]運営規則の問題点
(a)「全員の同意を得られない場合には、議長が会議の議論を踏まえた上で、
議事を決する。」総合科学技術会議運営規則案第4条
http://cstp.jst.go.jp/siryo/haihu/haihu01/siryo2.htm
(b)「(総合科学技術会議は)諮問を待たずに、内閣総理大臣等に意見を述べる
ことができる。」「科学技術会議との相違」
http://cstp.jst.go.jp/hikaku.html
内閣府設置法には直接にはこの表現はないが第26条が相当すると思われる。
http://www.ron.gr.jp/law/law/naikakuf.htm#3-3-2-3-kagakugijutsu
(c)「議長は、内閣総理大臣をもって充てる。」内閣府設置法第二十八条
http://www.ron.gr.jp/law/law/naikakuf.htm#3-3-2-3-kagakugijutsu
(a,c)を認めれば、内閣総理大臣の意に反する意見を会議が述べることはあり
得ないので、(b)は無意味となることに注意。
[40-1-2] 学術関係議員の権限について
会議が形骸化しないよう、各学術関係議員には、調査検討及び事務のための独
自スタッフを雇うための予算を用意し、拒否権を与えることは少なくとも不可
欠だろう。さもないと、70余名から成る事務局作成の膨大な文書の推敲が学
術関係議員の唯一の役割となりかねない。これでは、時々の政権の意向が吟味
を経ずに直に日本の学術政策を左右してしまうか、あるいは、巨大な事務局を
持つ各省大臣の意向が圧倒的な発言力を持ち、官僚独裁制を打ち破るために設
けられた当該会議の意義は水泡に帰すことになる。(第一回の議事概要で、福
田内閣官房長官は、第2回以降は関係大臣の会議参加を提案している。)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-2]大学評価機構:自己評価実施要項・評価実施手引書等を公開
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/niad/index.html#tebiki
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-3]「科学技術基本計画について」に対するパブリックコメントへの回答
(pdfファイル 148kB)
http://cstp.jst.go.jp/cst/kihon010130a.pdf
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-4]独立行政法人化調査検討会議議事要旨(文部科学省(MEXT)作成)
[40-4-1]「人事制度委員会」(第4回2000.12.18)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/006/gijiroku/001/001201.htm
[40-4-2]「目標評価委員会」(第5回2000.12.13)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/006/gijiroku/002/001201.htm
文部省「確かに、独立行政法人通則法では「業務に関する目標」という言い方
ではなく、「業務運営に関する目標」という言い方をしている。この点につい
ての厳密な解釈というものは十分には把握できていないが、現在検討されてい
る先行独立行政法人の中期目標においては、明らかに業務の中身そのものにつ
いて目標が示されており、そのことについて今のところこれはおかしいという
議論にはなっていない。
独立行政法人の制度設計をした官庁も、すでに先行独立行政法人の中期目
標を見ながら議論をしているが、その中でも特に「業務」と「業務運営」との
峻別を意識していないようであり、今のところは、むしろその機関の特性に配
慮しながらも、業務が丸ごと目標の対象になり得るという前提で考えられてい
るのではないかと受け止めている。
委員:「また、多少、国立大学協会の取組みにも不満がある。文部省が4つの
委員会を作ったから、国立大学協会も対応した4つの委員会を作ったという対
応のようだが、国立大学協会はまず4つの委員会に共通した根本議論を行うべ
きではないか。各論は後にして、国立大学協会としてこう考えるという根本理
念を出すことが必要では。」
[40-4-3]「財務会計制度委員会」(第2回2000.11.17)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/006/gijiroku/004/001101.htm
委員:「国立大学の独法化についてのマスコミの報道ぶりは極めて低調である。
これは、独法化によって国立大学がどう変わるのかポイントがつかみづらいこ
とと、国大協及び本委員会の議論の流れを見ても非常に技術的な話になってい
て、日本の高等教育のグランドデザインが示されていないことによるものと思
う。」
委員「現状の独立行政法人の財務会計制度については、現下の厳しい財政状況
のもとで独法化する場合、安定的な研究費、人件費等の確保の保証がなく、そ
の結果、独自の資金を有しないわが国の国立大学においては学術研究水準が低
下し、科学技術立国を目指すわが国の発展は望めないとして、文部省をはじめ
国大協も独法化に反対した経緯がある。その状況が変わっていないのにもかか
わらず、国立大学の独法化を議論するのであるから、その認識の上で議論を始
めなければならない。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-5]国大協設置形態検討特別委員会(第8回2000.12.21)議事概要
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/k130209-01.htm
「以上のような意見交換の後,杉岡委員から次のような発言があった。
国立大学にとって最適な形で文部省調査検討会議をリードするため審議して
いる が,まだ相手の姿が見えないという気がしている。何時になったら向こ
うの壁がはっ きりとしてきて,どこに穴を空けるかという議論になるのか。
現在のような形で議論 している内に,突然,国立大学の法人化案が提案され,
国大協の審議が未了のまま時 間切れで提案を受け入れざるを得ないというこ
とになっては困るので,その辺の考え をお教えいただきたい。
これについて委員長より,次のように述べられ,本日の協議を終了した。
私どもも,それを心配している。極力早く文部省調査検討会議が取りまとめ
に入 る前に,本特別委員会及び専門委員会が意見の取りまとめを行い,私ど
もの考えを調 査検討会議に提案する必要があると考えている。そのためには,
来年の1月あるいは 2月を目途に取りまとめ作業を行わなければならないと
考えている。
〔備考:設置形態検討特別委員会開催予定〕
第9回:平成13年1月24日(水) 10:00〜12:00(学士会分館6号室)
第10回:平成13年2月22日(木) 9:30〜12:00(学士会分館6号室)」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-6]皆村武一氏(鹿児島大学)「国立学校特別会計制度と大学運営
―国立大学の独立行政法人化の問題点―」
http://www.ac-net.org/doc/01/127-minamura.html
「・・・・・
明治以来の大学財政制度の沿革は、大学特別会計制度の変遷ともいうことがで
きる。その特別会計制度は昭和22年3月廃止され,国立大学予算は昭和22年度
から一段会計によってまかなわれることになった。旧学校特別会計法の廃止に
よって,国立学校の予算は一設会計に包括されたものの、大学の予算は伸び悩
み,また執行上上,弾力性を失なっていたので,政府,文部省また国立大学側
においても,大学財政の確立を求めて真剣に検討を重ね,審議会等に諮問した。
・・・・・
昭和39年度概算要求の編成作業時期を迎えた38年7月に,財政当局より国立大
学の会計を特別会計に切り替えることについての意向打診を受けた文部省は,
国立大学側の意見を聴取する必要に迫られた。国立大学側は,急遽,国立大学
協会第6常置委員会で議論・検討し,下記のような国立大学としての意見を正
式に決定し,公表した。
国立学校特別会計制度の成文化及び実施にあたっては,大学の自主性が尊重さ
れるべきことはいうまでもなく,また,この会計の重要事項については国立大
学側の意向が十分反映されるような方途を講ぜられるべきである。
(1)この会計は,大学における研究と教育の円滑な運営を保障し,すべての
大学の人的・物的内容を充実させることを本旨とすべきものであること。
(2)この会計は,国立大学財政を,永続的・長期的観点にたって自主的・弾
力的・計画的に運営することを可能ならしめるものでなければならないこと。
(3)この会計の運用にあたっては,一般会計の負担を軽滅するために独立採
算を図ることがあってはならないこと。
(4)この会計においては,大学における研究と教育の円滑な遂行を可能なら
しめる見地から,一時借入金・繰越・予算の流用・継続費等の諸点において弾
カ的な措置が考慮されなければならないこと。
(5)この会計は,また国立大学施設の整備促進,内容充実のために運用され
なければならないこと。
(6)歳入超過額については,弾力的条項を設け,予算の円滑な運営をはかる
こととすること。
文部省としても,特別会計とした場合の積極面と消極面をまとめ,大蔵省に提
示した。その骨子は以下の通りである。
積極面としては,国立学校の財政運営の自主性が制度的には確保され,学校運
営について若干の予算執行上の弾力性が期待されることである。消極面として
は,特別会計とした場合,積極的に収入の確保と増収に努めることとなる反面,
企業的経営方式に流れ,そのため本来の教育研究事業にそぐわない事態が生ず
るおそれがなくないか。たとえば,国立学校収入の大宗をなすものは,授業料,
入学料,検定料等であるが,その値上げによって収入増加をはかる事態が生ず
るであろうし,また,演習林において収入を図るため伐採石数を増やし,その
ため,たえず施業計画の変更をきたし,本来の目的にそぐわない結果を生ずる
おそれがあるのではないか。附属病院においても同様である。
大蔵省は,文部省や国立大学協会と協議した結果,大蔵省から文部省に以下の
ような提案がなされた。その骨子は以下の通りである。
1. この特別会計は,国立学校の充実を図り,かつ今後における拡充整備を促
進する趣旨のものである。
2.この特別会計は,国立学校会計の独立採算制を目的とするものではなく,
したがって,一般会計の負担軽滅を図る目的をもって授業料等の値上げを企図
しているものでない。
3.借入金の制度を設け,財政投融資資金を導入して,施設(病院)整備の促
進に資する。
4.この特別会計において支払上,現金が不足するときは,年度内の一時借入
金をすることができる。
5.この会計の余剰金は,一般会計の余剰金と異なり,全額この会計の財源と
される。特に,この余剰金の一部(歳入予算超過分)は,積立金として積み立
て,施設の整備に充当する。
6.歳入予算の超過額については,病院等の経営に直接必要な経費に充てるよ
う弾力条項を設け,その円滑な運営を図る。
7.現在,国立大学の管理する国有財産は,原則として一切この特別会計の財
産として出資されるものとし,今後その財産が学校としての使用目的に供され
なくなった場合においても,これを換価した代金は,従来のような一般行政の
財源とせず,この特別会計の歳入として国立学校の内容の充実に充てる。
8.今後,この特別会計の財産を処分する場合は,従来のように他の行政目的
のために減額譲渡または無償譲渡することは,原則として行わない。
9.今後,一般会計の財産を国立学校の用に供するため,この特別会計に所管
換えをする場合は無償とし,この特別会計の財産を他の会計に所管換えをする
場合は,原則として有償とする。
10.この特別会計に属する不用の財産を処分してその代金を国立学校の内容の
充実にあてることを容易にするため,建交換を行なうに必要な予算枠と国庫債
務負担行為枠とを設ける。
11.研究費その他,国立学校の運営費については,特別会計にふさわしいよう
に実情に即した使用ができるようにする。
この法律案は,昭和39年2月11日,国会に提出され,提案趣旨説明と法律案の
概要についての説明が行われた。法律案の概要は,次のようなものであった。
第1,この特別会計は,国立学校にかかる経理を行うことを目的とするもので,
文部大臣が管理することとしている。
第2,この会計は,一般会計から繰り入れる金,授業料,入学料,検定料,病
院収入,積立金からの受入金,財産処分収入,寄付金および付属雑収入をその
歳入とし,国立学校の運営費,施設費,奨学交付金,借入金の償還金および利
子,一時借入金の利子その他の諸費をその歳出としている。
第3,国立学校の附属病院の施設を整備するため,必要があるときには,この
会計の負担において借入金をすることができる。
第4,この会計の毎会計年度の決算上,剰余金が生じた場合においては,将来
の施設整備費の確保を図るため一定の計算のもとに積立金として,積み立てる
こととし,なお,残余があるときは翌年度の歳入に繰り入れることとする。
この法律案は,昭和39年3月31日までに国会を通らず,4月3日に成立し,即日
公布施行されたのである(註7)。
国立大学等の運営については,以上のような経緯を経て,昭和39年(1964)に,
「国立学校特別会計」制度が設けられた。これは,国立学校,大学附属病院及
び研究所の管理運営,施設の整備等に必要な経費に充てるため,その財源の一
部を一般会計から特別会計へ繰り入れるためのものであり,その経理を明確に
するため,一般会計と区別して経理する特別の会計区分(「国立学校特別会計
法」)である。
...
・・・・国立学校経費が,昭和39年2月27日の文部事務次官と大蔵省主計局長
との間に交された「覚書」の第2項,つまり,「この特別会計は,国立学校の
独立採算を目的とするものではない。したがって,特別会計にしたことを理由
として授業料の値上げを意図するものではない」は,財政状況の悪化によって
反故(ほご)にされてしまった。次第に国庫負担から受益者負担に転化しつつ
あるのである(註8)。そして,平成12年5月23日,文部大臣は国立大学の独立大
学法人化を明確に表明した。独立大学法人の予算についても大きく変わってい
くものと思われる。
...」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-7]岡田正則氏「大学の自治と法人格─ドイツの大学制度を参考に─」
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/netre03300.html
『日本の科学者』4月号用草稿より
...
3 法人制度の内容
(1)「公法上の団体」と「国の施設」との関係
第一に、「公法上の団体」の側面をみておく。標準的なテキストによれば、
「公法上の団体」とは、形式上は国家行政の一機関でありながら、(1)(一般
的な私的自治を根拠とするのではなく)個別の法律に基づいて法主体としての
自律性をもち、(2)常に公共的な目的に仕え、(3)公権力を有する、という性格
をもつ。したがって、それは自治組織ということになるが、自治の内容は、団
体の性格ごとに異なる。すなわち、地方自治体は地域の事務を総合的に担当す
るので、自主立法権・自主行政権・自主財政権(課税権など)を有する。また、
弁護士会や医師会等の職能団体は、本質的には私法上の団体に近いが、職務の
専門性および公益性を理由として、組織内で公権力を自治的に行使する権限を
与えられる。これらに比して、大学は、学問(研究と教授)の効果的な発展を
図るために憲法上で自治を保障されているのであって、それゆえに自主立法権
および自主行政権を有するが、自治の範囲は学術面に限定されるので、自主財
政権や完全な人事権はもたない、と考えられている。...
つぎに、財政をめぐる両者の関係をたどると、まず大学による予算の見積も
りが行われ、所轄大臣および財務大臣の判断を経て、州政府の予算に組み入れ
られ、議会の議決後、大学に予算執行が委任される。日本の場合に類似してい
ると思われるが、顕著な違いは、予算制度に関する法律で繰越しや流用が認め
られている点であろう。とはいえ、繰越しは予算削減の契機になり、流用は限
られた範囲で許されるにすぎない、といわれる。なお、大学大綱法67〜69条は、
予算見積もりの基礎とするために大学に対して大学発展計画や人的・物的配置
計画(研究上の重点、各学修課程における現在および将来要求される教育上の
収容能力、これらに対応する各組織単位の配置計画など)の策定を義務づけて
いたが、十分に機能しなかったとして85年改正で削除された。この点は独立行
政法人の中期計画にとって示唆的であろう。
最後に、職員の身分保障について触れておく。教職員は公務員としての身分
を有し、給与水準等は基本的には法定されている。ただし正教授については、
招聘時などに契約的手法が用いられ、給与等の勤務条件のほか、研究費や設備・
助手の配置などについて、州文部省との交渉によって決められることもある。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-8]喜多村和氏「政策評価への取組を問う」
(アルカディア学報No21 2001.1.24)
http://www3.ocn.ne.jp/‾riihe/arcadia/arcadia21.html
「...
ところで文部科学省は何を政策評価の対象としているのだろうか。他省庁で
はそれぞれ政策評価についての取組みの一端がホームページで公表されている
が、この論説の執筆段階では、まだ決まっていないのか、文部科学省のホーム
ページには政策評価委員会の運営のための概算要求程度しか明らかにされてい
ないようである。
筆者は数年前から政策評価の問題に関心を抱き、すでに高等教育の分野では
文教政策の形成源であった審議会や私学政策、大学評価政策等々についての研
究成果を公にしてきた(注1)。当私学高等教育研究所でも、昨平成12年9月
の第2回公開研究会において、私学政策の点検・評価をテーマとしてとりあげ、
この1月にその成果を発表したところである(注2)。
...
もっとも、「予算獲得を目指す要求官庁に自分の存在意義を否定するような
評価ができるわけがない」という冷ややかな声も官僚から出ているという(前
述『日経』記事より)。確かに政策や行政を自ら評価することは当事者には無
理であることは理解できる。いかなる評価も先輩や組織に対する批判につなが
りかねないからだ。しかしこんな消極的な考え方がいつまで通用するのだろう
か。たとえば文部省は大学に自己点検・評価を要求した。そして大学自身によ
る自己評価だけでは実効性に限界があるとして、今度は第三者評価機関として
の大学評価・学位授与機構をつくって、「多元的」かつ「透明性」ある第三者
評価を課そうとしている。そうであるならば、次には政策の発信元である文部
科学省自身が行政評価の対象にされるのは当然の道筋ではないだろうか。
各省庁が内部で実施する政策評価の限界を克服するために第三者による評価
が必要だという考え方に対しても、「政策の狙いや課題を最もよく理解してい
るのは各官庁」というのが霞ヶ関の反発だという(『日経』)。ここに官僚の
お上意識と時代の流れに背をむける保守的体質がよく現れている。自分たちだ
けが真に政策を理解しているのなら、なぜ行政が評価の対象にならざるを得な
いような状況になったのか。政策評価や行政評価はこうした官僚の無謬性の神
話に対する国民の側からの批判でもあるのである。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-9]新保 博氏「書評「市場経済のなかの大学」」より
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/01/212-shinpo.html
「...
最後に、本書で触れられなかった日本独自の問題について、一言しておきた
い。「大学」に在籍する学生が、パートタイム労働力の重要な供給源となって
いる点である。大学生のマジョリティを占める人文・社会科学系学部学生の大
部分と、理科系学部学生の一部分は、サービス産業を中心とする単純労働のパー
トタイマーとして恒常的に労働市場に参入しており、その数は現在150万人
を下回ることはないと思われる。しかも、かれらは、社会保険など一般の労働
者に保障されている権利が与えられていない労働力、言い換えれば雇い主にとっ
て「使い勝手のよい」労働力であり、現在では日本の労働市場の不可欠の構成
要素となっている。本来ビジネス・エリート養成を目的とする高等教育機関の
学生が、エリートとは無縁の単純労働の恒常的な供給源となっている、という
きわめて皮肉な事実そのものが、田口氏のいう「新制大学の死」を告知してい
るといってよい。この点をふくめて、現在のような形で「大学」が組みこまれ
ている日本的市場経済の構造が根源的に変わらないかぎり、「大学院大学」・
「高等教育機関」・「中等後教育機関」の三種類への「大学の種別化」と、市
場原理による淘汰が進められたとしても、日本の大学の「新新制への転生」は
現実のものとはならないであろう。
...」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
[40-10]国立大学協会への共同要望書に対する国立大学外からの支持表明
(敬称略)
伊ヶ崎暁生 富山国際大学教授・教育学者
梅田 欽治 宇都宮大学名誉教授
大森 昌衛 元麻生大学教授
鬼頭 純三 名古屋大学名誉教授
國弘 正雄 英国エジンパラ大学特任客員教授・元参議院議員
小出昭一郎 東京大学名誉教授
佐分利 豊 千葉短期大学教授
白鳥 紀一 元九州大学教授
白岩 謙一 名古屋大学名誉教授
高島 進 日本福祉大学社会福祉学部教授
寺尾 光身 名古屋工業大学名誉教授
暉峻 淑子 埼玉大学名誉教授
中野 藤生 名古屋大学名誉教授
西岡 啓二 慶応大学教員
浜林 正夫 一橋大学名誉教授
真鍋 毅 佐賀大学名誉教授
森 茂康 九州大学名誉教授
弓削 達 東京大学名誉教授
公表賛同者708名名簿:
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/kdk-shomei/meibo.html
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/kdk-shomei/meibo.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発行者: 辻下 徹
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/
e-mail: tujisita@math.sci.hokudai.ac.jp
発行部数 1146 (2001.2.12現在)
Mag2:661|CocodeMail:350|Pubzine:56|Macky!:41|emaga:22|melma:16
---------------------------------------------------------------------------
End of Weekly Reports 39
============================================================================