[amp 2010-10-03] 法学部意見、政策科学部意見、業務監査室討議集約

立命館大学の教員のみなさま Cc: 学園のみなさま

┌─目次──
│ ─1─ 法学部・法務研究科の意見集約
│ ─2─ 政策科学部教授会意見集約
│ ─3─ 業務監査室の討議集約
└───

9月29日の常任理事会で配布された学部・独立研究科・付属校や職場の意見 集約が各学部で配布されつつあるようですが、慎重意見の緻密さ・視野の広さ と、賛成意見の能天気さ・視野の狭さとの対照が鮮明です。

 「衣笠狭隘化解消と大阪での受験生確保だけで新キャンパスを作るというのは
   教学的展開としては魅力に欠け、社会的なインパクトが小さすぎる。社会的
   インパクトを与える新政策なしに、このような大プロジェクトを展開して良
   いのか。」
という指摘が意見集約の中にありました。2年前の転籍事件で学校法人として の立命館への社会的不信感が深まり「立命バッシング」的な現象さえ起きるよ うになっている危機的状況をいかに脱するか、そのための戦略は何か、を常に 意識しなければならない状況にあって、学園トップには上の意見の背景にある ような大局観が何よりも必要と思います。

7月末の理工学部教員会議で以下のような発言がありました。

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│学部長が慎重の上にも慎重にやるべきだと言ったときに、それは決断ができな
│い者が言うことだという批判があったそうだが、変な話である。これだけ大き
│な組織の決断というのは、良い面、悪い面を徹底的に分析して、もう分析して
│これ以上は考えるようがないところまで考えた上で、さてどうしようか、と決
│断するのが正しい決断である。話しを聞いていると、杜撰な検討だけで、えい
│やーっと滅茶苦茶に決断するのが正しい、ということのようだが、それは川八
│の香りを感じ、とても危ないと思う。そういう決断ならば猿でもできる。理事
│会では「決断できるできない」についての間違った考え方が横行しているよう
│である。
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総長の見解だけでなく賛成意見の多くは、前理事長時代の立命館のモットー 「走りながら考える」に頼っているように見えます。「走りながら考える」こ とは日常的には不可避ですが、学園の未来を左右する決断時にもこのモットー に頼るような安易なこととは訣別し、しばし立ち止まって考え抜くべきではな いでしょうか。

しかし、衣笠3学部・BKC2学部の教授会における明確な反対決議

を無視し、ブレーキが壊れた電車のように茨木キャンパス購入に向けて猪突猛 進し続ける学園執行部の憑かれたような様子には、何かしら背筋を寒くするも のがあり、脱線への予感と不安が学園全体に広がっているように感じます。

こういう脱線を未然に防ぐのも業務監査室の仕事の一つです。業務監査室は 「教育・研究の発展を担う見地から、学園の財産および業務を適正に把握し、 経営の効率化ならびに高度化の増進に寄与するとともに、事業計画や諸課題の 遂行について、監査独自の立場で診断し、業務の活性化と創造的改革の基盤を 培う」(内部監査規定第2条、第5条)ものとして位置づけられ、「法人・学 園の諸業務および制度(機構・規程・権限・業務分掌等)の運用状況が適正且つ 妥当であるか否かを検証するとともに、組織運営・業務管理のありかたについ て活性化の視点から問題提起を行う」役割を担っていますが(第3条)、「業 務監査室討議集約」【3】では、

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│提起(7月末)→意見集約(9月末)→決定(10月中)という日程は、夏休
│みを勘案すればあまりにも短期間であり、十分な検討を行い、多くの課題を詰
│めるには不十分(不可能)と言わざるを得ない。
│
│加えて、様々な指摘にもとづく補足説明文書が検討途中で次々に出されたり、
│財政見通しが9月24日15:00に配布される状況では、それらを含めて検
│討し、予定された日程で意見集約を行い、決定することは極めて無理があると
│考える。
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という忠告のほか、種々の深刻なリスクを指摘し、茨木キャンパス用地購入を 急ぐ学園執行部に「警告」を発しています。

意見集約には他にも重要な指摘が数多くあります。たとえば、

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│○本来は夢をもって語られるべき内容について、一丸となるムードが醸成され
│ていない。常任理事会および総合企画室は検討の進め方を省みるべきではない
│か。(財務部)
│
│○首都圏や名古屋圏の各大学においても、キャンパスの立地を23区内あるい
│は名古屋駅周辺などに移転していくおとが、今次相次いで計画されている。こ
│れらは、単に「人口が集積している地域」への進出にとどまるならば大きな魅
│力とはならないと考えられ、本学の場合も単なる移転であっては将来的な志願
│者の確保につながらない。大学全体としてのキャンパスの将来構想や魅力ある
│キャンパスコンセプトづくりをどうしていくのかが重要である。(入試セン
│ター)
│
│○全国の高校生・父母から見た場合は、場所としての知名度も利便性も低く、
│志願動向にマイナスとなる。(図書館サービス課)
│
│○北摂大阪キャンパスの判断ができなかった場合は、山ノ内が唯一の選択肢と
│なる。したがって、北摂大阪キャンパスの合意形成や契約ができなかった場合
│への対応として山ノ内が位置づけられることになると思われる。その場合、今
│年12月頃から予定されている事業者募集に間に合うよう、年内が検討のリミッ
│トとなることを念頭に置いた検討を進めることが必要である。(総務部)
│
│○管理運営について、これ以上府県を超えたキャンパスを開設すると「キャン
│パス独自性=権限委譲」を前提とした議論の流れになるが、立命館は日大のよ
│うな運営方法をとるべきではない。(図書館サービス課)
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教職員千数百名が、提案文書と後出し的に次々と出てくる補足文書を読み考え 議論した結果の夥しい疑問・意見・危惧・提言・警告に対し応答することなく 決定を急ごうとしているのは、責任(responsibility)と応答する(respond) こ ととは不可分であると考えると、学園トップの無責任さが鮮明に表出されてい るように感じます。

1 法学部・法務研究科の意見集約

http://ac-net.org/rtm/campus/doc/2010-09-28-law.html

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  │新中期計画 特別委員会報告「立命館大学キャンパスに関する将来構想」(7 月23 日)、
  │「『キャンパス創造』に関する補足説明について」(9 月13 日)及び「新中期計画特別委
  │員会検討報告」(9 月22 日)に対する法学部・法務研究科の意見集約 2010 年9 月28 日
  │
  │1 結論: 新キャンパスに関する判断を10 月の時点で行うべきではない。
  │
  │2 理由
  │
  │1)(i)現在、2020 年までの新中期計画を検討中であり、立命館学園のグランドデザイン
  │の未確定な段階で判断するのは時期尚早であること(新たなキャンパス展開の下で新たな
  │教学展開の構想を図るというのではなく、構想があって初めて新キャンパスの取得が課題
  │になるのが筋であり、議論が逆転している)、(ii)10 月下旬に総長選挙を控えている現在、
  │400 億円と試算される大規模な投資の判断をするのは不適切であること(選挙で選ばれた
  │新体制の下で判断すべき)、(iii)学内の意見集約を求めた以上、その動向を踏まえるべき
  │であり、学内に亀裂をもたらすような判断をすれば、2009 年度以降明確になってきた常任
  │理事会の「信頼回復」の方向が支持基盤を失うおそれがあること、による。
  │
  │2)また9 月22 日文書で示されたシミュレーションに対して、重大な疑問が多数指摘され
  │た。(i)2020 年段階で財政的に可能との結論が示されているが、2020 年以降の社会及び教
  │育を取り巻く情勢について慎重に検討する必要があり、例えば、ST比のさらなる改善、
  │BKCキャンパスの改修なども視野に入れると、新たな負担増が生じる可能性があるのだ
  │から、それをも含んだ試算をすべきであること、(ii)財政について、基本金組入が2020 年
  │で17 億円にとどまること、新キャンパス取得経費400 億円の積算根拠が示されていないこ
  │と、資金収支の試算において、教育管理経費支出がゼロシーリングとなっており、教学展
  │開を視野に入れるとき、増額の見通しが立てられないこと自体が問題であること、(iii)シ
  │ミュレーションをする場合には、前提条件、例えば、受験者数が6 万人台になった場合や
  │学生定員が充足できなかった場合など、いくつかのケースを立てた上で検討すべきである
  │のに、結局、新キャンパス判断に都合の良いシミュレーションしか提示されていないこと、
  │(iv)キャンパス整備のシミュレーションにおいて、衣笠キャンパスの狭隘化を解消するた
  │めには、12,000 人規模にする必要があると指摘しながら(7 月23 日文書)、9 月22 日文
  │書では、新キャンパス8,000~9,000 人の規模と提示されており、これでは狭隘化は解消し
  │ないこと、そうであれば、費用対効果の点で問題があること、などである。
  │
  │3)さらに北摂地域の新キャンパスに対しても、重大な疑問が多数指摘された。(i)交通の
  │便や通学距離の拡大などが主として指摘されているが、交通騒音の大きさ、最寄り駅から
  │キャンパスへのアクセス(通学通路)の狭隘さ、周辺の環境(高架高速道路等)など、大
  │学の教育環境(便宜、安全、快適等)として適切かどうかの検討が具体的になされていな
  │いこと(学部長理事等が実地検分したかどうか疑問)、(ii)新キャンパスの取得に当たっ
  │て、いかに基礎学力のある受験生を吸引するかの視点から、学部の特性や立地条件を検討
  │する戦略的なプランが具体的に示されていないこと(入試動向の希望的観測が記述される
  │にとどまる)、立命館大学が京都にあることの意義が点検されていないこと、(iii)9 月
  │22 日文書では、北摂地域の自治体のことが記述されているが、BKCでは滋賀県・草津市
  │など地元からの支援を受けて、教学展開、キャンパス展開をしてきたのであり、こうした
  │地元への対応を、まず検討すべきであること、(iv)多キャンパス化によって、立命館大学
  │のアイデンティティ、一体性が損なわれるおそれがあることに対して具体的な解決の方向
  │性が提起されていないこと、外国語教育、教養教育、事務体制、管理運営体制などについ
  │て具体的な提起がなく、現在の2キャンパスの下で生じている問題点が共有されていない
  │ように思われること、などである。以上
  └───

2 政策科学部教授会意見集約

http://ac-net.org/rtm/campus/doc/2010-09-28-seisaku.html

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  │新キャンパス購入に関わる政策科学部意見集約
  │
  │                   2010 年9 月14 日 政策科学部教授会
  │                   2010 年9 月17 日 政策科学部拡大企画委員会
  │                   2010 年9 月28 日 政策科学部教授会
  │
  │1.教授会で出された意見
  │
  │・新キャンパス展開は学園の将来構想に大きな影響を与える事柄であるにも関わらず、こ
  │の間の新中期計画の諸委員会でも議論をされておらず、整合性がとれていない。もう少し
  │早く提起して、新中期計画の中で議論すべきではなかったのか。
  │
  │・今次の新キャンパス展開は衣笠、BKC 双方のキャンパスの新たな展開にも関わる問題で
  │あるが、費用を含めてそれらについて十分な言及がなく、3 キャンパス全体の枠組みが示
  │されていない。加えて、キャンパスのコンセプトを後から考えるというスタンスに対して
  │大きな危惧を抱いている。
  │
  │・現状で何が課題なのかが明確に示されないまま、なぜ性急に新キャンパス購入を進めよ
  │うとしているのか理解できない。衣笠キャンパスの狭隘化が挙げられているが、教育学部、
  │心理学部等の新学部や新研究科設置構想についても、衣笠キャンパスの現状の中で展開可
  │能であるから展開されてきたのではないのか。新規展開を行ってきた結果、キャンパスが
  │狭くなった、だから新たなキャンパスが必要とのロジックはあまりにも稚拙ではないか。
  │
  │・学園の将来を大きく左右する事柄であるにもかかわらず、学部に知らされたのは7 月で
  │あり、9 月中に学部の意見集約を求めるのはあまりにも唐突かつ性急ではないか。
  │
  │・現状の衣笠キャンパスの狭隘さの課題は理解できる。しかし、現在定員増を伴う教学改
  │革が提起されているわけではなく、今新キャンパスを購入しなければならないことの意義
  │が明確ではない。
  │
  │・これまでの新キャンパス取得については、公私協力の形で展開をしてきているが、今回
  │のようにお金を支払って土地を購入するという展開は異例ではないか。茨木市がどのよう
  │な支援をしようとしているのかを明確にする必要がある。
  │
  │・立命館は京都の大学というイメージがあるが、滋賀に加えて大阪に展開するとなると、
  │学園イメージの喪失に繋がるのではないか。
  │
  │・今回購入予定の土地は衣笠キャンパスと同規模が想定されているが、衣笠キャンパス狭
  │隘化解消および新教学展開のためであればあまりに広過ぎるのではないか。また、広大な
  │BKC からなぜ学生を出さねばならないのか。全体のキャンパスのキャパシティを踏まえて、
  │新キャンパスの広さを含めた今後の新展開のあり方を検討する必要がある。
  │
  │・判断をするための長期的な視点に立った事業上の十分なリスク評価がなされていない。
  │リスク評価に対する費用を惜しまず、それなりの費用をかけ、外部の専門機関に実施して
  │もらうことが必要である。
  │
  │・これまでに立命館大学が新キャンパス展開をした際に、各学部教授会にキャンパス用地
  │購入そのものを意見集約に付すという方法をとってこなかったはずである。キャンパス用
  │地の購入については、責任ある立場の人が責任をもって決定すべきであり、土地の購入は
  │理事会の判断でなされれば良いのではないか。ただ、その際には学園財政に与える影響と
  │今後の財政上の課題については全学に明確に提示されるべきである。
  │
  │2.政策科学部としての見解
  │
  │・衣笠キャンパス狭隘化により、新たなキャンパスが必要であるという一般的な必要性に
  │ついては理解できる。
  │
  │・しかし、本件の茨木のビール工場跡地を新キャンパス用地として購入することに関して
  │は、政策科学部教授会として意見を集約するに至らなかった。
  │
  │・少子化が見込まれている中、広大な土地とそれに比しての建物の規模を勘案すると、10
  │月中に茨木の土地購入に関して意思決定を行うことについては、強い反対意見もある。
  │
  │・もし新キャンパス購入がなされた場合においても、政策科学部教授会では新キャンパス
  │に移転することについて一致していない。
  │
  │・もし新キャンパスが購入された場合には、新キャンパスに移転する学部と残る学部の双
  │方の教学が発展する方向での議論が必要である。そのためには、単なる既存学部の個々の
  │移転の話だけではなく、新中期計画策定の議論において衣笠キャンパスの社系学部再編に
  │ついて提示されているように、学部再編を含めた新たな教学展開を図る方向での教学改革
  │議論が必要である。
  │
  │以上
  └───

3 「立命館大学キャンパスに関する将来構想」についての討議集約 業務監査室 2010.9.27

http://ac-net.org/rtm/campus/doc/2010-09-28-gyoukan.html

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  │1. 教育の質保証において、衣笠キャンパスの狭隘化が桎梏となっていること、
  │それに対するスペースの確保が喫緊の課題であることは共通認識になっている。
  │
  │2.しかしなお、このたびの「立命館大学キャンパスに関する将来構想」を全学
  │合意のもとで進めて行くためには、次の点で進め方に不十分さがあると言わざ
  │るを得ない。
  │
  │(1)提起(7月末)→意見集約(9月末)→決定(10月中)という日程は、
  │夏休みを勘案すればあまりにも短期間であり、十分な検討を行い、多くの課題
  │を詰めるには不十分(不可能)と言わざるを得ない。
  │
  │加えて、様々な指摘にもとづく補足説明文書が検討途中で次々に出されたり、
  │財政見通しが9月24日15:00に配布される状況では、それらを含めて検
  │討し、予定された日程で意見集約を行い、決定することは極めて無理があると
  │考える。
  │
  │(2)「新中期計画」の中味を保証する条件(スペース)整備への提案とされ
  │ているが、そもそも、「新中期計画」の提起自体がキャンパス将来構想とリン
  │クしておらず、結局再度の検討が必要となるのではないか。
  │
  │
  │3.さらに十分な検討を要する事項
  │
  │(1) 一部触れている記述はあるが、この間の大学規模問題と衣笠キャンパス
  │が狭隘化した関連性についての十分な総括がされていない。本学の将来構想に
  │おける学園規模問題を明確にする必要がある。
  │
  │(2)「6.今後の進め方」(p26)で、新キャンパス判断後に継続的検討を
  │するとされている、キャンパスコンセプト・教学展開、ガバナンス・マネジメ
  │ント、学生生活・自主活動等課題、既存キャンパス整備課題は、新キャンパス
  │の成否を決める重要な論点であり、それらを今後検討するという状態で土地購
  │入を決定するのは、リスクが大きいのではないか。
  │
  │(3)「3)マネジメント・体制」(p19)で、4つのキャンパスにおける
  │マネジメントや体制の課題について、分権化すれば課題が解決できるように読
  │み取れるが、「学園運営の改革具体化推進委員会」で、3つのキャンパスにお
  │けるガバナンスの課題について議論される中で、分権化によって課題が解決で
  │きるかどうか、結論が出ていない状態である。その状態で、分権化を前提に第
  │4のキャンパスを展開するのは、リスクが大きいのではないか。
  │
  │(4)「5.これまでのキャンパス整備の総括と今後の方針」(p22)に記
  │されているこれまでの問題点は、非常に重要な指摘であるとともに、キャンパ
  │ス整備に留まらない大きな課題であるため、別途「学園運営の改革具体化推進
  │委員会」等で、十分に総括をする必要があるのではないか。
  │
  │新キャンパスを開設するとすれば、どの学部が行くにしても、既存キャンパス
  │を含めた今後の教学上のコンセプトを、全学で共有することが必要であり、そ
  │のための全学的議論を十分に行う必要がある。新キャンパス開設を判断する際
  │には、そのような全学的議論が十分に行われ、かつ全学で一致できたのかどう
  │かを慎重に見極める必要がある。
  └───