==> 登録と解除|Back Number総目次
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/wr-20-00828.html

国立大学独立行政法人化問題 週報 Weekly Reports  No.20  2000.8.28 Ver 1.02

===============================目次=================================== [20-1]調査検討会議情報 [20-2]「 組織業務委員会」(第1回)配付資料 [20-3]国立大学協会特別委員会情報 [20-4]文部省方針:教員養成学部再編 [20-5]「教員養成」問題の焦点 [20-6]教育改革国民会議中間報告に関する渡邊勇一氏のコメント [20-7]「国大協への署名運動」 [20-8]豊島耕一氏「大きな」問題に臨む基本姿勢について」 [20-9]保護者が負担する学校外教育費(塾費・家庭教師謝金)年間総額 ===============================前書=================================== 調査検討会議には箝口令が敷かれていたわけではなかった。会議は公開にする 合意が最初にあったという。配付された資料19点のリスト[20-2]も明らかに なったが、大半は公開されているものである。また国立大学協会の設置形態検 討特別委員会の第3回(8月10日)で議論されたことの概略も伝わってきた [20-3]。根本的なところから議論しようという姿勢がかなり明確に出ていると 思われる。  文部省は独立行政法人化問題が一件落着したと思ったのか、つぎの大きな目 標を立ち上げたようだ:「教員養成学部の整理」[20-4]である。この問題は、 文部省の教育行政の姿勢が典型的に出ているように思われるが、当事者以外に は、問題の本質が一見するだけではわからない点があるので[20-5-1]に従って 簡単な説明を加えてみた[20-5]。「大学が専門家を養成する」際の大前提の失 念が問題の核心にある。  国立大学協会に調査検討会議への参加を止め、独自案を作ることを求める要 望書への署名の新たな呼びかけが行われた[20-7]。草の根的な署名運動である が、現在までに428名の署名が集まっている。これと平行して、大学セクター の独立を求める動きも始まっている。独立行政法人化・民営化・現状維持のい ずれにせよ、現場を無視した行政の介入が増えこそすれ減ることはあり得ない 以上、真の解決策はこれらの外に求めなければならないことが次第に明確にな ってきた。独立行政法人化という未曾有の圧力によって、(高等)教育関連法 体制全体の再構築等による真の解決への推進力が戦後初めて生まれたと考える べきであろう。 ===============================本文=================================== [20-1]調査検討会議の情報[20-1-1]がようやく一般に伝わった。会議(8月1 6日の「目標評価委員会」)の冒頭では、会議は公開とする合意があったと聞 く。今後は、国立大学協会で当番を決め、配付された資料と議事概要を速やか に公開することを願う。これは6月14日の国立大学協会における合意のあい まいさを少しでも解消するのに不可欠な(しかも易しい)作業ではないか。 7月31日の初回の「組織業務委員会」会議で配られた資料は19点。多くは 既に公開されたものだ。海外の大学に関する資料は新しく作られたものと思わ れる。 [20-1-1]「 組織業務委員会」(第1回)議事次第 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/00731-giji.html 国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議
「 組織業務委員会」(第1 回)議事次第 日時 平成12 年7 月31 日(月)10 時00 分〜13 時00 分 場所 東海大学校友会館「富士の間」 1 開 会 2 高等教育局長あいさつ 3 委員紹介 4 議 事 (1 )独立行政法人制度の概要について (2 )国立大学等の独立行政法人化の問題の経緯について (3 )その他 5 閉 会 ====================================================================== [20-2]「 組織業務委員会」(第1 回)配付資料 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/shirou.html ====================================================================== 「参考」として挙げたのは、実際に会議で配られたものかどうかわからないが 内容的に同等のものを含むと推測される文書。 [20-2-1] 「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」について http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/00724.html [20-2-2] 審議会等の透明化、見直しについて(抄) (平成7 年9 月29 日 閣議決定) http://www.somucho.go.jp:80/gyoukan/kanri/siryou12.htm [20-2-3] 独立行政法人制度の主な特徴について http://www.medic.mie-u.ac.jp/PDF/dokuhou/tokuchou.pdf [20-2-4] 行政改革会議最終報告(抜粋) (参考:http://www2.kantei.go.jp:80/jp/gyokaku/report-final/) [20-2-5] 独立行政法人通則法及び中央省庁等改革の推進に関する方針(対照表) (参考:中央省庁等改革の推進に関する方針: http://www2.kantei.go.jp:80/jp/cyuo-syocho/990427honbu/housin.html 独立行政法人通則法 http://www.kantei.go.jp/jp/cyuo-syocho/990427honbu/houjin1-h.html [20-2-6] 国立大学の独立行政法人化の問題の主な経緯 http://www.medic.mie-u.ac.jp/PDF/dokuhou/keii.pdf [20-2-7] 独立行政法人一覧 http://www2.kantei.go.jp:80/jp/cyuo-syocho/146kokkai/kobetugaiyou.html の中に一覧表がある [20-2-8] 今後の国立大学等の在り方に関する懇談会について (平成12 年5 月10 日 文部大臣裁定、平成12 年7 月3 日 一部改正) (参考 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/00724-bunkyou.html) [20-2-9] 国立大学と独立行政法人化問題について(中間報告) (平成11 年9 月7 日 国立大学協会第1 常置委員会) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/99907-kokudaikyou.html [20-2-10] 国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣あいさつ (平成11 年9 月20 日) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/net/netmonbu990920.html [20-2-11] 国立大学の独立行政法人化の検討の方向 (平成11 年9 月20 日 文部省) http://www.monbu.go.jp/news/00000368/ [20-2-12] 国立大学の独立行政法人化問題の議論を越えて 高等教育の将来像を考える (平成11 年11 月18 日 国立大学協会会長談話) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/99b18-hasumi.html [20-2-13] 高等教育・学術研究の将来像を考える場合の大学が具備すべき基本的要件 −アンケート結果の報告−(平成12 年1 月 国立大学協会第1 常置委員会) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/00115-kdk.html [20-2-14] 提言 これからの国立大学の在り方について (平成12 年5 月11 日 自由民主党政務調査会) http://www.jimin.or.jp/jimin/saishin2000/seisaku-010.html [20-2-15] 国立大学長・大学共同利用機関長等会議における文部大臣説明 (平成12 年5 月26 日) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/tkk/00526-monbu.html [20-2-16] 国立大学協会見解(平成12 年6 月14 日) http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/kokudaikyou.htm [20-2-17] 国立大学の設置形態に関する過去の提言等について http://www.medic.mie-u.ac.jp/PDF/dokuhou/teigen.pdf [20-2-18] 諸外国の大学の法的地位について http://www.medic.mie-u.ac.jp/PDF/dokuhou/gaikoku.pdf [20-2-19] 国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議日程(案) http://www.medic.mie-u.ac.jp/PDF/dokuhou/kaigi.pdf (以下はテキスト版。4つの委員会の開始時期・終了時期がずれていることに注意) --資料19------------------------------------------------------------  平成12年           平成13年       平成14年   7月              夏〜秋   ○「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」・・・・・・○          (随時開催)   ○組織業務委員会・・・・・・・○中間整理・・・・・・・○最終      (第1回)                      まとめ   ○目標評価委員会・・・・・・○中間整理・・・・・・・○最終       (第1回)                     まとめ   ○人事制度委員会・・・・・○中間整理・・・・・・・○最終        (第1回)                    まとめ   ○財務会計制度委員会・・○中間整理・・・・・・・○最終         (第1回)                   まとめ   ○連絡調整委員会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・○          (随時開催)  (備考)   1.各委員会は、7〜10月頃にかけて順次検討を開始する。   2.7月には組織業務委員会(第1回)を開催する。   3.連絡調整会議は、各委員会の検討の進捗に応じ適宜開催する。   4.平成13年の夏〜秋には中間的な整理を行い、平成13年度中に最終    的なとりまとめを行う。   5.「今後の国立大学等の在り方に関する懇談会」は、調整検討会議の検    討の進捗に応じ適宜開催する。 --資料19終---------------------------------------------------------- ====================================================================== [20-3]国立大学協会の第3回設置形態検討特別委員会(8月10日)情報 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/kdk/00810-giji3.html ====================================================================== [he-forum 1218] 設置形態検討特別委員会08/10 Date: Sat, 26 Aug 2000 23:31:31 +0900 (JST) 国立大学協会設置形態検討特別委員会(第3回)資料 議題 平成12年8月10日 設置形態検討特別委員会 学士会分館(本郷)6号室 1. 「国立大学の法人化について(中間報告)」について 2. 調査検討会議「組織業務委員会」の検討状況について 3. 特別委員会の検討課題について 4. 専門委員会の検討状況について 5. 設置形態検討特別委員会専門委員会へのオブザーバー出席について 6. その他 ---------------------------------------------------------------------- 第3回 設置形態検討特別委員会 配布資料 平成12年8月10日 学士会分館(本郷)6号室 1. 東京大学国立大学制度研究会『国立大学の法人化について(中間報告)』 2. 調査検討会議「組織業務委員会」の阿部委員メモ及び資料 3. 「世界的視野に立つ改革か、単なるスリム化の手段か」 (世界週報 00.8.15) 4. 議論すべき課題(論点整理) 5. 各委員・専門委員からの意見 6. 「国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議」について 7. 大学共同利用機関所長懇談会座長からの当特別委員会専門委員会へのオブ ザーバー出席の依頼状 8. 「第2回 設置形態検討特別委員会(議事の概要)」 ---------------------------------------------------------------------- 議論すべき課題 (論点整理) 1. 我が国の高等教育・研究および学術文化の継承・発展を担う大学・研究機 関(国立とは限らず)の持つべき理念 2. 上記の理念の下で、国立大学、大学共同利用機関が私立大学等とちがって 国立大学法人等でなければならない理由(国立大学等の使命と法人化の意味) 3. 国立大学等における教育研究をより活性化し、学術文化の継承・発展をよ り良く進め、国立大学等の使命を果たすことのできる設置形態と財政的裏付け。 4. 上記の設置形態がどのような条件下で可能か、どこまでを共通の枠組みと して設定し、どれだけを各大学が自律的に決めるべきか。 5. 我が国の将来の方向という時代の要請を受けつつ、我が国の高等教育・研 究、学術文化のバランスのとれた継承・発展、社会への貢献等について検討し、 政策提言を行う審議機構のあり方。 ====================================================================== [20-4] 文部省方針:教員養成学部再編 ====================================================================== 文部省が教員養成学部再編のため「地域ブロックごとに統合するなどのスリム 化案」の検討を開始したと報ぜられた[20-4-1]。文部省文書[20-4-2]によれば、 18名からなる「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会」に 2000.7.19〜2001.3.31に検討を依頼するそうだ。メンバーは、以下の通り: ・岡本 靖正 東京学芸大学長(教育大学協会会長) ・赤岩 英夫 群馬大学長 ・椎貝 博美 山梨大学長 ・大澤 健郎 上越教育大学長 ・兼重  護 長崎大学教育学部長 ・金藤 泰伸 愛媛大学教育学部長 ・木岡 一明 国立教育研究所教育経営研究部教職研究室長 ・渋川 祥子 横浜国立大学教育人間科学部長 ・高倉  翔 明海大学長 ・永井 順国 女子美術大学長 ・小笠原道雄 放送大学広島学習センター所長 ・阿部 充夫 放送大学教育振興会理事長 ・中村 好成 千葉県教育長 ・谷合 明雄 新宿区立牛込第三中学校長 ・小島  宏 台東区立根岸小学校長 ・市川  正 東京都住宅供給公社副理事長 ・桐村 晋次 古河物流社長 ・中津井 泉 リクルート「カレッジマネージメント」編集長 ---------------------------------------------------------------------- [20-4-1]文部省教員養成学部を再編を検討開始 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/ed/00820-ed.html ---------------------------------------------------------------------- [20-4-2]「国立の教員養成系大学・学部の在り方に関する懇談会について」 (平成12年7月19日高等教育局長裁定) http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/ed/00719-monbu.html ====================================================================== [20-5] 「教員養成」問題の焦点 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/ed/index.html ====================================================================== 戦後の教員養成政策は、文部省の考え方の硬直性と長期的視野の欠如(と狡猾 さ)が象徴的に表れている。1997年の、教員養成課程入学定員5000人 削減、そして、今回の大学の統廃合の方針も、「少子化⇒教員需要減少⇒教員 養成の場の縮小」という短絡的思考が(恐らく故意に)無批判に前提とされて いる。現場の心からの願いである30人学級が実現されれば「少子化⇒教員需 要減少」という前提は成立しないし、また、2006年頃から1000人台の 教員需要が見込まれていることも考慮されていない。その予想を知っていなが ら何ら対策を考えないのは、教員不足という事態を意図的に引き起こし、公立 は義務教育段階から「エリート校」だけにする、という路線を実現する準備を 整えている以外に理由は考えられまい。この点は、教育改革国民会議の中間報 告とも関連し、問題が大きいので、今はこれ以上述べず、「教員養成」につい て、若干の説明を加えておきたい。 「専門家養成」は大学の使命の一つと考えられているが、誤解が多いように 感じる。正確に言えば、<広い視野と公共的使命感を備えた>専門家を養成す ることが大学の使命の一つなのである。社会に深層から影響を与える(司法・ 教育・医療等の)職種について、視野の広さや公共的使命感を持たない専門家 を養成することは、危険で無思慮な政策であることは誰でもわかることだろう。 日本では医師・法曹・教員は大学から生みだされるが、上記の理由により、彼 等の教育が専門的知識・技能に偏ることは避けなければならない。しかし、日 本の教員養成政策を担当してきたところは、この自明な認識を持っていないよ うに思える。それを証明するのが、上述の教員養成学部再編計画だ。 教員養成問題では、何が問題の焦点かわかりにくいところがある。[20-5-1]を 参考に、日本の「教員養成」政策の問題点を説明してみたい(若干、発行者の 解釈も入っているので、疑問な点は[20-5-1]を参照してほしい。)。 戦後の教員養成政策には両立しない(良く言えば「相補う」)2つの要請がある。 (1)「開放性に基づく養成」(「大学における養成」)の原則 大学で学問の本質に触れ、学問の自由の重要性を肌で知ることが、一人一人 が全く新しい存在である子供達に先入観なしに向き合う精神的基盤として欠か せないという認識の上に立つ原則であろう。戦前教育への反省から重要性が認 識されたものと推測される。  1949年発足の学芸大学・学芸学部の構想はこれを反映したもので、「教 員養成だけを目的とする特別の大学類型(師範大学のようなもの)は作っては ならないという共通認識があったようである。 (2)国の期待するような教員を養成する。  「開放性に基づく養成」では、誕生する教師を国として把握できないことを 嫌って、教育免許制度によって、出口制御を始めた。 出口制御では終わらず、教育課程の国家基準の導入、免許基準の強化が推し進 められ、教員養成の過程への政府のコントロールは次々と広がっていった。そ して終に、1997年の免許法改定で教職科目が激増し教育学部以外の学生が 教員免許を取ることは極めて困難となり、実質的には「開放性の基づく教員養 成」の原則が破棄されたことになった。それにとどまらず、「教育職員養成審 議会第3次答申は、教育委員会等の教育行政に大学がカリキュラム編成・人事・ 研究等で全面的に協力することを要求している。 「教育は知識だけでなく独特の実践的知識が必要であり、それを中心としたカ リキュラムを組むことは当然必要ではないか。」というのが、深く考えないと 最初に浮かぶ考えである。これに関して[20-5-1]はつぎのように述べている: 「このように、大学における教員養成が大学の独自性においてなされることが 否定される大義名分は、「大学の学問は、抽象的で現場では役立たない」とい う<畳の上の水練>論である。そのために大学を社会に広く開放し、<社会的 ニーズ>に応える必要性が喧伝されるのであるが、その内実は、以下にみるよ うに、文部行政や地域教育行政の<ニーズ>に対応して、<行政に開かれる> 大学というベクトルで進行している。」 [20-5-1]日本科学者会議大学問題委員会編「21世紀の大学像を求めて」 競争・管理から共同・自治の大学づくりの提言 水曜社 2000.6.15 発売 ISBN 4-88065-017-X 第II部 大学改革の諸問題と提言 第9章 教員養成 ====================================================================== [20-6]教育改革国民会議中間報告に関する渡邊勇一氏のコメント http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/008/02-watanabe-y.html ====================================================================== Date: Wed, 2 Aug 2000 20:15:32 +0900 From: Yuichi WATANABE Subject: [reform:03046] 恣意的な教育論議 会員各位:  これまで、教育改革国民会議の記事は、極めて断片的にしか報告されていな い。独立行政法人の問題が結局自民党の文教族によって、最後の舵取りをされ た事は記憶に新しいところであるが、初等から高等教育までの将来をどのよう にしてゆくかを、公明党の協力をとりつけながら、内閣総理大臣決裁(本年3 月)という方法により、森総理直属の「教育改革「国民」会議」なるものを勝 手に作りあげ、論議してゆくことに大きな疑問を感じる。  これは一種の放談「審議会」の様なものだと思われる。しかし、単なる放談 に終わらない事は、以下の町村総理補佐官の言葉が物語っている。 【町村総理補佐官】 「いくら提言取りまとめても何も実行されないのではしようがない、必ず実行 するんだろうね」、こういう御意見・御質問が何人かの方からございました。 もちろん教育予算を一挙に5倍にしろ10倍にしろという御提言をいただいても なかなかできないことはあろうかと思いますが、しかし、幸いなことに総理直 属の国民会議ということもあるものですから、できるものであれば、来年度の 予算なり、来年度の法律改正にこういうものがもし可能であれば、そうさせて いただきたいし(中略)三党連立の下で三党の方々も参加をしてという意味は、 これは責任を持って実行させていただきたい、そういう思いで、これを取り組 んでまいるということでありまして、そういう意味から、言いっぱなし、聞きっ ぱなしということにならないようにやっていきたい」第三分会・第一回議事録 より。 −−−−−−引用終わり−−−−  問題は、放談をさせておいて、利用出来るところを利用しようとする裏の立 役者官僚の存在にある。(審議会は役人のためにある。宮本政於氏の言葉を想 起しよう)この会議に集められた人の中には、演劇・柔道一筋といった有名人 も含まれ、その発言には傾聴すべき部分もある。しかし教育という巨象を極め て主観的な、まとまりのない放談で対処してゆく事には、大変な危険を感ずる。 具体的な発言の根拠の提示の欠如、また一つの発言を多角的な視野掘り下げた り、あるいはその発言の欠けた部分を補いつつ深める様作業の欠如など、この 種の放談につきものの問題点が見て取れる。  この様な作業をいくら繰り返しても、教育現場にとって真に有効な改革は生 まれてこないであろう。  メンバーを全てここで紹介する事はスペースを取りすぎるので、各自確認願 いたい。(江崎玲於奈氏が会長である) http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/youkou.html 第一分科会 人間性  第二分科会 学校教育 第三分科会 創造性 という重要なテーマで、限りない放談が http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/index.html の中で延々と続けられる。  ここで特に強調したいことは以下の点である。  バブル以後の経済の落ち込みを利用して、日本の大学が産業にいかに貢献し ない硬直した組織であるかというキャンペーンを展開し、任期制独立行政法人 化などの一連の策を生み出してきたと同様に、青少年の犯罪の多発が、戦後教 育の全面否定を行う最大のチャンスと捕らえられている事が明確に読みとれる。 第一分科会 「審議の報告」 より引用。  「戦後教育の危険性は、はるか以前から意識されていたが、ここへ来て、教 育の欠陥の病状はにわかに明らかになった。」「個人や普遍的人類などが強調 されすぎ、国家や郷土、伝統、文化、家庭、自然の尊重などが教育基本法から 抜け落ちている」などと断定して、結果として、攻撃の矛先を教育基本法に向 けている。  「教育は不当な支配に屈することなく−−−という規定が過去に 拡大解釈 された経緯がある」も、教育全体に圧力が強まりつつある 現在においては、 大変奇異に感ずる表現である。曽根絢子氏は致し方ないとしても、浅利慶太氏、 山下泰裕氏などには、せめて現在の大学への官僚支配の危機を少しでも感じ取っ て欲しいと思うのだが。  とにかく、第一分科会は、議論の結果教育基本法の改正(悪)が必要である という結論に達している。もちろん、この法律の改変が教育をめぐる諸問題の 解決に直ちに結びつくものではないという逃げ道を用意しながら。  教育基本法の中には、男女共学など、確かに達成された部分もある。しかし この法律を敵視する人達は、昔の道徳教育・宗教教育が現在の教育の荒廃を救 うものと信じて、それらの面を個人の尊厳や平和に対する意識よりも優先した がっているように思われる。  その他:ダブルメジャー制度、小中学校教員にも評価と任期制、大学を3年 で終えて大学院へ、大学9月入学による進路決定への熟慮期間設定などなど、 少しあげただけでも大学に対する施策が次々に論じられている(全て実行され るか否かは不明だが)。是非目を通していただきたい。この様な少数の人間の 集まりの発言を利用しつつ、更に大学の組織や制度の外からの「いじり」が続 けられる。 ====================================================================== [20-7]「国大協への署名運動」 新しい呼びかけと賛同者名簿  http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/008/24-shomei.html ====================================================================== 7月27日に、360名の国大教員が国立大学協会に提出した要望書[20-5-1] は、特別委員会では蓮實会長から報告されいないと聞く。8月24日に新たな 呼びかけが行われた。 ---------------------------------------------------------------------- 国立大学教職員のみなさまに ----------------------------------------------------------------------  国大協は、さる6月14日の総会において、文部省内に設置される国立大学 独立行政法人化「調査検討会議」への参加を決定しました。  独法化を前提としたこのような会議に、国大協が参加することは独法化容認 につながることを危惧し、去る7月27日、国立大学教職員360人連名で以 下の要望書を国大協会長と全国立大学長に提出いたしました。 7月19日の文部省文書では調査検討会議の参加者が「委員」ではなく「協 力者」と呼ばれていることにも見られるように、当会議が文部省主導のもとで 国立大学の独法化を目指すものであることが一層、明確になってきました。  このような事態の進行を深く憂慮し、現在引き続き「要望書」の賛同者を募 っています。  ご賛同くださいます方は、末尾の書式にご記入のうえ、10月10日(3次 集約期限)までに下記集約先にご返送くださいますようお願いいたします。  多くの方のご賛同をお待ちいたします。なお公表可の賛同者名を下記に掲載 しています。   http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/007/27-houkoku.html  2000年8月25日 ----------------------------------------------------------------------  呼びかけ人   秋葉 繁夫(横浜国立大学)   石川 濶 (帯広畜産大学)     伊吹 紀男(京都教育大学)   岩崎 稔 (東京外国語大学)    大内 定 (北海道教育大学札幌)岡田 知弘(京都大学)       岡部 恒治(埼玉大学)     岡本 嘉六(鹿児島大学)       荻野富士夫(小樽商科大学)   奥  忍 (和歌山大学)      鍵山 茂徳(鹿児島大学)    亀山 統一(琉球大学)       刈田啓史郎(東北大学)     栗田 禎子(千葉大学)        纐纈 厚 (山口大学)     近藤 学 (滋賀大学)       近藤 義臣(群馬大学)     酒匂 一郎(九州大学)        清水 保雄(信州大学)     庄 建治朗(名古屋工業大学)     高塚 龍之(岩手大学)     高橋 敏能(山形大学)       竹森 正孝(岐阜大学)     立石 雅昭(新潟大学)        玉木 尚之(高知大学)     辻下 徹 (北海道大学)      戸田 清 (長崎大学)     豊島 耕一(佐賀大学)       中里 博 (弘前大学)     中野 敏男(東京外国語大学)    野田隆三郎(岡山大学)     橋本 修輔(宮崎大学)        浜本 伸治(富山大学)     平野喜一郎(三重大学)       平野 公孝(宮崎大学)     広瀬 信 (富山大学)       福田 雅章(一橋大学)     本庄 春雄(九州大学)       松田 正久(愛知教育大学)   丸山 博 (室蘭工業大学)     森  透 (福井大学)     湯淺 精二(大阪大学)       吉田 省三(長崎大学)       集約先  岡山大学環境理工学部 野田 隆三郎                TEL・FAX 086-251-8472   e-mail noda@math.ems.okayama-u.ac.jp -------------------------------------------------------------------- 国立大学協会長 蓮實重彦殿        2000年10月   日  国立大学協会会則第28条に基づき、国立大学教職員   名共同で 以下の要望書を提出いたしますので、会員に回付されますとともに、関係 委員会においてご検討くださいますようお願いいたします。              要 望 書 国立大学協会は、さる6月14日開催された総会において、文部省が設置 を予定している「国立大学の独立行政法人化に関する調査検討会議」に参加 することを決定しました。  各大学内に、独立行政法人化に対する根強い反対意見があるなか、十分な 審議を尽くさないまま、文部省、自民党の圧力に屈する形で、独法化を前提 とした「調査検討会議」への参加に踏み切ったことは、きわめて遺憾なこと と言わねばなりません。  私たちが何よりも危惧することは、「調査検討会議」に正式に参加すれば、 そこにおいて決定されることを拒否することは事実上不可能であり、結局は 独立行政法人通則法を骨格とする法人化の受け入れに繋がらざるを得ないで あろうということです。  蓮實国大協会長は14日開かれた総会後の記者会見において、「調査検討 会議」への参加が独法化受け入れを意味するものでないことを強調し、さら に「最終的に全く理想的な形態がそこに成立しなければ、その後新たな問題 が起こるだろう」とまで述べておられますが、これらは、何の担保・保障も ない以上、中味のない空証文に終わる恐れが強いのではないでしょうか。  そもそも、文部省が独法化に向けて一方的に設置する「調査検討会議」へ の参加の是非さえ余裕をもって判断できないようで、どうして今後、国大協 の主体性を期待できるのでしょうか。  国大協が、6月14日の会長発表第一項にあるように、「国立大学の設置 形態に関して、これまで表明してきた態度を変更する必要があるとは認識し ていない」というのであれば、「調査検討会議」への正式参加を取りやめる 以外にありません。  いま国大協にとって大切なことは,文部省の中の一組織に性急に加わるこ とではなく,広く国民にこの問題の本質を理解してもらうための組織的努力 を開始することではないでしょうか。  その一つは「独立行政法人」に代わる案を国民の前に提示することである と考えます。ぜひ会長発表第二項にある「設置形態検討特別委員会」におい て、全大学関係者の英知を集めて、真に大学の独立を確保する国大協独自の 案づくりを進めてください。そして本格的な選択肢を広く国民に提示し,そ の判断を仰ぐべきです。私たちもそのための協力を惜しみません。  以上、要望いたします。 ====================================================================== [20-8]豊島耕一氏「「大きな」問題に臨む基本姿勢について」 ====================================================================== Date: Fri, 25 Aug 2000 17:59:58 +0900 From: TOYOSHIMA Kouichi Subject: [reform:03063] 「大きな」問題に臨む基本姿勢について 「大きな」問題に臨む基本姿勢について                     佐賀大学 豊島耕一  全大教も含め,反対勢力の国大協への対処の仕方を見ていると,どうも多く の人が「言葉の力」を十分には信じていないように思えるのです.例えば,調 査検討会議への参加はおかしいということは,少なくとも「通則法」反対の人 であれば十分理解できることでしょうし,また学長や調査検討会議の参加者の すべてが,率直にものが言えない臆病者だということもないでしょう.つまり 説得と宣伝活動によって国大協や検討会議参加者の考えを変えたり,少なくと も後ろめたい思いをさせるぐらいのことは十分可能なはずです.ところがこれ に取り組もうとする組織は見られません.政府や,組織のトップが決めたらも う動かないもの,と決めてかかっているかのようです.  「言葉の力」を信じないということは実は,民主主義を信じないということ とほとんど同じなのです.なぜなら民主主義とは討論や説得のプロセスを通じ て多数の意志を形成していくということが中心にあるからです.単に数の力 (これをかりに「政治」と呼びましょう)ということではなく,そのプロセス が重要なのです.(もちろん「数」にしても賛成派が多数という証拠はありま せん.) ましてわれわれ研究者はロゴスに仕える身であれば,その職業的特 質から見ても「政治」に偏重した振る舞いは似つかわしくないのです.  このような「政治」に偏った態度が大学関係者の対応をおかしくし,実のと ころかえって政治的な影響力そのものを弱めてしまっているのかもしれません. この傾向の最たるものとして,「革新勢力」が政権を握るまではやむを得ない, などと思っている人が意外と多いのではないでしょうか.これでは原理原則を 踏まえた実践というものは永遠に棚上げにされ,「不当な支配」との闘いも常 に回避されます.またそのような傾向に支えられた政治勢力というものは,か りに政権を握ったとしてもその中味は空洞に過ぎないので,何もできないか, 変質するか,すぐに崩れ去るかのいずれかでしょう.  もう一つ気になる点は,運動の戦略・戦術をめぐる論争がほとんど見られな いことです.これが行われれば,全国組織を持った批判勢力としてはほとんど 唯一の存在である全大教の方針についても議論が及ぶはずですが,しかしそれ も見られません.まるでタブーででもあるかのようです.このような便利なメ ディアがあるのですから,正式の会議だけでなく,当然このネットを利用して 公然とした議論を興すべきでしょう.そうすれば真に英知を集めた戦略と戦術 が生み出されるに違いありません.  関連した少し長い文,「行政法人化問題での焦点と,われわれの基本的姿勢 の問題について」も読んでいただければ有り難く存じます. http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/sapporoA1.html ====================================================================== [20-9]小中高生徒の保護者が負担する学校外教育費(塾費・家庭教師謝金)総額 ====================================================================== 文部統計要覧(平成12年度版)によれば以下のようになっています。 (等幅フォントで見て下さい) 小学校 公立中学  私立中学  公立高校  私立高校 計 A 7,500,317人 4,006,594人 237,168人 2,963,521人 1,248,305人 15,955,905人 B 11,222 36,269 54,063 25,503 31,727 C 47,714 147,174 108,681 65,893 87,321 D 62,011 137,581 905,456 329,979 774,936 A:人数 1999.5.1 B:家庭教師謝金(円)1998年 C:塾費(円) 1998年 D:学校教育費(円)1998年 これより(AとB,C,D の統計は一年ずれていますが、これを 無視して計算すると)  家庭教師謝金合計 3574億円  塾費用合計 1兆2775億円  合計 1兆6350億円  学校教育費合計 3兆1763億円(内授業料7991億円)  保護者負担総教育費(勉強関係のみ)4兆8114億円 -------------------------------------------------- なお、学校教育費総計(保護者と国・地方自治体の負担とを含む)は 1997年度で 義務教育   高校 高等教育 11兆7163億 4兆7826億 7兆4700億 財源別に見ると         義務教育   高校 高等教育 ------------------------------------------------ 国    3兆2067億   425億 2兆9603億    地方 8兆2578億 3兆8296億 6074億 学校法人     2517億   9104億  3兆9021億 ----------------------------------------------- 計      11兆7163億 4兆7826億  7兆4700億 (生徒・学生負担 1755億  9235億 2兆8929億) -------- 塾・家庭教師用に年間使われる1兆6350 円が真に有効な教育費であるかどう か、この教育費が学校教育に回れば学校教育は充実するだけでなく、現在増加 している〔フリーター等のライフスタイルを助長している塾教師や家庭教師の) 不安定雇用は良質の雇用にならないか、等、考えるべきことは沢山あります。 辻下 徹 ====================================================================== [20-L]独立行政法人化問題のサイトへのリンク http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/dgh/ ====================================================================== 発行者: 辻下 徹 homepage: http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/tjst/ e-mail: tujisita@geocities.co.jp 総目次:http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/all.html 登録・解除手続き http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/3141/wr/ 発行部数(2000.8.27現在) CocodeMail:309 / Mag2:540 / Pubzine:25 /Macky!:27 / emaga:20 / melma:7 /直送 約 200 ===================================================================== End of Weekly Reports No.20 2000-8-28 **この週報は発行者の個人的な意思で行っています** ===================================================================