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Weekly Reports No.57 2001.6.18 Ver 1.2
http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-57-01618.html 総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-0] 今週号の紹介 [57-0-1] 先週、国大協総会が開催が開催された[57-3]。多くの大学・部局・ 教員有志・個人・団体が要望[56-7]が珍しく受け入れられ、設置形態検討特別 委員会がまとめた国立大学法人化案[53-3]は了承されなかった[57-3-3]。総会 では報告に留め了承の是非は論じないことは、6月1日の国大協理事会[55-3] が決めていたことだ。 幾人かの学長を驚かせたことに、メディアは「国大協は総会で、委員会の法 人化案を了承した」[57-3-1]と報じた。これほど明確な誤報がなされたのは、 記者に対して会長の長尾氏が「了承したようなものだ」と発言したり、記者会 見の席上で「案を文部科学省の法人化案に反映させるよう求める」趣旨の発言 をしたからであろう。 国大協会長として臨んだ記者会見の席上で、設置形態検討特別委員会の委員 長として発言したことは、意図的なものでないとすれば、個人的な思いと国大 協としての総意とを区別して語れないことを示すもので、国大協会長として不 適任なことは明らかで、臨時国大協理事会を開き新しい会長を選ぶべきだろう。 しかし、国大協内の独立行政法人化推進派の戦略に長尾氏が協力したと理解 する方が確からしい。国大協として法人化を了承することは有りえなくなった ため、委員会の報告が拒否されなかったことを以て「国大協が法人化をほぼ了 承した」と世論が思うようにする、というシナリオである[57-3-3-2]。 [57-0-2] 国大協が、文部科学省の意思伝達を滑らかに速やかに行うための装 置であったことが今回ほど明確にされたことはない。そして、その装置が機能 しなくなったことに焦り、文部科学省は大学に対して強権的な態度で臨むこと にした。すかして駄目なら脅そうということらしく、高等教育局長が「一県一 大学という金科玉条にこだわるとおかしくなる。必ずしも安泰でないという脅 しをさせていただく」とまで述べたと報道されている[57-2-1]。国立大学の改 廃は、国立学校設置法の改正を国会で議決しなければできない。文部科学省の 権限は予算案作成・法案作成までであって、たとえ形骸化していようとも、そ れを決するのは国会である。大学所轄部局の長が、予算決定権・法律決定権を 文部科学省が事実上持っているという意識を公にしたことは、3権分立を公的 な場で明確に否定したもので、国家公務員としては特に許されない憲法無視の 発言と思われる[57-2-2]。 [57-0-3] 先週号外で紹介したように、文部科学省は大学構造改革案を経済財 政諮問会議で発表した。「全体を一言で言えば、要は世界で勝てる大学という のをつくっていくということ。」だそうだ[57-1-1]。経済財政諮問会議では大 学の切り売りを約束し[57-1-3]、国立大学長の前では大学を守るためにやった こと、と説明する[57-3-3-1]。これでは、大学からの信頼を失っても仕方のな いことではないか。 大学からの信頼を失った以上、大学行政担当者としての道は険しいというべ きではないか。今後、統廃合を強権的に事を進めれば、文部科学省に対して国 民が持っていた幻想は簡単に壊れるだろう。 それを防ぐために、反国立大学世論を惹起するための工作を始めたように見え る[57-7]が、それは墓穴を掘ることになるのではないか。情報操作の発覚は信 頼を一気に喪失させるからである。 大学入試集計ミスは国立大学に居るもの全員にとり重い事件であるが、旧文 部省が事件を把握していなかったとは信じがたい。各国立大学事務局は文部省 直轄であり、入試採点集計には各大学で事務方が何らかの形で深く関わってい るはずだからだ。この問題は、文部科学省自身にも波及することは避けられな いのではないか。 ---------------------------------------------------------------------- [57-0-4] ところで、文部科学省の「大学構造改革案」[57-1]は、大学を独立 行政法人化により文部科学省が何を目指していたかを率直に包み隠さず示した もので、今後、国立大学関係者は幻想なしに是非を議論できるようになったと 言えよう。 この改革案をみて「よーし頑張ろう」という人も少しは居るだろう。どういう 時代にもそういう人達が有能な人の中にはいるものだ。しかし、この案を見て 危惧の念を抱く人がほとんど居ないとすれば日本は危険な状況にあると言える だろう。この案には個々の人間の成長を第一に考える視座が完全に欠如してい るのである。学問そのものを愛し続けておられる白川博士が2月15日の第2 回総合科学技術会議で、わずかに許された発言時間に「やはり貢献するだけじゃ なくて信頼される国になってほしい」[57-10]と述べられたことは日本社会に とって大きな福音というべきではないか。現首相も、前首相と同様に、白川博 士の発言には耳を傾けようとはしないのだろうか。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-0] 今週号の紹介 [57-1] 文部科学省 大学構造改革案(2001.6.11) [57-1-1] ◆経済財政諮問会議議事要録より遠山文部科学大臣 [57-1-2] 経済財政諮問会議提出資料(No56 号外で配信済み) [57-1-3] 平成13年6月12日 文部科学大臣会見の概要 [57-1-4] ◆発行者からの呼びかけ 2001.6.16 [57-1-5] 国立大学長への要望書 2001.6.13 [57-2] 国立大学長会議(2001.6.14) [57-2-1] 東京新聞より:高等教育局長「脅しをさせていただく」 [57-2-2] ◆豊島耕一「解任に値する暴言」2001.6.14 [57-3] 第108回国大協総会(2001.6.12-13)の諸問題 [57-3-1] 報道例 [57-3-1-1] 6/13 asahi.com 国立大学協会、法人化容認へ 具体案を総会で了承 [57-3-1-2] 6/13NHK:国立大統廃合方針 国大協総会で反対意見相次ぐ [57-3-2] ◆発行者「13日長尾会長記者会見内容の吟味作業が必要」 [57-3-3] ◆参加者からの情報 [57-3-3-1] 報告1 [57-3-3-2] 報告2 [57-3-4] 国立大学独法化阻止ネット「国大協総会「決定」の放置は許されない」 [57-3-5] 国立大学協会第108回定期総会への要請行動関係 [57-3-5-1] 東京学芸大学教員100名の要望書(2001.6.8) [57-3-5-2] 千葉大学文学部教員有志意見表明(2001.6.11) [57-4] ◆国大協第8常置委員会「日本の将来と国立大学の役割」2001年5月 [57-5] 国大協への署名 終了の報告 [57-6] 情報 [57-6-1] 独立行政法人制度の公的な英文説明 [57-6-2] 他の英文資料リスト [57-7] ◆不可解な報道 [57-7-1] 6/15 共同通信:6兆4900億円の負債 国立学校特別会計の財務 [57-7-2] 6/16 発行者:共同通信速報「負債6兆円」報道の真意 [57-7-3] 高等教育フォーラムの記事 [57-7-3-1] 「破たん寸前、日本の国立学校:ツケはまた国民が払う?」2001.6.15 [57-7-3-2] 「国立大学が何に対して破綻しているのでしょうか?」2001.6.15 [57-8] ◆JMM [Japan Mail Media] の紹介:「守旧派」に対抗する方法について [57-9] 発行者関係 [57-9-1] 「このページについて」更新 [57-9-2] 「初めての方へ」更新 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-1] 文部科学省 大学構造改革案(2001.6.11)の諸問題 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/616-mext-mondai.html ---------------------------------------------------------------------- [57-1-1] 経済財政諮問会議議事要録より遠山文部科学大臣 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/611-mext-2.html 開催日時:2001 年6 月11 日(月)17:35 〜19:15 1 .開催日時:2001 年6 月11 日(月)17:35 〜19:15 2 .場所:官邸大食堂 3 .出席議員 議長 小泉 純一郎 内閣総理大臣 議員 福田 康夫 内閣官房長官 同 竹中 平蔵 経済財政政策担当大臣 同 片山 虎之助 総務大臣 同 塩川 正十郎 財務大臣 同 平沼 赳夫 経済産業大臣 同 速水 優 日本銀行総裁 同 牛尾 治朗 ウシオ電機(株)代表取締役会長 同 奥田 碩 トヨタ自動車(株)取締役会長 同 本間 正明 大阪大学大学院経済学研究科教授 同 吉川 洋 東京大学大学院経済学研究科教授 臨時議員 柳澤 伯夫 金融担当大臣 同 遠山 敦子 文部科学大臣 (議事次第) 1 .開会 2 .議事 (1)基本方針の分野別テーマ(大学の構造改革、不良債権処理関連)について (2)「基本方針」(素案)について (3)その他 3 .閉会 (配布資料) 資料1 第9 回経済財政諮問会議議事要旨 資料2 今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(素案) 資料3 塩川議員提出資料 資料4 遠山臨時議員提出資料 資料5 柳澤臨時議員提出資料(非公表) ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ○基本方針の分野別テーマ(大学の構造改革、不良債権処理関連)について ・・・ (遠山臨時議員) (資料4 に沿って説明)この会議が、人材育成と科学技術 振興への投資を重視している点を高く評価。経済再生を始め、我が国の発展に 結び付きつくよう、投資対象となるべき大学は創造的人材育成と、研究開発の 役割をしっかり果たすべき。 本日は、大学の構造改革の方針について説明する。大学の構造改革は、活力に 富み、国際競争力のある国公私立大学づくりの一環として行う必要がある。第 1 に、国立大学活性化と基盤強化のため、再編・統合を大胆にやる。来年度を 国立大学にとって歴史の転換点とし、個性と実力を持つ大学に集約したい。第 2 に、国立大学は、独立行政法人そのものとは違う民間的な経営手法を取り入 れた新しい法人にする。ポイントは機動性、戦略性、能力主義。また、今の公 務員とは違う民間的経営形態を考えている。 独立行政法人よりも、大学の社会的任務と合致したよいものにしたい。第3に、 徹底した第三者評価で競争させ、メリハリを付け、よい大学は国公私を問わず、 世界のトップクラスに育てたい。 2 枚目の資料は、日本経済の活性化の観点から、大学をどう変え、社会的貢献 を効果あるものにするかという観点からまとめたもの。「大学発の新産業創出 の加速」のほか、人材大国の創造、都市再生なども視野に入れて取り組みたい。 全体を一言で言えば、要は世界で勝てる大学というのをつくっていくというこ と。様々な抵抗が予想されるが、これらを確かな目標とし、しっかり実現に取 り組みたい。その意味でも、骨太の方針に、この内容を反映して頂きたい。 (牛尾議員) 方向としては大変すばらしい案であるが、問題はこれをどうい う時間軸でやるかということ。かなり早いスピードを要求されている。 (遠山臨時議員) 現在、フルに議論をしながら進めている段階だが、できる だけこれを加速させたい。明確に何年とは言えないが、平成15 年には形を見 せたいと考えており、方向性について今年度内に明確にし、来年度は、一つで も二つでも国立大学の再編に取り組みたい。 (片山議員) 国立と私立との機能分担を考えているのか伺いたい。また、学 生の学力がないことも問題で、大学卒を企業・役所で再教育をやっている現状 だが、そういうことに対して何か対策が必要ではないか。 (遠山臨時議員) 国公私を通じてすぐれたものを伸ばしていく。また、学生 の資質の向上については、大学改革の一貫として、一番の重点に教育の充実を 取り上げ、より力強く進めていく。 (平沼議員) 「遠山プラン」の具体的な検討として、第1 に、社会ニーズへ の主体的、機動的な対応を可能とする組織編成の弾力化、学科等設置の自由化 などを具体的に謳うことが必要。第2 に、企業人の教員への登用推進や企業か ら大学への委託研究費を5 年で10 倍にするなど基本的な方向性は示されてい るが、実現に向けた具体的な方策は必ずしも明らかになっていない。今後早急 に、基準の見直しや明確化などを明らかにした上で、措置をすることが必要。 そのためには、産業サイドの協力が必要であり、当省としても最大限努力を共 にさせていただく。 (遠山臨時議員) 御指摘があったように、過程などを自由化するなどは進ん できているが、更に加速することが必要。企業との交流については、御協力を お願いしたい。 (塩川議員) 1 つは教育公務員法の改正。これを改正しないと、実際に国公 立の大学は動かないのではないか。2 つ目に、国公私立30 校に絞ると大学の 定員をどのように変化させるか。 (遠山臨時議員) 国立大学法人にした場合の職員の身分は、現在、鋭意検討 中である。必ずしも国家公務員型に集約するのではなく、より自由な発想で新 しい制度にしたいという意見もある。 また、国公私立30 校については、国交私の大学の分野別に30 くらいを世界の 一流の研究者たちが日本に来るような魅力的な大学にすることであり、他を切 り捨てるということではない。 ---------------------------------------------------------------------- [57-1-2] 経済財政諮問会議提出資料 http://www5.cao.go.jp/shimon/2001/0611/item4.pdf テキスト版 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/611-mext.html (No56 号外で配信済み) ---------------------------------------------------------------------- [57-1-3] 平成13年6月12日 文部科学大臣会見の概要 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/612-mext.html 平成13年6月12日 文部科学大臣会見の概要 より 記者)昨日、国立大学を中心とした構造改革の方針ですとか、大学を変えるこ とで日本の経済を変えていくプランがまとめられて、経済財政諮問会議に報告 されていますが、これから再編を大胆に進めるわけですが、どのように進めて いくのでしょうか。また、他省庁と調整しなければならないことがプランにあ ると思いますが、どのように進めていくつもりでしょうか。 大臣)昨日の経済財政諮問会議では、私どもが考える大学の構造改革の方針を 説明したところでありますが、要するに21世紀の日本を担っていく人材を作 り出すということで、人材大国または科学技術創造立国を目指して、日本の大 学を国際競争力を持つ世界最高水準の大学に育てていきたいということで、そ の考えのもとに、大学改革の一環として、大学がどうあってほしいかを説明し たわけであります。幸い、昨日の会議ではその案に対して、よくできていると いう好意的な評価を頂いたところでありますが、この問題は大学が本当にその 使命を果たしていくために、何が重要か、日本の国にとって大学がどういう役 割であるべきかということを考えた上で、策定した方針ないし目標であり、こ れを実現していくには、ある程度の痛みも伴うわけであります。大学のそれぞ れの考え方もありましょうけれども、方針を明確にして、いわゆる骨太の方針 にも反映して頂いて、日本の大学をより良くしていく。これは国立大学に限ら ず、国公私立を通じてその方向で取り組んで行かなければならないことを明ら かにしたわけであります。国立大学のあり方につきましては明後日の国立大学 長会議の席上で、私どもの考えを申し述べる機会がありますので、それに先立っ てこの場で申し上げることは適切でないので、その点については控えさせて頂 きますけれども、大きな構造改革の時期にどうあるべきかの方向性を出したと 考えています。既に平沼プランのようなかたちで、産官学共同について色々な 意見が出ていまして、日本の大学への期待も非常に大きいわけです。その中で、 関係各省と連携を取りながら、日本の大学が大学発の新産業創出の課題である とか、世界に通用するプロフェッショナルの育成等の問題にも積極的に応えて いく必要があるのではないかということで、大学を起点とする日本経済活性化 のための構造改革プランのひとつの案として、大学が変わる日本を変えるとい うことでご説明をしたわけです。これについても大変出席者から、いい反応が ありました。」 ---------------------------------------------------------------------- [57-1-4] 発行者からの呼びかけ 2001.6.16 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ 「大学という生き物を「育成する」のに不可欠な、教育・研究の生理に関する 活きた知識を持っている方が、高等教育・学術政策の策定者の中に本当におら れるのでしょうか?大学同士の存廃を賭けた競争を煽り立て大学間の協力関係 を切り刻むことで日本の教育・研究体制全体が向上する、という突拍子もない 発想は一体どこから来るのでしょうか。「世界で勝つ」などという多国籍企業 特有の恥ずべき野望を高等教育・学術研究に責任のある行政組織の長が当然の ように口にするまでに日本という国が落ちぶれてしまったのは一体なぜなので しょうか。それは、経済社会の単純明快な一元的価値が唯一の価値であるとい う錯覚に日本全体が陥いり「人はパンだけで生きるものではない」という精神 的存在としての人間の原点を見失っているからではないでしょうか。経済社会 に飲み込まれてしまった行政に、すべての国民のものである大学を奪われない ように、市井で生活をしている数千万人の一人ひとりが、健全な感性から発す る大学への思いを各人各様の仕方で発信することを呼びかけたいと思います。」 ---------------------------------------------------------------------- [57-1-5] 国立大学長への要望書 2001.6.13 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/613-tjst.html ---------------------------------------------------------------------- 2001年6月13日 全国立大学学長 殿 一国立大学教官としてお願いしたいことがあります。 一昨日、文部科学省はこれまでの曖昧な態度から一変し「日本経済の活性化の ために国立大学をスクラップ・アンド・ビルドで活性化」する方針を公的文書 で明確にしました。国公私立を問わず30大学(5%の大学)に重点投資し、 それ以外の95%の大学の行く末には国として関心を持たないことを広言した のです。憲法に明記されている学問の自由、それを支える大学の自治、そして それなしには存続すらできない学術文化有機体に対する、教育行政の無関心が これほど明確に証明されたことはこれまでなかったと思います。 国立大学は文部科学省の付属施設ですが、憲法と教育基本法が明記するように 精神的には行政に従属するわけではありません。本日の国立大学協会総会では、 皆さまが高等教育・学術研究に携わる人々の長として、このような大学政策し か示せない教育行政の不見識と職務放棄を叱責する決議をし、明日の全国立大 学長会議において文部科学省に伝えるようお願い致します。 未来世代に対する責任感を命綱として、大学を巻き込もうとしている怒濤の濁 流に耐えて大学を守ってください。国立大学が利益誘導の誘惑を退け「生き残 りを賭けて凌ぎを削る」衝動に耐え相互の信頼関係を保ことにより、精神的価 値観を基盤とする一角が社会に存在することを示し、経済的価値観が社会全域 を隈無く覆い尽くそうとしつつある日本の精神的暗闇の中に希望の灯を点して ください。 なお、国立大学独立行政法人化問題を考える前提は文部科学省により一方的に 覆されました。文部科学省の「骨太案」に対する全国立大学のノーの意思表示 として、調査検討会議離脱を決議し、国立大学自身が「骨太な」大学改革に取 り組む決心をすべき時が来たと思います。事態の急変に機動的に適切に対処し 国立大学協会の見識と意思を明確に示すことにより日本社会から受けている信 頼に応え、大学の自治の存在と意義とを示してください。 「骨太な」大学改革では設置形態問題のような問題に留まらず、初等中等教育 を根底から歪めている大学入試に伴う諸問題、高進学率に応じた大学進化の適 切な方向、学費高騰問題等々、一朝一夕では解決ができない問題の解決を意図 する「骨太案」を具体的に呈示することが日本社会から求められているのでは ないでしょうか。 どうかしっかりしてくださいますよう、お願い致します。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-2] 国立大学長会議(2001.6.14) #(国立大学長会議は文部科学省が招集するもので、国大協の年2回の総会の 翌日には必ず開催される。) ---------------------------------------------------------------------- [57-2-1] 東京新聞より:高等教育局長「脅しをさせていただく」 『東京新聞』6/14『一県一大学』見直しも 文科省が大幅削減示す http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/614-kdksoukai-news.html#tokyo615 「全都道府県に一つ以上国立大学がある現状について、文部科学省は十四日、 東京都内で開いた国立大学長会議で「一県一(国立)大学が未来永劫(えいごう) の原則であり続ける保証はない」として、将来、国立大学がない県が出てもや むを得ないとする考えを明らかにした。遠山敦子文科相は、同省の主導で国立 大学の大幅削減を進める方針を示した。 席上、工藤智規高等教育局長は「まったく白地で日本列島に国立大学をつくっ たら、今のままの配置になるだろうか」と国立大学を大幅削減する必要性を強 調。「一県一大学という金科玉条にこだわるとおかしくなる。必ずしも安泰で ないという脅しをさせていただく」と述べ、厳しい姿勢で"合併"を迫った。 遠山文科相は「各大学の運営基盤を強化するためには、大学間の再編・統合 を進めることが不可欠」と説明し、同省主導で削減計画を作る意向を明言した。 会議では同省の強硬姿勢に、地方大学を中心に反発の声が続出。二神光次宮 崎大学長は「高圧的でびっくりした。大幅削減だけでなくて、つぶすのも避け られないという感じだ」と話した。林勇二郎金沢大学長は「日本で地方を発展 させてきたのは国立大学。そうした構造を変えるのが、本当に活性化につなが るのか」と、疑問を示した。 一方、中嶋嶺雄東京外国語大学長は「個人的には極めて革命的な転換だと評 価したい」と、前向きに評価していた。」 #先日の東外大学長選で中嶋嶺雄氏は落選。 ---------------------------------------------------------------------- [57-2-2] 豊島耕一「解任に値する暴言」2001.6.14 [he-forum 2128] http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/614-toyoshima.html 「佐賀大学の豊島です. 東京新聞06/14 には唖然とさせられる. まず,このような恐るべき違法な脅迫発言を,何の批判的コメントもなしに垂 れ流すという新聞の態度である.おそらく違法性に気付いていないのであろう. この新聞の大学関係の記事をネットで見る限り,ほぼ発表ジャーナリズム,つ まり大本営発表の伝達機関に過ぎないように思える.二つ目には,目の前でこ のようなとんでもない発言を許してしまうという国立大学の学長たちの烏合の 衆ぶりである.だれ一人として怒らなかったのだろうか.あるいは「お家のた め」を考えて「自粛」したのだろうか.小泉首相の言うところの「骨太さ」を 少しぐらい勉強したらどうか. このような発言が,少なくとも新聞に批判的扱いもされずにそのまま出てしま うという背景には,やはり文部科学省と国立大学との法的な関係についての根 本的な誤解がある.今もあるのかどうか知らないが,少なくとも10年ほど前は 「文部省職員録」というのがあって,冒頭に文部省の職員名が,それに続いて 国立大学の教職員の名前が続いている.あたかも国立大学は文部省の下部機関 のようであり,これを文字どおり受け取る考えを私は「職員録イデオロギー」 を名付けている.しかし両者ともそれぞれの設置法に根拠を持っており,「国 会の前に平等」というのが実際の法制度なのだが,なぜかこれが忘れられてい る. この工藤発言は,国会は自分たちの思うとおりに動くという,恐るべき思い上 がりに基づくものでもあり,その意味でも重大な違法性がある.これだけで十 分解任に値する暴言であろう. この発言を聞いて「それでは自分の大学は頑張らなくては」などと思った情け ない学長も,ひょっとして数人はいるかも知れない.「これに抗議でもすれば, 役人ににらまれてわりを食う」と.しかし保守にせよ革新にせよ,役所への従 順さで大学の存廃を判断するような国会議員が多数であるはずはない.個々の 国立大学の存廃は,国民の総意によって国会で決められる.みずからの信じる ところにしたがって大学運営を行ったにもかかわらず,もし国民が廃止を選択 すればそれを受け容れるというのがこの国の法制度である. このような文部科学省官僚の思い上がった発言には,次のように忠告するのが いいだろう.「あまり法をわきまえない態度をとり続けると,場合によっては 見限らざるを得ない.文部科学省廃止の法律を議員に提言する局面もあるかも 知れない」と. ニューズウィークの最新号の,大阪の小学校での凶行を扱った記事に,怒りの 抑圧が犯罪につながると書いてあった.我々も必要なときには正直に怒りを表 明しなければならない.それがカタストロフィーを防ぐ良い方法である. なお文部省と国立大学の関係については,拙稿「文部省の違法行為・従順な大 学」をご覧いただきたい: http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/obedient-universities.htm 」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-3] 第108回国大協総会(2001.6.12-13)の諸問題 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/613-kdksoukai-mondai.html ---------------------------------------------------------------------- [57-3-1] 報道例 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/614-kdksoukai-news.html ---------------------------------------------------------------------- [57-3-1-1] 6/13 asahi.com 国立大学協会、法人化容認へ 具体案を総会で了承 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/614-kdksoukai-news.html 国立大学協会(会長・長尾真京都大学長)は13日の総会で、国立大の法人 化への具体案をほぼ了承した。法人化の枠組みは、独立行政法人通則法とは別 に国立大学法人法で定めることなどを条件に、大枠で一致した。この案を文部 科学省の法人化案に反映させるよう求めた。一方、同省は再編で大学数削減の 方針まで示しており、具体論ではさらに論議が続きそうだ。 総会は、横並びの「護送船団方式」を脱して国立大の個性化、自律を高める という意味で、法人化を受け入れる方向で一致。一部の項目に異論は残ってい るものの、特別委員会で1年間検討した具体的枠組み案をおおむね了承したと いう。 枠組み案は、学長は学内の評議会での選考を基本とし、大学の教育や研究の 中期目標・計画は大学側が決める形をとるなど、一般の行政機関の効率化を目 指した通則法より、大学の自律性を重視した内容。また教員の任期制や業績給、 兼業規制の緩和などを盛り込んだ。焦点だった職員の身分については「国家公 務員型を基本に、非公務員型の可能性も含め、最終的な結論を目指す」とした。 文科省は調査検討会議を設けて、法人化の制度を検討しており、今夏にも中 間報告をまとめる方針。総会後に記者会見した長尾会長は国大協案を「文部科 学省に参考にしていただく必要がある」とした。 一方、同省が11日の経済財政諮問会議に示した「大学の構造改革の方針」 は「国立大学数の大幅削減」「地方移管なども検討」なども含み、総会では 「地方大の切り捨てにならないか心配だ」といった声が相次いだ。長尾会長は 「教育研究は国の将来を担う。危うくすることがないよう慎重な議論を求めた い」と述べた。(21:08) ---------------------------------------------------------------------- [57-3-1-2] 6/13NHK:国立大統廃合方針 国大協総会で反対意見相次ぐ http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/614-kdksoukai-news.html#nhk [2001-06-13-19:04] 文部科学省が国立大学の活性化のため統廃合をすすめる方針を打ち出したこ とについて、きょう東京で開かれた国大協=国立大学協会の総会で地方の大学 の学長を中心に「切り捨てにつながる」などの反対意見が相次ぎました。 国大協の総会は二日目のきょう、国立大学の統廃合の問題が取り上げられ、 文部科学省の担当者が、医科系や教員養成系などの単科大学の統廃合を進めて 国立大学の数を大幅に減らすことや、国公立と私立のすべての大学の研究や教 育の成果を評価して上位三十校に予算を重点的に配分していくことなど、政府 の経済財政諮問会議に報告した今後の大学活性化の方針を説明しました。 これに対し、一部の大学の学長からは「研究基盤を強化するために統廃合は やむをえない」という意見が出されましたが、主に地方の大学の学長から「地 域の人材を育成するために国立大学の数を削減すべきでない」という意見や、 「成果が直ぐには出ない基礎的な研究分野が切り捨てられる」という意見など 統廃合に反対する意見が相次ぎました。 総会のあと記者会見した国大協の長尾眞(ナガオマコト)会長は「それぞれ の大学が考えるべき問題だ」と述べて、この問題の対応は各大学にゆだねる考 えを示しました。 (注 長尾眞の字は「眞」の上部の「ヒ」が「十」の字) ---------------------------------------------------------------------- [57-3-2] 発行者「13日長尾会長記者会見内容の吟味作業が必要」 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/613-kdk-houdou.html 「各位 13日4時から開かれた総会終了直後の記者会見の内容については色々な話 が伝わっています。設置形態検討特別委員会案のことは影が薄れ、文部科学省 の11日の大 学構造改革の方針に関連する質疑が多かったようですが、「国 立大学協会は法人化案を了承したが、文部科学省の11日の大学構造改革案につ いては懸念の意見が多かった」とマスコミは要約することが予想されます。 しかし、委員会の法人化案が報告され了承された、という話と、学科の再編 成・給与体系の見直しについては委員会案が了承されたという話しとが伝わっ ています。また、6月1日の理事会では、総会で法人化案は報告だけして了承 すべきかどうかについては議論しない、という合意があった、ということから しても「国立大学協会は法人化案を了承した」という会長発言があったとすれ ば、腑に落ちません。 また、昨日「国立大学協会は12日、定期総会を開き、法人化についての基 本的な考え方と具体的な枠組みを定めた特別委員会の報告案を大筋で了承した。」 という報道がありましたが、記者の質問に対し長尾会長が「了承したようなも のだ」と答えただけのようです。 文部科学省の骨太案については、ある総会出席者によれば、懸念の意見が多 かったそうですが、議論の集約については長尾会長に一任したとのことです。 各大学で学長に即刻報告を求め公開し、会長の記者会見内容が総会の議論を 適切に集約したものであったかどうかを吟味する作業を呼びかけたいと思いま す。何も決まらなかった総会であることが確認された場合には、法人化案が了 承されたという報道があれば、国立大学協会に抗議することを求めていかなけ ればならないと思います。」 ---------------------------------------------------------------------- [57-3-3] 参加者からの情報 ---------------------------------------------------------------------- [57-3-3-1] 報告1 「総会では、長尾委員会中間報告をいわば「受理した」、「受け取った」にす ぎないのであって、新聞報道で「承認したというのをみて驚いた」 学長会議の遠山大臣の言い訳は「これ以上本省や国大協に経済財政運営諮問 会議側から攻め込まれると困るので、せめて文部科学省側からの「大学の自主 自立を守るための対応だった」」 ---------------------------------------------------------------------- [57-3-3-2] 報告2 「国立大学協会総会では法人化案は報告されただけで了承はされていない。設 置形態検討特別委員会は国立大学協会の中で大きな存在だから、それがまとめ た法人化案が報告されたことには大きな意味があると考える。そのことを踏ま えて「了承した」と報道することは新聞社の判断であると思う。」 ---------------------------------------------------------------------- [57-3-4] 国立大学独法化阻止ネット「国大協総会「決定」の放置は許されない」 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/ksokai612.html 国大協総会「決定」の放置は許されない 6月12日と13日に開かれた国立大学総会では,国大協の「設置形態検討特 別委員会」による国立大学の法人化案が審議された.報道によると,「おおむ ね了承したという」とあいまいな表現ながらこれを「了承」したもようである (1).もしこれが事実であれば重大である.それは,これまで反対するとして きた「通則法」と変わらない案を国大協みずからが提案することになるからで あり,自分自身が大学の破壊者になることを宣言することになるからである. しかも,多くの大学関係者が文書で示した疑問や意見(2)を全く検討すること なく無視して行われたという点でも容認し難い. この決定は,国立大学教職員の傍聴要求を全く受け容れず(3),2日目に至っ ては,本会世話人を含む4名の国立大学教員の建物への立ち入りさえも,内外 に配置した警察官によって阻止し,会長だけでなくすべての総会参加者との接 触をも許さないという,異常な厳戒態勢の中で行われた.このような国大協の 態度は,いわゆる「透明性・公開性」に背を向けた不透明で密室的な総会運営 と言わなければならない. この法人化案に対して「これでは通則法そのままの適用と言わざるを得ない」 と批判し,長尾委員長に再検討を要求した九州地区の学長の方々が,総会でど のような態度を取ったのかという疑問が残る.「おおむね了承」に同調するこ とは論理的にあり得ないからである.多数決で破れたのであろうか.九州地区 の学長の方々はその経緯を詳細に明らかにする責任があろう.傍聴を認めなかっ たのであるからなおさらである. 九州地区の学長に限らず,すべての学長にこの「決定」に対する責任が生じる. 責任の重さは同じであろうが,この問題の認識の度合いに応じて,それぞれの メンバーが負う責任には「個性」があり,一様なものではない.きちんと反対 の意思を表明し,「了承」に対して少なくとも抵抗したかどうかが問われる. 「仮に反対しても無理」というのは理由にならないし,「自分の大学の立場」 も責めを免れさせるものではない.なぜならこの問題は「学問の自由」そのも のに対する学者としての忠誠が,そして教育に携わる者としての教育基本法, 憲法への忠誠が問われているからである.この「決定」とその報道とを放置し 続けるとすればさらに罪が重なり,学者としての良心の痛みを持ち続けたまま 生活しなければならない. 国大協総会のこのような態様の背景には,この問題に対する国立大学教職員の 全般的に不適切な態度がある.国会に法案さえ出されていないのに「もう決まっ たこと」といったあきらめ,問題の重大さに比べての関心の低さがそれである. 良心の痛みはこの問題に全く無知な人,あるいはこれを妥当なことと信じる人 を除いてすべての当事者で共有される.それを取り除く唯一の方法はこれから の活動である.私たち阻止ネットも連帯を国内外に広げ,広報活動,署名活動 など運動を加速させていきたい. 一方,今やキャッチフレーズを並べることが最大の仕事になったかに見える文 部科学省は,「構造改革プラン」なるパンフレットで「民営化」を含む大学間 競争路線を打ち出した.これに対して「もはや独法化などを議論している場合 ではない」などと,一種の「ショック症状」を示す人も見られるが,しかし独 法化が撤回されたわけではないということを忘れてはいけない.むしろこれは 独法化の本質を解説・明示したものと言うべきであろう.すなわち文部科学省 の新政策への批判・対抗活動と同時に,これが独法化問題での思考停止を生じ させないための注意が必要である.また,この新政策は「国公私立を問わず」 すべての大学に”政府主催の大学レース”への参加を強制するので,「国公私 立を問わず」すべての大学人が連帯する基盤も生まれたと言える. 最後にメディアの報道姿勢の問題を指摘したい.まず,今回の総会に関する報 道では,相対的に権威・権力を持つ側の発表のみを伝え,これに対する批判や 反対運動についてはほとんど報道しないという,非常に偏った態度が見られた. これではメディアの本来の機能を果たしているとは言えず,権威筋の「広報担 当」,大本営発表の伝達機関になってしまう.また用語の問題でも,大学に関 する報道で「横並びの護送船団方式」という表現(4)がされているが,これは 教育と企業・経済活動とを区別しない,およそ無神経な言葉遣いである.いず れの問題でも今後メディアに携わる方々の見識に期待したい. 2001年6月15日 (注) 1)報道によると「法人化への具体案をほぼ了承した」,「一部の項目に異論 は残っているものの、特別委員会で1年間検討した具体的枠組み案をおおむね 了承したという。」(朝日新聞,6月14日)とあり,あいまいな表現ながら 「了承」したとされる. 2)阻止ネットは1633筆の独法化反対の署名を会議直前に提出,また国立大学 教職員有志92名の共同質問書を事前に提出していた.また千葉大学理学部長の 意見書など,この他にも教職員,学生から多くの文書が提出されている. 3)長尾会長からの回答によると,傍聴拒否の理由は,(1)会則にない,(2) 学長が報告することになっている,というものである.前者は傍聴を禁止もし ていないということであり,また後者は全く理由になっていない.あらためて 冒頭で総会に諮るようファクスで長尾会長に求めたが,長尾氏はこれを無視し た.当日,会議室入り口でも直接本人に願い出たが拒否された. 4)前出の朝日新聞の同じ記事に「横並びの護送船団方式を脱して」という表 現が見られるが,「護送船団」という表現は,本来市場に任せる範囲とされる 経済活動にまで政府が過度に介入する官業癒着というべき状態があり,これを 批判する言葉として,石油業界や銀行業に対して用いられたものである.これ を教育の分野で使うということがどのような意味を持つかを理解しているのか 疑問である.つまりこの言葉の使用は,「教育も市場にまかせるのが当然」と いうメッセージを暗黙に挿入することになるのである. ---------------------------------------------------------------------- [57-3-5] 国立大学協会第108回定期総会への要請行動関係 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/612-kdk-youbou.html ---------------------------------------------------------------------- [57-3-5-1] 東京学芸大学教員100名の要望書(2001.6.8) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2092bak.html ---------------------------------------------------------------------- [57-3-5-2] 千葉大学文学部教員有志意見表明(2001.6.11) http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2110.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-4] 国大協第8常置委員会「日本の将来と国立大学の役割」2001年5月 「グローバル化の中で、日本社会が思い切った構造改革に取り組まなければな らないことはいうまでもない。しかしそれが、平衡感覚を欠いたまま、断片的 な印象にもとづく性急な制度変更に結びつくのであれば、国立大学が多額の資 金を受け入れつつ営々として作り上げてきた、日本の社会と経済を支える知的 基盤の喪失をもたらす危険性が大きい。」(8頁) 目次 はじめに 新しい知識社会と大学 1 知識・技術の創造拠点として ○日本の国立大学は、世界のトップレベルの大学に伍している ○日本の大学の国際的影響力は上がりつつある ○日本の上位11大学まではすべて国立大学 ○企業とのリンクも太くなっている 2 中核人材の養成拠点として ○高度職業人の養成 ○学部教育と大学院の太い連携 ○学術的なリーダーを作ってきた国立大学 ○国際社会への協力――大学院留学生の7〜9割は国立大学に在籍 3 教育機会の均等を保証するものとして ○低所得家庭出身の学生は国立大学に在籍している ○適正に則した教育機会 ○大学院への進学機会の保証 ○進学機会の地域格差を埋めているのは国立大学 知的基盤としての国立大学――その飛躍のために ○政府の高等教育支出は国際水準以下 ○国立大学の柔軟化は進んでいる ○知的基盤としての国立大学――その飛躍のために ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-5] 国大協への署名 終了の報告 http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/nethe2152.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-6] 情報 ---------------------------------------------------------------------- [57-6-1] 独立行政法人制度の公的な英文説明 http://www.kantei.go.jp/foreign/central_government/03_more.html ♯(独立行政法人は "Independent Administrative Institutions" IAI と訳語 を決めたらしい。以前はCorporation を使っていた) ---------------------------------------------------------------------- [57-6-2] 他の英文資料リスト http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/e-index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-7] 不可解な報道 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/616-kyodo-kaikei.html ---------------------------------------------------------------------- [57-7-1] 6/15 共同通信:6兆4900億円の負債 国立学校特別会計の財務 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/616-kyodo-kaikei.html#kyoudo 共同通信ニュース速報2001年6月15日 6兆4900億円の負債 国立学校特別会計の財務 文部科学省が予算を管理している国立大学などの国立学校特別会計が、二○ ○○年度までの累計で約六兆四千九百八十億円の負債を計上していることが、 自民党のガイドラインに沿って同省が十四日までに作成した財務諸表で明らか になった。 小泉純一郎首相が「聖域なき構造改革」を目指している中で、国立学校特別 会計を維持するための国庫負担が国民に重くのしかかる結果となっており、今 後も教育分野に必要な投資として容認していくのかどうか、政府、与党内で議 論となりそうだ。 文部科学省は国立学校特別会計の財務状況を背景に、国立大学の独立行政法 人化や大学数の削減を検討しているが、自民党内では「民営化する方が、自由 な教育、研究活動ができるのでは」(幹部)との声も出ている。 公会計貸借対照表などの財務諸表によると、一般会計からの繰入金は二○○ ○年度までの累計で約四兆五千五百九十億円、政府からの借入金は累計で約一 兆三百七十億円に達している。 同特別会計は一九九八年度に約百七十億円の剰余金があったが、九九年度に は約二千九百六十億円の欠損金が生じ、二○○○年度には約八千三百十億円に 膨らんでいる。国立大学などの敷地や建物、機械器具などの固定資産などは約 八兆六千二百八十億円。 国立学校や付属病院、研究所などの事業収支は二○○○年度で約一兆九千七 百億円の赤字となっているが、一般会計から約一兆四千八百七十億円を繰り入 れ、最終的な赤字を約四千八百三十億円にとどめている。 自民党行革推進本部が作成したガイドラインは、減価償却を実施し、退職金 引当金を計上するなど、民間に準じた会計基準となっている。」 ---------------------------------------------------------------------- [57-7-2] 6/16 発行者:共同通信速報「負債6兆円」報道の真意 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/01/616-kyodo-kaikei.html 「各位 昨日の共同通信の報道「6兆4900億円の負債 国立学校特別会計の財務」 (添 付)、は以下に述べますように簿記用語に関する誤解に基づくもので、 意図の有無とは別に、国立学校特別会計に関する誤った観念を広めかねません。 この報道の背景や意図などに十分注意されると共に、国立学校特別会計*1につ いての正確な知識を持って下さいますようお願い致します。 北大では法人化問題検討WGが独立行政法人化問題を検討しております。5月 初め頃に公表した資料の中に以下の表があります。 --------------------------------------- 国立学校特別会計独法的会計処理結果 貸借対照表(平成12年度) #単位は百万円 資産 8,628,832 負債・資本 8,628,832 負債 6,498,707 借入金 1,037,210 建設公債 4,559,352 引当金 814,316 資本 2,130,125 期本金 312,539 調整差額 2,648,962 剰余・欠損 -831,376 (註)負債・資本の内書きは主要項目のみ --------------------------------------- これは国立大学協会第8回設置形態検討特別委員会専門委員会D(財務会計)議 事概要(2001.2.22) http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/agency/j130319-22.pdf の中にある宮脇委員(北大)が説明の時に使った資料 2 .国立学校特別会計独法的会計処理結果について (1)貸借対照表(平成12 年度) (2)コスト負担計算書(平成12 年度) の一部と推測されます。 共同通信ニュース速報の記事[57-7-1]は数字が上の表と完全に一致しており、 この資料に基づいているものと推測されます。 独立行政法人会計原則では「負債」には債務以外に予算(運営交付金)が計上 されま す。事業(国立大学法人では教育・研究という事業)の進行と共に 「負債が収益に転 換」される(その方式は今なお未定)わけですが、上の資 料ではその操作が行われて いないために負債6兆円という数字が残っています。 しかし、これは高等教育予算そ のものであり、それを建設公債で調達したの は政府側の問題であり、4兆5千億は国立学校特別会計の債務ではありません。 高等教育予算を「負債」と呼び、負債=債務という誤解を利用して高等教育が 予算を 無駄にしているかのような印象を与えようとしている、と言われても 仕方のない記事 だと思います。国立大学削減の準備として、文部科学省が意 図的に行っている世論誘 導であるという推測すら成り立ちます。そうでない とすれば、文部科学省は、記事が国立学校特別会計に関する誤解を誘発するこ とを防ぐために、正確な解説を自ら行う義務があると思います。また、199 3年以降、国立大学特別会計の内容を公表していない理由を明確にすべきであ ると思います。 ---------------------------------------------------------------------- [57-7-3] 高等教育フォーラムの記事 ---------------------------------------------------------------------- [57-7-3-1] 「破たん寸前、日本の国立学校:ツケはまた国民が払う?」2001.6.15 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/3099.html ---------------------------------------------------------------------- [57-7-3-2] 「国立大学が何に対して破綻しているのでしょうか?」2001.6.15 http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/forum/message/3100.html 「授業料収入で学校を運営できている高等教育機関は多分世界でも稀でしょう。 では、 何に対する破綻でしょうか?予算に対して超過すると云うことでした ら、予算そのも のが絶対的に不足している(危険校舎の修理もままならない) のですから、予算のき め方が意図的に破綻するように決められているだけで はないですか?それとも、必要 経費は充分計上されていてそれでも赤字とい うことですか?それは、絶対にありえま せん。1960年代から70年代に建てら れた手抜き工事(?)の校舎が全国に存在して、 メインテナンスすら行われ ずに放置されているのが現状です。 これを破綻というのならば、政府の高等教育政策そのものの破綻に過ぎません。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-8] ◆JMM [Japan Mail Media] No.118 「守旧派」に対抗する方法について http://jmm.cogen.co.jp/ v#(作家村上龍氏が編集発行するメールマガジンJMM は9万3千部が発行され ており、毎週3回配信される。月曜配信は『村上龍、金融経済の専門家たちに 聞く』シリーズで、最近は日本の構造改革をサポートする姿勢を鮮明に出して いる点がさわやかで良い。6/4の質問は 「『経済財政諮問会議が提言する構造改革で得をするのは誰だ? 都市部の金 持ちだけではないか。失業者や、零細企業はこの先どうすればいいのか。それ に地方に住む貧乏人へのサービスは悪化するだけだ。構造改革は弱者切り捨て ではないのか』 守旧派の反撃が目に見えるようですが、構造改革推進派は、どのような論理 で立ち向かえばいいのでしょうか?」 というもので、これに対し、6/11号では次の回答者が発言をしている。 □真壁昭夫 :エコノミスト □三ツ谷誠 :東京三菱証券 IR室・室長 □山崎元 :三和総合研究所 金融本部主任研究員 兼 企業年金研究所顧問 □土居丈朗 :慶應義塾大学 経済学部 専任講師 □岡本慎一 :生命保険会社勤務 □林康史 :大和投資信託 主席研究員/一橋大学大学院 非常勤講師 □津田栄 :エクゼトラスト投資顧問株式会社 顧問 □杉岡秋美 :生命保険会社勤務 □近藤剛 :弁護士 6/11号の序文は 「「つまり、構造改革は、その具体的な中身について、ネガティブな側面をア ナウンスするほうが、ポジティブな面をアナウンスするよりはるかに簡単だと いうことです。構造改革さえ行えば景気が回復する、わけではないので、利益 を得る層を特定するのは案外困難です。逆に、損をする人を特定するのはとて も簡単なので、守旧派はそこを攻めてくるでしょう。」 というわけだが、国立大学潰しに反対する「守旧派」の当弱小無名メールマガ ジンにとっては、内容ではなく著名度や動員数や文章力で圧倒的に不利だが、 「経済」的視座しか持たない単眼的陣営には構造的欠陥があり、本当の意味で は怖るるに足らない。 なお、能天気な体制派の意見も少なくないが、中には質の高い守旧派の意見も 掲載する点は立派である。特に、今週号No 119 6/18 Monday Edition の「読 者からの回答」における米国経済大学院博士課程留学生の発言は読みごたえが あった。 ーー構造改革の効果は「豊かな層がより豊かに」となることは80年代以降 のアメリカで見られた。「効率だけでなく、平等・公正の実現が必要」であり、 「豊かな階層が仲間うちだけの特権により情報を独占し富を拡大」することを 防がなければ、「構造改革は多くの人たちに失望をもたらし、社会の不安定化 の要因となるでしょう。」ーー と予言している。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-9] 発行者関係 ---------------------------------------------------------------------- [57-9-1] 「このページについて」更新 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/about.html ---------------------------------------------------------------------- [57-9-2] 「初めての方へ」更新 http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/intro.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [57-10] 総合科学技術会議での白川博士の発言 第2回総合科学技術会議2001.2.15議事録より抜粋 http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu03/siryo6.pdf 【吉川議員】・・・・そういう中で、総合科学技術会議というのは非常に重要 な役割をしているわけで、総合科学技術会議は今の観点から言えば、それは政 策決定者に対する最終的な予算を含んだ提案者として、責任を持つ内容をまと めるということだと思うんです。しかし、その提案の基になる原案をつくる人、 これが非常に問題で、私はこの原案作成者というのは、科学者である場合もあ りますし、そうではなくて政府機関である場合もあるし、また民間人である場 合もある。あるいは、一般国民全体であると。そういったところからさまざま な科学に対する期待感とか提案があって、それはいろんな形でこの総合科学技 術会議が集約しなければいけない。吸収していくということが必要だと思うん です。そのメカニズムが現在必ずしも十分できていないというのが、私の心配 なところで、さまざまな懇談会、先ほど井村先生からお話がありましたような、 ポスト・ゲノムなどもいずれも懇談会というものをつくって、それを上げてく るわけですが、うまくいっている例でございますけれども、なかなかそれが全 般的な一つのスタイルとしてまだ定着していないと、その辺を総合科学技術会 議としても十分考える必要があるというふうに思っております。 【石井議員】・・・・ところが、我が国の場合にはそう簡単ではないわけであ りまして、一体世界にとって、国際社会にとって日本は何なのだということが 不明確なまま、我々が科学技術を振興するということになりますと、一体これ はどういうことなんだろうかと。これがやはり国際的には理解されにくいよう に思うわけであります。ここで、やはり日本が果たすべき役割があるのかなと。 つまり、最も我々は古くから文化の違い、西洋文化と我々の文化との違いを実 感し苦闘してきた経験を持っているわけであります。こういう意味で、わが国 は文化の多様性の守護者として国際的な貢献ができるのではないんだろうかと いうふうに思っております。 【白川議員】石井議員の発言に関連するんですけれども、この3つの目指すべ き国の姿ということの統合としては、やはり貢献するだけじゃなくて信頼され る国になってほしいと思うんです。これまで、科学技術でどの程度国際的な貢 献があったかどうかはわかりませんけれども、経済的には相当の貢献をしてい るはずなんです。ところが、本当に信頼されているかということになると、少 し首をかしげざるを得ないという面もあるということで、それをどうするかと いうことはこれから議論をするということですけれども、何とか総合戦略に理 念の一つとして、既に十分な議論が重ねられてこの3つが出てきたんですけれ ども、世界から信頼される国という文言を加えて、一つの柱にしていったらど うかという提案をいたしたいと思っております。」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立 つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)を 紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者からの情報等に拠る。 メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は目次番号が記事 にリンクされている。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ ---------------------------------------------------------------------- 発行部数 2092 (2001.6.18現在) 1360 Mag2:812|CocodeMail:357|Pubzine:81|Macky!:54|emaga:30|melma:26 732 直送(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・議員等) b---------------------------------------------------------------------- Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 57