http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/wr-73.html 総目次:http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/wr/all.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 目次 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [73-0] 内容紹介 [73-0-1] 日本の大学政策に不安を感じはじめた日本社会 [73-0-2] 大学「幹部」に広がる奇妙な「法人化後の精神主義」 [73-0-3] 学長アンケートにみる遠山プランの「効果」 [73-0-4] ◆10/29 臨時国立大学協会総会・・・「引き返す誠意を」 [73-0-5] 文部科学省曰:97年見解と中間報告は整合的 [73-0-6] ◆北大ネット声明:国への規制を緩和する国立大学法人化 [73-0-7] 若手に酷い学術政策 [73-0-8] 小学校の36万人の先生の中で23才は0.2% [73-0-9] 産官が支配する総合科学技術会議が支配する学術社会 [73-0-10] ◆プロクルステスの寝台「国の研究開発評価に関する大綱的指針」 [73-0-11] GPA(Grade Point Average) 評価法の報道の問題性------------------------------ [73-1] 「大学が危ない!国立大学の独法化に反対する10.29緊急集会」 [73-2] 独立行政法人化関係の意見 [73-2-1] ◆独立行政法人化阻止全国ネットワーク「引き返す勇気を」 [73-2-1-1] 10月5日の文部科学省交渉について [73-2-2] ◆独立行政法人化問題を考える北大ネットワークより [73-2-2-1] 声明 2001.10.24 [73-2-2-2] 北大学長への公開質問状 2001.10.24 [73-2-2-3] 北海道新聞10/25 [73-2-3] ◆首都圏ネット「中間報告・国大協臨時総会・私たちの見地」2001.10.23 [73-2-4] ◆千葉大センター速報 No.9 (2001.10.18) 特集:教育学部改革 [73-2-5] 第105回国立大学農学系学部長会議(2001.10.16) [73-2-6] 学長:独法人化「賛成」17%「反対あるいはやむを得ず」61% [73-2-7] 沖縄タイムス社説10/11「国立大法人化 計画の練り直しが必要」 [73-3] 大学構造改革 [73-3-1] 藤永 茂「世界的なコーポラティズムを越えて - カナダから見る日本の大学(抄)」 [73-3-2] 日経10/20「地域貢献へ研究交流―学長提言 再編再考求める―地方28国立大」 [73-3-3] 中央教育審議会大学分科会(第4回2001.10.10) 配付資料10 [73-4] 教育大学政策 [73-4-1] 毎日新聞10/15「<教員養成>教育大・学部を半数以下に統合へ」 [73-4-2] 小学校教員数年齢別分布(36万人中23才は0.2%の678人) [73-4-3] Yahoo! JAPAN! 独法化トピ [73-4-3-1] No3686 tjst 「小学校で23才の先生は0.2%」2001.10.22 [73-4-3-2] No3697 cpoirewjp「私は半々かな?」2001.10.23 [73-5] 総合科学技術会議 [73-5-1] ◆「国の研究開発評価に関する大綱的指針(案)」に対する意見 [73-5-2] 朝日10/25:「研究型の特殊法人、省庁から移管検討 自民行革推進本部」 [73-6] 大学での成績評価法 [73-6-1] 一橋大の「GPA」導入報道への [73-6-2] ◆渡邊勇一氏の批判 [73-6-3] 大学改革情報メーリングリストでのGPAに関する議論 [73-7] 産学連携 [73-7-1] 日本経済新聞10/22「経産省が大学ランキングを開始」 [73-7-2] 経済団体連合会「国際競争力強化に向けたわが国の産学官連携の推進 [73-8] 冷淡で短慮な奨学金政策 [73-8-1] 朝日新聞10/20私の視点:榎木英介「奨学金 安心して研究できる制度に」 [73-8-2] 日本育英会奨学金制度を考える若手科学者の会 [73-8-3] 関連サイト:「研究問題メーリングリスト」 [73-9] 野依教授のインパクト [73-9-1] Yomiuri On-Line 2001.10.16「野依さん痛烈、国の教育・産学協同バッサリ」 [73-9-2] 毎日新聞10/16「ノーベル賞:野依教授が「政府の30人目標は不見識」と批判」 [73-9-3] 科学技術・学術審議会学術分科会2001/06/18議事録 [73-9-4] 渡辺勇一「「国立大の研究レベルの証明だ」」 [73-9-5] 元村有希子(毎日新聞科学環境部)「大切な研究見失う恐れ・・・ [73-10] 「アフガンで起きている本当のこと」(ペシャワール会現地代表中村哲氏) ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 本文 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ [73-0] 内容紹介 [73-0-1] 日本の大学政策に不安を感じはじめた日本社会 中間報告に対する意見表明が増えてきている。10月16日の全国農学部長 会議[73-2-5]に引き続き10月19日の全国32国立大学理学部長会議でも、 一昨年の声明*1を踏まえたパブリックコメントをすることが決まった。また、 これまで法人化について文部科学省の善意を信用していたように見えるマスコ ミも、遠山プランという形で文部科学省の意図が明確に表明されたことにより、 日本の将来が心配になってきたようである。実際、率直な不安が行間から滲む 記事が目につくようになってきている。首都圏ネットは、それらの記事を総合 すると中間報告への的確な批判になっていることを指摘している[73-2-3]。ま た、在外の研究者が遠山プランを読んで「マネー、マネー、マネー」という声 しか聞こえてこない、恐るべきことだ、と驚きを表明している[73-3-1]。 *1 国立大学理学部長会議 1999.11.10 「危うし!日本の基礎科学− 国立大学の独立行政法人化の行方を憂う − http://www.sci.hokudai.ac.jp/oshirase.htm#a ------------------------------ [73-0-2] 大学「幹部」に広がる奇妙な「法人化後の精神主義」 学長や部局長の中には「学外者を運営に参加させて大学運営を牛耳られるよ うではだめだ」という奇妙な精神主義を主張する方が居るようだ。法人化後も しっかり大学自治を守らなければならないという学長もおられる。間接的行政 指導下でも財政的な縛りだけで大学自治は形骸化してきたのに、多様な直接的 発言権を複数の省庁が大学に対して持つようになる法人化後の大学運営で「大 学自治を守る」とは何を意味するのだろうか。 骨組の間違いの中で運用で正せるものはわずかであろう。「国立大学法人大 学」を運用で大学に近いものにしようというのは、魚の骨に肉付けして人間の 形を作ろうとするのと似ていないだろうか。 ------------------------------ [73-0-3] 学長アンケートにみる遠山プランの「効果」 読売新聞の学長アンケートで、独立行政法人化「賛成」17%「反対あるいは やむを得ず」61%という結果があった。2000年9月の「論座」アンケー ト[19-3]との大きな違いは、法人化の中身次第だと態度を保留していた62大 学長の大半が「諦めた」ことであり、遠山プランの効果を如実に証明した結果 となった。力づくで「やむを得ず」と言わせ現場の士気を殺いでまで、大学を 思い通りに手術する政策は成功するのか。大学には創造性も自発性も喜びも誇 りも要らない、必要なのは指令を仰いで黙々と忍耐強く従順に働く人材だけだ、 と考えているとするならば成功の見込みはない。 ------------------------------ [73-0-4] ◆10/29 臨時国立大学協会総会・・・「引き返す誠意を」 中間報告[70-1]に対する文部科学省の意見募集期限の10月29日に臨時国 立大学協会総会が開催される[71-1-1-3]。昨年6月に、99人の国立大学長の 方々は、独立行政法人化に反対しつつ、独立行政法人化のための調査検討会議 への参加を決めた。独立行政法人化が財政改革の視点だけで行われることを防 ぎ、大学の自主性・自立性を真に増す機会になるかどうかを見極めようという 意図があったのであろう。法人化の是非は内容が明確になるまで保留、という ことであった。1年の調査検討の結論である中間報告を見ると、描かれている 法人像は、独立行政法人よりもさらに大学の自律性を低下させる代物であり、 唯一の成果は「国立大学法人」という呼称だけであった。これまで独立行政法 人化には前向きであったジャーナリストからも種々の批判が出ているように、 中間報告の法人像で、大学自身が良くなると考える者は、学内外には誰もいな い。中間報告を評価しているのは、大学の諸資源を利用しようと虎視眈々とし ている人達だけだ。 「国立大学法人」化が大学にとっては何も意義のない変革であるだけでなく、 将来の大学にとって重荷となる変革であることが明確になった今、国立大学長 の方々は、大学構成員の信任を受けている存在として、また、日本社会の一人 ひとりから直接の負託を受けている大学の長として、法人化の議論を白紙に戻 す誠意を示し、教育・研究の現場が抱える諸問題を教職員が一つ一つ粘り強く 解決できる環境を整えるため、現場を混乱させ疲弊させる気紛れな大学政策の 乱発に対して決然とした態度を取る決意を表明して頂きたい。理の通らない圧 力に屈し「長いものに捲かれろ」を地で行くような振るまいは、独立不羈に 「理」を追求することを社会から直接負託された大学には許されない、という ことを今一度、直視して頂きたい[73-1]。 ------------------------------ [73-0-5] 文部科学省曰:97年見解と中間報告は整合的 10月5日の独立行政法人化阻止全国ネットワークと文部科学省の交渉の際に、 文部科学省は1997年の文部大臣の記者会見で表明した意見*1を今も堅持し ていることを明言している[73-2-1-1]。中間報告が1997年の意見と整合的 であると主張するのは居直りに近い。首相が国会で「法律的な一貫性、明確性 を問われれば答弁に窮しちゃいますよ」と居直っても国会侮辱罪にもならない し解散にもならないどころか審議の能率が良くなった、というのが、朽ち果て た民主主義の現実だから、文部科学省もこの程度の矛盾を指摘されて怯む必要 を感じていないのだろう。しかし過去の発言との整合性を軽視することは、現 在の発言について責任をもって対応する積もりなど全くないことを、行動で示 していることになる。遠山プランに右往左往している大学関係者は、それを出 した組織の性格を認識し、眉に唾して対応する冷静さが求められる。 *1 独立行政法人化についての文部大臣所信 1997.10.17 http://edugeo.miyazaki-u.ac.jp/reform/r770.html ------------------------------ [73-0-6] ◆北大ネット声明:国への規制を緩和する国立大学法人化 「国立大学法人化のメリットとされる、大学の予算・組織・人事・経営面での 規制緩和の内容は何か。大学の諸活動を支える十分な人件費・教育研究費を保 障しなければいけないとする国への規制が緩和される。大学の組織を臨機応変 に国が変えることを規制する法律が緩和される。国による自由な教員任免を規 制する教育公務員特例法が廃止される。評議会審議を義務づける大学運営規制 が緩和される。・・・ 設置者であり主な出資者でもある国は、国立大学に対 して潜在的に強い影響力を持っており、放置すれば開発途上国の多くで起って いるように、時々の政権の指揮が大学に直接および、長期的視野に立った教育・ 研究を行うことは著しく困難になる。そのため、欧米諸国の多くは、国に対す るいろいろな規制を設け、大学が自律的に活動できるように工夫している。こ の点では、日本はかなり遅れてはいるものの、国を規制する仕組みが貧弱なが らもあって機能してきた。これらの仕組みが「国立大学法人」化により消失し、 日本の大学は欧米諸国の大学からさらに遅れをとり、国際競争力を急速に失っ ていくだろう。・・・」[73-2-2-1] ------------------------------ [73-0-7] 若手に酷い学術政策 未来の研究者・教育者を、最近の日本のように酷く扱い粗末にしていてよい のだろうか、本当に心配になる[73-8]。一方で、端数が億の研究費の使い道に 困る所もあるとも聞く。機動的な学術政策遂行のために作られた総合科学技術 会議が、視野の狭い短慮な政策の実施に向けて猪突猛進[73-5]しており、諸事 情は深刻な様相から絶望的な様相に急速に移行しようとしている。 ------------------------------ [73-0-8] 小学校の36万人の先生の中で23才は0.2% 小学校への教員配備計画について、若手の先生を優先させることは必要だが、 中高年の社会人も、ある割合で小学校で教務に当たってもらってはどうか、と いう提案[73-4-3-2]がYahoo! JAPAN の掲示板にあった。それによって、小学 校の教育が片手間でできないことを社会(経営者層)が広く認知するようにな るのではないか、という意見である。 ------------------------------ [73-0-9] 産官が支配する総合科学技術会議が支配する学術社会 学術全体を統括する使命を帯びた国家機関である総合科学技術会議の事務局に 産業界から30名各省から40名が参加している[72-3-2-6]という。70名程 度の官僚が次期科学技術基本計画を立案したという話[62-5-2]があったが、こ の70名の官僚の内、30名は産業界からの天上りであったというわけだ。次 期科学技術基本計画というには余りに子細な「研究開発」に満ちているわけが それで明確になる。産業界が日本学術会議を俎板に載せ包丁をかざして玩んで いる様子は、日本が野蛮な国に既になってしまったように思えて残念である。 ------------------------------ [73-0-10] ◆プロクルステスの寝台「国の研究開発評価に関する大綱的指針」 日本全体の研究評価に波及する大綱指針の意見募集があったので意見を提出し た[73-5-1]。野依教授がドラマティックに産学官連携一辺倒の学術政策を批判 した[73-9]以上、発行者が言う必要はないようなものだが、種々の研究の現場 がある以上、それぞれの研究者が考えたことを伝えることは意味はあるだろう。 この大綱的指針というベッドを使って研究社会のプロクルステス*1が行おう としていることは何か。 *1 「ポセイドンの息子で、エレウシスとアテナイの間にあるエリネオスで旅 人をベッドに寝かせ、その長さよりも背が低いと無理矢理体を引き延ばして殺 し、背が高いとはみ出た部分を切り落として殺していた。」 (http://www.officenet.co.jp/‾yoji/icon/w_ha-fu_j.html より) ------------------------------ [73-0-11] GPA(Grade Point Average) 評価法の報道の問題性 GPAという成績評価法が一橋で導入されたという報道[73-6-1]があり、報道 の仕方について渡辺勇一氏が批判している[73-6-2]。GPAについては(新聞 記者もかなり参加している)大学改革メーリングリストで昨年4月に議論 [73-6-3]があり、研究者から問題点などが明確に指摘されているが、[73-6-1] はGPAの持つ問題性を意識した報道にはなっていない。「政府公報」型報道 からの脱却を期待したい。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ==>本文 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【発行の趣旨】国立大学独立行政法人化問題を広い視野から考えるのに役立 つと思われる情報(主に新聞報道・オンライン資料・文献・講演会記録等)へ のリンクと抜粋を紹介。種々のML・検索サイト・大学関係サイト・読者から の情報等に拠る。メール版で省略されている部分はウェブ版参照。ウェブ版は 目次番号が記事にリンクされている。転送等歓迎。 【凡例】#(−−− )は発行者のコメント。・・・は省略した部分。◆はぜ ひ読んで頂きたいもの。 【関連サイト】http://fcs.math.sci.hokudai.ac.jp/dgh/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発行者:辻下 徹 e-mail: tujisita@geocities.co.jp ------------------------- 発行部数(括弧内は増減) (2001.10.24 現在) 1652(+39): Mag2:956(+13)|CocodeMail:370(+4)|Pubzine:93(0)|melten:68(-1) |Macky!:56(1)|melma:62(+2)|emaga:27(-1)|melonpan:20(+20) 直送 約730(北大評議員・国立大学長・国大協・報道関係・国会議員等) ------------------------- Digest版 発行部数 約1600(北大), ML(he-forum,reform,aml,d-mail) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ End of Weekly Reports 73
独法化問題週報への登録: 右のフィールドのいずれかに 電子メールアドレス(半角)を 入れてください。 |